中規模LNG は実現可能なのか?
| レポートID | 1006324 |
|---|---|
| 作成日 | 2008-03-21 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-03-05 19:32:42 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | 天然ガス・LNG |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 鈴木 信市 三神 直人 |
| 年度 | 2008 |
| Vol | 42 |
| No | 2 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | アナリシスJOGMEC調査部鈴木 信市JOGMEC調査部三神 直人中規模LNGは実現可能なのか? 1. はじめに 天然ガスには石油と比較して次のような特徴がある。図1のように、石油と同等程度の埋蔵量を持つにもかかわらず、石油に比べて生産量が少ないこと、化石燃料のなかでは分子中の炭素の割合が少ないため、燃焼時に排出される発熱量あたりのCO2の量が少なく環境に優しい燃料と考えられること、埋蔵の偏在性が石油に比べて少ないこと。以上のような特性から、開発利用の促進が求められている。一方、天然ガスは、常温常圧で気体であり、石油に比べて輸送にコストがかかる。現時点での天然ガスの主要な開発輸送手段は、パイプラインとLNGしかない。 多くのメリットがあるにもかかわらず、種々の理由により開発できない天然ガス田、すなわちStrandedガス田の開発を促進するにはどうすればよいか。このような基本的な問題意識の下に、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下、資源機構と略す)は、数年前よりStrandedな天然ガス田開発に関する調査を行っている。 最初に、われわれは、天然ガス開発手段には既存のもの、開発途上のものを含めてどのようなものがあり、それぞれの手段の特徴はなにか、天然ガス田適用に際してのそれぞれの手段の最適条件や限界条件等を把握するための調査を行い、石油・天然ガスレビュー2005年9月号で報告した。 次いで、この調査により、中小規模ガス田に対して、比較的近距離の市場への輸送において有効である可能性が示された新しい開発手段である、CNGを中心とした調査を行い、その結果を同じく石油・天然ガスレビュー2006年11月号で報告した。 本稿は、このようなStrandedな天然ガス田開発に関する調査のシリーズのなかで、1兆~3兆cf程度の中規模ガス田に対して適用可能な、100万トン/年程度の生産能力を持つ中規模LNGに関する検討結果の報告である。 本調査を実施した背景は、次のとおりである。LNGに関しては、最初の資源機構の調査で、大規模ガス田だけでなく、より規模の小さいガス田への適用可能性が示唆されていたが、いままで十分に検討されていなかった。100万トン/年程度の中規模LNGの20年間の天然ガス必要量は1兆cf程度であり、これが現実的になれば、上流企業にとっては、中規模のStrandedガス田開発手段として極めて魅力に富んだものとなる。洋上LNG施設、すなわちFloating LNG(FLNGと略す)であれば施設を移動できるので、1兆cf以下の小規模な天然ガス田を次々に開発していくということも可能になるのではないか。投資金額も、大規模LNGに比べて小さく、資金調達もしやすく、投資リスクも比較的小さくなるだろう。日本の企業が中心になって実施する将来のLNGプロジェクトとして、最適ではないか。 周知のように、LNGのプラントは、現在、大きく分けてベースロード用のプラントと、ピークシェーブ用のプラントがある。現在の1トレーンの標準的な規模は、ベースロード用は300万~500万トン/年程度、ピークシェーブ用は10万トン/年以下である。プロセスとして主に採用されているのは、ベースロード用はC3 MR、ピークシェーブ用は窒素エキスパンダーと、それぞれ異なっている。 1トレーンあるいは1プロジェクトあたり100万トン/年レベルのベースロード用LNGプラントは、LNGビジネスが産声を上げた1960~1970年代には存在したが、その後大型化が進み、最近まで新しいプラントとしては存在しなかった。しかし、最近、中国において、国内供給を目的とした43万トン/年のLNGプロジェクトが稼働している。だが、国際貿易を対象とするこの規模のプラントは、計画のアナウンスはあるものの、最近実現した例はない。 国際貿易を対象とする100万トン/年レベルのベースロード用LNGプラントは、現実的な選択肢なのであろうか。より問題を明確化して言えば、このようなプラントは、経済的・技術的に実現可能なのか。従来のベースロード用やピークシェーブ用とは異なる特殊なプロセスを必要とするのか。CAPEXの規模はどの程度か。このようなLNGプロジェクトを実現するための具体的な方法はあるか。ここでは、こうした問題を考える。 本稿は、次のような構成を取る。2章で、天然ガス開発のなかでLNGの位置づけを明確にし、3章で、中規模LNGの特徴を考える。次に4章で、現在生産・計画中の中規模LNGプロジェクトについてレビューし、5、17石油・天然ガスレビューM肥料電気図2天然ガス開発の模式図2008.3 Vol.42 No.218物理転換輸送媒体輸送媒体高圧天然ガスパイプライン輸送媒体輸送媒体GTL灯軽油利用形態利用形態輸送用燃料メタノールMTO/MTPオレフィン化学原料減圧加圧ガスハイドレート化学転換天然ガス合成ガスDME冷却加温LNG(陸上・FLNG) 然 ガ ス天減圧加温加圧冷却CNGGTW電力転換アンモニア尿素発電電気6章で、中規模LNGに最適な液化プロセスを検討する。更に、7章で、一般化したモデルケースにおける中規模LNGプロセスの経済性について検討する。以上の結果を踏まえて、8章で、中規模LNGプロジェクトの実現に関して考え、9章で全体をまとめる。 また、本稿末尾の付属資料では、代表的な、あるいは新規のLNG液化プロセスをまとめた。4、5、6章と付属資料は三神が、それ以外は鈴木が執筆を担当した。なお、5、6、7章、付属資料に関しては、平成19年度に資源機構が日揮(株)に委託して実施した調査「中規模LNGプロジェクトの実態調査と課題の抽出および解決策の提案」を参考にしている。アナリシス石油天然ガス6363414110億バレル1,500百万バレル/日1001,2081,2081,1531,1531,200900600300082825050806040200年80706050403020100埋蔵量出所:BP統計2007生産量R/P図1天然ガスの埋蔵量・生産量・R/P@20062. 天然ガス開発のなかでのLNGの位置づけエネルギー効率も、この順で少しずつ悪くなる。 これらの開発手段を、当時の経済条件で比較検討した結果が図3に示されている。この図は、LNGという開発手段は、他の開発手段に比べて、埋蔵量も・輸送距離に関しても、比較的広い範囲での適用可能性を持つことを示唆している。また、ハイドレート輸送は研究開発途上の技術、CNG輸送は商業化可能な技術と言われているが、現時点でプロジェクトは存在しない。更に、FLNGも、適用の構想はあるが、現時点では存在しない。(1)概念的な位置づけ 石油・天然ガスレビュー2005年9月号に書いたことではあるが、ここで天然ガス開発についておさらいしておこう。 図2に、天然ガス開発手段の模式図を示す。天然ガスはガス体エネルギーであり、単位体積あたりのエネルギー密度が低く、このため輸送に非常にコストがかかる。天然ガスを開発輸送する場合には、井戸元で天然ガスのエネルギー密度を高めてやる必要がある。天然ガスのエネルギー密度を高める方法として、物理転換、化学転換、電力転換という三つの方法がある。 具体的な開発手段としては、物理転換に属するものとして、パイプライン(以下、PL)、LNG、 FLNG、CNG、 ハイドレート輸送等がある。化学転換に属するものとしては、GTL, メタノール、DME、 MTO/MTP(Methanol to Olefine, Methanol to Propyleneの略)、アンモニア・尿素等がある。電力転換に属するものとして、GTW(Gas to Wireの略)がある。 それぞれの開発手段の市場での製品は、物理転換に関しては天然ガスであることに対して、化学転換の場合はそれぞれの化学製品となり、電力転換の場合は、当然、電気となる。天然ガスそのものを輸送する方法のうち、気体のまま輸送するのがPLとCNGであり、冷却し液体状態にして輸送するのがLNG、固体化して輸送する方法がハイドレート輸送であり、それぞれの輸送手段の電気利用形態利用形態熱出所:JOGMEC総ロ貿易のうち72%が国際長距離PL、28%がLNGである。国内供給はそのほとんどがパイプラインで輸送利用されていると考えられることから、天然ガス開発全体に占めるLNGの割合は、7%程度となる。すなわち、天然ガス生産量のうちLNGの占める割合は、1割以下に過ぎないことをここでは認識しておこう。貿易量26%72%72%パイプライン28%28%LNGローカル生産量74%74%出所:BP統計2007図4天然ガスの総生産量に占める貿易量の割合@2006140万トン/年のアラスカLNGプロジェクトだけである。 なぜ、LNGプロジェクト初期には中規模LNGが実現し得たにもかかわらず、その後は開発されなくなったのであろうか。中規模LNGに関して、いままで、絶対的な意味での経済性があったか否かは不明であるが、大規模LNGに比べて相対的に経済性が劣っていたことは確かである。LNG液化技術が進歩し、大型のLNGプロジェクトが可能になり、LNGそのものの技術の信頼性が高まり、リスクが相対的に低下するにつれて、スケールメリットが追求でき、相対的により多くの利益幅が見込める大規模LNG追求の方向に進んだのは当然であろう。いままで、LNGプロジェクトを主導してきたのはメジャーズであり、彼らにとってはプロジェクト採択条件、すなわち、経済性やプロジェクト全体から上がる利益の大きさ等により、取り組むべき多くのプロジェクトのなかで中規模LNGはプライオリティーが低く、追求する価値を見出せなかったのであろう。(2)状況変化 それでは最近、従来成立しなかった国際貿易向け中規模LNGが成立し得る環境に変化してきているのであろPipelineFLNGCNGGTWLNGGTLDMEMethanolMTP0000,2000,4000,6Urea12,00010,000000,8Distance to Market, km14,00016,00018,00020,000出所:JOGMEC図3ガス必要量VS輸送距離(2)天然ガス貿易の中でのLNG 天然ガスは、周知のように石油と異なり、基本的にはローカルマーケットへのエネルギー供給手段となっている。2007年のBP統計によれば、図4のように世界全体のガス供給量のうち、74%が国内供給、26%が国際貿易である。石油の場合の国際貿易の割合、64%と著しい対照を示し、天然ガスのローカル性を表している。また、3. なぜいま、中規模LNG開発なのか ここでは、なぜ、中規模LNGが開発されてこなかったのかの理由を検討し、最近の状況変化と、いま中規模LNGに取り組むべき理由について考える。(1)中規模LNGが開発されてこなかった理由 いま、中規模LNGを、1トレーンあたりの生産能力が100万トン/年程度であり、かつマルチトレーン化した液化基地あたりの生産能力が100万トン/年程度であるもの、と定義しよう。 現在の標準的な大規模LNGは、1トレーン300万~500万トン/年であり、通常のベースロード液化基地は、これがマルチトレーン化したものとなっている。LNGプロジェクト初期を例外として、中規模LNGプロジェクトは取り組まれてこなかった。 稼働開始年の順序で、最初の四つの世界のLNG液化基地・プロジェクトと、1トレーンあたりの規模を見てみると、キャメル44万トン/年@アルズー、ケナイ58万トン/年@アラスカ、リビア64万トン/年@メルサ・エル・ベルガ、スキクダ100万トン/年@スキクダとなっている(付属資料の表13参照)。このうち、液化基地の全生産量がマルチトレーン化して100万トン/年程度なのは、19石油・天然ガスレビュー121086420Reserves, Tcf中規模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■Aナリシス様化・流動化される市場では、一般論としては、いろいろなプロジェクト実現のチャンスが広がる、ということを意味する。すなわち、かつてよりも、より中規模LNGを推進する外的環境が整いつつある、と言っていいだろう。もちろん、それが十分なものであるかは別問題である。 一方、中規模LNGには、大規模LNGにはないいくつかのメリットがある。すなわち、大規模LNGプロジェクトは必要とするガス量が多いため、対象となるガス田は大規模ガス田(もしくは、ガス田群として埋蔵量が大規模)である必要があり、開発のために必要な資金規模も大きく、資金的リスクも相対的に大きくなる。また、マーケット化すべきLNG量も多い。資金規模やそれに伴うリスク、LNG販売先の確保の問題から、プロジェクトの立ち上げに時間がかかることになる。 一方、中規模LNGは相対的に必要とするガス量は少なく、CAPEXが小さく、マーケットを確保する必要のあるLNG販売量も少ない。また、プラントの大きさも小さくなろう。相対的な、資金規模の小ささやリスクの低さから、少ないメンバーでプロジェクトを立ち上げることが可能になる。また、LNGの販売先確保も、ユーザーが少ないと考えられるので、比較的短時間で済む。また、バリューチェーンのプロジェクト関係者は相対的に少ないので、プロジェクト立ち上げにかかわる利害関係者間の不一致度は、相対的に低くなる。以上により、中規模LNGプロジェクトは、相対的に素早く立ち上げることが可能である。 まとめると、中規模LNGの特徴は、天然ガス必要量の大きさ、プロジェクトとしての立ち上げのスピード、資金規模とリスクの大きさの三つに集約されるだろう。 もちろん、このような特徴は中規模LNGの相対的なデメリットを補填しない。当然、デメリットも種々存在する。規模が小さいためスケールメリットを享受できない。プラントが小さくなるために、プラントのエネルギー効率は相対的に悪化する。これらが原因で経済性は相対的に低くなる。うか。 LNGを取り巻く状況はLNG市場の拡大、LNG契約条件の柔軟化、LNGスポット市場の拡大、技術等の進歩によるLNG関連施設の建設費の低減等により、変化が起きている、と言われている。図5は、最近のLNG貿易量そのものの拡大傾向と、そのなかでのスポット取引の拡大傾向を表している。このことは、非常にゆっくりとではあるが、LNG市場が石油市場に近づきつつあることを示している。これは、LNGが従来以上にインターナショナルな商品になりつつあること、LNGが特定の生産者と特定の消費者とを硬直的な契約で長期に結びつける状況に緩和の兆しが見られること、を意味している。 一方、大規模LNGの更なる大型化の傾向が、付属資料の図17で示されている。これは、プロジェクトあたりの投資額を増大させ、最近のEPCコストの上昇や産ガス国の資源プロジェクトの国有化の動きと相まって、リスクを大きくしている。LNG全体(百万トン)スポットLNGの全体に占める比率(%)170143138899694981001041211221152%2%2%2%4%4%1995199619971998199920002001200220032004200520062%2%年4%4%6%6%8%8%8%8%9%9%16%16%13%13%11%11%スポットLNG/LNG全体出所:各種資料よりJOGMEC作成図5LNG貿易量とスポット販売量(3)いま、中規模LNGに取り組むべき理由 かつて実現し得なかった中規模LNGに取り組む動きが加速されるためには、その機運として、中規模LNGの実現性がかつてより高まっているか、大規模LNGの実現がかつてより困難になっているかでなければならない。上記(2)で述べたことは、いままで以上にLNGが多様化・流動化に向かっていることを意味している。多4. 世界のベースロード用中規模LNGプラントの動向(1)陸上ガス田の中規模LNGプラント動向 石油・天然ガスレビュー2007年11月号の三神直人「中国新疆ウイグル自治区:LNG液化プロジェクトの夢と現実」の内容をアップデートし、以下に示した。 表1に、最近の10万トン/年から100万トン/年の規模の主なベースロード用中小規模液化設備の実績と計画を示した。従来、発見されても開発が進まなかった埋蔵量が少ない中小規模のガス田や炭層ガス等、非在来型ガス2008.3 Vol.42 No.220richard Single MR (PRICO))プロセスを採用する。んゅうのLNGプラントはKryopak社のPCMR(Pre さ、貴西せ陝せ州しいCooling Mixed Refrigerant)プロセスを採用する。 中国以外では、ノルウェーのスコーゲン社とリーセガス社がそれぞれ4対6で出資したノルディックLNG社が注目されている。ノルディックLNG社は、ノルウェーの工業都市スタヴァンゲルに、年産30万トンのベースロード用小型LNG液化基地を2010年に開業し、ノルウェーおよび周辺国の小口LNGユーザーを開拓すると発表した(2007年7月)。液化設備はLindeに1億ユーロ(1億3,800万ドル、約159億円)で発注したが、プロセスの詳細情報はない。 スコーゲン社はLNG事業のために独自技術で開発した幾何容積1万m3のLNG船を、中国の系列会社の造船所で建造中である。この船は、LPGやエチレンも同時に輸送できる多品種ガス輸送船(Multigas carrier)であり、経済性に優れ、最終的に10隻建造予定で、現在6隻を発?善(シャンシャン)LNGプラント?善(シャンシャン)LNGプラントウイグル自治区約43万トン/年、原料:随伴ガス2003年 (Linde)?星星(シンシン)LNGプラント星星(シンシン)LNGプラント内モンゴル自治区約20万トン/年、原料:ガス田ガス当初計画、2007年 BV(PRICO)ウルムチ陝西(せんせい)LNGプラント陝西(せんせい)LNGプラント陝西省約38万トン/年、原料:情報なし当初計画、2007年 (Kryopak)無錫(むしゃく)永達LNGプラント 無錫(むしゃく)永達LNGプラント 重慶市、江蘇省28万トン/年、原料:ガス田ガス当初計画、2007年北京上海パシフィックアジア CBM LNGプラント パシフィックアジア CBM LNGプラント 貴州(きしゅう)省23万トン/年、原料:CBM当初計画、2008年 (Kryopak)CNOOC珠海(しゅかい)LNGプラントCNOOC珠海(しゅかい)LNGプラント珠海、広東省14万トン/年、原料:海洋ガス田ガス当初計画、2007年出所: 各種資料を基にJOGMEC作成(石油・天然ガスレビュー2007年11月号)図6中国の主なベースロード中小規模(10万~100万トン/年)LNGプラントのLNGによる開発が注目され始めている。特に炭層ガス(CBM、CSM)のLNGによる開発計画は、中国や豪州で進められている。一方、中国やノルウェーで数カ所のベースロード用中小型(年産10万~100万トン)LNG液化が提案されているが、実際に稼働しているのは中国んガンフィ匯LNGプラントのみである。ょうウイグル自治区の広疆き新し 広匯集団の子会社である広匯LNG社は、2004年9月ャンに新疆の?にベースロード(長期契約に基づく通年供給)LNGプラントを建設、稼働を開始した。プラントのガス処理能力は日量150万m3、LNG換算で年産43万トンである。輸送や市場開発も含めた総投資額は16億元(約250億円)であり、そのうち工場建設費が6億8,500万元(約107億円)を占める。2002年6月13日に起工、2004年5月生産を開始、同年9月10日からLNGの販売を開始している。プラント設備や技術はドイツのLinde(リンデ)やベルギーTractebel(トラクテベル)から導入した。詳細設計はSinopec(中国石油化工集団公司)(上海)エンジニアリングが行っている。原料ガスは油田の随伴ガスで、製造したLNGのほぼ全量を福建・広東・・山東・湖南・甘粛・新上海・江疆などの顧客と供給契約を締結し、供給している。広匯LNG社はLNG輸送車(ローリー車)を保有しており、数百kmごとに休憩所を設けることにより、遠く離れた沿海部の都市などにもLNGの供給、販売を行っている。 図6には、中国の主なベースロード用中小規模LNGプラントの実績と計画を示した。中小規模LNG液化の多くは中国で計画され、2007年にさらに4カ所稼働する予定であったが、本原稿執筆時点で稼働開始等の報道には接していない。さらに、詳細を把握しきれないため表に示していない数カ所の計画もある。しかし、現時点でこれらプラントの動向は、いま述べたように報じられていないので、これらLNG液化が予定どおり稼働するかについては不明な点が多い。 星のLNGプラントはBV(Black & Veatch 、珠・江・浙・安星シ海か善シい西せう江こシンンしゅい蘇そこう徽きあんこうせっシャン表1主なベースロード用中小規模(10万トン/年~100万トン/年)液化設備の実績と計画液化プラントの場所稼働開始年液化能力(万トン/年)液化方式企業等備考中規模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■?善(シャンシャン)市、ウイグル自治区星星(シンシン)市、内モンゴル自治区珠海(しゅかい)市、広東省陝西(せんせい)市、陝西省重慶(じゅうけい)市、江蘇(こうそ)省貴州(きしゅう)省スタヴァンゲル近郊(ノルウェー)出所:各種資料を元に筆者作成(推定含む)(石油・天然ガスレビュー2007年11月号)200320072007200720072008201043201438282330KryopakLindeLinde Single-MRBV(PRICO)BV(PRICO)Kryopak-広匯(ガンフィ)LNG社オルドス-星星ガス社中国海洋石油(CNOOC)陝西LNG社無錫(むしゃく)永達社パシフィックアジアCBM社ノルディックLNG社21石油・天然ガスレビューAナリシスアのE&P企業であるPeak Petroleum社と共同で、この技術を用いたガス田を開発するMOUを締結して検討中であり、2008年に最終投資判断を下すことを目標にしている。②SBM O? shore/Linde/IHI連合 2007年9月19日、海洋ガス・石油受け入れ設備建設を行うSBM Offshore(本拠地:オランダ)はLNG FPSO(LNG 浮体式・生産・貯蔵・積み出し設備)の販売を18カ月以内に開始すると発表した。また、独大手LNG 関連企業LINDE A.G.(Linde)社との提携も発表した。同社は、LNG FPSOはこれまでの液化設備とは一線を画したもので、技術的な困難さ等の理由によりさらなる資本投入の必要性が生じたため、提携に至ったとしている。なお、SBMと石川島播磨重工業(IHI)は23万m3級の多注済みという。原料ガスはShellのカルスト(Karsto)ターミナルから全長約50kmのパイプラインをリーセガふス社が敷し、Shellから年間2億m3を購入する。Lindeのスウェーデンにある子会社も、年間5万トンのLNGを購入する予定である。なお、ノルウェーのスタヴァンゲル周辺ではこの他に、年産10万トン未満のベースロード用LNG液化プラント(トレーン)が3カ所稼働している。設せつ(2) 海洋ガス田向け中規模LNG液化プラント(FPSO)の動向 最近、中規模洋上液化技術を開発する動きが活発化している。現在公式に発表されている主な中規模洋上液化技術三つについて、表2に示した。企業連合ShapeHull sizeCapacityTank capacity/Containment system LoadingUnloadingMooringLiquefaction processYearProjectsOthers表2中規模洋上液化技術の特徴比較①Flex LNG(M-FLEXコンセプト)船形状83,068dwt50万~150万トン/年LNG:9万m3Samsung/IHI SPB②SBM O? shore/ Linde/ IHI③Hoegh LNG/ABB Lummus Global/Aker Kvarner情報なし23万m3250万トン/年~船形状情報なし160万トン/年~情報なし/情報なし(IHI SPB-Type?)LNG:18万m3、LPG:3万m3/Aker Double Barrier Tank systemマニホールド (タレットでない)tandem or/and side by side情報なしtandem or/and side by side波止場に着桟ハムワージ社窒素エキスパンダープロセス2010~2011年Peak Petroleum IndustriesNigeria LTDDual Fuel Diesel Electric Propulsion System (DFDE)情報なし(タレット?)Linde Multi-stage Mixed Refrigerant (LiMuM) process(詳細不明)2012年情報なしー情報なし情報なし情報なし(タレット?)ABB “NicheLNGsm TurboExpander” system(詳細不明)2011年情報なしー出所:各種報道より作成(一部推定含む)①Flex LNG社 Floating Liquefaction ShipのFEED検討が進行中である。Flex LNG社が提案している洋上LNG液化技術(M-FLEXコンセプト)は、LNGタンカーの船の上(甲板の上)に設けた装置で天然ガスを液化してLNGを製造するLNGタンカーのことであり、従来から検討されていた洋上LNG液化設備(FPSO)とはコンセプトが少し異なる。Flex LNG 社は9万m3クラスの(M-Flex級)タンカーに適合したFloating Liquefaction ShipのFEED作業を実施している。FEEDは、Samsung Heavy Industries, Hamworthy Gas Systems, Det Norske Veritas, Dorchester Atlantic Marine Ltd. and Framo Engineeringとの共同作業である。液化プロセスは不明である。 なお、Flex LNG社は2007年11月15日に、ナイジェリ目的船体の開発を行い、IHI愛知事業所(メガフロート等大規模海洋構造物を開発、建造できる事業所)を初期プロジェクトで利用することを合意している。2012 年には、最初のFPSO からのガス生産を開始するために、合意即日にマーケティングを開始したとのことである。 液化プロセスは、Linde Multi-stage Mixed Refrigerant (LiMuM) process(詳細は現時点では不明)を採用。対象は1兆cf以上の埋蔵量で、基準液化能力は250万トン/年。また、FPSOはLPG、コンデンセートへの適用も可能である。トップサイドに設置する統合施設は、ほとんどすべてのガス組成に対応可能という。③Hoegh LNG/ABB/ Aker Kvarner連合 同じく、2007年9月19日、Hoegh LNG社は、世界初のLNG FPSO(LNG 浮体式・生産・貯蔵・積み出し設備)のFEED作業を開始し、主な建設業者との合意に達した2008.3 Vol.42 No.222?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■と発表した。船形状のFPSOであり、LNG液化能力は160万トン/年、LPG生産能力は50万トン/年、LNGタンク容量:18万m3、LPGタンク容量:3万m3(Double Barrier Tank)。プレFEEDはAker Kvarner(FPSOhull船体)、ABB(液化、ユーティリティー)にて実施中で、今後4~6カ月で完了予定。目標は2011年。天然ガス権益を持つ数社と話し合いを実施している。Hoegh LNG社のCEO、 Sveinung Stohle氏は「Hoegh LNGのビジネスモデルを、単なるLNG移送から、LNG生産、再ガス化ターミナルのソリューションビジネスモデルへ発展させる」と語った。液化プロセスはnew ABB “NicheLNGsm Turbo Expander”システムとの報道があるが、これと本稿末尾の付属資料に概説したABB Dual Expanderプロセスとの関連は不明である。5. 小中規模LNGプラントに最適な液化プロセスとは(1)液化プロセスの分類 現在、実用化されている液化プロセスには、大きく分けると2種類ある。 最も多く採用されているのは、プロセス流体とは別系統の冷媒(混合冷媒やプロパン冷媒等)で天然ガスを冷却するクローズドループシステムである。もう一つのシステムは、プロセス流体(フィードガスやエンドフラッシュガス)を利用して天然ガスを冷却するオープンループシステムである。その他に、熱音響といわれる特殊な原理を用いる方法がある。 一般に液化プロセスは、冷媒を圧縮、減圧させて低温とし、その冷媒の冷熱により天然ガスを冷却して液化させる。 液化プロセスは冷媒の種類や系統、圧縮・減圧の方法で区別され、主に次のタイプに分類できる。・クローズドループシステム ・オープンループシステム ・特殊タイプ カスケード混合冷媒方式エキスパンダーエキスパンダー熱音響 文献データ等をベースに、小中規模LNGプラントへの適用が期待できる液化プロセスを検討した。プラント規模として100万トン/年のLNGプラントを想定しているが、この程度の能力のプラントは少なく、50万~150万トン/年のLNGプラントは現在まで世界で10基程度しか存在しない。それらのほとんどは、ベースロードLNGプラントが建設され始めた1960年代から1970年代初期のプラントであり、当時としては最大規模であった。現存するLNGプラントは、初期のベースロードプラントか、10万トン/年以下のピークシェービング用のLNGプラントであり、これらの実績から今回のLNG生産能力に適した液化プロセスを選定するのは困難である。なお、液化プロセスの変遷および各プロセスのライセンスごとの概要を、本稿末尾の付属資料に示したので参照されたい。(2) 中規模LNG 液化に向いていると思われるプロセスとは 歴史的にLNG 液化プラントは、その大型化により、スケールメリットの追求によるエネルギー効率の向上、コスト低減が重要視されてきた。混合冷媒プロセスの1種であるC3-MRプロセスは、効率が最も高いプロセスの一つとされ、これまで多くのLNG液化プラントで採用されてきている。しかし、大型設備ではなく、中小規模のLNG設備の事業化を検討する場合には、プラントコストの影響が支配的となり、エネルギー効率はあまり問題にならないと言われている。例えば、機器数の少ないシンプルなプロセスや、プロットプランを小さくすることができるプロセスが有望視されている。(3)4つのプロセス候補 C3-MR、Dual MR、Single MRおよびDual N2 Expanderを中規模LNG液化プロセス候補として選択するとともに、その理由を次に示した。①C3-MR プロセス 現在まで、ベースロード用LNG 液化プラントで最も多く使用されており、液化プロセスの代表的存在である。エネルギー効率は高いが、プラントコストが高くなるといった傾向を確認すると同時に、プラントコストが比較的安くなる他のプロセスとの比較対象として選定した。②Dual MR プロセス C3-MR プロセスと同様、高いエネルギー効率を示す。高エネルギー効率、高プラントコストの影響を確認する目的で選定した。③Single MR プロセス シンプルな液化プロセスとなっており、中規模LNG 液化プラントに最も適したプロセスの一つとして考えられている。 これまで数種類のSingle MRプロセスが提案、採用されてきた。23石油・天然ガスレビューCDual N2 Expander プロセス 冷媒系に窒素を採用したシンプルかつ安全なプロセス。 中規模LNGへの採用のみならず、FPSOを視野に入れた場合に評価が高いと考え選定した。アナリシス6. 選定した四つの各液化プロセスの特徴比較 - 絞り込み(1)エネルギー効率、プロセスの特徴 表3に、四つの液化プロセスの特徴を示した。エネルギー効率は、工業向けプロセスのシミュレーションが可能な市販のソフトウェアを用いて、計算機内に100万トン/年規模の仮想液化プラントを、4種類の各液化プロセスそれぞれについて構築することによって計算して求めた。必要トレーン数、プロセスエリア、メンテナンス性、安全性および運転性はJGCの知見等を用いて推定した。ゆれ対策については、各プロセスのライセンス企業の研究開発動向を参考にした。 これらより、エネルギー効率は、C3-MR、Dual MR、Single MR、Dual N2 Expanderの順によいことが分かっ評価項目C3-MRAPCIAPCI/Shell経済性エネルギー効率11.9 kW d/t-LNG13.1 kW d/t-LNG機器数は最大C3冷媒には数段の圧力の異なる系統があるが、MR冷媒は圧力が1段のため、C3-MRよりもドラムや熱交換器の数が少ない表3液化プロセスの特徴比較液化プロセス&ライセンサーDual MRSingle MR (PRICO)Black & Veatch Prichard15.5 kW d/t-LNG冷媒が1系統なのでC3-MRやDual MRよりも機器数が少なく、シンプルDual N2 Expander (cLNG)Linde19.0 kW d/t-LNG約0.5 mtpaまでは1トレーンとなり、1トレーンでは機器数が最小だが、それ以上の液化能力になると、エキスパンダーの最大サイズの制限により、液化トレーンが複数必要80~105(0.5~1.5mtpa)9383漏洩時にプラギングができる冷媒系が2系列になるので不利C3-MRに比べてプロパンの保持量が少ない漏洩時はコア単位で交換要冷媒系が1系列で機器数が少ないので有利プロパン保持量が少なく、かつ冷媒サイクルも一つ漏洩時はコア単位で交換要0.5mtpaケースは機器数が少なく有利冷媒がN2なので、冷媒にハイドロカーボンはない100(C3-MRを100とした比)漏洩時にプラギングができる冷媒系が2系列になるので不利爆発範囲の広いプロパンの保持量が他のプロセスよりも多く、特にFPSOのケースでは安全性で劣るベースロードプラントと変わらない必要トレーン数、機器数プロセスエリアの設置面積比Main H/E回転機械その他ハイドロカーボンの保持量信頼性その他主熱交換器メンテナンス性安全性運転性ゆれ対応(FPSOケースのみ)ベースロードプラントと変わらないベースロードプラントと変わらない装置構成がシンプルなので、比較的運転が容易--SWHEはゆれ対策の検討が進んでおり、適用可能。シェル材質がアルミからステンレスになるSWHEはゆれ対策の検討が進んでおり、適用可能。シェル材質がアルミからステンレスになるPFHEにおける、ゆれに対する2相流のディストリビューションの問題がないことを確認する必要があるエキスパンダーの信頼性が若干低いエキスパンダーシステムなので、ターンダウン運転時の効率低下が著しいPFHEにおける、ゆれに対する2相流のディストリビューションの問題がないことを確認する必要がある冷媒系は、ガスなのでゆれに対する影響はない その他--- 有利と思われる項目(注) kWd/t=Compressor power kW-day /ton-LNG% = LNG HHV/FEEDガスHHV×100 (生産されたLNGの熱量 / FEEDガスの熱量×100)SWHE:Spiral Wound Heat Exchanger PFHE:Plate Fin Heat Exchanger出所: JGC/JOGMEC2008.3 Vol.42 No.224ッや税金、固定費(人件費、修繕費等)等は考慮しなかった。シミュレーションにより求めた運転用の燃料は、すべて原料ガスから供給されるものとした。したがって、原料ガスの値段が変動すると、年間の運転費用も変動することになる。操業に必要な水、窒素はすべてプラント内で製造するとしたが、その燃料使用量は全体に対して少ないので無視した。電力はすべてプラント内で発電すると仮定して、電力コストは全て運転用燃料として計上した。スタートアップ直前までのすべての要素を含み、陸上の場合、出荷用桟橋の長さは1,000mと仮定した。LNGタンクのサイズは16万m3として、日本で一般的に使用されている14万5,000m3のLNGタンカーを受け入れられるようにした。なお、本コスト推算には土地購入等のオーナーコストや、税金、保険、FEED業務等の設計費用は含まないものとする。以上の条件で大まかなコストを推算した。 図7と図8より、総運転コストはDual N2 Expanderプロセスが少し高めな以外は、図7の陸上ケースではSingle MRプロセスがもっともコストが低くなる。一陸上ケース100万トン/年C3-MRDual MRSingle MRDual N2 Exp.12Raw Gas Price34ドル/MMBtu%12011511010510095900C3-MRを100%とした場合の相対コスト出所:JGC/JOGMEC図7陸上で100万トン/年のプラントを操業した場合の液化プロセス別の総運転コストの比較FPSOケース100万トン/年C3-MRDual MRSingle MRDual N2 Exp.12Raw Gas Price34ドル/MMBtu%12011511010510095900C3-MRを100%とした場合の相対コスト出所:JGC/JOGMEC図8洋上で100万トン/年のプラントを操業した場合の液化プロセス別の総運転コストの比較た。機器数はC3-MR、Dual MR、Single MRの順に少なくなるが、Dual N2 Expanderは現状技術では1トレーン50万トン/年が最大となり、それ以上の場合は複数トレーンになってしまうことが分かった。プロセスの設置面積の傾向は、機器数に比例した。メンテナンス性はSingle MRが最もよいと考えられた。安全性は、冷媒に不活性ガスである窒素を用いるDual N2 Expanderが最もよいと考えられるが、メンテナンス性、運転性等を勘案すると、全体的にはSingle MRがよいと思われた。(2) 操業時を含めた総合的なコストに大きな差は認められない 先に選定したSingle MRプロセスが、他三つのプロセスに比べて操業費を含めた総合的なコストが明らかに劣勢でない場合は、詳細検討はSingle MRで行うこととし、四つのプロセスの総合的なコストを以下に大まかに推定した。 プロセスシミュレーション結果に基づき、各プロセスを採用した場合のLNG液化プラント建設に必要な投資額を推算した。算出方法は、シミュレーションにより、液化に必要なエネルギーを算出して必要ユーティリティ量(燃料ガス)を算出、過去の実績を照らし合わせて必要となる設備の構成やサイズを決定して簡易機器リストを作成し、これに基づいて、昨今の一般的な建設費とこれまで建設したコスト情報を参考にしてプラント建設コストの概略を推算した。(表4、表5)表4陸上に建設した場合の四つのプロセスの建設コストの概略(百万ドル)C3-MR Dual MRSingle MRDual N2 Expander1,2001,1501,225100万トン/年 1,200出所:JGC/JOGMEC表5洋上に建設した場合の四つのプロセスの建設コストの概略(百万ドル)C3-MR Dual MRSingle MRDual N2 Expander1,5501,6001,675100万トン/年 1,550出所:JGC/JOGMEC さらに、操業時を含めた総合的なコストを、次のように定義して算出し、比較した。操業時を含めた総合的なコスト=年間の減価償却費と年間の運転費用(OPEX)に年間の燃料費を加えたコスト 前提条件として、プラントの償却期間は8年とし、保25石油・天然ガスレビュー中規模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■禔A図8の洋上ケースでは、Single MR はC3-MRよりコストは高くなるが、その差は約4%であり、概略としては大きな違いはないと言える。そこで、先の定性的な評価が最もよかったSingle MRプロセスを、中規模LNG液化プロセスの詳細検討に用いることにした。 なお、本検討では上述の考え方によってSingle MRプロセスを選定したが、プロセスの選定はプロジェクトの置かれたさまざまな環境、制約条件等により変化するので、他のプロセスを否定するものではないことをご承知おき願いたい。アナリシス7. 中規模LNGの経済性の検討 以上の分析により、中規模LNGのプロセスとしては、Single MRが他の候補プロセスに対して比較的有利であることが判明した。ここでは、中規模LNGシステムを経済性の面から評価する。そのため、Single MRプロセスを用いた陸上、洋上の中規模LNGシステムを構築し、建設費・OPEXを算出する。更に、経済性検討及び感度分析を実施する。(1)プロセス・システム前提条件 表6に、プロセスとシステム構築のための前提条件を示す。 システムの検討範囲は、プラント入り口で原料ガスを購入し、出荷設備出口でLNGを販売するまでのシステムとした。天然ガス田の場所は東南アジア、LNG消費地は日本を想定する。プラントサイトは、洋上、陸上の両方の場合を想定することにし、ベースケースの規模は、両方とも100万トン/年とすることにした。プロセスは、6章で述べたように、経済性およびメンテナンス・安全性等の観点から、中規模LNGに最適であると考えられるSingle MRとし、そのコンプレッサー・ドライバーは、陸上はガスタービン、洋上は施設の面積や人的な制約を考慮して、よりコンパクト化を図ることが可能で、メンテナンス上タービンに比べて有利なモーターとすることにした。設備構成は、プラントオンサイト設備として、前処理、液化プロセス、発電の各設備を含み、ユーティリティ・オフサイト設備として、水・空気供給システム、LNGやコンデンセート等の各種タンク、出荷設備等を含むものとする。また、ユーティリティ・オフサイトには、陸上ではsite preparation、洋上ではハルを含んでいる。システムが具備すべきタンクの規模は、使用するLNG輸送船1船の輸送容量より少し大きい程度に設定した。すなわち、ベースケースではLNG輸送船の容量14万5,000m3に対して、システム側は16万m3のLNGタンクを持つ。ベースケースにおけるガス田から市場までの距離に関しては、東南アジアから日本までの距離として、6,000kmを想定する。原料ガス組成、製品LNG組成は、表6のとおりである。なお、本システムからは、コンデンセートが副産物として生産される。(2)経済性検討の前提条件 以下の費用は、すべて2007年ドル価格で算出することにする。経済性検討のための前提条件を表7に示す。ま表6プロセス・システム検討の前提条件システム検討範囲規模(万トン/年)プロセスコンプレッサードライバー設備構成LNGタンクベースケースプラント入り口で原料ガスを購入し、出荷設備出口でLNGを販売するまでのシステム経済性陸上 100洋上 100Single MR陸上 ガスタービン洋上 モーター・プラントオンサイト 前処理、液化、冷媒、発電・プラントユーティリティ・オフサイト (共通)水・空気供給システム、各種タンク、出荷設備 (陸上ケース) site preparation等 (洋上ケース)ハル、mooring system 等使用するLNG輸送船1船のLNG容量よりも、少し大きい規模LNG輸送船14.5万m3の場合、LNGタンク16万m3ガス田から市場までの距離(km)6,000原料ガス組成製品LNG組成H2O(0.2%)、N2(0.9%)、CO2(9.6%)、C1(81.4%)、C2(4.4%)、C3+(3.3%)N2(1.0%)、C1(91.6%)、C2(4.9%)、C3(1.7%)、iC4(0.3%)、nC4(0.5%)出所:JOGMEC2008.3 Vol.42 No.226?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■ず、上記(1)の条件で、プロセスおよびシステムを構築し、建設費を推算した。建設費から、オーナーズコスト(EPC期間中のオーナー側人件費)と初期運転費用(運転開始前にオーナーが調達するケミカル費用等)を算出した。建設費、オーナーズコスト、初期運転費用の三つを合わせると、プロジェクト実施段階で必要な総投資額、すなわちCAPEXとなる。OPEXは、人件費、運転・メンテナンス費、その他にカテゴリー分けし、建設費との関係から算出した。 CIFのLNG価格は、油価の熱量等価価格の90%とした。LNGを算出する際に用いる油価は、ベースケースで50ドル/bblとした。FOBのLNG価格は、LNG CIF価格から輸送料を引いた値とした。LNG輸送料は、表8のように、船の大きさと輸送距離のパラメータとなる。必要な船の数は、輸送距離と生産規模により異なるが、LNG輸送料はそのような隻数も考慮した数字になっている。 原料天然ガス価格は、ベースケースで2ドル/ MMBtuとした。建設期間は、最近のEPCスケジュールの長期化を考慮して、ベースケースで4年とし、投資パターンは実態を踏まえて、表7に示したとおりとした。プラントの生産期間は20年、10年均等償却で所得税は30%とした。 また、感度分析のパラメータとその範囲を表9に示す。感度分析においては、ベースケースからパラメータの一つのみを変動させ、他のパラメータは、ベースケースの数字を用いる。(3)結果と比較 表10に、陸上と洋上の各規模のシステムにおける建設費、OPEX、単位生産量あたりの建設費(以下、単位建設費と略)の推算値を示す。また、規模以外のパラメータをベースケースとしたときの税引き後ROI(Return On Investment)を示す。また、比較のため、参考として、陸上の500万トン/年程度の規模のLNGシステムの数値も示す。更に、図9に、陸上・洋上の両ケースについて、建設費に占めるオンサイト、ユーティリティ・オフサイトの割合を示す。更に、表11に、陸上ベースケースにおけるオンサイトコストとユーティリティ・オフサイトの構成割合の内訳を示す。 100万トンのベースケース規模の陸上、洋上の建設費は、それぞれ11億5,000万ドル、16億ドルとなった。また、そのOPEXは、陸上、洋上それぞれ、5,300万ドル/年、7,300万ドル/年、原料・燃料に用いる天然ガス費用は両方とも1億2,200万ドル/年となった。更に、税引き後ROIは、陸上システム9.9%、洋上システム6.0%と算出された。表7経済性の検討条件表8LNG輸送料投資金額構成運転費用構成建設費: ─オーナーズコスト:建設費X10%初期運転費用:建設費X3%人件費:建設費X1.1%運転・メンテナンス費:建設費X2.9%その他:建設費X0.6%CIF LNG価格FOB LNG価格輸送料油価原料天然ガス価格油価の90%熱量等価価格CIF LNG価格-輸送料表8参照50ドル/bbl2ドル/MMBtu建設期間投資パターン生産期間償却率所得税インフレ率借入金4年間建設費:39-38-16-7%オーナーズコスト:47-23-23-7%初期運転費用:0-0-0-100%20年10年均等30%0%0%出所:JOGMEC27石油・天然ガスレビューLNG船規模(万m3)傭船料(ドル/日)輸送距離(km)輸送日数LNG輸送料(ドル/MMBtu)出所:JOGMEC3,50040.314.565,0006,0009,0003,500846,2006,00070.5100.740.570.79,000101表9感度分析のパラメータプラント規模(万トン/年)原料ガスCO2濃度(%)ガス田から市場までの距離(km)LNG船・LNGタンクサイズ(万m3)洋上化建設期間原料ガス価格(ドル/MMBtu)油価(ドル/bbl)CAPEX変動(%)出所:JOGMECベースケース感度分析ケース1009.650、150206,0003,500、9,00014.5/168/9陸上4年2500洋上3年1、340、60-30、 +30Aナリシスオンサイトユーティリティ・オフサイト1,85050%50%50%50%1501,60056%56%44%44%100万トン/年1,20066%66%34%34%50建設費(2006年)洋上ケース百万ドルオンサイトユーティリティ・オフサイト3,000?5,00045%45%55%55%5001,35055%55%45%45%1501,15059%59%41%41%100万トン/年図9各ケースのオンサイトとユーティリティ・オフサイトの割合表10建設費、OPEX、ROI等陸上ケース規模(万トン/年)50100150CAPEX(百万ドル)9001,1501,350500(参考値)3,000~5,000150~250OPEX(百万ドル/年)天然ガス費用(原料・燃料)(百万ドル/年)@天然ガス価格$2/MMBtu単位生産能力あたりCAPEX(ドル/〈トン/年〉)税引き後ROI (%)洋上ケース規模(万トン/年)CAPEX(百万ドル)OPEX(百万ドル/年)天然ガス費用(原料・燃料)(百万ドル/年)@天然ガス価格$2/MMBtu単位生産能力あたりCAPEX(ドル/〈トン/年〉)税引き後ROI (%)出所:JOGMEC416153621221826001,8001,1509004.69.913.1600~1,00013~15501,2001001,6001501,850556173851221822,4001,6001,2331.36.09.1表11陸上ベースケースにおけるオンサイトとユーティリティ・オフサイト割合の内訳オンサイトユーティリティ・オフサイト前処理 10%液化・冷媒 23%発電 8%出所:JOGMEC59%2008.3 Vol.42 No.228(a) プロセスの相違の建設費へのインパクト陸上ケース百万ドル68%68%32%32%50900出所:JOGMEC建設費(2006年) LNGプラントの心臓部である天然ガスを液化する部分(すなわち熱交換器やコンプレッサー・冷媒関係の部分)の全体コストに占める割合は、陸上ベースケースにおいては、表11のように23%程度である。プロセスの相違によるこの部分のコスト差は10%程度と考えられる。したがって、全体に与えるコスト差は、他の部分が同等であると仮定すれば、建設費に2~3%程度のインパクトを与える。すなわち、コストを基準にしたプロセス選定は、少なくとも建設費にはそれほど大きな影響を与えないと考えられる。(b)規模別比較 大規模LNGと中規模LNGを比較してみよう。 まず、単位建設費における比較である。中規模LNGの単位建設費は、大規模LNGのそれに比べて高くなっている。また、中規模LNGの中で比較すれば、規模の縮小につれて、それは大きくなる。これは、いずれもスケールメリット・デメリットによる。 次に、オンサイトとユーティリティ・オフサイトの建設費構成の比較である。陸上ケースの場合、100万トン/年のその割合は、41:59であり、大規模LNG500万トン/年のその割合である55:45と比較したとき、中規模LNGでは明らかにユーティリティ・オフサイトの割合が大きいことが分かる。また、中規模LNGのケースのなかでは、規模が小さくなるにつれてユーティリティ・オフサイトの割合が大きくなることが分かる。この理由については後ほど検討する。 最後に、ROIを比較する。500万トン/年ケースでの税引き後のROIは、13~15%程度になると推算される。すなわち、中規模LNG陸上のベースケースと大規模LNGとの差は、3~5%程度になる。(c)陸上と洋上の比較 この検討は、陸上システムと洋上システムの優劣を分析することを目的にしていない。この結果から、同じ規模同士の陸上と洋上のROIを比較することには、あまり意味はない。陸上と洋上のシステムを比較する場合には、同一のオフショアのガス田を想定して、陸上にガスをPLで輸送して陸上のLNGシステムで開発する場合と、洋上LNGシステムで開発する場合を検討しなければならない。この場合、洋上のLNGシステムの位置は、生ゥてみよう。(a)陸上ケース 図10により、このパラメータ範囲においては、感度のマイナスの影響に対して最も高い順からパラメータを並べると、生産量(規模)、油価(すなわちLNG価格)、洋上化、投資額変動、原料ガス価、CO2濃度増加、輸送距離、LNG輸送船・LNGタンクサイズの順となる。ただし、プラスとマイナスの両方の影響度から考えると、生産量、油価、原油ガス価、投資額変動の四つのパラメータは、感度に対して同等程度の影響を与えると言えるかもしれない。ここではまず、経済性への影響の小さいパラメータと大きいパラメータに分けて検討してみよう。①経済性への影響が小さいパラメータ この感度分析で、輸送距離の影響が小さいことに注目すべきである。輸送距離が長くなると、LNG船の数が増加する。しかし、本システムでは、これを輸送料という概念で処理しており、距離の増加に対する輸送料の増加は、経済性に大きな影響を与えるほど変動しない。 また、使用するLNG輸送船の規模も、プロジェクトの経済性に対する影響は少ない。この理由は次のとおりである。7章(1)で述べたように、本システムでは使用するLNG船の規模により、システムが持つべきLNGタンクが決定される。いま、LNG船の規模を14万5,000m3から8万m3に小さくすると、当然輸送費は高くなる。一方、システムのLNGタンクは、16万m3から9万m3に縮小し、CAPEXが小さくなる。このマイナスとプラスの効果がROIへの影響として相殺された結果、経済性には0.1%程度の影響しか与えない、という結果になった。 原料ガス中のCO2濃度が、9.6%から20%程度に増加した場合、ROIは1%程度悪化する。CO2濃度がこの程度増加すると、酸性ガス除去装置のコストが3倍になるが、CAPEX全体のうち前処理工程全体のコストは、表11のように10%程度であるので、この程度のインパクトになっている。②経済性への影響が大きいパラメータ 規模の影響は大きい。このスケールメリット(デメリット)に対する建設費への影響は、二つの項目に分けて考える必要がある。すなわち、一つはオンサイトの建設費に対する影響であり、いま一つはユーティリティ・オフサイトの建設費に対する影響である。 オンサイト建設費に関しては、例えば、規模に対して2/3乗則等の感度で影響を受けることに対して、ユーティリティ・オフサイトの建設費は、オンサイト建設費よりも規模の影響は少ない。すなわち、図9で示したよ-5.33.2-1.0-0.40.40.10.92.6-3.9-4.4-3.0-3.23.54.7ベースケースからのROI差(%)5015020%3,5009,0008/9洋上化3134060-30+30規模(万トン/年)CO2濃度(%)輸送距離(km)輸送船/LNGタンクサイズ(万m3)陸上・洋上建設期間(年)原料ガス価($/MMBTU)油価($/bbl)CAPEX増減(%)出所:JOGMEC図10陸上ケース 感度分析-4.73.1-0.8-0.10.30.62.3-4.2-2.9-3.03.14.3ベースケースからのROI差(%)5015020%3,5009,0008/9134060-30+30規模(万トン/年)CO2濃度(%)輸送距離(km)輸送船/LNGタンクサイズ(万m3)原料ガス価($/MMBTU)油価($/bbl)CAPEX増減(%)出所:JOGMEC図11洋上ケース 感度分析産施設からの距離が比較的近く、陸上システムに比べて安価な天然ガス購入価格が想定される。 しかし、本検討は、陸上と洋上のシステムの比較を目的とせずに、それぞれのシステムのROIそのものの評価を目的とするものである。すなわち、本検討における洋上ケースは、システムの入り口で、陸上ケースと同等の価格で天然ガスを購入することを前提にしており、生産施設からの距離というファクターは無視している。洋上ケースの建設費が陸上ケースに比べて高額なのは、当然である。洋上システムにして、天然ガスの輸送距離を短縮して上流開発コストを低減させた分が、洋上システムの建設費の増加に反映されていると考えられるからである。(4)感度分析と評価 図10と図11に、陸上、洋上それぞれのケースにおける感度分析結果を示す。このなかで、まず、陸上ケース中規模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■29石油・天然ガスレビューAナリシスうに、規模が小さくなればなるほど建設費におけるユーティリティ・オフサイトの負担が重くなる。具体的な検討においては、ユーティリティ・オフサイトコストに大きな割合を占めるLNGタンクは、7章(1)で述べたように、プラントの規模ではなく、LNG輸送船の規模で決めるようになっている。すなわち、本検討では、50万~150万トン/年のケースすべてにわたり、基本ケースのLNGタンク規模は、輸送船14万5,000m3を前提として16万m3と決めている。すなわち、規模にかかわらず、LNGタンクコストは一定となっている。 油価(すなわちLNG価格)、洋上化、投資額変動、原料ガス価については、ここでは影響度の大きさを認識しておけば十分であろう。(b)洋上ケース 洋上ケースの各パラメータに対する傾向は、図10と図11を比較してみれば、LNG船・LNGタンクの規模を除き、陸上ケースと同じであると言える。すなわち、洋上ケースは、陸上ケースよりも小容量のLNG輸送船をチャーターすることによりLNGタンクの規模を小さくした場合、陸上ケースよりもよりポジティブな影響が出る。陸上ケースよりも洋上ケースの方がこのパラメータに関する感度が高いのは、LNGタンクの規模を小さくすることに対する建設費全体への効果が大きいことによる。LNG輸送船を小さくした場合、貯蔵タンクを抱えるハルが、16万m3のLNGを貯蔵可能なものから9万m3のLNGを貯蔵可能なものに縮小している。なお9万m3貯蔵のハルでも、デッキに50万~150万トン/年のLNGプラントの搭載が可能であることを確認している。(c)天然ガス価、油価とROIの関係 図12に、陸上ケースの各規模における天然ガス価格(原油ガス価)とROIの関係を、図13に陸上ケースの各規模における油価とROIの関係を示している。 ここでは、経済性確保の基準として、税引き後ROI 10%をメルクマールとして採って検討してみよう。この図から、以下のことが分かる。・ 油価50ドル/bblを前提とすれば50万トン/年のLNGシステムを実現することは困難である。・ 100万トン/年のシステムであれば、2ドル/ MMBtuの天然ガス価格以下、150万トン/年のシステムであれば3ドル/MMBtuの天然ガス価格以下の場合に、実現の可能性がある。・ また、天然ガス価格を2ドル/ MMBtuとした場合には、50万トン/年のシステムでは油価が68ドル/bbl以上の場合に、100万トン/年、150万トン/年のシステムでは、油価がそれぞれ50ドル/bbl以上、43ドル/bbl以上の場合に、システムが成立する可能性がある。 2008年初現在、油価は80~100ドル/bblの範囲で変動している。しかし、プロジェクト実施の決断の際にプロジェクトのパフォーマンスを検討するための前提油価としては、80ドル/bblというような高い油価を採用することはできないであろう。どのような前提油価によりプロジェクトの経済性を検討するかによって、実行可能なLNGプロジェクトの規模の下限は決定されることになる。 ROI(%)油価=50ドル/バレルROI(%)天然ガス価格=2ドル/MMBtu150万トン/年100万トン/年20151050150万トン/年100万トン/年50万トン/年132天然ガス価格(原料ガス価)4201510505ドル/MMBtu出所:JOGMEC出所:JOGMEC405050万トン/年60油 価708090ドル/バレル図12天然ガス価とROI(陸上ケース)図13油価とROI(陸上ケース)8. 中規模LNGプロジェクトの実現に関する考察―試論―以上の検討により、概要、次のことが判明した。・中規模LNGに特有の特殊な技術は、存在しない。・ 液化プロセスは、single MRが比較的よい。しかし、液化プロセス選定はそれほどクリティカルなポイント2008.3 Vol.42 No.230?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■ではない、と言えよう。・ 現在の経済状況では、中規模LNGの経済性は大規模LNGに比べて比較的低下するとはいえ、税引き後ROI 10%をメルクマールとすれば、実現可能な範囲にある。・ 建設費を分析すると、オンサイトコストよりもユーティリティ・オフサイトコストの割合が、大規模LNGに比べて大きい。 ここでは、これらの結果を踏まえて、中規模LNG実現のための問題点やその解決策について検討する。資源機構では現在、中規模LNGを含めた開発手段による中規模ガス田開発のための問題点やそのためのアイデア等に関して、「中小規模ガス田の商業化ビジネスモデル検討ワークショップ」で検討している。本検討結果は、近い将来、この石油・天然ガスレビューで発表する予定である。本稿では、このスタディーとは無関係に、いままでの結果を基にした、国際貿易の中規模LNG実現のための課題と解決策について考えてみよう。中規模LNGを実現するには当然のことながら、上流にも下流にも、それぞれが大規模LNGよりも中規模LNGを選択するドライビングフォースがなければならない。そこで、上流、下流それぞれに分けて考えてみたい。(1)上流における中規模LNGのバリューの向上 上流関係者とは、大きく産ガス国・NOCと通常の企業に分けられ、それぞれのプロジェクト推進の意義が異なることも考えられる。ここでは、通常の企業の場合のみについて検討する。 上流に係る企業(上流企業)にとってのメリットは、先に述べたように、今まで開発できなかったガス田をマネタイズできること、リスクや資金規模からの取り組みやすさ等であろう。上流企業にとっては取り組むべきプロジェクトは、当然、その会社が基準とする最低限の経済性確保の見通しがなければならない。産ガス国が上流企業に、大規模ガス田と同じガス田契約条件を中小規模ガス田にも適用してくる場合には、開発におけるスケールメリットの少ない中小ガス田では、単位生産量あたりの開発コストが高くなるため原料天然ガス価格は比較的高くなるであろう。また、これも検討したように、LNG製造コストも大規模LNGに比べて高くなる。したがって、上流企業にとって中規模LNGは、経済性の面で大規模LNGに比べて不利になることは否めない。 すなわち、上流企業が中規模LNGに取り組むためには、経済性の面では、大規模LNGに比べて悪化する経済性の大きさを縮小する工夫が必要だ、ということになる。言い換えれば、中規模LNGを上流企業が実施するプロジェクトにするためには、大規模LNGほど魅力はないものの、少なくとも実施する価値のある経済性を確保するものにする必要がある、ということである。 システムとしての経済性低下割合の縮小手段を示したのが、表12である。全体システムのCAPEXやOPEXを低下させるには、コストが安価で高効率な液化プロセスを選定したり、施設の一部を省略したり、設備の標準化・規格化をすればよい。また、CAPEXやOPEX低減以外の経済性向上方法としては、原料を安価に購入するか、製品の付加価値を高め高額で売る方法が考えられよう。それぞれについて、少し詳しく見てみよう。(a)コスト低減 中規模LNGへの適用すべき液化プロセスに関しては、7章(3)(a)で検討したように、建設費に対してはそれほどの大きなインパクトはない。プラントの前処理やユーティリティ・オフサイトは、一部施設の他のプラントとの共用や既存施設の利用により低減できる。しかし、当然、天然ガスを利用する他のプロジェクトの存在は、ガス田の規模の増加を要請する。建設方法に関しては、標準プラントを想定して部品や装置を規格化して、モジュール化によって建設費を下げる方法があり得るだ表12経済性の低下割合を抑制する手段項目CAPEXプラントエネルギー効率建設方法輸送船受入基地天然ガス価製品価格受入基地原料と製品出所:JOGMEC対策案問題点共用、既存設備利用、中古品利用(LNGタンク代替としてのLNG船)LNGプラントコージェネ事業標準プラントを前提としたモジュール化気化設備を積んだ輸送船による受入基地設備軽減既存受入基地利用天然ガス開発とLNG事業の一体化電力・供給ガス・ガスケミカルの販売(LNG事業と下流事業との一体化)・共用:天然ガス必要量増加、プロジェクトの複雑化・既存設備利用:場所限定総事業費増加、天然ガス必要量増加、電力のマーケットコスト削減効果総事業費増加場所限定総事業費増加総事業費増加31石油・天然ガスレビュー?、。この場合、モジュール化は、一般的にはコストを下げる方法ではない。規格化や規格化による大量生産を通してコストを下げていく、ということである。また、出荷設備に必要なタンクに関しては、あるいは将来、中古LNG船で代替できる可能性があるかもしれない。受入基地の削減には、既存LNG基地の利用や気化設備を積んだ新しいLNG船の導入などが解答になるかもしれない。(b)コージェネレーション化 LNGプラントの効率を上げる方法として、大型の天然ガスコンバインドサイクル発電を行い、LNGは電力駆動コンプレッサーを用いる方法が考えられる。余剰の電力は近隣に売電する。しかし、こうした方法は、天然ガス必要量を増加させる、電力マーケットを必要とする、全体のプロジェクトコストを増大させる等、問題が多い。(c)上流と下流の一体化 原料天然ガス価格に関しては、LNGとの一体化開発で天然ガスをコストベースの供給にすることにより、低減は可能である。販売する製品に関しては、LNGそのものを販売するのではなく、より高価な製品を販売する方法が考えられる。LNGからの製品としては、電力、供給ガス、ガスケミカル等がある。このことは、LNG事業とLNGからできる製品の一体化事業を意味している。しかし当然のことながら、上流との一体化開発、あるいは下流と併せたビジネスは、プロジェクトに参加するプレーヤーの経済性を上げる可能性があるにしても、プロジェクト全体のコストを増大させてしまう。(2)下流が中規模LNGからLNGを購入する理由 下流事業者(すなわち、ユーザー)が、中規模LNGからわざわざLNGを購入する理由はなにか。ユーザーは、中規模LNGからLNGを購入するメリットを認識できるのだろうか。 中規模LNGプロジェクトにおいて、上流企業が、ユーザーに大規模LNGに比較して魅力的な価格を提示することは、不可能とは言わないまでも極めて困難であろう。一方、ユーザーにとっては、中規模LNGからLNGを購入する場合、提示されるLNG価格や契約条件が大規模LNGが提示するそれらに比べて遜色ないものであれば、少なくとも経済的に問題はない。しかし、ユーザーが価格とともに重要視する製品の安定的供給という観点からは、中規模LNGプロジェクトを推進するメンバーにメアナリシスジャーズが入っていなければ(その可能性は極めて高い)、プロジェクトの信頼性や万一の場合の代替手段の確保の面で不安があることから、大規模LNGに比べて中規模LNGは劣後するものになる可能性が高い。 もし、以上が妥当ということであれば、ユーザーにとって、中規模LNGプロジェクトからLNGを購入するメリットはないのか。ユーザーがこれらのデメリットを承知で、あえて中規模LNGからLNGを購入するドライビングフォースとして考えられるのは、先に述べたように、LNGの立ち上げスピードが速いことによるニーズに合った供給タイミングの適切さと、戦略的な資源調達のセキュリティーの向上にあるのではないだろうか。 最初の、供給タイミングの適切さに関しては、これはユーザーへの売り込みの必要条件たり得ても、十分条件にはなり得ないであろう。ユーザーに魅力を感じさせるためには上流企業は、更に大規模LNGと等価な価格と安定供給に関して保証をする必要があるだろう。 次の、戦略的な資源調達のセキュリティーの向上という意味は、次のようなものである。すなわち、中規模LNGプロジェクトは、中流事業としてはCAPEXが大規模LNGと比較して小さく、上流事業との一体化プロジェクトになったとしても、その全体コストは大きくなく、ユーザーが上流開発からLNG事業までの全体プロジェクトに参加できる事業規模となるかもしれない。ユーザーにとって、このような上流のガス田開発からの一貫プロジェクトに参加することが、ただ単に第3者が生産したLNGを購入するだけというのよりも資源調達上のセキュリティーの観点から有利である(あるいは意味がある)、というような商慣習上の転換が起こった場合には、このようなビジネスモデルが、資金的規模の点で可能な中規模LNGプロジェクトは、ユーザーにとって魅力のあるものになるかもしれない。 大規模LNGの場合、ユーザーは上流の天然ガス田の権益を確保するにしてもマイナーシェアに甘んじなければならないが、中規模LNGの場合には、ユーザーとしては1社が独占して天然ガス田の権益が確保できる可能性もある。その場合にはユーザーは、上流からのバリューチェーン全体をコントロールするとともに、ガス田から都市ガスや電力販売までの一貫したバリューチェーンのなかで利益を最大化する戦略を採ることが可能になる。2008.3 Vol.42 No.232?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■9. 終わりに 以上、中規模LNGの実現可能性について検討した。中規模LNGは、技術的には実現可能である。また、上流企業にとっては、この検討によれば、中規模LNGはある程度の経済性は確保できる見通しであり、今まで開発ができなかったガス田が開発可能となる等、プロジェクトを推進するドライビングフォースもある。 一方、下流のユーザーの立場になって考えたとき、大規模LNGよりも中規模LNGを選好する理由を見出すことは難しいと考えられる。この困難の原因は、ユーザーがLNGを購入する際に「特定のプロジェクトからLNGを購入する」ということを基本的な対応と仮定していることにある。すなわち、ユーザーがLNGを購入する特定のプロジェクトを選択するという前提に立つと、中規模LNGは、価格が大規模LNGと同等程度であるとした場合、中規模であることによるデメリットを補って余りある魅力をユーザーに提供し得なければ、ユーザーから選択されることはないだろう。 将来、LNGのマーケットがいままで以上に流動化し、石油と同じように「生産できれば(誰かに確実に)売れる」ようになった場合、すなわち、LNG生産とLNG消費のリンクがより以上に緩くなった場合、儲けが薄くても開発可能な中小規模油田と同じように、中小規模ガス田も中規模LNGで自由に活発に開発されていくことになろう。また、LNGのマーケットが売り手市場になったときにも、中規模LNGの実現可能性は増加する。さらに、上流のプレーヤー自身が下流のユーザーの役割を果たすとき、中規模LNGはそのプロジェクトから産出する製品の占有度の高さと、投資額の相対的小ささで魅力的なものとなる。いずれにしても中規模LNGを実現するには、さらに知恵を働かさなければならない。【付属資料】1.液化プロセスの種類と変遷(1)カスケード(Cascade)プロセス 3種類の単成分の冷媒を利用したシステム(図14)で、ピークシェービングでない初期の大型LNGプラントが建設され始めた1960年代に採用されたシステムである。ベースロード用といわれるLNGプラントが建設され始めたのは1960年代であり、1964年のアルジェリア(Arzew)と1969年のアラスカ(Kenai)の約50万トン/年のプラントがそれである。それ以前は、ピークシェービング用の小型のLNGプラントが建設されているだけであった。これら二プラントにはカスケードプロセスが採用されているが、当時の技術ではMRプロセスに比較して、単一成分を取り扱い、それぞれの冷媒が独立していることから、信頼性が高く運転が容易、またエネルギー原料ガスメタンエチレンプロパン熱交換器コンプレッサーLNGコンプレッサーコンプレッサー出所:JGC/JOGMEC図14カスケードプロセス33石油・天然ガスレビュー効率が高い、というメリットがあった。また、混合冷媒の物性計算が必要なため、コンピューターによる計算が簡単でなかった当時は、コンピューターによるシミュレーションが比較的容易な単成分であることによってプロセスの信頼性が高かった。ベースロード用のMRプロセスの冷媒が2系列なのに対して、冷媒が3系列になることから、一般に機器数が多く建設コストが高くなると言われている。 しかし、従来、主熱交換器のメーカーは後述する混合冷媒方式で多くの実績を持つAPCI、Linde等に限られていたが、1990年代以降、LNGプロジェクトの計画が多くなり、カスケードプロセスのライセンスを持つ企業が、再びLNG液化プラントへ再参入を試み始めた。その結果、1999年にトリニダードや赤道ギニアでPhillipsのカスケードプロセスが適用され、さらに近年になってShellのDual MR、LindeのMixed Fluid Cascade、AxensのDual MRなどのプロセスが、ベースロード LNGプラントへの適用を計画するに到っている。(2)混合冷媒プロセス MR(Mixed Refrigerant)またはMCR(Mixed Component Refrigerant)プロセスと呼ばれ、冷媒にメタン、エタン等の軽質炭化水素と窒素の混合物を使用する方式である。コンピューターの発達と利用の広がりにつれて、MRプロセスに改良が加えられ、信頼性やエネルギー効率が向上した結果、1970年代以降はカスケードプロセスではなく、機器数が少なくプラントコストの安008.3 Vol.42 No.234アナリシス原料ガスN2熱交換器コンプレッサーLNGエキスパンダーコンプレッサー出所:JGC/JOGMEC図16エキスパンダープロセスC3 Pre-cooled MRCascadeSingle MRSingle MR (PRICO)AP-XDual MRMixed Fluid Cascade万トン/年197019801990建設年200020102020年900800700600500400300200100019601トレーンあたりの液化能力出所:JOGMEC図17輸出向けLNGプラントの建設年代と液化方式別1トレーンあたりの液化能力ら購入して貯蔵する設備を設置する必要もない。さらに、冷媒がガス相だけで液相がないので、FPSOでは、ゆれに対する熱交換器内での液相の不均一による熱交換能力の低下に関する問題も発生しにくいと考えられる。現状の天然ガス液化実績としてはピークシェービング用だけであるが、類似のシステムが大型の空気分離システムに利用されているので、システムとしては信頼性がある。 表13に、輸出向けLNG液化プラントの歴史と液化プロセスを示した。また、図17には輸出向けLNGプラントの建設年代と液化方式別トレーンあたりの液化能力を示した。ベースロード用液化プロセス変遷の過程で、1トレーンあたりの液化能力は増加の一途をたどってきた。中小規模LNGプラントの液化能力は50万~150万トン/年程度を考えているが、現在世界に存在する50万~150万トン/年規模のLNGプラントは少なく、ほとんどは1960年から1970年代の古いプラントである。それらは当時としては最大規模であり、そこに使用されたプロセスが必ずしも50万~150万トン/年規模に向いているというわけではない。冷媒システムいMRプロセスが利用されるようになった。1970年代に、APCI(Air Products and Chemicals)のSingle MRプロセス(図15左)がリビアで、TEAL(現Technip/Air Liquid)のMRプロセスがアルジェリア(Skikda)で適用された後、APCIがMRプロセスのエネルギー効率を著しく向上させたC3 Pre-cooled MRプロセス(図15右)を開発すると、世界のほとんどのベースロードプラントに使用されていった。したがって、1970年代以降、混合冷媒プロセスが進歩して信頼性やエネルギー効率が向上したため、冷媒が3系列あって機器コストが高いカスケード方式は、90年代に入るまで利用されることがなくなった。 MRには、窒素とメタン(C1)からプロパン(C3)あるいはブタン(C4)くらいまでのハイドロカーボンが使用される。C3 Pre-cooled MRプロセスは、エネルギー効率が高く、現状においてベースロード用プロセスとして世界で最も利用されている。プロパン(C3)冷媒システムとMR冷媒システムと2系列の冷媒システムがあり、主にC3冷媒でMRを冷却し、MRで天然ガスを液化させるシステムである。(3)エキスパンダープロセス もともとピークシェービング用に利用されてきたプロセスであり、10万トン/年以下の小型プラントに使用されることが多い(図16)。特に、フィードされる天然ガスの圧力を利用したExpanderプロセスでは、フィードガスの一部しか液化することができない。しかし、エキスパンダーの大型化および窒素を冷媒としたエキスパンダーコンプレッサーシステムの適用により、50万~100万トン/年程度の能力のプラントが可能になってきていると言われており、窒素冷媒の特徴である、大量の可燃性液体を保持しないことによる高い安全性から、FPSOへの適用を中心に検討が盛んになっている。また、ハイドロカーボンの冷媒が必要でないため、フィードガスからC1、C2などのいくつかの成分を分離したり、外部か原料ガス原料ガスMRC3 or MR熱交換器熱交換器コンプレッサーコンプレッサーコンプレッサーLNG出所:JGC/JOGMECLNG図15Single MRプロセス(左)とC3 Pre-cooled MRプロセス(右)?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■表13輸出向けLNG液化プラントの歴史と液化プロセス生産開始年プロジェクト名国名能力(万トン/年×系列)液化プロセスライセンサー1964196919701972キャメルケナイリビアスキクダ-1アルジェリアUSA(アラスカ)リビアアルジェリア1972スキクダ-2アルジェリア1972197719771978197819811983198319841987198919901993199419941995199619971998199919991999199920002000200020022002200320042004200420072007ブルネイダス-1バダック-A/Bアルン-1/2/3アルズー-1アルズー-2バダック-C/Dマレーシア-1アルン-4/5アルン-6ウッドサイド-1バダック-Eウッドサイド-2バダック-Fダス-1マレーシア-2カタールガス-1バダック-Gカタールガス-2バダック-Hナイジェリア-1ラスガス-1アトランティック-1ナイジェリア-2ラスガス-2オマーンアトランティック-2,3ナイジェリア-3マレーシア-3ウッドサイド-4ラスガス-3,4ダミエッタ-1カタールガス-IIスノービット2009(予定)サハリン-2未定未定未定未定パースペルシャン LNGイラン LNGアンゴラ LNG出所:各種資料を基にJOGMEC作成ブルネイアブダビインドネシアインドネシアアルジェリアアルジェリアインドネシアマレーシアインドネシアインドネシアオーストラリアインドネシアオーストラリアインドネシアアブダビマレーシアカタールインドネシアカタールインドネシアナイジェリアカタールトリニダード・トバゴナイジェリアカタールオマーントリニダード・トバゴナイジェリアマレーシアオーストラリアカタールエジプトカタールノルウェーロシアイランイランイランアンゴラ44 × 358 × 264 × 4100 × 3110 × 2121 × 2100 × 5130 × 2270 × 2167 × 3122 × 6122 × 6270 × 2200 × 3167 × 2167 × 1200 × 2280 × 1200 × 1280 × 1230 × 1265 × 3200 × 2280 × 1200 × 1300 × 1295 × 1330 × 1300 × 1295 × 1330 × 1330 × 2330 × 2295 × 1380 × 2420 × 1470 × 2500 × 1780 × 2400 × 1480 × 1500 × 2810 × 2500 × 2520 × 1CascadeCascadeSingle MRSingle MRTechnipPhillipsAPCITEAL(Technip)Single MR (PRICO)Black & Veatch PrichardC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRCascadeC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRCascadeC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRC3 Pre-cooled MRAP-XMixed Fluid CascadeDual MRDual MRDual MRMixed Fluid Cascade ?CascadeAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIPhillipsAPCIAPCIAPCIPhillipsAPCIAPCIAPCIAPCIAPCIAPCILinde/StatoilShellAxensShellLindePhillips35石油・天然ガスレビューQ.液化プロセスのライセンスの種類と概要(1)ライセンスが乱立する混合冷媒方式 混合冷媒方式は最も普及している液化方式であり、多くのメーカーが参入している。以下に、11種類の液化プロセスのライセンスの特徴をそれぞれ概説する。①C3 Pre-cooled MR(図18) APCIが開発した、現在、ベースロードLNGプラントにおいて世界で最も利用されているプロセスである。長い間、ベースロード LNGプラントにおいて、ほぼ独占状態であった。プロパン冷媒系でMRを予冷し、天然ガスの液化はMRとの熱交換器によって行われる。MRには窒素およびC1、C2、C3が用いられる。主熱交換器には特殊なSpiral Wound Heat Exchanger(SWHE 写5)または、Coil Wound Heat Exchanger(CWHE)と呼ばれる(以下SWHE)ものが用いられる。10mm径程度の細いチューブを巻いたコイルを、タワー型のシェル内に抱かせた熱交換器で、大型化がし易くレイアウトもシンプルとなる。しかし、特殊なタイプで、熱交換器製作メーLinde Technology 2003年1月写5製作中のSWHE(コイル状熱交換器)燃料ガスLNGタンクN?除去-150℃-156℃-150℃3㎏/㎝2-27℃MRコンプレッサーC3プレクールC3コンプレッサー熱交換器48㎏/㎝2混合冷媒(MR)-37℃HHPC3HPC3MPC3LPC3JGC/JOGMECスクラブカラムLPG分離-18℃MPC3HP C3コンデンセート図18APCI C3 Pre-cooled MRアナリシスカーがAPCIとLindeに限られ、高価である。 近年、窒素冷媒システムを追加したAPXプロセスも開発され、更なる大型化を目指している。基本的にベースロードプラント用である。②APCI Dual MR(図19) C3 Pre-cooled MRプロセスの、C3予冷部分にもMRを使用したプロセス。後述するDual MRプロセスと同様、主流のAPCI C3 Pre-cooled MRプロセスの液化能力向上の制約となっている、C3コンプレッサー能力の制約を取り除き、1トレーンあたりの能力を上げることによってスケールメリットを生み出すことを主な目的として開発されている。基本的にはベースロードプラント用と考えられるが、中規模でもメリットがあるという報告もあり、近年、発展し、適用が進み出した代表的なプロセスである。燃料ガスLNGタンク-41℃高温側混合冷媒27℃5㎏/㎝2N2除去-150℃-150℃熱交換器-128℃-44℃33㎏/㎝233㎏/㎝24㎏/㎝2スクラブカラム低温側混合冷媒LPG-37℃JGC/JOGMEC図19APCI C3 Pre-cooled MR-37℃原料ガス分離コンデンセート③IFP/Axens Dual-MR (図20) フランスIFPグループのAxens社(IFP/Axens)による、軽質と重質の2段のMRプロセス。軽質MRの予冷と、天然ガスの予冷を行う重質MRと、天然ガスの液化およびサブクーリングに使用される軽質MRの2系列のMRシステムを持つ。イラン(ParsのLNGプラント)で初めて採用される予定。主熱交換器に、アルミ製プレートフィン熱交換器を使用する。④Shell Dual-MR APCIのC3 Pre-cooled MRプロセスのC3予冷部分にも、MRを使用したプロセス。APCIのDual MRとほぼ同じフローとなっている。サハリンで初めて使用されたベースロード用のプロセスである。2008.3 Vol.42 No.236?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■原料ガス⑥ Black & Veatch Prichard Single MR (PRICO) (図アフタークーラー混合冷媒コンプレッサーアフタークーラー熱交換器燃料ガス混合冷媒コンプレッサー出所:JGC/JOGMECエキスパンダー図20IFP/Axens Dual-MR LNGタンク⑤TEAL Dual-MR (図21) TEALプロセスは、フランスのテクニプ(Technip)社とエアリキッド(Air Liquid)社が共同で開発したプロセスの総称で、カスケードプロセスからプロパン予冷混合冷媒プロセスまで多種にわたっている。Technip社とAir Liquid社が提携を解消したため、このプロセスは現在、Technip社とイタリアのSnamprogetti社が販売しており、Air Liquid社は独自のプロセスを開発している。1972年に生産が開始されたアルジェリア(Skikda)でTEAL Processが使用されたが、それは1段式のSingle MRプロセスであった。その後、2段圧力式のDual MRプロセスのほか、いくつかの方式が提案されている。実績は、SkikdaのLNGプラント以外はピークシェービングのみ。Technip社とAir Liquid社が設立したTEAL社のプロセスであったが、現在はTEAL社ではなく、Technip社とSnamprogetti社から提供されている。混合冷媒原料ガス予冷サイクル混合冷媒冷凍サイクル出所:JGC/JOGMEC熱交換器熱交換器精留塔重質分燃料ガスLNGタンク図21TEAL Dual-MR37石油・天然ガスレビュー22)シャンシャン 本プロセスはPRICO(Poly Refrigerant Integral-Cycle Operation)とも呼ばれ、米国プリチャード(Prichard)社が開発したものである。ピークシェービング用に用いられることが多いSingle MRプロセスのなかで、次項のLinde Single MR プロセスとともに、ピークシェービングではない中規模能力実績を持つプロセスである。Lindeのプロセス実績が、中国(?善)における約40万トン/年であるのに対し、PRICOプロセスはアルジェリア(スキクダ)で120万トン/年の実績がある。その他はピークシェービングが多いが、多数の実績があり、Single MRプロセスの代表的存在である。プロセスは非常にシンプルで、C1、C2、nC4に窒素を加えたMRを約40kg/cm2まで昇圧し、冷却水あるいは空気で冷却後、主熱交換器にフィードして予冷し、J-Tバルブで3~4kg/cm2に減圧した際の冷熱を利用して天然ガスの液化を行う。冷媒は1系列1段であり、コンプレッサーは1基である。主熱交換器にはアルミ製プレートフィン熱交換器を用いる。低圧混合冷媒原料ガス零点 +10℃高圧混合冷媒スクラバー熱交換器中間冷媒ポンプコンデンサ冷媒コンプレッサー出所:JGC/JOGMEC30℃40㎏/㎝2冷媒ポンプ3.7㎏/㎝2重質分LNGタンク図22Black & Veatch Prichard Single MR(PRICO)⑦Linde Single MR (図23) PRICOプロセスが、昇圧後に気液に分離したMRを同一ストリームで熱交換器にフィードするのに対し、気液を別々に熱交にフィードし、さらにガス相は一部液化した部分を再度分離脱圧して、冷熱を利用するシステム。冷媒は1系列で、天然ガスの予冷、液化、サブクールに対応して3段階のストリーム構成になるが、コンプレッサーは1基。およそ33kg/cm2程度まで昇圧し、コンプレッサーへの戻り圧力は3kg/cm2。Single MRの低プラントコストを維持しながらエネルギー効率を高めることができる、といううたい文句であるが、エネルギー効率ェどれほどのものか情報がない。メイン熱交は、ライセンサーと同じLindeが製作メーカーであるSpiral Wound熱交が適用される。実績としては、?善に約43万トン/年のプラントがある。燃料ガスLNGタンク36℃33㎏/㎝2混合冷媒N2除去5.5㎏/㎝2-148℃熱交換器重質分原料ガス出所:JGC/JOGMEC図23Linde Single-MR⑧Costain Single MR (図24) ピークシェービング用に数基の実績があると言われているが、情報が乏しいプロセスである。LindeのSingle MRプロセスと似ており、コンプレッサーで昇圧後の気液を分離して別々のストリームで主熱交換器へフィードして予冷後、J-Tバルブで減圧して冷熱を利用する。Lindeと違うところは、コンプレッサーの中間段で液が凝縮し、その凝縮液を分離して主熱交換器へフィードする点と、主熱交換器に入った後、中間でもう一度気液を分離するところがない点である。主熱交換器はアルミ製プレートフィン熱交換器を使用する。コンプレッサー混合冷媒熱交換器出所:JGC/JOGMEC図24Costain Single-M原料ガス重質分燃料ガスLNGタンクアナリシス⑨ Gaz de France Integral Incorporated Cascade(CII)(図25) プロセス名はIntegral Incorporated Cascadeであるが、プロセス自体はLindeやCostainのSingle MRと類似しているので、Single MRに分類する。コンプレッサーは低圧、高圧の2段で、LindeやCostainプロセスが気液セパレーションをドラム1段で行うのに対し、中間段にフラクショネーターが設置される特徴がある。中間段で20kg/cm2、高圧コンプレッサー出口で40kg/cm2までMRを昇圧する。フラクショネーターで分離されたガスは主熱交換器で予冷された後、凝縮液を一度分離して気液2ストリームとして再び主熱交換器にフィード脱圧して、冷熱を得る。フラクショネーターで重質分と軽質分の組成を最適とするように設計でき、エネルギー効率を高めることができる。MRはC1、C2、C4、C5で構成され、フラクショネーターで、C1+C2およびC4+C5に分けられる。MRにC3を使用するケースもあるが、その場合、C3は重軽両ストリームに分配される。主熱交換器はアルミ製プレートフィン熱交換器である。中国(上海)でピークシェービングプラントに、現状で唯一の実績がある。3㎏/㎝2HP コンプレッサー40℃熱交換器40㎏/㎝25?10℃-20?-40℃14?20㎏/㎝2清流留塔-110℃熱交換器LP コンプレッサー出所:JGC/JOGMEC-160℃図25Gaz de France Integral Incorporated Cascade (CII)原料ガス精留塔重質分燃料ガスLNGタンク⑩Kryopak Precooling-MR(図26) Kryopak(USA)のMRプロセスで、MRコンプレッサー出口でMRをプロパンで冷却してから、主熱交換器にフィードする。C3-precooled MRプロセスと、フローはほぼ同じになるが、C3でのMRの冷却が1段である点が異なる。主熱交換器はアルミ製プレートフィン熱交換器であり、その点でも異なる。実績は10万トン/年以下の小規模設備のみで、中規模を対象とはしていない。最近ではEnergy Development 社による西豪州Karratha LNG Fuel Storage Facility の発電(8.83MW)向け約2008.3 Vol.42 No.238?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■7万4,000トン/年のプラントが、2007年にスタートしている。MRコンプレッサー混合冷媒C3C3コンプレッサー出所:JGC/JOGMEC原料ガスC1LPG燃料ガスLNGタンクDe-methanizer熱交換器図26Kryopak Precooling-MR分離した後、冷却減圧されて液体アンモニア冷媒となる。蒸留の熱源にMRコンプレッサーのガスタービンの廃熱を利用することが特徴で、これによりエネルギー効率を高めることが“売り”である。 実績はなく、アンモニア冷媒系の情報もないので評価は難しい。しかし、アンモニア冷媒システムが吸収塔、蒸留塔や、それを構成する加熱・蒸発部(リボイラー)や冷却・凝集部(コンデンサー)を必要とするなど、機器数が多くなることから、プラントコストおよびエリアの面で中規模、特にFPSOには不利になる可能性がある。 なお、本プロセスとは直接の関係はないが、年産7万トンのLNGプラント(Australia、Maitland)で、前項で述べたKryopak Pre-cooling MRプロセスを使用し、MRコンプレッサーのアフタークーラーにアンモニア冷媒を使用した例が報告されている。⑪LNG Limited AA-MR(図27) アンモニア吸収による冷媒システムをMR予熱に利用することが特徴のプロセス。C3 Pre-cooled MRプロセスのC3 Pre-cooledの部分がアンモニア冷媒システムに変わる以外は、C3 Pre-cooled MRプロセスとほぼ同じフローになる。アンモニア冷媒プロセスの具体的なシステムは公表されておらず、不明である。また、APCIとLindeしかサプライヤーがない主熱交換器には、Spiral Wound熱交換器は使用できないと思われ、APCIのC3 Pre-cooled MRプロセスとはその点でも異なる。 アンモニア冷媒システム自体は古くから存在し、利用されている。純アンモニアの大気圧における沸点は-33℃程度なので、これよりも少し高い温度の冷媒系になる。冷媒として利用されて、蒸発して戻ってくる気体アンモニアは水に吸収させて回収し、蒸留塔で再び水と(2)古くて新しいカスケード(Cascade)プロセス①Phillips Optimized Cascade (図28) 1969年にアラスカのKenaiに設置されて以来、30年以上使用されることがなかったが、近年、トリニダードのLNGプラントに適用されて復活したプロセス。カスケードプロセスは、1960年代にはMRプロセスよりも信頼性、運転性、エネルギー効率に優れ、大型(当時として)LNGプラントには、KenaiのPhillipsプロセスだけでなく、1964年稼働のアルジェリアのArzewにTechnipのCascadeプロセスが使用されている。ちなみに、アラスカのLNGプラントはPhillips Petroleum社とMarathon Oil社の合弁事業であるので、それもPhillipsプロセスが採用された理由と考えられる。 メタン、エチレン、プロパンの3系列の冷媒システムを持っているので、MRプロセスに比較して機器数が多燃料ガスLNGタンクN2除去NH3蒸留塔NH3吸収器NH3スクラブカラム原料ガスLPG分離熱交換器コンデンセートMR コンプレッサー混合冷媒NH3出所:JGC/JOGMECNH3プレクールC3 サージドラム原料ガスアフタークーラーC3コンプレッサーアフタークーラーC2=コンプレッサーアフタークーラー燃料ガスC1コンプレッサー出所:JGC/JOGMEC熱交換器C2= サージドラム重質分分離熱交換器LNG タンクタンク、タンカーのBOG図27LNG Limited AA-MR図28Phillips Optimized Cascade39石油・天然ガスレビューュ、必要なエリアも大きくなる。また、エチレンは天然ガスからは製造できないので購入する必要がある、というデメリットを持つ。これらのデメリットのため、改良が進んでエネルギー効率が向上したMRプロセスが使用されるようになると、使用されることはなくなった。主熱交換器はアルミ製プレートフィン熱交換器が採用される。 基本的にはベースロードプラント用であり、上記のようなデメリットは、小中規模LNGプラントではさらに大きなデメリットになるので、小中規模プラントには向いていない可能性が高い。②Linde Mixed Fluid Cascade (図29) カスケードプロセスの定義を、純成分を使用するプロセスとすると、本プロセスはカスケードではなくMRプロセスに分離されるが、その名称およびカスケードプロセスの各冷媒をMRとしたシステムであることから、カスケードプロセスに分類した。3系列の冷媒システムを持ち、それぞれ予冷、液化、サブクールの役目を担う。ノルウエー(Snohvit)で初めての実プラントが2007年末に稼働を開始した。Phillipsのカスケードプロセスと冷媒の組成が異なる以外にも、J-Tバルブの構成などが異なる。また、予冷はアルミ製プレートフィン熱交換器が使用されるが、Spiral Wound熱交換器の製造メーカーであるLindeプロセスなので、Spiral Wound熱交換器が使用される点でもPhillipsプロセスとは異なる。ベースロード用プラントであり、Phillipsプロセス同様3系列の冷媒システムを持つ点で機器数が多く、広いエリアを必要とし、小中規模プラントには向かない。アナリシス(3) Expanderプロセス ~ピークシェービング用途の始まり~①Linde/BHP Dual N2 Expander (cLNG) (図30) ピークシェービング用の液化プロセスとして、窒素エキスパンダープロセスがあるが、それは1台のエキスパンダーコンプレッサーと1台の窒素コンプレッサーで減圧昇圧を行うタイプである。Linde/BHPのcLNGプロセスは、そのコンベンショナルな窒素エキスパンダープロセスのなかで、J-Tバルブで窒素を減圧している部分にエキスパンダーコンプレッサーを追加して、2台にしただけの違いのプロセスである。 窒素は窒素コンプレッサーで50kg/cm2程度まで昇圧され、さらにエキスパンダーコンプレッサーで約84kg/cm2まで昇圧後、主熱交換器にフィードされる。予冷後、2段階で抜き出されてエキスパンダーにフィードされ、-100℃と-150℃の2段の冷媒として主熱交換器に再フィードされる。戻り圧力は18kg/cm2である。この間、窒素は常にガス相でハンドリングされ、液化はしない。 主熱交換器は、Spiral Wound熱交換器かアルミ製プレートフィン熱交換器かどちらでも使用できるが、窒素が80kg/cm2を超える高圧となるので、中規模のプラントとなればSpiral Wound熱交換器を適用する可能性が高い。 このシステムは冷媒が窒素だけであり、MRプロセスでは必要となる原料ガスからの冷媒成分の蒸留分離、製造(あるいは購入)が不要で、それらの貯蔵用タンク類も必要としない。したがって機器数が少なく、コンパクトな設備が期待できる。また、MRのような液化ハイドロカーボンを大量に保持することがないので、安全性が高い。ただし、MRプロセスに比較して冷媒の圧力を210?12㎏/㎝26?10㎏/㎝22?6㎏/㎝2原料ガス熱交換器50bara18baraプレクールサイクル15?25㎏/㎝21.5?6㎏/㎝2-35?-55℃熱交換器燃料ガスN2コンプレッサー液化サイクル-80?-100℃熱交換器精留塔原料ガス熱交換器10℃18bara-15℃30?60㎏/㎝22?6㎏/㎝2サブクールサイクル出所:JGC/JOGMEC熱交換器Hotエキスパンダー/ブースター-93℃-90℃LNGタンク-90℃熱交換器Coldエキスパンダー/ブースター-150℃精留塔重質分燃料ガスLNGタンク図29Linde Mixed Fluid Cascade出所:JGC/JOGMEC図30Linde Dual N2 Expander (cLNG)2008.3 Vol.42 No.240?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■倍くらい高くする必要があり、MRプロセスに比較して熱交換器や配管自体のコストは高くなる可能性がある。 いまのところ、本システム自体の実績はないが、窒素エキスパンダーシステムがピークシェービングで十分な実績があり、液化プロセスとしての信頼性は高いと考えられる。ただし、中規模LNGプラントの能力に見合うエキスパンダーが供給できるかどうかを見極める必要がある。Lindeは、150万トン/年の最大液化能力に対応すると報告しているが、現状においては現存する最大のエキスパンダーを利用して、1トレーンあたり50万トン/年が、LNGの最大生産量となっている。②ABB Dual Expander (Closed Loop Type)(図31) ABBのDual Expanderプロセスは、混合冷媒がクローズドループになっているタイプと、混合冷媒としてフィードガス(天然ガス)を利用するタイプがある。基本的にはほぼ同じシステムであり、クローズドループ中にフィードガスが入って、また出ていくようなフローになっているのがオープンタイプである。 クローズドタイプは、メタンと窒素の2系列の冷媒システムを持ち、それぞれがエキスパンダーコンプレッサーとブースターコンプレッサーで構成される。 一方の系列の冷媒は窒素で、ブースターコンプレッサーで昇圧後、主熱交換器で予冷してエキスパンダーにフィードされて約14kg/cm2まで減圧され、窒素冷媒となる。他方の系列の冷媒はメタンリッチなエタン、プロパンを含む混合冷媒である。ブースターコンプレッサーにより昇圧予冷後、エキスパンダーにフィードされてMRとなる。系内でハイドロカーボンは気体でハンドリングされる。 実績はないが、エキスパンダープロセス自体は前項で説明したように信頼性は高い。冷媒としてMRが必要なので、前項のcLNGプロセスと異なり、メタン、エタン、プロパンの製造あるいは購入、貯蔵が必要となる。現状では、エキスパンダーの最大供給液化能力の制限から、cLNGプロセス同様に1トレーンあたり最大のLNG生産量は50万トン/年程度と推定される。③Hamworthy Single N2 Expander(図32) Hamworthy(ノルウェー)による非常にシンプルなエキスパンダープロセスであり、LNGタンカーのBOGの再液化や、ピークシェービングに使用されている。1系統の窒素冷媒システムで、窒素を昇圧予冷しエキスパンダーで減圧して、-162℃の窒素冷媒を得る。LNG船のBOGの再液化プロセスの場合、窒素は57kg/cm2程度まで昇圧、-110℃まで予冷、返送圧力は13.6kg/cm2と報告されている。エネルギー効率は、他のプロセスに比較して非常に悪く、kW-day/ton LNGの比較では、他のエキスパンダープロセスの2倍程度であると報告されている。ピークシェービングやBOG再液化での使用となり、中規模のプロセスで使用するのは現実的ではないと考えられる。13.5㎏/㎝257㎏/㎝2熱交換器-110℃N2エキスパンダー熱交換器N2冷媒-163℃ 14.5㎏/㎝2N2 コンプレッサーN2 ブースターコンプレッサー出所:JGC/JOGMEC原料ガス精留塔重質分燃料ガスLNGタンクC1コンプレッサーC1 ブースターコンプレッサーC1エキスパンダーN2コンプレッサー熱交換器N2 ブースターコンプレッサーN2エキスパンダー出所:JGC/JOGMEC原料ガス精留塔重質分燃料ガスLNGタンク図31ABB Dual Expander(Closed Loop Type)図32Hamworthy Single N2 Expander (Open Loop Type)④ABB Dual Expander(Open Loop System)(図33) 前出のとおり、クローズドループタイプのABB Dual Expander プロセスとほぼ同じであるが、フィードガスをMRとして使用するOpen Typeなので、MRのメークアップ用にC1、C2、C3を製造、貯蔵する必要がない、フィード組成の変化に対する追随が自然にできるのでオペレーションが楽になる、等の利点がある。フィードガス組成にもよるが、FPSOや中規模プロセスにはクローズドループタイプよりも向いているものと考えられる。41石油・天然ガスレビューAナリシスい配ばスは根本的に異なる。熱音響現象の一つに、管の中に蓄熱器と呼ばれる薄板や細管を束ねたスタックを設置し、その両端に温度差を与えると音波が発生するという現象がある。逆に、管の一端に音波を与えると、熱交換器に挟まれた蓄熱器の両端に温度差が発生する。 本プロセスは、この現象を利用したもので、管の両端に音波を発生させる熱音響エンジンと、その音波を受けて蓄熱器に温度差を生じる熱音響冷凍機が設置されている。熱音響エンジンとは、音波が伝播する管の中に、蓄熱器を挟んで熱交換器を設置したもので、両端の熱交換器に温度差がつくと熱音響振動が発生する。熱音響冷凍機も同様に、蓄熱器を挟んで熱交換器を設置したものだが、音波を受けて蓄熱器の両端に温度差が発生する。こう 熱音響エンジンを加熱し、温度勾がついてくると、ある一定以上の温度差で装置内部の流体は自励振動(音波)を発生する。発生した音波は、両端の熱音響エンジンと熱音響冷凍機をつなぐ共鳴管を通して、熱音響冷凍機の蓄熱器両端に温度勾配を生じさせ、ヒートポンプの機能が作用する。 この現象による冷凍機の機能を、LNGの液化に利用したものであり、熱音響エンジンの加熱に天然ガスの燃焼を用いる。可動部分がないので、安価でメンテナンスが容易なシステムができる可能性がある。 近年、いろいろな使用方法の研究がなされており、米国ロスアラモス国立研究所において、LNGの液化プロセスとしての研究が進められている。技術的には興味深いが、現段階で100万トン/年規模の液化プラントに適用できるものではない。 表14に、液化プロセスのライセンスと概要をまとめた。1熱音響エンジン熱を与えて蓄熱器の両端に温度差をつける熱音響冷凍機蓄熱器両端に4温度差が生じ冷熱が発生2音響振動発生蓄熱器蓄熱器共鳴管蓄熱器蓄熱器冷却水3音響振動共鳴&伝播冷却水冷却熱交換器高温熱交換器出所:JGC/JOGMEC低温熱交換器冷却熱交換器図35Thermo acoustic Refrigeration2008.3 Vol.42 No.242C1コンプレッサーC1 ブースターコンプレッサー熱交換器原料ガス精留塔重質分N2コンプレッサーN2エキスパンダーブースターN2コンプレッサーC1エキスパンダー燃料ガスLNGタンク出所:JGC/JOGMEC図33ABB Dual Expander(Open Loop System)⑤ Kryopak Open Loop Expander Refrigeration(図34) Kryopak(USA)による、主にピークシェービング用のエキスパンダープロセス。冷媒には、LNG製造の最終過程で発生するエンドフラッシュガスを用いる点が特徴的である。冷媒系は1系列で、リサイクルコンプレッサーとエキスパンダーコンプレッサーで構成される。シンプルであるが、現状では中規模のLNGプラントに適用するのは現実的ではないと考えられる。燃料ガスコンプレッサーコンプレッサーエキスパンダーエキスパンダーリサイクルコンプレッサー出所:JGC/JOGMEC原料ガスC1LPGLNGタンクDeMethanizer熱交換器図34Kryopak Open LoopExpander Refrigeration(4) その他の特殊プロセス ~音波でLNGを製造する~①Thermo acoustic Refrigeration(図35) 他のプロセスが、基本的には昇圧した冷媒の減圧による温度低下によって冷熱を得ているのに対し、本プロセ?K模LNGは実現可能なのか? □□□□■□□□□■□□□□■表14主なベースロード用中小規模(10万トン/年~100万トン/年)液化設備の実績と計画タイプライセンサープロセス名冷媒系統最大能力(実績、計画)効率kW day/ton冷媒組成主熱交換器タイプ実績の有無(建設中含む)クローズドループシステムAPCIAPCIIFP/AxensShellTEALBlack & VeatchC3 Pre-cooled MR Dual MRDual MRDual MR (DMR)Dual MR (TEALARC)Single MR(PRICO)LindeSingle MRCostainSingle MRGaz de France/IFPKryopakIntegral Incorporated Cascade(CII)PreCooling MR(PCMR)2系統(C3、MR)2系統(MR x 2)2系統(MR x 2)2系統(MR x 2)2系統(MR x 2)1系統(MR)1系統多段圧力(MR)1系統多段圧力(MR)1系統多段圧力(MR)6 MMtpy12.2(2)メタン、エタン、プロパン、窒素メタン、エタン、プロパン、窒素プロパン、ブタン12.5(6)データなし 窒素、メタン、エタン、12.5(6) 窒素、メタン、エタン、データなし 窒素、メタン、エタン、窒素、メタン、エタン、プロパン、 ブタン、16.8(1)プロパンプロパン5 MMtpy6 MMtpy5 MMtpy5 MMtpy1.2 MMtpyペンタン窒素、メタン、ペンタン0.4 MMtpyデータなしエチレン、プロパン、Peak shaving-1.4 Mmtpyデータなし窒素、メタン、エタン、プロパン、 ブタン、ペンタンSWHE有(Many)SWHE無PFHE有(Iran)SWHE有(Sakhalin)SWHE有(Algeria)PFHE有(Algeria)SWHE有(China)PFHE有 (total six)1 - 2 Mmtpy13.4(7) 窒素、メタン、エタン、ブタン、ペンタンPFHE有 (China) for peak shaving混合冷媒カスケードエキスパンダー2系統(C3 or NH3, MR)0.07 MMtpy13.3(1)LNGlimitedAmmonia Absorption MR2系統(NH3, MR)1 MMtpy8 - 10(4)PhillipsStatoil/LindeLindeABBHamworthyOptimized CascadeMixed Fluid CascadeDual N2 Expander(cLNG)Dual Expander Single N2 Expander3系統(C2, C2=, C3)3系統(MR x 3)1系統2段(N2-)Dual Exp.2系統1系統(C1, N2)Dual Exp.(N2) Single Exp.3.3 MMtpy4 MMtpyメタン、エチレン、14.1(6)12.5(6) 窒素、メタン、エタン、プロパンプロパン、ブタン1.5 MMtpy16.6(3)窒素0.5 MMtpy(?) 16.5(5) 窒素、メタン、エタン(?)、プロパン(?)0.02 MMtpy33.3(1)窒素PFHE & SWHESWHEPFHEPFHE窒素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン窒素、メタン、エタン、プロパン、アンモニアPFHE有(USA)データなし無PFHE, CIK 有(Trinidad)有(Norway)無無有無Dual Expander(Niche)2系統(Feed gas, N2)Dual Exp.0.5 MMtpy16.5(1) (Feed gas)、窒素PFHEExpander Refrigeration(EXP)1系統(End flash gas)Single Exp.0.05 MMtpy15.5(1)20.4(2)(Final product flash gas)PFHE有(China)オープンループシステムABBKryopakエキスパンダー特殊タイプ熱音響PraxairThermo acoustic-研究段階--N/A無出所:各種資料を基に筆者作成(推定含む)43石油・天然ガスレビューAナリシス【参考文献】1)2)3)C.Dagazo, E.Carvalho, J.Simoes-Moreira, Small-scale LNG Plant Technologies, Hydrocarbon World 2007M.Barclay, N.Denton, Selecting o? shore LNG processes, LNG Journal Oct. 2005C.Remeljej, A Hoadley, An exergy analysis of small-scale lique? ed natural gas liquefaction process, Energy 31 2006LNGlimited web pageJ.Foglietta, Production of LNG using Dual Independent Expander Refrigeration Cycles, AIchE Spring Meeting 2002Chen-Hwa Chiu, Commercial and Technical Considerations in the Developments of O? shore Liquefaction Plant, 23rd World Gas Conference 2006E.Flesch, J. Raillard, CII Liquefaction Process : 2 Cascade into 1, LNG 12 19984)5)6)7)執筆者紹介鈴木 信市(すずき しんいち)(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油開発技術本部 R&D推進部 天然ガスチーム 調査役 兼 石油開発支援本部 調査部 調査課 上席研究員 天然ガス・中流。千葉県習志野市生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科応用化学専攻修了。工学博士。石油公団(現〈独〉石油天然ガス・金属鉱物資源機構)入団後、主として天然ガス関連分野を中心に配属。専門は、化学転換を利用したGTL、DME等の天然ガス開発技術(中流)、天然ガス関連利用技術。2007年8月、妻と友人の3人で、チベットのラサ、シガッツェ、ギャンツェと巡りました。最高4,794mのカンパラ峠まで行きましたが、高山病の予防薬を飲んでいたおかげか、現地ではたいしたことはありませんでした。しかし、どうやらどこかに影響は受けたようで、日本に帰ってから、ずっと耳に静かな音が聞こえます。三神 直人(みかみ なおと)(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油開発支援本部 調査部 調査課 上席研究員 天然ガス・LNG技術神奈川県生まれ。秋田大学鉱山学部大学院修了。東京ガス株式会社入社後、主にLNG受入基地の操業技術、生産技術、LNG応用技術に関する企画、研究開発や、超臨界水バイオマス・ガス化研究開発等に従事。2006年4月より現職。2008.3 Vol.42 No.244 |
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