ページ番号1006250 更新日 平成30年2月16日

技術力による差別化を 図るメジャーズ

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レポートID 1006250
作成日 2006-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業技術
著者
著者直接入力 岡崎 淳
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ 技術力による差別化を図るメジャーズ1.2003年以来、メジャーズの研究開発投資が増加している。特に2005年は、研究開発投資を大幅に増加させたメジャーズも存在する。この背景としては、非在来型資源への関心の高まり、在来型の開発生産の複雑化、コストインフレに対応したコストダウン対策、資産市場の高騰による研究開発費への資金配賦の増加が挙げられる。2.油価高騰により、新たな資源獲得が困難な状況になっているが、メジャーズは、高い技術力を資源保有国にアピールし、差別化を図ろうとしている。3.2000年代初頭に起きた、合併・買収等を起因としたリストラクチャリングにより、研究開発のアウトソーシングが行われてきたが、最近は、その反省もあり、内製化の動きが出てきている。4.ExxonMobilは、特に、自らの技術力の高さ、プロジェクト管理能力の高さを強調している。その実例として、アッパーザクム油田への参入などを挙げている。5.ExxonMobilの技術力の高さの背景としては、長期的視野に立ち、研究者、技術者を確保し、研究開発投資をコンスタントに行い、技術力の内製化を継続したことがその理由として考えられる。1.研究開発費を増加させているメジャーズ 最近、メジャーズによる自らの技術力についてのアピールが頻繁に行われている。 ExxonMobilは、2006年8月30日に自社の技術力についてのプレゼンテーションを行った。Chevronは、新たに技術センターを、英国のアバディーンと豪州のパースに設立することを発表している。 BPは、2005年の12月に技術力に関するプレゼンテーションを行っている。このプレゼンテーションは、非常に反響が大きかったとのことであり、2006年に行われた同社の年次株主総会の終了後に、このプレゼンテーションについての質疑応答の時間を設けている。 Royal Dutch Shellは、同社経営幹部によるプレゼンテーションで、技術力こそが国際石油会社(IOC)が提供できるメリットであると盛んに発言している。 メジャーズによるこれらの姿勢は、研究開発(R&D)投資(全社ベース)にも表れている。 図は、メジャーズによるR&D投資の推移である。2003年以降、各社とも概してR&D投資を増額させている。特に2005年は、ほぼ全社でR&D投資が増加している。百万ドル1,000800600400200020012002200320042005年図研究開発費の推移TotalExxonMobilRoyal Dutch ShellBPChevronConocoPhillips 投資額のうち、上流部門が占める割合については、詳細な数値の公表はされていないものの、ExxonMobilは約3分の1(年間約2億ドル)が上流部門への投資であるとしている。 メジャーズ各社によるR&D投資の長期的推移であるが、長期的には、1970年代から2006.11 Vol.40 No.666Nトのオペレーターとして経験を積んでいることから、ノウハウが蓄積されており、このノウハウが生かされているものと思われる。 さまざまな経験を積んでおけば、そのノウハウ・経験が新たな地域でも生かせる可能性があり、産油国にアピールする際にも、その実績を武器に使える可能性がある。2.技術の内製化を再度図り始めたメジャーズ このように、メジャーズによるR&Dへの投資が活発化しているが、前述のとおり、それに先立っては、各社とも大型合併が相次ぎ、リストラのため、人員削減並びに技術のアウトソーシングを行ってきたと言われている。 このため、Schlumbergerなどのサービス会社に技術が蓄積され、国営石油会社がこれらサービス会社を最大限活用することにより、在来型の開発を行うことが可能となっている。 また、昨今、PetrobrasやStatoilなどの一部国営企業は、深海開発技術を身につけ始めているようであり、メジャーズとも遜のない技術を保有しているとの声もある。 しかしながら、前述のとおりR&D投資の重要性がメジャーズ各社により再認識されたことにより、2000年初期のアウトソーシングはいき過ぎであったのではないかという反省が生まれている。 このことを背景として、最近は、各メジャーズとも、技術の内製化を再度図り始めているようである。ただし、すべての技術を内製化するのではなく、焦点を絞り、かつ、大学との協業や、中小企業とのジョイント・ベンチャー設立により技術開発を行っていこうという動きになっているようである。色しそんょく1980年代の半ばにかけての高油価を背景として、北海、アラスカといった、環境が厳しい地域での開発が進められており、これらを背景にR&D投資が増加した。 逆に、1980年半ばから1990年代は、油価の下落およびこれを引き金としたコスト削減が各社の大きな関心となったことから、各社とも研究開発費の削減を行っている。 例えば、Royal Dutch Shellは、油価が大幅に下落した1998年から2000年にかけて、R&D投資をほぼ半減させている。しかしながら、2000年に入ってからは、R&D投資の必要性が再認識されており、前述のとおり、2003年以降の各社のR&D投資増加につながっている。 最近のR&D投資増加の背景としては、第一に高油価を背景としたメジャーズによる非在来型資源への関心が高まっていることが挙げられる。 第二には、在来型の探鉱開発も、深海の開発など、従来のものとは異なり、より複雑になっており、より高度な技術が求められていることが挙げられる。 第三の理由としては、油価は高騰しているものの、資機材の価格高騰、人材不足、タイトなリグ繰りなど、メジャーズを取り巻くコスト環境は厳しいものがあるため、いかに効率的に、低コストで操業を行うかが各社の関心になっていることが挙げられる。 第四に、高油価を背景として、現状の上流権益の資産市場が高騰化していることから、新たな権益獲得に資金を投入するよりは、短期的には既存プロジェクトのコスト削減効果が期待でき、長期的には、非在来型資源など長期的に効果が出るR&D投資への資金投入を選好している可能性が挙げられる。 ExxonMobilは、R&D投資に関し、油価等の投資環境にかかわらず一定の額でコンスタントに行い、かつ長期のコミットメントが必要であるとしている。 昨今、高油価を背景にして、資源国の立場が強まり、資源へのアクセスが困難になっており、また、在来型資源の開発は、サービス会社を活用することにより、国営石油会社でも可能となっている。 これに対して、深海、LNGなどは、依然として国営石油会社の手には負えないため、これらの鉱区の開発には、技術力導入の観点から、メジャーズを入れざるを得ない状況になっている。 まさに、深海開発およびLNGについては、技術力により国営石油会社や、中堅上流企業との差別化が図られている状況になっている。 また、非在来型資源についても、国営石油会社はほとんど経験がないことから、ノウハウがなく、同様の状況となっている。 このように、メジャーズ各社は、技術力が、まさに他の石油会社との差別化の要因であるとしている。 メジャーズの技術力が光る例としては、2003年のBPのロシアTNKへの資本参加が挙げられる。BPは、技術力をテコに資本参加をしたが、BPの参加により、TNK社の生産は、急激に増加している。 BPの全体の生産量の20%程度はロシアでの生産であることから、BPのTNKへの資本参加は、両社にとってメリットがあったといえよう。 Qatar Petroleum(カタール)は、ExxonMobilを戦略的パートナーとしているが、これはLNG技術をはじめとした、ExxonMobilが保有しているさまざまなノウハウが評価されたことが、その理由であると思われる。 メジャーズが高い技術力を保有している背景としては、第一に毎年数億ドル程度の研究開発費が負担できる収益力が挙げられる。研究開発費は、毎年費用化されていくため、相応の収益力がないとこれを負担することができない。 第二の理由としては、机上の技術のみならず、長年、世界各地での大プロジェ67石油・天然ガスレビューR.メジャーズ各社が強みを持つ技術力 メジャーズ各社が共通に注目している技術は、大偏距掘削(ERD:Extended Reach Drilling)などの掘削技術や、4次元地震探査である。 メジャーズ各社が個別に得意としている分野は、ExxonMobilの場合は、インテリジェント坑井、ERD、LNG関連技術などである。 Royal Dutch Shellは、インテリジェント坑井仕上げ、フラクチャリング技術、オイルサンドをはじめオイルシェールまでを範囲とした非在来型資源の探鉱・開発技術、そしてGTLなどの技術に強みを持つ。 BPは、インテリジェント坑井仕上げ、プロセスのフルオートメーションなどに強みを有する。 Totalは、ERDに強みを持ち、Chevronは、フラクチャリング技術、フルオートメーション、リアルタイムでのモニタリング、重質油の回収にも強みを持っている。Chevronはまた、重質油の技術を生かし、米国のロスアラモス研究所とオイルシェールの研究開発に乗り出すようである。 個別技術と同時に、各社とも強調しているのが、それぞれの技術をうまくコーディネートする管理能力である。 個別の技術が優れていていることは重要であるが、これらを統合すれば、さらに高い回収率の向上やコストダウンにつながる可能性がある。このため、各社ともそれぞれの統合能力の重要性および能力の高さを強調している。4.高い技術力を特にアピールするExxonMobil 昨今のメジャーズによる技術力のアピールが盛んなことは、これまで述べてきたとおりであるが、特にExxonMobilは、自らの技術力およびプロジェクト管理能力をあらゆる機会でアピールしている。 その内容であるが、チャド、ベネズエラ、西アフリカで応用されている地震探査解釈、マレーシア、ナイジェリア、アンゴラで応用されている油層評価、アッパーザクム油田で応用されている炭酸塩岩の油層キャラクタライゼーション、掘削期間を短縮したFast Drill、サハリン1プロジェクトで応用されているERD、またこれら技術を運用・管理していく能力をアピールしている。 アッパーザクム油田については、ExxonMobilが28%の権益取得に成功した。アブダビ国営石油会社のユーセフ総裁は、ExxonMobilを選定した理由として、技術力の高さを挙げている。 ExxonMobilは、アブダビでは経験がないものの、他の地域で水攻法による炭酸塩岩からの回収を行っており、その技術力に対する評価が高かったとしている。 同社がオペレーターであるサハリン1プロジェクトについても、ERDが行われており、Tool Proという、同社が開発したソフトウェアの使用により、11本の井戸を掘削したが、まったくトラブルが生じなかったともしている。 また、サハリン1プロジェクトで、ERDにより掘削された井戸は、距離が世界最大級のものであるとされている。 ExxonMobilの技術力が高く評価されているようであるが、その要因は何であろうか。 一つには、技術開発には資金が必要であるが、油価の変動に応じてR&D投資を増減させるのではなく、コンスタントに投資を行っていったことが、要因として考えられる。 前述のとおり、Royal Dutch ShellがR&D投資を大幅に削減した一方で、ExxonMobilはコンスタントに、ほぼ毎年6億ドルの投資を行っている。 第二の理由として、ExxonMobilは、技術のアウトソーシングについては保守的であると言われている。アウトソーシングより、内製化にこだわったことが幸いした可能性が挙げられる。 Royal Dutch ShellやBPは、コスト削減という観点から、技術を内製化するのではなく、アウトソーシングを行っていた。 これに対してExxonMobilは、アウトソーシングについてはかなり消極的であり、技術の大半が内製化されたと言われている。 技術の内製化にこだわると、自社で開発した技術に固執してしまい、自社外に存在する可能性のあるベストの技術を適用しにくくなるというリスクはあるが、逆に、技術の流出を回避することが可能である。 また、アウトソーシング直後は技術の開発に従事した人材が内部におり、外部技術の問題点の把握、効率的な運用管理が可能であるが、時間がたち、新規技術が増加するとそれも困難になる。 技術力すなわちそれを習得した人材を維持するためには、コストがかかるが、一度、手放してしまうと、外部に技術が流出することのみならず、再度内製化を図ろうとすれば、体制の再構築などのコストが生じてしまい、より高いコストを支払う結果に陥っている可能性が考えられる。 このことは、現在、メジャーズ各社は人員不足で苦しんでいるが、2000年代の初めにリストラで人員を削減した悪影響が、今になって出てきており、その状況と相通ずるところがあるかもしれない。 長期的な視野に基づき、ブレがなく、戦略的に投資を行っていく戦略は、技術面のみならず、上流企業の他の面でも言えることであり、この点が重要であるということの証左となりえないだろうか。(岡崎 淳)2006.11 Vol.40 No.668
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2006/11/20 [ 2006年11月号 ] 岡崎 淳
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