国際石油企業の上流パフォーマンス比較
| レポートID | 1006334 |
|---|---|
| 作成日 | 2008-05-20 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | 企業 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 岡崎 淳 |
| 年度 | 2008 |
| Vol | 42 |
| No | 3 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | アナリシスJOGMECプロジェクト推進部 岡崎 淳国際石油企業の上流パフォーマンス比較にぎ 現在、油価高騰についての記事が新聞紙上等を賑わせている。また、LNGのスポット価格の高騰についても石油業界のPlatts Oilgram News等の専門誌で伝えられている。このように石油・天然ガスの上流企業にとって追い風に見える環境にある一方、高油価を背景に資源保有国の立場が強くなり、石油会社にとって必ずしも良い投資環境とは言えない状況にある。そして、これに追い打ちをかけるかのようにコストの上昇や熟練労働者の不足といった問題点も指摘されている。本稿では、このように必ずしも良好でない投資環境のなかで、石油・天然ガス企業が何を考え、どう動いているかを考察していくことにしたい。1. 本稿で対象とする企業 本稿では、BP、Chevron、ConocoPhillips、ExxonMobil、Royal Dutch Shell(Shell)、Totalの6社をメジャーズとし、Anadarko、Apache、BG、Canadian Natural Resources (CNR)、Devon、EnCana、Hess、Marathon、Occidentalの9社を中堅企業として分析することにしたい。規模の観点からメジャーズと中堅企業との間にEni、Repsol YPFといった企業が存在するが、2007年のデータが現段階で取得できていないことからこれら15社を対象とする。2. 振るわないメジャーズの上流操業パフォーマンス(1)思ったほど伸びていない上流部門純利益? さて、メジャーズのパフォーマンスを図1で見よう。以下は上流部門の純利益の推移を示したものだが、各社とも、資産売却によって利益が左右されることから、資30,00025,00020,00015,00010,0005,0000百万ドル20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図1上流部門利益の推移(メジャーズ)1石油・天然ガスレビュー産売却による効果を除いて、操業から得られる利益を示している。図1のとおり各社とも高水準の油価を背景に高い利益を確保している。特に2004年から2005年にかけての伸びが著しい。しかし、2007年については、Chevron、Totalが利益を前年比で伸ばす一方、BP、ExxonMobil、Shell、ConocoPhillipsの4社は前年比で上流部門の利益が横ばいまたは減少となっている。したがって、油価はこの1年で大幅な上昇を見ており、各社とも増収となっているとはいえ、そのメリットは必ずしも全社が享受できているわけではない。おおむ(2)伸び悩む生産量 図2に、これら6社の5年間の石油換算の生産量推移を示した。上流部門の純利益とは対照的に、生産量の水準ね低下していることが見て取れよう。BP、が概ExxonMobil、Shell、Totalの4社の水準の低下が目立つ。特にShellは、2003年には年間平均日量400万バレルの生産量を確保していたが、2007年には同330万バレル台まナ生産量の水準が低下している。ExxonMobilについても2003年には日量450万バレルの生産量であったが、2007年には同420万バレル弱まで減少している。Chevronは2006年の生産量が伸びているが、これはUnocal買収によるところが大きいものと思われる。Totalは、2003年から2006年にかけて生産量が減少したが、2007年にようやく増加に転じた。2007年に生産量が増加したとはいえ、2003年には日量260万バレル台の生産量であったのが2007年は同230万バレル台になっている。ConocoPhillipsは2006年に大幅に生産量が増加しているが、これはBurlington Resourcesの買収によるところが大きい。5,0004,0003,0002,0001,000千バレル/日(石油換算)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図2石油・天然ガス生産量推移(メジャーズ) 各社の生産量減少の大きな理由の一つとして生産物分与契約(PSA)のプロジェクトにおけるコスト回収分の石油会社取り分の減少が挙げられる。石油企業は、PSAでは、産油国との関係においてコントラクターとして石油・天然ガス開発に関与するが、プロジェクトに要したコストは生産物である石油や天然ガスで回収することに契約上規定されている。したがって、油・ガス価が上昇した場合、コスト回収分として石油会社が受け取ることができる石油・天然ガスの量は契約上減少することになる。この影響は各社とも、特にこの3年間で大きく受けている。 二つめの要因としては、ナイジェリアでの生産停止やベネズエラでの権益比率低下といったことが挙げられるであろう。Shellを例に取ると、2004年のナイジェリアでの生産量は日量35万バレル弱あったのが現在は29万バレル弱まで低下している。ナイジェリアでのShellの主力油田の生産再開については見通しが不透明である。このように外部的な要因により生産量が減少している。アナリシス このような外部的要因の他にも、内部的な要因で生産量が減少している。まず第1には既存油田の減退が挙げられよう。各社とも北海で操業を行っているが、同地域において、特に英領北海での生産量が減少している。英領北海についてはExxonMobilとShellが共同で多くの鉱区を保有しており、重要なキャッシュフローの源泉となっていたが、2007年に売却方針を固めている。同じ北海でもノルウェー領北海ではOrmen Langeが生産を開始していることから、北海といっても必ずしも撤退というわけではないが、他の地域と比較して特に積極的に投資を行う意欲はないように見受けられる。 内部的な要因として第2に考えられるのは、新規プロジェクトの立ち上がりの遅延である。各社とも大規模プロジェクトを保有しており、生産が開始されると大幅な増加が達成できるが、仮に開始が遅延した場合は、マイナスの影響も大きい。(3)埋蔵量の補填 埋蔵量の補填(リプレースメント)についてのパフォーマンスはどうか。図3にはリザーブリプレースメントレシオ(RRR)の推移を示した。石油・天然ガス埋蔵量については、生産と資産売却によって減少していくが、これを探鉱・開発活動および資産・企業買収により補填していくことが必要である。このパフォーマンスを見る指標がRRRで、分子には当年の埋蔵量の増加量、分母には生産量を取っており、この比率が100%を超えれば埋蔵量の補填に成功(前年末時点での保有埋蔵量より増加)したことを意味する。また、年によるブレを軽減するため3年移動平均(当該年を含む直近3カ年のデータの平均)を取って推移を見ることにする。 図3のように、ConocoPhillipsを除き、2006年以降%350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図3メジャーズ石油・天然ガスRRR推移(SEC基準)2008.5 Vol.42 No.32総ロ石油企業の上流パフォーマンス比較RRRが100%を割っている企業がほとんどである。つまり、これは埋蔵量が目減りしていることを示している。 ところで、図3は埋蔵量を米国証券取引委員会(SEC)の基準で評価しているが、SEC基準は、年末価格で埋蔵量を評価することが定められていること、また露天掘りのオイルサンドを確認埋蔵量として計上することを認めていないこと等から、石油・天然ガスの上流業界からは現状に即した評価になっていないとの批判の声が上がっている。特に年末価格での埋蔵量評価については、大きく油・ガス価が変動するなかで年末価格という一時点での価格をもって埋蔵量を評価することは適当でないと批判を強めていた。このため、SECは埋蔵量の評価基準について現在見直しを検討しているところである。そこで、年末価格による効果を除き、オイルサンドを加えて埋蔵量を評価し直すと図4となる。%350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図4メジャーズ石油・天然ガスRRR推移(除く年末価格効果、含むオイルサンド) 図3とは異なり、2006年のRRRはBPとShellを除く各社で100%を超える結果となった。2007年は、BPとShellに加えTotalもわずかながら100%を割っている。2007年については、ShellがGazpromへサハリン-2権益の一部を譲渡したこと、TotalやConocoPhillipsがベネズエラ政府に権益を譲渡したことが原因で単年度で見ると大幅に100%を割ることとなるが、3年移動平均値で見ているため、その効果が薄れている。さて、以上は資産の売却と資産・企業買収も含めた形で見たRRRだが、資産・企業売買を含めない探鉱・開発活動による成果で見るとどうなるか。これを示したのが図5である。 これによれば、2007年のRRRはChevronとConocoPhillipsを除く各社で100%を超えている。これはつまり、探鉱・開発活動によって埋蔵量の補填に成功したことを意味する。逆にChevronとConocoPhillipsは、買収による埋蔵量の3石油・天然ガスレビュー%180160140120100806040200(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図5メジャーズ石油・天然ガスRRR推移(探鉱・開発活動による、除く年末価格効果、含むオイルサンド)増加には成功しているとはいえ、探鉱・開発活動による埋蔵量補填については必ずしも成功していないことが読み取れよう。(4)100%を割り込むメジャーズ各社の石油RRR 石油と天然ガス別のRRRはどのようなパフォーマンスを示しているであろうか?まず、石油について示したものが図6である。これは、SEC基準による埋蔵量評価に基づいて算出したものである。その理由としては、石油・天然ガス別に年末価格効果が開示されていない企業がほとんどであるため、SEC基準を採用し議論することにする。図6が示すように、各社の石油RRRは下落傾向にある。2003年時点での石油RRRは、6社中の、4社で100%を超えていたが、2007年のそれはBPを除く各社で100%を割り込んだ。 さて、探鉱・開発活動の石油RRRを見たのが図7である。やはり、これも下落傾向にある点では図6と変わら%250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図6メジャーズ石油RRR推移(SEC基準)ネい。BPは、100%を大幅に超えているが、これは同社が2003年にロシアで買収したTNK-BPの埋蔵量追加が大きく貢献している。2007年末のBPの石油・天然ガス埋蔵量のうち、約20%はTNK-BPの埋蔵量が占めている。そしてTNK-BPの確認埋蔵量は、石油の割合が90%以上を占めているため、こうした結果になっているものと思われる。ひるがえって言えば、同社のメキシコ湾など他の地域での埋蔵量についてはほとんど増加していない。%160140120100806040200(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillipsアナリシス大幅に超えていたが、探鉱・開発活動での2007年の天然ガスRRRは100%を割り込み、埋蔵量のリプレースは買収でなされた。また、Chevronも、2005年にUnocalを買収してガス資産が大幅に増加したが、探鉱・開発活動については埋蔵量の補填に成功していないとの結果が出ている。BPは、もともとガスよりも石油での埋蔵量の補填が主体となっているため、こうした姿勢が数値として表れたと思われる。%400350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図8メジャーズ天然ガスRRR推移(SEC基準)図7メジャーズ石油RRR推移(探鉱・開発活動による、SEC基準)(5)逆に天然ガスRRRは増加傾向 図8に、天然ガスRRRを示した。これによると、石油RRRとは対照的に上昇傾向を示す企業が多くなり、2006、2007両年のRRRはBPを除く5社で100%を超えている。 図9は、探鉱・開発活動による天然ガスのRRRである。全体的には100%を超えている企業が多いとはいえ、2007年では、BP、Chevron、ConocoPhillipsの3社で100%を割っている。ConocoPhillipsは、2005年にBurlington Resourcesを買収して北米のガス資産が大幅に増加したため、資産売買を含めたRRRが100%を%250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図9メジャーズ天然ガスRRR推移(探鉱・開発活動による、SEC基準)3. メジャーズと対照的に上流操業パフォーマンスが良好な中堅企業(1)メジャーズと対照的に増加する生産量 次に、中堅企業各社の上流操業パフォーマンスを見よう。図10に、中堅企業の石油・天然ガス生産量の推移を示した。メジャーズの生産水準が低下する一方で、これら中堅企業の生産量の水準は伸びていることが分かろう。とりわけ、2003年との比較で言えばHess、Marathonを除く各社で生産水準を増加させている。2008.5 Vol.42 No.34総ロ石油企業の上流パフォーマンス比較(2)RRRについても軒並み100%超 また、RRRについては図11に見るように、少なくとも2006年までは多くが100%を超えている。BGは国際展開を行い契約の多くがPSAと考えられ、油・ガス価格上昇に伴うコスト回収分の減少の影響が大きいことから2007年は100%を割ったと見られる。いずれにせよ多くの中堅企業のRRRの水準は150~200%の水準にあり、メジャーズと比較して埋蔵量のリプレースに成功していることは明らかである。この要因としては、多くの企業が北米を中心に操業を行っているため、PSAの価格効果の影響がほとんどないことが挙げられる。とはいえ、Apache、Occidentalなどの企業は国際展開を積極的に行っているが、RRRは100%を超えている。 次に探鉱・開発活動によるRRRを図12に示した。2007年のRRRは、9社中約5社で100%を上回った。2006年についてはBGを除き100%を上回っている。これら中堅企業はメジャーズと比較して積極的に買収を行うことにより埋蔵量を増加させているが、探鉱・開発活動でも埋蔵量の補填に成功していることが分かる。(3) 石油・ガスともに概ねリプレースに成功 図13に、中堅企業の石油RRRを示した。メジャーズとは対照的に、一部の企業を除き石油RRRが軒並み100%を超えている。メジャーズの場合は、BPのみが、わずかに100%を超えたにすぎなかった。ところが中堅企業の水準は150~300%台の水準にある。また、メジャーズ同様、探鉱・開発活動による石油RRRを見たのが図14である。各社別に見ると、EnCanaのパフォーマンスが目立つ。Anadarkoは、2006年にKerr-McGeeとWestern Gas Resourcesを買収したが、2007年のRRRは100%を割っている。この要因として、同社は前述2社の買収費用245億ドルのうち225億ドルを借入金で賄った9008007006005004003002001000千バレル/日(石油換算)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess%400350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図10石油・天然ガス生産量推移(中堅企業)図12中堅企業石油・天然ガスRRR推移(探鉱・開発活動による、SEC基準)%450400350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess%450400350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図11中堅企業石油・天然ガスRRR推移(SEC基準)図13中堅企業石油RRR推移(SEC基準)5石油・天然ガスレビューェ、これの返済のため大幅に資産のリストラを進め、非戦略資産の売却を進めた。ちなみに、借入金返済については2008年2月に完了している。現在も資産売却は進められており、本年3月にブラジルの上流資産をStatoilHydroに売却している。このような資産売却が原因で、RRRを押し下げる結果になっているのではないか。BGは、もともとガスの開発に注力していることから石油のRRRが低下していると思われる。 探鉱・開発活動によるRRRは、資産売買も含めたRRR同様EnCanaのパフォーマンスが他を抜いている。探鉱・開発活動でもEnCana、Devon、CNR、Apache、Hessの各社で石油RRRは100%を超えている。Apacheについては、買収により企業規模を拡大させてきた企業との印象があるが、買収のみならず探鉱・開発活動でも埋蔵量の増加が達成されている。Anadarkoについては、資産売買という要因を除いた探鉱・開発活動の石油RRR%7006005004003002001000(3年移動平均値)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図14中堅企業石油RRR(探鉱・開発活動による、SEC基準)%400350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHessアナリシスも2007年で見て図13同様100%を割っている。 では天然ガスのRRRはどうか。図15は、天然ガスのRRRの推移を示したものだが、この2年間Marathonを除く各社で100%を超えている。特に、Apache、Occidentalといった企業のパフォーマンスが目立つ。これら2社は、アメリカのみならず中東、アフリカなどの地域で埋蔵量増加に成功している。Apacheは、オーストラリア、アルゼンチン、エジプト等に資産を保有しておりこれら地域でのリプレースに成功している。Occidnetalについては、中東のDolphinプロジェクト(カタール・UAE)の立ち上がりが起因しているものと思われる。 図16に、探鉱・開発活動による天然ガスRRRを示したが、やはりほとんどの企業で軒並み100%を超えている。この3年間で天然ガスRRRが100%を割ったのは1~2社のみである。買収のみならず探鉱・開発活動によっても埋蔵量の増加に成功していることが分かる さて、メジャーズと異なり、石油および天然ガスともにRRRが好調な中堅企業だが、それはなぜか?その理由の一つとして、これらの企業の資産が北米に集中していることが考えられる。メジャーズは国際展開を図っており、保有資産のうち10~40%はPSAによるものである。油・ガス価の影響を受けることになるが、本稿で対象にしている中堅企業の多くは、ほとんどの資産がPSAを採用していない北米に集中していることから、その影響を受けていないことが大きい。しかし、Apache、Occidentalなどのように、国際展開を図りながら、埋蔵量の増加に成功している企業も存在する。さて、地域的な要因以外の理由としては何が考えられるであろうか。%350300250200150100500(3年移動平均値)20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図15中堅企業天然ガスRRR推移(SEC基準)図16中堅企業天然ガスRRR(探鉱・開発活動による、SEC基準)2008.5 Vol.42 No.36総ロ石油企業の上流パフォーマンス比較4. 上流投資に積極的な中堅企業、保守的なメジャーズ 図17に、メジャーズの2003年以降の上流資本支出額の推移を示した。Chevronは2005年にUnocalを、ConocoPhillipsはBurlington Resourcesをそれぞれ買収したが、図17はこれらの企業買収分を除いた数値である(資産買収は含む)。ShellとChevronが大幅に資本支出を増加させている。Shellの2007年の上流資本支出額はExxonMobilを抜き、民間の石油企業としては最大額となった。ChevronについてもBPやExxonMobil並みの規模である。 図18で2003年の上流資本支出額と各年の支出額を比較した。Chevronを筆頭に投資を伸ばしており、同社は2003年の上流資本支出額の約2.7倍の投資を行っている。これにConocoPhillips、Total、Shellが続くが、これら各社は2003年の約2倍程度の支出額となっている。これら4社と対照的にBP、ExxonMobilの伸びは2003年の1.5倍前後とそれほど大きな伸びにはなっていない。 それでは、中堅企業の上流資本支出についてはどうか?図19に中堅企業の上流資本支出の推移を示した。メジャーズと同様に傾向としては、各社とも右肩上がりの傾向である。支出額の規模は、EnCanaが最大だが、Devon、CNR、Apacheが続いている。 図20には2003年の資本支出規模との各年との比較を示した。メジャーズとは対照的にAnadarkoを除く各社で2007年の投資水準は2003年のほぼ2倍以上となっている。特にCNR、BG、Devon、Occidental、Marathonの伸びが著しく、2003年との比較では2.5倍以上の投資額である。20,00018,00016,00014,00012,00010,0008,0006,0004,0002,0000百万ドル20032004200520062007年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips10,0009,0008,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000百万ドル20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図17上流資本支出推移(メジャーズ)図19上流資本支出推移(中堅企業)倍3.02.52.01.51.00.50.020032004200520062007 年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips倍4.03.53.02.52.01.51.00.50.020032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図18上流資本支出推移(2003年との比較、メジャーズ)図20上流資本支出推移(2003年との比較、中堅企業)7石油・天然ガスレビューAナリシス5. 探鉱支出の割合が少ないメジャーズ 図21に、探鉱・開発費のうち探鉱費の割合を示した。メジャーズ各社の探鉱費の割合は、2007年のShellを除いて10~15%台にとどまっている企業がほとんどである。これら6社中、探鉱費の割合がもともと高かったChevronはその後下落し、現在ではExxonMobilの水準を下回っている。さて、中堅企業はどのような値になっているであろうか。 図22に、中堅企業の探鉱費割合を示した。メジャーズほど明確な傾向は見られない。メジャーズとの比較で言えば、メジャーズの比率が10%台であるため、企業ごとに温度差があるとはいえ、探鉱活動に比較的積極的であると言える。しかし、2003年との比較では、9社中7社が20%以上であった一方、2007年は5社に減り、探鉱から開発重視にシフトしていることが考えられる。BGを除いて、EnCana、Occidental等といった中堅企業でも比較的生産量の大きい企業ほどその傾向が見られる。20032004200520062007年AnadarkoDevonMarathonApacheEnCanaCNRBGOccidentalHess%454035302520151005%252015105020032004200520062007 年BPShellChevronTotalExxonMobilConocoPhillips出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図21探鉱費の割合推移(メジャーズ)図22探鉱費の割合推移(中堅企業)6. キャッシュフローの大半を資本支出に充当する中堅企業 図23では2007年のメジャーズと中堅企業のキャッシュフローの調達状況を見た。ExxonMobilをはじめとしてメジャーズ各社が300億~600億ドル台のキャッシュを確保する一方で、中堅企業は100億ドル未満のキャッシュしか確保できていない。キャッシュ確保の方法としては事業活動から得られるものが大半を占めるが、メジャーズについては資産売却も調達源となっている。図23が示しているのは、下流部門も含めた全社ベースでのキャッシュフローであるが、各社とも上流事業で大半のキャッシュを得ていると見られる。また、Anadarkoは資産売却によって確保しているキャッシュの割合が大きいが、3章に述べたとおりKerr-McGeeとWestern Gas Resourcesを買収にかかわる要因が大きい。 図24に確保したキャッシュの使途を示した。ExxonMobilが大幅に株主還元を行い、確保したキャッシュのうち60%以上を自社株買いおよび配当に充当して70,00060,00050,00040,00030,00020,00010,0000百万ドルChevronConocoPhillipsBPShellExxonMobilApacheAnadarkoTotalBGDevonEnCanaCNRHessMarathonOccidental事業活動キャッシュフロー新株発行資産売却その他借入金増加現金取り崩し出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図23キャッシュフロー(調達)2008.5 Vol.42 No.38総ロ石油企業の上流パフォーマンス比較いる。他のメジャーズについてはキャッシュの約30~40%を株主還元に活用している、これとは対照的に、多くの中堅企業はキャッシュの大半を資本支出と資産取得に充当している。Anadarkoは、キャッシュの大半を借入金返済に使っているが、既述のように、買収にかかわる資金を借入金で賄っており、これを返済するため、こうした使途状況になったわけである。1009080706050403020100%ChevronConocoPhillipsBPExxonMobilShellAnadarkoTotalApacheBGCNRDevonEnCanaMarathonHessOccidental資本支出配当資産取得その他借入金返済現金増自社株買い出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図24キャッシュフロー(使途)7. 株式市場の評価は? 図25は、各社の時価総額の比較を示したものである。時価総額は、2007年末の株価と発行済み株式の積である。株式の価値を株価で評価する方法もあるが、株式分割や発行済み株式数により株価水準が変動してくるため、株式市場の評価としては時価総額を見るのが適当であると考え、これを示した。 図25に明らかなように、やはりExxonMobilが他社を圧倒している。前述のキャッシュフローの規模と同様、メジャーズと中堅企業との評価の間では大きな差がある。しかし、メジャーズのなかでは時価総額が一番低いConocoPhillipsと中堅企業で時価総額が一番高いBGとを比較した場合、BGのキャッシュフローについては百万ドル600,000500,000400,000300,000200,000100,0000ShellExxonMobilTotalBPChevronConocoPhillipsBGOccidentalEnCanaMarathonDevonApacheCNRAnadarkoHess出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図252007年末時価総額比較9石油・天然ガスレビューConocoPhillipsの約5分の1程度しかないが、BGの時価総額についてはConocoPhillipsの約半分で、キャッシュフローの多寡で必ずしも価値が決まっているわけではない。 さて、株式市場で株価が評価されるということは当然、株式価値を最大限にするような経営が行われるはずである。また、現在、株主の発言力を強化すべきだという意見が株主から出ている。株主の構成は、機関投資家が各企業の株式約7~8割を保有している。既述のように、メジャーズは自社株買いや配当により株主還元を行っている。そこで疑問として、機関投資家等の株主は短期的利益に着目し、資本支出よりむしろ配当や自社株買いにキャッシュを充当すべきであるという圧力を掛けているのではないかとの疑問がわいてくる。 そこで、この5年間の時価総額の伸び、つまり株式市場での評価の伸びと資本支出の伸びを比較したものが図26である。資本支出を大幅に伸ばしている中堅企業の評価の方が株主還元を比較的積極的に行っているメジャーズより評価の伸びが大きいことが分かる。BPは特に2006年までExxonMobil同様に株主還元を積極的に行い、キャッシュフローに占める資本支出の割合が少なかったが、株式市場の評価では必ずしも評価を受けていなかったようだ。むしろ、同社は米国のTexas City製油所での事故を中心とした下流のパフォーマンス、また、上流についても米国アラスカのPrudhoe Bayでの油漏れ事故やプロジェクト立ち上げ遅延などが響きこのような評価になっているのではないかと思われる。したがっAナリシスて、キャッシュを資本支出ではなく株主還元に充当した方が市場でよい評価を受けるとは、必ずしも言えないのではないか。 投資の内容としては、株主は探鉱よりも開発や買収を選好するという可能性が高いということも考えられる。探鉱プロジェクトの場合、鉱区取得から生産開始まで10年程度を要する可能性があり、このような長期間を要するものに資金の大半を充当することについて投資家が許容する可能性は低いかもしれない。しかし、探鉱費の割合と時価総額の伸びをプロットした場合、図27のとおり、明確な相関関係は見られないようであり、探鉱割合が高いからといって市場の評価が上がらないとは必ずしも言えない。また、逆に、探鉱割合が高いからといって市場の評価が高くなるということも言えないようである。 株主からの圧力という観点で言えば、資本支出や株主への還元への配慮というより、昨今はむしろ役員報酬や環境面での圧力が高まってきている。ExxonMobilやChevronの年次株主総会では、株主提案がいくつもなされてきている。これら株主提案が、可決されることはないが、特に役員報酬に関する株主提案は、多いもので約47%程度の株主の賛同を得られているものもあることから、無視できない存在になっているのではないか。1.002.003.005.00時価総額の伸び(倍)4.006.007.008.00HessCNRBGMarathonOccidentalDevonConocoPhillipsApacheEnCanaAnadarkoChevronExxonMobilTotalShellBP0.0005探鉱費の割合(%)4540353025201510資本支出の伸び(倍)3.53.02.52.01.51.00.50.00.001.002.003.005.00時価総額の伸び(倍)4.006.007.008.00HessCNRBGMarathonOccidentalDevonConocoPhillipsApacheEnCanaAnadarkoChevronExxonMobilTotalShellBP出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出出所:各社アニュアルレポート等に基づき算出図26上流資本支出と時価総額の伸び(2003年~2007年)図27探鉱費の割合と時価総額の伸び(2003年~2007年)8. 積極的な投資姿勢の中堅企業、保守的であるが懐が深いメジャーズ 中堅企業はメジャーズとの比較では積極的な投資姿勢を示している。操業パフォーマンスも良好なようだが、この理由は何であろうか。一つは、規模が小さいが故に積極的に投資を行わざるを得ないという状況が挙げられよう。メジャーズが大規模かつ国際的にも多様化した資産を保有する一方、これら中堅企業は、小規模であるが故に対象地域や事業を絞り込んだ上で事業展開を図っていく必要に迫られている。また、中堅企業のなかでは、経営資源を一定の事業や地域に絞り込んだ企業の操業パフォーマンスの方が、そうでない企業と比較して良好という結果になっている。例えば、RRRや生産量の伸びが目立つCNRやDevonは北米での非在来型資源開発にほぼ特化している。Devonは西アフリカで資産を保有していたが、これを売却していく方針で、実際に売却を行っている。また、BGについては、LNGを中心としたガスの探鉱・開発事業にほぼ特化し、LNG事業では、ExxonMobilやShellにひけを取らないポジションを確保している。特に大西洋圏での液化能力を比較すれば、Shellに次ぐ能力を現状、保有している。対照的にMarathonは、中堅企業のなかでは、RRRや生産量など操業パフォーマンスが他の企業より劣っている。同社は、今のところ国際展開をしているが、他の企業と比較して事業の絞り込みが行えていないことがその要因ではないかと推測される。資金もさることながら、人材等の経営資源は有限であり、これをいかに投入していくかが事業成功の鍵を握ると思われる。このため、投資計画策2008.5 Vol.42 No.310総ロ石油企業の上流パフォーマンス比較定の際の油価設定など、経済性の条件についてはメジャーズと比較して、緩やかな条件になっているのではないかと推測される。 それでは、中堅企業に問題がないかと言えば、必ずしもそうではない。メジャーズと違い保有資産、人材、ノウハウなどの保有が相対的に薄いことから、常に投資を行わざるを得ない状況である。リスクを取れば、アップサイドのメリットは享受できるが、これは、逆に言うならダウンサイドのリスクも存在する。また、Devonのように北米の資産、特にガス資産に集中している企業は米国での天然ガス価格で収益が大幅に左右されることになる。加えて株式市場や資産市場の状況等次第では、規模さらが小さい故に買収のリスクにも晒されている。現状、オイルサンドなどを除き企業買収については積極的でないメジャーズ各社だが、今後もこのような買収に対する態度が継続するかどうかは不明である。 メジャーズの場合、RRRや生産量などこの数年間の操業パフォーマンスは中堅企業と比較して良好ではない。しかし、大規模なキャッシュフローを保有し、しかも世界的に大プロジェクトを保有していることから、中堅企業と比較して急いで投資を行う必要がないのではないか。しかし、油価が高水準を維持していると、PSAプロジェクトのコスト回収見合いの埋蔵量はどんどん目減りするという結果になる上、エクイティー生産量も減少していくため、2年前と比較して鷹揚に構えるというこおうよう9. まとめとが必ずしもできなくなっている状況に入りつつあると思われる。どれほど保有プロジェクトが多く、ポテンシャルを持つとはいえRRRや生産量の減少が大きい場合、市場に与える不安は大きくなることから、これらを補填するための投資を積極的に行わざるを得ない可能性がある。ShellやChevronはこの2~3年で大幅に投資を伸ばしているが、これはプロジェクト立ち上げの投資を行う必要性が他のメジャーズと比較して大きい可能性が考えられる。 規模のメリットから資産を多様化し、リスク分散が可能になっているメジャーズだが、彼らもすべての事業を展開しているわけではない。現在、産油国の立場が強くなり新たな資源へのアクセスが難しくなっていることを勘案すると、メジャーズといえども他の石油企業との差別化を図る必要に迫られている。そこでメジャーズは、技術力やマーケティング力を差別化要因として生かせる分野に事業を特化させる傾向が見られる。具体的には、米国メキシコ湾や西アフリカ等の深海開発、オイルサンド等非在来型資源開発、LNG事業などの3分野である。また、生産量が大きいことから埋蔵量補填を行うためには大規模なプロジェクトを立ち上げる必要がある。つまり、中小規模の油ガス田を単体で開発するというよりは大規模なプロジェクトを選好する傾向が見られる。 以上、メジャーズも含めた15社のパフォーマンスを見てきた。メジャーズは投資環境がこの数年悪化しており、操業パフォーマンスは今ひとつという結果になっている。しかし、深海、非在来型資源、LNGといった分野を中心として経営資源を集中させているのは明らかである。一方、中堅企業については北米での非在来型資源開発を中心に経営資源を集中させている傾向もある。いずれにせよパフォーマンスがこの数年で優れている企業については戦略が明瞭で、投資にも積極的な企業が多い。現状、コストインフレーションや熟練労働者不足といった環境には特段の変化はないようである。特に熟練労働者不足は一朝一夕に解決できる問題ではなく、各社とも頭の痛い問題であろう。このような状況下で成長していくためには、なんと言っても有限である経営資源をいかに有効活用していくか、それが最重要の課題になるものと思われる。執筆者紹介岡崎 淳(おかざき じゅん)兵庫県出身、大阪大学卒。1990年に日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)入行。1999年に同行より石油公団に派遣、主に石油公団資産処分業務に携わる。2004年JOGMECに移籍。2004年3月まで石油公団に出向し、石油公団廃止まで公団資産処分業務に引き続き携わる。調査部を経て、2008年4月から現職、プロジェクト推進部。11石油・天然ガスレビュー |
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