ページ番号1006326 更新日 平成30年3月5日

最近のGTLプロジェクト動向とその分析

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レポートID 1006326
作成日 2008-05-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 鈴木 信市
年度 2008
Vol 42
No 3
ページ数
抽出データ 最近のGTLプロジェクト動向とその分析・世界におけるGTLプロジェクトに関する関心や推進の機運は、2007年初めごろに急激に低下し、現在もその傾向が続いている。・一方、現在推進中の第2世代のGTLプロジェクトであるSasolのカタールOryx1、ShellのカタールPearl、ChevronのナイジェリアEscravosの三つのプロジェクトについては、地道にプロジェクトが進められている。・さらに、かつて盛んに研究開発や商業化がなされ、その後種々の理由により追求が断念されていたいわゆる狭義の意味でGTLではない天然ガス液体燃料化技術(いわば忘れられていた技術)に、最近、復活の動きが出てきた。・本稿は、これら推進中のプロジェクトの最近の進捗状況を簡単に俯瞰し、GTLプロジェクト推進に対する熱意の低下の要因を分析した。さらに、忘れられていた技術の復活の動向をまとめ・分析した。最後に、今後の展望をまとめた。ふかん1. はじめに 世界におけるGTLプロジェクトに関する関心や推進の機運は、2007年初めごろに急激に低下し、現在もその傾向が続いている。筆者は、カタールで開催されるGTLに関する世界会議であるGTL Tech会議の定点観測をしているが、2008年2月に開催された第7回の同会議におけるQP(Qatar Petroleum)を除く登録参加者は124人であり、2007年1月に開催された第6回会議の同215人に対して、91人も減少している。また、同会議における発表も、同じ会社や同一のプロジェクトを実施している複数会社による内容が一部重複したものが多いうえ、昨年まであったユーザー側からの発表もなかった。さらに、同会議のなかで、プロジェクトを推進している会社から、新しいプロジェクトを実施するというアナウンスもなかった。 ここ1年ほど、業界紙においても、石炭資源を液体燃料に変えるCTL(Coal To Liquids)プロジェクトに関する動きは活発であるが、GTLに関する新規プロジェクト推進の動きはほとんど報道されていない。一方、現在推進中の第2世代のGTLプロジェクト(特殊な条件で成立した南アフリカ等のプロジェクトに対して、商業利益を目的としたプロジェクトを第2世代のプロジェクトという)である、SasolのカタールOryx 1、ShellのカタールPearl、ChevronのナイジェリアEscravosの三つのプロジェクトについては、地道にプロジェクトが進められている。また、筆者が石油・天然ガスレビュー2007年9月「GTLの新潮流-GTLプロジェクトへの逆風とその緩和の努力-」(以下、「GTLの新潮流」記事と略す)で紹介したWorld GTLのトリニダード・トバゴのGTLプロジェクトも、スケジュールが当初のアナウンスより遅延しているものの、進んではいるようである。さらに、かつて盛んに研究開発や商業化されていたが、その後種々の理由により追求が断念されていたいわゆる狭義の意味でGTLではない天然ガス液体燃料化技術(いわば忘れられていた技術)に最近、復活の動きが出てきた。 本稿では、このOryx 1、Pearl、Escravos 、World GTLの四つのプロジェクトの最近の進捗状況を簡単に俯瞰し、GTLプロジェクト推進に対する熱意の低下の要因を分析する。さらに、忘れられていた技術の復活の動きをまとめ・分析する。最後に、今後の展望をまとめる。本稿に記した、プロジェクト動向、GTLの現状分析や今後の展望には、「GTLの新潮流」記事に書いたものの一部を省略したり、同一のメッセージを簡略化して表現したりしているものがある。したがって、同記事と併せて読んでいただければ幸いである。2. 最近のGTLプロジェクトの動き(1)カタールの動き 第2世代のGTLプロジェクトは、周知のように、原料の天然ガス価が安価で、政情が安定しており、インフラも整備されていて、政府の同プロジェクトへのサポートが得られるカタールを中心に進められている。 カタール政府は、天然ガス資源管理の観点から、2005年4月、North Fieldを用いるGTLプロジェクトを含むいくつかのガス利用プロジェクトのモラトリアム77石油・天然ガスレビュー\1カタールGTLプロジェクトの現状状況生産中MOUMOU建設中計画生産量(千b/d)生産開始時期備考34668.52007年1月(生産開始)20千b/d@2008年1月不明不明GTLのみのプロジェクト140(2フェーズ 各70)第1フェーズ:2010第2フェーズ:2011上流・GTLプロジェクトモラトリアム対象プロジェクト中止中止130154160(2フェーズ 各80)中止(推定)120不明上流・GTLプロジェクト―――上流・GTLプロジェクト上流・GTLプロジェクト上流・GTLプロジェクトプレーヤープロジェクト名Oryx 1Sasol(SasolChevron)Oryx 2ベースオイルPearlOryx 3Palm――ShellSasolChevronExxonMobilConocoPhillipsMarathon出所:JOGMECを発表した。その理由は、North Fieldの埋蔵量にあり、「250億CFDを100年間生産することは可能か?」という観点から、リザーバースタディーを実施するということであった。その後、実施が認められていたプロジェクトのなかで、2007年2月におけるExxonMobilのPalm GTLプロジェクトの中止、モラトリアムされていたプロジェクトのうち2007年3月ごろのConocoPhillipsのプロジェクト中止もあり、現在、テーブルに載っているプロジェクトは、表1のようになっている、と考えられる。第7回GTL Tech会議において、カタール政府の方から、従来のメッセージである「われわれは、急いでいない。モラトリアムは少なくとも2011~2012年まで続くだろう」との発言が再び伝えられた。これは、ガスプロジェクトのなかでもGTLに関しては、少なくともShellのPearl GTLプロジェクトの第2フェーズ7万b/dの生産が開始される2011年まで、新規のGTLプロジェクトに対する天然ガスのアロケーションをしない、というカタールの意思を示したものである。(2)SasolのカタールOryx 1 既報のとおり、本プロジェクトは、2007年1月に生産が開始され、同年4月に製品が初出荷されたが、同年5月にSasolから、「FT(Fischer Tropsch)工程における想定以上のfine material生成により、生産量が生産能力の25%程度の7,000~1万b/dに制限されている。その対応としての追加装置が設置される2008年中旬までフルキャパシティー生産はできない」旨の内容の発表がされた。 その後の報道によれば、Sasolは、2007年後半にプラントをシャットダウンし、FT触媒を入れ替えた後、徐々に生産量を増大させた。その結果、fine material生成量も減少し、2007年12月には、FT反応機2基とも継続的な運転が可能になった。しかし、2008年1月時点での生産量は、フルキャパシティーである3万4,000b/dの6割程度の2万b/dである。Sasolによると、2007年4月から2008年1月までの10カ月の間に、合計10カーゴ、200万bblの製品が出荷されたというが、製品の種類や販売先は明かされていない。Sasolは、2008年中に3万4,000b/dというフルキャパシティー生産をもくろんでいるが、これは困難であろう、との見方が強い。(3)ShellのカタールPearl 2010年における第1フェーズ7万b/dの生産開始に向け、順調に建設が進められている。 プロジェクトにかかる総費用に関しては、カタール側の関係者の発言として、220億~240億ドル、あるいはDow Jonesの推定として180億ドルを突破するとの報道がなされたが、Shellは、2006年7月に最終投資判断を行った時に公表したプロジェクト総費用の120億~180億ドルという数字に変化はない、との立場を堅持している。 Shellは、自動車会社との共同研究等を通して、灯・軽油を中心としたGTL製品の販売促進活動を繰り広げている。最近におけるこの分野の動きとしては、2008年2月に、Airbusが、Rolls Royceのエンジンを搭載したAirbus A380により、Shell のGTLジェット燃料を用いて、英Filtonと仏Toulouse間で飛行実験を行ったことである。すなわち、Airbus A380のエンジン4基のうち1基に、通常のジェット燃料60%/FT灯油40%の混合燃料を用い、実験飛行を実施したという。このようなShellの地道な活動により、ローカルな環境に対するクリーン燃料であると考えられているGTL灯・軽油に関して、最終販売先の確保や販売価格のプレミアムを得ることができるのか、注目すべきことである。2008.5 Vol.42 No.378i4) Chevronのナイジェリア ジュールが発表された。Escravos 2005年4月に、KBRを中心としたコントラクターとEPC契約を締結し、建設作業を開始したChevronのナイジェリアEscravosプロジェクトは、現在、生産にかかわるモジュールの製作がアラブ首長国連邦(UAE)で行われている。 EPC契約時には、2009年の生産開始で進められたが、現在はそれより1年遅延し、2010年に生産開始すると予想されている。 EPC契約は、当初はLump-sum契約であったが、コストの急激な増大やスケジュール遅延を背景に、この契約形態では実態に合わなくなったためか、現在はCost Reimburseベースに変更されている。Oryx 1のコピープラントにもかかわらず、CAPEXは、約10億ドルのOryx 1に対して、2005年4月時点で17億ドルとされていた。現在は、Oryx 1プロジェクトの2~3倍程度、すなわち、20億~30億ドルかかる、と推定されている。(5) トリニダード・トバゴのWorld GTLのGTLプロジェクト 「GTLの新潮流」記事で紹介したトリニダード・トバゴのWorld GTLの最近の進捗が、GTL Tech会議で紹介された。World GTLのプロジェクトは、中古プラントを改造・モジュール化するコンセプトにより、コストの削減とスケジュールの短縮を図るものである。トリニダード・トバゴのプロジェクトは、同国国営石油会社のPetrotrinの製油所に2,600b/dのGTLプラントを建設するものであり、Petrotrin とWorld GTL社とのプロジェクトとして実施されている。 2007年9月時点の情報では、2007年10月にメカニカル・コンプリーション、2008年より生産開始との報道がなされていたが、GTL Tech会議では、メカニカル・コンプリーションは2008年第2四半期、生産開始は同年第4四半期とのスケ3. GTLを取り巻く状況 最近のGTLを取り巻く状況として、次のようにまとめられる。すなわち、①商業プロジェクトを追求する意欲が低下していること、②プロセス開発規模に関して大規模なものと小規模なものの2極化が顕著になってきていること、③プロジェクトのメーンプレーヤー自らが公式の場でGTLプロセスの問題点(エネルギー効率の低さとCO2排出量の多さ)を素直に認め・改善や対策等に向けた技術開発をしている旨の発言をするようになったこと、等である。それぞれについて、以下に述べる。(1) 商業プロジェクトを進める意欲の低下 現在のGTLは、不特定多数の上流会社や産ガス国の興味を引きつけるものではなくなっている。その理由は、4章で改めて分析する。ただし、言うまでもなく、特定の会社は、その関心を失っていない。そうした海外の代表的な会社としては、SasolChevron、Shell、 StatoilHydro等が挙げられる。ただ、残念ながら、これらの会社においても、最近は、具体的な新規プロジェクトを追求する状況にはなっていない。(2)追求規模の2極化 GTLという概念がガス田開発手段として提唱された当時は、GTLは中小ガス田開発手段として有効である、との見解が示されていた。ところが、実際に推進されるGTLプロジェクトの生産規模は3万b/d以上であり、実際にGTLが適用されるガス田もできる限り大規模なもの(開発コストが安価)か、随伴ガス(販売価格が安価)等であった。このような流れのなかで、最近、「GTLの新潮流」記事で紹介したように、SyntroleumやRentechに続く新しいベンチャー企業により、より小規模なGTLを実現しようという新しい動きが出てきた。すなわち、最近のGTLプロセス開発の特徴として、3万b/d以上の大規模GTLを追求する会社と1,000~3,000b/d程度の小規模GTLの実現を目指す会社の、大きな二つの流れに2極分化されてきている。 スケールメリットを追求できる3万b/d以上の大規模GTLの実現を目指すSasolChevron、Shell、StatoilHydro等の会社は、さらなる大規模化や効率化を目指したR&Dや、自らのプロセスに適合する商業プロジェクトの予備的検討等を行っている。一方、1,000~3,000b/dクラスの小規模GTLを追求する会社は、石油・天然ガスレビューで紹介したWorld GTLやVelocysなどの会社である。これらの会社が小規模GTLを対象とするのは、小規模であることによって必要とする資金規模やリスクの相対的な小ささ、プロジェクト立ち上げのスピードの速さを背景に、スケールメリットのない特殊技術を用いて随伴ガスをガス源としたものであること(Velocysの場合)や小さい中古プラントをモジュール化して用いるものであること(World GTLの場合)に、その狙いがある。(3) エネルギー効率向上の意欲の高まり GTLのエネルギー効率は6割程度である。従来、GTLのエネルギー効率が高くないことを認識し・これを高める必要があることを特に強調していたのは、この技術の実用化研究や商業プロジェクトの追求に対して後れをとっていたBPであった。この分野のメーンプレーヤーであるSasolChevronやShellがこの問題に触れることはなかった。ところが、最近、本技術に関して一番手につけているSasolChevronからも、GTLの今後の発展のためにはGTLプロセスのエネルギー効率の向上が必要であるとし・その改善の努力について言及するようになってきた。79石油・天然ガスレビューオたものであるため、下流のニーズが強くなくとも、価格次第でその販売は可能と考えられる。したがって、少なくともGTL発展段階初期におけるプロジェクトの推進は、主として上流に依存していることになる。 GTLが、現時点で商業プロジェクト追求に意欲の低下が感じられる(あるいは、表面上そう見える)のは、上流プロジェクトとして、経済性、技術リスク、マーケット、資源・環境に、以下のような問題が生じているため、と考えられる。(1)経済性 2003年以降のCAPEX急上昇、油価見通しの不確定性に起因するプロジェクト実施決定の際の前提油価の低さが、GTLプロジェクトの経済性を確保することを困難にしている。(2)技術リスクの認識 SasolのOryx 1のトラブルが、産ガス国や産ガス国のNOC(国営石油会社)に、GTL技術の技術リスクの大きさを再認識させた。これが、投資金額、経済性と技術リスクのバランスを再考させ、結果的に、産ガス国のGTLへの関心を弱めた。(3)ガスマーケット 産ガス国において、天然ガスは環境性に優れ・高効率な発電を達成できることから、国内需要が増大している。また、大規模ガス田に関しては、世界的将来的なLNG需要の増大の見通しから、LNGを第一優先として考えることがベースとなっている。GTLにまわすことのできるガスが少ない。(4)資源・環境 エネルギー調達を業務とするセクターでも、資源の有効利用や地球環境問題への対応が重要な問題と認識されつつある。GTLの製造段階におけるエネルギー効率の低さとCO2排出量の多さが、改めて解決すべき問題としてクローズアップされてきた。5. 忘れられていた技術の復活(1)新しい動き GTLの世界に、過去に追求された技術を改良したり・商業化しようとする、新しい動きも見られる。すなわち、20年近く前に世界で盛んに研究され・その後研究も下火になった直接法プロセスと、20年以上前に商業化され・採算ベースに乗ることなくプラントが閉鎖されたGTG(Gas To Gasoline)プロセスである。これらは、FT反応を用いて天然ガスを灯・軽油等に転換する、いわゆる狭義のGTL技術ではない。広義のGTL技術体系を図1に示す。これらの、ある意味で忘れられた技術に復活の兆しが見られるのである。直接法OCMハロゲン化等メタノールエチレン重合ハロゲン化メタンガソリン直接法プロセスFT合成メタノール合成DME合成FT粗油メタノール脱水DME水素化分解MTG合成(重合)灯・軽油等GTLプロセス(狭義)ガソリンGTGプロセス天然ガス合成ガスCO,H2の混合ガス間接法出所:JOGMEC図1広義GTLの技術体系2008.5 Vol.42 No.380(4) 地球環境問題への意識の高まりとGTLへの影響 GTLは、製造工程で地球温暖化ガスであるCO2を多く排出する。Shell、SasolChevron、ConocoPhillips等の企業は、「GTLは地球温暖化ガス排出の観点から、クリーンではない」という批判に対して、(<天然ガス-GTL軽油-ディーゼル車>と<石油-軽油-ディーゼル車>のCO2排出量の比較ではなく)「システムとして考えたとき、天然ガスを出発原料とするGTL+天然ガス発電という天然ガスシステムは、石油を出発原料とする石油精製+重油発電という石油システムに比べて、CO2排出量は多くはない」という趣旨の論理を構築し、GTLへのCO2排出に対する批判をかわそうとしてきた。しかし、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年にまとめた第4次報告書に代表される、最近の地球温暖化ガス削減への関心の増大は、これらの会社の従来の対応をも変えさせようとしている。すなわち、最近では、大規模GTLを追求するSasolChevronやStatoilHydroは、将来にGTLプロセスに捉隔離・貯蔵技術(CCS)の炭酸ガス捕適用を考えている旨の発言をするようになってきた。ほそく4. 商業プロジェクト追求の意欲の低下の背景GTLプロジェクト推進の契機要因として、ガス田を開発することによりメリットを追求する上流と、GTL製品を使うことによるメリットを見出す下流に、分けて考える必要がある。下流の要因、すなわちユーザーのGTL製品に対するニーズは、現時点では、上流側が期待していたとおりの強さを示していない。こうした状況下、マーケティング力に優れるShellは、先に述べたように、ユーザーやメーカーと種々の共同研究や共同事業を行うことにより、航空機燃料や自動車燃料としてGTL製品が優れたものであることをユーザーに認識させるための努力をしている。ただし、GTLの場合には、その製品は石油製品に類似  フ一つである臭素によりまず臭化メタン(CH3Br)に転換し、その後、臭化メタンをZSM-5系触媒を用いてガソリン成分に転換するものである。Marathonは、この技術をGas To Fuelsと名づけ、2年間ほど、ラボおよびパイロット研究を行い、2008年中旬には10b/d規模のデモンストレーションプラントを稼働させる計画をしている、という。 Marathonは、Synthroleumの技術供与により、FT法を用いたGTLプロセスを追求してきた。具体的なプロジェクトとしては、カタールにおける12万b/dのGTLプロジェクトがあったが、カタール政府のモラトリアム対象となったこのプロジェクトの推進を同社は断念した。Marathonは、GTLプロセスではなく・自ら技術開発しているGas To Fuelsプロセスを用いて今後、世界で商業化を進めたい意向を示している。(3)ExxonMobilのGTGプロセス ExxonMobilは、GTLプロセス以外に、GTG(Gas To Gasoline)プロセスという別の天然ガス液体燃料化プロセスを持っている。これは、天然ガスを、まずメタノールに転換し、メタノールをZSM-5を用いてガソリン成分に転換する技術である。このプロセスは、かつてニュージーランドで商業化されていた。 ニュージーランドのGTGプロセスのブロックフローを図2に示す。このプロセスは、天然ガスをメタノールに転換するICIのメタノール合成プロセスと、メタノールをガソリンに転換するMobilのMTG(Methanol To Gasoline)プロセスを統合したものになっている。GTLプロセスは次のとおりである。すなわち、原料天然ガスは、Ni系触媒を用いた水蒸気改質により合成ガスに転換され、さらにメタノール製造工程でメタノールに転換される。この水分等を含む粗メタノールは、蒸留せずにMTGプロセスに入る。MTGプロセスでは、メタノールは最初のステップで脱水されてジメチルエーテル(DME)となり、次のステップでZSM-5触媒を用いたMTG反応器で炭素数5~10程度のガソリンに転換される。 合併前のExxonがFT法を用いて天然ガスを灯・軽油等に転換するAGC-21(Advanced Gas Conversion for the 21th century)という技術を開発していたのに対して、合併前のMobilはこのGTGプロセスを開発していた。AGC-21は、Exxonにより200b/dのデモンストレーション研究が行われ、その後、ExxonMobilとなって、カタールにおいて潤滑油と灯・軽油等を生産する15万b/dのPalmプロジェクトとして進められたが、2007年2月に推進が断念されている。 一方、GTGプロセスは、Mobilにより、1973年第一次石油危機の際、天然ガス資源はあるものの・石油資源のない当時のニュージーランドに対して、将来のガソリン重台工程反応温度約400℃反応圧力21気圧脱水縮合工程反応温度反応温度約400℃約400℃反応圧力反応圧力26気圧26気圧アルミナ系触媒アルミナ系触媒ZSM‐5触媒水蒸気改質工程反応温度約850℃反応圧力30気圧ニッケル系触媒メタノール合成工程反応温度反応温度約206℃約206℃反応圧力反応圧力100気圧100気圧銅系触媒銅系触媒天然ガスメタン(CH4)合成ガス(CO,H2)メタノール(CH3OH)ジメチルエーテルガソリン(CH3OCH3)(C5~C10炭化水素)ICI低圧メタノール合成法Mobil MTG法主生成物出所:JOGMEC図2ニュージーランドGTGプロセスのブロックフロー この章では、これらの技術およびプロジェクトを紹介し、それらの技術の復活の背景を探る。また、ここでは、特に断らない限り、GTLとは、FT反応を用いて天然ガスを灯・軽油等に転換する狭義のGTLを指すことにする。(2)Marathonの直接法プロセス GTLやメタノール、あるいはDME製造技術は、天然ガス(主成分はメタンCH4)の反応性を高めるため、最初の工程で天然ガスを酸素や水蒸気等を用い、COとH2の混合ガスである合成ガスに転換する。このような、いわゆる間接法は、合成ガス製造の工程にコストがかかり、エネルギー的にも無駄が多い。この問題を解決できる可能性のある方法として研究開発されていたのが、合成ガスを経由せずに、直接天然ガスを他の物質に転換する直接法プロセスである。 直接法プロセスには、酸化カップリング法(OCM)、オキシハイドロクロリネーション法、直接メタノール法などのいくつかの方法がある。これらは、触媒、反応条件、天然ガスからできる生成物が異なっている。しかし、天然ガスから合成ガスを経由せずにできたエチレン、塩化メタン(CH3Cl)<ハロゲン化メタンの一つ>、メタノール(CH3OH)などは、いずれも比較的反応性の強い化合物であり、ゼオライト系の触媒であるZSM-5などにより、容易に重合してC5-C10の炭素を持つガソリン成分に転換する。これらの技術は、GTLプラントに対してコスト削減やエネルギー効率の向上に資する可能性があることから、20年ほど前には世界の種々の機関で盛んに研究されていたものの、研究開発のハードルが高く、現在はその多くは研究が取りやめになっている。 ところが、最近、Marathonは、直接法プロセスの研究開発を行っていることを公表した。彼らの技術は、天然ガスを臭化金属化合物を触媒として、ハロゲン鎖さ81石油・天然ガスレビューホ油価格上昇を前提に、ニュージーランド政府に提案された。その後、ニュージーランド合成燃料公社(ニュージーランド政府75%、Mobil25%)によりプロジェクトが進められ、12億ドルの建設費で、130MMCFDの天然ガスから14万5,000b/dのガソリンを生産するプラントが1985年から稼働となった。しかし、その後の油価下落により、石油価格上昇を前提に進められていたプロジェクトは、採算性が見込めなくなった。そのためプラントはガソリン生産ではなく、途中のメタノールまでの生産プラントとなり、その後、ガス枯渇もあって、2004年にプラントは生産を中止している。 このような、広義GTLとして二つの技術を持つExxonMobilは、2008年3月、随伴ガスの有効利用に強い関心を持つナイジェリアに、AGC-21ではなく、GTGプロセスを用いた10万b/dのガソリン製造プラントを建設するプロジェクトを提案し、ナイジェリア政府とプロジェクトの具体化に向けて協議することになった。(4)復活の背景 Marathonの直接法プロセスが現時点までに、後に述べる大きなハードルを解決したのか・あるいは解決の可能性を見出したのか、ExxonMobilのナイジェリア政府への提案がどの程度真剣なものであるかは、いまのところ分からない。しかし、GTLを追求する企業の動きとして、先に3章(2)で紹介した、従来にない小規模な狭義GTLを追求する動きとともに、狭義のGTLプロセス以外の天然ガス転換技術を開発したり・商業プロジェクトを追求したりする、新たな機運が出てきたことは確かであろう。こうしたGTLにおける新たな機運の背景には、このような技術を開発する企業の思惑の底流として、GTLに対する効率、コスト、プロセスの複雑性等に関するある種の限界の認識があるように思える。それでは、以下で、これらGas To FuelsやGTGプロセスの利点を考える。① 製品 Gas To Fuelsプロセス、GTGプロセスの両方とも、製品は灯・軽油ではなくガソリンである。しかも、GTLプロセスの灯・軽油得率が60~70%程度であるのに対して、両プロセスのガソリン得率は100%に近い。灯・軽油ではなく、ガソリンにニーズがある国においては、Gas To FuelsやGTGプロセスの方が、よりアピールするであろう。② エネルギー効率 GTLプロセスのエネルギー効率は、60%程度とアナウンスされている。一方、ニュージーランドのGTGプラントのエネルギー効率は、54%程度であった、と言われている。ただし、ニュージーランドのプラント建設当時に比べてGTGプラントの前段部分であるメタノール合成プロセスは効率化が図られている。したがって、GTGプロセスとしてのトータルのエネルギー効率としては、少なくともGTLプロセスに対して遜色のないものとなろう。一方、Marathonのセールストークによれば、Gas To Fuelsプロセスは合成ガス製造工程を持たないため、GTLプロセスに比べて高い、という。③ プラントコスト Marathon によると、Gas To Fuelsプロセスは、同規模のGTLプロセスに対して30%程度のプラントコスト削減ができる、という。一方、GTGプロセスに関する情報はない。ただし、GTGプロセスは、GTLプロセスに比べて比較的単純な技術であるメタノール合成とMTG技術との統合技術であり、少なくともプラントコストがGTLプロセスと比較して大幅に高くなることはないであろう。(5)問題点と可能性 この章の最後に、Gas To FuelsとGTGの両プロセスの問題点を検討する。① Gas To Fuelsプロセス 本プロセスは、まだ、技術開発途上の技術である。したがって、問題点としては、技術的な点を指摘することにとどめよう。 Gas To Fuelsプロセスは、かつてDOE(米国エネルギー省)が研究開発していたオキシハイドロクロリネーション法の類似プロセスである。Gas To Fuelsプロセスが臭素を用いて天然ガスをいったん臭化メタンCH3Brにするのに対して、オキシハイドロクロリネーション法は、同じハロゲンに属する塩素を用いて天然ガスをいったん塩化メタンCH3Clにするものであった。オキシハイドロクロリネーション法は、天然ガスの塩化効率がほぼ100%と高いものの、いくつかの問題点があり、研究が途中で取りやめになった。主要な問題点としては、(a)塩化メタン選択性、(b)高温腐食、(c)製品への塩化物混入が挙げられる。 まず、塩化メタン選択性とは、天然ガスを塩化するに際して、塩素が一つ入ったCH3Clだけでなく、二つ入ったCH2Cl2、三つ入ったCHCl3が副生し、その結果、次の工程であるMTGプロセスに影響を与え、効率も低下する問題である。次の高温腐食の問題は、オキシハイドロクロリネーション法では、塩酸も反応に用いられるが、反応条件が高温となるため、材料の腐食が生じるというものである。製品への塩化物混入の問題は、次のとおりである。最終製品であるガソリンには、当然、塩素化合物が入ってはいけない。ところが、オキシハイドロクロリネーション法を用いたプロセスでは、塩素化合物の混入の問題を解決することができなかった。 塩素を臭素に換えたMarathonのGas To Fuelsプロセスでも、オキシハイドロクロリネーション法と同様の技術的ハードルがあると考えられるが、いままでにこれらの問題が解決されたのか・あるいは解決の可能性を見出し得たのか、筆者は知らない。少なくとも、臭化メタン選択性に関しては、Marathonの特許を見る限りでは、メタンに臭素が一つ入ったCH3Brの選択性は90%以上ある、という。いずれにしても、実用化のハードルは低くはない、と考えられる。2008.5 Vol.42 No.382ホする信頼は回復され、新たなプロジェクト推進の機運は一層高まる可能性がある。(4)資源・環境 10年程度のタイムスパンで考えた場合、GTLの資源や環境に関する配慮は無視せざるを得ない、と考える。それは、以下の理由による。GTLは、非常に大っぱ把に言えば、輸送用燃料を生産するための技術である。輸送用燃料として、使いづらいガス体エネルギーを、使いやすい液体エネルギーに転換する技術である。そのエネルギー転換過程で、多くのエネルギーが無駄に失われる。この失われるエネルギーは、「使いづらいエネルギーを使いやすいエネルギーに転換する」メリットにより、本質的には補償されるべきものである。 GTLのCO2排出の問題に関しては、GTLは製造時にCO2を多く排出するが、だからといって、現在のCCS技術をGTLに適用することが正しい選択肢であるとは、個人的には疑問と考えている。それは、現在のCCS技術は、エネルギー消費が極めて大きいからである。現在のCCS技術を組み込んだGTLによるトータルのエネルギー効率は50%以下になると考えられる。貴重な化石燃料を、本来の原料が持つ50%以下のエネルギーに換えてしまうことが、いかに輸送用燃料に価値があるからといって、妥当性があるか、筆者としては疑問を持っている。したがって、ここ10年程度の将来プロジェクトにおいては、CCS技術とGTLとの組み合わせを考えるよりも、エネルギー低消費型のCCS技術が開発された段階で、この技術を組み込んでいくことを考えることの方が、将来の人類のための資源の有効利用という観点からは、正しい選択肢と考える。雑ざ(鈴木 信市)② GTGプロセス ExxonMobilがナイジェリアに対して、なぜAGC-21プロセスではなく、GTGプロセスを提案したのか、真意は不明である。ただ、ExxonMobilとしては、200b/d程度のデモンストレーションプラントで実証しただけのAGC-21プロセスよりも、曲がりなりにも商業生産を何年か行ったGTGプロセスの方が、技術的な成熟度が高く、自信を持って相手方への提案ができた、と考えられる。問題は、ニュージーランドのプラント建設当時に比べて、どの程度の技術的な向上があり、その結果として、効率向上やコスト削減が図られているかにあろう。いずれにしても、注目すべきプロジェクトではある。6. 今後の展望 最後に、新たなGTLプロジェクトが現実化する要件を考える。この問題に関しても、4章と同じく、上流に限定して考えよう。その理由は、筆者は、ここ10年程度のタイムスパンで本件を考えており、ここ10年程度のタイムスパンで見ると、上流がGTL発展の鍵を握ると考えるからである。換言すれば、それ以降の時間軸においては、エネルギー問題に取り組む際の予測不可能なパラダイムシフトの可能性もある。 上流プロジェクトとしてのGTLは、CAPEXの相対的低下、油価上昇および原油と天然ガスとの価格差拡大、技術リスク低減の認識がなされた場合、上流企業や産ガス国の関心が再び高まるであろう。また、この条件が生まれる可能性はあると考える。それらを順に説明する。最後に、GTLと資源・環境問題について、簡単に触れる。(1)CAPEXの相対的低下 CAPEX増加の原因は、材料費上昇とエンジニアリング費用等の上昇にある。一般論からは、CAPEXはサイクリック83石油・天然ガスレビューな変動を示すはず(ニーズが増加してCAPEXが上昇すると、ニーズが低下してCAPEXは下落する)であり、近い将来、リーズナブルなCAPEXに落ち着く可能性もある。(2) 油価上昇および原油と天然ガスとの価格差拡大はいたい プロジェクト決断の際の前提油価は、胎するリス油価に対する将来見通しと胚クに依存する。将来、現在の高い原油価格そのものを前提とした経済性を検討できる日が来る可能性もある。 その際に、改めて問題となるのは、原料としての天然ガスの価格である。GTLの適用可能性が増大するには、油価と天然ガス価が同じように上昇するのではなく、その価格差が広がるような上がり方が望ましい。天然ガスが、コストベースでなく、プライスベースの供給がなされることを前提とした場合、天然ガス価は、産ガス国の天然ガスというエネルギーの他のエネルギーに対する相対的価値を反映する。原油の基本的市場は、輸送用エネルギーであり、天然ガスの基本的市場は、家庭用および発電用であるから、例えば、輸送用エネルギーの価値が家庭用と発電用エネルギーに対して相対的に高い、と認識されれば、こうした状況が現実化しよう。また、天然ガスが、開発生産コストに最低限の利益を乗せたプライスベースで販売可能である場合には、その価格は相対的に安価になる場合もある。(3)技術リスク低減の認識 産ガス国は、SasolのOryx 1プロジェクトがいかに速くフルキャパシティー運転を行い・安定的な操業ができるか、また、ShellのPearlプロジェクトがスケジュールどおりの生産をできるかに注目している。特に、ShellのPearlプロジェクトがトラブルなくスケジュールどおりの生産ができた場合には、GTL技術に
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2008/05/20 [ 2008年05月号 ] 鈴木 信市
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