ページ番号1006246 更新日 平成30年3月5日

LNG 刺し身論とハブ構想

レポート属性
レポートID 1006246
作成日 2006-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 三神 直人
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 石油・天然ガス調査グループmikami-naoto@jogmec.go.jp三神 直人LNG刺し身論とハブ構想 LNGは、刺し身に例えると、その取り扱いが理解しやすい。刺し身は新鮮なものが一番うまい。ちょっと強引な表現かもしれないが、LNGも作り立てが一番おいしい(利用価値が高い)のである。その意味を以下に考察し、併せて最近報道されたLNGハブ構想についても触れてみたい。1. 刺し身もやがて土に返る(BOG発生によるLNGの減少)100200日数300計算によるBOG発生によるLNG貯蔵タンクの液位変化の様子(計算例)分になってしまうのだ。 これでは、LNGは極めて貯蔵効率が悪い液体と思われるかもしれない。しかし、LNGを取り扱っている電力会社や都市ガス会社は、こんなに長期間、何もせずにタンクにLNGを放置するわけではない。 実際には、タンクに入れたLNGはすぐに消費され、また新しいLNGを320151002550図1LNG量[ 万m ]積の比はおよそ1/600であるので、たとえばBOGが600?発生すると、LNGが1?減少することになる。 LNG貯蔵タンクのBOG発生率BOR(boil off rate)はほとんど明らかにされていないが、LNG船のBORは参考図書等に示されている。これによると、1日あたりLNG貯蔵量1に対して0.0015の割合でBOGが発生する。 この割合を用いて、LNGがBOG発生によってどのように減少するかを計算してみた。20万?のLNGをタンク内にそのまま放置し続けたと仮定して計算した結果を、図1に示す。これによれば、およそ1年で半分程度まで減ってしまうことが分かる。つまり、取り置きしたはずのLNGが、1年でおよそ半BOG昇圧機LNGLNGタンク海水海水付 臭発電用燃料等(中圧)都市ガス(高圧)熱量調整用LPG図2日本のLNG基地のフロー概要 LNG(液化天然ガス)は、大気圧、大気温度において本来ガスの状態である天然ガスを液化基地の冷凍機で冷却・液化して保存する。その後、断熱材等を用いて熱の進入を抑制した魔法瓶に似た構造のLNGタンクに入れる。タンクの中は大気圧で、LNGはおよそ-162℃である。 天然ガスは液化すると体積が約600分の1になるので、LNGは非常に体積効率のよい輸送・貯蔵方法である。しかし、冷却して液化するという自然界にはない不安定な状態にわざわざしているので、自然に元のガスの状態に戻ろうとする。 LNGはタンク壁、LNG配管、LNGポンプ等からの入熱により、次第に蒸発して本来のガスの状態に戻っていく。このとき発生するガスをBOG(boil off gas)という。つまり、ガス化したBOG体積の600分の1のLNGが減っていくことになる。 刺し身もまた枯れた植物同様、地球の物質循環の一部にすぎず、微生物等によって分解・消費され、土(元の無機物)に戻って消えていく。同様にLNGも、元の状態に返っていくのだ。では、実際にLNGタンクでは、LNGはどのくらい減ってしまうのであろうか。(1)BOG発生によるLNGの減少 先に述べたように、LNG/BOGの体29石油・天然ガスレビュー^ンクに入れるので、LNG在庫の回転期間は長くても数カ月程度である。また、BOGは普通、無駄なく利用している。次にBOGの利用方法について簡単に説明しよう。(2)LNG基地のBOG処理 例えば日本のLNG基地では、BOGを大気圧から中圧(1MPa*1未満)まで昇圧して発電用燃料として利用するのが一般的なので、LNGを無駄にしているという心配は無用である。 しかし、LNGタンクの中に目を向けると、BOGによりLNG量が減ってしまうことに変わりはない。(3)LNGタンカーのBOG処理 ほとんどのLNG船は、BOG有効利用のためにBOGを燃料にしたボイラーを用いた蒸気タービン方式を推進方式として採用している。 タンカーのBOG発生量は、13万5,000?型の標準的なLNG船の場合、およそ毎時3トンである。この量はタンカーが低速航行時に必要な燃料消費量に相当する。LNG船は貨物の一部を燃料として利用しているのである。 最近は、BOGと重油を発電用ディーゼル機関の燃料として使用(DFD, Dual Fuel Diesel)し、電動モーターで推進する方式が開発されている。まだ実機への適用はほとんどない2. 量だけでなく味(品質)も時間とともに変化する 魚は死後硬直が解けて、酵素の働きによりアミノ酸がある程度発生してからおいしくなると言われる。同様に、LNGはBOG発生によって量だけでなく品質(発熱量)も変化する。(1)LNGの品質変化 ここでLNGの品質(発熱量)がどのように変化していくのかを説明しよう。産地により差はあるが、LNGはメタンを主成分とし、異なる沸点と発熱量をもつ、表1に示すような炭化水表1産地もの天然ガスの組成産地キナイアルジュウ(アルジェリア)99.4 0.1 (アラスカ)組成メタン(C1)エタン(C2)プロパン(C3)ブタン(C4)ペンタン(C5)C6以上窒素二酸化炭素出所:成山堂書店、LNG船運航のABC0.5 0.0 [単位:モル%]ルミット(ブルネイ)バダック(インドネシア)アルン(インドネシア)83.5 7.0 2.1 1.4 5.8 0.2 88.2 4.8 3.7 1.6 0.5 0.5 0.7 87.4 4.5 2.8 1.3 0.4 0.5 0.1 3.0 72.0 6.0 2.6 1.4 3.7 0.3 15.0 表2天然ガス主成分の大気圧における沸点と発熱量沸点 単位:℃総発熱量 単位:MJ/?Btu/scfメタン-161.4939.91,070 エタン-8970.51,891 プロパン-42.1101.42,720 ブタン-0.5133.13,571 アナリシスが、発注が相次いでいる。 さらに、船上で発生したBOGを冷却、再液化する装置を備えたLNG船も登場してきている。 推進機関として蒸気タービン方式よりもエネルギー効率がよい、一般的なディーゼル機関を採用することにより、その分の動力をBOG再液化に用いるという発想である。 なお経済性は重油、BOGの価値をどのように設定するかにより影響を受けるので、プロジェクトの置かれた経済的な環境により、違いが生じると言われている。素の混合物である。 なお一般的には、LNGの組成はプロジェクトごとに、特定の需要家との間で定めた品質に合うように、液化の段階でプロパンなどの重質分の量を調整(抽出)している。 抽出した重質分は、LPG等としてマーケットに供給したり、工業用原料として利用する場合が多い。 LNGの液化温度はおよそ-162℃だが、個々の組成の沸点はメタン-161.49℃、エタン-89℃、プロパン-42.1℃と異なり、ブタンにいたっては-0.5℃とほとんど大気温度である。 物質は蒸発するとき沸点が低い(蒸気圧が高い)物質から優先的に蒸発し、沸点が最も高い物質が最後に蒸発する。したがってBOGの組成はほとんどすべて、蒸気圧が高いメタンと見なしてよい。 実際には、メタンよりもさらに沸点が低く、蒸気圧が最も高い窒素(-196℃)の影響を考慮すべきである*1:メガパスカル 1パスカルは1平方メートルの面積につき1ニュートンの力が作用する圧力または応力。2006.11 Vol.40 No.630・39MJ/m   (純メタン相当)3*低発熱量高発熱量ヨーロッパアメリカアジアオマーンアブダビブルネイオーストラリアマレーシアインドネシアカタールナイジェリアアルジェリアトリニダード・トバゴアラスカエジプト効果により発熱ゃく釈しき* 窒素等の発熱量ゼロの成分が含まれていると、希量が純メタンよりも低くなる場合がある。%1007550250取引の割合0.72MJ/m31.6MJ/m32.67MJ/m30100200日数300504948474645444342MJ/m3発熱量LNG 刺し身論とハブ構想発熱量(HHV)MJ/m3増加量MJ/m3増加量/100日MJ/m3・100日初め 100日後200日後300日後43.9046.5745.5044.620.000.72?0.721.600.882.671.07図3計算によるLNG貯蔵タンク内のLNG発熱量の変化(計算例)図4世界の主なLNGプロジェクトと地域別取引割合の概要が、メタンに比較して微量なので、ここでは無視する。 刺し身を食卓で取り置きすると鮮度が失われる。食卓の刺し身は、普通すぐにおいしく食べられる。しかし、時間が経過すると鮮度が落ちてしまう。 同様にLNGが蒸発すると、量が減少するだけでなく、メタンの割合が減少し、その組成が変化することによって発熱量(品質)が変化する。 この様子をLNGの組成をメタン90%、エタン7%、プロパン3%と仮定して計算した結果を、図3に示した。なお、計算結果はLNGの組成やBOR値およびその他計算の前提条件により異なるので、傾向として理解していただきたい。 初めの組成により若干異なるが、熱量の増加の傾向はこのケースの場合、100日後に+0.72MJ/?、200日後に+1.60MJ/?、300日後には+2.67MJ/?増加することが分かる。 また、まるで青魚の鮮度が一度落ち出すと加速度的に劣化が進むように、LNGの発熱量が高くなる(図3グラフの右側にいく)ほど発熱量の増加速度が速いことが分かる。(2) 地域によって違う品質(発熱量)の好みさば“捌きたての歯応え”(低発熱量)をとるか、“少し時間がたってからのうま味”(高発熱量)をとるか――。 図4に、世界の主要なLNGプロジェクトについて、低圧熱量LNGプロジェクトから高発熱量プロジェクトまでを、左から順に地域別取引割合とともに示した。これより、1960年代後期に日本が初めてLNG導入を行ったアラスカ・プロジェクトを除くと、高発熱量LNGを生産しているプロジェクトはおおむねアジアと取引しており、低発熱量のLNGを生産しているプロジェクトは、アメリカ等アジア以外と取引していることが分かる。 高発熱量の日本の都市ガスを例に挙げると、都市ガス会社により多少の差はあるものの、需要家に送出するガスの発熱量はおよそ45MJ/?(HHV)*2と一定である。LNGに高発熱量(プロパンの場合約101MJ/?)のLPGを少量混合して、目的のガス品質(約45MJ/?)になるように微妙にコントロールしている。 もし発熱量が増加して許容値(約45.5MJ/?)を超えた場合は、ガス機器での燃焼の不具合や事故の発生を未然に防止するために、パイプラインへの送出を停止しなければならない。発熱量が増加しすぎた場合、精留塔等を用いて重質分をLNGから抽出するか、窒素や空気で希釈しなければならなくなる。しかし、これらは経済的に不利なので、技術的に容易でコストも比較的安価なLPG添加方式*3を採用している。そこで、LNGを濃くしすぎないように細心の注意を払っているのだ。 逆に低発熱量の米国等では、できるだけ薄い(低発熱量)LNGを初めから受け入れるのが経済的だ。許容値よりも高いLNGを受け入れる場合は、LNGターミナルで窒素による希釈や*2:high heating value(HHV) 高位発熱量(総発熱量ともいう)。ガスの燃焼は発熱反応であり、その成分に応じた燃焼熱が発生する。標準状態(0℃,1気圧)のガス1?が、完全燃焼したときに発生する熱量であり、燃焼に伴って発生する水蒸気の蒸発潜熱を含んだ発熱量のこと。一方、水蒸気の蒸発潜熱を減じたものを低位発熱量(LHV:low heating value, 真発熱量ともいう)という。気体燃料の場合、LHVはHHVの9割程度である。*3:45MJ/?より少しだけ発熱量が低いLNGにLPGを添加して、ちょうど45MJ/?になるようにしている。31石油・天然ガスレビューd質分の抽出を行っている。 高発熱量LNGを好む日本、韓国、台湾等は“少し時間がたってからのうま味”をとる。一方、低発熱量LNGを好む欧米は、“捌きたての歯応え”をとると言ったところだろうか。アナリシス3. 品質を維持するいくつかの方法~刺し身を冷蔵庫に入れてしまっておく?~ 刺し身は、冷凍庫に入れたり冷凍したりすれば多少長持ちするが、味が落ちる。同様に、LNGも設備対応すればコストアップではあるが、品質をあまり損なわずに維持したり、調整したりすることができる(表3)。具体的には、①BOGを再冷却して液化する、②BOGが発生して濃くなったLNGから重質成分を抽出する、③窒素を混合する、④発熱量が低い天然ガスのパイプライン網に混合する――等がある。 ①は、LNG液化プラントの小型版を設置し、気化したBOGを液化してタンクに戻すという発想である。LNG基地に、BOG再液化装置を設置する例も見られる。 ②は、精留塔等を用いて重質分をLNGから抽出するものである。 ③は、LNG受け入れ基地からパイプラインにガスを送出する際にLNGを気化したガスと圧縮した窒素を混合する方法である。多量に窒素が必要な場合が多いので、空気を冷却して窒素を取り出す設備を自前で持つ場合が多い。 ④は、希釈可能な大流量の低発熱量の天然ガスパイプライン網がある北米等でなければ実施できない。 ④以外は、いずれの方法も設備コストと変動費が余計に必要である。近年、原油高の影響を受けたLNG価格の高値傾向により、コスト増でも経済的に成立する場合があるかもしれないが、コストアップに変わりはない。 つまり、いったん品質が変化して、目標品質から大きくずれてしまうと、余計なコストをかけて品質を調整しなければならなくなる。品質が変化しないうちに使ってしまうのが、本来最も合理的なのである。冷蔵庫にしまった刺し身は新鮮みに欠けてしまうものである。表3想定される品質(発熱量)調整方法品質調整方法BOG再液化重質分抽出窒素を注入発熱量が低いパイプライン網に混合異なる発熱量のLNGを混合出所:各種資料を基に筆者が整理適用場所液化基地/LNGタンカー/LNGターミナル液化基地/LNGターミナルLNGターミナルLNGターミナル液化基地/ターミナル4. LNG品質管理の今とこれから これまでの大部分のLNGプロジェクトは、液化から消費までが一つのチェーンの中に組み込まれていたので、品質は初めに計画した熱量等を維持すればほとんど問題になることはなかった。 これからは、LNGの流通性が少しずつ高まるにつれて、さまざまなプロジェクトのLNGを、品質を損なわずに流通させる必要が出てくるであろう。そのための主な課題は、貯蔵したLNGの品質が大幅に変化しない程度のLNG在庫回転期間を確保すること。また、経済性に見合ったBOG再液化装置、LNG希釈装置等、LNGの品質を維持する技術を、売り手、買い手いずれか、または双方が確立して、これらを組み合わせることにより、マーケットに応じた品質のLNGを適時適量供給することである。 そういった点から、LNGの品質管理との関連性が高いと思われるLNGのハブ・ビジネス(中継、仲介事業)が、将来登場する可能性がある。そこで、今年8月に発表されたアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国(以下ドバイ)のLNGハブ構想を、LNGの品質との関連で考えてみよう。(1)ドバイの経済活動 ドバイの経済は、2004年から2005年にかけてGDPが15.1%伸びる(370億ドル)など、近年大きな成長を見せている。 GDPの石油・天然ガス部門への依存率は、石油生産の長期下落を反映して1985年の50%から1993年の24%を経て2005年には6%へと減少している。 2006年1月現在、ドバイの石油確認埋蔵量は40億バレルと推定される。油田の操業はドバイ石油会社(DPC; Dubai Petroleum Company)が行っている。石油生産量は推定で、ピーク時の1991年の日量41万バレルから次第に減少し、2006年には10万バレルを割り込んだとも言われている。同じUAEのアブダビが、石油生産日量200万バレルを維持しているのとは対照的である。2006.11 Vol.40 No.632NG 刺し身論とハブ構想04080㎞イランバーレーンペルシャ湾ドバイカタールアブダビアラブ首長国連邦サウジアラビアオマーン埋め立て工事中の人工リゾート島群埋め立て工事中の人工リゾート島群LNGハブ建設LNGハブ建設予定地(推定)予定地(推定)ジュベール・アリジュベール・アリ・フリーゾーン・フリーゾーンジュメイラジュメイラ0N510㎞ドバイ国際空港ドバイ国際空港注: 海上の人工リゾート島群は、計画中のものを含む。図右側のドバイ国際空港には旧市街地が広がる。1980年代後半から整備された図左側のジュベール・アリ・フリーゾーンは、南西アジア、東アフリカ島の物流の一大拠点となっている。さらに、金融センターを目指すドバイはインフラ整備を進めており、沖合にヤシの木や世界地図を形どった大規模埋め立て地を造成している。 このようななかで、ドバイの経済成長を支えているのは、現在のUAEのGDPのおよそ30%を占める物流、観光、航空、および電気通信等の、非石油部門の成長である。 ドバイでは非石油部門の経済発展を目指し、観光ビジネスの環境整備を主目的とした道路などのインフラ網や、ホテル、オフィスビルなどの建設ラッシュが続いている。さらに、原油高などを背景としたアブダビや周辺産油国からの“潤沢なオイルマネー”の流入や、UAE政府の歳出増加などにより、大型プロジェクトが相次ぎ、さらには民間投資も活発化している。 住居、ホテル、オフィスなどから構成される、世界最高層の複合ビル(地上160階、高さ約800メートル)である「ブルジュドバイ」(建設中、2008 年12月完成予定)は、まさに現在のドバイ経済の象徴である。 また、政府系石油企業であるENOC(Emirates National Oil Company)等が中心となり、多くの国内外の企業が石油をはじめとした製品の備蓄、流通ビジネスを活発に行うなど、ペルシャ図5ドバイの概略地図湾を通過する製品の備蓄、流通の中心地としての地位を築いている。 そしてついに、世界初となるLNGの備蓄、流通業(LNGハブ)に乗り出すことになったのだ。(2)ドバイのLNGハブ概要 2006年8月21日、ドバイのLNGハブ構想が発表された「ドバイストレージハブ」(Dubai LNG Storage Hub:通称DUB)は、ドバイマルチコモディティーズセンター(DMCC)と、ガルベストンLNG社(カナダ)の100%子会社であるLNGインペル社が、ドバイのテクノパーク(工業団地)に約10億ドルを投入し、BOG再液化装置を備えたLNG貯蔵施設を建設するものである。 建設は3段階に分かれ、3タンクを2007年中に建設開始し、2010~2011年に運用を開始する(Platts, 2006/8/22)。その後、状況に応じて2年以内に6タンクを追加建設し、全体で9タンク(15タンクという情報もある)110万~180万?の貯蔵能力の設備とするという。 ビジネスとしては、フェーズ1として8月26日から共同投資先を募るための入札を開始、フェーズ2としてフェーズ1の入札に参加したメンバーから優先的に、拘束力のある契約へと進むとのことだ。 本プロジェクトはまさに、これからのLNG品質管理を実際に実践する場として、課題解決と建設を並行して進めることになり、LNG品質管理のこれからを議論する上で注目すべきニュースである。(3)LNGハブの品質管理イメージ このハブ構想のビジネスモデルは、具体的には明らかにされていないが、以下に一般論として想像してみよう。 たとえば、ある顧客(売り手)がハブにLNGを売ったとする。LNGではなく、ガスであれば、枯渇ガス田や岩塩層を利用した地下貯蔵施設にそのまま高圧で貯蔵すればよいが、LNGの場合は貯蔵した瞬間からLNGが蒸発してBOGが発生するので、BOGを再液化してLNGの量と品質を維持する必要がある。 だから、ハブの管理者としてはLNG33石油・天然ガスレビューAナリシスLNG圧縮機BOGBOG再液化装置入熱BOGLNG入熱入熱⑤⑤① 岩塩採掘跡② 岩塩洞(人工)③ 枯渇(油)ガス田④ 深部地層水⑤ 金属などの鉱山跡①②③④ガスの流れ(いずれも往復)PB-KBB、USGSなどの資料を基に作成出所:PB-KBB、USGSなどの資料を基に作成図6一般的な地下貯蔵とLNGタンクのイメージの在庫回転期間が短い方が操業コスト低減に資するはずであるが、おそらく決められた期間の後に同じまたは別の顧客(買い手)がLNGを買って持ち出すことになるであろう。この期間が長いほど、BOG再液化等の操業費が増加してしまう。 しかし、このような顧客(売り手および買い手)が時期をずらして次々に現れれば、見かけのLNGの在庫回転期間が短縮され、操業費は低減することになる。 DUBは、夏と冬の2季節間のLNG需要量および価格の差をビジネスチャンスととらえているようだが、これだけでビジネスが成立するかどうかは、現時点では不透明だ。また、買い手が常に、より高い価格でLNGを購入することが前提になる。LNGハブは、BOG再液化コスト、タンクコストおよびLNG積み替えコストの合計を上回るLNG価格の上昇を前提としているので、それだけの価値を買い手が見いだせるのかも重要だ。(4)課題山積のLNGハブ構想 LNGハブ成立のためには、ハブ管理者が想定しているような、時期をずらしたLNGの売り手と買い手を年間を通じて獲得する必要がある。しかも前述のように、売り手がハブに預けるLNG価格よりも、買い手がハブから購入するLNG価格の方が高値でなければならない。 また、顧客が求めるLNG品質(熱量等)が異なる場合に備えて、異なる品質のLNGを異なる貯蔵タンクで運用する必要があるであろう。 さらに、それ以外の品質に対応する場合には、LNGをタンカーへローディング(積み込み)する段階で、品質の異なるLNGタンクからの払い出し量を調整して、ライン混合する必要も生じるかもしれない。極めて複雑なハブの操業管理が要求されるのだ。 課題はこれだけではない。これまでのほとんどのLNG船は、特定のプロジェクトの専用船として設計されていたので、その構造上ローディングアーム等の技術上の規格がプロジェクトごとに“似て非なる”状況にある。船の大きさはもとより、ローディングアームの仕様など、事前に整合性をよく確認し、設備建設の段階からできるだけ多くのLNG船との整合性を持たせる必要がある。 仮にローディングアームが接続できても、船と陸との船員の移動に用いるギャングウェイ*4一つつながらないといったことだけでも、荷役はできないのだ。長い航海の後、万一荷役ができなかった場合の取り決めの必要もあるかもしれない。 したがって、初めは技術的に整合性が確認された特定の船団との間のみで、ある特定の数種のLNG品質をターゲットにしたハブビジネスが行われるものと思われる。 ペルシャ湾の出口近くに位置するDUBの場合、カタール、オマーン、エジプト等中東周辺LNGプロジェクトの船団が適当であろう。そして、そもそも時期をずらして高価なLNGを購入したいという買い手の購買意欲をかき立てられる価格や品質等を維持しなければならない。 これまで述べたように、LNGハブ実現のためには、お金ではすぐに解決できそうにない、また、超えなければならないハードルが山積している。現時点では、異なるニーズをもつ売り手と買い手の獲得およびLNG貯蔵施設の操業上の技術的な課題を考慮すると、貯蔵施設建設の投資額、操業費に*4:港湾労働者の一団(組)をギャングといい、ギャングが陸から船へ渡るために用いる橋をギャングウェイと呼ぶ。転じて、船客用の渡船橋をも指す(出所:横浜市港湾局港湾業務用語集)。2006.11 Vol.40 No.634NG 刺し身論とハブ構想見合うビジネスに仕立てられるかどうかについて今後の動向に注目したい。(5) やっぱり“LNG”は取れ立てが一番うまい 今や、マグロに代表される魚介類は、遠洋での取れ立てを船上で冷凍して港の冷凍倉庫で長期間保存し、われわれは冷凍の刺し身を普通に食べることができる時代になっている。 これは、漁船から販売までの各流通段階で、鮮度を落とさない仕組みが商業上成立しているからである。 一方、LNGの場合は、現時点では流通の各段階で品質を経済的に維持、調整する仕組みが確立しているとは言えない。取れ立ての魚を鮮度が落ちないうちに刺し身にして食べるのと同様、今のところ、LNGも作り立てを品質が変化しないうちに消費してしまうのが一番“おいしい”のだ。参考文献1. LNG船の核心 糸山直之 2005年10月2. LNG船運航のABC 日本郵船LNG船運航研究会 2006年1月3. 新版エネルギー管理技術 熱管理編 省エネルギーセンター4. 天然ガスプロジェクトの軌跡 平成2年3月 東京ガス株式会社5. 都市ガス工業概要Ⅰ(実務編)社団法人日本ガス協会6. 都市ガス工業概要(製造編)社団法人日本ガス協会7. ARAB OIL & GAS DIRECTORY 2006, ARAB PETROLEUM RESEARCH CENTER8. Differing market quality specs challenge LNG producers, Oil & Gas Journal/ Oct. 11, 20049. White Paper on Natural Gas Interchangeability and Non-Combustion End Use NGC+ Interchangeability Work Group February 28, 200510. White Paper on Liquid Hydrocarbon Drop Out in Natural Gas Infrastructure, NGC+ Liquid Hydrocarbon Drop Out Task Group February 28, 200511. クリーンエネルギー輸送~LNG船の昨日・今日・あした 三菱重工技報 Vol. 40 No.1(2003-1)12. 次世代LNG船の推進プラント開発動向とハイブリッド推進 三菱重工技報 Vol. 41 No.6(2004-11)13. IZAR BOG RELIQUEFACTION SYSTEMS FOR MARINE APPLICATIONS, World Maritime Conference 17-20 October 2003, San Francisco USA14. LNG Quality - Background and Outlook, WGC2006, Amsterdam 5-9 June 200615. ON-BOARDRELIQUEFACTION FOR LNG SHIPS, Tractebel Gas Engineering16. PROCESS FOR THE ADJUSTMENT OF THE HHV IN THE LNG PLANTS, WGC2006, Amsterdam 5-9 June 200617. NGL RECOVERY PROJECT AT BADAK LNG PLANT, WGC2006, Amsterdam 5-9 June 200618. LNG QUALITY AND THE UK GAS MARKET, WGC2006, Amsterdam 5-9 June 200619. TECHNICAL ISSUES AND RESEARCH NEEDS IN GAS INTERCHANGEABILITY IN THE U. S. , WGC2006 5-9 June 2006, Amsterdam20. Natural Gas and Geopolitics From 1970 to 2040, Cambridge University Press執筆者紹介三神 直人(みかみ なおと)神奈川県出身。秋田大学鉱山学部大学院修了。これまでにLNG受け入れ基地の操業技術、生産技術、LNG応用技術に関する企画、研究開発や、超臨界水バイオマス・ガス化研究開発等に従事。2006年4月より現職。35石油・天然ガスレビュー
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2006/11/20 [ 2006年11月号 ] 三神 直人
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