ページ番号1006247 更新日 平成30年2月16日

新しいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか?  ~CNG 技術を中心に~

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レポートID 1006247
作成日 2006-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術非在来型
著者
著者直接入力 鈴木 信市 佐尾 邦久
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ て子こ 制約の多い天然ガス田開発をより容易なものとするために、多様なアプローチがなされている。技術的なアプローチにおいては、現在のように、主としてパイプライン、LNGに限定された開発手段のオプションを多様化し、かつ開発に対する制約を軽減するということに尽きる。このような努力の結果、既存の開発技術に、技術開発中のものを加えると、主要なガス田開発手段として11の技術が数えられることになる。平成16年度に独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構からイギリスのコンサルタント会社Gaffney, Cline & Associatesへの委託調査として実施された先行スタディーは、これら異なる11のガス田開発技術を、開発システムの相違を考慮しつつ、できるだけ同じ土俵で比較評価したものである。 今回紹介するスタディーは、平成17年度の㈱海洋工学研究所への委託調査「東南アジア・オセアニア地域の海洋中小ガス田の開発に関するモデルスタディー」を基に資源機構で評価検討したものであるが、先行スタディーにおいて、比較的小規模の埋蔵量を持つガス田に対して有効な開発手段であることが示されたCNG(Compressed Natural Gas)とFLNG(Floating LNG)に焦点をあてて(その中でも特にCNGを中心に)、一般論としてのさらに詳細なスタディーを実施して、その適用可能性を検討したものである。 本スタディーの結果から、CNGという開発手段は、パイプラインとLNGの適用範囲を補完して、ガス田開発の可能性を広げるものであることが示された。ただし、現在のLNGプロジェクトの大型化を梃として進行しているLNGビジネスの真の意味でのグローバル化の流れは、将来的な小型LNGプロジェクトによるガス田の開発可能性を逆に拡大させ、LNGの適用範囲を広げる可能性を秘めていることにも注意が向けられた。TACT SYSTEMMYCKJOGMEC 石油・天然ガス調査グループsuzuki-shinichi@jogmec.go.jp鈴木 信市 株式会社海洋工学研究所 代表取締役kfh02354@nifty.com佐尾 邦久アナリシス新しいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか??CNG技術を中心に?はじめに 天然ガスは、ガス体エネルギーであることから、単位体積あたりのエネルギー密度が低く、輸送コストが高い。輸送コストを低減し、天然ガスの市場へのアクセスを容易にするには、天然ガスのエネルギー密度を高める必要がある。エネルギー密度を高める方法として、高圧化・液体化・固体化などの物理転換、化学反応により他の物質に転換する化学転換、そして電気に転換する電力転換という三つの方法がある。このような観点から見たガス田開発手段の概念図を図1に示す。 従来の物理転換を用いたガス田開発技術であるパイプラインやLNGは、その適用にあたり、さまざまな制約条件があることから、ガス田開発の可能性を広げるために、新しいガス田開発技術が研究開発されている。それらの開発途上の技術にあっても、技術レベルは基礎的なR&D段階から実用化目前のものまでさまざまである。 このような技術レベルの異なる主要なガス田開発技術を、先に述べた項目に分類すると、パイプライン(以下PL)、LNG、FLNG(Floating LNG)、CNG(Compressed Natural Gas)輸送、ハイドレート(Hydrate)輸送は物理転換技術、アンモニア・尿素、メタノール、MTO(Methanol To Olefin)/MTP(Methanol To Propylene)、GTL(Gas To Liquids)、DME(DiMethyl Ether)は化学転換技術、GTW(Gas To Wire)は電力転換技術に含まれる。 本稿の執筆者の一人であり、本誌2005年9月号の「中小天然ガス田マネタイゼーションの新展開 ~新しい開発手段の特徴と可能性について:試論~」の執筆者でもある鈴木が紹介した先行スタディーは、これら11の技術を、技術レベルの違いや開発概念の違いを認識しつつ、できるだけ同一の土俵で比較し、ガス田開発技術としての特徴や、最適条件・限界条件等を抽出したものである。図2は、その検討結果のなかで代表的なものである。 このスタディーでは、事業者は、検討対象とした11の各開発技術と輸送手段等を組み合わせた各開発システムを用いて、生ガスをガス田井戸元で購入して、処理・転換(製品化)・輸送・受け入れまでを行い、受入基地から製品をユーザーに販売するビジネスを37石油・天然ガスレビューP037-050_アナリシス鈴木・佐尾.indd 3706.11.22 4:42:35 PMA送媒体輸送媒体GTL灯軽油利用形態利用形態輸送用燃料メタノールMTO/MTPオレフィン化学原料熱肥料電気アナリシスこでは、ガス田埋蔵量として表現されている)の関係として示したものである。すなわち、一つの開発システムの線で囲まれたエンベロープの内側が、経済性が見込める範囲を示している。 この図3からも、5,000㎞以下の比較的短距離において、比較的広い埋蔵量領域にわたって、CNGという開発システムの有効性が示されている。また、CNGと同様にFLNGという開発システムに関しても、5,000㎞以下の短距離における比較的広い埋蔵量領域での有効性が示唆されている。 ただし、この先行スタディーにおいては、陸上ガス田・海洋ガス田ともに同一コストで原料ガスを調達すると仮定しているので、FLNGの場合、海洋ガス田を洋上プラントで開発するメリットが十分生かされていない。また、CNGは陸上プラントとしているので、洋上プラントで開発するコンセプトは比較されていない。したがって、FLNGとCNGには、この先行スタディーの結果よりずっと広い適用範囲を期待することができる。 本スタディーは、このような結果を基礎として、すなわち、中小ガス田規模・市場までの距離が比較的近距離という条件で開発の有効性が示唆されたCNGおよびFLNGに関して、より具体的な調査を行うことにより、適用に関する最適範囲や適用の限界範囲、それぞれの技術の特徴を抽出するために行われた。物理転換利用形態利用形態輸送媒体輸送媒体パイプライン化学転換天然ガス合成ガスDME熱減圧加温加圧冷却CNGGTW電力転換アンモニア尿素発電電気図1天然ガス開発の模式図高圧天然ガスガスハイドレートLNG(陸上・FLNG)加圧冷却冷却加温  然  ガ  ス天電気減圧加温行っているとした。また、それぞれの開発技術について、それぞれの技術で妥当と考えられる世界標準スケールを仮定している。 さらに、各開発技術から生産される製品(すなわち、製品ガスやメタノール、電力等)に関しては、油価と各製品の過去のトレンドから関係式を導出し、油価に対する相対的な製品価格で販売されるとした。この図2は、原油20ドル/bblのときの相対製品価格で市場に販売したとき、事業者が税引き後ROI*110%を確保するために必要な井戸元の原料ガス価格を、市場までの輸送距離の関数として示したものである。 図2で示唆されることの一つは、市場までの距離が3,000㎞以下の比較的短距離の開発手段として、CNGという開発システムが有効である可能性がある、ということである。 また、図3は、同様の分析結果を別の角度から見た図である。図3は、それぞれの開発技術においてシングルトレインを想定し、シングルトレインのトレイン規模を妥当な範囲で変化させることによりガス利用量を調整し、経済性の見込める範囲(すなわち、税引き後ROI 10%以上)を、市場までの距離と25年間の生産に必要なガス量(こPipelineFLNGCNGGTWGTWLNGGTLMethanolDMEMTP0000,2000,4000,6Urea12,00000010,000,8Distance to Market(km)14,00016,00018,00020,000121086420Reserves(Tcf)FLNGFLNGAmmoniaAmmoniaGTWGTWGTLGTLCNGCNGLNGLNGDMEDMEMethanolMethanolMTPMTPUreaUreaDistance to Market(km)20,00019,00018,00017,00016,00015,00014,00013,00012,00011,00010,0009,0008,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,000Large PipelineLarge PipelineMedium pipeline3.02.52.01.51.00.50.0Netback Gas Price(U.S.$/Mscf)注: プラント規模:世界標準スケール、製品価格:原油20ドル/bblのときの相関製品価格、システム経済性:税引き後ROI=10%注: 原料ガス価:0.5ドル/MMBtu、製品価格:原油20ドル/bblのときの相関製品価格、システム経済性:税引き後ROI=10%以上図2先行スタディー結果(その1)各開発システムにおける輸送距離とネットバックガス価格の関係図3先行スタディー結果(その2)各開発システムにおける輸送距離と必要埋蔵量の関係*1:Return On Investment 投下資本利益率。投下した資本に対してどれだけ利益が上がったかを表す指標。投下資本の効率を計るものであるが、効率を表す利益の値にはEBITDAを用いることが多い(野村證券用語解説集)。2006.11 Vol.40 No.638Vしいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか? ? CNG技術を中心に ?1. スタディーの方針および前提条件(1)目的および内容 本スタディーは、モデルスタディーである。本スタディーの目的は、アジア地域の天然ガス市場を前提として、東南アジア・オセアニア地域の中規模海洋ストランデッド(stranded)ガス田*2に対するパイプライン、FLNG、CNGでの開発適用可能性について、パラメータ分析を実施することにより、技術の特徴、適用最適条件・限界条件を明確にすることにある。 このことによって、同地域を主たる活動分野としている本邦石油開発企業のガス田開発検討の指針作成に資することを目的とした。本スタディーの内容を表1に示す。(2)検討の前提条件 検討の前提条件を表2に示す。本スタディーにおける開発システムにおいて、事業者は、プラントの入り口で生ガスを購入し、ガスを処理し、市場まで輸送し、市場の受入基地に受け入れて、ガスの形で需要者に販売するまでの事業を行う。 すなわち、FLNG開発システムの場合、事業者は需要者にLNGで販売するのではなく、ガスの形で販売するビジネスを行う。これにより、検討を行ったPL、FLNG、CNGのすべての表1調査目的と内容目的概要モデルスタディーを実施し、東南アジア・オセアニア地域の中規模海洋ガス田に対する各種開発手段の適用最適条件・限界条件を明確にすることにより、同地域を主たる活動分野としている本邦石油開発企業のガス田開発検討の指針作成に資する。アジア地域の天然ガス市場を前提として、東南アジア・オセアニア地域の中規模海洋ストランデッドガス田に対するFLNG、CNG、PLでの開発適用可能性について、パラメータ分析を実施することにより、技術の特徴、適用最適条件・限界条件を明確にする。モデルスタディー内容ガス田:東南アジア・オセアニア地域にある中規模海洋ガス田ガス輸送手段:PL、FLNG、CNGガス市場:アジア地域パラメータ:市場までの距離、ガス輸送量、ガス組成、原料ガス価、製品ガス価(油価)、新規LNG/CNG受入基地の必要性検討事項:技術的フィージビリティー、必要設備、投資金額・操業金額、経済性最終目的:技術の特徴及び適用最適条件・限界条件の明確化表2検討前提条件の概要1. 対象:東南アジア・オセアニア地域の中小海洋ガス田2. 事業範囲: 中流事業(上流での生ガス受け入れから下流でのガス販売=LNG輸送もガス化して販売する)3. 生産開始:2010年、生産期間:20年プラトー4. 生産ガス量:100-550MMscfd(累計生産量0.7~4Tcf)5. CO2:再圧入6. 水深:100~400m7. 市場距離:最大5,000㎞8. ガス価格:原料ガス価格:1~2ドル/MMBtu〈油価40ドル/bblの時、1.6ドル/MMBtuとする〉 製品ガス価格: 3.8~7.6ドル/MMBtu〈油価比例(25~50ドル/bbl)、発熱量換算価格:原油の9. 投資額:2005年時点のコスト(油価40~50ドル/bbl相当)90%〉開発システムは、生ガスを井戸元で購入し、製品ガスを市場で販売するビジネスとして規定されたことになる。 また、天然ガスに含まれるCO2やH2S等の酸性ガスは、抽出して、ガス田近傍のリザーバーに圧入処理するものとした(ただし、LNG等のプラントを運転する燃料から発生するCO2は大気放散される)。 原料ガス価格は、1~2ドル/MMBtuの範囲とした。ここで、油価40ドル/bblの場合、原料ガス価は1.6ドル/MMBtuとした。製品ガス価格に関しては、熱量換算で油価の90%とした。これは、先行スタディーのときに用いた関係である。 油価を25~50ドル/bblとした場合、この関係を用いると、製品ガス価格は、3.8~7.6ドル/MMBtuの範囲となる。開発システムのコスト計算は、2005年ベースを用いた。すなわち、ここ1、2年のCAPEX*3の急上昇が反映されたものとなっている。 海洋ガス田の地理・生産条件を表3に示す。海洋ガス田の地理・生産条件のベースケースは、海深400m、離岸距離200㎞、天然ガス生産量400MMscfd、市場までの距離2,000㎞である。 なお、この条件では、海洋ガス田のガスを近傍の陸上まで搬送し、そこで液化して市場まで輸送する、いわゆる陸上LNGコンセプトは、洋上LNGコンセプト(つまり、FLNG開発コンセプト)に対してコスト高となってしまう。 原料ガス組成を表4に示す。原料ガス組成としては、ベースケースに対して、酸性ガス(CO2、H2S)が少ないケース、CO2が多いケース、C2+炭化水素の多いケースを想定した。*2:近傍にローカルマーケットがなく、またLNG化や長距離パイプライン輸送による開発もできないガス田。*3:Capital Expenditureの略語。設備投資のために支出する金額のこと。いわゆる資本的支出に該当し、単なる修繕などではなく、設備や不動産の価値を高めることを目的とした支出(http://www.exbuzzwords.com/)。39石油・天然ガスレビュー\3海洋ガス田の地理・生産条件表4海洋ガス田の天然ガス組成アナリシス地理・生産関係パラメータ水深 (m)離岸距離(㎞)天然ガス生産量 (MMscfd)市場までの距離(㎞)1001001002501,000ValueBase4002004002,0004005503,0005,000原料ガス組成 (%)C1C2+C2C3C4C5CO2H2SN2H2OAlt-1Alt-2Alt-3低CO2・S 標準 高CO2高C2+Base881052.51.251.25110ppm1808421183160631.50.750.753031731684227310.03bbl/MMscf2. FLNGとCNG まずFLNGとCNGそのものに関して説明する。(1)FLNG FLNGとは、洋上LNG生産システムのことを言う。これは、図4のように、モノハル型(タンカー型浮体)のデッキ上に、海底から生産されたガスの処理プラントとLNG製造プラントを搭載し、デッキ下のタンクにLNGを貯蔵する浮遊式生産貯蔵LNG出荷システムであり、LNG-FPSO(Floating Production, Storage and Offloading)とも略すことができる。図4では、FLNGにLNG輸送船が横付けされている。 FLNGの技術的ポイントは、液化とLNGの出荷の部分にある。すなわち、洋上における船体の動揺下において、継続的・安定的な天然ガスの液化と、LNG輸送船に対する出荷が可能か否かということにある。 これらの技術的問題はほぼ解決されており、いくつかのプロジェクトに関して、ビジネス実施のためのFS*4が行われている。Shellは、豪州と東ティモールの国境付近にあるGreater Sunriseにて、天然ガス推定埋蔵量7.7Tcf、コンデンセート299MMbblのFLNGのプロジェクトを計画している。しかし、豪州と東ティモールのLNGプラント建設場所の取り合い、オペレーターWoodsideの思惑等から、交渉過程にある。また、Shellのアフリカのナミビア沖等でも、FLNGの採用を検討している。 本検討で用いた船上の液化プロセスは、その信頼性からシングル混合冷媒プロセスとした。また、LNGタンクは、メンブレン式としている。 ベースケースのFLNGでは、400MMscfdの生ガスを処理し、230万トン/年の LNG生産能力、2万8,000トンのLNG貯蔵能力を持つ船体となるが、この船体の規模は、L×B×D-d=345×63×39-8m(L:船長、B:幅、D:深さ、d:満載喫水)となる。LNGFPSOLNGCarrier図4FLNG概観(2)CNG CNGとは、天然ガスを液化せずに、圧縮して輸送するものである。CNGは、原理が単純で、技術もいわゆるローテクである。 CNG輸送の問題は、1船あたりの輸送量が少ないために輸送効率が悪くなること、高圧ガスを輸送するためのタンクが重くなり、その結果、鋼材の増加や船速を維持するため馬力の高いエンジンの使用等によりコストの増加につながることにある。 一方、LNGに対する優位性としては、天然ガスの液化やLNGの気化に関する設備が不要となるメリットがある。CNGは、LNGの-162℃のような極低温液体ではないので、極低温液体を扱わないというメリットもある。 CNG輸送には、数社から技術概念の異なる方式が開発・提案されている。たとえば、カナダのCran&Stenning Technology社は、Coselle方式というものを提案している。これは、6インチのコイルに20MPaの圧力で天然ガスを圧縮し、輸送するものである。 ノルウェーのKnutsen社が提案するPNG(Pressurized Natural Gas)方式では、42インチのシリンダータンクに*4:Feasibility Studyの略語。商品化・事業化のための可能性調査。2006.11 Vol.40 No.640Vしいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか? ? CNG技術を中心に ?High Pressure / Ambient TemperatureLean Gas:CH4-30℃Rich Gas1,000Pressure(psia:psi absolute)1,5002,0002,5003,000005000.90.80.70.60.50.40.30.20.1Z factor(compressibility)図6VOTRANS方式の特徴(その1)超臨界による体積減少の利用温・1気圧の理想状態の気体は、常温・300気圧で、体積は1/300となることが容易に理解できる。 ところが、現実の気体においては、圧力と体積は逆比例の関係とはならず、かならず逆比例の関係から幾分ずれたものとなっている。 このことを状態方程式で表した場合、現実気体の状態方程式は、この理想状態からの偏奇をzファクターというものを用いて、PV=znRTで表現することにしている。すなわち、理想気体では、zが1である。 zは、気体の種類、組成、温度、圧力によって異なっている。 図6は、-30℃のときの天然ガスにおける、圧力に対するzファクターを表したものである。常温(25℃)のときの天然ガスのzファクターも同時に示している。 この図では、メタンのみのリーンガス(Lean Gas)*5とC2+を含むリッチガス(Rich Gas)*6のzファクターが概念的に示されている。ここで、zファクターが1以下であるということは、理想気体に比べて、同じ圧力で体積がより小さくなることを示している。 また、このグラフは下に凸となっており、これは、最も圧縮効率がよい圧力があることを示唆している。さらに、常温(図6中 Ambient Temperature)では理想気体からの偏奇は少なく、高い圧縮効率は得られないことも分かる。 一般的な組成の天然ガスにおいては、-30℃においては、13MPa(1,900psia)付近にzファクターの極小値がある。 いま、この時のzファクターを0.52とすると、常温(25℃)、1気圧の気体は、-30℃、13MPaにより、体積は1/130ではなく、式(1/130×(273-30)/(273+25)×0.52)により1/300になる。 すなわち、天然ガスを-30℃という温度に冷却すれば、13MPa程度の圧力で、理想気体の約2倍の圧縮効率が得られるということである。② エチレングリコール(EG)を利用した天然ガスの荷役・荷卸 いま一つの特徴は、天然ガスの荷役・荷卸にEGを利用していることである。 この説明をする前に、図7により、CNG船のタンクの構造を説明する。ガスを貯蔵する1本のシリンダーは、ステンレス製の径42インチ×高さ36mであり、このシリンダーが24本×2列(すなわち、48本)で1タンクという常温・高圧(25MPa)で天然ガスを圧縮し、輸送するものである。 また、本スタディーの対象とした米国のEnerSea社の開発したVOTRANS(Volume Optimized Transport and Storage)という方式では、42インチのシリンダータンクに低温/高圧 (-30℃/13MPa)で天然ガスを圧縮し、輸送するものである。 いずれの方式も、技術的には実用化レベルとしているが、フィールドへの適用に関しては、すべてFS段階にとどまっている。 本スタディーでは、VOTRANS方式の特徴である、超臨界による体積減少を利用した天然ガス圧縮率向上効果、天然ガス荷役・荷卸時にエチレングリコール(EG)を用いることによる天然ガスのタンク内残存量低減効果、すなわち両者の効果を併せた輸送効率向上効果を評価して、VOT-RANS方式をCNGの対象技術とした。 VOTRANSのCNG船の概観を図5に示す。以下に、VOTRANS方式のCNG船の特徴を概説する。EnerSea図5CNG船概観①超臨界による体積減少 理想気体では、圧力と体積は逆比例の関係にある。このことは、理想気体の状態方程式は、PV=nRTで表される、ということと同じ意味である。ここで、Pは圧力、Vは体積、nはモル数、Tは絶対温度で、Rは気体定数である。 理想気体の状態方程式により、常*5:C2(エタン)~C6(ヘキサン)成分がない、または少ないガスをいう。*6:C2(エタン)~C6(ヘキサン)成分に富むガスをいう。41石油・天然ガスレビューP位となっている。 さらに、タンクが9個集まり、1ホールドという概念単位となる。標準のCNG船は、5ホールドを持つ。すなわち、標準的な大きさのCNG船は、シリンダー2,160本を有している。 VOTRANSのCNG船では、船首側に小さなタンクがあり、ここにEGが貯蔵されている。 荷役時には、あらかじめ数タンクにEGを満たしておき、高圧ガスをタンクの上方から導入し、船で-30℃に冷却し、EGをガスで置換する。この際、ガスに含まれる微量の水分がEGで吸収・除去されるのである。 荷役速度は、通常は、ガス生産速度と同一の速度で行う。置換されたEGは、次の数タンクに移送される。 荷卸時には、タンク下部にEGを供給し、EGでガスを押し出してタンク外に払い出す。このことにより、受け入れ側の受け入れ圧力いかんにかかわらず、タンク内に残るガスは約1気圧となり、99%のガスを払い出すことが可能となっている。 荷卸速度は、1日で着船・払い出し・離船が可能な速度を想定している。 CNG-FPSO(後述)からCNG船への荷役、CNG船から受入基地への荷卸には、図8に示したSTL(Submerged Turret Loading)という装置を用いる。 これは、非稼働時には海中にあり、3. システム概要 ここで、検討対象としたPL、FLNG、CNGのベースケースのそれぞれの各開発システムを説明する。アナリシスEG Tankシリンダー=42inch×36m1タンク=24本×2列1ホールド=9タンク1船=5ホールドCNG船の大きさ(ベースケース)L×B×D-d=340×52×30-9.2m図7VOTRANS方式の特徴(その2)CNG船の概要とEGを利用した天然ガスの荷積・荷卸STL: Submerged Turret Loading。荷役を行う装置。非稼働時には海中。荷役時に海中から引き上げて船底のTurret部にSTLを引き込み、荷役を行う。図8STL概観荷役時に海中から引き上げられて、船底のターレット(Turret)*7部にこれを引き込んで荷役を行うものである。 400MMscfdというベースケースで用いるCNG船は、標準状態のガス875MMscfの貯蔵能力があり、その大きさはL×B×D-d=340×52×30-9.2mである。(1)パイプライン開発システム(図9) ガス田近傍のGas-FPS(Semi-submersible Floating Production System)は、デッキ上にガス処理設備(酸性ガス除去、重質分除去、脱水)、CO2圧入装置、パイプライン輸送のための昇圧コンプレッサーを搭載している。 購入された原料ガスはガス処理設備に導入され、ここで酸性ガス除去、重*7:船体を鉛直軸周りに自由に回転させる機構をターレットという。船体内部にターレットのあるインターナル(Internal)型と外部にあるエクスターナル(External)型がある。ターレットにチェーンなどを取り付けた係留をTurret Mooringという。ターレットの内部にはライザーとアンビリカルの 流体や電気信号などを通過させるためのスイベル機構が装備されている2006.11 Vol.40 No.642Vしいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか? ? CNG技術を中心に ?FPS出荷輸送受け入れ Gas-FPS(Semi-submersible Floating Production System) ・ガス処理設備(酸性ガス除去、重質分除去、脱水) ・CO2圧入装置 ・コンプレッサーパイプライン ・径:33 インチ ・肉厚:28cm ・圧力(1,800→875psia)なしGas PipelineGas Booster StationTo Main GridユーザーPower Station図9パイプライン開発システム(ベースケース)LNG-FPSO ・ガス処理設備(酸性ガス除去、重質分除去、脱水) ・天然ガス液化設備 ・CO2圧入装置 ・貯蔵設備(LNG船1隻分)LNG船 ・隻数:2・輸送量:59,100m3/隻<LNG量ベース> 受け入れターミナル ・オフローディングシステム ・桟橋 ・貯蔵タンク(LNG船2隻分) ・再ガス化装置出荷輸送受け入れLNG CarrierLNG O?oading Jetty Storage Tank(2隻分)LNG FPSOLNG CarrierLNG Re-gasi?cation Plantユーザー図10FLNG開発システム(ベースケース)の容量とした。 LNGは気化されてユーザーに販売される。(3)CNG開発システム(図11) LNG-FPSOと同じように、CNG-FPSOでは、モノハル型の浮体のデッキ上にガス処理設備(酸性ガス除去、重質分除去、脱水)、CO2圧入装置とコンプレッサーが、デッキ下の船体にはCNG貯蔵設備がある。 CNGのシステム概念では、基本的にCNG船は常にCNG-FPSOに着船し、荷役を行っているという想定をしているので、CNG-FPSOの貯蔵設備の貯蔵量は、着船できない状態は1日で解消すると仮定して、天然ガス生産量1日分としている。 CNG-FPSO上で、生ガスはガス処理質分除去、脱水の処理を受ける。また、除去された酸性ガスは、天然ガス田近傍の層に圧入される。さらに、脱水処理によって抽出された水分は、処理されて海中投棄される。 処理されたガスは、自圧で、もしくはコンプレッサーで1,800psia(124気圧)に昇圧されて、肉厚28㎜、径33インチのパイプラインに導入される。 市場まで2,000㎞を輸送されたガスは、途中での昇圧はなく、着圧は875psia(60気圧)となっている。パイプラインの上陸地点で製品ガスはユーザーに販売される。(2)FLNG開発システム(図10) FLNGのデッキ上に、ガス処理設備(酸性ガス除去、重質分除去、脱水)、天然ガス液化装置、CO2圧入装置を搭載している。また、デッキ下のタンクは、LNG輸送船1隻分の貯蔵能力を持つLNG貯蔵設備となっている。 酸性ガスや液体分の処理は、PL開発システムの場合と同じである。処理後のガスによりLNG製造がなされる。製造されたLNGはFLNGに搭載されたローディング(荷役)装置で、LNG輸送船に移送される。 LNG輸送船は、モス型のLNG積載量5万9,700?の船で、2隻とした。このLNG輸送船の規模は、以下のことを前提として決められた。 すなわち、LNG輸送船は、より大型の輸送船1隻でのシステムとすることも可能であるが、LNG輸送船の事故時のリダンダンシー*8を考え、輸送船は最低2隻とすることに決めたことから算出されたものである。 消費地の受入基地には、オフローディング(荷卸)システム、桟橋、貯蔵タンク、再ガス化装置を持つ。受入基地の貯蔵タンクは、LNG船2隻分*8: Redundancy 冗長性。狭義には建造物や機械類・システムの設計における余裕を指し、その対象物に想定される負荷、および要求される性能に対し、それより多め、大きめに設計された「余裕」や「余地」を指す。通常は構造破壊につながるリスクを低減させ、また、一部が破損したり機能を停止した状態でも、その機能をある程度保持するために設けられる(はてなダイアリーホームページより抜粋)。43石油・天然ガスレビューAナリシスCNG-FPSO ・ガス処理設備(酸性ガス除去、重質分除去、脱水) ・CO2圧入装置 ・コンプレッサー ・貯蔵設備(生産量1日分)STL:2基CNG船 ・隻数:4 ・輸送量:875MMscf/隻<標準状態ガス量ベース>STL:1基受け入れターミナル ・貯蔵タンク(CNG船2隻分)出荷輸送受け入れCNG FPSOCNG CarrierSTLCNG CarrierSTLStorage Tank(2隻分)Short PLユーザーPower Station図11CNG開発システム(ベースケース)ガスは陸上に移送されて、貯蔵タンクに貯蔵されるとともに、ユーザーに販売される。貯蔵タンクの大きさは、LNGの場合と同じCNG船2隻分とした。 なお、VOTRANSのシステムでは、CNG船で使われた概念を用いた圧縮効率(以後、LNGによる天然ガスの体積変化効率と合わせて、体積効率と称する)の高い貯蔵タンクが用意されている。設備に導入されて、酸性ガス除去・重質分除去・脱水されて、製品ガスと同じ組成のガスとなる。 CNG-FPSOからCNG船への処理済みガスの供給は、生ガス生産速度で行われる。また、CNG船への移送、13MPaへの圧縮にはコンプレッサーが使われる。 このようなCNG船への荷役は、STLを介して行う。出荷側のSTLは2基であるが、これは生産を中断せずに連続して出荷するためである。 ベースケースの場合、標準状態換算で875MMscfのガスが搭載可能なCNG船4隻が必要となる。 一方、受け入れ側の荷卸時のSTLは1基である。これは、着船から移送・離船まで1日と想定していること、受入基地側に貯蔵タンクを用意していることから、荷役時のような2基のSTLでは余剰になるためである。 STLから短距離パイプラインで製品4. 結果および分析(1)熱効率・投資額・経済性 ベースケースの熱効率・投資額・経済性を算出し、表5にまとめた。 熱効率は、ここでは、原料ガス総量の熱量と製品ガス総量の熱量の比で表現される数値である。 出荷時の熱効率が低下するのは、圧縮や冷却のためのコンプレッサー動力等のため、天然ガスが消費されるためである。また、LNG輸送船やCNG船の駆動燃料は製品ガスとしたため、消費地到着時の熱効率はさらに低下することになる。 パイプラインの場合、途中の昇圧がないので、輸送途中で熱効率は低下しない。 このようなことで、PL、FLNG、CNGの各開発システムの熱効率は、それぞれ、98%、91%、95%となった。 それぞれのシステムに関して、出荷、輸送、受け入れ別に投資金額を算定した。PL開発システムではパイプラインが、FLNG開発システムでは液化プラントが、CNG開発システムではCNG船と受入基地の貯蔵タンクが、コストの支配因子となっている。総投資額は、PL、FLNG、CNGそれぞれの開発システムで、35億3,000万ドル、19億4,000万ドル、23億2,000万ドルと表5ベースケースの分析結果概要 ?熱効率・投資額・経済性?表6ROI計算の前提条件の概要熱効率(%)投資金額(百万ドル)年間操業金額(百万ドル/年)ROI(%)出荷時消費地到着時出荷輸送受入合計パイプラインFLNG98983123,21803,530498.893911,4082662641,93813510.2CNG98955841,2934432,32010711.1生産期間償却率所得税建設期間投資パターンインフレ率借入金20年10%/年30%3年30%-50%-20%0%0%2006.11 Vol.40 No.644Vしいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか? ? CNG技術を中心に ?ラメータとしては、輸送距離、生産量、ガス組成、原料ガス価、製品ガス価、受入基地の有無とした。ベースケースに対して、各パラメータを独立に変化させて検討した。パラメータの範囲は、表7のようになっている。この表は、先に示した表3、4を整理しなおしたものとなっている。①PL開発システム 図12に、ベースケースに対して、各パラメータを独立に変化させたときのROIの感度を示す。さらに、図13に、生産量、輸送距離を変化させた場合のROIの感度を示す。 この結果から、PL開発システムの経済性は、輸送距離の影響を非常に受けやすいことが分かる。これは、輸送距離の増加に対して、システムの建設費の増加が大きいためである。 本条件におけるPL開発システムのDistance Sensitivity : Pipeline40$-1,000km40$-2,000km40$-3,000km40$-4,000km200400600Production Rate(MMscfd)25201510ROI(%)500表7感度分析におけるパラメータの範囲輸送距離(㎞)生産量(MMscfd)ガス組成概要(%)1,000250ベースケース2,0004005,000550酸性ガス増加ケース C1:60、C2+:8、 CO2:30、H2S:3C1:80、C2+:8、 CO2:8、H2S:3重質ガス増加ケース C1:73、C2+:16、 CO2:7、H2S:3原料ガス価(ドル/MMBtu)製品ガス価(ドル/MMBtu)受入基地1.24.51.66あり27.5なしなった。 年間操業費は、人件費およびメンテナンス費用からなり、燃料費は含まれない。燃料費は、原料ガス購入費と製品ガス販売費の差のなかで考慮されているからである。 以上の結果を元にして、表6を前提としたROI計算を行った。PL開発システムは8.8%、FLNG開発システムは10.2%、CNG開発システムは11.1%となり、ベースケースの経済性は、CNG開発システムが最も高かった。 FLNG開発システムに比べて、CNG開発システムの方が投資額は高いが、CNG開発システムの方が熱効率は高く、年間操業費用も安いので、これらの要因がFLNG開発システムと比較した場合の経済性の向上に寄与している。(2)各システムの特徴 ベースケースのシステムを基に、以下のパラメータ分析をすることにより、各システムの特徴を抽出した。パ輸送距離(km)生産量(MMscfd)1,0005,000250550ガス組成酸性ガス33%C2+ 16%原料ガス価1.2(ドル/MMBtu)2製品ガス価(ドル/MMBtu)4.57.5受入基地不要-15.910.6-2.21.2-41.6-1.21.1-4.73.7ベースケースとの差PLROI=8.8%図12PL開発システム 経済性の各パラメータに対する感度図13PL開発システム 生産量・輸送距離と経済性の関係Distance Sensitivity : LNG40$-1,000km40$-2,000km40$-3,000km40$-4,000km200400600Production Rate(MMscfd)25201510500ROI(%)輸送距離(km)生産量(MMscfd)1,0005,000250550ガス組成酸性ガス33%C2+ 16%原料ガス価1.2(ドル/MMBtu)2製品ガス価(ドル/MMBtu)4.57.5受入基地不要-5.3-7.2-7.3-1.80.93.12.2-21.95.43.2ベースケースとの差FLNGROI=10.2%図14FLNG開発システム 経済性の各パラメータに対する感度図15FLNG開発システム 生産量・輸送距離と経済性の関係45石油・天然ガスレビューAナリシス場合、ROI 10%以上の経済性を持つためには、市場までの輸送距離は2,000㎞以内であることが必要である。②FLNG開発システム 図14に、ベースケースに対して、各パラメータを独立に変化させたときのROIの感度を、図15に、生産量、輸送距離を変化させた場合のROIの感度を示す。 FLNG開発システムの経済性は、輸送距離に対して鈍感である。これは、天然ガスを1/600に圧縮できる体積効率のよさが検討範囲すべてにわたり、LNG輸送船の大きさは異なるものの、2隻での輸送を実現できるためである。 天然ガス組成に関しては、そのROIは比較的敏感である。これは、LNGの場合、熱効率が比較的低く、原料ガス組成の変化が熱量ベースの製品生産量に、比較的大きく反映するためである。 システムの受入基地が不要の場合、すなわち、既存の受入基地にLNGが販売可能な場合、その経済性は3%以上向上する。製品ガス価格の経済性への影響も比較的大きいことが分かる。③CNG開発システム 図16に、ベースケースに対して、各パラメータを独立に変化させたときのROIの感度を、図17に、生産量、輸送距離を変化させた場合のROIの感度を示す。 本検討条件範囲では、天然ガスをLNGの半分程度までしか圧縮できないというCNG輸送の体積効率が、CNG輸送に3,000㎞での経済性の限界を与えていることが分かる。 CNG開発システムの受入基地不要Distance Sensitivity : CNG40$-1,000km40$-2,000km40$-3,000km40$-4,000km200400600Production Rate(MMscfd)25201510ROI(%)500輸送距離(km)生産量(MMscfd)1,0005,000250550ガス組成酸性ガス33%C2+ 16%原料ガス価1.2(ドル/MMBtu)2製品ガス価(ドル/MMBtu)4.57.5-5.2-3.9-4.82.32.32-1.61.5-5.85.1受入基地不要2.6ベースケースとの差CNGROI=11.1%図16CNG開発システム 経済性の各パラメータに対する感度図17CNG開発システム 生産量・輸送距離と経済性の関係-15.910.6-1.80.9-5.22.3-1.21.1-21.9-1.61.5ベースケースに対するROIの差(%)ベースケースに対するROIの差(%)e.製品ガス価P/L-2.21.2-5.33.1CNG-3.92.3P/L-4.73.7FLNG(ドル/MMBtu)CNG-7.3-5.85.45.12006.11 Vol.40 No.646ベースケースに対するROIの差(%)ベースケースに対するROIの差(%)図18各パラメータの各システムに対する感度比較ベースケースに対するROIの差(%)ベースケースに対するROIの差(%)3.22.6f.受入基地の有無P/LFLNGCNG受入基地不要-41.6-7.2-4.82.22c.ガス組成P/LFLNGガス組成酸性ガス33%C2+ 16%CNGd.原料ガス価P/LFLNG(ドル/MMBtu)CNG1.22原料ガス価製品ガス価4.57.5P/LFLNGCNG輸送距離(km)1,0005,000a.輸送距離b.生産量FLNG(MMscfd)生産量250550Vしいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか? ? CNG技術を中心に ?CNG開発システムのそれよりも少し高いためである。(4)適用範囲 油価40ドル/bblの場合のPL、FLNG、CNGの各開発システムの輸送距離および生産量に対する適用範囲を図19にまとめた。 赤い線より下の薄紫の網目で示した領域は、いずれの開発手段でも経済性のないROI 10%以下となる部分を示している。この領域は、原料ガス組成により変化する。 酸性ガスの増加・重質ガスの減少により赤い線は上方に推移し、その逆の場合、それは下方にずれてくる。PはPL、CはCNG、NはFLNGの開発システムを示し、それぞれの開発手段の最適適用範囲を示している。また、CNG開発システムに着眼し、CNG開発システムに対するPL、FLNGそれぞれの開発システムのROIの相対的優位性が15%以下であれば、CNG開発システムも適用可能と仮定した場合におけるそれの適用範囲を青線で示した。 この分析から、以下のことが分かる。・CNG開発システムは、PL、LNG(FLNG)開発システムによる天然ガス田の開発範囲を補完し、それを広げる。・PL、LNG(FLNG)、CNGの開発システム選択の主要要素は、市場までの輸送距離である。それぞれの最適な輸送距離は、天然ガス生産量100~550MMsfcdの範囲においては、PL1,000㎞、CNG2,000㎞、LNG(FLNG)3,000㎞以上にある。・油価40ドル/bblの時、輸送距離2,000㎞の場合は、上流側事業が経済性を持つためには、その生産量は少なくとも350MMscfd以上である必要がある。これは、20年生産を仮定すれば、総生産量は2.6Tcfであり、必要埋蔵量をプロジェクト総生産量に対して余裕が必要であるとして、その割合を1.7倍とすれば、4.4Tcfとなる。換言すれば、アジア・太平洋地域の海洋ガス田の場合、油価40ドル/bblにおいては、市場までの輸送距離2,000㎞では、そのガス田の埋蔵量は4.4Tcf以上である必要がある。・それ以下の埋蔵量を持つ海洋ガス田が開発可能となるためには、市場までの輸送距離がより短いこと、あるいは油価がより高くなるとともに、熱量あたりの油価に対する相対的原料ガス価が維持されるか、低下することが必要となる。PipelineLNGCNG酸性ガス増加・重質ガス減少NNNNCCCCNNNN酸性ガス減少・重質ガス増加酸性ガス減少・重質ガス増加40$/bblStranded ROI < 10%PPPPPP550400250100Production (MMscfd)1,0002,000 3,000 4,000 5,000Distance (km)図19PL,FLNG,CNG各開発システムの適用範囲(油価40ドル/bbl時)のケースでは、その経済性は3%弱向上する。このようなCNG開発システムの受入基地不要のケースは、米国のように、貯蔵施設を介せずに既存の陸上輸送供給パイプラインにガスを直接導入することが可能なケースであり、その背景には、購入者側の地下貯蔵基地の保有や大量のパイプラインのラインパック、消費の日変動や季節変動を不要とする多様な需要者の存在等が必要である。 また、CNG開発システムも、他の開発システムと同様に、製品ガス価に比較的敏感なことが分かる。(3)各パラメータごとの比較 各システムの特徴をより明確に抽出するために、各パラメータごとのシステム経済性への影響を見たのが、図18a~18fである。輸送距離に対する経済性への影響の大きさの感度は、PL、CNG、FLNG開発システムの順になっている。これは、各開発システムの輸送の体積効率の順序となっている。言い換えれば、PLが輸送距離により大幅にコスト上昇するシステムであることに対して、LNG開発システムは、本検討条件で、輸送船2隻で済み、また、CNG開発システムは距離に応じて2~10隻のCNG船が必要となることが背景にある。 生産量、ガス組成、原料ガス価、製品ガス価の四つのパラメータの各システムの経済性への影響の大きさは、すべて同じ順序であり、それは、FLNG、CNG、PL開発システムの順に大きい。これは、各システムの熱効率の大きさの逆順であり、熱効率が大きいほど感度が小さい。 受入基地の不要が想定されるのは、LNGとCNGの両開発システムであるが、FLNG開発システムの方がCNG開発システムよりもROIへの影響は大きかった。これは、ベースケースでは、FLNG開発システムの受入基地の方が47石油・天然ガスレビューEただし、FLNGやCNGは固定した生産システムではなく、移動可能な生産システムである。すなわち、ガス田の埋蔵量が枯渇した段階で、これらの生産システムは新しいガス田に移動可能である。したがって、これらの生産システムに関しては、比較的広いエリアの範囲の複数個のガス田のトータルの埋蔵量として、4.4Tcf以上あればよい、ということになる。・開発可能限界範囲は、輸送距離が増加した場合、酸性ガスが増加した場合、重質ガスが減少した場合、減少していく。アナリシス5. まとめと考察(1) 本スタディーから判明したこととその限界 本スタディーにより、東南アジア・オセアニア地域の海洋ガス田に対する開発手段に関して、以下の点が明らかになった。・CNGという開発手段は、PLとLNG(FLNG)で開発できないガス田を開発可能とする可能性があること。そのことにより、ガス田の開発可能範囲を広げる可能性があること。油価40ドル/bblのとき、他の開発手段との相対関係におけるその最適輸送距離は、2,000km付近であること・ただし、PL、LNG(FLNG)、CNGいずれの開発手段を取ったとしても、油価40ドル/bblのとき、輸送距離2,000kmの場合、上流側事業が経済性を持つためには、その生産量は少なくとも350MMscfd以上である必要があること。これは、可採埋蔵量として、そのガス田が少なくとも4.4Tcfを持つ必要があることを意味すること。ただし、移動・再利用可能なFLNGやCNGの場合には、空間的・時間的に広い範囲の複数個のガス田埋蔵量として4.4Tcfを持てばよいこと。・これ以下の可採埋蔵量のガス田を開発するためには、同油価において、市場までの距離がより近いか、ガス組成がより重質分に富み、酸性ガスがより少ない必要があること。・また、生産量、ガス組成、原料ガス価、製品ガス価のパラメータの感度分析は、その影響度はそれぞれの開発手段の熱効率の逆順であることが示された。つまり、熱効率の悪いプロセスは、生産量や原料ガス価、製品ガス価の影響を強く受ける。これは、当然の結果であるが、ここで改めて、開発手段の熱効率を向上させることがいかに重要であるかを再認識させた。 本検討には、いくつかの制約を設けている。その最も大きなことは、システムに受け入れ機能を持たせたことである。すなわち、CNG開発システムに関しては、CNG船2隻分の貯蔵能力を持つ基地を、LNG開発システムに関しては、LNG船2隻分の貯蔵能力と気化器を持つ基地を、システムの中に組み込んだことである。 このような受入基地が必要でない場合、CNG、LNGいずれのシステムにおいても、その経済性(ROI)は3%程度向上する。言い換えれば、このような場合は、上流開発においては、より小さなガス田にまで経済性を有する範囲を広げることができることになる。これは、実際のプロジェクトにおいては、CNGに関しては、貯蔵機能を持つ既存輸送・供給PLを有するユーザーへの販売であり、LNGに関しては、既存のLNG受入基地を有するユーザーへの販売となる。 本スタディーは、アジア・太平洋地域の海洋ガス田を対象として、市場はアジア地域において行ったものである。このエリアでは、PL網が未発達であり、LNG受入基地は、日本、韓国、台湾、中国に存するが、日本以外はその数が限られている。 欧米市場を対象とすれば、CNGの受入基地を置かない前提の方が妥当性が高く、日本市場を対象とすれば、LNGの受入基地は不要とした方が蓋然性が高いかもしれない。(2) ストランデッドガス田開発の一般則 周知のように、大規模なストランデッドガス田と中小規模のそれとは、開発へのアプローチが本質的に異なる。大規模なガス田は、通常、単位生産量あたりの開発コストが安く、開発手段の適用に際してスケールメリットを得られるので、適用可能なガス開発手段に制約はない。このため、大規模なガス田開発は、上流会社が主導することができる。 一方、中小ガス田は、開発コストが比較的高く、開発手段のスケールメリット追求にも限界があることが多く、適用可能なガス開発手段に制約があることが多い。したがって、中小ガス田の開発は、上流が主導することはあまり現実的ではなく、むしろ下流が主導して行われるものとなろう。 つまり、中小ガス田の場合、上流側の利益追求によるよりも、下流側のニーズが上流側にリーズナブルな利益をもたらすときに開発可能となる。したがって、中小ガス田を持つ上流事業2006.11 Vol.40 No.648Vしいガス田開発技術は、どこまで天然ガス田の開発可能性を広げるか? ? CNG技術を中心に ?者は、大規模ガス田の場合よりも、近傍のマーケットニーズを的確に判断して、ニーズにあった提案をしていくことがより強く求められる。 換言すれば、中小規模のガス田開発は、より地域の特性に影響を受けやすい。また、技術開発者がしなければならないことは、当然のことながらマーケットのニーズに合った開発手段の適用に際して上流側の利益を最大化するための努力、すなわちCAPEXの低減とその熱効率の向上である。(3)今後の状況の変化について ストランデッドガス田開発の問題を検討する場合に、特に気をつけなければならないことは、最近のLNGビジネスのグローバル化の流れである。 LNGビジネスは、グローバルな商品ではあったものの、欧州、米国、アジアのマーケットはそれぞれ、供給者も異なり、価格形態も異なっている等、エリア的な独立性が強かった。LNG契約は、契約ごとに異なる価格算定方式を持つ長期契約を前提として、特定供給者から、需要者の特定の受入基地への売買が基本であった。 最近のLNGビジネスは、欧米市場の拡大、短期・スポット市場拡大、カタールという真のスイングプロデューサーの出現、価格形態変化等という真のグローバル化に直結する動きが、プロジェクトの大型化という現象とともに生じている(参考文献参照)。 この流れの強さ次第では、10年後程度の近未来には、LNGビジネスはより石油ビジネスに近づく可能性があるかもしれない。すなわち、プロジェクトによっては、特定ユーザーとのリンク、特定受入基地とのリンクが外れ(その代わりに上流側のリスクが大きくなり)、グローバル化したマーケットに対して、透明度の高い価格でLNGが販売できるかもしれない。 そうなった場合、その開発コストの相対的高さにかかわらず開発可能である中小油田と同様に、中小ガス田もLNGの開発対象となる時代が来る可能性もある。つまり、最近のLNGのプロジェクトの大型化とは正反対の流れである。 LNGの場合、PL、CNGと比較した熱効率は低いものの、プラントアウト*9における熱効率は93%である。このことは、中小規模ガス田の比較的高価なガスをLNGで液化することがそれほど不利ではないことを意味していると考えられる。もちろん、油田開発に対するLNG開発システムの全体コストの相対的高さの問題は残るであろう。 このような状況を認識しつつ、今後とも、中小ガス田の開発手段の検討をしていきたい。参考文献石井 彰「国際LNG市場の構造変化」エネルギー・資源 6-10, Vo1.27, No.5(2006)執筆者紹介鈴木 信市(すずき しんいち)JOGMEC 石油・天然ガス開発R&D推進グループ調査役兼 石油・天然ガス調査グループ調査チーム上席研究員、天然ガス・中流担当。千葉県習志野市生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科応用化学専攻修了。工学博士。石油公団(現JOGMEC)入団後、主として天然ガス関連分野を中心に配属。専門は、化学転換を利用したGTL、DME等の天然ガス開発技術(中流)、天然ガス関連利用技術。本年8月妻とドイツに旅した時、ハイデルベルクでモーツァルトの174枚入りCDをわずか80ユーロで手に入れました。しかし、喜びのあまり、これを抱えて、毎日雨・10度台前半の冬のような気温の中を半そで・半ズボンで、ローテンブルクからフッセンを移動しているうちに、具合が悪くなり寝込んでしまいました。佐尾 邦久(さお くにひさ)1971年に東京大学工学系大学院船舶工学修士課程を修了後、三井海洋開発(株)に18年勤務し、作業船と掘削リグの研究開発・設計・建造に携わった。1989年(株)海洋工学研究所を設立し、海洋石油開発・生産に関する広範な調査・研究開発を石油公団(現JOGMEC)および多数の企業と実施してきた。本稿は、その成果に基づくもので、その機会を与えられたことを感謝し、また、今後とも多くの方に役立ちたい。趣味は、ハンドボール(年間20試合くらい)、100坪ほどの畑での野菜栽培とその料理、それからお酒と体を使うことが多い。*9:本調査では、PL、LNG、CNGシステムについて、井戸元にあるガス圧縮・転換プラントのプラント出口(プラントアウト)の熱効率と、さらにそこから海上輸送して、受入基地で製品を販売したときのシステムの熱効率の両方が出されている。49石油・天然ガスレビュー
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