ページ番号1006245 更新日 平成30年3月5日

インドネシアの LNG とガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か

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レポートID 1006245
作成日 2006-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC石油・天然ガス調査グループsakamoto-shigeki@jogmec.go.jp坂本 茂樹インドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か インドネシアのガス政策が揺れている。強まる国内市場へのガス供給圧力に対して、LNG輸出量を削減してガスを国内市場に振り向ける政策が取りざたされている。しかし、ガス生産地域から需要地への輸送パイプラインもまだ整備されておらず、早急に国内市場向けガス供給を増やすことは不可能である。 このガス供給問題が起こった直接の原因は、数年来の原油価格高騰によって、従来の安価な石油製品供給の継続が不可能になったことであった。しかし、根本的な原因は、石油ガス上流分野の投資環境が悪いため必要な投資を呼び込めず、石油・ガスの生産および新規発見が低迷していることである。さらにその背景に、経済の不調とエネルギー輸出に反対を唱える資源ナショナリズム的風潮の高まり等が考えられる。 本稿では、インドネシアの天然ガスを中心とするエネルギー産業不振の現況を振り返って、政権指導者がLNG輸出中止・削減を唱えるに至ったガス産業の現状を概説する。そして、ガス産業をこのような状況に至らせた経済・社会的背景を掘り起こし、その活性化にはどんな施策を必要とするのか、考察を試みる。1. 石油ガス産業の現状:問題はどのように顕在化したか 原油価格の高止まりが恒常化してから、インドネシアのエネルギー産業が抱えるさまざまな矛盾が顕在化し、石油ガス産業の不振が続いている。インドネシアの石油ガス上流事業への投資は、1990年代半ばから低迷傾向にあったが、2001年11月の石油ガス法改訂以後、後述するように法制運用上の混乱によって投資環境の悪化が表面化した。2004年10月に就任したユドヨノ大統領は、石油製品価格の値上げなど不人気な政策も断行して石油ガス産業分野の回復を図ろうとしている。 インドネシアの原油生産量は1990年代半ばから減少に転じ、いまだに回復の兆しが見えない。アジアの主要産油国のなかで、インドネシアのみが一貫して原油生産量を減少させている(図1)。2006年上期に90万b/d強程度で推移していた原油生産量は、7月に90万b/dを下回り、8~9月は86万~88万b/dと35年ぶりの低水準になった。12万~13万b/dのコンデンセートを合わせた液分の合計生産量は、かろうじて100万b/dを上回る程度の水準にとどまっている。 期待されている新規油田開発案件の動向は、一進一退である。エクソンモービルとプルタミナとの間で事業形態をめぐる確執が続いていたジャワ島陸域のチェプ(Cepu)鉱区開発は、2006年3月に合意がなされて共同操業契約(JOA)を締結し、開発移行に向けた準備作業が順調に進展している。同鉱区には、3億~5億バレルの石油埋蔵量があるものと期待されている。 一方、もう一つの大型開発案件であるサントスのジュルク(Jeruk)油田開発は、評価作業の過程で、可採埋蔵量が当初の1億7,000万バレルから1億JerukCepu既存油田生産千b/d1,6001,4001,2001,0008006004002000中国インドネシアインドマレーシアベトナム年2005200420032002200120001999199819971996199519941993千b/d4,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005000出所:BP統計、2006年6月1995年出所:実績;BP統計、2006年;実勢、2007年以降;コンサルタント見通199820042007しを修正200120102013図1アジア主要産油国の石油生産量推移(原油+コンデンセート)図2インドネシアの原油・コンデンセートの生産量見通し15石油・天然ガスレビューAナリシスその他ガス石炭石油その他 20%その他 20%ガス 5%ガス 5%石炭 15%石炭 15%石油 60%石油 60%石油 60%石油 60%その他 30%その他 30%ガス 10%ガス 10%石炭 30%石炭 30%石油 30%石油 30%石油 30%石油 30%20042015年%1009080706050403020100生産量消費量年2005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990千b/d1,8001,6001,4001,2001,0008006004002000出所:BP統計、2006年6月図3インドネシアの石油生産・消費量推移図4インドネシアの国家エネルギー政策(2005年)代わりに国産の石炭と天燃ガスの利用拡大を図ることで、エネルギーの消費構造を変えようとしてきた。原油価格高騰が続いていた2005年、政府は2015年までに原油消費比率を半減させ、代わりにガス、石炭消費を増やす政策を推進する方針を明らかにした。 具体的にはバクリー経済相が2005年7月に、2004年時点で全エネルギー消費の60%を占めた石油比率を30%に削減し、それぞれ5%、15%であったガス、石炭比率を倍増させる計画を発表した(図4)。また2005年からエネルギー消費を年率20%ずつ減少させるエネルギー消費削減策を考案するとした。 しかし、エネルギー消費構造の転換は、石油生産の回復と同様に難しく、短期間での成果は表れていない。事業が図6の計画に沿って順次立ち上がると想定していた。しかし、2006年時点で、BlockA(北スマトラ)、Sapi、Gendalo(カリマンタン東部沖合)といった事業は既に数年間の先送りになっており、計画全体に大幅な遅れを生じている。(2)政府のガス基本政策 インドネシア政府は1999年に、2006.11 Vol.40 No.616すうい勢せつくのを待たねばならない。 一方、人口と経済規模の拡大に伴って、国内石油需要は順調に伸び続けており、2005年には需要が石油生産量を上回って、石油のネット輸入国になった(図3)。今後の石油需給は、ネット輸入量がさらに拡大する趨にある。人口約2億2,000万人のインドネシアは、東南アジアでは群を抜いて大規模な経済圏であり、将来のエネルギー需要も拡大していくものと見られている。 短期間で石油生産を回復させる手だてはない。一方、原油価格高騰とともに原油輸入額は増加する。さらに、十分な石油精製能力を持たないインドネシアは、石油製品の輸入額も膨らみ続けており、国庫負担が増大している。 政府は従来、石油消費を削減させて、バレルへと下方修正された。コンサルタントの原油生産量見通し(コンデンセートを含む)に、現時点で想定されるチェプ鉱区およびジュルク油田の生産量を加えた生産見通しを図2に示す。 既発見2油田の生産を見込むだけでは、現状の石油生産規模(100万b/d強)を2012年ごろまで維持するのがせいぜいという状況である。石油生産を本格的に回復基調に戻すためには、探鉱による新規油田の発見が求められる。政府は石油生産量の回復を目指して、石油ガスの探鉱・開発にかかわる投資環境改善の諸策を打ち出してはきたものの、いまだに具体的な成果が表れていない(3章?①を参照)。 石油生産の回復には、今後、投資環境改善策が新規油田発見の成果に結びめ処ど 地域別のガス埋蔵量分布の想定は、図5のとおりである。CO2含有量が多く具体的なガス田開発の目が立っていないナツナ(Natuna)Dアルファ・ガス田を別にして、ガス資源はカリマンタン島東部沖合、スマトラ島中・南部、パプア州北西部(タングーLNGが立地)および北西・東部ジャワの各地に幅広く賦存していることが分かる。 BPMigasは2004年当時、新規ガス(1) インドネシア政府の天燃ガス需給の見方 インドネシアのエネルギー政策当局であるBPMigas*1は、2004年時点のガス埋蔵量を次のように想定していた。94.8Tcf 確認埋蔵量(proven) 発見可能埋蔵量(potential)87.7Tcf    合計182.5Tcf*1:インドネシア政府組織。英国のBP社とは別の組織である。2. インドネシア・ガス産業の現状ATUNANATUNA54.20ACEH(NAD)ACEH(NAD)8.67NORTHNORTHSUMATRASUMATRA0.78CENTRALCENTRALSUMATRASUMATRA8.215N05S24.47SOUTHSOUTHSUMATRASUMATRA6.0410Indian OceanWEST JAVAWEST JAVA0500Km1000TERBUKTI=94.78TCFIRIAN JAYAIRIAN JAYA(PAPUA)(PAPUA)23.92EASTEASTKALIMANTANKALIMANTAN47.394.36SOUTHSOUTHSULAWESISULAWESI4.46EAST JAVAEAST JAVA95 E105出所:BPMigasホームページ100110115120125130135図5インドネシアの地域別ガス埋蔵量の分布出所:BPMigasホームページ図6新規のガス事業計画(随伴ガスを含む)年年た。人口増加や都市部への人口集中が進展するなかで、増加する電力需要に供給が追いつかず、しばしば停電が発生して社会不安の一因となり、不満がくすぶっていた。折しも資源ナショナリズム的な風潮も拡大していた。 電力不足等の社会的不満が「国家の図7インドネシア ガス生産・消費量の推移2005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990出所:BP統計、2006年6月bcf/d生産量消費量012345678こうしたなかで、国内エネルギー供給不足が表面化し、ガス供給のあり方が問題化することとなった。しかしガス需要が増えたといっても、未開発の中規模ガス田からすぐさまガスを供給できるわけではない。 ASEANの大国であるインドネシアだが、その経済運営の成果は乏しく、経済発展では先行する近隣ASEAN諸国に大きく後れをとっている。国産ガス資源利用促進の政策も、価格政策を含めて実際の運用がおぼつかず、輸送インフラ建設も進まない状況であっDomesticGasIncentive(DGI、ガス利用促進政策)を発表し、産業用および発電用に対する国産ガスの使用促進を図ろうとしてきた。大規模ガス田は輸出LNG向けに利用する一方で、貴重な石油資源を温存するために中小規模ガス田資源の国内利用を促し、ガス消費を促進するためにパイプラインなど輸送インフラの整備を促進させる方針であった。 しかし、補助金で安く設定された石油製品の需要が堅調であったのに対して、ガスのインフラ整備は計画どおりに進展せず、ガス需要はさほど伸びなかった。また、ガス生産に対するインセンティブも有効に機能しなかった。 ガスの生産および消費量の推移を図7に示す。(3)ガスの供給方針が問題化した背景 実行が伴わないエネルギー政策の矛盾が表面化したのは、数年来の原油高価格がついに1バレル70ドル台に至り、インドネシア経済が負担に耐えきれなくなった2006年であった。 インドネシアでは石油消費構造の転換がなかなか進展せず、依然として石油依存度が高かった。2005年9月、ユドヨノ政権は石油製品への補助金削減を目的に、石油製品の大幅値上げに踏み切った。この政策自体は奏功して、大きな反対運動もなく石油需要抑制効果をもたらした。一方、産業用のエネルギー需要の一部は、値上がりした石油製品に代わってガス、石炭などほかのエネルギー源に向かったが、その供給体制はいまだ整っていなかった。 インドネシアのガス生産の約50%は輸出用LNG向けである。しかし、アルンLNGに原料ガスを供給するエクソンモービルのアルン・ガス田は既に生産減退が進行している。また、ガス田や輸送設備の不具合でボンタンLNGは生産が不調で、2004年以降、契約販売量未達の状態が続いている。17石油・天然ガスレビューインドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要かKス資源を輸出によって外資に搾取されるのではなく、国民の使用に供せ」とのスローガンに容易につながり、既存の輸出LNG向け大規模ガス田を手っ取り早く国内市場向け供給に回せとの発想が強まったものと考えられる。(4) ガス供給方針をめぐる2006年の政府要人発言 2006年3月末、ユドヨノ大統領は、国内市場向けのガス供給量を増加させるためにLNG輸出を削減すると発表した。2010~11年に期限が来るLNG契約の更改交渉が2005年末から中断されており、LNG輸出をめぐる懸念は高まっていた。しかし大統領自らLNG輸出削減に言及したのは初めてであり、LNG顧客である日本、韓国および台湾需要家に衝撃が走った。伝統的にインドネシアLNGの顧客であった東アジアの需要家には、同国のLNG供給体制に対する不信感が強まった。 インドネシアのガス産業界は、カリマンタン~ジャワ島ガス・パイプラインが計画どおりに進展して、国内市場向けガス供給が開始されれば、ボンタンLNG向けの原料ガス供給力はほぼ半減するものと考えている。 2006年5月下旬、訪日を前にしたカラ副大統領は、インドネシアの国内ガス需要を満たすために、既存のLNG契約は履行するものの、契約延長は難しいとして、ユドヨノ大統領が3月に行った発言を追認した。副大統領は、ガス不足からジャカルタ市内の電力供給も滞っている現状を説明し、当面はガスの国内供給を優先し、余剰生産が発生した場合にのみ輸出に回すという考えを明らかにした。 2006年7月末、プルノモ・エネルギー鉱物相が訪日して、主要なLNG顧客の電力、ガス企業を訪問し、今後のLNG輸出方針について協議した。その際、2006年末までに内需と輸出向けのガス供給力を慎重に見極め、日本側と輸出継続に向けた交渉の再開を図るとの意向を明らかにした。また、ガス増産体制の構築を急ぎ、現行のLNG輸出契約が切れる2010年以降も対日輸出を継続する意向を示唆した。 同鉱物相は、ガス供給は政治問題にも絡むために慎重な決定が必要であ3. インドネシアのガス供給力を強化するためにアナリシスり、ある程度の検討期間を要するとして、LNG需要家の理解を求めた。内需対応と輸出を両立させるための具体策については、日本側の協力を得て国内各地の豊富な天然ガスや石炭など代替資源を開発するという考えを示した。なお、日本の関係先に対して、インドネシアにLNG輸出を求めるだけではなく、長期的視野からインドネシアのガス増産を図るために、ガス事業への投資を要請した。 このように、政権上層部による「LNG輸出停止、または削減」発言は、長年インドネシアをLNGの主要供給先としてきた日本、韓国、台湾の東アジア・ガス需要家に大きな懸念をもたらした。2006年9月末時点でインドネシアのガス供給方針はまだ定まっておらず、将来の供給可能量を調査している段階である。政府は、将来のガス供給力を把握した後に、2006年末以降に輸出LNG向けを含めたガス供給政策を明らかにするとしている。ジを発表し、深海域、遠隔地、ガス開発にかかわる条件を改善している。2005年に事業者から投資環境改善が求められていた際に発表された探鉱鉱区第5次入札ラウンド第1フェーズの契約条件(対象26鉱区平均)と標準条件との比較は表1のとおりである。 第5次入札ラウンド第1フェーズ条表1探鉱開発の経済条件改善事例(2005年第5次入札ラウンド第1フェーズ条件、対象26鉱区平均) ①(上流分野投資環境の整備)に関しては、この数年来、インドネシアの上流部門事業者から頻繁に、非好意的標準条件第5次入札ラウンド第1フェーズ条件改善幅(コントラクター追加分)税引き後利益配分比率(政府:コントラクター)石油85:1572:28+13%ガス70:3061:39+9%2006.11 Vol.40 No.618な事業環境に対する苦情と投資環境改善の要請が続いている。インドネシアPS契約の探鉱・開発に関する標準的な経済条件は、税引き後でコントラクター取り分が15%のみと、産油国の中で最も厳しい範に入る。しかしインドネシア政府は、1990年代以降、数回にわたってインセンティブ・パッケー疇ちはんゅう(1) ガス供給力を増強させるための要素インドネシアのガス供給力を増強させるための要件としては、次の3点が考えられる。①石油・ガス上流分野に対する投資環境の整備・改善②市場価格に基づく価格政策の実施(管理価格制度の撤廃)③ガス・パイプラインなど輸送インフラの整備盾ェ多く、これまでよりさらに多額の投資を要する。スマトラ島からジャワ島へのガス・パイプラインは、2005年10月にやっと建設が決まり、2006年末~2007年初めに完成の運びとなった。しかし、本格的にガス需要を喚起するためには、配管の整備などさらにインフラ投資が必要となる。 こうした状況から、長く主要な外貨獲得手段の一つであった輸出用LNG向けガス供給に目が向けられるようになった。現時点で供給可能なガス資源量の単純なつじつま合わせで言えば、ガスの国内供給量が不足なら輸出用LNG向けガスを国内消費に振り向ければよいという言い方は可能である。 しかし既存のアルン(スマトラ島)、ボンタン(カリマンタン島)からジャワ島へのパイプラインはなく、アルン・ガス田は既に枯渇間近で生産減退が進行している。勢い、世界で最大規模のLNG設備の一つであるボンタンLNGに目が向けられ、ジャワ島への長距離パイプライン建設による国内市場向けガス供給が議論されるようになった。カリマンタン島の豊富なガス資源を国内消費に供することも需給対策の一つであるに違いない。 しかし、LNG輸出にかかわる問題は、国際商取引上の信用の観点から、もっと慎重に議論されるべきであった。商取引の信頼をいったん失うと、その回復は容易ではない。ところが、インドネシアにはまず国内向け発言を優先せざるを得ない状況も確かにある。(2) インドネシアが国内向け発言を優先する理由 国内向け発言を優先せざるを得ないインドネシアの事情として、次の要因が考えられる。①インドネシアの政治、社会体制の脆ぜいさ(未成熟な社会基盤)②資源ナショナリズムの高まり③価格自由化導入の難しさゃく弱じ件(平均)のコントラクター取得率は、標準条件と比べて石油で13%、ガスで9%改善されている。新規公開鉱区は、深海や条件の悪い鉱区を多く含むために単純な比較はできないが、政府が契約条件に対して何らかの対策を講じてきたことは事実である。 しかしながら、2005年11月に行ったインドネシアで上流事業を実施する石油企業への聞き取りでは、インドネシアの探鉱ポテンシャルに期待する発言はあっても、投資環境が改善されたと認識する返答はほとんどなかった。 実感できるほどの契約条件の改善は実施されておらず、従来から評判の悪い諸手続きの煩雑さ・遅さに大きな改善はなされていないものと考えられる。特に、ガス輸送インフラの未整備も相まって、中小規模ガス田開発を採算水準に至らせるだけの十分なインセンティブは取られていない。 ②(市場価格導入)に関して、インドネシアは徐々にではあるが、エネルギーの市場価格化を進めつつある。産業用のガス価格は既に自由化されていると言われ、ガス公社PGNは2005年10月に、当時のガス売り渡し価格4.5ドル/MMBtuを2006年に5ドル/MMBtu、2007年には5.5ドル/MMBtuへと値上げすると発表した。しかし石油製品、特に民生用の灯油、LPGは補助金で安く設定されているため、エネルギー末端需要はまず石油製品に向かい、ガス需要の促進はなされていない。 エネルギー価格体系は、ガスと石油製品の双方を考慮して、包括的に実施する必要がある。①で記した探鉱・開発インセンティブが不十分なこともあって、これまで政府が政策に掲げてきたガス需要喚起策は、ほとんど実効を上げなかったと言える。 2005年9月の石油製品大幅値上げ前には、安価な石油製品供給が可能であってガス需要が喚起されていなかったため、③に記した広域ガス・パイプライン建設は後回しにされてきた。 インドネシアの最大エネルギー消費地域は、総人口の約55%が集中し、また主要産業が集積して国全体の経済活動の約70%を占めるジャワ島である。しかし、ジャワ島へのガス供給は北西ジャワ、東部ジャワなど近隣ガス田からのみであって、スマトラ島、カリマンタン島など大規模ガス生産地域からのガス輸送設備はなかった。スマトラ島、カリマンタン島の生産ガスは、輸出用LNG向け、油田の2次回収圧入用を別にすると、少量が地元の肥料工場で使われる程度で、一般国民のエネルギー消費に供される機会は限られていた。 このように、インドネシアのエネルギー政策は、石油の温存と国内のガス利用の方針が唱えられながらも、ほとんど実行されずに、補助金付きで安価な石油製品が供給されるといういびつな状態であった。 原油価格が妥当な範囲にとどまっている間は、それでもよかった。しかし、原油高価格が定着した今、これまでのエネルギー政策では国家財政が耐えられる限界を超えるため、政府は大胆な石油製品の補助金削減に踏み切り、財政立て直しに必死である。 値上がりした石油に代わって、エネルギー需要の一部は相対的に安価になったガスに向かう。しかしガス供給を急に増やせるわけではない。未開発のまま放置された中小ガス田を開発して生産に持ち込むには、投資資金と数年の開発期間を要する。そもそも石油上流企業がそうした投資を正当化できるだけの投資環境がいまだに整っていない。また、ガス資源の多くは大消費地のジャワ島周辺ではなく、スマトラ、カリマンタン島および遠隔地のパプア州にある。未開発ガス資産には、中小規模ガス田が多く、また遠隔地、沖合深海域にあるなど開発移行に不利な条19石油・天然ガスレビューインドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か006.11 Vol.40 No.620アナリシス表2石油ガス開発投資にかかる政治リスク比較タイマレーシアインドネシア政治リスク分類中リスク国中リスク国高リスク国同左順位(対象124カ国中)上から40位上から65位上から117位(下から7位)国会議員のなかにも資源ナショナリズムに依拠する発想、行動がしばしば見受けられる。 たとえば「ガス生産量の少なくとも25%を国内市場に供給する」法案の国会提出が予定されている。この法案はもともと、2001年に改定された石油ガス法第22条1項「産出した石油・ガスの最大25%を国内需要に割り当てる」との規定に対して憲法裁判所が、25%の上限設定は「天然資源はインドネシア国民の利益のために供されるべきである」との憲法の規定に反するとして、2004年12月に違憲の判決を下したことに端を発している。 エネルギー産業部門、または経済全般の不振がナショナリズム的な風潮を生み出している局面もある。原油生産不振の原因は、石油上流部門への投資不足を招いたエネルギー政策にあるものと考えられる。しかし、国内では一般に、インドネシアの石油資源が国民経済の発展に寄与せずに輸出され、無駄に浪費されたからだと、広く認識されているように見受けられる。そして昨今は、天然ガスに関しても、国内産業の育成に使われることなしに、むざむざ輸出されて(外資に)浪費されてはならない、という発想が広く受け入れられているように思われる。 ③エネルギー価格自由化の難しさ 石油製品の補助金制度を廃止して価格を完全自由化するというのは、想像を絶するほど難しい。1970年代以降、既に進歩した経済体制下にあった日本でも、石油製品価格の自由化を実現させるまでには長い時間がかかった。インドネシアは1990年代末の通貨・経済危機の際に、IMFやアジア開発銀行に対して価格自由化を公約した。しかし、現政権にとってこの公約達成は、不安定なインドネシア社会の政治・社会的圧力のなかできわどいバランスを取りながら綱渡りをするに等しい。 政府のエネルギー部門担当官は、石油製品価格統制と補助金が国内石油需要を不必要に拡大させることを熟知している。しかし、政策の実行にあたっては、少なくとも政権が転覆しない程度に、価格自由化と補助金削減を慎重かつ段階的に進めざるを得ない。それにはきわどいバランス感覚が必要とされる。政府のエネルギー組織改革、国内市場向けのガス生産比率の強制的な設定、LNG設備拡張のための将来の投資等は、すべて価格自由化の完全実施によって成否が決まる。インドネシアがIMFに対して公約した2007年までの石油、ガス、電力等の国内エネルギー価格の完全自由化達成は、今となってはほとんど実現不可能である。(3)LNG輸出か国内供給かをめぐる議論 インドネシアのガス政策で、国内で議論になっているのは、将来のガス開発を国内市場向け供給に主眼を置くべきか、これまでと同様にLNG輸出を目的とすべきか、ということである。当面、インドネシアは石油純輸入国であり続けることは必至であることから、豊富な天然ガスを用いれば国内エネルギー需給を緩和させることができるものと認識されている。 しかし、国内供給に向けるガス価格を国際価格に引き上げる保証なしに生産ガスの一定量を国内供給に割り振ろうとすれば、投資家はガス田開発を縮 ①(社会の脆弱さ、高いカントリーリスク)に関して、インドネシアは、ASEAN主要国のなかでは、政治、社会基盤が脆弱である。ユドヨノ政権は国民の支持率が比較的高く、相対的に安定度も高い。しかし、1990年代半ばのスハルト政権末期における社会の混乱ぶりは目を覆うばかりだったし、スハルト後の数代にわたる後継政権はいずれも短命で安定性に欠けた。インドわいネシアは、賄など政府部門の不透明性において東南アジアで最悪の部類に入る。昨今、エネルギー価格高騰と電力供給不足で国民の生活への不満が高じてデモが頻発するなど、社会は再び不穏な状態にある。 JOGMEC内の、石油・天然ガス開発投資にかかわる2005年度政治カントリーリスクのランキングによると、インドネシアは対象124カ国中で最下位から8番目に位置する高リスク国にあたる。ちなみに、経済政策に成功した近隣のタイ、マレーシアはいずれも良好な社会の安定度を保ち、中リスク国に位置している。 政府指導部が経済合理性のある政策を取ろうとしても、その実行にあたっては、政治、社会的圧力のせめぎ合いのなかで、政権崩壊を回避するためにある程度の妥協を余儀なくされるというのが実態である。賂ろ ②資源ナショナリズムの高まり この数年来、インドネシアでは資源ナショナリズムの高まりを反映する出来事が多く発生している。この資源ナショナリズムは、石油・ガスの輸出は外国の経済発展の助けになっているが、自国の経済発展にはほとんど寄与していないという発想と、また本来、石油輸出国が享受すべき収入機会をインドネシアがみすみす逃しているという発想に基づいている。憲法裁判所のような司法機関にはもともと資源ナショナリズム的な考えが根強く、またNG事業者に対して埋蔵量の10~20%の州内供給を義務化しようとしている。 この西豪州政府の提案に対して、ガス事業者と自由経済体制を標榜する連邦政府が反対している。 2006年9月に連邦政府と各州政府エネルギー閣僚からなる作業部会設立が合意され、今後は同作業部会が豪州のガス供給マスタープランを検討することになっている。 しかし、西豪州政府は、州内ガス供給にかかわる何らかの枠組み作成に対して、強い決意で臨む意向であると伝えられている。 このように、資源をめぐる問題は、資源ナショナリズム的風潮の高まりとともに、取り扱いが非常に難しくなっている。しかし、長期契約に基づく国際LNG商取引に際しては、一時の短期的視野からの判断で信用を失うと、取り返しのつかないことになる。こと、ガス輸出に関しては、政府部門の果たすべき機能が重要なのである。となく自ら国内供給事業への投資を行っている。 インドネシアもカタールの例を見習うべきであろうが、ジャカルタで高まりつつある資源ナショナリズムの動勢を考えると、同様の手法を採用しようとしても難しいものと思われる。なお、LNG輸出と国内市場向けガス供給をめぐっては、アジア太平洋の他のLNG輸出国においても、程度の差はあれ、同様の問題が発生している。 マレーシアでは、国内市場向けガス価格が安価に設定されているために、ガスの国際市場価格が高騰しても国内の燃料転換が進まない。このため、ガスを近隣から輸入して、補助金付きで販売するという現象が発生している。 西豪州政府は、同州が豪州全体の80%に相当する113Tcfのガス資産を有するにもかかわらず、LNG輸出中心の現ガス事業計画に委ねると将来の州内ガス供給が不足するとして、  小するか、ガス事業から撤退する可能性が高い。インドネシア政府は投資企業に対して、事業採算性を維持しながらガスの国内供給を促すために、ガスの国内供給価格も国際市場価格を適用することを速やかに定めるべきである。一方、逆の観点から言えば、インドネシアのガス輸出にかかわっている企業は、同国の経済ナショナリズムの動向と何らかのガス国内供給の必要性を認識せざるを得ないと考えられる。 ところで、新興のLNG大国カタールは、外国企業が国営石油企業カタール石油との間でPS契約を締結してガス事業を実施することで利益が上がるような枠組みを設定している。 カタール政府は、将来の国内市場向けにガスを割り振ることはしていないが、国内向けガス供給を含むガス事業全体の利益水準が確保されているために、ガス事業投資家の外国企業(エクソンモービル、コノコフィリップス、シェル、トタール)は、強制されるこインドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か4. ガス輸出に際する政府機能が果たす役割の重要性(産油国のガバナビリティー) 本章では、DavidG.Victorほか著“NaturalGasandGeopolitics”(CambridgeUniversityPress2006)から引用する。 著者は、ガス資源の輸出事業において、資源国が投資家を呼び込み、需要家を獲得するに際して、政府部門の果たす投資環境の整備(経済面および政治・外交面)がいかに重要であるかを説く。 ガス資源開発は、ほかのエネルギー源と比べて多額の初期設備投資と長いリードタイムを要することから、もともと事業化が難しい。特に1970~80年代は石油全盛時代であり、ガス資源は発見されても見向きもされなかったから、現在に比べてさらに事業化が難しかった。 この著書が例示するガス事業7ケース(LNG事業3件を含む)のなかから、LNG事業3件(インドネシア・アルン、カタール、トリニダード・トバゴ)と未実現のパイプライン・ガス事業(トルクメニスタン)を取り上げて概説する。れば、多くの競合事業、競合需要があり得たろうが、当時は事業化の決断とタイミングが重要であった。アルンLNG事業化の決定後、日本の官民挙げた事業推進体制とインドネシアとの協調体制は順調に機能した。(1)インドネシア・アルン アルンのLNG事業化が決まった1970年代、東アジアでLNG輸入の必要なガス需要が存在していたのは日本だけであり、米国カリフォルニア州への輸出契約が成立しなかった時点で日本向けLNG事業化が決まった。アルン、ボンタン事業ともに、当時インドネシアでは国内ガス・パイプライン建設の計画はなく、近隣諸国にも目ぼしいガス需要はなかった。1990年代であ(2)トルクメニスタン エネルギー資源に富むが、国際市場向けの輸出ルートのない内陸国トルクメニスタンが、天然ガスの開発に失敗したのは、指導者がリーダーシップを欠き、投資家に魅力的な投資条件を提示できず、国境付近の紛争に絡むロシア/米国の地政学的争いに巻き込まれたこと等が考えられる。 政府部門のパフォーマンスを見ると、トルクメニスタンのニヤゾフ政権21石油・天然ガスレビューAナリシスのためにスペインとの政治的関係に配慮した。 そしてさらに重要な要素は、資源国政府が一貫してLNG事業化を支援し、投資家を十分安心させるだけの投資環境を設定したことである。資源量に富むベネズエラは外資に劣悪な条件しか準備せず、いまだにLNG事業は成立していない。 このように、ガス事業、特に長いリードタイムと巨額投資を要するLNG事業を成立させるためには、資源国政府が投資行動を呼び込めるだけの環境を設定することが必須条件である。 米国、豪州、ノルウェーを除くと、有望なガス資源国のなかで、自らの資金、技術でLNG事業を立ち上げることができる国は存在しない。それにもかかわらず、外資の導入を疎んじて、いまだLNG事業を実現できない資源国が少なくない。彼らは、貴重な国家資源をむざむざ死蔵し、いたずらに時間を浪費しているのである。 インドネシアは、かつて投資家、消費国との協力でLNG事業を立ち上げ、長期間LNG輸出大国として君臨してきた。その資産と伝統を自ら葬り去るべきではない。え、カタールガス事業は、カタール石油と米仏日の共同事業として推進された。特に、米国企業としてのモービルのプレゼンスが、カタールに治安上の大きな安心感を与えた。米国は湾岸戦争の期間、カタールを含む湾岸諸国に軍隊を駐留させた。 カタール政府はモービルに投資インセンティブを与え、ハマド首長は湾岸戦争を通じて、米国との安全保障上のつながりを強化した。LNG輸入先を多様化しようとしていた日本商社は、カタールと米国との緊密な関係に治安上の安心感を得て、販売、資金調達、液化設備建設など、従来から得意とするLNG事業化のノウハウを駆使してLNG事業成立を助けた。 このように、カタール政府の事業化への強いイニシアティブと対米協調政策が、結果的に投資家の信頼を得て、LNG事業を成功に導いた。(4) トリニダード・トバゴ(アトランティックLNG) トリニダード・トバゴのアトランティックLNGプロジェクトの検討当時、豊富なガス資源を持つベネズエラとナイジェリアが強力な競合相手であった。しかし、トリニダード・トバゴは当初、身の丈にあった1トレーンのLNG事業化を進め、販路の多様化ゅ塵じ守しは、事業パートナーとしてはまことに信頼できない相手であり、投資条件は劣悪で、投資家を保護しようとする意みん識は微もなかった。ニヤゾフ後継政権の見通しは皆目見当がつかず、後継じゅん政権がニヤゾフの定めた条件を遵する保証もない。 トルクメニスタンが地理的に不利な条件を背負っていたのは不幸であったが、政権が投資環境整備の意欲に乏しかったこの国は、いまだ独自のガス輸出ルートを実現させていない。(3)カタール 1971年のNorthFieldガス田発見から1997年のLNG輸出開始までに、26年という年月がかかった。1970年代の湾岸地域では石油輸出のみが注目され、LNG事業化はほとんど顧みられなかった。LNG事業は、一歩間違えればカタールを債務国に転落させる大きなリスクを抱えていた。1980年代のイラン・イラク戦争、1990年代初期の湾岸戦争は、湾岸地域からのLNG輸出のリスクを増大させた。1992年にキャッシュ不足に悩むBPがLNG事業採算に見切りをつけて撤退したのも痛手であった。 しかし、モービルの本事業への強いコミットが他パートナー(トタール、丸紅、三井物産)に十分な安心感を与2006.11 Vol.40 No.622駕が消費国の米国をはじめとして、ガス供給に占めるLNG比率の増加が始まっている。 やがては、ガス市場規模の大きい大西洋LNG市場(欧米市場)が、太平りょう洋LNG市場(東アジア市場)を凌するものと考えられている。 今後、生産開始が予定されるLNG液化事業のなかでは、中東、アフリカ、ロシアなど、大規模ガス生産国におけ インドネシアのLNG輸出量は、1984年にアルジェリアに代わって世界最大となり、以降2005年に至るまで一貫してその地位を保っている。しかし、インドネシアのLNG生産がこの数年来低迷しているのに対して、マレーシア、カタール、および図8のグラフ中「その他」に含まれるトリニダード・トバゴ、オマーン、ナイジェリアの伸びが著しい。中東の大規模ガス資源国カタールは、間もなくインドネシアに代わって世界最大のLNG輸出国になろうとしている。 一方、LNG市場動向を見ると、日本をはじめとする太平洋LNG市場の需要は堅調であり、なお当面世界最大のLNG市場の地位にある。 しかし、ガス消費形態の進んでいる欧米市場においては、既に自国のガス生産が頭打ちになったエネルギー最大5. LNG貿易のグローバル化に伴うインドネシアの比率縮小CンドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か億?1,8001,6001,4001,2001,00080060040020001978198219861990199419982002出所:Cedigas,BP統計その他リビアアルジェリアカタールアブダビ豪州ブルネイマレーシアインドネシア米国その他ナイジェリアアルジェリアロシアインドネシアマレーシア豪州イランカタールサウジアラビアUAE年出所:2006BP統計、2005年末図9国別天然ガス埋蔵量図8世界のLNG輸出量の推移る大西洋市場向けの大型案件が目白押しである。主要なLNG供給国をガス埋蔵量の観点から見ると(図9参照)、インドネシアなどアジア太平洋のガス生産国に比べて、ロシア、中東のガス埋蔵量の膨大さは群を抜いている。 このように、地球規模でのLNG貿易拡大を考慮すると、今後、こうした大規模ガス生産国がインドネシアに代わって主要LNG供給国となっていくことは、自然な趨勢ととらえざるを得ない。6. インドネシアの個々のガス事業の状況 本章は、データ編として、インドネシアの主要なガス事業の現状を、個別に取り上げる。(1)主要なLNG事業①ボンタンLNG カリマンタン島東沖合のガス資源のなかで、トタールはマハカム沖に20Tcf超の豊富な埋蔵量を誇る。シェブロンは5~6Tcfのガス確認埋蔵量を持ち、さらに保有する深海鉱区においても、今後ガスを発見できるポテンシャルが高いものと見られている。 カリマンタン島東沖合のガス資源量のLNG向け潜在供給力を確認するため、今後の新規発見想定を除外した既発見分のみのガス埋蔵量を、保守的に26Tcfと推定し、現行の天然ガス生産規模(3,000MMcfd)を継続すると仮定する。(3,000MMcfdのガス生産量のうち、LNG向け2,700MMcfd(≒LNG2,100万t/年)肥料向け等300MMcfdとする。)26Tcf÷(3,000MMcfd×365d/y)=23.7y≒24年23石油・天然ガスレビューArunArunBruneiBruneiMalaysiaMalaysiaDuriSumatraSumatraMLNGMLNGNatuna SeaBontangBontangKalimantanKalimantanSouth SumatraIndian OceanO?shoreNorth West JawaMaduraMaduraKangeanKangeanSemarangSemarangLNGプロジェクト(稼働中)LNGプロジェクト(計画中)LNGプロジェクト(構想段階)ガスパイプライン(既存)ガスパイプライン(計画中)DonggiDonggiTangguhTangguhBanda SeaO?shoreMahakam5N05S100500Km100095 E100105110115120125130135出所:各種情報よりJOGMEC作成図10インドネシアのガス関連施設(LNG液化基地、ガス・パイプライン)表3ボンタンLNG概要オペレーター(合弁会社)PT Badak NGL(ボンタン)同上参加者と参加比率原料ガス供給者供給ガス田LNG生産規模稼働開始年LNG販売者LNG輸出先出所:BPMigasホームページほかプルタミナ 55%VICO Indonesia  20%Japan Indonesia LNG  15%トタール 10%Vico、トタール、ユノカル東カリマンタン堆積盆地の各ガス田2,259万トン/年(8トレーン)1977、1983、1989、1993、1997、1999年プルタミナ日本、韓国、台湾@このように、現行規模のガス生産を約24年間継続することが可能であり、十分な資源量があることが分かる。 しかし、今後このガス供給力を確保するためには、既発見だが未開発のガス田を開発移行させる必要があり、それには膨大な新規投資を要する。未開発ガス田は沖合にあり、また深海域の開発ともなれば、さらに多額の投資を要する。ボンタンLNGに対する将来の原料ガス供給力は、ガス資源保有者が今後どのように開発投資を行うか、つまり事業者が投資を正当化できる投資環境が整えられるかどうかにかかってくる。かまびす 日本のLNG需要家は、インドネシアに約1,200万トン/年の契約を持っており、2010年ごろに契約期限となる。約半分の600万トンについては契約更新が合意されていると言われるが、インドネシア側の将来のガス供給方針が未定なので、交渉は中断されている。 昨今、さまざまな議論が喧しい国内ガス供給問題に関して、ボンタンLNG向けの最大ガス供給者トタールは、2006年7月下旬、LNG輸出に匹敵する価格で販売できるのであれば、国内市場向けのガス供給に応じる用意があると述べた。 トタールは、開発作業中のSisi/Nubiガス田(生産能力400MMcfd)が2007年の生産開始直後にピーク生産に入り、以降2010年ごろまで、同社の東カリマンタン全体のガス生産量2,600MMcfdを安定的に維持するために貢献するものとしている。 トタールは2006年半ば時点で、2,500MMcfd~2,600MMcfdのガスを生産し、約300MMcfdをカリマンタンの石油化学産業向け、2,300MMcfdをボンタンLNG向けに供給している。同社のボンタンLNGへのガス供給比率は、全体の75%を占めている。アナリシス出所:BPMigasホームページ写1ボンタンLNG液化プラント トタールは現在行っている先行投資の回収のためにも、保有するマハカム沖鉱区契約期限の2017年に契約を更改する意向を打ち出している。2007年以降生産を開始するSisi/Nubiガス田の効果は、現行生産水準の維持であって、増産にはつながらないものと見られている。 一方、トタールに次ぐガス供給者シェブロンは、計画中の新ガス田の生産開始が2009年以降になるため、それ以前はガス生産割り当て量を満たすことができないとして、正式に供給肩代わりを他社へ要請した。シェブロンは現在、約200MMcfdのガスをボンタンLNGに供給しているが、これは契約数量の400MMcfdを大きく下回っている。同社は未開発のガス資産を多く持つが、将来の供給力は調査中であり、未詳の状態である。 シェブロンは2005年にユノカルを買収した後、東カリマンタン沖鉱区から約221MMcfdのガスをボンタンLNGに供給しており、これはボンタン全体の調達量の6~7%に相当する。2002年時点でユノカルは270MMcfdのガスをボンタンLNGに供給し、全体の8%に相当していた。なお前身のユノカルはシェブロンに買収される前、2015年時点でボンタンへのガス供給の40%を占めることを目標にしていた。シェブロンは、これを30~40%へと下方修正している。シェブロンは2010~12年の生産開始を目標に、Gendalo、Gehemガス田の開発計画をこれから提出する予定である。当初計画では2008年に生産開始の予定だったが、既にかなりの遅れが生じている。 シェブロンは2006年にSapiガス田の生産を開始し、2008年にSadewaガス田の生産を開始する予定である。また、深海のWestSeno油田の改修と生産井掘削によって80MMcfd程度のガス供給を期待できるものとしている。 VICOが操業するサンガサンガ・ガス田は、生産減退が想定より早く進んでおり、増産は期待できないものと見られている。②タングーLNG インドネシアで第3番目となるタングーLNG事業は、2トレーンで年間液化能力760万トンの規模で、2008年に生産を開始する予定である(表4)。BPをオペレーターとするタングーLNGコンソーシアムおよびインドネシア政府当局上流分野担当BPMigas(P16の脚注*1参照)は、2006年8月1日に、日本の国際協力銀行、アジア開発銀行などの国際金融機関との間?2006.11 Vol.40 No.624CンドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か表4タングーLNGの概要オペレーター事業パートナーと参加比率 (ガス供給者)供給ガス田LNG生産規模稼働開始予定LNG輸出先出所:BPMigasホームページほかBP IndonesiaBP 37.16% 、 日石ベラウ 12.23%、 MIベラウ 16.3%、 KGベラウ石油開発 10.0%、 CNOOC 16.96%、LNGジャパン 7.35%ベラウ(Berau)、ボルワタ(Vorwata)、ウィリアガ(Wiriagar)760万トン/年(2トレーン)2008年中国(CNOOC)、韓国(Posco/ K Power)、米国(Sempra)表5アルンLNGの概要オペレーター(合弁会社)PT Arun NGL Co.(アルン)同上参加者と参加比率原料ガス供給者LNG液化能力稼働開始年LNG販売者LNG輸出先出所:BPMigasホームページほかプルタミナ  55%エクソンモービル 30%Japan Indonesia LNG 15%エクソンモービル(アルン・ガス田より)680万トン/年(6トレーン、ただし現在操業中は4トレーンのみ)1978、1983、1986年プルタミナ日本、韓国3トレーンを建設する計画が取りざたされているが、実現可能性は未詳である。③アルンLNG アルンLNGは、長らく日本など東アジア市場向けLNG供給を担ってきたが、アルン・ガス田のガス生産が既に減退しており、早晩生産終了になるもの出所:EnergyIntelligentResearch図11インドネシア国内ガス・パイプライン(波線は計画中)で、LNG事業開発費用にかかわる総額約26億米ドルの融資契約を締結した。また2006年9月に中国CNOOCへの売価交渉が最終的に合意され、契約が締結された。 なお、国内市場向け供給用として第と見られている(表5)。 アチェ州知事は、プルノモ・エネルギー鉱物相に2008年以降のアルンLNG輸出停止を求めた。アチェ州当局によると、老朽化したアルン・ガス田はLNG液化基地に原料ガスを供給?するには不十分だが、地元の肥料工場、製紙産業、発電所などに原・燃料ガスを供給するには十分ということである。アルン・ガス田は、北スマトラA鉱区、KruengManeガス田とともに、2020年までアチェの肥料工場にガスを供給することができるものと見られている。(2)国内市場向け事業①スマトラ~ジャワ パイプライン 2005年10月にPGN(インドネシア・ガス公社)が長く懸案であった南スマトラ~西ジャワ間のガス・パイプライン建設を日本企業に発注し、2007年に第1フェーズの完成が予定されている。本事業は、 スマトラ島南部Pegardewaガス田とジャワ島西部Cilegonを結ぶ総延長約500㎞のガス・パイプライン建設事業である(図11参照)。これにより、スマトラ島からエネルギー大消費地のジャワ島へのガス供給が開始される。・第1フェーズ(250MMcfd):2005年10月発注、2007年完成予定。ガス供給はプルタミナ・南スマトラガス田から。・第2フェーズ(450~700MMcfd):2008年ごろ完成の計画。②カリマンタン~ジャワ パイプライン インドネシア政府はかねてより、スマトラ~ジャワ島ガス・パイプラインに続く広域パイプラインとして、カリマンタン~ジャワ島ガス・パイプライン計画を表明していた。本計画は、2006年7月半ばにインドネシア企業PTBakrie&Brothers*2(以下、バクリー社)がパイプライン建設を落札し、実現への可能性が生じた。同社によるパイプライン建設計画は、次のとおりである。*2:1911年創業のゴム・プランテーション事業に端を発し、1942年に商品の交易会社として設立された。現在は、パイプラインの建設/操業などのインフラ部門、通信事業、およびプランテーション事業の3部門を主要事業とする企業グループ(BakrieHP)。インドネシア閣僚のバクリー経済担当調整相は同一族の出身。25石油・天然ガスレビューAナリシス バクリー社は、2006年7月17日、石油・ガス産業の下流部門を統括するBPH-Migasからカリマンタン~ジャワ島ガス・パイプライン1,115㎞の建設(陸上部分520㎞、海底部分595㎞)を12億6,000万米ドルで落札した(事業期間は25年間)。同社は資金の70%を借り入れ、30%を自己資金で賄う計画である。ドイツ銀行、マレーシアのCIBM、三井住友銀行およびみずほ銀行の4行が本事業への資金提供を検討中であり、今後バクリー社との折衝を経て決定されると言われる。パイプライン輸送能力は1,000MMcfd(=28MMcmd)を予定しており、落札したパイプライン・タリフ(輸送費)は0.84ドル/MMBtuであった。同社は、既にジャワ島の発電、ガス企業など産業需要家と1,000MMcfdに相当するガスの売買仮契約を締結済みであると言われる。しかし、ガス供給者との交渉はこれからであり、果たして十分なガス供給量を確保できるのか、ガス生産者からの購入価格はどうなるか等の解決すべき課題が多い。またパイプライン・タリフは現実的な金額と考えられるが、12億6,000万米ドルで落札したパイプラインの建設コストは不十分とも見られており、本パイプライン事業の実現性、採算性はまだ不透明な部分が多い。 政府が求める、2009年7月までにパイプラインを完成させるために、バクリー社は少なくとも2007年1月までにはパイプライン建設を決定して作業を開始しなくてはならない。またバクリー社は、本パイプライン建設の事業パートナーを募っている。7. 結び:LNG輸出国・輸入国双方の良好な交易を継続させるために インドネシアのLNG輸出は1977年のボンタン液化基地完成に始まり、1979年にブルネイに代わって日本向けの最大LNG供給国になった。その地位は2006年現在まで変わっていない。 インドネシアは1980年代半ば以降、輸出先の多様化を図って、韓国、台湾へのLNG輸出を開始したが、日本への輸出規模が群を抜いて大きい。その間、日本はインドネシアLNGの最大の顧客である一方、インドネシアのLNG産業育成に対してさまざまな貢献を行った。商社を中心とするLNG事業者は、需要家開拓とその橋渡しを含むさまざまな液化事業の推進役を担い、日本の銀行団は資金供給を行い、LNG輸入者は共同で日本インドネシアLNGを設立して液化事業体のPTBadak(ボンタン)、PTArun(アルン)に資本参加した。 ガス事業に関する多くの著書が記すように、長いリードタイムと膨大な初期投資を要するガス事業では、ガス生産国、輸入国ともに政府系機関の果たす役割が大きい。インドネシアは、第二次大戦後、日本が最も深い結びつきを持つ国の一つであるが、特にエネルギー面のつながりが強かった。4,0003,0002,0005,0001,00001988万トン6,000 現在、インドネシアの石油・ガス生産の不振に端を発したLNG輸出削減懸念によって、同国が長い年月をかけて築き上げてきた日本など東アジア市場との交易関係が崩壊する可能性がある。日本など、無資源の消費国にとってLNG輸入は、経済活動上必須であるが、インドネシア経済の発展に対してLNG輸出が果たしてきた役割も計りしれないものがある。現時点のインドネシア経済の不調、およびそこから発する資源ナショナリズム的な社会風潮等は理解できる。しかし、第4章で述べたように、ガス輸出に際して資源国の政府部門が果たす役割は決定的に重要である。 政策判断を誤って、いったん国際LNG取引上の信用を失うと、その回復には長い時間と大きな経済的犠牲を払うことになってしまう。現代社会の交易は双方のニーズに基づいて双方が利益を得るものであり、一方が不利益を被るものではない。冷静に考えれかぶその他カタール豪州アブダビブルネイマレーシアインドネシア199720002003年19911994出所:Cedigas,LNGFocus図12日本のLNG輸入先の推移ば、インドネシアのLNG輸出継続は輸出国・輸入国の双方に利益があることは明白である。そして必要な対策は、投資環境を向上させて石油・ガスの探鉱・開発事業を活性化させることである。 インドネシアの為政者にとって現在の難しい社会状況下、直ちに国民の利益につながらない政策を採ることは簡単ではなかろう。しかし、安易な方策を採れば、大事な交易相手を失い、自国経済も損失を被ることになる。長く良好な交易パートナーであった日本など消費国側は、民間需要家そして政府部門もともに、インドネシア側に対して、短期的視野から輸出の大幅削減という不適切な判断を下さぬように、提2006.11 Vol.40 No.626CンドネシアのLNGとガス産業:なぜ低迷に至ったのか、そして復興には何が必要か言を繰り返すべきである。日本向けLNG輸出の大幅削減となれば、長年の交易パートナーとエネルギー輸入にかかわる国益をともに失う。 インドネシアは、アジアで唯一のOPEC設立時からの加盟国で伝統的産油国である。しかし、残存資源量は徐々に減少しており、中東等の大規模産油国と同等の政策を掲げ続けることは賢明な措置ではない。かつて石油資源の減退に直面した英国は、大胆な資源開発の投資環境改善を図って石油企業の投資を呼び込み、生産水準の維持に成功した。当初の苦しい期間を甘受する覚悟を持って、オーソドックスな投資活性化策を採るべきである。 インドネシアのエネルギー政策が功を奏し、日本などエネルギー輸入国との良好な交易関係が継続することを願う。主要な参考文献1."Indonesia2006-AReviewoftheUpstreamandgasSectors"byAsiaPacificEnergyConsulting2."TheOutlookforDeepwaterOilandGasDevelopmentinIndonesiaandMalaysia"byEnergyIntelligenceResearch3.LNGFocus"JapanturnstoAustraliaforLNGsupplyasIndonesiadithersovercontractextensions"March20064."NaturalGasandGeopolitics"EditedDavidG.Victor,AmyM.JaffeandMarkH.Hayes,CambridgeUniversityPress2006使用した業界紙InternationalOilDailyGasmattersTodayPlatt'sOilgramNewsIndonesianOil,MiningandEnergyNews執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油㈱入社。外の石油上流資産管理。エリア・スタディーに興味を持っているが(主に旧大陸)、最近は業務担当地域の南アジア、東南アジアの一部で手いっぱいである。週末の競技ボートの練習は継続しているが、今春の転居後CS放送受信システムが変わって、中国語番組を見られなくなった。2004年10月から現職(JOGMEC石油天然ガス調査グループ上席研究員)。1991年から日本石油開発㈱にて海27石油・天然ガスレビュー
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2006/11/20 [ 2006年11月号 ] 坂本 茂樹
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