2008年ロシア・ウクライナガス紛争雑感 ―両国を訪問して―
| レポートID | 1006338 |
|---|---|
| 作成日 | 2008-07-18 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | 基礎情報 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 山家 公雄 |
| 年度 | 2008 |
| Vol | 42 |
| No | 4 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | エッセー日本政策投資銀行調査部 審議役山家 公雄2008年ロシア・ウクライナガス紛争雑感ー 両国を訪問して ーはじめに 筆者は、2008年3月10~18日の日程で、(社)日本電気協会主催のロシア・ウクライナエネルギー調査に参加した。偶然にも3月12~13日は両国間のガス供給をめぐる交渉(ガス紛争)時期と重なり、騒然とした雰囲気を実感することができた。直前の3月3日、4日に、ガスプロムは未払いを理由に最大50%の供給削減を実施していた。 参加者は、電力会社の若手幹部が主でそれにマスコミも加わった。主な関心は、今後日本への重要なエネルギー資源供給国となることが予想されるロシアをどう理解するか、供給元として信頼できるのかという点である。サハリン問題やウクライナ供給削減問題等、報道を通じての印象は必ずしもよくない。ウクライナが訪問先に加わったのは、エネルギー資源のロシア依存度が高い隣国として、ロシアをどう見ているか、チェルノブイリの悲劇を経て原子力発電の現状はどうなっているか、に関心があったからである。 事前の期待はロシアであり、ガスプロムやロスアトムへの訪問が目玉であった。ウクライナは、当初はロシア情報の補完との位置づけだったと思う。しかし、結果的にウクライナ側の対応は非常に積極的で、政府を挙げて対応してくれたとの感想を持った。ロシア資源に依存する隣国としての立場と戦略を理解するとともに、日本に対する強い期待を実感できた。本小論では、3月のガス紛争を主にウクライナの立場から眺めるとともに、原子力を含めた同国のエネルギー安全保障戦略についてまとめてみた。 3月11日にウクライナ入りした後、12日に日本国大使館およびウクライナ燃料エネルギー省(エネルゴアトム社、オールウクライナエネルギー社同席)、出所:日本政策投資銀行写1キエフ・プレミアパレスホテル前55石油・天然ガスレビュー13日はウクライナ国営ガス会社ナフトガス、オールウクライナエネルギー社を訪問した。以下は、そのとき聞いた話やマスコミ報道を基にまとめたものである。 なお、キエフ市内の交通量は多く、その経済成長ぶりをうかがうことができた。市内一番店といわれているプレミアパレスホテルに宿泊したが、エントランス沿いの道路は路上駐車が目立った。車の普及にインフラが追いついていないのである(写1)。1. 天然ガスをめぐる考えと期待 ウクライナのエネルギー関係者訪問が3月11日、12日、ロシア関係者訪問が14日、15日、17日であった。ウクライナとロシアがモスクワでガス交渉を実施したのが12日、13日である。正に国家紛争の最中ともいえるタイミングであった。 今回のガス紛争の原因は、ガス価格(180ドル/1,000m3)をめぐる認識の違いにある。ロシアは、①主な供給元である中央アジアが厳冬により域内消費が増えロシア産(315ドル/1,000m3)で補充した、②その価格差分が余分にかかった、と主張する。ウクライナ側は、これは供給国側の問題であり幹事国ともいえるロシアが調整すべき問題である、と考える。ロシア側が供給国・仲介国としての義務を果たしていないように見えるわけである。Gッセー(2)今次ガス交渉の経緯 ウクライナの未払い問題はロシアの供給削減予告を受けて、2月12日にプーチン、ユーシェンコの両大統領が電話会談を行い、①ウクライナは中央アジア価格で未払い分の一部を支払う、②既存の仲介会社2社をそれぞれガスプロムとナフトガスの折半会社に再編する、ということで合意した。しかし、ウクライナのティモシェンコ首相は、①ガスプロムのウクライナ国内における権限が強まる(25%から50%へシェアが高まる)、②仲介会社についてその数が減っておらず整理が不十分、として合意案へのサインを拒否した。 こうして、3月3日の供給削減に至ることになる。3日には25%、4日には50%削減が実行に移された。なお、3月2日はメドベージェフ氏のロシア大統領就任が決まった日であり、その翌日の実行により、新体制になっても基本路線は変わらないというメッセージを送ったもの、との解説も見られた。 3月12日の朝、ナフトガスに向かうバスの中で、ロシア大学教授で通訳役のソレンツォフ氏が大声で解説した。「ロシアは、昨日、中央アジア産天然ガスの価格に関して、西欧諸国向けと同水準への引き上げ要求を認めた。これでウクライナのロシアとの交渉は非常に厳しくなる」と。事実、交渉前日の11日に、ロシアは、中央アジア3カ国の国営石油ガス企業の総裁をモスクワに呼び、合意を表明していた。翌日、ガスプロムのミレル社長はプーチン大統領に報告している。 両国の交渉は、12日と13日の2日間にわたり行われ、次のような合意をみる。すなわち、①2008年の価格は中央アジア産価格である180ドル/1,000m3、②ただし1~2月供給分のうち一部(15億m3)はロシア産価格2008.7 Vol.42 No.456出所:(社)日本電気協会写2ナフトガス会談(1) ガス契約をめぐる二つの課題:長期契約締結と仲介会社整理 また、現状のガス供給システムの問題点は二つある、と見ている。一つは長期契約ではないことから経済や生活の見通しが立て難く、条件をめぐって大騒ぎとなることが多い。もう一つは、仲介会社が2社存在し不透明な取引が横行しており、これがウクライナ側に多くの不利益をもたらしていることである。 国境で中央アジア産およびロシア産ガスを販売するのはロスウクルエネルゴ社(RUE)で、ガスプロムとウクライナのビジネスマン2人との折半出資会社である。本社はスイスにある。RUEは、中央アジア3カ国(カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン)およびロシア産のガスを、ガスプロムのパイプラインを経由して調達し、これの大半をウクライナへ、一部を欧州へ販売する。基本的に欧州向けはロシア産を、ウクライナ向けは中央アジア産を充てる。RUEに関しては、調達ガスと販売先の割合により、またガスプロムのパイプライン網のどこを通過するかにより、収益構造に大きな影響を及ぼす。例えば、中央アジア産ガスを西欧諸国へ販売すれば、大きな利益を上げることになる。常にウクラ食されていイナの得べかりし利益が蚕さんしょくるのではないかとの疑念がつきまとう。 また、国境での買い手はウクルガスエネルゴ社(UGE)で、RUEとナフトガス社の折半である。UGEは、購入したガスについて、大口産業顧客向けは直接販売し一般消費者向けはナフトガスに卸す。産業界は信頼できる顧客であり、規模の利益により取引コストも低く利益の見込める顧客である。一方、一般消費者向けは支払い能力に疑問があったり、政策的に低い料金で抑えられたりしており、販売先としてのうまみに欠ける。もうけの薄い消費者に集中せざるを得ないナフトガスは次第に経営が悪化していく。同社の経営悪化は、税収やパイプライン等のインフラ整備に悪影響を及ぼすことになる。政治資金の流れに影響を及ぼすことも推測される。ガスプロムはUGE株を実質1/4所有しており、この権限をロシア国益として使われる可能性について懸念がぬぐいきれない。 こうしたなかで、ウクライナ側は、二つの仲介会社が存在する構造は、複雑で不透明であり、またガスプロムのウクライナ国内への直接販売を許容するものとしてセキュリティー上の問題む。ガスプロムが販売を拒否するを孕ような場合が生じたら大きな問題となる、と強調する(写2)。はらNセスについては、今後はナフトガスが国境で全量を受け取り、その上で必要量をガスプロム(ないしその子会社)に卸す方式となり、「RUEからUGEが受け取っている現状とは根本的に方式が変わる」と強調している。 ウクライナの懸念材料は、ユーシェンコ大統領の感想に凝縮されている。最大の懸念は2009年以降のガス価格である。交渉前日の関係国合意により2009年以降ロシアは中央アジア産ガスを欧州価格並みで購入するとしており、中央アジア産価格にこだわった結果は2009年以降の価格交渉に不利な影響を及ぼしかねない。 また、仲介会社の整理に関しては、UGEの廃止は決まったもののRUEについてはあいまいな決着となった。その後、ガスプロムは「既に国際契約に基づいてRUEに長期販売契約を締結しており、これを反にすることは不可能」と主張し、結局ナフトガスも2009年分についてRUEと購入に関し合意する。一方、ティモシェンコ首相はRUEの廃止についてあきらめてはいないようである。地元マスコミで、RUEの株取得を検討している旧知の富豪に対して「先のない会社への投資は危険」とアドバイスした、との報道があった。 ガスプロムのウクライナ市場への参入に関しても見方が分かれる。大統領間合意では、仲介会社の再編によって、ガスプロムの国内販売会社におけるシェアは1/2に上昇するが、ユーシェンコ大統領は取扱量に制約を設けた(年間75億m3)としている。一方、今次合意では、ガスプロムに市場シェアを明確に付与していないものの「少なくとも75億m3」との表現は、増加余地を残しているように読める。その後、ウクライナ側は「少なくとも」の表現削除を要請している。また、3月末にはガスプロムのウご故ほ2008年ロシア・ウクライナガス紛争雑感 -両国を訪問して-(315ドル/1,000m3)、③2008年の供給量は550億m3、④ナフトガスは国境でガスプロムないしRUEから直接購入(この結果、UGEの仲介は不要になる)、⑤ガスプロムはその子会社を通じてウクライナ国内の産業に少なくとも75億m3のガスを販売する、である。 われわれは、この交渉結果を、モスクワのホテルに置いてあった14日および16日付のモスクワ・タイムスで知ることになる。14日はキエフからモスクワへの移動日であり、またモスクワではガスプロム要人と会談できなかった。われわれは、交渉の狙いについてはウクライナで既に把握できていたが、関係者プレスリリースを基にした新聞解説では、どちらが、あるいは誰が勝利したかの判断は難しく、メンバー間で感想を述べ合った。ウクライナが得点したようでもあり失うものが大きいようでもあり、はっきりとしなかった。モスクワ・タイムスも歯切れが悪かった。(3) 合意事項の解釈とティモシェンコ首相株上昇 帰国後のフォローも含めて整理すると、ウクライナは、ロシア産ガス購入の事実を認め未払い問題にケリをつける一方で、2008年価格は基本的に中央アジア産価格を勝ち取る。また、懸案であった仲介会社の整理も進展した。第2の仲介会社であるUGEは明確に消滅する。第1の仲介会社であるRUEは整理される可能性を残した。この結果、ガスプロムのウクライナ国内での権限拡大に歯止めがかけられた。 2月12日の両大統領間の合意では、ガスプロムの国内アクセス(産業向け販売)は1/4から1/2へ拡大するが、今次交渉により実績並みの数量(1/4)に抑え込んだ。今次交渉は、ウクライナ側から見ると、「大統領合意に基57石油・天然ガスレビューづいて」具体案をネゴするという建前の下で、実際はティモシェンコ首相主導による仕切り直しであったと言える。交渉は、表向きはガスプロムとナフトガスであるが、両国政府間の交渉でもあり、ウクライナ側はティモシェンコ首相が責任者であった。 3月16日付モスクワ・タイムスや17日付デイリー・キエフには、ティモシェンコ首相がユーシェンコ大統領に交渉結果を説明する写真が掲載されていた(写3)。出所:モスクワ・タイムス写3ティモシェンコ首相がユーシェンコ大統領に交渉結果を説明 報道では、ユーシェンコ氏は、了解しながらも次のような懸念を表したとしている。それによれば①2009年度以降の価格大幅引き上げの可能性、②ガスプロムは「少なくとも」75億m3分について産業にアクセスできるが、これは歯止めがなくなることにつながること、等である。 こうした懸念に対して、ティモシェンコ女史は、各種報道によると次のような反論を行っている。2009年以降の交渉では、ウクライナは一方的に弱い立場ではない。今回は、ウクライナ国内のパイプライン使用タリフ(関税)やガス貯蔵料金について、交渉材料とせずに温存している。また、いざというときは黒海のセバストポリ港の使用料を交渉材料に使うこともできる。ガスプロムの国内アGッセークライナ国内販売会社としてガスプロム・ソビト・ウクライナル社が登録された。 マスコミを見る限りでは、ウクライナ国内では今次交渉はおおむね好意的に受け止められており、ティモシェンコ首相の評価は上がっている。また、時の人として一躍注目を集めてもいる。WSJやAPでも特集を組み「大国ロシアに立ち向かう鉄の女、ウクライナのサッチャー」と評価している。2009年の交渉次第ではその評価が下がるリスクはあるが、2009年の大統領選に向けてユーシェンコ氏を一歩リードした感がある。(4) 2009年以降への備えとしてのLNG計画 ウクライナ側は、交渉前から近い将来の欧州並みの価格引き上げを覚悟していたようである。訪問した先々で、価格引き上げやむなしのニュアンスがあり、またLNG導入への期待を口にしていた。通常の天然ガスはガスプロムのパイプライン経由に頼る以外にない。天然ガスのロシア依存度を引き下げるためには、LNG導入しかない。 一般にLNGはパイプライン経由よりも高コストになるが、西欧向け販売価格と同水準になることを前提とすると、LNGの方がコスト面で優位性が生じる可能性があると見ていた。内陸国家であるウクライナでは、LNG基地の立地地点があるのか疑問が生じたが、黒海沿岸やドニエプル川沿岸の可能性があるとのことであった。黒海はボスポラス海峡を通過して地中海に抜けることができる。また、欧州は河川物流(水運)が盛んで、大河と運河を渡って西欧諸国の沿岸に到達することも可能である(写4)。(5)ロシアにおけるガス取引の評価 ロシアでは、ガスプロムとの会談はかなわなかったが、ロシア外務省を訪問し日本およびエネルギー担当の関係者と面談することができた。ウクライナとのガス交渉に関しては、次のようなコメントがあった。「長期契約はわれわれも望んでいる。欧州諸国とのガスプロムの契約は、基本的に原油価格連動の長期契約である。ただし旧ソ連諸国との契約は従来のスキームが残っており、毎年タフな交渉となっている。速やかに長期契約に切り替えることはロシアにとっても、経営面や長期見通しを立てやすいという点で重要である。不透明な仲介事業者の存在については、むしろウクライナ側の問題が大きいのではないか。ロシアはガスプロム1社であるが、先方は民間ビジネスマン2人である」。2. 安全保障の切り札、原子力発電への期待 原子燃料に関しては、燃料エネルギー省で詳しい説明があった。セキュリティーとして原子力発電への期待は大きい。天然ガスは、同国の主要なエネルギー源であり、そのパイプラインは欧州における貴重なエネルギーインフラでもある。国産ガスを節約しロシア経由輸入ガスへの依存度を減らすためにも、原子力発電比率を高めようとしている。現在、発電に占める原子力の割合は約5割であるが、これを7割程度まで高めようとしている。100万kw級の新規電源2基を開発する予定である。現在、発電構成比は、原子力5割、火力5割弱、残りは水力ほかである。火力の大半は埋蔵量が豊富で安価な石炭を使用しているが、ガス火力もある程度存在する(2004年時点では約2割)。 原子力はいったん装荷すると数年もつことから緊急時の耐性に優れる。出所:日本政策投資銀行出所:(社)日本電気協会写4河畔に建つ修道院とドニエプル川写5エネルギー省会談2008.7 Vol.42 No.458008年ロシア・ウクライナガス紛争雑感 -両国を訪問して-ガスをはじめとして化石燃料の節約にもなる。ウクライナは京都メカニズムの一つであるJI(共同実施)枠を豊富に有していることでも注目されているが、この枠の節約にもなる。原子力への期待は、その原子燃料政策とセットである。ウラン自給率は3割程度であり、残りはロシアからの輸入である。ロシア産の使用済み燃料は返還する必要があるが、輸送や貯蔵に要するコストが年々上昇してきている(ロシアからの引き上げ要求は急である)。また、国内産ウランも含めて、濃縮工程はロシアに依存していると考えられる。こうした事情を背景に、燃料調達先の多様化や国内貯蔵を進めようとしている(写5)。(1)原子燃料で米国と協力 燃料エネルギー省の説明では、①米国のウェスチングハウス社製原子燃料の調達について検討している、②ウクライナの原子力発電に装荷しても支障がないかどうかのテストをしているところ、との説明があった。また、使用済み燃料は原則国内で貯蔵したいとのことで、やはり米国の大手事業者であるホルテック社と共同調査している。 これに関しては3月30日に大きな進展があった。ウェスチングハウス社と国営原子力会社であるエネルゴアトム社との間で、2011年からウクライナ消費分の1/4相当分の燃料を購入することで基本合意に達した、との報道があった。現在ロシアとの燃料購入契約は2010年までであり、その再契約のタイミングで一部米国製を取り入れることになる。ロシアは引き続き重要な供給元であり良好な関係を維持していきたい、としている。また、ホルテック社との間でも、契約を更改しさらに検討を進めていくことで合意している。この原子燃料にかかる発表は、ブッシュ大59石油・天然ガスレビュー統領が、ルーマニアのブカレストで開催されたNATO首脳会議訪問を機にウクライナを訪問した際に行われ、それぞれの政府高官も立ち会った。政治的な効果を狙ったものと考えられる。(2)サイクルは転換・再転換を視野に 核燃料サイクルに関しては、「フルサイクル」ではなく「セミサイクル」を目指すとしている。再処理に関しては、「当面は考えていない」と否定していたことから、転換や再転換を視野に入れているものと推測される。会談中に強調していた「使用済み燃料の貯蔵施設」の建設計画については、乾燥方式を考えているとのことで、いわゆる中間貯蔵のことと考えられる。一部の例外を除いてほとんどの使用済み燃料を貯蔵する計画とのことであった。前述のように、ロシアに返還する義務があり、その輸送・貯蔵コストが年々引き上げられており、自国貯蔵によるコスト低減効果は大きい。また、将来、資源として活用する可能性を残しておきたいと考えている可能性がある。最近の米・露原子力協定締結の動き等を見ると、これまでのレジームが変わる可能性も期待できる。エネルギーセキュリティーの視点からは理解できる発想である。米国製原子燃料の受け入れに関しては、ロシア関係者は不快感を示した、との報道がある。 なお、国営原子力会社であるエネルゴアトムは、エネルギー省との会談で同席していたが、マクハ・ウラジミル副大臣(写6)による説明に終始したことから、彼らの出番はなかった。予定の時間終了後に、別途、単独の会談要請があったようである。スケジュールの都合上実現に至らなかったが、非常に残念であった。当方には団長の電力中央研究所名誉研究顧問の中村政雄氏をはじめ原子力の専門家が複数参加しており、かなり専門的な議論となったことから、より突っ込んだ意見交換をしたいと思ったのであろう。そこで、具体的な支援要請が出たかもしれない。3. 親日国家ウクライナの日本への期待 ウクライナは親日国家であり、日本のイメージは非常によい。伝統・文化がありハイテクのイメージがある。日本製品に対する信頼は最も高い。日本メーカー自体が生産する製品が文句なしにNO.1であり、サムソンと日本の海外子会社のイメージがほぼ同等という印象を持つ。同国に出所:(社)日本電気協会写6マクハ・ウラジミル副大臣ィける韓国の宣伝は非常に目立つ。空港ではサムソンの携帯電話の広告が大々的に掲載されており、LG製のテレビがゲート付近の場所に置いてある。日本はもう少し積極的にPRし、進出を検討してもいいのではないか、と感じた。 地元の方の話では、キエフではキエフ大学やキエフ外国語大学等有名大学があるが、外国語関連のコースで、日本語は英語に次いで2番目に人気が高いそうである。毎年40~50人程度が卒業する。ただし就職にやや苦労しており、日本企業のウクライナ進出が期待されている。 今回のエネルギー調査に関しても、エネルギー省では副大臣をヘッドに、幹部クラスが参加した。ナフトガスでは副代表(代表は交渉のためモスクワ訪問中)、オールウクライナエネルギーでは代表が対応してくれた。日本のエネルギー産業に対する期待は大きい。われわれは情報収集が主目的であったが、先方は日本の具体的な協力を期待していた。 虎の子のガスパイプラインの老朽化が進み、そのメンテナンスに膨大なコストがかかる。特に圧縮基地のポンプやガスタービンの取り替えが待ったなしである。老朽化に加えて旧式であり、高効率機器と交換するとかなりの省エネが期待できる。また、黒海のガス田開発事業計画があり、新規ルート建設も必要になる。 LNGへの期待も大きい。ガス調達の多様化やコスト低減を狙い、LNG導入を真剣に検討している。近い将来にガス価格が西欧諸国と同水準になれば、LNGでも競争力が出てくると考えている。報道では、ユーシェンコ大統領がアルジェリア等を訪問し天然ガスについても議論しているそうだ。LNG先進国である日本への期待は大きい。訪問メンバーに火力発電の専門家が参加していたが、その方のLNG基地にかかる解説を真剣に聞いていた。また、電力の約5割は火力発電が占め、その大半は低コストの石炭であるが、発電効率は20~25%にとどまっている。日本の高効率システムを導入すれば飛躍的な省エネが可能となる。エッセー ウクライナは京都議定書の参加国であり、いわゆるJI取引が期待できる。排出権取得が重要課題となっている日本にとって、親日国ウクライナでのビジネスはもっと注目されていいように思える。世界が営業の攻勢をかける国に割り込んで行くことも必要である(ロシアはそうなりつつある)。しかし、まだ注目度は低いものの、ある程度のポテンシャルがあり、そして日本に期待してくれている国へ、他国に先駆けて投資することも重要だ、と思った次第である。 本稿は、ウクライナのエネルギー安全保障の考え方や、同国の立場からロシアとのガス紛争の事情を見てきた。今回は部分的な紹介にとどまったが、ロシア側の言い分も理解できた。西側のマスコミ論調は、ロシア報道ではやや片寄りがある、と感じたことを最後につけ加えておきたい。執筆者紹介山家 公雄(やまか きみお)山形県出身。1980年、東京大学経済学部を卒業し旧・日本開発銀行入行。電力・環境融資担当。ロサンゼルス事務所首席駐在員等を経て、2007年より現職。現在、主にエネルギー調査に従事。著書に、『日本型バイオエタノール革命』(2008年、日本経済新聞出版社)、『エネルギーオセロゲーム』(2006年、エネルギーフォーラム社)、『検証エンロン破綻』(2002年、(社)日本電気協会)等がある。趣味は、遠距離通勤と週末家庭菜園、喫茶店での執筆。2008.7 Vol.42 No.460 |
| 地域1 | 旧ソ連 |
| 国1 | ロシア |
| 地域2 | 旧ソ連 |
| 国2 | ウクライナ |
| 地域3 | |
| 国3 | |
| 地域4 | |
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| 国10 | 国・地域 | 旧ソ連,ロシア旧ソ連,ウクライナ |
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