カザフスタン:原油輸出税を6月1日から導入
| レポートID | 1006336 |
|---|---|
| 作成日 | 2008-07-18 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | 探鉱開発 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 古幡 哲也 |
| 年度 | 2008 |
| Vol | 42 |
| No | 4 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | カザフスタン:原油輸出税を6月1日から導入・原油輸出税は2009年1月からの導入が示唆されていたが、これが前倒しされることとなり、マシモフ首相は4月8日、原油輸出税を導入するための法律にサイン、6月1日に発効した。・当初の税率は、原油輸出1トンあたり109.90ドル(およそ15ドル/バレル)。その目的は国内製油所への原油供給を増加させ、併せて国内市場への石油製品供給量を増加させることにあるといわれる。ただし、そのもくろみが実現するかどうかは不透明である。・カシャガン油田など国際コンソーシアムの事業は、石油契約に基づき原油輸出税が免除されると見られていたが、2009年からは、契約条件にかかわらずすべてのプロジェクトに原油輸出税を課したいとの財務大臣発言があり、雲行きが怪しくなってきている。・国営石油会社Kazmunaigaz(カズムナイガス)傘下のKazmunaigaz Exploration and Production(KMG E&P)は業績上も大きな影響を受ける見通しであり、反発している。KMG E&Pは資本投資、生産量、埋蔵量、買収計画などの抜本的見直しに入っている。・カザフスタンの原油輸出税の負担は、ロシアに比べれば小さく、カザフスタンの地質的ポテンシャルを考慮すれば、すぐに外国投資がストップするわけではないだろう。しかし、現在政府が検討中とされる他の税制・石油法制(2009年1月施行見込み)の仕上がり方によっては、カザフスタンの石油産業への投資の阻害要因となり得る。1. 原油輸出税の導入前倒しとその対象事業について カザフスタンでは2008年2月、石油・ガス産業からの税収を非エネルギー産業の育成や加工製品の輸出促進等の政策に充てることを目的として、ナザルバエフ大統領、マシモフ首相が政府によるエネルギー資源管理の強化や石油・ガス産業に対する税制の抜本的見直しの方針を打ち出した。 そのなかでは新たに原油輸出税(Export Duty)を2009年1月から導入する方針が示唆されていたのだが、その導入が早まり、必要な改正法案にマシモフ首相が2008年4月8日にサイン、6月1日に発効している。 その税率、“原油1トンあたり109.90ドル/トン(およそ15ドル/バレル)”は、2008年第1四半期の平均原油価格(97.53ドル/バレル)に基づいて計算されており、これによりカザフスタンの国庫は10億ドルの増収が見込めるともいわれる(算定方式については本稿末の参考資料参照)。 原油輸出税を導入する目的は、カザフスタン国内の石油製品価格の上昇を抑えることにあるとされている。すなわち「原油輸出への課税⇒輸出した場合と国内製油所向けに販売した場合のネットバック価格*1の接近⇒国内製油所向けの原油販売インセンティブ増⇒国内製油所での石油製品精製量増大⇒国内市場への石油製品供給量増加⇒国内製品販売価格下落」といったシナリオが期待されているのである。 この原油輸出税の前倒し施行に先駆けて、マシモフ首相からの指示に基づき、2008年5月19日には石油製品の輸出を禁止する規制が施行された*2。加えて、ロシアとカザフスタンのエネルギー当局者が、今後、2020年までエネルギー・燃料の需給バランスを適正に保つための共同プログラムを検討することになったり、政府当局が石油製品の価格操作の疑いで捜査を始めたりしているとの報道もある。カザフスタンでも石油製品の価格高騰が喫緊の課題になっているのは間違いないだろう。 次に、原油輸出税の対象だが、国際コンソーシアムが開発・生産に取り組むテンギス油田、カルチャガナック油田、カシャガン油田(図1)といったプロジェクトは、石油契約で税制の安定*1:石油製品の加重平均販売価格から、運賃、保険料、精製コスト、マージンを控除し、逆算して得られる原油FOB価格。*2:この措置は2008年6月1日から9月1日までの限定的なものであり、その目的は穀物の収穫に必要な農耕用機械向け燃料価格を抑えることにあるとされる。67石油・天然ガスレビューOLGOGRADカルチャガナック ガス田RUSSIARUSSIANORTH CASPIANNORTH CASPIANカシャガン油田NORTHNORTHCAUCASUSCAUCASUSカラジャンバス油田GEORGIAGEORGIATURKEYTURKEYARMENIAARMENIACASPIANCASPIANSEASEAACGKURAKURAAZERBAIJANAZERBAIJANShah DenizChelekenSOUTH CASPIANSOUTH CASPIANTURGAYTURGAYKenkiyakテンギス油田KAZAKHSTANKAZAKHSTANTengizNORTH USTYURTNORTH USTYURTKumkolARAL SEAARAL SEAウゼン油田カズゲルムナイALMATYTURKMENISTANTURKMENISTANKotur TepeUZBEKISTANUZBEKISTANKYRGYZSTANKYRGYZSTANASHGABATShatlykYoloten GunortaAMU DARYAAMU DARYADauletabadFERGANAFERGANATAJIKISTANTAJIKISTANAmu DaryaAmu Darya出所:JOGMEC作成図1カスピ海周辺の主要油・ガス田性が規定されていることから原油輸出税が適用されることはないと見込まれており、実際に政府が5月18日に発表した原油輸出税対象企業のリスト(表1)にも、国際コンソーシアムプロジェクトは含まれていなかった。しかし、カザフスタンのジャミシェフ財務大臣は、議会で、これらの国際コンソーシアムにも2009年以降は原油輸出税を支払わせたい、と発言したと報じられており、雲行きが怪しくなってきている。ただし、一時期、6月からの輸出が税関に差し押さえられる恐れがある、と報じられたカルチャガナックからは、いまのところ、輸出が継続している模様である。 原油輸出税がカルチャガナックなどの既存事業にも適用されるとなると、その採算性に悪影響を与える可能性がある*3。また、中長期的にもカザフスタンでの新たな石油・ガス開発投資を阻害する要因となることが心配される。カザフスタンには膨大な地質的ポテンシャルがあり、大規模埋蔵量も期待される残り少ないエリアであるため、潜在的投資家が急にいなくなることはないだろうが、2008年3月から抜本的見直しが行われている税制・石油関係法制の全体像次第では、投資意欲が格段に落ち込むことが懸念される。 なお、原油輸出税の導入に伴い、2004年の税制改正により導入され、現在徴収されているExport Rent Tax*4との二重課税を避けるための緩和措置がとられる、あるいは現在検討中の税制改正においては、法人税やExcess Profit Taxを緩和する、あるいは税制そのものを簡素化する方針であるとの情報もあり、引き続きフォローアップが必要である。いずれにしても、石油・ガス開発投資の促進のためには早急に明確な制度の構築が望まれるところである。2. 原油輸出税の影響を大きく受けるKMG E&P KMG E&Pは国営石油会社であるKazmunaigazの一翼でありながら、原油輸出税の悪影響を最も受けるといわれている。KMG E&Pが50%株式を保有している一部のプロジェクト(カズゲルムナイ、カラジャンバス)は税制の安定性を定めた条項が存在していることから原油輸出税の対象にはならないとのことだが、ウゼ1. Kazmunaigaz Exploration Production2. Kazakhturkmunai3. Kazakhoil Aktobe4. Petrokazakhstan Kumkol Resources5. Turgai Petroleum6. Oil Co. KOR7. CNPC-Aidan Muna8. South Oil9. Zhaikmunai10. Fial出所:Nefte Compass表1カザフスタン政府が5月18日に発表した原油輸出税の対象となる事業会社11. Tasbulat Oil Corp.12. Khazar Munai13. Karakudukmunai14. Zhalgiztobemunai15. Emir Oil16. Firma Fiztech17. Lancaster Petroleum18. Caspi Neft TME19. Sagiz Petroleum Co.20. Aral Petroleum21. Kazneftekhim Kopa22. Sazankurak23. Alties Petroleum24. Atyraumunai25. Svetland Oil26. Arnaoil27. Gyural28. Caspi Neft29. Pricaspian Petroleum Co.30. Adai Petroleum Co.31. NBK32. Tobearal Oil33. JV Matin34. Potential Oil35. Ekogeoneftegas36. Embavedoil37. Samek International38. Kozhan*3:一部には、2004年以降の厳しい税制・石油法制が適用されている事業の場合、原油輸出税の影響は極めて限定的になるとの分析もある。*4:Export Rent TaxはPSAでは免税。JV契約や利権契約が課税対象となる。原油価格に応じた税率を原油の輸出価額に乗じて算出される。ただし、税率の上限は原油価格40ドル/バレル以上の場合の33%にすぎず、現在の高油価に応じた税収を確保できない構造になっている。2008.7 Vol.42 No.468哿N月20085.2020077.26200710.2820082.06200610.0220071.17(注)1KZT=約0.89円出所:KMG E&P社ホームページより20074.23カザフスタン・テンゲ (KZT)24,99023,61122,23320,85519,47718,09916,72015,34213,96412,586Rebased closing price2007.92007.122008.32008.6年月出所:KMG E&P社ホームページより米ドル32.53027.52522.520Rebased closing price図2ロンドン株式市場におけるKMG E&P株価の推移図3カザフスタン株式市場におけるKMG E&P株価の推移ン油田等同社の主力油田は原油輸出税の対象になる。このため、KMG E&Pは原油輸出税の導入には早くから懸念を表明していた。また、原油輸出税の導入が6月にずれ込んだのは、KMG E&Pからの陳情によるものであって、KMGは5月中にできるだけ余剰在庫の輸出に努めたとも言われている。 次に財務面のインパクトについてだが、原油輸出税は8億ドルのコスト増になるとKMG E&Pは発表しており、別の試算でも売り上げの1/4程度に相当すると見積もられている。KMG E&Pの2007年の売り上げは約40億ドル、純利益は13億ドルであり、8億~10億ドルのコスト増のインパクトは決して小さくない。KMGの株式はカザフスタンの年金基金も大量に購入していると言われており、株価が下落すれば国民にとっても大きな損失となることから、親会社であるKMGやKMG株を多く保有している国の資産管理会社Samrukは政府に相当なロビー活動を行ったのだが、結局、政府はKMGを免税にしなかった。 ただ、直近のKMG E&P株価を見ると、このところ皮肉にも好調であり、必ずしも株式市場が原油輸出税の導入を悲観的に評価しているわけではないようだ(図2、図3)。3. ロシアの原油輸出税との比較 お隣のロシアでは、原油生産量の減少が徐々に顕著になってきていると言われている。2008年5月7日に大統領を退任したプーチン氏は、翌日の首相就任時の所信表明演説で、石油・ガス開発を促進するために石油・ガスの開発に関連する税制を緩和する方針を明らかにした。その後、ヤマル半島やティマンペチョラ地域、また海上での油田開発にかかる資源産出税課税を緩める方針も発表されている。 また、ロシアの原油輸出税は、現在は1トンあたり340.1ドル(約46ドル/バレル)、また6月からは油価の上昇を反映して398.15ドル(約54ドル/バレル)にも達すると見られている。資源産出税などの減税だけでロシアの原油生産量を回復するのは不十分であるとの観測から、原油輸出税を引き下げる可能性もささやかれ始めており、カザフスタンが原油輸出税を新たに導入するの年月2008.52008.42008.32008.22008.12007.122007.112007.102007.92007.82007.72007.62007.52007.42007.32007.22007.12006.122006.112006.102006.92006.82006.72006.62006.510.210.09.89.69.49.29.0(単位:百万b/d)出所:ロシア産業エネルギー省図5ロシアの原油生産量198819891990199119921993199419951996199719981999200020012002200320042005図4ロシアの石油生産量(原油のほか、NGL等を含む)20062007年1412108642(単位:百万b/d)0198619851987出所:BP統計69石油・天然ガスレビューニは対照的である。この原油輸出税は、ロシア企業にも外国企業と同様に等しく課される負担であることから、例えばLukoilのアレクペーロフ社長などもその弊害についてたびたび言及している。 ロシアと比較して、いまのところカザフスタンはカシャガンプロジェクトの生産開始も控えていて、あまり生産量減少を心配しなくてもよく、逆に言えば、そのような実害が発生しなければ、その政策を一気に転換させることは難しいのかもしれない、とロシアの動きをウォッチしていると考えさせられる。4. 国内の製品供給量の増加につながるか 表2を見ると、カザフスタン国内のガソリンの小売価格は、他のCIS、バルト海諸国のそれと比較して、決して高いわけではない。ただ、確かに昨年と比べて上昇していることは間違いなく、別の情報源でもカザフスタンの石油製品価格は2005年、2006年、2007年に、それぞれ10%、18%、14%上昇しているとのことである。 また、2007年にカザフスタンで実際に精製された原油は約8,800万バレル(日量およそ24万バレル)であり、これはカザフスタンの主力製油所(アティラウ、パブロダール、シムケント)の精製能力のおよそ65%にすぎないと分析されている。別の情報によっても、2006年は53%、2007年は60%の稼働率であるとの分析があり、国内製油所には余剰表2CIS・バルト海諸国のガソリン価格(米ドル/1リットル)Early 2007CountryレギュラーAzerbaijanArmeniaBelarusGeorgia KazakhstanKyrgyzstanLatviaLithuaniaMoldovaRussiaTajikistanTurkmenistanUkraineUzbekistanEstonia出所:Turan Energy0.451.120.860.760.680.7No sale1.140.870.920.70.0170.840.48No saleハイオク0.53 No change0.98 0.85 0.76 0.77 1.03 1.30 0.91 0.96 1.06 0.02 0.91 0.55 1.0 Early 2008レギュラーハイオク0.651.180.991.040.760.71No sale1.51.170.840.830.130.970.620.71No change1.131.120.870.81.381.61.230.91.120.161.010.76~1.16No sale1.4精製能力があると考えられ、もし国内製油所に原油が供給されれば、製品生産量が増加する余地は十分にあるものと思われる。 ただし、KMG関係筋からは、「カザフスタン国内には原油の売り先はないので、結局輸出しなければならない。そのため、原油輸出税はコストが増えるという財務上の問題にしかならない」との声もある。これを裏づけるように、15ドル/バレル程度の原油輸出税では負担が軽すぎて、カザフスタンの国内向け原油販売価格(30ドル程度?)に到底近づくことはできず、原油を輸出するほうがまだ高いネットバックが得られるとの分析もある。また、ロシアでは国際市場での原油価格の騰勢があまりに急で、原油輸出税額の調整(2カ月ごと)が追いつかないため、やはり輸出したほうが経済的に有利になっているような事例もあることから、原油輸出税の導入によってカザフスタン国内の石油製品供給量の増加や国内製品価格の下落に実際につながるかどうかは不透明である。(古幡 哲也)【参考資料:カザフスタンの原油輸出税 その課税額算出方法】原油の平均価格:P(米ドル/バレル)原油輸出税 算出方法19 < P ≦ 6060 < P ≦ 7575 < P ≦ 9090 < P ≦ 105105 < P ≦ 120120 < PPと19ドルの差の5%2.05ドル+(Pと60ドルの差の22.83%)5.48ドル+(Pと75ドルの差の38.21%)11.21ドル+(Pと90ドルの差の48.48%)18.48ドル+(Pと105ドルの差の55.82%)26.85ドル+(Pと120ドルの差の61.34%)出所:現地新聞、報道より2008.7 Vol.42 No.470 |
| 地域1 | 旧ソ連 |
| 国1 | カザフスタン |
| 地域2 | |
| 国2 | |
| 地域3 | |
| 国3 | |
| 地域4 | |
| 国4 | |
| 地域5 | |
| 国5 | |
| 地域6 | |
| 国6 | |
| 地域7 | |
| 国7 | |
| 地域8 | |
| 国8 | |
| 地域9 | |
| 国9 | |
| 地域10 | |
| 国10 | 国・地域 | 旧ソ連,カザフスタン |
Global Disclaimer(免責事項)
このウェブサイトに掲載されている情報は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性、完全性、又は適時性を保証するものではありません。また、本資料の内容は、参考資料として提供されるものであり、法的、専門的、又は投資に関する助言を構成するものではありません。したがって、本資料の利用により生じた損失又は損害について、機構は一切の責任を負いません。本資料の内容は、第三者に対する権利又はライセンスの付与を意味するものではありません。本資料に記載された見解や意見は、著者の個人的な見解であり、必ずしも機構の公式見解、政策、決定を反映するものではありません。本資料には第三者の著作物が含まれる場合があります。機構又は各著作権者の事前の書面による承諾なしに、本資料の全部又は一部を無断で複製、頒付、又は引用することは固く禁じられています。私的利用、教育利用、引用など、日本国の著作権法に基づき利用できる範囲を超えて本資料を利用する場合は、機構又は関連する著作権者からの事前の承諾が必要です。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
PDFダウンロード826.5KB
本レポートはPDFファイルでのご提供となります。
上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。
アンケートの送信
送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。


