ブラジル:Tupi油・ガス田等のプレソルト探鉱・開発の見通し
| レポートID | 1006335 |
|---|---|
| 作成日 | 2008-07-18 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | 探鉱開発 |
| 著者 | 舩木 弥和子 |
| 著者直接入力 | |
| 年度 | 2008 |
| Vol | 42 |
| No | 4 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | ブラジル:Tupi油・ガス田等のプレソルト探鉱・開発の見通し・2007年11月のTupi油・ガス田の埋蔵量発表以降、ブラジルのプレソルトの探鉱・開発が注目を集めている。・4月中旬には、サントス盆地のBM-S-9鉱区 Carioca油田の埋蔵量は原油換算330億bblに達する可能性があるとのANP(National Petroleum Agency:ブラジル国家石油庁)のハロルド・リマ長官による発言が各種報道で大きく取り上げられた。この発言については、Petrobras等から時期尚早で、正確さを欠くものとの指摘がなされたが、ブラジルではTupi油・ガス田周辺鉱区でプレソルトの発見が相次いでいる。・5月に入り、PetrobrasのGabrielli社長が2009年第1四半期にTupi油・ガス田の生産を2万b/dで開始、2010年末までに生産量を10万b/dに引き上げる計画を発表した。また、ルーラ大統領がCarioca油田の生産を2010年に開始する意向を明らかにした。プレソルトの開発、生産は、硫化水素の除去や圧力のコントロール等難しい点はあるものの、既にカザフスタンのテンギス油田等で行われており、技術的には確立している。しかし、ブラジル沖合のプレソルトは、大水深、大深度に位置することや技術者、資材、機材の不足等多くの問題を抱えていると考えられる。・一方で、政府はLobao新エネルギー鉱山大臣のもと、プレソルトに関する法税制の改定を検討している。しかし、各種選挙を控えていることから、2010年末までは議会の承認を必要としない特別参加税等の税率引き上げで対処し、石油法の改定は2011年以降に行われるのではないかとの見方が強まっている。ライセンスラウンドについては、5月中旬に、同大臣が、第8次ライセンスラウンドが近いうちに再開されることはなく、第10次ライセンスラウンドも2009年末以降に実施されるであろうと語ったが、2009年末から2010年にはプレソルトの鉱区が公開される可能性があるとの見方もある。1. プレソルトの発見続く Petrobrasは、2007年11月8日、リオデジャネイロ沖合250kmに位置するサントス盆地のBM-S-11鉱区、Tupi油・ガス田の可採埋蔵量は原油と天然ガスを合わせて原油換算50億~80億bblであるとの発表を行った。そして、Tupi油・ガス田はブラジル沖合のサントス盆地、カンポス盆地、エスピリトサント盆地にかけて分布する岩塩の下、プレソルトの発見で、Tupi油・ガス田以外にもプレソルトの海域全体に大量の炭化水素資源が埋蔵されている可能性があるとの見解を発表した。 この見解を裏づけるように、その後もブラジル沖合のプレソルトでは発見が相次いでいる。 12月20日には、Petrobrasが、Galp Energiaとサンパウロ州沖合280kmに位置するサントス盆地のBM-S-21鉱区の水深2,234mの海域で1-SPS-51号井を深度 5,350mまで掘削し、軽質の油田を発見したと発表した。 続いて、2008年1月21日には、同じくPetrobrasとGalp Energiaが、リオデジャネイロ沖合290km、Tupi油・ガス田の東37kmに位置するサントス盆地のBM-S-24鉱区の水深2,187mの海域で1-RJS-652号井を深度5,252mまで掘削し、Jupiterガス・コンデンセート田を発見したとの発表があった。 3月末には、Petrobrasからの発表ではないものの、Petrobras、Shell、Galp Energiaがリオデジャネイロ沖合310km、Tupi油・ガス田の南西35kmに位置するサントス盆地BM-S-8鉱区の深度5,380m、水深2,200mの海域で、巨大油田Bem-te-Viを発見したとの報道があった。 2008年4月14日には、ANPのリマ長官が、非公式ではあるがPetrobrasからの情報として、サントス盆地のBM-S-9鉱区Carioca油田の埋蔵量はTupi油・ガス田の5倍で、原油換算330億bblに達する可能性があると発表した。この発言に関しては、過去30年間で最大の発見で、サウジアラビアのガワール油田とクウェートのブルガン油田に次ぐ史上第3位の発見であると各種報道で大きく取り上げられた。 しかし、Petrobrasは同油田の埋蔵量71石油・天然ガスレビュー~地カンポスサントス鉱区PirambuCaxareuBM-S-8BM-S-9BM-S-10BM-S-11BM-S-21BM-S-24油田PirambuCaxareuBem-te-ViCariocaGuaraParatiTupiCarambaJupiter出所:各種資料より筆者作成表プレソルトで発見のあった主要鉱区発見年200220072008200720082006200620072008水深(m)掘削深度(m)参加企業1,4261,0112,2002,1402,1412,0392,1262,2342,1874,7514,8625,3806,668N.A.7,6286,0005,3505,252Petrobras100%Petrobras100%Petrobras66%、Shell20%、Galp14%Petrobras45%、BG30%、Repsol YPF25%Petrobras65%、BG25%、Partex10%Petrobras65%、BG25%、Galp10%Petrobras80%、Galp20%Petrobras80%、Galp20%ブラジルエスピリトサント盆地エスピリトサント盆地岩塩分布エリアリオデジャネイロリオデジャネイロCaxareu鉱区Caxareu鉱区CaxareuCaxareuPirambu鉱区Pirambu鉱区PirambuPirambuサンパウロサンパウロBM-S-10鉱区BM-S-10鉱区ParatiParatiBM-S-11鉱区BM-S-11鉱区TupiTupiカンポス盆地カンポス盆地BM-S-8鉱区BM-S-8鉱区Bem-te-Vi Bem-te-Vi BM-S-21鉱区BM-S-21鉱区CarambaCarambaサントス盆地サントス盆地BM-S-24鉱区BM-S-24鉱区Jupiter Jupiter CariocaCariocaBM-S-9鉱区BM-S-9鉱区GuaraGuara100Km出所:各種資料よりJOGMEC作成図プレソルトで発見のあった主要鉱区図の評価には少なくともあと3カ月はかかり、この時点での発表は時期尚早とし、リマ長官も米国のエネルギー雑誌World Oilに掲載された推定値を述べただけであるとした。このCarioca油田については、Petrobrasより2007年9月5日に1-SPS-50号井でAPI比重27度の原油2,900b/dとガス5万7,000m3/dの出油・ガスに成功したとの発表があった。現在、2坑めを掘削中で、2008年2月にパートナーのRepsol YPFが発表したところによれば、埋蔵量は少なくとも5億bblとのことである。 さらに、6月12日にPetrobrasは、Carioca油田が発見されたBM-S-9鉱区の水深2,141mの海域で1-SPS-55号井を掘削し、軽質(API 28度)のGuara油田を発見したと発表した。 Carioca油田をはじめとしてTupi油・ガス田以外の油・ガス田については、さらに評価を待つ必要があるが、これらプレソルトでの発見により、ブラジルはこれまでの石油自給を達成しつつある産油国から、世界市場へ石油を供給できる中東諸国やベネズエラと並ぶような石油輸出国へと、その位置づけを変えていくことになると考えられる。2. Tupi油・ガス田等の生産見通しと問題点 2008年5月5日にPetrobrasのGabrielli社長が、予定よりも1年早く2009年第1四半期にTupi油・ガス田の生産を開始する計画を明らかにした。当初の生産量は2万b/dで、2010年末までに生産量を10万b/dに引き上げるとしている。また、6月11日には、Petrobras幹部が、同油・ガス田の生産量を2015年には少なくとも50万b/d、2020年には100万b/dに引き上げる計画であることを明らかにした。そして、9月ごろには、さらに詳しい生産見通しを発表するとした。 Tupi油・ガス田の生産見通しについては、2月初めにパートナーのBGが、早ければ2009年に2万b/dで生産を開始し、生産量は2011年に5万~10万b/d、2012~2013年に20万b/d、2015年に100万b/dのピークに達するとしていた。また、もう1社のパートナーであるGalp Energiaも3月初めに、まだいくつかのシナリオを検討中ではあるが、2009年にテスト生産10万b/dを開始し、2014~2015年までに生産量を50万~110万b/dに引き上げるとしていた。 Tupi油・ガス田は大水深・大深度に位置しており、また、ブラジルでは初のプレソルトの生産となるが、Gabrielli社長は、その開発について技術面では問題はないことを強調した。 そして、Gabrielli社長は、Tupi油・ガス田等のプレソルトの開発を進めるため、2007年8月に策定した「ビジネスプラン2008~2012」の投資額1,124億ドルを6月に見直すとした。また、Petrobrasは、プレソルトの開発を進めるために今後4年間、これまでよりも頻繁に社債を発行す2008.7 Vol.42 No.472驍アとを検討していることを明らかにした。さらに、Petrobrasは、Tupi油・ガス田等の開発のため3年以内に技術者や地質専門家1万4,000人を増員する計画であると発表した。これによりPetrobrasの従業員は23%増の約7万4,000人となり、Chevronの従業員数を上回ることになる。 なお、Gabrielli社長は、現在評価中のCarioca油田とJupiterガス・コンデンセート田のうち、Carioca油田について4~5年以内に生産を開始する計画であるとしていたが、5月9日にルーラ大統領がCarioca油田については早期開発を実施し2010年に生産を開始する意向を表明した。 プレソルト、サブソルトの開発、生産は既にカザフスタンのテンギス油田等で行われており、硫化水素の除去や圧力のコントロール等難しい点はあるものの、技術面では確立している。しかし、水深、掘削深度が深く、世界的に石油技術者やリグ不足が著しいという状況もある。これらの事情から、Gabrielli社長やルーラ大統領が発表した生産開始時期を疑問視する向きもある。3. 石油法税制の改定とライセンスラウンドへの影響 政府は、Tupi油・ガス田の埋蔵量に関する発表後、国家の利益を保護する必要があるとして、第9次ライセンスラウンドの対象鉱区312鉱区のうち、同油・ガス田周辺鉱区等の41鉱区を除外し入札を行った。政府は、また、Tupi油・ガス田による埋蔵量の増加で国内の石油産業のあり方そのものを再検討し、エネルギー政策を変更しなければならないと判断し、石油法税制の改定を検討し始めた。 2008年1月には、ルーラ大統領が、2007年5月に汚職疑惑で辞任したSilas Rondeauエネルギー鉱山大臣の後任にEdison Lobao上院議員を任命した(Lobao大臣就任までは、National Agency of ElectricpowerのNelson Hubner局長が臨時大臣を務めていた)。新大臣の就任により本格的に法税制の検討が開始された模様である。4月に入り、Lobao大臣は、現在の法律は油価が安い時期につくられたもので、油価が高騰しているいま、プレソルトで発見があったか否かにかかわりなく、ブラジル政府は現在の法制を見直すべきだと発言した。 現在のところ、ブラジルは2008年に地方選挙、2010年に大統領選挙を控えており、ルーラ政権の2期目が終了する2010年12月より前に法的な改定を行うことは難しく、政府は議会の承認を必要としない石油生産に関する増税のみを実施する可能性が高いと見られている。特に注目されているのが、特別参加税(Special Participation Tax)をプレソルトの既存および新規の鉱区に課すという方法である。 ブラジルではロイヤルティー10%に加え、生産量の多い油田に対して、鉱区の収益性、位置、作業年数、生産水準を考慮して特別参加税が課税されている。現在は生産量が8万b/d以上の場合に、特別参加税10~40%が課されているが、この特別参加税の税率を50~60%に引き上げ、プレソルトの鉱区に課税することが検討されているという。 ライセンスラウンドについては、5月中旬に、Lobaoエネルギー鉱山大臣が、石油会社は探鉱・開発を行うべき鉱区を多く保有しており、新たに鉱区を取得する前にこれらの鉱区での作業を開始すべきだと述べた。そして、2006年11月に中断され2008年上半期に再開予定とされていた第8次ライセンスラウンドが近いうちに実施されることはなく、第10次ライセンスラウンドも2009年末以降に実施されるであろうと語った。 また、今後のライセンスラウンドにプレソルトの鉱区が含まれるか否かについては、法税制改定の進展次第では、2009年末か2010年以降に、現在の契約条件で特別参加税の税率のみを引き上げ、限られた数のプレソルトの鉱区が公開される可能性があるとの見方もある。 なお、法制が改定された場合、新しい条件が適用されるのは将来のプレソルトさかのぼっに関する契約のみで、既存の契約に遡て適用することはなく、その上、プレソルト以外については従来どおりの契約になると見られている。しかし、新契約条件では、石油会社はマイノリティーシェアでの参加やサービス提供者として参入しなくてはならなくなる可能性もある。4.おわりに ブラジルでは、2008年1月末にHalliburtonのコンテナで輸送中のラップトップパソコン4台とメモリーチップが盗まれるという事件が発生した。この中には、Tupi油・ガス田等サントス盆地のデータが含まれていたことから、ルーラ大統領が懸念を表明、産業スパイ事件として捜査が行われたが、一般的な盗難事件であることが判明した。 この盗難事件やANPのリマ長官によるCarioca油田に関する先走った発言から、プレソルトの発見により、現在、ブラジルが通常とは異なった混乱状態にあるのではないかとの見方をする向きもある。 いずれにせよ、プレソルトの発見を契機に、政府が法税制やライセンスラウンドについて一方的に条件を厳しくするようなことがあれば、外資が遠のき、探鉱・開発が遅れ、将来の生産に影響を与えることが懸念され、プレソルトの開発状況とともに今後の政策の動向が注目される。(舩木 弥和子)73石油・天然ガスレビュー |
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