ページ番号1006349 更新日 平成30年2月16日

ピークオイル説とエネルギー生産予測

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レポートID 1006349
作成日 2008-09-19 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般探鉱開発
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2008
Vol 42
No 5
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC調査部本村 眞澄(編者)ピークオイル説とエネルギー生産予測ピーター・マッケイブ氏講演(CSIRO石油資源部)はじめに 2008年5月にオーストラリアのCSIRO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization)石油資源部のピーター・マッケイブ(Peter J. McCabe)博士が米国石油地質家協会(AAPG)の主宰する特別講義プログラムで来日、22日にショートコース「将来のエネルギー・ミックスにおける地質制約」*1、23日に「デルタシステム」*2と「世界の油ガス根源岩の時空分布」*3の講演を行った。ショートコースでは、JOGMECも協賛の形で参加している。 マッケイブ博士の専門は堆積学と層序学で、河川-デルタ層序、挟炭層、石油地質に関する論文を数多く発表しており、化石燃料に関する研究を産学官で30年以上続けてきた。米国地質調査所(USGS)に所属していた時期は、資源量評価とエネルギー経済に関する研究に力を入れ、世界の残存油ガス鉱量を推定した「世界のエネルギー資源評価2000(USGS World Energy Assessment 2000)」のスタディにも参加している。 マッケイブ博士が1998年のAAPGの雑誌に掲載した論文、「エネルギー資源-潤沢なのか、それとも早い枯渇か?」*4は、ハバートらの資源量を固定的なものとして生産量を予想する手法を「新マルサス主義」として批判するとともに、「資源ピラミッドモデル」を基に資源量は技術革新や経済性によって上乗せされるもので固定的ではないとの主張を展開し、多くの注目を集めた。この論文で提唱された資源ピラミッドモデルは、石油資源に関する議論でよく引用されている。 3時間にわたるショートコースでは世界の化石燃料遺産を吟味し、これからのエネルギーミックスが残存資源の量と場所にいかに制約されているかについてさまざまな角度から検討が加えられた。テーマの大きさから、地質研究家のみならず、世界のエネルギー需要に興味を持つ他分野の人にも関心が持たれるものであり、地質技術者以外にも多様な専門家を含め約30名の聴衆が集まった。 本稿では、博士の了解を得て、ピークオイルに関する議論を展開した最後の40分ほどを中心に録音から起こし再構成して、講演資料とともに採録し掲載する。なお、文中の小見出しは事務局がつけた。(本村記)1. ハバートと「ベル型」曲線 学生時代に私が強い印象を受けたことの一つに、ローマクラブの『成長の限界』があります。このなかでは、将来の石油や天然ガス、石炭の生産などさまざまな予測がなされていました。ローマクラブというのは、引退した政治家や現役の政治家からなるグループですが、実際の予測については専門家たちを集めて行われております。まず、1972年の時点で分かっている石油埋蔵量と消費量を調べ、今後この消費ペースが継続されれば2003年には世界の石油が枯渇し、2010年には天然ガスが、4272年には石炭が恐らく枯渇するだろうとい*1:“Geological Constraints on the Future Energy Mix”*2:“Deltaic System and Super-systems. Controls on Petroleum Accumulation”*3:“Distribution of the Worl's Oil and Gas source Rocks in Space and Time. Perspectives for Exploration in Frontier Basins”*4:McCabe, Peter J.(1998), Energy Resources - Cornucopia or Empty Barrel?, AAPG Bulletin, v.82, No. 11, P. 2110~2134.1石油・天然ガスレビューAナリシスう予測を立てました。ただしこれは、石油消費における埋蔵量というものが、製造業で言うところの一種の「在庫」に類似した性格(warehouse concept)*5を持っていることを度外視しているケースです。 それでは、消費ペースが急激に増加するケースはどうでしょうか?この傾向が続けば1992年には世界の石油が枯渇し、1994年には天然ガスが、2083年には石炭が枯渇すると予測されています。石油埋蔵量が5倍と想定したケースでも、やはり2022年には石油は枯渇し、2021年には天然ガスが、2122年には石炭が枯渇すると予測されました(表)。 「未発見の石油がどれだけ残されているか正確な量は分からないが、供給に限界のあることは明らかである。さらに、発見の容易なものは既に見つけられており、発見の難しいものが残されている」。さて、皆さんはこの言葉を幾度も聞いたことがあると思いますが、これはマリオン・キング・ハバート(M. King Hubbert)(写)の1938年の論文の一節です。これは当時においても真実でしたし、今日においても真実です。われわれは発見の難しい油田を見つけようと努めています。ただし、ただ待っていれば見つかるものではなく、われわれが積極的に見つけに行く必要があります。ハバートはアメリカの地質学の歴史のなかでも第一人者でしたが、ハンマーの代わりに数学を使った初めての地質学者でもありました(笑)。アメリカで彼は、地質モデルの創始者的な存在と見られており、また彼は石油貯留岩研究に関する先駆者でもあります。 とはいえ、最もよく知られているのは、彼の長期的な化石燃料の生産曲線でしょう。彼はこれをベル状の曲線で示していますが、ハバート自身は、これはどのような形でもかまわない、単純化するためにベルの形を選んだのだと言っています。彼は、イギリスのコーすずンウォール州やデボン州からの錫の生産量の履歴について研究したこともあり、そこでベル状に近い生産曲線を見出しました(図1)。 そこでハバートは、石油やガスもベル状の生産曲線を描くのではと考えました(図2)。ハバートは、石油生産量は1回または複数回のピークを迎えた後に、最終的表ローマクラブの予測(1972年)による資源枯渇の時期1972年の消費量を前提消費量の急増を前提既知埋蔵量石 油天然ガス石 炭出所:Club of Rome, 19722003年2010年4272年1992年1994年2083年既知埋蔵量の5倍消費量の急増を前提2022年2021年2122年Annual Tin Production from Cornwall and Devon, U.K.トン10,0005,00001750180018501900年写マリオン・キング・ハバート(M.King Hubbert, 1903~1989)図1イギリスのコーンウォール州とデボン州 からの錫の生産量の履歴出所:D. F. Hewett, 1929, Cycles in Metal Production*5: ある時点まで推定埋蔵量のカテゴリーにあった鉱床が坑井の掘削によって存在が確認されると、それは確認埋蔵量のカテゴリーに移ることになる。このことから、工場において原材料から製品となって工場の「在庫」に入るのと類似の過程と見なされる。詳しくは、McCabe氏の論文(前ページの脚注*3参照)のP.2114とP.2117の記述参照。2008.9 Vol.42 No.52sークオイル説とエネルギー生産予測 ピーター・マッケイブ氏講演(CSIRO石油資源部)に減少傾向に転じると確信していましたが、当初は、アメリカにおける石油生産の減少時期は明確ではないが、1950年よりも後になることはないのではないかと予測しました。彼はこの予測を1950年まで、最大1960年代まで、さらに1970年までと引き延ばしていったため、最終的に正しい予測に行き着いたわけですが、人々は彼の最後の予測だけを記憶しています。この予測により彼は大きな評価を得ました。 そして1969年に彼は世界の石油生産を予測します。また、彼が最も自信を持っていたのがこの曲線です(図3)。世界の石油資源量を1兆3,500億バレルとする前提に立つと、世界の石油生産量は1990年にはピークを迎える。しかし、究極資源量をより大きく見積もって2兆1,000億バレルとすると、石油生産のピークは2000年に近くなると言っています。Hubbert's1969 World Oil Estimates10億バレル/年Hubbert1,350 BBO curveHubbert2,100 BBO curveProduction40353025201510Hubbert’s Curve Production rate1920194019601980200020202040206020802100年190005Time出所:Hubbert, 1966出所:Hubbert, 1969図2ハバートが提唱する石油・天然ガス生産量に関するベル型曲線図3ハバートによる世界の石油生産予測(1969年時点)2. 生産曲線を決めるのは資源量ではない この錫や石炭、石油の生産予測の手法を考えた場合、資源量が分かっているのであれば、累積生産量が分かるし、生産曲線が分かるのであれば、将来の生産曲線も分かるのではないかと一般には考えます。しかし問題は、その資源量が分からないということなのです。そしてさらに、生産量の曲線の形状は長期的な需給関係によって決まります。消費される資源の総量が問題となる、というだけの単純な話ではないのです。 例えば、図4はペンシルベニア州の無煙炭(anthracite)の生産曲線ですが、きれいなベル状の曲線を描いていますね。この大きく落ち込んだ部分は鉱山労働者によるストライキが原因です。これをご覧になって皆さんは、ペンシルベニアの無煙炭も枯渇したなと考えると思います。でも、ペンシルベニアの地下には、これまで生産してきた量の4~5倍もの無煙炭が生産されずに眠っているのです。 それではなぜ、このようなベル状の曲線となったのでしょうか。20世紀初頭から無煙炭は住宅や建物の暖房3石油・天然ガスレビュー用の主要な燃料として使用されてきました。しかし安価でクリーンな暖房用の燃料として天然ガスの開発が進万トン100806040200Production of Pennsylvania Anthracite18401860188019001920194019601980年(注) 明瞭なベル型曲線を描いている(生産量の鋭い切れ込みは鉱山労働者のストライキによる落ち込み)出所:McCabe, 1998図4ペンシルベニア州の無煙炭(anthracite)の生産曲線roduction of British Coal万トン300Production Curve determined by the Interactionof Supply and Demand in an Open MarketアナリシスSubstitute fuelsbecome available Cheapersubstitutesresult indecreaseddemandTimeLower pricesstimulatedemandProduction rate(注) 左:低い価格が需要を刺激 頂部:代替燃料が出現 右:より安い代替燃料のために需要が減少出所:McCabe, 19982001000184018601880190019201940196019802000年出所:McCabe, 1998図5イギリスの石炭の生産曲線図6オープンな市場での需要・供給の相互作用で決められる生産曲線み、やがて住宅の暖房用の燃料は無煙炭や他の石炭から天然ガスへと転換されていったのです。ですから、無煙炭の需要が低下し、ペンシルベニアの無煙炭にも関心が持たれなくなりました。 イギリスの石炭も同様です。先ほども申し上げましたように、かつてイギリスの石炭は世界の主要なエネルギー源でした。そして図5に見るように、これもまたベル状の曲線を描いて衰退しています。ここでもまた皆さんはイギリスの石炭も枯渇したと考えるでしょうが、イギリスには累計生産量の5~6倍の石炭がまだ生産されずに眠っています。ポイントは、誰がイギリスの石炭を求めているかということです。実際には、イギリスの石炭に対する需要はほとんどなく、世界中のどこにも売ることができないのです。産業という視点から見れば、イギリスはもはや工業国ではありません。イギリスでは鉱物の精錬にも、海運業にも、鉄鋼業にも石炭は使われなくなりました。石炭の供給よりも、石炭以外のエネルギー供給が上回っているのです。 例えば、私が幼い頃、イギリスの家庭では石炭を燃やして暖を取っていました。しかし、1960年頃になると北海で天然ガスが発見され、家庭でガスが使用されるようになりました。そしてすべての家庭で暖房用の燃料が天然ガスに転換され、石炭の需要があっという間に減少したのです。工業用の石炭は、古い時代にイギリスで、次いで北米で使用されるようになり、そして日本や韓国で使用され、そして現在では中国が使用しています。そして、イギリスの重工業は姿を消し、現在イギリスで唯一の石炭需要は、発電用燃料のみとなりました。それも過去20年ほど減少を続けています。興味深いのは、実際に石炭価格は上がっているということです。英国ではマーガレット・サッチャー首相(当時)が自由市場を開きましたが、石炭産業は保護の対象で自由市場ではないため、価格は高くなっているのです。 この生産曲線というものは、オープンな市場での需要と供給の相互作用によって決まります。生産曲線を年代を追ってみて分かるのは、初めの立ち上がりの部分では、価格が低いため需要が増え、そして、遅かれ早かれ、生産がピークになる頃に代替燃料が出回るようになり、これ以後の段階に入ると、より安い代替燃料に取って代わられるために需要が減少して、図に見るようなベル型の曲線になります(図6)。3. ピークオイル予測と実際の結果 さて、次にいくつかのピークオイル予測と生産実績を見ていくことにしましょう。 最初のものは、オーストラリアの原油生産の推移です(図7)。1965年からの生産量を示していますが、1990年には原油の生産量は約50万バレル/日となっていました。石油価格は生産が伸びるなかで上昇していきまし2008.9 Vol.42 No.54sークオイル説とエネルギー生産予測 ピーター・マッケイブ氏講演(CSIRO石油資源部)た。1990年時点での究極資源量予測は60億バレルで、それまでにオーストラリアで生産された原油は累計31億バレルです。したがって、これらのことから判断しますと、半分はもう生産し尽くした状態にあり、生産曲線のピークの部分にきているということになります。そして、ピークオイルの主唱で著名なコーリン・キャンベル(Colin Campbell)がその年に行ったオーストラリアの石油生産予測によりますと、1990年以降は生産が減退することになります。 実際はどうなったでしょうか?2005年にはオーストラリアの累計生産量は61億9,000万バレルに達しましたが、一方で、米国地質調査所(USGS)の2000年のスタディによれば資源量は142億バレルとなっております。したがって、図7にありますように、2000年頃にはピークに極めて近づき、その後下降線をたどることになります。オーストラリアの規模の小さい限界油田からの生産量は10%増加していますので、実際には生産は若干持ち直し、かなりの年数にわたって、この生産レベルを維持するでしょう。私個人の感覚からしますと、この予測は、それでもかなり控えめな数字に思えます。 こちらはカナダの例です(図8)。実際の生産量と、キャンベルが1991年と1996年に行った石油生産予測とを比較しております。90年代の終わりに予測を後追いするかのように一時期減退を見せておりますが、その後生産は好調になり、年率約5%の成長が続いています。カナダの場合、ここ10年間、石油企業は非在来型(unconventional)資源の開発に取り組んでおり、その成果が出ています。 米国では生産は減少してきていますが、カナダの例と同様に、実際の生産量に比べると、キャンベルの予測は過小評価であったことが分かります。石油生産には上乗せがあるということです(図9)。Australia - Crude Oil Production万バレル/日25020015010050Campbell’s(1991)predicted production8070605040302010019651970出所:USGS197519801985199019952000200520102015年019901991出所:USGSCanada - Crude Oil Productionand Campbell’s Forecasts of Production 万バレル/日Actual1996 Forecast1991 Forecast1992199319941995199619971998199920002001200220032004年図7オーストラリアの石油生産履歴とキャンベルの1990年での途中予測図8カナダの石油生産履歴とキャンベルによる2度の生産予測との比較U.S.- Crude Oil Productionand Campbell’s Forecasts of Production万バレル/日Actual1996 Forecast1991 Forecast199319941995199619971998199920002001200220032004年800700600500400300200100019901991出所:USGS1992Campbell’s 1989 Forecast of World Crude Oil Production 万バレル/日2006 : 84.5 million barrels/day7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,00001960出所:Campbell, 1989, NOROIL1940198020002020年図9米国の石油生産履歴とキャンベルの2度(1991年、1996年)にわたる予測図10キャンベルによる1989年時点での世界の原油生産量予測5石油・天然ガスレビューlobal Reserve Growth 1981~2003191 BB73 BB241 BB81 BB160 BB118 BB9 BB42 BB51 BBOPEC Fields(133 fields)non-OPEC Fields(53 fields)All Fields(186 fields)1997~2003 (7years)1981~1996 (15years)200150100500Change in Recoverable Oil 出所: Klett and others, 2005 (1981~2003)図13世界の油田の埋蔵量成長(1981~2003年)2008.9 Vol.42 No.56アナリシス 予測と実績が最も異なった例を挙げましょう。キャンベルが1989年に発表した世界の原油生産量予測(図10)では、2006年の全世界の原油生産量は予測では日量3,500万バレルほどとなっていますが、実際の生産量は同8,450万バレルとなっています。というわけで、本日ご覧いただいたような予測を利用される場合には十分慎重な対応が必要です。埋蔵量や資源量というものは、実際には増加しているのを、予測においては把握しきれていない(unsure)ということを、念頭に置いていただきたいと思います。さらに、キャンベルなどが採用する資源量予測は極めて控えめになっている点も看過すべきでないと思います。4. 新規発見資源量の減退傾向と埋蔵量成長 図11をご覧下さい。これはある出版物から引用したもので、新規の石油発見量が長期にわたって減少している様子を示したものです。この図にはさまざまな問題点がありますが、その一つは、あたかも原油の埋蔵量がなくなろうとしているかのように見える点です。今この時Discovered Oil - Billions of barrelsVolume of Oil DiscoveredWorldwide Every 5 Years isDecreasing10億バレル250200150100500194019451950195519601965197019751980198519902005200019952010年5 years intervals点で発見された石油鉱床も、実際には長期にわたって成長を続けます(図12)。これは、油田内の間掘り(infill drilling)、坑井刺激(well stimulation)、鉱床外縁の伸張(extension)、未仕上げ層の仕上げ(new completions of bypassed zone)、新規貯留層(new reservoirs)の発見、その他効率的な油田操業や評価替えなどによって、油田の埋蔵量が成長する(reserve growth)という現象です。 油田の埋蔵量というものは、このようにして数十年にわたって成長してきたのです。したがって、埋蔵量の予測は長い目で見ると、規模を過小評価する傾向を持っています。 図13は、1981年から2003年までの間、世界の油田において見られた埋蔵量成長の状況です。緑色が1981年から1996年までの15年間で、世界の主要186油田で1,600億バレル、赤色がその半分の期間になりますが1997年から2003年までの7年間で、810億バレル、つまり合計2,410億バレルという大規模な埋蔵量成長でし(注)近年、減退傾向を示していると言われる出所:ASPO図11新規発見資源量10億バレル250Growth of Reserves in Existing FieldsInfill drillingImprovedrecoveryWell stimulation,recompletionsExtensionsNew completionsof bypassed zonesKnown Extent ofProven ReservoirReevaluation of production performanceMore efficient operationsOther revisions出所:Klett and others, 2003New reservoirs,pools,or pay zones図12既存油田における埋蔵量成長のさまざまな要因sークオイル説とエネルギー生産予測 ピーター・マッケイブ氏講演(CSIRO石油資源部)た。この成長率は、OPEC諸国の油田で35%、非OPECの油田で77%、全油田で見ると39%となります。いかに埋蔵量成長の影響が大きいかが分かります。 第2の問題点は、図11のグラフに描かれた発見埋蔵量というものは、在来型(conventional)の石油資源のみであるということです。今日石油資源にかなりの規模で、非在来型(unconventional)が加わっていることを、多くの人々は知っています。しかし、非在来型資源が継続的に発見されてきている様子は、この図には表わされておりません。 よって、近年石油資源の発見が急減しているというのは、誇張されていると言えるでしょう。実際、世界の埋蔵量は増加傾向にあります(図14)。これは、埋蔵量成長(reserve growth)や非在来型資源の追加によるものがあり、大水深などでの新規の発見が続いているからです*6。 私は、資源ピラミッド(resource pyramid)という概念を提案しております。すなわち、品位が高く、作業条件の良い、つまり低いコストで採掘できる資源は、ピラミッドの頂点にあたる位置にありますが、その量は限られています。一方、より条件が悪く、採掘コストの高い資源はピラミッドの裾野にあたる部分に広く大量に存在し、その下限は必ずしも明確なものではありません。技術の進歩というものは、この資源ピラミッドにおいて経済的に採掘可能な資源の限界を押し下げて、より多くの資源の採取を可能とします。図15はその様子を表したもので、埋蔵量評価が技術の進歩によって、左側から右側のピラミッドへと、経済限界が押し下げられ、資源量が増加する方向へ見直されています。 以上、ピークオイル論について説明し、それに対し疑問を投げかけてきたわけですが、化石燃料の将来については、ピークオイル論によって悲観的な評価を受けるものではないと言えます。10億バレルWorld Crude Oil ReservesAdvances in technology allow a greater part of the energy pyramid to be economically extracted1,4001,2001,000800600400200019802005 Production: 26.86 billion barrelsSuccessive assessments1984198219881986出所:Oil & Gas Journal199019921994199619982000200220042006年(注) 技術の進歩が経済的に採取できる資源量を増加させる様子を資源ピラミッドで表現出所:McCabe, 1998図14世界の原油埋蔵量(基本的に増加傾向にある)図15資源ピラミッド模式図5. 将来のシナリオ 最後に、エネルギーの未来、そしてわれわれの信念というものを考えるときに、人にはそれぞれの信念があるということを改めて認識していただきたいと思います(図16)。自分と異なる信念を受け入れることができなくとも、相手の信念を理解し、その背景を理解することが大切です。 少なくとも社会的必要性を満たすための政府の介入は致し方ない、と考える人はかなりいます。一方で、*6: 講演者は特に触れていないが1988年、1990年までの埋蔵量のジャンプは産油国による一方的な埋蔵量改定。2003年のものはカナダのオイルサンドを組み込んだためで、これはOil & Gas Journal誌のみの見直しで、他の埋蔵量推定機関は追随していない(編集事務局)。7石油・天然ガスレビュー008.9 Vol.42 No.58アナリシス とはいえ、技術の進歩に懐疑的な人もいるでしょう。例えば米国では世界の終末に関する宗教的な信念を持っている人たちがいますし、欧州でも、オーストラリアでもさまざまな人たちがいます。人々の意識がこの図の左側にくるようにすることが大切です。 そろそろ講演が終わりに近づいてきました。希望や得るものがあった、こんな考え方もあるのだな、と少しでも皆さんに感じていただけたら幸いです。ただし、うみにしてはいけませんよ(図17)。それでは何でも鵜皆さまの石油・ガス分野におけるご活躍をお祈りいたします。の呑将来的な社会的必要性は政府が介入することなく、民間によって解決されることが最善の道なのだと考える人もいます。あるいは、技術の進歩が事を解決に導くと考える人も少なくない一方、そういった技術的進歩を全く信じない人もいます。さまざまな人々の見解をこの図16のように分類しても面白いかもしれません。私自身について言えば、技術の進歩によって解決がもたらされると考える一人です。この図で言えば左側に該当するわけです。民間が貢献できる部分も多いと思いますが、ある局面では政府の関与が必要なときもあると個人的には感じています。The Energy Future : Belief SystemsThe Future of Energy?Future technological advances will provide solutions 将来の技術の進歩が解決をもたらすA lack of faith in future technological advances to provide solutions問題解決に将来の技術の進歩が有効とは思わないGovernment intervention is needed to address future societal needs将来の社会ニーズに取り組むのに政府の介入が必要Future societal needs are best addressed by the private sector without government interference将来の社会ニーズは政府の介入でなしに民間セクターで取り組むべし出所:McCabe, 2008図16エネルギーの将来:信念システムDon’t believe everything you read!(注) 「将来の乗り物、ホントの話」。マッケイブ博士から、「世間で言われていることをそのまま真に受けないで」とのアドバイス。出所:New Zealand Listener, 2007図17ニュージーランド・リスナー誌の表紙講演者紹介Peter J. McCabe(ピーター・J・マッケイブ)1971年に英国Hull大学で地質学学士、1975年に同国Keele大学で堆積学のPh.D取得。米国Nebraska大学、Exxon生産研究所(EPRCO)などを経て、米国地質調査所(在Colorado州Denver)に20年間奉職。2007年にオーストラリアのCSIROに移籍し、現職。
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2008/09/19 [ 2008年09月号 ] 本村 真澄
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