ページ番号1006242 更新日 平成30年2月16日

金融商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~

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レポートID 1006242
作成日 2006-09-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 市場
著者
著者直接入力 佐野 慶一
年度 2006
Vol 40
No 5
ページ数
抽出データ アナリシス住友商事 金融事業本部 コモディティビジネス部 調査・投資チーム長keiichi.sano@sumitomocorp.co.jp佐野 慶一金融商品化する原油市場~投資マネーのインパクトと今後の見通し~1. コモディティ高騰の背景出所:CQG図1GSCIの推移を示したチャート出所:CQG図2WTI原油のチャート 原油をはじめ、コモディティ(商品)全般の価格が高騰を続けている。 多くのコモディティは、そのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)的価値(フェアヴァリュー〈fair value〉:公正価格)を超えて、上昇を続けていると言われている。 図1はコモディティインデックスの代表銘柄である、GSCI(Goldman Sachs Commodity Index)の推移を示したチャートである。原油の占める割合が大きいため、原油のチャート図2に酷似している。 図3は同じくGSCIの価格推移であるが、2002年からの価格変動を指数化してある。図3にあるGSCI Total Returnというのは、①対象商品の上つ*1乗り換えげ下げに伴う損益、②限に伴う損益、そして③余剰資金の債券での運用のすべてを合計した結果の推移である。 GSCIは、特にエネルギーへの投資額が多いコモディティインデックスであるが、そのサブインデックスとして、Energy(エネルギー)/Industrial Metals(非鉄金属)/Agriculture(農産物)/Precious Metals(貴金属)/Livestock(畜産物)といった、個別市場のパフォーマンスも示されている。 このチャートから、エネルギーが2002年比で約3倍、非鉄金属が同年比3.5倍と、エネルギー系およびメタル系のコモディティが特に高騰している月げげん*1:先物取引・オプション取引の期限が満了となる月のこと。現在、日本の先物取引の限月は、債券・株式とも、3・6・9・12月で、オプション取引は毎月である(野村證券用語解説集)。77石油・天然ガスレビューAナリシスGSCI Total ReturnEnergyIndustrial MetalsAgriculturePrecious MetalsLivestock4504003503002502001501005002003/11/12002/11/12004/11/12005/11/12002/5/12003/3/12005/9/12003/9/12006/3/12006/1/12004/5/12002/7/12002/1/12003/7/12003/1/12004/1/12004/7/12002/3/12003/5/12005/7/12005/3/12004/9/12002/9/12005/1/12006/7/12004/3/12005/5/12006/5/1年出所:Bloomberg図3GSCIのセクター別推移(2001年末=100)たことが挙げられる。 第二に、イラク・イラン・ナイジェリアなどでの地政学リスクの高まり、第三にハリケーンによる油田や製油所の被害、といったイベントが挙げられる。 そして、ファンダメンタル要因に勝るとも劣らない価格押し上げ要因として「投資マネー」の流入がある。 現在のコモディティ価格の多くは、ファンダメンタル要因ではもはや説明がつかないという意見が多く聞かれる。筆者は、2004年夏に原油価格が40ドルの大台を突破した原因は、中国や米国の需要増等のファンダメンタル要因にも増して、この投資マネーの大量流入によるものが大きいと考えている。 2001年9月のテロ以降、2002年には世界景気が後退する局面が一度あった。その際に、景気動向に連動した周期性に従い、原油価格も下落すべきところであったが、投資マネーの大量流入によって下値がサポートされたと考える。 そこで本稿では、あえてファンダメンタル面は捨象して、「金融商品化する原油(コモディティ)市場」という切り口から、投資マネーにスポットライトを当て、なぜ今コモディティ投資が盛んなのか、どれだけの金額の投資マネーがどの程度価格を押し上げているのか、そして今後その資金動向はどうなっていくのか、その際の問題点は何か、といった観点から議論を進めていきたいと考える。 なお本稿では、「投資マネー」と「投機マネー」を使い分ける。「投資マネー」といった場合には、年金運用者・機関投資家による、コモディティ市場を利用した長期投資・運用をイメージしている。 これに対して、それ以前よりコモディティ市場において存在していたヘッジファンドやCTA(Commodity Trading Advisor:商品取引アドバイザー)といった参加者については短期「投機マネー」とし、「投資マネー」とは保有目的や投資行動パターンが異なることから、これらを区別して考えていく。ことが分かる。 他方、農産物・畜産物はほとんど値上がりしていない。 原油市場は、図2のWTI原油チャートに見るとおり、1998年12月に10.35ドルの安値をつけたあと、反騰に転じ、2度目の湾岸戦争や9.11米国テロを経て40ドルの壁を突破し、2006年7月14日に78.40ドルの史上最高値をつけている。 さらには、この時点で最も価格が高い限月であった2007年3月物は81ドルを突破しており、ついに原油80ドル台へと突入したこととなる。 1980年代から2004年夏までのWTI原油相場は、下値は10ドル、上値は40ドルという30ドル幅のレンジを形成しており、いわば原油価格は長期的に見て平均20ドル前後がフェアヴァリューであり、上がっても下がっても結局は20ドル前後に回帰するという「価格のサイクル性・平均回帰性」のコンセンサスがあった。 実際、40ドルに接近した場合も、時間的には短期間のうちに高値は終了し、20ドルに向かって反落しており、40ドルという数字は、湾岸戦争などのイベントを背景としての有事の買いによる極端な高値でしかない、という認識であった。 ところが現実には、40ドルの壁どころか、ついにその2倍の80ドルをつけか*2は78.40ドルまで)た原油相場(期は、実に1999年初からの7年間、上がり続けて7.5倍になった。 こうした急ピッチかつ長期継続的な価格上昇のファンダメンタル的な背景としては、第一に世界的好景気の持続に伴い、米国やBRICs*3諸国、中東といった地域における需要増に対して、原油・製品の供給能力が追いつかないというボトルネック(障害)が発生し近ぢき*2:実際に取引されている限月の中で、受け渡し期日が近い限月2本のこと。最も近い当限(とうぎり)だけを指す場合もある(野村證券用語解説集)。*3:BRICsとは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の4カ国の英語の頭文字を並べたもの。現在、経済成長の発展が著しい新興大国である。2006.9 Vol.40 No.578997199819992000200120022003200420052006年199219911996出所:Goldman Sachs/住友商事推定199319941995兆円1614121002468図4コモディティ投資残高の推移(推定)オ全体の15%程度保有することが“計算上は”望ましいとされる。これは、現状の実に15倍以上である。 とはいえ、代替的投資であるコモディティをポートフォリオ全体の10~15%も組み込むというのは、やや極端で非現実的である。実際には、コモディティを導入しようとする多くの年金や機関投資家は、とりあえず当初はポートフォリオの1%程度を導入目標とし、追って全体の5%程度にまで増やすという運用方針を持っているようである(表1参照)。 したがって、現在のコモディティ投資総額14兆円という数字が今後どうなっていくかを考えるとき、コモディティ投資が年金運用において一般的に採用されるならば、将来の現実的なポテンシャルとしては、5%投資で75兆円という数字になる。また、やや控えめに2%としても30兆円弱となる(図5参照)。 他方、この金額をコモディティ市場の側から見ればどうなるであろうか。表2をご参照いただきたい。この表は、現在のコモディティ投資額がコモディティ市場においてどの程度の重みを持っているかについて考察したものである。 なおここでは、コモディティインデックスの投資総額を2005年末に800億ドル(9兆5,000億円程度)と想定して計算している。そのうち、エネルギー投資が大きいGSCIタイプの投資残を500億ドル、それ以外のDJAIGCI(Dow Jones AIG Commodity Index)等の、エネルギー投資比率を抑えているインデックスへの投資残を300億ドルと想定した。なお、非鉄の主市場はLME*9であるが、投機的ポジション*10等の内訳が発表されてないため、一部データは計算不能となっている。 コモディティ市場には、それぞれ先物市場やオプション市場*11が展開し コモディティ市場への投資マネーの流入は、2003年ごろより顕著となった。その残高に関しては諸説あるが、2002年時点では1兆5,000億円にも満たなかったものが、2006年末には14兆円程度に達するとの見方が有力である。4年間で実に10倍近く増えたことになる(図4参照)。 このように不明確な言い方になるのは、コモディティ投資の実態はOTC(Over the Counter:相対)取引であり、その金額等のデータは公式にはなんら資料がなく、Goldman Sachs、AIG、Barclaysといったコモディティインデックスを取り扱う業者による推定値に依存せざるを得ないためである。 コモディティ投資の形態としては、①コモディティインデックスへの投資(パッシブ運用*4)、②コモディティに特化したヘッジファンドへの投資(アクティブ運用*5)、③その他コモディティを用いた仕組債*6の3つに分けられるが、多くは①のコモディティインデックスへの投資による運用であると考えられる。 さて、2006年末のコモディティ投資残高は推定14兆円という金額であるが、これは年金運用者や機関投資家にとっては大した金額ではない。世界の年金資金は1,500兆~2,000兆円程度(推定)と考えられるので、14兆円はその1%弱にすぎない。 現代投資理論で言えば、有効フロンティア*7分析からポートフォリオ*8のリスク・リターンが最適になるためには、コモディティ投資をポートフォリ金融商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~2. 投資マネーの価格への影響推定*4:アクティブコストを払っても超過リターンは得られないという考え方に基づき、市場が効率的であると見直し、市場の平均的なリターンを追求する投資手法(野村證券用語解説集)。*5:ベンチマークとなる市場インデックス(日経平均株価やTOPIXなど)に対して、相対的に高いパフォーマンスを出すことを目的に、インデックスとは異なるポートフォリオを構築する運用手法のこと(野村證券用語解説集)。*6:広義には、資産担保証券、リパッケージ債、デリバティブ内蔵債券など広範囲の債券形態を指す。狭義には、スワップ・オプションを組み込むことによって投資家のニーズに合わせたキャッシュフローの実現を目指したいわゆるデリバティブ内蔵債券のことを指す(野村證券用語解説集より抜粋)。*7:投資理論から求められる組み合わせのなかで、リスク・リターンが最も効率的なポートフォリオの集合のこと。*8:個々の投資家が保有している金融資産の集合体のことを指す。運用の中身は、株式、債券などさまざま(野村證券用語解説集より抜粋)。*9:London Metal Exchange:ロンドンにある非鉄金属専門の商品取引所。*10:証券の持ち高。証券を買い越している額、あるいは売り越している額(野村證券用語解説集)。*11:ある商品を、将来のある期日までに、そのときの市場価格に関係なくあらかじめ決められた特定の価格(=権利行使価格)で買う権利、又は売る権利を売買する取引のことをさす(野村證券用語解説集より抜粋)。79石油・天然ガスレビュー\1世界の年金基金の商品投資の一例地域国名年金基金名資金規模(直近発表分)商品への投資配分開始時期アナリシス今後の投資目標額191億円ポートフォリオ理論上の想定値5%ならば・・・191億円現在の投資金額(実績・計画)191億円41億スイス・フラン全体の5%弱153億ユーロ130億ユーロ全体の2%全体の1%、将来的には5%3月時点で投資開始済み2月時点で投資開始済み2006年中に開始予定未公開444億円444億円1,109億円189億円943億円943億円スイスアイルランドオランダ欧州英国スウェーデンThe European Organization for Nuclear ResearchThe National Pensions Reserve FundThe Dutch Rail Pension FundThe Stichting SpoorwegpensioenfondsABPPGGMMJ SainsburyBedfordshire County CouncilHermesKapan PensionerアジアニュージーランドNew Zealand Superannuation FundカナダOntario Teachers Pension Plan1,907億ユーロ全体の4%、2005年のリターン23.2%当初4%、2005年に5%に増加全体の5%715億ユーロ38億ポンド9億4,000万ポンド5,000万ポンド(全体の5.5%)10億ポンド (全体の約3%)検討中3億8,300万NZドル(全体の5%)当初21億カナダドル(全体の2.3%)GSCI経由でのパッシブ運用340億ポンド35億ユーロ76億NZドル900億カナダ・ドル11,061億円11,061億円13,626億円5,184億円399億円105億円5,184億円399億円105億円6,480億円399億円95億円2,142億円2,142億円3,570億円268億円268億円268億円2,163億円2,163億円4,702億円1,150億円1,150億円11,500億円2006年2006年2月時点での計画2006年1月時点での計画検討中2005年10月以前2004年末以前2006年5月発表「8月までに計画確定」2005年中盤3億円3億円6億円小計23,299億円24,053億円42,889億円北米CalPERS2,000億ドル当初10億ドル米国New Mexico State University Foundation9,700万ドル300万ドル(約3%)複数のコモディティインデックス採用出所:Reuters/Bloombergほか、住友商事まとめ兆円80706050403020100199119921993199419951996199719981999200020012002200320042005出所:Goldman Sachs/住友商事補足*世界年金試算1,500兆円の2%と5%で設定テポル(5%)ル(2%)ャシン2006ャシンテポ図5コモディティ投資残高の推移(推定)と増加ポテンシャル2006.9 Vol.40 No.580\2現在のコモディティ投資額がコモディティ市場に占める重みWTI原油236.48.52.100.70.925.10.38.11.233.2金103.50.31.21.53.18.826.876.429.985.2銀1.41.10.10.10.35.97.529.837.535.744.9銅15.86.90.400アルミニウム10.650.4002.66NANANANA3.88NANANANAる効果はなかった。また、ヘッジファンドやCTAの保有ポジション規模は、最大時でも1兆円にも満たない(約10万枚=1億バレル)。これに対してコモディティインデックスからのWTI原油に対する投資額は、既に2兆~3兆円という規模に達しており、相場をかき乱すとされるヘッジファンド等の規模をはるかに上回っているということが分かる。 次に、これら年金系のコモディティインデックス投資マネーが、原油価格にどれだけのインパクトを与えているか、価格押し上げ効果は何ドル程度なのかを推定してみたいと思う。 一般に、ヘッジファンドやCTAの投機ポジションを把握する際には、CFTCレポートが用いられる。CFTCレポートとは、米国の商品先物取引の監督官庁であるCFTC(Commodity Futures Trading Commission)が、毎週火曜日の相場引け後の各市場の参ょく*18報告加者タイプ別の建玉ぎたて単位:兆円現物市場規模先物市場規模コモディティインデックス投資残高上場投資信託(ETF)残高先物委託玉ネット残高単位:%コモディティインデックスVS現物市場規模コモディティインデックスVS先物市場規模ETF+SPEC VS 現物市場規模ETF+SPEC VS 先物市場規模投資マネー合計 VS 現物市場規模投資マネー合計 VS 先物市場規模出所:住友商事まとめネーは、ヘッジファンドやCTAといった従来の短期投機筋の取引仕法と異なり、短期的な売買を繰り返すことは基本的にないという点である。いったん、購入後は買い越し残を相当期間にわたって維持するという、Long Only戦略*16と呼ばれるパッシブ運用スタイルであって、短期的には売り戻さない。 このことは、市場流動性を吸収・消費してしまうタイプの市場参加スタイルであるということを意味する。株式市場で言えば、安定株主(=年金系の投資マネー)が買い進むほどに、浮動株*17(=市場流動性)が低下していくというような現象が起こる。 これまでも、ヘッジファンドやCTAといったコモディティを取引する投機的な市場参加者はあった。しかし、これらは1~3カ月程度の比較的短期の売買益を狙った参加者であり、短期的に保有ポジションを傾けることはあっても、数カ月内には反対売買をしてくるため、市場流動性を枯渇させている。当然のことながら、これらデリバティブ(金融派生商品)の原資産市場は現物市場*12である。現物のコモディティは生産量・需要量という需給規模におのずと限界があるので、その市場流動性は無限ではないし、デリバティブであるところの先物市場の市場流動性も無限ではない。金利スワップ市場*13等とは大いに異なる点である。 原油市場の現物市場規模は、例えば年間250兆~300兆円程度と推定される。金は10兆円、銅地金で15兆円程度といった具合である。また、その現物市場からのデリバティブ市場としての先物市場は、NYMEX-WTI原油*14で8兆5,000億円程度、COMEX*15金で3兆5,000億円程度、LME銅で7兆円弱といったサイズでしかない。 そこで、コモディティ投資残高との規模感に注目いただきたい。投資マネーのサイズは、2006年時点で10兆~14兆円、それが今後30兆~75兆円というサイズになろうとしている。実際の買い付けオペレーションとしては、これらのコモディティ投資は現物市場に行くのではなく、先物市場で購入される。世界最大のコモディティ市場であるNYMEX-WTI原油でも10兆円程度の時価総額しかないなかで、既に原油には2005年末時点でも2兆円程度のコモディティ投資資金が流入しており、当該市場の先物市場規模全体の20%程度を占めている。この投資額が2~5倍に増えるということであるから、価格に対する影響は甚大である。 さらに重要なのは、これら投資マ金融商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~*12:投資家と証券会社との間で、決済日に株式(現物)と現金の受け渡しが行われること。現物取引は普通取引で、日本の株式の場合、T+3といって、受け渡しは約定日の3日後となっている(野村證券用語解説集より抜粋)。*13:スワップとは2当事者(X,Y)間で、事前に合意された数式にしたがって求められたキャッシュフローを、決められた期間において、決められた回数だけ交換する契約である。交換されるものによって、金利スワップ、通貨スワップ、エクイティー・スワップなどと呼ばれる。これらは、固定であっても変動であってもよい(野村證券用語解説集より抜粋)。*14:ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)において先物取引が行われている米国の代表的な原油で、原油価格の代表的な指標。*15:Commodity Exchange, Inc.商品取引所(野村證券用語解説集)。*16:カラ売りをしないでまず買いから入る戦略。*17:安定的に保有されている株式ではなく、投機的利益を得ることを目的として、常に市場で売買されている株式のこと(野村證券用語解説集)。*18:信用取引・先物取引・オプション取引において、未決済になっている契約総数のこと。玉ともいう。売り建玉と買い建玉がある。ある契約の建玉が1枚あるということは、その契約に関して一人の売り手と買い手がいることを意味する(野村證券用語解説集)。81石油・天然ガスレビューAナリシス(Commitments of Traders Report)を、その週の金曜の夕方に発表するものである。そのレポートでは、Non-Commercial position(大口投機家ポジション)と、Commercial position(ヘッジ目的の大口ポジション)とが区別され、それとは別にNon-Reportable positions(報告義務のない小口ポジション)という項目がある。 Commercial position(ヘッジ目的の大口ポジション)とは、いわゆるトレーダーや当業者のポジションであり、Non-Commercial position(大口投機家ポジション)がヘッジファンドおよびCTAの取引と見なされている(実態としては、ヘッジファンドとCTA以外の参加者も当然このカテゴリーに含まれるが、詳細は不明である)。 また、CFTC上でコモディティインデックス投資がどう扱われているかも気になるが、これは年金運用者が直接NYMEXなどの先物市場で買い付けているわけではなく、Goldman SachsやAIG、Barclaysといったトレーダーが組成する債券・仕組債への投資をしているのであって、当該トレーダー経由で先物市場に出てくることになる。このことから、CFTC上の分類は、こうしたトレーダーが属するCommercial position(ヘッジ目的の大口ポジション)として認識されると見なすのが適当である。 さて、CFTCレポートの仕組みは以上のとおりだが、図6をご覧頂きたい。これはNYMEX-WTI原油先物市場に関するCFTCレポートのNon-Commercial position(大口投機家ポジション)の推移と、価格の推移をプロットしたものである。大口投機家ポジションのネット残高を黄色の折れ線で示し、オレンジの折れ線で価格の推移を示している。 この図から分かるように、大口投機家ポジションは、最も少ないときで売り越しポジションで8万枚程度、最大に買い越した場合で約10万枚となっている。また、価格と大口投機家ポジションの推移はトレンドとしてはそれなりに相関しているが、細かく見ればそうでもない時期も少なくない。 注目すべきは、大口投機家ポジションが7万枚や10万枚というサイズで手仕舞い*19される際に、原油価格は7~10ドル程度下落していることである。極めて大ざっぱに言って、1万枚の手仕舞い=1ドル下落というイメージで捉えられる。 さて、2005年末時点のコモディティインデックスの原油投資残(買い越し枚数)は30万枚程度(1枚=1,000バレル、=3億バレル)と推定される。ヘッジファンドやCTAの短期投機的な投資パターンと、インデックス系の静的な投資行動との違いから、価格へのインパクトもそれなりに異なると考えられるものの、単純なアナロジーでいけば、コモディティインデックス投資により、原油価格は20~30ドル程度押し上げられていると考えられる。 既述のとおり、インデックス投資マネーは、当業者経由で先物市場に入るためにCFTCレポート上はCommercial position(ヘッジ目的の大口ポジション)として認識されていると考えられ、ヘッジファンドの持ち高とは異なり、CFTCレポート上ではコモディティインデックス見合いの持ち高は把握できない。しかしながら、NYMEX原油全体の総取組高の推移からは、その動向がうかがえる。 図7は、NYMEX-WTI原油の過去3年間の総取組高と期近価格の推移である。取組高とは、先物市場における未決済の建玉総枚数のことである。現在、NYMEX-WTI原油先物の総取組高は105万枚(1枚=1,000バレル、=単位:枚250,000200,000150,000100,00050,0000-50,000-100,000-150,000-200,0002001/6/19投機的ロング投機的ショートNYMEX第一限月NET POSITIONS$80.0070.0060.0050.0040.0030.0020.0010.002001/11/62002/4/22002/8/202003/1/72003/5/272003/10/142004/3/22004/7/202004/12/72005/4/262005/9/132006/1/312006/6/200.00出所:CFTC、住友商事まとめ図6NYMEX-WTI原油 ―CFTC発表 投機的建玉の推移(先物のみ)*19:信用取引で買い建てている場合には、転売あるいは現引をし、売り建てている場合には、買い戻しあるいは現提をして、売買関係を終了させること(野村證券用語解説集)。2006.9 Vol.40 No.582N間の総取組高の60万枚の増加のうち、半分強の35万枚ほどはコモディティインデックス投資の増加に起因すると考えられる。 そして、現状の総取組105万枚のうち、40万枚=38%ほどはコモディティインデックス投資が占めると考えられる。非常に大きな占有率である。ドル/バレル95.0085.0075.0065.0055.0045.0035.0025.00400,0003922491058722198014632063359183585279971211121311122/221222111111111221/////////0///////////7//////8/////////9/7656//22120011089671324754312942185163///////111111111/////4//////4/////////4/6646///53/53455////655566654443///4534000000054335454300000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000222222200000000022222222222222222222222222222222期近価格総取組高(枚)年出所:住友商事まとめ図7NYMEX-WTI原油 総取組高と価格の推移1,100,0001,000,000900,000800,000700,000600,000500,000枚(1枚=1000バレル)10億5,000万バレル)だが、これは105万枚の売り建玉と105万枚の買い建玉がそれぞれ未決済のまま残っている(当然、売りと買いは同数)ということを意味する。通常、同一の市場参加者が売りと買いの両方を建玉することはないので、取組高が増加するということは、新規の買いと新規の売りが増えていることを意味する。 3年前には50万枚以下であったNYMEX原油の総取組高は、この3年間で60万枚弱増加し、全体では2.2倍に拡大している。なお、同時期に原油価格も2.5倍に値上がりしている。 さて、この間、コモディティ全般に対する投資残高は、図4でみたとおり、約7倍になっている。原油に対するインデックスマネーの投資残は、5万枚程度から40万枚程度へと、35万枚ほど増加した計算となる。よって、過去3金融商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~3. コモディティインデックスとは? 伝統的運用資産とされる株式や債券に対して、“代替的”運用資産として登場してきたのが、ヘッジファンド投資やコモディティインデックス投資である。 コモディティを、投資に値する優秀な資産(アセットクラス)とは認識しても、実際に現物を取り扱うのは困難な参加者のために、商品価格をインデックス化し、投資家にとっての利便性・流動性を高めたものがコモディティインデックスである。 コモディティインデックスは、さまざまな商品市場を対象として、先物市場でコモディティを購入するのに用いられる。株式の時価総額に相当するものとして、各商品の年間生産量や需給規模といったものを時価総額として捉え、各商品市場の時価総額に応じて投資対象の配分比率を決定している。ただし、この手法ではどうしてもエネル83石油・天然ガスレビューギーの比率が突出してしまうため、そのままエネルギー偏重での投資を行う従来GSCI型と、エネルギーといえども全体の3分の1以上は投資しないというように、エネルギー投資比率を人為的に抑え込む型に分かれる。DJAIGCIなどが後者の代表である。当然、投資配分や下記に述べるRoll-Over(=乗り換え)のタイミングなどが異なるため、設定インデックスごとのパフォーマンスも異なる(図8参照)。DJAIGTR IndexGSCITR Index3002502001501005002001/12/312003/12/312002/10/312004/12/312005/10/312003/10/312004/10/312005/12/312002/12/312003/8/312003/6/302002/2/282002/4/302002/6/302004/6/302003/4/302003/2/282002/8/312005/2/282005/8/312004/2/292004/4/302004/8/312006/2/282005/6/302006/6/302005/4/302006/4/30年出所:Bloomberg、住友商事まとめ*2002年初を100として指数化図8GSCIとDJAIGのパフォーマンス比較Aナリシスただし、流動性がない場合は先限月)を購入し、当該限月が現物化してしまう納会の前に翌月に乗り換えていく。この限月乗り換えは、各月の第5営業日から第10営業日の間というふうに、機械的に行われる。****注: ENERGY=エネルギー・セクター, Crude Oil=WTI原油先物, Brent Crude Oil=Brent原油, INDUSTRIAL METALS=非鉄金属出所:Bloomberg図9GSCIの組成 図9に、コモディティインデックスの代表的銘柄であるGSCIの組成を示す。WTI原油先物だけで全体の31.63%をアロケート(計上)している。Brent原油と合わせれば46.58%、その他石油製品や天然ガスを合計したエネルギー・セクターで全体の75%を占める。昨今、原油以上に高騰している非鉄金属には9%弱しか投資していない。エネルギーに偏った投資がGSCIの特徴である。これに対して、第2位の人気銘柄であるDJAIGCIの組成は、石油21%、天然ガス12%、非鉄金属18%、貴金属8%、穀物その他合計41%となっており、エネルギー系を全体の3分の1に抑えている(現在、GSCIにもエネルギー投資を抑えたVersionも出ており、投資家のニーズに合わせて多様性を増している)。 投資手法は、Long Only戦略なので、まず、当該コモディティ先物市場の期近限月(納会が最も近い第1限月、4. なぜ年金はコモディティに投資するのか? 既に述べてきたように、コモディティインデックスを買う動機は、そうすることによって運用資産ポートフォリオのリスク・リターンが改善すると信じるからである。 伝統的資産である株+債券だけのポートフォリオと、株+債券にコモディティをプラスした場合のポートフォリオを比較すると、後者のほうが、より低いリスクで高いリターンが期待できる。その理由は、①コモディティ投資自体のリスク・リターンの優秀さと、②伝統的資産(株・債券)との相関のなさ(無相関)という2つである。 まず、リスク・リターンだが、各種のコモディティインデックスがあるのでデータもさまざまだが、GSCIのデータでは、コモディティ投資は1970年から2005年の35年間で平均年間リターンが12.3%という驚異的な数字を残している。リスクは18.7%で、リスクとリターンの度合いを測る「シャープレシオ」(=リターン÷リスク)は40%と、株式市場のそれ(リターン11.1%、リスク15.4%、シャープレシオ38%)に比して全く見劣りしない。ということは、株や債券をポートフォリオに組み込むのに、コモディティを入れない理由はないということになる。 次に、伝統的資産との相関だが、1970~2005年のデータでは、コモディティは株とも債券ともマイナス4~9%程度の相関であり、ほとんど無相関であると言える。無相関とは、コモディティと株のパフォーマンスを、縦軸をコモディティのリターン、横軸を株のリターンとしてプロットしてグラフ化した場合に、ランダムにその点が分散するということを意味する。 両者に相関がないということは、同時に悪くなったり同時に良くなったりしないということであり、リスクが分散されているということである。このため、コモディティを組み込むことによってポートフォリオのリスクが低減するという効果をもたらす(ここで、リスクとは「損益のVolatility(価格変動率)」であって、損失リスクのみならず収益が上がる方向においても損益に大きな振れがあること自体がリスクと見なされる)。 よって、コモディティという優秀で、かつ伝統的資産と無相関なアセットクラスを組み込むことにより、運用資産ポートフォリオ全体のリスク・リターンが改善するということである。そし2006.9 Vol.40 No.584燉Z商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~て、有効フロンティア理論で計算すると、最適ポートフォリオはコモディティという資産を、全体の15%(10~20%)程度持つ場合という結論になる。 ここで注意を要するのは、どういう過去データを取って分析するか、ということである。1970年までさかのぼった場合と、過去1年だけを分析した場合とでは、リスク・リターンや相関に関する計算結果が異なるのは当然であり、コモディティをポートフォリオにどの程度組み込むべきか、あるいは全く入れるべきではないか、という結論も変わってくる。 一般に、長期のデータのほうが短期データよりも信頼性が高いと思われるが、対象市場において“パラダイム・チェンジ”というような構造変化があった場合には、必ずしも長期データがベターとは言えない。 また、純粋な投資理論だけではなく、中国やインドの経済成長に伴ってコモディティ価格が今後数年にわたって急騰を続けるというような「コモディティ・スーパーブル理論」(“ブル”は強気の意味)といったシナリオも、コモディティの積極導入の理由となっている。また、インフレ懸念が高まっている現在、コモディティに対するロング・エクスポージャー*20を持たざるリスクというものも強く意識されていると考えられる。 昨今のFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言等にもあるとおり、原油価格の更なる高騰は間違いなくインフレ懸念を高め、世界的な金利上昇をもたらし、世界経済に悪影響を与え、ひいては株・債券市場が下落する理由となり得る。「コモディティ(特に原油)を持たざるリスク」が年金運用者に強く意識されていると考える。5. 原油市場のコンタンゴ化とインデックスのリターン さて、コモディティインデックスでは、現物の受け渡しを回避するため、購入した限月が納会を迎える前に次限月に乗り換えていくという「Roll-Over」を行う。通常、コモディティインデックスは期近限月を購入し、当該限月が納会になる前に次限月に乗り換える。その際に、期近=month1(M1)と次限月=month2(M2)との値差次第でRoll-Over損益が発生する。M1を売り閉じて同時にM2を購入することから、M1>M2という先安の状態(バックワデーション:backwardation)の場合には、乗り換えによって収益が上がることなる。逆に、M1<M2となる先高の場合(コンタンゴ:contango)には、乗り換えのたびに売買コストを支払うことになる。 投資戦略は「Buy Only戦略」であり、株式の配当・債券のクーポンにあたる安定収益はないので、絶対値の上昇が主な収益源となるが、前記Roll-Overオペレーションに伴っても損益が発生する。また、商品先物市場での買い付けには、証拠金として当該元本額の3~7%程度の資金があれば購入可能であることから、残った93~97%程度の資金は安全な債券で運用される。この債券運用益も収益に加算される。 そもそもRoll-Overオペレーションに伴う損益は、コモディティインデックス投資における極めて重要な収益源であった。コモディティの多くにおいて、限月間の値差は恒常的にバックワデーション(期先安状態)形状であったため、毎月のRoll-Overオペレーションは追加的な収益をもたらすものであった。実際、前述したようにコモディティインデックスは、1970年から2005年の35年間で、平均年間リターンが12.3%という驚異的な数字を残しているが、その期間の商品価格のスポットの変動から得られたリターンは3.3%でしかなく、その差9%の年率リターンはバックワデーション下でのRoll-Over収益と余資の債券運用からの収益によるものであった。限月Roll-Over収益は、例えば、2000年には37%、2003年には22%の追加的超過リターンをGSCIにもたらした。 それほどに、限月Roll-Over収益はコモディティインデックスにとって重要な収益であり、限月間値差がバックワデーションなのか、コンタンゴ(期先高状態)なのかという点は、運用成績に大きな影響を与える。 ということで、原油市場の限月間値差(イールドカーブ*21)のコンタンゴ化について考察していきたい。 図10は、さまざまな日付におけるWTI原油の期近物と期先物とのイールドカーブの変化を捉えたものである。1本の線は、ある1日の限月ごとの価格分布(イールドカーブ)を表している。縦軸は原油価格、横軸は限月を意味し、左側にいくほど期近であり、右にいくほど超先物となる。NYMEX原油では、最長で7年先物までが取引されている。最新日付が05年8月となっており若干データが古いが、このグラフで指摘したいポイントは、1980年代から2004年夏までの10~40ドル・*20:投機家が買った後、売らずに一定期間保有していること。*21:イールドカーブとは、横軸に債券の残存年数(残存期間)、縦軸に最終利回りをとった座標に、各債券の残存年数と最終利回りに対応する点をつないだ曲線のこと(野村証券用語解説集より抜粋)。85石油・天然ガスレビューAナリシス1997/4/141997/10/61998/4/61998/12/211999/4/51999/10/42000/3/62000/10/22001/4/22001/11/192002/4/12002/10/72003/3/32003/10/62004/4/52004/10/42005/4/42005/6/62005/8/22単位:ドル80706050403020100 NYMEX WTIMth1(Adj)(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember+1(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember+2(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember+3(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember+4(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember+5(US$/Bbl)Close NYMEX WTIDecember+6(US$/Bbl)Close出所:住友商事まとめ図10NYMEX-WTI原油 さまざまな日におけるイールドカーブ しかし、イールドカーブの変化=パラダイム・チェンジ論に対する筆者の見方はまったく異なる。40ドルを突破した際にイールドカーブが変化したのは、市場が突然、超強気に変わったからではなく、流動性の低い超先物市場において、市場参加者の行動パターンが変化したことの結果でしかない。そしてそれは、相場観からきた変化というよりは自然な反応であったと考える。 40ドルを超えるまでは、オイルサンド生産者ほか生産者の売りヘッジもあり、また、バックワデーションメリットを取りたいとする日本からの分散型電源ビジネスに起因する超先物原油に対する買いヘッジもあった。また、航空会社の燃料買いヘッジもそれなりに入っていた。 日本発の超先物原油のヘッジ買いは、2000~2002年頃、7年先物原油がまだ20~25ドル程度であった時期に大量に超先物を購入した。この日本発の超長期原油の買いに対しては、トレーダーが売り向かう(超先物のショート見合いで、期近をヘッジ買いする)か、生産者が売り向かう形となっていたが、日本の買いは止まらず、また決して売り戻さず、継続的に入った(あたかも現在のコモディティインデックスのBuy only戦略のようである)ので、もともと少なかった超先物原油市場の市場流動性がさらに減少し、売り手不足に陥った。 期近価格が40ドルを超えるにあたって、6年先物は期近対比10ドル以上のバックワデーションがなお維持されていた。そのバックワデーションメリットを取るべくさらなる日本の買いが入ったため、価格が上昇しながらもバックワデーションが縮小し始めた。 ついに、期近買いでヘッジしていたトレーダーも、コンタンゴ化の進行の中で超先物売り+期近買いというヘッジが機能しないことに気づき、超先物の損切り買いを開始(同時に期近を売り戻す)、これがコンタンゴ化に拍車を掛けた。 これに伴い、超先物で売りヘッジを掛けていた生産者は、価格急上昇によって売りヘッジポジションが大きな損勘定となったため、先物取引所ある2006.9 Vol.40 No.586しゅうん斂れレンジを形成していた時期(原油の価格回帰性が信じられていた時期)におけるイールドカーブの形成のされかたと、40ドルを突破してからのそれとが、大いに異なっている点である。 すなわち、実線で示したラインは40ドル突破前(2004年夏以前)のイールドカーブ・データであり、破線で示したのはそれ以降のデータである。 実線のデータは、期近が幅広く、超先物は幅が狭いという「ラッパ状」の形を示している。期近が40ドルにあっても6年先物は25ドル程度、期近が10ドルのときでも6年先物は18ドル程度といった具合で、期近のVolatilityの高さに比して超先物のそれは極めて低く、安定している。あたかも、同期間の平均的価格である20ドル前後に収しようとするような動きに見える。市場のコンセンサスとして、おそらく、原油価格は20ドル前後に収斂する性質があるという価格回帰性が強く意識されていたものと思われる。 ところが、2004年夏以降、価格が急騰する局面において、このラッパ型のイールドカーブ形状は完全に否定された。期近の上昇以上のペースで、超先物価格も上昇するようになってしまったのである。この変化はパラダイム・チェンジと呼ばれる。 超先物の急騰は世界の原油の先行きに対する強気な見方を表すものであり、原油に対する市場の考え方や見通しが強気に大きく変わったとされた。コモディティ全体に対するスーパーブルサイクル論の台頭である。すなわち、BRICs諸国、特に中国・インドといった新興国の爆発的需要増を前提として、世界景気の好調に伴って米国・中東諸国においても需要増が見込まれ、これに対して供給が追いつかないということである。ジム・ロジャース氏をはじめとする多くの著名投資家やアナリストが、原油100ドル超といった超強気ビューを声高に述べ始めた。竭ホ的に強気であるから70ドルでも買うのではなく、期近を買うよりは安いから買うだけである。 さて、現在の原油イールドカーブはどうなっているか、図11をご覧いただきたい。 図11では、基本的に図10と同じく、さまざまな日のイールドカーブを描いているが、ここでは絶対値レベルを無視し、限月間値差だけを捉えてチャート化している。また、最新日付は06年7月に更新されている。 それぞれの日付における期近物の価格は大いに異なるが、単純に期近からの限月間値差を見た場合に、極めて明確な変化が表れていることが分かる。史上最高値に近い現在が、最もコンタンゴ化が進行している。この例のなかで、最もバックワデーション化していたのは2年前で、期近が43.80ドルのときであった(ランダムに抜き出しているので、必ずしも過去3年間で最大のバックワデーション幅という意味ではない)。 また、最近の傾向として、イールドカーブの頂点(もっとも高い限月)がどんどん先へと移動していることも、特徴として指摘できる。これは、後述するように、コンタンゴのデメリットを避けるべく投資マネーが先へ先へと直近 72.6616ヶ月前(05/3末) 55.4過去最高値(7/14) 77.033カ月前(06/4末) 71.8818カ月前(05/1末) 48.26月16日 69.886カ月前(06/1末) 67.922年前(04/7末) 43.81年前(05/7末) 60.573年前(03/7末) 30.54$0246-2-4-6-8月第5限月月第3限第2限月月第1限第6限第7限出所:住友商事まとめ月第4限月第8限月月月月月月月月月月月月月月月月月月月月第21限第24限第23限第18限第17限第16限第19限第27限第26限第25限第22限第12限第14限第20限第10限第15限第11限第13限第28限第9限月図11原油フォワードカーブ(期先価格カーブ)(第1限月との値差)限月値差(ドル/バレル)902.001.50801.00700.50600.0050-0.5040-1.0030-1.5020-2.0010-2.5009732164692737181713043254967250329278823622222/2/2212112/11232/111/121/211////////012201////93786921///////////////////////201271243123316555191678617181449////////111144656544/////////////////////////////34544465644456653353534543563////0000000045550000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000222222220000222222222222222222222222222222222原油価格(ドル/バレル)期近価格Front-2nd Mo.50 区間移動平均 (Front-2nd Mo.)線形 (Front-2nd Mo.)出所:住友商事まとめ図12NYMEX-WTI原油 期近-第二限月値差推移(2003年6月~現在)いは仲介トレーダーに追い証拠金を納めねばならない状態に追い込まれた。 生産者からすれば、40ドル近辺で売っているヘッジは、自らのコスト対比で見れば完全な利益確定ヘッジであり、極めて正しいオペレーションなのだが、追い証拠金は増えるばかりで、キャッシュがどんどん出ていく。 ついには売りヘッジを買い戻す、あるいは新規のヘッジ売りを止める羽目になる。40ドル超の原油価格においては、生産者にとって深刻な下方リスクからは程遠いレベルとなり、売りヘッジの必要性・緊急性も低下した。 他方、10~40ドル・レンジ時代には、ヘッジ率を20~30%程度で保持していた航空会社にとっては、価格回帰性があるはずの原油市場がパラダイム・チェンジで価格が上昇の一途となり、燃料費も急増してしまった。買いヘッジ率を上げていかねば企業収益が吹き飛びかねない事態となったため、価格が上がるほどにヘッジ率を上げて買い進むことになった。 これら市場参加者の対応変化の結果、流動性がそもそも少なかった先物原油市場では買い手ばかりとなり、売り手は霧散してしまった。このため、急激に価格が上昇、コンタンゴ化が進んだ。これが2003~2004年に発生した事象である。そして、この価格変動を見た、事情を知らない投資家は、先物価格の急騰・コンタンゴ化は市場の原油価格に対する超強気ビューの表れと理解し、期近原油を買い進むこととなった。実態は、過去の常識が当てはまらなくなった超長期の限月間値差変動に誰も手が出せなくなったために超長期価格が急騰したということであった。 これが“パラダイム・チェンジ”の実態である。その後、現在に至るまで、バックワデーションメリットを追求して、長期原油を買い進む戦略はポピュラーになった。7年先の原油に対して87石油・天然ガスレビュー金融商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~006.9 Vol.40 No.588アナリシス性すらある。 図12は、過去3年間のNYMEX原油の期近限月と第2限月との値差(=M1-M2)をチャート化したものである。赤線は期近原油価格の推移である。黄色線が限月値差の推移を示し、それを線形補完しものが黒線である。ジグザグはあるものの、明らかにバックワデーションが常態であった値差がコンタンゴになってきている傾向が見られる。 M1とM2の値差のコンタンゴ化は、M1を売ってM2を買うオペレーションを行うコモディティインデックスにとっては、運用利回りを悪化させる効果を持つ。最近では平均的に毎月1~1.5ドルのコンタンゴとなっているが、これは年率15~25%ものマイナスリターンを意味する。 1970年から2005年までの平均リターンが年率12.3%であったことや、限月Roll-Over収益が2000年には37%、2003年には22%の追加的超過リターンをGSCIにもたらしたことを思い出せば、このネガティブリターン効果がいかに無視できないインパクトを持つか理解されよう。 また、クーポンや配当というものがないコモディティ投資をパッシブ運用として考える上においては、バックワデーションメリットを取るという戦略は年金運用者などには極めて訴えるものがあった。しかし、現在は逆に持ち出しコストになっていることで、コモディティインデックス投資における大きな障害となりつつある。買い対象ゾーンを延ばしてきていることに起因するもので、今後も同じ傾向が続くと考えられる。 さらに、期近に近いところのコンタンゴの角度が急になってきているのも、最近の特徴である。これは、期近市場が現物市場の影響をより受けやすい限月であることに着目すれば、いかに現在の価格帯が現物市場の需給や在庫状況を無視して上がっているかということの証左である。 現物市場のだぶつき感が期近に反映されながら、強引な投資マネーの買いが先物に継続的に入る結果、期近と先かい物との価格乖が始まっている。この状況がさらに進み、現物の置き場すらなくなる状況に至れば、最終的には、全く先物と関係なく値決めされる可能離り6. 年金コモディティ投資の死角 今後も急増を続けることが予想されるコモディティ投資だが、既にお気づきのとおり、いくつかの問題点を抱えている。 まず第一は、流動性の限界と売買コスト(手仕舞いコスト)の増加である。第二には自重効果(リフレクション)によるパフォーマンスの低下(コンタンゴ化)である。第三には、そもそもの投資の前提である「高パフォーマンスと無相関」の前提に対する疑問である。第四には、年金運用者自身にとってのポートフォリオ全体に対する総合戦略としての潜在的問題である。 第一の問題。既に見てきたとおり、コモディティ市場の流動性と、株・債券市場のそれは大きな差がある。そもそも、年金資金などの受け皿として、ポートフォリオ全体の10~20%もの資金をコモディティ市場が受け入れることは物理的に不可能であると考えられる。それでも、10%は無理としても、ゼロよりは1%でも入れたほうがリスかんがク・リターン的に良い結果が得られるという見方が当然ある。問題は市場流動性の限界に達する前にどこまで買い進めるか?ということである。 原油イールドカーブのコンタンゴ化の進行、石油在庫が増加する中での価格の高騰、その結果として現物市場と先物市場が十分に乖離し、現物を買うとともに先物を売って受け渡しをすることでリスクフリーの裁定機会が存在するという現状を鑑みるに、既にコモディティ投資残高はコモディティの市場流動性の限界に達しつつあるように見える。 このような状況においては、流動性の欠如は売買コストの増加として跳ね返ってくる。すなわち、さらに買い進むにあたっては高い値段での購入を余儀なくされ、後日なんらかの理由で一度に売り手仕舞いしたい場合には、ほかの要因が変わらないとしても、ポジションが既に巨大すぎるために流動性の不足から、逆に大きく下振れすることが明らかである。 流動性の低い市場に、市場規模に対して相対的に巨大すぎるポジションを保有することは、大きな流動性リスク(潜在的手仕舞いコスト)を負うこととなる。 第二の問題は、投資マネーの自重効果(リフレクション)とも言うべき、コンタンゴ化の進行によるパフォーマンスの悪化である。過大な買いが市場に入ることで、価格はフェアヴァリューから上方に乖離し、供給増を促し、需給が緩み、在庫が増える。 現物を必要としないために投資マネーに必ず売り手仕舞いされる期近物は現物の影響を受けやすく、先物は投資マネーの買いパワーの影響を受けやすい。結果としてコンタンゴ化が進行する。コンタンゴ化は、直接的にコモディティインデックスの運用利回りを悪化させる。年率15~25%のマイナスリターンはきつい。第一の問題点とも重複するが、さらに資金を入れること燉Z商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~で、さらにまたコンタンゴ化が進行する。 第三の問題。そもそもの投資の前提である「高パフォーマンスと無相関」の前提に対する疑問である。世界的利上げの流れを受けて、図13のように今年の5~6月に、新興株市場を中心に相場が下落した。その際にコモディティ、特に非鉄金属と貴金属相場が急落し、新興株市場との順相関関係を示した。図14に見るとおり、エネルギー市場はさほど下落せず、伝統的資産との相関は示さなかったが、メタル系コモディティの順相関は、過去35年データに対する疑問を持たせるものであった。 コモディティ投資が活発化した2003年以降、明らかにコモディティ投資の価格やイールドカーブに対する影響力が出てきており、明らかに市場が変化している。パフォーマンス分析において、こうした変化や自重効果(リフレクション)を勘案していかねばならないように思われる。 第四のポイントは、コモディティ投資の結果がポートフォリオ全体に与える影響を考えることである。コモディティ市場から見れば、過大な投資がなされることで価格が何倍にも高騰する。コモディティ市場の異常な高騰はインフレ懸念を喚起し、金利上昇を経て伝統的資産に対する悪影響が出る。とすれば、ポートフォリオ全体からすると、ほんの1%の投資でしかないコ影響力・重みを無視して、過去のデータに基づく机上の計算だけで投資パフォーマンスを判断するリスク、総合戦略としての潜在的問題である。MSCI Emerging Equity IndexMSCI World Equity IndexCRB IndexMSCI World Sovereign Bond120単位:ドルモディティ投資によって、残り99%の伝統的資産のパフォーマンスを“自ら”悪化させているということにはならないだろうか。かといって、ポートフォリオの15%程度までコモディティ投資を増やすことも現実的に不可能であるならば、1~5%程度の部分的な投資で果たしてポートフォリオ全体のリスク・リターンの改善は本当に果たせるのであろうか? 第一から第四の問題点まで、結局は同じことを言っているともいえる。自らの図1310011090出所:住友商事まとめ2005/12/302006/5/262006/3/172006/4/212006/5/192006/3/102006/2/102006/5/122006/3/312006/1/202006/1/132006/3/242006/2/172006/4/282006/4/142006/2/242006/1/272006/6/22006/5/52006/4/72006/3/32006/6/92006/2/32006/1/6年Performance in 1st Half of 2006 (2005 year end=100)単位:ドルGSCIサブセクター別パフォーマンス (2005年初=100)GSCI TRGSCI産業メタルTRGSCIエネルギーTRGSCI農作物TRGSCI貴金属TR*TR=トータルリターン2502302101901701501301109070502005年1月2005年2月2005年3月2005年5月2005年4月2005年6月2005年7月2005年8月2005年10月2005年11月2005年12月2006年1月2005年9月2006年3月2006年2月2006年5月2006年4月2006年6月出所:住友商事まとめ図14GSCIサブセクター別パフォーマンス(2005年初=100)7. コモディティ投資の新潮流 コンタンゴ化の進行により、原油投資のパフォーマンスが悪化したため、一時はエネルギー投資を手控え、アクティブ運用としてヘッジファンド経由でメタル系コモディティに投資するという動きが見られた。 パッシブ運用としてのコモディティインデックス一辺倒の投資スタイルから、コモディティへのエクスポージャーを持つという意味では同じであるとして、ヘッジファンドや仕組債を用いてのコモディティ市場でのアクティブ運用という流れが出てきている。 しかしながら、5~6月の新興株急落局面において、メタル系コモディティが新興株と同じ動きを示したこと、また、インフレ・シナリオにおいて原油価格が最も影響の大きいコモディティとして改めて注目されるようになったことで、エネルギー投資への89石油・天然ガスレビューAナリシス回帰の流れが出てきた。 その結果、コンタンゴによるリターンの悪化にどう対処するかがテーマとなった。 これに対応すべく、銀行等は新たな投資商品を導入するようになった。すなわち、コンタンゴ化が進んでしまっている期近や数カ月先物を対象とすることをあきらめ、より長期の、いまだバックワデーションメリットが残っている先物限月を投資対象とすることによって、問題を解決しようとするものである。 以下のニュースをご参照いただきたい。新投資商品導入で原油先物への投資拡大も、金属は軟化――ゴールドマン(2006年6月23日 Bloomberg 抜粋) ゴールドマン・サックスJBウェアは、銅などの金属相場が過去最高水準から下落したことを受け、原油やガス先物取引によるリターン(投資収益)の拡大を狙ったファンドによる商品指数への投資が増加するとの見通しを示した。 ゴールドマンの22日付リポートによると、ゴールドマン・サックス・グループとドイツ銀行が、エネルギー相場で利益を上げやすい新しい商品指数連動型投資商品の販売を開始する。株式や債券を上回るリターンを狙ったファンドによる商品指数や先物への投資が拡大している。ゴールドマンは、ファンドによる投資総額が4月時点で900億ドル(10兆4300億円)に達した可能性が高いとの見方を示した。 マルコム・サウスウッド氏らゴールドマンのアナリストは「新しい投資商品の導入により原油相場への投資機会が拡大し、資金の再配分が徐々に進むだろう」と指摘。「われわれの見方が正しければ、この動きにより、非鉄金属相場は向こう数カ月間にわたって一層軟化すると見られる」との見方を示した。 原油先物相場は、期近物から期先物にかけて順次高くなる順ざやとなっているため、原油相場への投資が減少している。ゴールドマンによると、順ざやの場合、納会を迎えた期先物を売り、次に納会を迎える限月を購入すると損失が出る。 アナリストらによると、ゴールドマンが新規に導入する商品指数連動型投資商品では、期近物より安い、受け渡し期日がかなり先の限月を購入することができる。ゴールドマンは、最近の金属相場下落は「主に」ヘッジファンドや商品トレーダーが投資を縮小していることが要因と見ている。 資産を分散するため商品に投資した年金基金は「本来、長期に投資する性質のファンドであるため、商品市場のファンダメンタルズ(需給関係)が軟調となっても資金を引き揚げる可能性は低い」とアナリストらは見ている。欧米投資銀が新商品指数、機敏に限月乗り換え、超先物を使用(2006年07月18日 日経金融新聞) 欧米の投資銀行が相次ぎ新たな商品指数の開発に乗り出した。構成品目の限月を随時乗り換えられるようにしたり、五年先の先物を使ったりするなど内容も多彩だ。多くの国際商品相場は期先ほど高い順ざやで推移、投資家にとって以前より利回りの確保が難しくなったことに対応する。株や債券の代替投資先として商品の位置づけが一段と高まりそうだ。 ドイツ銀行は五月下旬、構成商品の建玉(未決済残高)を期先に移す時期や回数を限定しない商品指数「DBLCI―OY」を開発した。「投資家にとって最適な利回りを確保できるタイミングで建玉を移す」(ドイツ証券アソシエイトのアンドリュー・スティーブス氏)システムだ。従来は原油なら一カ月、銅なら一年に一回と建玉を移す時期を決めていた。 UBSは六月中旬、ニューヨーク原油先物に投資する「UBS原油市場戦略指数」を開発した。主流の期近を使ったスタイルではなく五年先の限月を使う。「従来の商品指数より流動性は低いが、高いリターンが期待できる」という。メリルリンチも第二、第三限月を使い、建玉の移動もほぼ毎日行う商品指数を近く発表する予定だ。 各行が新指数の開発に取り組む背景には、順ざやによる運用利回り悪化が課題となっていることがあるようだ。 商品指数に連動する金融商品の場合、基本的には期近を買い建て、月初に手仕舞いして次の限月を買う。しかし主力の原油市場は現在、一年程度先まで順ざやが続く。従来の運用手法では、次の限月に乗り換えるたびに投資家が損失を被るリスクがある。指数が低下すると指数連動資産に影響が出るほか、運用会社から得る指数の使用料収入が減2006.9 Vol.40 No.590燉Z商品化する原油市場 ~投資マネーのインパクトと今後の見通し~る公算もある。 資産の代替投資先を探す年金基金も五月に金や銅など金属相場が調整局面に入った際には商品への投資を見合わせたが、機動的に資金を運用できるシステムを持つ指数が開発されれば積極投資に転じる可能性がある。 欧米投資銀行は、国内でも指数に絡んだファンド販売を積極的に展開する。ドイツ銀行グループのドイツ証券は六月、米運用会社ピムコと組んで商品指数連動型ファンドを国内の富裕層や機関投資家向けに売り出した。この指数は構成商品の過去五年間の平均価格をもとに割安・割高度合いを設定し、割高な商品ほど組み入れ比率を下げる同社独自のもの。「九―十月にも第二弾を販売したい」(アンドリュー氏)としている。  関連ニュースをさらにまとめたものが、以下の表3である。各社とも、コンタンゴを回避するための施策を織り込み、投資マネーのエネルギー市場回帰に対応しようとしている。 特筆すべきは、一気に5年先物にまで投資マネーを呼び込もうとするUBSの「Oilfield Strategy Index」である。海外の先物市場は、長期になるほど流動性が減少する傾向がある。例えば、NYMEX-WTI原油先物であれば、期近限月の取組高:25万枚程度、出来高:1日7万~10万枚であるのに対し、5年先物といえば、取組高:1万~2万枚、出来高:100~500枚程度でしかない。 こんな限月にまで、投資マネーを誘導するというインデックス商品が登場しているわけである。 流動性の低い先限月に、まとまった金額の投資マネーを誘導すると、結果として予想されることは、これまで以上に価格が上がりやすくなるということと、さらに期近と先物が乖離してコンタンゴ化が進むことである。 ともあれ、コンタンゴのデメリットを回避する形での資金流入の受け皿がつくられつつあり、エネルギー市場への投資マネーの流入を阻害する要因が減ったことは確かである。これによって、需給等のファンダメンタル要因にかかわらず、価格はさらに上昇する可能性が高い。表3コンタンゴ関連ニュースUBS(スイス)Diapason Commodities Management(スイス)Deutsche Bank(独)UBS(スイス)生物燃料に注目したコモディティインデックス導入を発表。対象品目はエタノールやバイオディーゼルの原料となるトウモロコシ(30%)、粗糖(29%)、小麦(14%)、菜種油(7%)、大豆油(7%)他構成商品のロールオーバー時期・回数を限定しない新商品指数「DBLCI-OY」導入を発表UBS Oilfield Strategy Index導入を発表。米国軽質原油の5年先物を買い付け。「過去データによると、従来型のコモディティインデックスよりボラティリティ(価格変動率)は低い。流動性の問題も生じない」ゴールドマンサックスJBウェア(米) エネルギー相場で利益を上げやすい新しい商品指数連動型投資商品の販売開始。「期近物3月9日5月下旬6月19日6月23日6月23日メリルリンチ(米)6月27日リーマンブラザーズ(米)7月18日Dow Jones and Co.(米)AIG (米)より安い、受渡期日がかなり先の限月を購入することができる」「Merrill Lynch Commodity index eXtra」組成を発表。対象品目は18商品で、世界経済への影響度に応じて比率を決定。先物のロールオーバーは納会直前の数営業日に限定せず、ほぼ毎日断続的に行う7月3日付で新コモディティインデックス(the Lehman Brothers Commodity Index)組成を発表。 対象品目はエネルギー、金属、農産物、畜産品などの計20商品。2006年初時点での組み入れ比率はエネルギー56.2%、金属22.8%、農産物18.2%、畜産品2.8%。組み入れ比率は毎年見直し。今後インデックス先物導入も計画中新バージョンのDJ/AIGコモディティインデックス導入を発表。投資対象を従来の第1限月のみから第3限月までに拡大出所:Reuters/Bloomberg/日経金融新聞:住友商事まとめ8. 今後の見通し 昨年からコモディティ投資を検討している、ロンドン年金基金局(LPFA)や米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は、今年3月の時点ではまだコモディティ投資を決定しておらず、引き続き検討中であるという。また、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も慎重姿勢を崩していない。 これら大手年金基金が本格的にコモディティ投資に向かうかどうかが大きなポイントではあるが、特に表3のような新規インデックス商品がうまくスタートすれば、また、ますますインフレ懸念が高まって、コモディティを持たざるリスクが意識されるようになれば、年金系のコモディティ投資は現状の10兆円が、数年後には20兆~30兆円91石油・天然ガスレビューニいう規模になる可能性は十分にある。 当然、年金系のコモディティ投資が増える過程では、今まで以上にファンダメンタルを無視した価格上昇が継続的に発生するであろう。また、現物と先物価格の乖離が深刻化し、イールドカーブはスーパーコンタンゴとなり、さらに乖離が進めば、あたかも別商品のごとく異なった価格動向を示す可能性すらある。 大手年金がさらに参入するかどうか次第で、時期と規模は不確定だが、いずれかの段階で(今の10兆円が15兆円になるのか、あるいは20兆円・30兆円までいくのかは分からないが)、年金系の投資マネー流入が止まる段階で、流入が止まるだけで(売り戻さなくても)、ファンダメンタル・フェアヴァリューに価格が回帰する動き、すなわち大幅な価格修正(下げ)の発生が予想される。アナリシス そうした局面においても、その投資目的・スタイルからして、年金系の投資マネーはコモディティ市場から一気に離脱することはないだろうと考える。しかし万一、これらが手仕舞いしようとするならば、流動性の欠如から、コモディティ市場は相当な下落と大損失に見舞われ、大混乱するものと考える。執筆者紹介佐野 慶一(さの けいいち)1965年、東京都生まれ。吉祥寺在住。最終学歴:早稲田大学政治経済学部卒職歴:1988年住友商事入社(92~95年、米国ニューヨーク駐在)。貴金属・非鉄・エネルギー・株・債券・為替の各市場のトレードを歴任。2006年より現職趣味:下手なゴルフ(2006年平均スコア98)最近読んで面白かった本:昭和史(半藤一利)子供のときになりたかった職業:宇宙・地球物理学者(カール・セーガン、竹内均先生)2006.9 Vol.40 No.592
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2006/09/20 [ 2006年09月号 ] 佐野 慶一
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