ページ番号1006254 更新日 平成30年3月5日

中国:乱立する上海向け天然ガス供給計画

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レポートID 1006254
作成日 2006-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発天然ガス・LNG
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2006
Vol 40
No 1
ページ数
抽出データ 中国:乱立する上海向け天然ガス供給計画・ 上海等、華東向けの天然ガス供給計画は、国産天然ガスに加え、ロシアや中央アジアからのパイプラインによる供給計画や、LNG輸入計画が乱立している。・ 中央アジアからの供給は、供給源の確保などで不透明な部分が残る。上海向けLNGは「西気東輸」など、国産ガスパイプラインのバックアップという位置付けとの見方もある。・ 安価な石炭から天然ガスへの転換が政府の計画どおり進むのか、疑問が残る。政府あるいは企業の供給計画が先行し、需要家開拓は後回しという印象を受ける。需要開拓には、エネルギー価格のさらなる見直しや、天然ガス利用企業へのインセンティブが不可欠である。修正)、2010年までに120億?/年(2005年発表時の80億?/年から上方修正)に達する見通しである。 なお、Sinopecはパイプラインによる供給のほか、普光ガス田のガスを原料に、GTL(Gas to Liquids)プロジェクトを計画していると伝えられている。43億元(約645億円)を投じ、重慶市長寿化学工業区に生産能力200万トン/年のGTLプラントを建設する。プラントは2008年に稼働開始予定である(E&W, 2006/9/29)。試算だが、GTL200万トン/年は、ディーゼル油2万4,500バレル/日、ナフサ1万9,500バレル/日、計4万4,000バレル/日に相当し、原料ガス約45億?/年を消費することになる。? Sinopecの思惑 ~比較的優位に立っている既存市場に活路~ 2006年初頭、Sinopecは普光ガス田の開発計画を中央政府(国家発展改革委員会)に提出した。この提出計画は、山東省向けに天然ガスパイプラインを建設し、供給するというものであった。四川省は中国最大の天然ガス生産・消費地域であり、パイプラインインフラは比較的整備されている。また、四川省付近には「西気東輸」パイプラインも通っている。すきしかし、四川省の天然ガス市場は、PetroChinaが圧倒的なプレゼンスを誇っており、Sinopecが割り込む隙はない模様である。また、「西気東輸」は、PetroChinaが拡張計画を進めているが、こちらも他社のガスを供給させる余裕はないようだ。そこでSinopecは、自社が比較的優位な立場にある山東省への供給を計画した模様である。山東省には、Sinopec傘下の中原油田(1998年の石油産業再編でCNPCから移管)があり、1999年からパイプライン(総延長262㎞、設計輸送能力2億?/年)を通じ、油田の随伴ガスを済南(Jinan)市に供給している。ちなみに、済南市は石炭ガスから天然ガスへの転換を進めており、今後、市内の家庭・企業の燃料をすべて天然ガスに転換する計画である。 Sinopecと山東省の関係は良好で、山東省発展改革委員会と山東省天然ガスパイプラインネットワーク構築計画(①河南省濮陽(Puyang)~済南~斉魯石化~青島(Qingdao)、②濮陽~荷澤(Heze)~莱陽(Laiyang))を進めており、中央政府もこれを認可している。 一方、PetroChinaは、「西気東輸」ルート上の河南省鄭州(Zhengzhou)から濮陽まで支線を建設し、山東省への天然ガ2006.11 Vol.40 No.682ょう疆きしん(1)Sinopec「川気東送」(新規・計画) 中国石化集団公司(以下、Sinopec)は、天然ガスパイプラインを新たに建設し、四川省北西部に位置する普光(Puguang)ガス田の天然ガスを上海等に供給する計画である。このパイプラインは、中国石油天然気股?有限公司(以下、PetroChina)が建設した新・タリム~上海向けの「西気東輸」パイプラインと対比し、「川気東送(四川省の天然気(ガス)を東部に輸送する)」パイプラインと報じられることがある。「川気東送」パイプラインの主幹線は、四川省普光ガス田から湖北省中央部、安省東部を通り、上海市までで総延長1,674㎞(図1)。 普光ガス田はSinopecが2002年に発見した。国土資源部が行った埋蔵量評価によると、2005年末の確認埋蔵量は2,510億?(8.9兆cf)である。Sinopecの陳同海(Chen Tonghai)総経理は、2006年の追加探鉱の結果、現在の確認埋蔵量は3,220億?(11.4兆cf)に増加しているとし、生産見通しについても上方修正を行った(PON, 8/29ほか)。 普光ガス田の生産能力は、2008年に90億?/年(2005年発表時の40億から上方徽きあん1.国産天然ガスの供給X供給を計画しているが、Sinopecは、PetroChinaに先んじて、同省に普光ガス田を投じることで、同省における優位を保ちたい模様である。? 行政指導により、上海向けに計画変更 しかし、2006年8月、国家発展改革委員会はSinopecに対し、より需要のある上海等華東地域への供給を追加するよう計画の変更を求めた。Sinopecは政府の要請に応じ、従来の山東省向けに加え、上海向けの供給計画を追加した修正案を提出した。 Sinopecが策定した新たな計画によると、四川省普光ガス田から上海までのパイプライン全長は1,674㎞、途中、重慶市、湖北省、安徽省を経由して最終目的地の上海に至る。四川省から安徽省宣城(Yicheng)市までのパイプライン口径は1,016㎜、同市から上海市までは864㎜を予定。支線となった山東省向けパイプラインは、湖北省宜昌(Yichang)から中原油田の位置する河南省濮陽に至る全長842㎞。口径は湖北省宜昌~新鄭(Xinzheng)が813㎜、新鄭~濮陽間が711㎜(ダイヤモンドガスレポート,2006/10/18)。パイプラインの輸送能力は公表されていないが、口径から試算すると、約100億?/年程度と推察される。普光ガス田の1期生産能力は90億?/年であり、パイプラインの設計輸送能力とほぼ符合する。(2) 「西気東輸」パイプライン(既存・拡張) 新彊タリム盆地から上海まで天然ガスを供給する「西気東輸」パイプラインは、2004年末に稼働を開始した。現在の輸送能力は120億?/年で、そのうち上海向けは約1割の13億?/年程度である。PetroChinaは、上海天然ガスパイプライン管理公司と購買契約を締結、シティゲート価格(パイプライン会社から配給会社への卸価格)は約4.3ドル/百万Btuである。PetroChinaは、2007年末までにパイプラインの輸送能力を170億?/年に拡張する計画で、加圧ステーションの新設ならびに、既存の加圧ステーションの能力拡張を進めている。 また、PetroChinaは「西気東輸」の広東省への延伸(「西気東輸」第2ライン)についても検討している。2020年の稼働開始を目指しており、設計輸送能力は260億?/年(「西気東輸」の現行輸送能力ロシア→中国ロシア→中国(アルタイ)(アルタイ)トルクメニスタン→中国トルクメニスタン→中国(ウズベキスタン・(ウズベキスタン・ カザフスタン経由) カザフスタン経由)カラマイ油田阿拉山口カラマイ独山子ウルムチ輪南タリム油田吐哈油田青海油田塔中油田花土溝渋北ガス田玉門ゴルムド西輸気東銀川靖辺長慶油田蘭州満州里二連油田大慶大慶油田ハルビン吉林フフホト陝京北京秦皇島天津大連任丘石家庄?博済南濮陽鄭州川気東送武漢九江青島上海南京杭州ラサ四川ガス田成都咸陽西安達州重慶宜昌平湖ガス田輸入LNG原油パイプライン(稼働中)原油パイプライン(建設計画中)製品パイプライン(稼働中)製品パイプライン(建設計画中)天然ガスパイプライン(稼働中)天然ガスパイプライン(建設計画中)製油所LNG受入基地(稼働中・建設中)昆明忠県貴陽長沙柳州茂名北海堪江広州香港崖城ガス田図1上海向けの主な天然ガス供給計画83石油・天然ガスレビュー20億?/年の2倍以上)を想定している。ルートは、河南省鄭州(Zhengzhou)~広東の模様である。ルートの詳細は未公表だが、河南省武漢(Wuhan)~長沙(Changsha)間には既に稼働中のパイプラインがあるため、鄭州から武漢、長沙から広州まで建設する計画と思われる。(3) 平湖ガス田パイプライン(既存・拡張) 東シナ海の平湖ガス田は、上海南東沖合に位置している。同ガス田は、上海天然気公司(中国海洋石油有限公司、以下、CNOOC Ltd.)、Sinopec、上海市の電力供給会社申能(Shenergy)のジョイントベンチャーが操業している。出資比率は、Shenergy40%、CNOOC Ltd.30%、Sinopec30%で沖合のガス田から約389㎞の海底パイプラインを通じ、1999年から上海の浦東(Pudong)に天然ガスを供給している。 上海天然気公司は、上海燃料とテイク・オア・ペイ条項付きの購買契約(20年)を締結している。現在の供給量は約180万?/日(約6億?/年)で、2007年末までに、220万?/日(約8億?/年、2007年)に拡張する計画である。欧米の著名なコンサルタント会社によると、2005年の販売価格(ガス配給会社への卸価格)は、約5.1ドル/百万Btuの模様。 上海燃料のほか、浦西のコークス会社が購入し、コークスガス(石炭をコークスに加工する際に発生するガス)とブレンドし、高品位の石炭ガスとして販売している模様。国産ガス事業者供給開始時期供給量表1国産天然ガスの供給計画川気東送西気東輸PetroChina稼働中Sinopec2009年不明 (45億?~90億?/年)120億?/年120億?/年普光ガス田1,700㎞平湖上海天然気公司稼働中6億?/年増強計画供給ソースPL総延長ガス価格 ドル/百万Btu(推定)不明各種資料にもとづき作成2.輸入天然ガス供給計画(ロシア、トルクメニスタン、カザフスタン)(1) ロシア(アルタイパイプライン)~「西気東輸」(計画) ロシアは、新規市場開拓として1999年ごろから中国と天然ガス輸出計画について協議していた。2006年3月、プーチン大統領訪中時、ロシアGazpromと中国CNPC(PetroChinaの親会社)は、中国向け天然ガス供給について覚書を締結した。その際、Gazpromのミラー会長は、中国向け天然ガスの輸出計画として、パイプライン2本(東ルート・西ルート)を建設すると発表した。Gazpromは西シベリアの天然ガス開発を優先させる意向で、西ルートを先に建設する計画である。120億?~260億?/年 8億?/年西湖ガス田克拉ガス田ほか3,900㎞389㎞4.35.1 西ルートは、西シベリア(北部Nadym-Pur-Tazov地域)を起点とし、ロシア・アルタイ共和国を経て、幅50㎞の国境を貫くような形で、第3国を通過せず、直接中国の新彊ウイグル自治区までパイプラインを建設するもの(ロシア領内のパイプライン総延長は2,800㎞)。中国国境からは、新彊トルファンまで数百㎞のパイプラインを建設し、「西気東輸」と接続し、上海に供給する計画である。供給量は300億?/年、2011年稼働予定で、現在、事業化調査(FS)を行っている。しかし、報道によると、西ルートは、経済性はあるが、環境問題ならびに供給不足という課題を抱えている模様である。 また、天然ガスの販売価格(国境渡し)をめぐり、ロシアと中国は少しずつ歩み寄ってはいるものの、合意には達していない模様である。ロシアは「石油製品バスケット方式」による価格200~220ドル/千?(5.7~6.3ドル/百万Btu)を提示、中国は「コストプラス方式」による112ドル/千?(3.2ドル/百万Btu)を主張している模様である(Gas Matters August ,2006)。 ちなみに、東ルートは東シベリアのコビクタガス田あるいはサハリンの天然ガスを中国の東北地域へ供給する計画だが、供給ソースを含め、詳細は固まっていない模様である。(2) トルクメニスタン~「西気東輸」パイプライン(計画) トルクメニスタンは、ロシアを通過しない新規市場開拓として、中国向け天然ガス輸出計画を進めている。 2006年4月、トルクメニスタンのニヤゾフ大統領訪中時、トルクメニスタンならびに中国政府は、トルクメニスタンから中国向けにガスパイプラインを建設し、中国へ輸送すること、アムダリア右岸地域の天然ガスを共同で開発することについて合意した。事業者はCNPC(子会社PetroChina)で、2009年から300億?/年の天然ガスを供給する。ルートの詳細は明らかになっていないが、アムダリア右岸からウズベキスタン、カザフスタンを経由する約3,000㎞(中国国境まで)のパイプラインを建設し、新疆タリム盆地の「西気東輸」パイプラインに接続させる計画である。Gas Matters誌は、投資額100億~130億ドル、輸送費1.2~1.5ドル/百万Btuと試算している。価格については、100ドル/千?(2.7ドル/百万Btu)で合意したと報じられている(AWSJ, 2006/9/28ほか)。 トルクメニスタンの天然ガス埋蔵量は2.9兆?(102.4兆cf)あり、そのうち50兆cfがアムダリア右岸にあるとされている。しかし、アムダリア右岸の探鉱が未着手であることに加え、パイプラインも2006.11 Vol.40 No.684「着工であり、3年後の2009年に供給を開始するという計画は、現実的ではないと思われる。(3) カザフスタン~中国パイプライン計画 カザフスタンは、トルクメニスタン同様、ロシアを通過しない新規市場開拓として、中国向け天然ガス輸出計画を進めている。 中国向けガスパイプラインの建設計画について、現在スタディ(FS)を行っており、スタディは2007年の5月ごろに完了する予定である。国営Kazmunaigazによると、南ルート、中央ルート(原油パイプラインに並走)を検討中であるが、南ルートはカザフスタン南部の需要地を通るため、有望視している。 パイプラインの総延長は約3,000㎞(中国国境まで)、設計段階での輸送能力は300億?/年で、トルクメニスタンから中国向け天然ガスパイプラインとの連動を考えている。 カザフスタンの天然ガス生産量(現在の主力ガス田はカラチャガナク)は現在240億?/年だが、2010年までに生産量を倍増させる計画である。Kazmunaigazは、国内需要は260億?/年で、200億?/年程度を輸出に回すことができるとしている。中国向けに、2009年末までに100億?/年、2012年までに300億?/年の輸送能力を構築する計画である。(PON, 2006/10/9)。 しかし、供給ソースが不透明であり、パイプラインについても、スタディを行っている段階である。3年後の2009年に供給を開始するという計画は、これまた現実的ではないと思われる。(ロシア・中央アジアから中国向けの天然ガス輸出計画をめぐる背景については、「中国市場をめぐる天然ガスパイプラインのジオ・エコノミクス」(本村真澄JOGMEC石油天然ガス資源情報2006年4月18日(http://www.jogmec.go.jp/information/information_2006.html)を参照)表2輸入天然ガスの供給計画輸入ガス事業者供給開始時期供給量ロシア・アルタイGazpromCNPC2011年300億?/年トルクメニスタン両国政府2009年300億?/年カザフスタンKazmunaigazCNPC2008年100億?/年供給ソースPL総延長ガス価格ドル/百万Btu(交渉中)西シベリアガス田2,800㎞ロシア:5.7~6.3中国:3.2アムダリア右岸3,000㎞2.7(報道ベース)(カラチャガナク)3,000㎞不明上海LNGShenergy, CNOOC Gas & Power2009年300万t/年(42億?/年)(マレーシア)(インドネシア)5~6(報道ベース)Power49%)。 購入したLNGは上海市が建設を計画しているガス火力発電所(40万kW×9基、計360万kW)に供給する計画である。2006年8月、石川島播磨重工業(IHI)連合が300億円で上海LNG受入基地の設計・調達・建設(EPC)業務ロシアロシアGazprom西シベリア優先TNK-BPエネルギー供給源確保(当て馬)新規市場開拓・対露バーゲニング確保エネルギー供給源確保(当て馬)新規市場開拓・対露バーゲニング確保中国中国SINOPEC国産PL供給CNPC国産・輸入PL供給CNOOC沖合PL・輸入LNG供給トルクメニスタントルクメニスタンエネルギー供給源確保(本命)新規市場開拓し出め締し出場め市締国ら中かカザフスタンカザフスタンり切らいか買場の市ス国ガ州・中然欧天図2中国向け天然ガスフローをめぐる各プレーヤーの関係(4)上海LNG CNOOC(CNOOC Ltd.)*1の主要な事業戦略の一つは“ガスビジネスの発展”である。PetroChinaやSinopecに天然ガスの埋蔵量や生産量で劣るCNOOC Ltd.は、LNGビジネス(稼働中の広東ならびに建設中の福建受入基地はいずれもCNOOCが事業者)に活路を見出しており、同国のLNGビジネスにおけるリーディングカンパニーとしての地位確保に努めている。 現在、CNOOC傘下のCNOOC Gas & Powerと上海市の電力供給会社申能(Shenergy)は上海に300万トン/年(約42億?/年)の受入基地を建設する計画を進めている(出資比率はShenergy51%、CNOOC Gas & *1:CNOOC(CNOOC Ltd.)のガス(LNG)ビジネスについて上流権益はCNOOC Ltd.が保有しているが、LNG受入基地の権益については親会社CNOOC傘下のCNOOC Gas & Pewerが保有しており、LNGの購入も親会社CNOOCが行っている。85石油・天然ガスレビュー06050403020100石炭(%)出所:中国能源研究報告ほか石油2000年2003年2020年(予測)天然ガスその他図3上海市の一次エネルギー消費見通し(2020年)を受注した。IHIによると、2006年末に着工し、2009年夏に完工の予定である。 2006年8月、CNOOCはマレーシアPetronasとLNG購入で最終合意したと報じられた。マレーシアのLNG液化能力は公称2,270万トン/年あり、日・韓・台との購買契約(SPA)数量は現在2,464万トン/年ある。2008年から2009年にかけて一部の契約が契約期限を迎えるので、マレーシア側に販売余力はある。しかし、マレーシアは売り先に困っているわけではなく、価格交渉で弱気になる必要はない。価格について5~6ドル/百万Btuで合意したと報じられたが、法的な拘束力を持たない、“基本合意”の段階ではないかと思われる。ちなみに、CNOOCは福建基地向けにSPAを締結したタングーLNGの一部を上海に回すことで、BP Migasと合意している模様である。3.上海の天然ガス需要 上海市は、1999年から平湖ガス田の天然ガスを、2003年から「西気東輸」の天然ガスを利用している。 上海の一次エネルギー消費構成は、石炭の占める比重が高い。石炭6割、石油4割で、天然ガスの占める比率は、2000年時点では0.7%にすぎない。上海市は、平湖ガス田の天然ガスを除き、電力を含むエネルギーを他省や国外からの供給に依存しており、特に夏場は、石炭や電力の供給トラブルが頻発している。 2000年以降、上海市は環境問題ならびに供給の安定を図るという観点から、石炭依存度の引き下げ、天然ガスへの転換を図っている。2003年には、21の石炭燃焼禁止街区(面積114?、上海市全体の2%)を設け、493台の石炭ボイラーを天然ガスに転換した。 上海市の2005年の天然ガス消費量は19億?/年(「西気東輸」と平湖ガス田の合計)に達し、需要22億?/年に対し、3億?/年のギャップが生じている模様である。また、2006年10月、上海市初のガス火力発電所華能石洞口燃気廠が完成した。同発電所は出力40万kW×3基、計120万kW(天然ガス10億?/年に相当)、「西気東輸」の天然ガスを利用する計画である。 上海市は、今後も石炭から天然ガスや風力などへの転換を進め、2020年には石炭の消費を45%に抑制し、天然ガス消費を10%に引き上げる計画である。石炭の消費抑制は、主に発電部門で行う計画である。石炭消費の約7割は発電が占めるが、2020年にはそれを5割以下に引き下げる計画である。天然ガス消費については、2010年に75億?/年、2020年には120億?/年に増加すると見込んでいる。なお、輸入LNGについては、4,000㎞の「西気東輸」パイプラインに供給トラブルが生じた際のバックアップと位置づけ、積極的に導入を図っている模様である。 上海市の計画どおりに天然ガスの需要が増加すれば、2020年ごろ、国産ガスだけでは対応できない可能性がある。 しかし、発電会社は上海市の計画に応じ、石炭から天然ガスなどへの転換を本当に進めるのであろうか。石炭の末端価格は1.2ドル/百万Btuだが、「西気東輸」や平湖ガス田のシティゲート価格(パイプライン会社から都市ガス配給会社への卸価格)は4~5ドル/百万Btuである。 輸入LNGの卸価格が国産パイプラインガスの価格を下回る可能性は低く、ロシアやトルクメニスタンからのパイプラインガスも輸送費などが上乗せされ、国産ガス価格を上回ることになると思われる。中央政府が、電力価格や石炭価格制度の見直しを行い、天然ガス利用に対するインセンティブを設けなければ、上海市の思惑通りに燃料転換は進まないと思われる。4.パイプラインによる天然ガス輸入の見通し 本稿で取り上げた国産、輸入天然ガスパイプラインの天然ガス全量が上海に供給されるわけではなく、今後、パイプライン沿線各都市の天然ガス利用状況や需要見通しについて調査、分析する必要がある。 中国能源(エネルギー)研究所などの予測によると、2020年時点における中国全体の天然ガス需給2,000億?/年に対し、国産天然ガスの供給が現在の500億?/年から、1,300億?~1,500億?/年に増大すると見通され、ギャップは500億?~700億?/年程度にとどまる模様である。したがって、2020年時点では、輸入パイプラインガス3本すべてが必要になるほど、中国の天然ガス需要が伸びている可能性は高くないと思われる。CNOOCのように、LNG輸入事業を推進したい企業は別として、PetroChinaやSinopecは、まず国内の天然ガス開発・供給計画を進めると思われる。表32005年~2020年における中国の天然ガス需給バランス表2005年2010年2015年2020年600 1,000 天然ガス需要量 (億?)国内天然ガス供給量 (億?)不足量 (億?)出所:2020年に向けた中国石油・天然ガス産業の行方(JETRO2006年3月)500~550800~900100~200300~5001,500 1,000~1,2002,000 1,300~1,500500~7002006.11 Vol.40 No.686@PetroChinaは、国産天然ガスの生産量が減退した場合のバックアップとして、ロシアや中央アジアからの輸入計画を考えているのではないかと思われる。5.まとめ 「西気東輸」パイプラインの稼働開始後、国産の天然ガスのみならず、ロシア・中央アジアから中国向けの天然ガス供給計画が目白押しである。また、LNGのリーディングカンパニーであるCNOOCは、上海向けに輸入LNG供給計画を進めている。 上海市は、大気環境やエネルギー供給問題の改善という観点から、石炭から天然ガスへの転換を進めている模様だ。 輸入LNGについては、「西気東輸」など国産ガスパイプラインのバックアップと位置付けており、積極的に推進する計画である。ただし、LNG受け入れ事業の進展は、価格に左右されると思われる。 しかし、石炭価格と天然ガス価格には依然として数ドル/百万Btuのギャップがあり、エンドユーザー(特に発電会社)が安価な石炭から天然ガスへの転換を行うために政府の奨励措置(インセンティブ)も特に設けられておらず、政府の期待どおりに進むのか疑問が残る。政府や石油開発企業の思惑が先行し、需要家不在という印象を受ける。ひ 長期的には、上海市、延いては中国全体で、石炭から天然ガスへの転換は進むと思われるが、現状の価格や制度のままでは、政府の期待どおりには進まず、2020年時点では、国産ガス消費が主体で、ロシアはともかく、中央アジアからの天然ガスが中国に供給される可能性はそれほど高くないと思われる。(竹原 美佳)主要参考資料・ 中国能源研究報告-区域編 中国統計出版社2006年3月・ 「China’s Natural Gas Policy」(CERA June6,2006)・ 「Provincial Profile Shanghai」(CERA Insight May17,2006)・ 「中国市場をめぐる天然ガスパイプラインのジオ・エコノミクス」(本村真澄JOGMEC石油天然ガス資源情報2006年4月18日(http://www.jogmec.go.jp/information/information_2006.html))・ 2020年に向けた中国石油・天然ガス産業の行方 日本貿易振興機構2006年3月・ 「中国、SINOPEC普光ガス田~上海パイプラインルートが明らかに」(ダイヤモンドガスレポート第792号)87石油・天然ガスレビュー
地域1 アジア
国1 中国
地域2
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地域3
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地域4
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地域6
国6
地域7
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地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2006/11/20 [ 2006年11月号 ] 竹原 美佳
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