ページ番号1006252 更新日 平成30年2月16日

米国:世界石油工学技術者協会(SPE)の考える石油開発業界の方向性

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レポートID 1006252
作成日 2006-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術企業
著者 伊原 賢
著者直接入力
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ 米国:世界石油工学技術者協会(SPE)の考える石油開発業界の方向性とりで 9月末、筆者は、アラモの砦で有名な米テキサス州のサンアントニオで開催された世界石油工学技術者協会(The Society of Petroleum Engineers:SPE)の年次総会に出席した。石油工学とは、石油・天然ガスの掘削、油層管理、採掘に関する技術の総称のことで、この技術なしに、石油や天然ガスは地上に取り出すことはできないと言っても過言ではない。同協会は世界中に会員数7万人を抱える大技術者集団である。 ここ2年来の油価の上昇安定や石油・天然ガスの需要拡大に支えられ、石油開発業界は世界的に潤っているが、業界の未来は明るいか? 本稿では、SPEの考える石油開発業界の方向性について、2006年の年次総会で議論された教育と重質油をキーワードに論じてみたい。Management and Information, 6. Health, Safety and Environment / HSE)。 総会のテーマは、Focus on the Future(将来に注目)。油価低迷時の1990年代に多くの石油会社が研究開発活動を低下させたなかで、「将来の技術開発を担うのは誰か?」というのが石油開発業界の大きな命題だ。技術者として石油開発業界に入る若者が減り続け、業界の平均年齢は40歳代後半に入っており、技術の空洞化の危機が迫っている。2004年以降の油価の上昇で、大学で石油工学を学ぶ学生数は増えているが、現在業界にいる人たちとこれからの若者とで業界を支えるには、各自が持つ知見を若者に伝授・共有することが極めて大事である。 SPE年次総会は、いうまでもなく、石油工学技術者にとって1年で最大の展示を備えた学会で、学術的にも最も権威があると言われている。今回も、米国の大学を中心に、多様な国籍の大学院生が発表を行っていたが、英語も流で論理構成もしっかりしており、世界的に技術者の裾 アジアの貢献としては、米国留学中の中国人やインド人の学術発表数が多く、彼らが石油工学の発展に寄与しているのは広がっている。野のすそょう暢ちりゅうはじめに 米エネルギー情報局(EIA)が2005年に発表した見通しによれば、世界の石油需要は、2005年の8,490万バレル/日が、2015年に1億300万バレル/日、2025年には1億1,900万バレル/日と急激な伸びを示す。天然ガスの需要も、2005年の96Tcfが、2015年に128Tcf、2025年に156Tcfと伸びが予想される。 一方、国際エネルギー機関(IEA)によれば、現在世界の石油供給量は8,600万バレル/日近辺で推移している。うち、OPECは2,800万バレル/日のシーリングを設けているが、実際の供給量は3,000万バレル/日と言われており、投資次第では、OPECの供給量は3,800万バレル/日に上がることも期待される。 さて、世界の確認埋蔵量を1兆2,000億バレルとすると、石油の埋蔵量(寿命ではない)は40年分あることになる。この数字は過去30年ほど変化していない。石油会社は需要を上回る供給確保のため、毎年生産・消費される程度の埋蔵量を新規に発見してきた(2010年までのOPECの生産量増:400万-500万バレル/日/年、non-OPECの生産量増:200万バレル/日/年)。これには、油田からの原油回収率を向上させる技術(30%を60%に)の貢献も大きい。 石油開発業界には需要を上回る供給確保という責務があるが、業界の石油採掘に携わる技術者集団SPEの考える業界の方向性について、2006年の年次総会にて議論された、「教育」と「重質油」をキーワードに論じてみたい。1.2006年SPE年次総会の概要 SPEが主催する情報交流の場は、過去の事実を議論するSPE Technical Conference(秋の年次総会ほか)、現在の動向を議論するApplied Technology Workshop(ATW)と、未来の技術展開を議論するSPE Forumから構成される。 今年のSPE年次総会は、世界50カ国から約8,000人の参加があり、発表論文は583件(うち75%が口頭発表、残り25%がポスター)で、以下の6分野、72セッションに分かれて発表された(1. Drilling and Completions, 2. Project, Facilities and Construction, 3. Production and Operations, 4. Reservoir Description and Dynamics, 5. 73石油・天然ガスレビュー73石油・天然ガスレビューエ化(専門家の不足)の危機に直面しており、多くの若年層を大量に業界に迎え入れる必要があると共に、産学協調による技術レベルの維持向上が大事である。・世界で石油工学を学んだ新卒者に、需給のアンバランスが見られる(例えば、インドネシアでは新卒者に対し求人数は10%未満)。国際的に展開する石油会社は広く世界から人材を求めたほうが良い。石油工学の一部を、人材の潤沢なインドや中国に外注するのも一つのアイデアである。・大学は、石油・天然ガスの掘削、油層管理、採掘に関する技術のみならず、CO2やNOxといった環境対策、経営工学、法律にも知識を持ち幅広くエネルギー問題に対処できる人材を世に出す責務がある。・優秀な人材確保のためには、就職前に現場経験を積ませるインターンシップ制度の拡充が望ましい。・業界の好況を反映して、石油工学を専攻する学生数は増加している。例えば、筆者が留学した米国オクラホマ州のタルサ大では(筆者は1989年夏から2年間、同大大学院の石油工学専攻の修士課程に留学)、一年生で石油工学科へ履修届を提出したものは何と90名(外国人と米国人は半々)にも上る。ここ数年、数倍のペースで増えている。・高油価に伴う、石油・天然ガス上流の仕事量や、大学での石油工学専攻学生数の増加は明らかだ。石油・天然ガス上流の仕事量の増大に伴い、大学は石油工学専攻学生数の増加と、教員の産業への流出というギャップに苦しむケースもある。産業を定年退職した人を大学で再雇用することも、その対策の一つのアイデアである。2006.11 Vol.40 No.674ルートのコーナーを大きく設けていたのが印象に残った。展示場にはよい人材がふれているのかもしれない。本総会の参加登録の際に登録者全員に配られたバックの中に、サウジアラムコ1社のみについて、自社の紹介パンフレット(Saudi Aramco: The Power to Provide)が入っていたことが印象的だった。 年次総会では、例年SPE会長主催の昼食会が催されるが、イスラム圏からのラマダン中の参加者に配慮して、別途、会長挨拶("State of the Society" address from 2006 SPE President Eve Sprunt)がある夕食会も開催された。 10年前には、このようなイスラム教徒への配慮は考えにくかったが、これもイスラム圏の産油国に石油工学技術者が一定数育ってきた表れだろう。さらに2007年SPE会長には、今まで会長職をほぼ独占してきた米国人に代わり、初のアラブ人であるサウジアラムコのDr. Abdul-Jaleel Al-Khalifaが就任。米国内で限定された年次総会の場所も、2010年にヨーロッパで開催予定とのことだ。7万人にも達する会員数の半分以上が北米外に在住であることを考えても、10年程前には欧米発が大半であった石油工学に関する技術は、世界的な広がりを見せている。溢あ2. 今後20年の石油工学教育についてのパネルディスカッション サウジアラムコのDr. Abdul-Jaleel Al-Khalifa(2007年SPE会長)とスタンフォード大のDr. Pamela Matsonがパネラーとなり、石油工学の将来につき議論した。議論の主なポイントは以下のとおりである。・現在、業界の人材の80%は短期的な仕事(日々の収益活動)に集中し、長期的な仕事(技術開発や戦略策定)に従事するのは20%に過ぎない。業界発展のためには、(この好景気に)長期的な仕事に携わる者を増やす必要がある。・今後、多くの団塊世代の定年退職者を迎える石油開発業界は、技術の空は、もはや常識である。日本人も、早稲田大学や東京大学を卒業した若い人が、そのまま当地の大学院に進学して石油工学を勉強し、米国企業への就職を目指している姿が10名弱程度見られた。2005年のダラスでの総会に比べ、技術貢献では影の薄かった日本人も、一定の存在感を見せ始めた表れで、喜ばしい限りだ。 展示会場は、大小取り混ぜて375社が参加。プレゼンテーション設備を持たない会社には、会場内の別途2カ所において、時間割で詳細プレゼンテーションの機会がある。展示場では、例年通りSchlumberger, Halliburton, BJ Services, Baker Hughes, Weatherfordといった、ソフト・ハードを専門家と共に油田操業会社に提供できる大手サービス会社がスペースを多くとり、景品や飲み物を取りそろえ、観衆を集めていた。 ここ数年の傾向だが、製品のカタログを渡すというよりも、大型スクリーンでのPC画面やDVDの上映が目に付く。油層シミュレーションモデルの紹介では、油層全体が3次元に、また時間経過と共に、油層飽和率の変化が視覚的に適切にとらえられるインターフェイスがパソコン画面上で実現できるのは、既に一般的な技術になっている。 2004年来、高い油価が継続し、油田操業に、より多くのお金が掛けられ、リモートモニタリング技術や、動く3次元油層モデルを使って、生産量増加のための坑井の追掘や改修といった、油層管理の意思決定時間の短縮が図られている。もちろん、油田の現場をよく知り、データを見極める目を持った専門家の存在が前提としてあるが、油田操業現場への大手サービス会社の技術提供がかなり細部にまで進んでいる。極論すれば、油田操業会社の技術者はサービス会社の提供する技術のよし悪しを判断・管理する役目になっているように感じられた(詳しい技術の中身の理解はあまり要求されない)。 また、展示場では、サウジアラムコ(確認埋蔵量2,600億バレル・日産900万バレルを誇る世界最大の原油供給者)が昨年来、Shell, BPといったスーパーメジャーよりも大きくスペースを取り、人材リク. 今後の重質油開発に係るパネルディスカッション 大手サービス会社Halliburton、大手石油会社ChevronやPetrobrasの技術幹部、著名研究機関Oxford Institute for Energy Studies、カナダ・アルバータ州幹部が、重質油開発の今後の展望(経済性、埋蔵量、採掘技術、改質技術)について議論した。主なポイントは以下のとおりである。・産油国の国営石油会社(National Oil Company : NOC)が世界の可採埋蔵量の65-70%を支配。過去2年間の油価高騰は資源獲得を過熱化させ、資源獲得には国家間の協力も強化されている。International Oil Company(IOC)が完全にアクセス可能な地域は減少(7%に)した。後は、産油国の国営石油会社の権益持ち分6%とロシア系企業の17%である。・拡大する石油・天然ガス需要を満たす供給源としては、今後新たな発見が困難な在来型に代わって、重質油といった非在来型資源の開発が肝要である。IOCの活動は、その埋蔵量を補給するために非在来型資源(オイルサンド、タイトサンドガス、オイルシェール、シェールガスほか)にシフトしつつある。2020年までに、重質油や超重質油は全供給量の10%にも達するという予想もある。・経済性を持たせた重質油の開発には、在来型と違って(炭素の水素に対する割合が多く、産出すれば直ぐに売り物になるわけではないので)、上流業界のみならず、中流(輸送)、下流(重質油の改質、残留炭素の後処理)との一体感が必要だ。重質油は在来型の軽・中質油との価格差が、常に開発の促進を左右する。・重質油は、(軽質原油との比較においても)硫黄・窒素・残留炭素・重金属ほかの不純物が低濃度な合成原油(Synthetic Crude Oil : SCO)を製造して市場価値を持たせるのが一般的だが、不純物が濃縮されている石油コークスを発生しないプロセスへいかに転換できるかが、合成原油製造上の課題である。・ベネズエラは、超重質油(粘度1,000-1万cp[粘性率]、7-13°API)が多く埋蔵されるオリノコベルトを有する。オリノコベルトの開発単価は、オイルサンドのそれより安いと言われるものの、投資環境は地政学的リスクが大きい。・一方、埋蔵量1,740億バレルというオイルサンドを有するカナダのアルバータ州は、地政学的リスクが少なく、(米国の需要増に対応すべく)2015年までにオイルサンド生産量を日産300万バレルにする用意がある。多くの会社が投資に積極的だが、技術者不足がネックとなっている。・Petrobrasも、その生産量の主流は海域のカンポス盆地から産出される重質油のため、その改質に、今後6年間に142億ドルを投資する用意がある。最後に 石油開発業界が今後も成長を続ける際に、克服しなければならない課題は、大きく四つ挙げられる。1)経済的に開発可能な石油・天然ガス資源へのアクセス: 長期石油価格30・50・70ドル/バレルに基づく開発シナリオ2)(油価の上昇安定に伴い)増加する(サービス会社の提供する)油田操業サービス業務の従事者確保3)継続的な技術開発・改良: 技術開発への投資は、業界売り上げの0.3%で、他産業に比べて低過ぎる。将来への技術開発投資に積極的になるべきだ。CO2の地下貯留という課題には、産官学の協力が肝要。世代間での技術移転も大事4)(団塊世代の多量定年退職に伴う)業界の人材不足: 若年層の業界へのリクルート、定年退職者の再雇用が大事 すなわち、油価の上昇安定(60ドル/バレル近辺)、石油・天然ガスの需要拡大、石油工学技術者の中高年化ほかを反映して、SPEに属する技術者は、目先の利益追求のみならず、人材の確保と重質油や大水深開発といった非在来型の資源開発にも注力すべきである。もちろん、CO2の地下貯留といった地球温暖化対策も重要だ。この時期の業界の好景気に、人と技術に注力することで、石油・天然ガスの上流業界は、巷でいわれる斜陽産業ではなく、成長産業となりうる。ちまた(伊原 賢)75石油・天然ガスレビュー
地域1 北米
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2006/11/20 [ 2006年11月号 ] 伊原 賢
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