ページ番号1006341 更新日 平成30年2月16日

豪州新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業

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レポートID 1006341
作成日 2008-07-18 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 基礎情報探鉱開発
著者
著者直接入力 松本 直樹 三宅 裕隆
年度 2008
Vol 42
No 4
ページ数
抽出データ Consultancy Pty.Ltd.松本 直樹(筆者)JOGMECシドニー事務所三宅 裕隆(編者)アナリシス豪州新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業はじめに 2007年11月に実施されたオーストラリア(豪州)連邦下院解散および上院半数改選の同時選挙は、ケビン・ラッド率いる野党労働党が議席を大幅に増加させて下院の過半数を獲得し、同党は1996年3月に下野して以来、実に11年8カ月ぶりに政権の座に復帰した。しかも、これで各州等(ニューサウスウエールズ(NSW)州、クイーンズランド(QLD)州、ビクトリア(VIC)州、南オーストラリア(SA)州、西オーストラリア(WA)州、タスマニア(TAS)州および北部(NT)準州、首都特別地域(ATC))と連邦、州等の9政府すべてが労働党となった。労働党の「完全制覇」は豪州政治史上でも初めてのことである。 選挙後の12月3日には、首都キャンベラの連邦総督公邸において、閣僚および政務次官の宣誓・認証式が行われ、この日よりラッド新労働党政権が正式に発足したが、新政権は早くも同日、公約どおりに京都議定書の批准を決定するなど、気候変動問題に関して積極的な姿勢を見せている。選挙で圧倒的な国民の信託を受けたことを強調しつつ、今後も可及的速やかに環境関連の公約を実行すべく、努力するものと思料される。 本稿は、在キャンベラの政治アナリストの報告書をベースに、1. 資源大国豪州2. 新政権の石油・ガス政策3. 連邦政府の資源・エネルギー政策4. 豪州における環境問題(特に気候変動対応)5. 政策決定に関連する豪州の政出所:ロイター/アフロ治環境 等をまとめたものである。写ラッド新政権1. 資源大国豪州 2006年7月、ジョン・ハワード首相(当時)は、将来の水資源や資源・エネルギー問題に関する演説のなかで、中国やインドの驚異的な経済発展に伴い、資源・エネルギー需要の急激かつ持続的な高まりが予想されるなか、各国にとって資源・エネルギー安全保障問題は死活的に重要なイシューになりつつあると指摘している。同時に、膨大な埋蔵量を誇り、しかも安定的かつ信頼性の高い資源・エネルギー供給国である豪州を、資源・エネルギー超大国の地位に押し上げるものとの認識を示している。実際、1960年代からエネルギー・鉱物資源の開発・生産を本格化させた豪州は、現在では世界でも有数の鉱物資源大国に成長している。  また、豪州は小規模ながら産油国でもあり、2007年の時点で見た場合、埋蔵量は世界シェアの0.3%に相当17石油・天然ガスレビューAナリシス9位:銅鉱 39億ドル10位:銅地金 26億ドル と、鉱物資源が10品目中の9品目を占めている寡占状況にある。 また、資源分野ではとりわけ日本との関係が深い。豪州の資源・エネルギー産業が強い輸出志向型である一方、日本は加工貿易立国であることから、両国は典型的な「経済的相互補完関係」にあり、豪州の資源・エネルギー産業、ひいては豪州の輸出も日本に強く依存している。FY2006/07で見た場合、輸出額上位品目のうちで対日輸出への依存率がとりわけ高いのは、輸出額1位である石炭の44%、2位の鉄鉱石で29%、7位のアルミニウムで39%、8位の液化天然ガス(LNG)では実に85%、そして9位の銅鉱では28%となっている。依存率が突出しているLNGだが、日本向け輸出は1989年よりスタートし、2006年度時点での日本のLNG供給国別シェアで見ると、豪州は、マレーシアを抜きインドネシアに次ぐ、19.9%で、第2位にランクされている。する42億バレル、生産量では世界シェアの0.6%に相当する日量56万1,000バレルとなっている。石油残存量は20年分と見積もられている。一方、天然ガスについては、これまでの継続的な探鉱活動によって、確認可採埋蔵量ならびに生産量は増加の一途をたどっており、2007年時点での可採埋蔵量は88.6tcf(tcf=兆立方フィート)、そして年間生産量は1.4tcfであった。ガス残存量は63年分と見積もられている。 資源大国豪州の実態を数字で見ると、FY2006/07*1の主要鉱産物輸出高は、金属価格の高騰や豪州ドル高により総計1,005億ドルに達し、豪州の全輸出額の実に49.3%を占めている。輸出額上位10品目を見ても、1位:石炭 218億ドル2位:鉄鉱石 155億ドル3位:非貨幣用金 103億ドル4位:ニッケル 84億ドル5位:原油 83億ドル6位:ボーキサイト・アルミナ 64億ドル7位:アルミニウム 57億ドル8位:液化天然ガス(LNG)52億ドル2. 新政権の石油・ガス政策 第3章で詳細を述べるが、労働党政府の資源・エネルギー基本政策は、技能労働者不足への対応と、関連インフラストラクチャーの整備を基幹とするものだが、他方で、外国資本については、少なくとも旧保守政府よりはやや厳格な姿勢をとっていると言える。 以下、労働党政府の資源・エネルギー政策の基本路線、また、特徴を踏まえた上で、本報告書の主要テーマの一つである石油およびガス部門について概説するが、両分野における今後の政策の行方を占う上で、極めて重要な文書が存在している。それは石油およびガス生産者の業界頂上組織である豪州石油生産探鉱協会(APPEA:Australian Petroleum Production and Exploration Association)が2007年4月に公表した「繁栄へのプラットフォーム:豪州石油およびガス上流産業の戦略(Platform for Prosperity-Australia’s Upstream Oil and Gas Industry Strategy)」と銘打った調査報告・提言書で、APPEAは同報告書のなかで、石油やガスの自給率アップの方策など、いくつかの提言を行っている。 これまでAPPEAは、例えば「フロー・スルー株式優遇税制度」(後述)の導入など、かなり具体的かつアド・ホックな(特別な)政策提言を旧保守政府に対し行ってきたものの、多くが不首尾に終わったという経緯がある。そこでAPPEAは、個別案件に関する政府へのロビイング活動よりも、長期的な戦略を立案し政府に働きかける、との戦術転換を図り、その成果が上記の提言書となった。重要な点は、この戦略提言書をハワード旧政府が支持したばかりか、新労働党政府も正式に支持する見込みであることである。現在のところ、新政府は公に支持を明言してはいないものの、資源・エネルギー・観光大臣のマーティン・ファーガソンは、直接APPEA幹部に対して、同提言書の内容を今後重視することを確約したとされる。 さて、現在明らかになっている政府の石油・ガス政策に係る特徴は四つである。具体的には、(1)探鉱活動の促進、(2)ガスの重視と石油の相対的軽視、(3)代*1:オーストラリアの会計年度は7月~6月。2008.7 Vol.42 No.418シオーストラリア州WA北部準州NTクイーンズランド州QLD南オーストラリア州SAニューサウスウェールズ州NSWビクトリア州ビクトリア州VICVICメルボルンシドニーキャンベラキャンベラATCATCタスマニア州タスマニア州TASTAS出所:JOGMEC図1オーストラリア全図から提言し、労働党政府が実際に導入を計画しているのが、税務上の優遇措置、いわゆる「フロー・スルー株式優遇税制度(Flow Through Shares Tax Scheme)」の導入である。 フロー・スルー株式優遇税制度とは、探鉱を主業務とするジュニア企業に対し、フロー・スルー株という特殊な株式の発行を認め、株式発行企業の探鉱活動で発生した支出、コスト額を、文字どおり株主に「フロー・スルー(税務上移譲する)」ことを可能にする制度である。 そして探査支出額の移譲を受けた個別株主は、これを自分たちの他の所得から控除することができる。 探鉱活動を専門とするジュニア企業には、資源の生産活動を通じた収益がなく、ジュニア企業が株主に貢献できるのは、探鉱を成功させるなどして株価を上昇させた場合になる。一方、ジュニア企業の探鉱コストはすぐには控除されず、それどころか決して控除を受けないケースも多い。これが該当探鉱プロジェクトの評価額を引き下げ、ひいては株価を引き下げるばかりか、ジュニア企業による探鉱活動を阻害する要因ともなっている。 フロー・スルー株式は、株主に税務上の利益を与える魅力的な制度であり、同制度によってジュニア企業の資金繰り、資本獲得が相当容易になり、結果的に豪州資源の探鉱活動の活性化、ジュニア企業の増加にも資することが期待できる。またジュニア企業の資本獲得コストが低下することによって、企業は探鉱活動への支出を増加させることが可能になり、探鉱活動の成功度が上昇することになるばかりか、リスクは高いものの、重要性が高まりつつあるフロンティア地域での探鉱活動も、より活発になることが期待される。じゃっきふっしょく拭されたかに見える。(1)探鉱活動の促進 豪州では21世紀に入って以降、中国やインドの急激な経済成長によって惹起された空前の資源輸出ブームが続いており、これが豪州の交易条件を大きく改善するとともに、政府財政を潤沢なものとし、さらに豪州経済全体にも強い順風となっている。 そのため、これまで鉱業界が繰り返してきた、いわゆる「ブーム&バースト(Boom and Burst)」サイクルへの不安感も、もはや払 だが、昨今の目を見張る資源・エネルギー・ブームとは裏腹に、中・長期的に見た石油部門の状況は、相当に悲観的なものである。例えば、かつては80~100%を誇っていた豪州の石油自給率は、1990年代には70~80%程度、2005年には一挙に56%にまで落ち込んでいる。そして自給率は、2015年までにわずか20%程度になるものと予測されている。その主因は、1990年代中期以降に産出された豪州産の石油量が、新たに発見された油田の推定埋蔵量の2倍以上にもなっているためである。この問題に関して労働党政府は、主として二つの点から危機感を抱いている。 第1に、自給率の低下傾向は政府の石油関連税収の低下や、石油産業を支えるサービス部門の雇用減少などを引き起こし、とりわけ原油価格の高騰が続くなか、貿易収支を大きく悪化させる点である。 第2に、自給率の低さによって、豪州経済が石油を取り巻く国際環境に対して極めて脆弱となる点、換言すれば、エネルギー安全保障の観点からの懸念である。  この問題に対処するため、政府は石油やガスの国内生産量を増加させること、そのために、停滞している豪州の探鉱活動を活性化させて、新規油田、ガス田の発見、開発・生産を促進することを重視している。探鉱活動低迷の背景には、大手資源企業などが合併を通じて多国籍化、国際化し、その結果、豪州の国益への配慮はますます御なりなものとなり、その上、こういった企業は、そもそも豪州は地理的に世界のセンターから離れていること、また他の資源産出国と比べてコストもリスクも高いという理由で、豪州の辺境の地での探鉱活動を避ける傾向にあるという事情がある。他方、探鉱事業の中核をなしている中小資源企業(以下「ジュニア企業」という)の多くは、探鉱活動のための資本の獲得に苦しんでいる状況にある。 その探鉱活動促進の目玉として、労働党が野党時代ぜいじゃくざ座お豪州新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業替燃料への関心、(4)産業ナショナリズムの傾向である。 これらについて、以下に詳述する。19石油・天然ガスレビュー@一方、投資家・株主にとっては、税務上のメリットの他に、同制度のお陰でジュニア企業が活性化し、そして探鉱に成功すれば株価は急激に高値となることから、その点からも恩恵を受け得ることになる。(2)ガスの重視と石油の相対的軽視 (1)の探鉱促進政策は、石油およびガス部門はもちろんのこと、一部の鉱物資源をも対象とする可能性のあるものである。ただ、政府が石油部門よりもガス部門を重視していることは明瞭で、その最大の理由は、地球温暖化問題の観点から、ガスのほうが石油よりもクリーンであるという事実による。 具体的な数値としては、100万kw時の発電あたりで、温暖化ガス排出量が200kg未満の再生可能エネルギー源には遠く及ばないとしても、天然ガスの場合は575kg程度と、900~1,300kgの温暖化ガスが発生するとされる石炭火力発電に比べ、半分程度である。したがって政府は、石炭燃焼のクリーン化技術が実用化され、また再生可能エネルギー源の発電量が大きく増加するまで、時期的には向こう10年強の間の「つなぎ」の発電用燃料として、ガスを重視しているのである。さらに、ガスを火力発電用燃料と見なすにとどまらず、ガスの液化を通じ、例えば車両などの輸送手段の燃料として、積極的に活用することも視野に入れている。(3)代替燃料への関心 政府は、他方で、石油の自給率低下問題については、併せて石油代替燃料の開発、活用で対応していく見込みである。 具体的には、バイオ燃料の利用、ガスの液化(GTL)、石炭の液化(CTL)などで、代替燃料の奨励は、地球温暖化問題への対応策の一環とも見なされている。 この点に関し担当大臣は、既に資源・エネルギー・観光省に対して、「国家エネルギー安全保障評価(National Energy Security Assessment)」なる調査・分析書の策定を指示している。この目的は、向こう15年間にわたる、各種エネルギーの国内需要および供給を予測するもので、完了は今年末の見込みである。政府は、2015年までの石油燃料の貿易収支が大幅な入超になるとの強い危機感を持ち、石油代替燃料の活用を熱心に勧める計画で、評価が完了し次第、早急に「行動計画(Action Agenda)」を策定するとしている。(4)産業ナショナリズムの傾向 労働党政府の石油・ガス政策、あるいは資源・エネルギー政策全般、それどころか産業政策全般にも、軽アナリシス微であるとはいえ産業ナショナリズム(産業保護主義的で、国益至上主義的なメンタリティー)の存在が看取される。例えば製造業だが、もともと労働党は保守政党に比べて、より「介入主義的アプローチ」を採るが、労働党政府で産業の所掌を担当する閣僚が、党内左派の大物ということもあって、旧政府よりは産業保護主義的傾向にあるのは確実と言える。関税問題を例にとると、ボブ・ホーク/ポール・キーティング労働党政権は、関税の単独的低減策を鋭意実施してきたわけだが、この関税低減路線は、当然のことながらハワード保守連合政権にも引き継がれ、現在では自動車や繊維・衣類・履物(以下、「TCF」という)への関税を例外として、輸入関税は極めて低い水準にある。また自動車やTCFに関しても漸進的に低減されつつあり、しかもこれが今後も継続される計画であった。 ところが新政権の産業担当大臣は、就任前の発言ではあるが、関税を引き上げる可能性については全面否定したものの、昨今の豪州ドル高傾向で輸出産業が苦境にあることを指摘しつつ、低減ペースを落とす可能性を再度示唆している。その背景としては、強力な左派系大労組の「豪州製造業労働者組合(AMWU)」の圧力も指摘できよう。この発言の直後、当時のラッド党首は保護主義への回帰を明確に否定したとはいえ、労働党新政権下で関税低減政策に一定のブレーキがかかる可能性も否定はできない。 そして資源・エネルギー分野での政府の介入主義アプローチ、国益至上主義の好例が、「資源開発保留リース権(Retention Leases)」に対する「活用するか喪失するか(“use it or lose it”)」の姿勢、そしてWA州労働党政権の強制的ガス留保政策への支持である。まず前者であるが、資源開発保留リース権とは、更新が可能な有効期間5年間のリース権で、これを取得した資源企業は、保持している間は、例えば世界市況の低迷などにより採算がとれないことなどを理由に、実際の採掘活動を保留することが可能になる。政府が問題視しているのは、多国籍資源企業が、自企業の世界戦略の観点から、採算の面からは問題がないにもかかわらず、生産活動を行わない点で、結果的に豪州の国益が損なわれることとなる。  そこで政府は、同リース権の更新に際しては、これまでのような安易な認可を改めて、生産活動の保留が妥当かつ正当なものであるか、精査するとしている。実際に資源担当大臣は2008年の2月に、年内でリース期間が失効する計27のリース権に関し、厳格な更新審査を行うことを宣言したが、業界側は、豪州の探鉱活動イン2008.7 Vol.42 No.420居B新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業センティブを著しく阻害するもの、として反発している。 もう一つの好例が、WA州労働党政府のガス政策に対する、連邦労働党政府の支持の姿勢である。この政策は、州内エネルギー安全保障の観点から、同州政府が、州内の陸上インフラ施設を利用して液化天然ガス(LNG)の輸出を行っている生産企業に対し、ガス埋蔵量の15%分を州内消費用に留保することを義務づけたものである。当然のことながら、こういった市場メカニズムへの政府介入に対しては、産業界は強く反発しているが、産業界をバックアップして同政策に反対していた旧保守政府とは対照的に、連邦労働党は野党時代から同政策を支持してきたし、また今後も支持する予定である。  ただ15%規制問題の意義、重要性は、世界的な燃料価格の上昇により、WA州でのガス田開発に拍車がかかり、供給面での懸念が弱くなり、最近では薄れてきたと言える。3. 連邦政府の資源・エネルギー政策(1)基本路線の変遷 1960年代の急激な資源開発以降、資源・エネルギー産業は、国内総生産や雇用人口に占める割合は低いとはいえ、外貨獲得の重要部門となり、豪州の持続的経済成長を実現する上で重要な政策分野となっている。 ただ1983~1991年まで続いたホーク労働党政権、ならびに1991~1996年までのキーティング労働党政権は、その後の1996年から2007年まで続いたハワード保守連合政権と比較すると、主として以下のような理由から、資源・エネルギー産業の振興には必ずしも熱心とは言い難かった。 理由の第1は、とりわけ1980年代の労働党政権が、むしろ鉄鋼業や自動車産業といった、製造業の産業競争力の強化を重視したことである。豪州の製造業は、小さな国内市場、広大な国土による輸送コスト高騰から、恒常的に国際競争力が弱く、そのため歴代政府は関税や輸入制限を通じた産業保護策の実施を余儀なくされてきた。 第2に、少なくとも初期労働党政権の、外国資本に対する警戒感である。豪州は伝統的に産業資金の国内供給体制が不十分であったことから、外資の導入には極めて自由な政策を採用してきたが、その結果、主要産業の大部分が、主として英国、米国などの外資系企業に牛耳られる事態になった。このような状況を改善するため、労働党政権は外資導入への審査を厳格化するなどして、外資のコントロールを志向し、これが豪州資源開発への海外からの投資にも一定の影響を与えたのである。 第3は、労働党内の左派の影響による、労働党政権の反核あるいは核不拡散の姿勢である。 豪州は、ウラン埋蔵量では世界第1位、生産量ベースで世界第2位にランクされるウラン資源大国である。ところが労働党政権は、1980年代の半ばより、いわゆる「ウラン3鉱山政策」なる資源政策を採用してきた。これは、採掘・輸出を当時操業中であったSA州のオリンピック・ダム鉱山、NT準州のレンジャー鉱山、同じくNT準州のナバラク鉱山の3鉱山に限って認めるというもので、当然のことながら同政策は、膨大な埋蔵量を誇る豪州のウラン開発を大きく阻害することになった。ただその労働党も、2007年4月に開催された全国党大会で、ようやくこの「アナクロ」な政策を撤廃している。 第4に、労働党は少なくとも保守政党よりは「大きな政府」を志向し、また左派の影響もあって、しばしば規制保持や強化のメンタリティーを示す。具体的には、上記「ウラン3鉱山政策」に加えて、アルミナ、ボーキサイト、石炭、ミネラル・サンド、そしてLNGなどの輸出管理政策の保持などで資源開発面で負の影響を与えた。表1直近4代の豪州首相代23242526氏 名 ボブ・ホークポール・キーティングジョン・ハワードケビン・ラッド政 党労働党労働党自由党労働党就 任1983年3月11日1991年12月20日1996年3月11日2007年12月3日離 任1991年12月20日1996年3月11日2007年12月3日現在21石油・天然ガスレビュー@第5は、労働党左派の影響による、労働党政権の環境問題への関心、配慮である。結果的に、資源開発や生産に関する環境保全上の制約が強まり、これも開発の阻害要因となった。 そして最後に第6として、労働党が保守政党よりも先住民問題を重視し、先住民寄りのさまざまな政策を採用したことが挙げられる。先住権の存在を初めて認知した1992年6月の「豪州最高裁マボ判決」を受け、翌年に施行されたのが「1993年先住権法」であった。先住権とは土地に関連する先住民の諸権利で、この存在が認められたことは、資源の探鉱、開発、生産企業には直接かつ甚大な影響を与え、資源開発企業は手続き上の、あるいは財政上の重い負担を強いられ、その後の各種資源開発の遅延、中止などを引き起こす結果となった。 これに対して、1996年に誕生したハワード保守連合政権下の資源・エネルギー政策は、ホーク/キーティング労働党政権と比較した場合、総じて、より積極的なものであった。ただ保守政府の資源・エネルギー政策は、1996年3月~1998年10月までのハワード第1次政権、2001年11月までの第2次政権、2004年10月までの第3次政権および2007年12月までの第4次政権で、それぞれ色合いの異なったものとなっている。具体的には、第1次政権が積極政策と資源部門の重視を特徴としたのに対し、第2次政権は相対的に資源およびエネルギー分野の双方を軽視し、そして第3次、第4次政権の場合には、相対的に資源部門よりもエネルギー部門を重視する、といった具合である。 このような政策上の色合いの違いは、かなりの程度、資源・エネルギー担当大臣の信条、個性、立場に起因している。というのも日本と比較した場合、豪州の政策決定過程を特徴づけるのは、それが政治家主導で行われるという点であり、大臣主導の政策決定方式は、労働党政権においてよりも、自由党政権の場合がより顕著であると言える。  いずれにせよ、ハワード政権下の資源・エネルギー政策は、旧労働党政権よりはるかに積極的なもので、その特徴は、資源・エネルギー業界に恩恵を与える方向で、政府が鋭意「介入」するというものであった。ただ同分野におけるハワード政府の介入アプローチとは、「介入」という語の持つニュアンスとは裏腹に、規制強化とは対極にあるアプローチの仕方で、資源・エネルギー部門の効率化、サービスの安定供給や信頼性の向上、サービスの低廉化のため、さらには同産業の振興のために、政府が積極的に貢献することを意味しアナリシスている。 そして同部門の体質改善ならびに産業振興の鍵を握るのが、海外からの直接投資の促進である。というのも、資源産業は極めて資本集約的な産業である一方、わずか人口2,000万強で、しかも貯蓄率も低い豪州としては、海外の資本に大きく依存せざるを得ず、海外からの投資を促進するための、良好な投資環境づくりを目指したものに他ならなかった。 ハワード旧政府の資源・エネルギー政策は、いま述べたように規制緩和、税制と産業補助、そしてインフラストラクチャー整備の3本の柱からなるが、規制緩和に関しては、第1次政権の発足直後に実施された労働党「ウラン3鉱山政策」の破棄と、それによるウラン産出量の拡大策、外国投資審査委員会(FIRB:Foreign Investment Review Board)による海外投資案件審査の緩和、そして1997年5月に公表された輸出ライセンスの撤廃策が挙げられる。 これにより、アルミナ、ボーキサイト、石炭、ミネラル・サンド、LNGなど、ウランを除く鉱物資源輸出が全面的に自由化されている。 次に税制と産業補助だが、ハワード第2次政権時代には加速度償却制度(Accelerated Depreciation)が廃止され、これに資源業界が強く反発したという経緯があったものの、その後旧政府は、設備償却問題は資源投資の大きな阻害要因になり得るとの認識を抱くに至り、一部資源プラントや配送インフラ設備の減価償却期間に関し、比較的短期の天井を設けることを決定し、資源業界の要請に応えている。また産業への助成に関しては、研究・開発(R&D)補助と、R&D費への税関連政策「R&D税優遇制度」が挙げられる。さらに、石油ならびに石油代替燃料産業に直接かつ大きな影響を与える施策として、石油代替クリーン燃料の国内需要喚起を狙った、燃料物品税制度の変更も決定された。 最後に、3番目の柱であるインフラストラクチャー整備であるが、実は三つの柱のなかでも、とりわけ第3次・第4次ハワード政権が最も重視していたのが道路、鉄道といったインフラ整備であり、旧政府は特定資源・エネルギー関連プロジェクトへのインフラ整備支援を、資源・エネルギー投資促進策の中核に据えていた。 ハワード政府がインフラ整備を最重視した背景、理由としては、①自由党のジュニア・パートナーである連立相手の国民党は、地方在住層、とりわけ第1次産業従事者層を支持基盤とする政党であることから、地方の振興につながる、あるいは地方の国内経済への統合化に資する道路建設や鉄道建設推進などに、極めて2008.7 Vol.42 No.422R. 不足している技能労働者の育成4. インフラストラクチャー整備策5. 労働力化率の向上策(託児施設の充実など) このうちの3と4は、そのまま労働党政府の資源・エネルギー政策の基本となっている。 そして第3に、政府が地球温暖化対策に極めて高い優先度を置いているという事実も、同問題に直接関係する資源・エネルギー政策の意義を高めていると言えよう。 さて労働党政府の資源・エネルギー基本政策を述べる前に、組織、機構に関し簡単に触れると、新政権の発足直後に当該分野を含む一部官僚機構の変更があった*2。 資源・エネルギー関連では、旧政権下で資源・エネルギー分野を主管する連邦の省であった産業・観光・資源省が、新政権下では資源・エネルギー・観光省(DRET:Department of Resources, Energy and Tourism)へと変更されている。例えば豪州地球科学研究所(Geoscience Australia)や、これまでは旧教育・科学・職業訓練省の所管であった放射性廃棄物の管理なども今後はDRETが所管する。 以下、労働党新政権の資源・エネルギー政策とその特徴を、①技能労働者の育成、②インフラストラクチャーの整備、③外国資本政策の三つの観点から概説する。① 技能労働者の育成 労働党政府は、インフレ抑制を当面の最重要課題としており、労働党がインフレ圧力の要因の一つと見なすのが賃上げ圧力で、その背景には、深刻な技能労働者不足があると指摘されている。技能労働者不足は、資源・エネルギー輸出ブームに沸き、豪州経済全体の「牽車役」を果しているWA州で最も顕著で、実際に同州資源部門の賃金水準、賃金上昇率は全国平均を大きく上回っている。  そこで労働党政府は、職業訓練制度の拡充を通じた技能労働者の増加策を、インフレ対策の中核の一つと見なし、それと同時に、技能労働者不足が「生産の路」を発生させており、このままでは資源・エネルギー輸出主導の持続的経済成長が阻害されると懸念している。労働党の政策は、教育全般に関する基本戦略である「教育革命」(Education Revolution)プログラムのなかに、技能労働者育成プログラムを盛り込んでいる。隘あいろん引いけん熱心なこと、②直接には特定プロジェクトを支援する、例えば資源輸出港の拡張工事など、当該プロジェクト関連企業以外にも恩恵をもたらすため、インフラ整備策は費用対効果の高い支援策でもある、そして③ハワード連邦政府は投資促進のため各州政府との連携を強く図ろうとしていたが、その各州政府は既にインフラ整備支援を資源・エネルギー政策の中核に据えていたことから、自然に連邦もインフラ領域への関与を重視するようになった、等が挙げられる。(2)新政権の基本政策と特徴 ホーク/キーティング政権時代には、資源・エネルギー分野の相対的軽視が見て取れた労働党も、その後の野党時代、とりわけ今世紀に入って、以前よりも同分野を重視するようになっている。  その背景には、第1に、旧労働党政権が追求した製造業の競争力強化路線が特段の成果を上げなかった一方で、中国やインドの驚異的経済発展のお陰で、豪州では資源・エネルギー輸出主導の、記録的な長期にわたる経済成長が続いているとの事情がある。要するに、資源・エネルギー分野の重要性が再認識されてきたのである。 第2に、一見無関係のようだが、実は最近のインフレ圧力の存在も関係している。これまでも、そして現在でも「豪州国民の夢」とされるのがマイホームの取得で、豪州では20代の若いカップルが住宅を購入することも決して珍しくはない。この事実に加え、国民の多くが変動金利型の住宅ローンを利用することから、金利問題は政治的にも極めて重要なイシューとなっている。ところが、これまでは低金利が続いていた豪州経済も、インフレ圧力が高まりつつあり、これを受けて豪州準備銀行(RBA)は、2002年5月から2008年の3月までの間に、連続して実に12回もの金融引き締め策の発動、すなわち目標金利(キャッシュ・レート)の引き上げを行っている。これに伴い、住宅ローン金利も軒並み上昇し、一部国民は生活費の増嵩にあえいでいる。 そのためインフレ対策は、労働党新政府が直面する当面最大の課題で、政府は2008年1月に五つの柱からなるインフレ対応策を公表している。ぞうすう1. 財政黒字幅の拡大2. 民間貯蓄の奨励策(退職年金の義務積み立て率の引き上げや、優遇税制度の導入など)豪州新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業*2:豪州の場合、省庁の再編や名称変更は日本よりはるかに容易で、政権交代時はもちろんのこと、しばしば内閣改造時などにも実施されている。23石油・天然ガスレビュー痰ヲば2008年4月からの向こう4カ年で、職業訓練生の枠を現行よりも45万人分増加させることを公約している。 また労働党政府は、労働組合の反対もあって、海外の技能労働者を暫定的就労査証(ビザ)で呼び入れ、雇用するとの政策には、あまり積極的とは言い難いが、 その一方で、「技能者査証」カテゴリーを通じた海外技能労働者の移民受け入れについては積極的で、年度内には6,000人分を追加発給するとの計画を明らかにしている。② インフラストラクチャーの整備 「生産の隘路」のもう一つの原因として道路、鉄道、港湾といった輸送インフラ、あるいは輸出関連インフラの不備を挙げている。そのため前保守政府と同じく、資源・エネルギー分野においても、インフラ整備をその基幹的な政策として掲げている。実際に、資源積み出しの港湾部門の生産性の低さは相当なもので、現在豪州は空前の石炭輸出ブームの渦中にあるが、主として産出地から積み出し港までの鉄道運搬能力、鉄道網の不備、港湾積み出し能力の低さなどから、多数の石炭運搬船が、港周辺で長期にわたり滞船状況に置かれており、ばく大な損失となっている。とりわけ深刻なのは、石炭大州であるQLD州にあり、かつて連邦与野党間、あるいは連邦政府と州政府間の政争の種ともなったダリンプル・ベイ石炭積み出し港は、豪州どころか「世界最悪の積み出し港」という、不名誉な名前を奉られている。 このため、政府は今後全国のインフラ整備を積極的に推進していく計画で、その第1ステップとして労働党政府は、これまでにはなかった、インフラ担当の閣内大臣ポストをつくるとともに、豪州インフラ委員会(Infrastructure Australia)なる法定の諮問機関を設置する予定である。 委員会は、全国インフラ整備の優先リストを作成すること、さらに各インフラ整備計画の資金面(実施者は、政府か民間か、あるいは官民合同か)等に関し政府に提言することである。委員会自体には政策の決定権はないが、インフラ担当の大臣には、比較的若手ながらも、党内左派の実力者であるアンソニー・アルバニーズが就任した。 さらに労働党政府は、運輸関連インフラの整備の他にも、いわゆる社会インフラの整備を資源・エネルギー政策のなかに盛り込んでいる。一般に資源・エネルギーのアナリシス産出地は、都市部から遠く離れたへき地にあることから、同部門で働く労働者やその家族をサポートするコミュニティー・インフラ(住宅、学校、病院、託児所、娯楽施設など)の整備が不可欠と考えられている。③ 外国資本政策 豪州は人口が少ない上、しかも貯蓄率も相当に低かったことから、歴史的にも海外の資本に大きく依存せざるを得なかったという事情があり、保守政権は資源・エネルギー部門に対する海外からの直接投資を奨励してきた。 これに対してホーク/キーティング政権時代の労働党は、例えば多国籍企業による国内企業の買収などにはかなり警戒的であった。そして野党時代の労働党は、外国資本審査委員会(FIRB)の審査基準をより明確にすること、とりわけ、いわゆる「国益審査」の基準、あるいは「戦略的(重要)産業」の定義の明確化とともに、より厳格な外資審査の必要性を主張してきたし、また海外からの豪州への投資には、雇用創出へのコミットメントを期待するとも述べていた。 こういった従来の路線を踏襲し、2008年の2月にウェイン・スワン新財務大臣は、対豪州投資申請の審査(国益審査の明確化等)に関する、新ガイドラインを公表している。対象は主として国策投資ファンド、政府系ファンドで、審査投資案件の認可に際しては、当該ファンドの運営が自国の政府からは独立しており、したがって対豪投資の意図、目的が純粋に商業上のもので、自国政府の戦略上、政治上の目的に基づくものではないことを要件としている。 この施策は一見すると、資源・エネルギー業界には不可欠な外国資本に対して、労働党政府が警戒的、あるいは消極的との印象を与えるものである。あくまで旧政府と比較した場合だが、ラッド労働党政府がやや産業ナショナリズムの傾向にあること、例えば製造業に対する保護主義的メンタリティーや、軽微であるとはいえ、ホーク/キーティング政権時代と同様に、多国籍企業に対し不信感、警戒感を抱いていることは否定できない。その好例が、2章(4)で詳述した資源開発リース権に対する「活用するか喪失するか(“use it or lose it”)」の姿勢、そしてカーペンターWA州労働党政権の強制的ガス留保政策への支持である。 ただし上記ガイドラインは、米国やEUを中心に警戒感が高まっている国策、あるいは公的投資ファンドを対2008.7 Vol.42 No.424居B新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業象としたもので、民間からの投資については労働党も、少なくとも以前よりは積極的となっている。実際に労働党は、海外からの投資促進を狙って、配当源泉税*3の税率を、現行の30%から15%へと半減することを公約している。 さらに言えば、公的投資ファンドへの規制についても、中国資本に関しては甘くなる可能性もある。その理由は、首相のラッドが「チャイナ・スクール」に所属していた外交官の出身で、しかも中学生のころから中国への憧れを抱いたという浪漫派、あるいは「確信犯的」とも形容できる親中国派の筆頭政治家であるからだ。そのためラッド労働党政権下では、中国との貿易・ビジネス関係が一層促進されるのはもちろんのこと、豪州の資源・エネルギー部門を中心とする中国の対豪州直接投資に対しても、かなり寛大になることも予想される。4. 豪州における環境問題きすうないがし(1) 豪州における位置づけ 豪州では環境保護問題がしばしば重要な政治イシューとして登場し、また環境保護に熱心な一部有権者の「環境票」が、選挙の帰趨に影響を与えるという事態すら起こっている。そのため自由党-国民党保守連合、そして労働党という豪州の2大政党も、環境政策、ろにできず、環境大臣あるいは影の環境環境行政を蔑大臣には、通常、党の大物を起用している。豪州で環境問題を政治上重要ならしめている背景については、以下の5点が挙げられよう。 第1は、豪州大陸の地理的孤立によってもたらされたユニークな生態系、自然環境の存在がある。また、二百数十年前の英国植民以来繰り返されてきた、自然環境破壊の歴史がある。こういった自然の恵みと、過去の破壊への反省から、多くの豪州国民が生物の保護や環境保全を、自分たちの使命、義務としてとらえていることがまず指摘できる。 第2に、環境問題に敏感な国民性を背景にして、活動的で大規模な環境保護の非政府組織(NGOs)が存在することである。豪州にはグリーンピースといった国際的な環境保護団体の他にも、自然協会に代表される「地場」団体も存在し、さまざまな環境問題に関して一般への啓蒙活動、抗議運動、そして政党へのロビイング活動を展開している。また、昨今の日本の調査捕鯨に対する、過激な反対行動でその存在感が認識されている。 第3は、国営のABC放送や全国紙のシドニー・モーニング・ヘラルド紙に代表される、環境保護あるいは環境団体に好意的なメディアの存在がある。国民が関心を抱いているだけに、豪州メディアも環境問題を頻繁に取り上げており、これが環境団体の活動を大いに助けている。 第4に、環境保護団体、環境政党に一定の政治的影響力を保証している豪州選挙制度の存在がある。豪州では「優先順位つき連記投票制度」という、世界でも極めてユニークな投票制度を採用している。このため、とりわけ激戦区では、他政党あるいは他候補からの第2位以下選好順位の票の流れが、特定候補の当選の可否を決定する。これにより環境保護団体や環境政党も、たとえ自分たちの推す候補者を当選させられなくても、投票用紙の第2位順位以下にどの政党の候補を指定するかによって、大政党候補の当落に一定の影響力を行使できるのである。 最後に第5として、日本の参議院に比し、より強大な権限を有している豪州連邦上院の存在と、頻繁に発生する「両院のねじれ現象」、そして上院でしばしば「バランス・オブ・パワー」を握ってきた、環境保護に熱心な左派系の豪州民主党の存在が指摘できる。その環境分野においては、一般に保守連合のほうが労働党に比べて、環境保護よりも開発重視の姿勢が強いと言える。(2) 気候変動問題に対する2大政党のスタンス 環境保護問題のなかでも最大のホット・イシューであり、しかも資源・エネルギー業界にも甚大な影響を与え得るのが地球温暖化問題であり、2007年11月に実施された連邦選挙における政策争点の一つともなった。 資源輸出大国豪州の経済は、非再生可能エネルギー源である化石燃料への強い依存をその特徴としている。 *3:豪州居住者から非居住者が受け取る一部について課税される。*4:「地球温暖化防止京都会議」ともいう。25石油・天然ガスレビューアれはエネルギー集約型輸出産業の存在や火力発電への依存、さらに長大な輸送ルートの存在等に起因するものである。実際に、豪州の発電燃料の依存率は、FY2006/07で石炭54.8%、褐炭21.9%、ガス14.2%、水力6.8%、石油1.3%、その他1%で(図2)、化石燃料によるものが92.2%に及んでいる。しかも化石燃料のなかでも主体は、膨大な埋蔵量を誇る石炭であり、褐炭を含めた場合、総発電量の実に76.7%が石炭燃料の火力発電である。 さて地球温暖化問題だが、世界の地球温暖化ガス全排出量に占める豪州の排出量の比率は1.4%にすぎないが、産業、経済構造や国土の広さ、他方で人口は比較的少ないこと等から、豪州の国民1人あたりの温暖化ガス排出量は、米国に次いで世界第2位の水準となっている。ちなみに1997年12月に京都で開催された「気候変動枠組み条約第3回締約国会議」*4では、豪州も交渉プレーヤーとして活躍したが、豪州の経済構造の化石燃料への強い依存が参加国に認識された結果、最終的な決定・合意事項は、豪州には極めて満足のいくものであった。 ところが地球温暖化問題への対応についても、旧保守連合政府の路線、政策はかなり消極的なもので、保守政府は、京都議定書の内容が豪州にとっては相当に寛大なものであるにもかかわらず、議定書の批准をかたくなに拒否してきた。その一方で旧政府は、2005年7月には、同じく批准を拒否するブッシュ米共和党政権とともに、京都レジームを補完するものと述べつつ、地球温暖化問題への共同対処、協力を目的とし、豪州をはじめ米国、日本、中国、インド、韓国の合計6カ国からなる新グループ(Asia-Pacific Partnership on Clean Development and Climate)を立ち上げている。グループの目的は、京都レジームのように拘束力と期限つきの排出削減目石油石油1.3%1.3%水力水力6.8%6.8%その他その他1%1%石炭石炭54.8%54.8%ガスガス14.2%14.2%褐炭褐炭21.9%21.9%出所:豪州エネルギー供給協会図2発電燃料の依存率(FY2006/07)アナリシス標を設定するのではなく、参加各国が協力して、主として排出削減技術、具体的には燃焼のクリーン化や二酸化炭素の地下貯蔵といった技術の開発、普及に取り組むという「ソフト・アプローチ」のものであった。 また旧政府は、価格メカニズムの活用、具体的には排出権取引制度の構築についても、その削減効果自体は認めつつも、資源業界にコストを強いる同制度を導入する前に、何よりもまず二酸化炭素削減技術の開発を行うことが先決との立場であった。それどころか旧政府は、早々と国内排出権取引制度をスタートさせれば、技術開発への投資が阻害されるばかりか、同制度の導入によって産業競争力の低下につながる電気料金の大幅引き上げは避けられないと警鐘を鳴らしていた。 ただ、その旧政府も、地球温暖化問題に対し、昨年の選挙前には積極的な姿勢を見せ始め、排出権取引タスクフォースの提言を受け入れて、2007年7月に国内排出権取引制度の導入を正式に決定した。 これに対して労働党は、環境保護に敏感な党内左派の影響もあり、また労働党は「未来志向」というイメージを売り込むため、さらに連邦選挙において環境保護系候補からの選好票を獲得することも狙って、地球温暖化問題には一貫して積極的な姿勢を見せてきた。最大の特徴は京都議定書への対応で、以前から政権奪取後に可及的速やかに批准することを公約とし、一部の労働党州政府が既にスタートさせていることもあって、温暖化ガス排出量の国内取引制度にも熱心であった。労働党の積極姿勢は、新環境大臣に環境保護活動家であったピーター・ギャレットを、また気候変動問題担当大臣に、環境保護に熱心な党内左派のペニー・ウォンを据えたことからもうかがえよう(本稿末尾の【参考資料】の大臣プロフィールを参照)。りょうが(3) 新政権の環境(特に気候変動対応)戦略 労働党は、保守政党に比べ、生態系の保護に熱心であり、また先住民にもより同情的である。そのため資源・エネルギー開発申請に対する環境アセスメントの厳格さや、先住民の伝統的土地オーナーへの配慮、先住権への配慮では、保守政党を凌駕することが予想される。ただなんといっても重要なのは、地球温暖化問題への対応ぶりで、これが将来、資源・エネルギー業界にも大きな影響を与えることは必至である。 労働党は、地球温暖化問題では一貫して積極的な姿勢を見せている。例えば温暖化ガスの豪州の削減目標値として、2050年までに、2000年時点での排出量を6割削減するとの、かなり野心的な目標を掲げている。2008.7 Vol.42 No.426居B新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業この目標を達成するため、排出権取引制度の導入、再生可能エネルギー源の利用促進、そして石炭燃焼のクリーン化技術の開発、普及等を主張しており、再生可能エネルギーについては、2020年までに、同エネルギーおおむね20%、発電量では6万GW時源からの発電比率を概にするとの目標も提示している。 さて労働党は、既に大小さまざまで合計10本の柱からなる、気候変動対応戦略を公表している。1. 国際的リーダーシップの回復2. 制度変更と排出権取引制度の構築3. 政府調達の活用4. 再生可能エネルギー源の活用5. 一般への働きかけ6. クリーン化技術/エネルギー効率化7. 持続的農業と「吸収」8. 運輸部門のクリーン化9. 研究活動10. 水資源対策 ただし各種政策の一部は、旧ハワード政府が施行した政策を取り込んだもの、あるいは現行政策の継続である。 これらのなかでも中核的施策とされるのが、1、2、4、そして6であり、これらについて以下に詳述する。・ 国際的リーダーシップの回復 国力的には中級国家にすぎない豪州だが、1980年代から1990年代にかけての豪州は、例えば核軍縮や核不拡散問題などにおいて、国連の舞台で重要な役割を果たしてきた。気候変動問題に関しても同様で、京都議定書交渉、そして議定書の詳細内容をめぐるその後の交渉でも、豪州は中核プレーヤーの一国として活躍したが、旧ハワード保守政権は、その京都議定書の批准をかたくなに拒否してきた。 これに対して労働党は、①批准拒否は国際社会での豪州の評価を損なう、②温室効果ガス削減目標達成の補完的手段である「京都メカニズム」が活用できない、③後になって京都レジームへの参加を決定すれば、産業界に与える影響が大きい等と主張し、一貫して京都議定書の批准の重要性を主張してきた。労働党にとってとりわけ重要なのは①で、労働党は議定書の批准は、気候変動問題での豪州の評価を回復するために不可欠なものであり、ひいては国際社会において豪州がリーダーシップを回復する上で必須のものと位置づけている。そしてラッド新政府は公約を遵守して、第1次政権が発足したその日に、速やかに批准するとの正式決じゅんしゅ定を公表し、連邦総督の認証を得て批准の手続きを開始した。 制度変更と排出権取引制度の構築・ 労働党政府は、政府主導で気候変動問題に強力に対処する上で、これまでの組織、制度は不十分、不備であったと考え、新たに気候変動対策室(Office of Climate Change)を設置し、首相直轄の連邦首相府内に置くことを計画している。 さらに、温暖化ガス排出量の削減には、なによりも価格メカニズムの活用を通じて、産業、企業等の削減インセンティブを刺激することが不可欠として、全国的な排出権取引制度の構築を計画している。つい最近までの旧保守連合政府は、豪州国内取引制度をあくまで国際排出権取引制度の一環としてとらえ、国内制度の整備は真の国際制度がスタートし、それが軌道に乗ってからとの考えを持っていた。その背景には、いたずらに国内取引制度をスタートさせるのは、規制の網から逃れている開発途上国はもちろんのこと、とりわけ資源分野での先進国との競争において著しく不利になり、国際取引制度の一環としない限りは豪州の国益が損なわれる、との判断があったと言えよう。 労働党新政府の排出権取引制度は、今年末までに制度の詳細を詰めて、遅くとも2010年から全国的な取引をスタートさせる計画である。そして、取引制度の要件として、①国際的制度との整合性確保、②温暖化ガス削減効果の高いこと、③経済的に責任のあること、④コスト負担や便益の分配問題に関し公平なこと、そして⑤可及的速やかにスタートすること、の五つを掲げている。このうちの①は、EUの排出権取引制度で既に採用されている「総量規制と取引方式(Cap and Trade Approach)」、すなわち年ごとにガス排出量の総量規制値(Cap)を設定した上で、売買可能なトンあたり排出認可証(Permits)を発行し、認可証を売買するとの方式を指している。 そして政府は、中・長期的には豪州の国内制度を、欧州等の同様な取引制度に連結させる計画である。次に③だが、政府は、取引制度が温暖化ガスの低排出技術ならびに再生可能エネルギー源に対する、各企業や産業の技術採用、投資インセンティブを高めるものであるのはもちろんのこと、国際的取引制度の整備に先んじて国内制度をスタートさせる以上は、国内制度が豪州産業の競争力を阻害するものとならぬよう、また資源・エネルギー型産業や輸出産業を不利にするものとならぬよう、最善を尽くす必要があるとしている。ただ国内取引制度の詳細、例え27石油・天然ガスレビューAナリシスばいわゆる「割あて先」の問題や排出枠の有償あるいは無償の供与問題などが決定され、明らかにされるのは、「ガーノー分析・提言書」の完成を待ってから、すなわち今年の末ごろとなる。ただし有償か無償かについては、競売を通じた有償割あて方式が一般的であるが、その理由の一つは、仮に無償割あてとした場合には、排出枠を売却して豪州から撤退する企業が出てくる恐れがあるからと言われる。  同方式は、「究極の炭素税」という面を持っており、有償で排出枠を配分した場合には、いわゆる資金還流問題(Revenue Recycle Issue)、すなわち政府の吸い上げた資金が、政府によりいかに使用されるかという点が重要となる。この点に関しては、資金をエネルギー料金の値上げに直面する低所得者層への補償に充てること、また、低排出ガス技術の開発、普及にも活用されることになろう。  ところで、排出権取引制度を立ち上げるにあたっては、国内の各産業や企業の地球温暖化ガスの排出量実績を把握しておく必要がある。この点に関しては、2007年4月に開催された連邦・州首相会議(COAG)において、温暖化ガス排出量ならびにエネルギー消費量についての全国的、統合的、かつ強制的な報告制度を導入することで合意に達している。その後、制度施行のための法案である「全国グリーンハウス・エネルギー報告法」も成立し、各企業には排出実績を報告することが義務づけられている。 この報告は強制とはいえ、旧政府下ではかなりソフトなアプローチがとられる予定であった。ところが労働党新政府のウォン気候変動・水資源大臣は、2008年の2月初旬に同問題に関する討議書を公表し、そのなかで報告義務を怠った企業に罰金を科すばかりか、企業代表者への刑事罰の適用まで示唆するなど、厳格な姿勢で臨むことを明らかにしている。 再生可能エネルギー源の活用・ 2002年11月、当時のハワード首相が、「国益増進のための戦略的リーダーシップ:錯綜した戦略分野における政策指針」と銘打った政府の指針文書を公表し、同文書のなかで豪州の将来にとっての重要戦略課題として9分野を挙げている。そのうちの一つであったのがエネルギー分野の改革で、これは同分野が輸出産業としてばかりか、国内の他産業への「インプット」としても極めて重要との認識によるものであった。 さらに旧保守政府は2004年6月には、上記戦略課題の一環、あるいは延長に位置づけられる「エネルギー白書(Securing Australia's Energy Future)」を公表している。これは将来のエネルギー安全保障、ならびに地球温暖化問題への対処戦略を論じたもので、その骨子は、①総額5億ドルの地球温暖化ガス排出削減技術の開発プログラム、②総額15億ドルの燃料物品税優遇策の拡大、③総額7,500万ドルの太陽エネルギー利用奨励策、そして④総額1億3,400万ドルの再生可能エネルギー技術の商業化策、等となっていた。 ただ、上記②からも明らかなように、旧保守政府のエネルギー白書は、地球温暖化対策といった環境保護の観点からは総じて消極的なものであり、他方で、石炭をはじめとする化石燃料の重要性を強調し、また化石燃料への継続的な依存の必要性を説くなど、主として保守連合の支持基盤である資源業界や地方有権者への懐柔をもくろんだものでもあった。そして保守政府の温暖化問題への消極姿勢を如実に示したのが、実は上記④の施策であった。 石炭を燃料とする火力発電に多く依存している豪州では、石炭火力発電のクリーン化と並んで、再生可能エネルギー源の活用が温暖化対策では重要となる。このうち後者については、「再生可能エネルギー法(Renewable Energy Act)」の施行に伴い、既に2001年6月より「グリーン電気市場(Green Electricity Market)」と呼称されるビジネスがスタートしている。これは、それまでの「再生可能エネルギー源強制利用目標値(MRET)」が、わずかに全電力量の2%程度にすぎず、その市場も極めて限定されたものであった。そのため2004年エネルギー白書の公表に際して最も注目されたのは、達成目標値を、政府が上昇させるか否かという点であったが、現行のままに据え置いた。その結果、ようやく活発化しつつあった風力発電等の開発投資インセンティブも阻害され、豪州の再生可能エネルギー源産業の発展も遅々としたものとなった。 再生可能エネルギー産業の実態であるが、現在のところ豪州のエネルギー供給全量の5.9%が同エネルギー源によるものである。一方、発電量全体に占める再生可能エネルギー源の割合は、FY2006/07時点では7.8%であったが、実のところそのうちの6.8%分は水力発電によるもので、水力以外の再生可能エネルギー源は極めて小さな発電量にとどまっている。 さて旧保守政府とは対照的に、労働党はクリーン・エネルギーの利用についても一貫して積極的であった。そもそも温暖化ガス排出量の少ない、すなわちクリーンな発電源とは、100万kw時の発電に際し、発生する排出ガス量が200kg未満のものとされる。具体的には、2008.7 Vol.42 No.428^燃料であり、そのため豪州の温暖化ガス排出量の3分の1程度は、火力発電所からのものとされる。他方、石炭は豪州最大の輸出産品であり、FY2006/07の輸出総額は218億ドルにも上っている。また直接には3万人、間接的には10万人を雇用する重要な産業でもある。さらに、安価かつ豊富に存在するが故に、豪州産業の国際競争力の維持には極めて重要な燃料でもある。こういった諸事情から、豪州では将来にわたる石炭の大量利用を前提とした上で、石炭燃焼時の温暖化ガスの大気排出をいかに削減するかが、温暖化問題への重要な対応策と見なされている。 クリーン化技術のなかでも政府が最も注目しているほのが、石炭やガスの燃焼時に発生する二酸化炭素を捕くし、しかもそれを液化した上で地中深くに注入、貯蔵するという技術である(CCS:Carbon Capture and Storage)。CCSの問題点はやはりコストで、とりわけ捕捉段階でのコストがかなり高く、同技術の普及のためには、温暖化ガス排出にコストを課すこと、具体的には、炭素税もしくは排出権取引制度を導入することが不可欠となる。もう一つの問題点は、最大の州であることから温暖化ガス排出量も大きなNSW州に、少なくとも現時点においてはCCS適用の適当な候補地が見あたらない点であるとされる。 ただし二酸化炭素の捕捉、輸送、貯蔵技術が豪州で実用化するまでには、少なくとも10年以上はかかるものと見なされている。 そして石炭のクリーン化技術に関する労働党政府の目玉策が、政府と産業界との共同基金である「全国石炭クリーン化基金(National Clean Coal Fund)」の設立である。一方、政府は産業界の省エネルギー化、水資源の効率利用を目指して、「豪州クリーン・ビジネス(Clean Business Australia)」なるプログラムも計画している。なお、労働党は、こうして開発された技術を海外にも輸出し、豪州をアジア・太平洋地域におけるエネルギー・クリーン化技術の「拠点」にするとの野心的な目標も掲げている。捉そ①水力、②太陽光、③風力、④波力、⑤地熱、⑥バイオといった、再生可能エネルギー源によるものを指すが、豪州は同エネルギー源に極めて恵まれた国でもある。例えば②だが、豪州と隣国のニュー・ジーランド(NZ)には、1日で、両国のエネルギー需要の25年分を賄えるほどの太陽光エネルギーが注がれると言われる。また豪州の南部海岸地域には恒常的に強風も吹いていることから、③も有望であるし、広大な国土、長大な海岸線を抱えることから、④もエネルギー源として期待できる。さらに火山地帯ではないものの、地中深くには高温の岩床が観察され、⑤の地熱発電も利用可能とされる。 こういったことから、労働党政府はクリーンな再生可能エネルギー源の活用を温暖化対策の中核に据えており、2020年までに再生可能エネルギー源からの発電比率を20%程度にまで高めるとの目標を掲げている。 この利用目標値を達成する上で、労働党政府が目玉と位置づけているのが「再生可能エネルギー基金」の創設である。また、再生可能エネルギー源ではないが、温暖化問題の観点からクリーンな原子力発電が世界的にも見直されている。この問題に関し旧保守連合政府は、原子力の平和利用も検討の対象とすべきとの立場であったが、労働党のほうは、昨年になってようやくアナクロな「ウラン3鉱山政策」を廃棄したことからもうかがえるように、原子力問題全般に消極的で、原子力発電所の国内建設はもちろんのこと、産出ウランの国内での濃縮化、あるいは放射性廃棄物の国内貯蔵、のすべてに強く反対している。・ クリーン化技術/エネルギー効率化 労働党政府は、温暖化ガス削減技術、とりわけ石炭利用火力発電所向け温暖化ガス削減技術の開発、普及、そして使用エネルギーの効率化策も重視している。 豪州の発電は膨大な埋蔵量を誇る石炭を燃料とした火力発電が主体であり、その比率は全発電量の約8割となっている。言うまでもなく、石炭は温暖化ガス集豪州新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業5. 政策決定に関連する豪州の政治環境 以上、現時点で明らかになっているラッド労働党政府の資源・エネルギー政策、そして石油・ガス政策全般の概略を述べてきたが、これらの政策が今後修正を求められることは大いにあり得る。その理由として(1)強力な上院と「両院のねじれ現象」、(2)連邦制の存在、が考えられるが、おそらく上記政策分野に関する限り、最大の修正要因となり得るのは(3)政府内の政治闘争、であろう。29石油・天然ガスレビューAナリシスば「バランス・オブ・パワー」を握る可能性の高い、過激なグリーンズの要求次第では、政府が政策の修正を余儀なくされることもあり得よう。(2)連邦制の存在 もう一つ重大な政治環境は、豪州が議院内閣制と同時に、米国と同様の連邦制を採用している点だ。この連邦制の下では、政府の権限は、①例えば国防や外交のように連邦の専管的権限とされるもの、②州政府の専管的権限、そして③連邦と州政府との権限がオーバーラップする、あるいは権限が共有される共管的権限、の三つに大別される。ただ州権擁護に少なからぬ配慮をした豪州の連邦制も、百数十年の歳月を経て、連邦と州との相対的力関係は、着実に連邦に優勢な方向へと推移している。この連邦制だが、個人主義を政治哲学とする保守の自由党が、伝統的に州権擁護を唱えてきたのに対し、労働党のほうは伝統的に中央集権的で、連邦制にはかなり冷淡であった。ところが、これまで連邦以外では「全国制覇」を達成していたこともあって、最近の連邦労働党はむしろ州権擁護へと転向し、例えば労働党は「協調的連邦主義」と形容しつつ、各州等労働党政府とのコンセンサス重視、協力重視の路線を榜している。ょうぼう標ひ 2007年、連邦でも労働党政権が誕生したことによって、労働党は文字どおり「完全全国制覇」を果たしたわけだが、ただ今後の豪州政治が「なれ合い」「談合的」になると考えるのは誤りであるし、また一挙に協調的連邦主義が現出すると見るのも早計である。というのも、各州等の労働党政府は連邦からの助成、支援をいかに分捕るかという点で互いにライバル関係にあるし、また党が同じであれ、連邦と州等政府では競合することも多いからだ。 この連邦制の存在も、連邦政府の政策がそのままの形で施行されることの阻害要因である。例えばウラン資源の開発・生産問題については、同じ労働党州政府のなかでも「温度差」があることから、仮に連邦労働党政府が積極的な開発を望んだとしても、それが全国的に実現するとは限らない。すなわちQLD州労働党政府などは開発に消極的で、それどころかカーペンターWA州労働党政府は、探鉱活動は容認しつつも、開発には断固反対している。一方、世界最大規模のウラン鉱山を抱えるSA州労働党政府は積極的、といった状況である。ただ資源・エネルギー政策全般、また地球温暖化政策に関しては、連邦と州労働党政府との間に重大な意見の相違、あるいは競合する問題が存在するわ2008.7 Vol.42 No.430(1)強力な上院と「両院のねじれ現象」 第1点は、強力な連邦上院の存在と「両院のねじれ現象」の出現である。 日本と同じく豪州も、議院内閣制や2院制を採用しているが、両国の議会制度の大きな相違点の一つは、豪州の上院が日本の参議院に比べて強い権限を有していることである。ところが政権政党にとって問題なのは、豪州の下院議員選出方法が2大政党制を助長する1人1区の小選挙区制であるのに対し、上院のほうは、州を一つの選挙区とする大選挙区の比例代表制であることである。この選挙方式により、上院のほうでは少数政党にも十分当選のチャンスが生じ、与党が過半数割れする事態、すなわち下院を制した政党あるいは政党連合が上院では過半数を制することができない「両院のねじれ現象」が頻繁に現出する。その結果、ときには無所属議員やシングル・イシュー政党が、そしてこれまでは少数政党の民主党が、しばしば上院で「バランス・オブ・パワー」を掌握し、与党は「上院の抵抗/妨害」に苦しむことになった。この、豪州上院の権限の強さと「両院のねじれ現象」は、豪州政治を考える上で最も重要な点と言える。 さて2007年の下院選挙では大勝したラッド労働党新政権も、上院選挙では4議席増こそ果たしたものの、合計では32議席と、法案の可決に必要な39議席以上には程遠い状況である。また野党保守連合は2議席減の37議席と、新上院では与野党ともに上院の過半数には達していない(表2)。一方、新上院の任期がスタートする2008年の7月1日までは、野党保守連合が39議席と、上院の過半数を制する状況が続き、ラッド政権の政局運営も困難を伴うことが予想される。いずれにせよ、強力な上院と「両院のねじれ」が意味するのは、新政権の各種重要政策がそのままの形で施行される公算はかなり小さいということである。本報告書の主要テーマである資源・エネルギーや環境政策分野に関しては、もはや与野党の間に重大な差異があるわけではないが、やはり「各論」での保守側の抵抗や、しばし表2豪州連邦議会の新しい勢力分野政党/議会労働党自由党(連立)国民党(連立)民主党グリーンズその他計上 院下 院3237005276835510002150居B新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業けではないため、連邦制の存在も大きな阻害要因にはならないと考えられる。(3)政府内の政治闘争 資源担当大臣の政策遂行、とりわけ石油・ガス政策の阻害要因、あるいは修正要因となり得るのは、「両院のねじれ現象」でも連邦制の存在でもなく、むしろ党内闘争であると考えられる。 資源・エネルギー分野の政策決定過程において、直接あるいは重要なプレーヤーとなるのは、ラッド首相、ファーガソン資源・エネルギー・観光大臣、ギャレット環境大臣、ウォン気候変動・水資源大臣であるが、他にも政府の「金庫番」であるウェイン・スワン財務大臣やリンジー・タナー予算・規制緩和大臣、環境保護派で左派の実力者であるアンソニー・アルバニーズ・インフラストラクチャー兼運輸・地方開発兼地方政府大臣、野党時代に影の資源・エネルギー大臣を経験したクリストファー・エヴァンズ移民・市民権大臣やジョエル・フィッツギボン国防大臣、そして資源大州WA州の出身ということもあって、スティーブン・スミス外務大臣なども重要な存在と考えられる。 また、2007年の連邦選挙で当選したばかりの新人議員ではあるが、近い将来の閣僚就任が確実で、それどころか将来の労働党党首の候補とまで噂されるビル・ショーテン政務次官も、一定の影響を及ぼし得る。その理由は、つい先日までショーテンが、強力な右派系の大手労働組合である豪州労働者組合(AWU)の全国書記長の座にあったからにほかならない。さらに、連擢された邦議員初当選組ながら、即座に閣外大臣に抜デュビス内務相も重要である。 デュビスは、NSW州労働党政権で長らく法務大臣や環境大臣も務めた環境通のベテラン政治家であるからだ。 このなかで、豪州経済における資源・エネルギー分野の意義、重要性を十分に理解しているいわゆる「現実派」の代表格は、ファーガソン、スワン、エヴァンズ、フィッツギボン、スミス、そしてショーテンである。一方、これらとは対照的に、強硬な環境保護派であるのがギャレットとアルバニーズとなっている。とりわけギャレットは確信犯的かつ過激な環境保護派で、実際にギャレットは、産業界はもちろんのこと、関連する先住民の伝統的土地オーナー、それどころか担当大臣のファーガソンにも特段の相談もせずに、カーペンターWA州政府と共同して、2008年の2月に新政策をぶち上げている。 その内容は、膨大なガスの埋蔵量を誇るWA州キンばってきバリー地域を対象とした環境政策である。具体的には、従来の「ケース・バイ・ケース」による開発プロジェクト環境評価制度を改めて連邦環境法のレジーム内、すなわち環境保全および生物多様性保護法(Environment Protection and Biodiversity Conservation Act)のなかに、環境評価基準、勘案要因を明瞭にした環境アセスメントのフレームワークを整備するというものである。同政策の公表に際しギャレットは、これを通じて資源業界も明瞭な環境評価基準、あるいは要因を知り得るわけで、業界、企業の長期的な計画も立てやすく、またプロジェクトへの取り組みも容易になるとして、環境評価の不透明感、複雑性排除という観点から業界へのメリットを強調している。しかし、確かに透明感は深まるとしても、同政策が環境アセスメントの厳格化を狙ったもの、あるいは資源開発に対する連邦政府の介入を狙ったものであるのは明らかである。 その他、ギャレットは、各ガス田からの生産ガスを一カ所の液化天然ガス拠点施設、拠点港に集めて、そこで必要な処理をし、船積みすべきであるとのキンバリー・ハブ構想を提案している。 また地球温暖化問題が政府全体、そしてラッド首相自身にとっても政治上極めて重大であること、また担当する主管大臣が、同じく環境保護派のウォンであることからも、資源・エネルギー産業の振興に積極的な現実派にとっては、温暖化対策との兼ね合い問題も重要である。ただ地球温暖化との絡みでは、ファーガソンなどに有利な状況もある。それは政権交代直後の省庁再編で資源・エネルギー・観光省(DRET)が発足した際に、地球温暖化関連の重要な三つの政策分野がDRETの所管に組み込まれたことであった。 具体的には、①再生可能エネルギー源の技術開発、②化石燃料エネルギーのクリーン化、③産業エネルギーの効率化、の三つである。第4章において詳述したとおり、上記の三つは、4本の柱からなる労働党の地球温暖化対応中核戦略のうちの2本に相当するものである。こういった重要な地球温暖化対策が、DRETの所管となったことの意味は相当に大きく、資源・エネルギー分野の振興と温暖化対策とのバランスを保つべく、政府の再生可能エネルギー源対策やクリーン化対策に関与できるということである。 またファーガソンが資源・エネルギーを所掌していること自体、同産業にとって有利と言える。その理由としては、第1に、1996年に連邦政界入りする前のファーガソンが、NT準州の鉱業労働者を担当する労働組合の専従員であったことから、資源・エネルギー業31石油・天然ガスレビューAナリシス そのファーガソンは、自身が支持する資源・エネルギー政策を政府の正式政策として採用させるため、資源・エネルギー政策と、ラッド首相のグランド・ストラテジーである「国家建設」(Nation Building)、すなわちブロードバンドの充実策をはじめとする全国インフラ整備計画とをリンケージさせ、しかも資源・エネルギー政策を地球温暖化対策の一環として位置づけるべく、今後鋭意努力するものと予想される。つうぎょう暁していること、第2に、ファーガソンは労組界に通頂上組織の豪州労働組合評議会(ACTU)の議長を務め、労働界をはじめとして相当な人脈を誇っていること、第3に、派閥政治の労働党にあって、ファーガソンが党内穏健左派、あるいはファーガソン左派と呼ばれる左派分派の領袖で、したがって党内での発言力も相当たに大きく、権謀術数にも長けていること、そして第4に、一般の左派政治家のイメージとは裏腹に、ファーガソンが経済通で、しかも産業振興やビジネス振興に熱心であること、等が指摘できる。【参考資料】マーティン・ファーガソン(Martin John Ferguson)資源・エネルギー・観光大臣のプロフィール[ 生い立ち・略歴 ] マーティン・ファーガソン資源・エネルギー・観光大臣は、1953年12月12日、シドニーで誕生。父親がNSW州の副首相を務めた労働党左派の大物政治家であったことから、ファーガソンは早くも15歳で労働党に入党。シドニー大学経済学部を優等で卒業後は労働界に身を投じ、最終的には労働組合の頂上組織である豪州労働組合評議会(ACTU)の議長にまで上り詰めた。[ 政治家歴 ] 政界入りは1996年連邦選挙のときで、労働党の超安全選挙区の一つであるVIC州のバットマンから初出馬し、見事当選を果たした。ただファーガソンはシドニー育ちであり、要するにバットマンには「落下傘降下」をしたことになる。そのためバットマンでの労働党予備選挙(党の公認候補を選出する内部選挙)をめぐっては、VIC州強硬左派グループから相当な攻撃を受けた。だがさすがに大物だけあって、ファーガソンには当時のキーティング首相ばかりか、党の幹部会からの強い後押しもあったことから、結局ライバル候補者たちは出馬の取り消しを余儀なくされたという経緯がある。 そして早くも初当選の直後から、影の雇用・訓練大臣に抜擢され、その後も地域開発、運輸、第1次産業など、さまざまな所掌を担当している。ラッド労働党政権の第1次組閣では、資源超大国豪州の重要性がますます高まるなか、資源・エネルギー・観光大臣に任命され、現在に至っている。 付言すれば、ACTU議長のポストは労働党有力政治家への登竜門となっている。ホーク元首相をはじめとして、ホークの後任は元党首のサイモン・クリーン貿易相であるし、クリーンの後任がファーガソン、さらにファーガソンの後任のジェニー・ジョージも連邦政界入りしている。[ 思想・人柄 ] ファーガソンは労働党左派に属するものの、「ファーガソン左派」と呼称される穏健的な分派を率いており、この分派は左派内でも最大の影響力を持つ。ファーガソンの党内影響力の強さは、例えば、一貫して世論調査支持率の低迷にあえいでいたクリーン元党首に引導を渡したのが、当時のフォークナー上院リーダーとファーガソンであったことからも明らかであろう。 なお、ファーガソンは資源・エネルギー分野に通暁しており、資源業界からの評価も高い。またファーガソンは反核の姿勢が強い左派ではあるものの、労働党のアナクロな「ウラン3鉱山政策」には以前から批判的であった。[ 家族・趣味・その他 ] 家族は妻のパトリシアとの間に2人の子供がいる。趣味はラグビー観戦などで、オジー・ルールではコリングウッド、リーグではパラマッタのファンである。 ファーガソンには4人の兄弟姉妹がいるが、全員が労働組合にかかわった経験がある。また1歳上の実兄であるロリーは、ファーガソンと同じく労働界から連邦政界入りし、現在は政務次官を務めている。2008.7 Vol.42 No.432居B新政権の資源・エネルギーおよび環境政策と石油・ガス事業ピーター・ギャレット(Peter Robert Garrett)環境・遺産・芸術大臣のプロフィール[ 生い立ち・略歴 ] ピーター・ギャレット環境・遺産・芸術大臣は、1953年4月16日、男ばかり3人兄弟の長男として、NSW州の田舎町ワルンガーで誕生。父親は戦災孤児であったという。ギャレットが18歳のときに、ビジネスマンであった父親が病死。 その後はギャレットが2人の弟の父親代わりとなったが、23歳のときには母親が自宅の火事で死亡。ギャレットは事故の現場に居合わせ、必死で母親の救出を試みたという。この悲惨な経験は、当然のことながらギャレットのその後の人生観に甚大な影響を及ぼした。 豪州国立大学とNSW大学で学び、NSW大学からは法学士の学位を取得。学生時代より環境問題に関心を抱いていたギャレットだが、その後計9年間にわたり、豪州でも最大規模の環境保護団体である「豪州環境保護基金」(ACF)の会長を務めている。 ただギャレットを著名にしたのは、ACFの会長としてではなく、豪州の有名なロック・バンド「ミッドナイト・オイル」のリーダー兼ボーカルとしての演奏活動であった。 長身で丸坊主、そして異様なフリをつけて歌うスタイルなどから、ギャレットは過去4半世紀にわたって相当な人気を博していた。ちなみに同バンドは、2000年シドニー・オリンピックの閉会セレモニーにも出演している。[ 政治家歴 ] こういった知名度に加え、環境問題へのコミットメントや知性の高さが、当時のレイサム野党労働党党首の目に留まり、結局、労働党指導部にリクルートされるような形で入党している。 そして2004年10月の連邦選挙で見事初当選を果たし、2006年12月に実施された労働党影の内閣の改造では、当選したばかりの1年生議員の身ながら、影の閣僚に抜擢され、しかも2007年連邦選挙で重要争点となることが予想された、環境と気候変動の所掌を与えられている。 そして選挙後の第1次労働党政権の組閣では、気候変動問題の所掌は奪われたものの、閣内の環境・遺産・芸術大臣に任命され、現在に至っている。[ 思想・人柄 ] かつてのギャレットは極左的なスタンスを保ち、核兵器廃絶、ウラン採掘反対、森林保護、人権擁護運動、さらに豪州領土内の米軍施設の撤去要求や米艦船の寄港反対といった反米闘争でも、過激な言動を繰り返してきた。 ただし大政党の1員となったいま、ギャレットは党議に従い、チーム・プレーヤーに徹することを約束しており、実際に最近の言動は過去のそれとは相当に異なっている。 これをとらえて、かつてはギャレットと親しかった環境保護政党グリーンズのブラウン党首などは、「大政党に入って変節した」としてギャレットを鋭く批判している。 一方、ギャレットは敬虔(けいけん)なキリスト教徒であり、社会政策分野では保守的な面も併せ持っている。 例えば安楽死や堕胎などには反対の立場である。[ 家族・趣味・その他 ] 家族は、ドイツから移民した精神療法士の妻ドリスと3人の娘で、ギャレットは家庭を非常に大切にするとともに、家族のプライバシーにも気を使っている。 またギャレットは、悲哀をともにした弟2人とも強い絆で結ばれている。 人気のロック・ミュージシャンであっただけに相当に裕福で、本宅はNSW州ミタゴンの広大な牧草地にある。ペニー・ウォン(Penny Wong)気候変動・水資源大臣のプロフィール[ 生い立ち・略歴 ] ペニー・ウォン気候変動・水資源大臣は、1968年11月5日にマレーシアで誕生。父親は中国系マレーシア人の建築家で、母親は豪州人の教師兼ジャーナリストであった。 ウォンは幼女時代の7歳ごろ豪州にやってきたが、アジア系の顔つきから小学校ではいじめにもあったという。ただ持ち前の負けん気と刻苦勉励で、すぐに学業優秀なクラスのリーダーとして頭角を現し、奨学生として名門私立高校に進学。そして高校卒業後は、SA州のアデレード大学医学部に入学。ところが医学は自分の道ではないとの思いから、即座に法学部へと転部し、結局、同大学から法学士と人文科学士の学位を優等の成績で取得している。 ウォンは学生時代から左派系大労働組合の「建設・森林・鉱業・エネルギー組合」(CFMEU)の活動にかかわってきたが、大学卒業後には同労組の専従員として活躍。 その後はカーNSW州労働党政権の閣僚のスタッフ、法廷弁護士、さらに労組の法律顧問などを歴任している。33石油・天然ガスレビューAナリシス[ 政治家歴 ] 2001年の連邦上院選挙にSA州から初出馬し、見事当選。そして2004年10月の連邦選挙後に実施された影の閣僚の改造で、念願のフロント・ベンチ入りを果たしている。ちなみにウォンは、アジア生まれの女性としては豪州で初の連邦上院議員で、また大政党のフロント・ベンチ入りを果たした初のアジア系議員でもある。さらに2007年連邦選挙後の労働党第1次組閣では、極めて重要な気候変動と水資源問題を担当する閣内大臣に抜擢され、現在に至っている。 大臣就任直後にウォンは、インドネシアのバリ島で開催された「気候変動枠組み条約第13回締約国会議」(COP13)に出席したが、国際舞台は初めてという「新人」であるにもかかわらず、その堂々たる交渉ぶりや根回しの手腕は、内外からも高く評価された。[ 思想・人柄 ] ウォンは労働党の左派に所属し、平等や社会的公正といった問題に強い関心を抱く。 その背景には自らが経験した人種差別の経験や、両親の離婚があった。 またウォンが17歳のときに、交換留学生として滞在したブラジルでの経験も大きい。 ウォンによると、ブラジル社会の貧富の格差のすさまじさを目の当たりにしたことが、その後の自分の信条を形づくる一つの要因になったとのことである。 さらにウォンが同性愛者で、その点でさまざまな中傷にあったことも、もともと社会的弱者の救済問題などに熱心なウォンの人柄を強めてきたのかもしれない。 社交的な人物として知られる。[ 家族・趣味・その他 ] 趣味はボート漕ぎなどである。既に亡くなった父方の中国人の祖母を深く敬愛しており、新人議員としての議場での処女演説では、この祖母のことをわざわざ取り上げている。政界での師匠は既に引退した左派の大物で、SA選出のボルカス元上院議員である。執筆者紹介松本 直樹(まつもと なおき)1954年生まれ。慶応義塾大学卒業。会社勤務を経て1987年、オーストラリア国立大学国際関係学科修了、同大学豪日研究センター博士課程中退。1992~1995年、在オーストラリア日本国大使館専門調査員、1995~1997年オーストラリア防衛大学国防研究センター客員研究員。1996年より政治コンサルタント。専門は、豪州政治、日豪関係、安全保障問題など。趣味は、ライフルとピストル射撃(経験20年)、パワード・パラシュート(2人乗りのプロペラ・エンジン付きパラシュート、2007年、パイロット・ライセンスを取得)とアウトドア派。下記のとおり『台頭する国営石油会社』が今春書籍になりましたのでご紹介します『台頭する国営石油会社―新たな資源ナショナリズムの構図』編者:JOGMEC 発行:(株)エネルギーフォーラム[目次]第1章 国営石油会社時代の到来:その性格と意味(7シスターズから新7シスターズへ石油会社ランキング ほか)第2章 伝統的な国営石油会社(国営石油会社のチャンピオン:サウジアラムコ(サウジアラビア)下流国際展開のパイオニア:KPC(クウェート)ほか)第3章 部分民営化された国営石油(ガス)会社(アジア国有石油会社の雄:CNPC(PetroChina)(中国)天然ガスの巨人:ガスプロム(ロシア) ほか)第4章 革新的な国営石油会社(国際化のトップランナー:ペトロナス(マレーシア)北欧のプリンス:STATOIL(ノルウェー) ほか)2008.7 Vol.42 No.434
地域1 大洋州
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国・地域 大洋州,オーストラリア
2008/07/18 [ 2008年07月号 ] 松本 直樹 三宅 裕隆
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