大きなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情 ~天然ガス、石油ともに世界第2位の埋蔵量を誇るイランの油ガス田開発の現在と将来~
| レポートID | 1006351 |
|---|---|
| 作成日 | 2008-11-20 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
| 分野 | 基礎情報探鉱開発 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 石澤 英俊 |
| 年度 | 2008 |
| Vol | 42 |
| No | 6 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | アナリシスJOGMECプロジェクト推進部石澤 英俊大きなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情~天然ガス、石油ともに世界第2位の埋蔵量を誇るイランの油ガス田開発の現在と将来~はじめに・天然ガス イランには、ロシアに次ぐ世界第2位の天然ガス埋蔵量(2007年末時点での埋蔵量27兆8,000億m3:981兆7,500億cf、世界の15.7%)が存在している。これは、LNG輸出を急速に拡大させつつある世界第3位カタールの埋蔵量(25兆6,000億m3:904兆600億cf、世界の14.4%)を上回るものである。 イランは人口約7,000万人を抱えており、現時点で既に米国、ロシアに次ぐ世界第3位のガス消費国であり、現在は輸入量が輸出量を上回っている。これに加え、イラン産原油を輸出に回すことを主な目的として国内のエネルギー供給を石油製品からガスに転換する政策を採っていることなどから、今後さらにガスの国内需要が増加する可能性がある。 他方、埋蔵量が多いことから今後、重要なガス輸出国になる可能性を秘めている。現時点までにガス輸出がほとんど行われていないこともあり、今後のイランからのガス輸出拡大に対して各国から大きな期待が寄せられており、イランをめぐる難しい国際環境やイランでの困難な契約条件にもかかわらず多くの外国石油会社がイランでのガス開発に参入するための足場を築いている。・石油 イランには、サウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油埋蔵量(2007年末時点での埋蔵量1,384億バレル、世界の11.2%)が存在している。約420万b/dとされる生産量についても、世界第4位、OPEC加盟国中第2位を占める大産油国であるとともに、約250万b/dの輸出量を誇る世界有数の輸出国である。日本のイランからの原油輸入量は、2007年実績で49万9,000b/d(日本の原油総輸入量の12.1%、原油輸入元として第3位)であり、イランから見ると日本向け原油輸出は全原油輸出の約20%を占めており、輸出先第1位とされている。 イランにおける原油・ガスの探鉱・開発はイラン国営石油会社(NIOC)が所管しており、実際の事業はNIOCの地域別子会社が行っている。このなかで、NIOCが外国の資金および技術を導入して行うことを決定したプロジェクトについてのみ外国石油会社が関与しているが、イランが1979年の革命後初めて外資導入を開始した1995年以降に外国石油会社が参入したプロジェクトは約30、進出会社数も約30となっている。 イランは、2008年5月に今後の石油開発の重点政策として小規模油田の開発と油田からの原油回収率の向上を掲げ、生産目標量を550万b/dとした。イランは基本的には独力で探鉱・開発を行っていくことを望んでいるものの、イラン側の開発資金不足を主な理由として、これまで外資が参入する機会がなかった小規模油田の開発に外国石油会社が参入する機会の生ずることが想定される。また、2008年で石油産業誕生100周年を迎えているイランにおいて、老朽化して生産量が減少しつつある多くの油田からの原油回収率を向上させるための資金と技術を、これまで以上に外国石油会社に求めていく可能性がある。63石油・天然ガスレビューAナリシス1. 天然ガス事情(1)イランのガス需給および消費割合 2007年のイランの市場向けガス*1生産量は1,119億m3/年でロシア、米国、カナダに次ぐ世界第4位(世界の3.8%)である。一方、市場向けガス消費量は国内でのガス消費拡大などにより1,118億m3/年で米国、ロシアに次ぐ世界第3位(世界の3.8%)の消費大国である。表1のとおり、国内部分については生産量が消費量を上回っているものの、その量はごくわずかである*2。 また、ガス輸出入に関する統計では、輸入量(72億6,000万m3/年:トルクメニスタンから<1997年開始>)が輸出量(60億2,000万m3/年:トルコ向け<2002年開始>)を上回っている。 市場向けガスの国内消費における用途別割合は、発電用36.1%、住宅用32.6%、工業用16.0%、エネルギー用5.3%、商業および公共用4.3%、石油化学原料用3.8%、輸送中損失1.4%、輸送用0.3%、統計誤差0.2%となっている(2005年実績、IEAホームページ“Natural Gas in Iran in 2005”)。(2)イランのガス利用政策 イラン政府の主なガス利用政策は、①国内でのガス利用促進:(常温常圧で液体であるためにガスと比較して輸送が容易であることなどから)イラン産原油を輸出に向けるために国内エネルギー供給を石油製品からガスに転換するとともに、国内エネルギー需要の増加に対してガスで対応する、②ガスの油田への圧入:原油の増産・生産維持を目的としてガスを油田に圧入する、③石油化学産業の原料としてのガスの利用促進、④ガスの輸出拡大などである。① 国内での利用促進 現在、天然ガスはイラン国内エネルギー供給の5割程度を占めているとされているが、イラン政府は国内でのガス利用促進政策によって、このシェアを上昇させることを計画している。 2004年時点で、イランの発電所の75%以上がガスを燃料としている。また、電力需要は年間10%程度ずつ増加していることから発電所建設に対して多額の投資が行われており、発電用のガス需要は増加することが見込まれている。 住宅用や工業用などのガスには多額の補助金が投入され極端な低価格となっていて、浪費を招いていると指摘されている。さらに、人口増加によって消費が急増している。表1イランの天然ガス事情埋蔵量生産量※1国内消費量27.8兆cm981.75兆cf1,119億cm1,118億cm世界第2位(世界の15.7%)世界第4位(世界の3.8%)世界第3位(世界の3.8%)輸入量および輸出量輸入(トルクメニスタン)72.6億cm輸出(トルコ)60.2億cmcmは立方メートル、cfは立方フィート。生産量は年間。※1: OPEC Annual Statistical Bulletin 2007(以下「OPEC統計」)によれば、イランの2007年のガス総生産量は1,742億cm(OPEC統計の数値のうち、市場向け生産量は1,119億cm<64.2%>でありBP統計と一致。OPEC統計では他に、油田圧入285億cm<16.4%>、輸送時の縮小181億cm<10.4%>、フレア<焼却>157億cm<9.0%>がある。< >内の数字は総生産量のうちの割合)出所: 2008年版BP統計(埋蔵量は2007年末、生産量と消費量は2007年の数量)、OPEC統計(輸入量および輸出量の欄、2007年の数量) イランでは、国内自動車産業の成長などと歩調を合わせて自動車台数が急速に増加し、それに伴ってガソリン消費量が急増してきた*3。イランは420万b/d程度の原油を生産する大産油国でありながら国内精製設備の能力不足により国内消費用ガソリンの約40%を輸入に依存しており、またガソリンの輸入および国内生産に対して多額の補助金を投入していることから*4、長大な財政負担の問題を年にわたって莫解決する必要に迫られていた。この問題への対応策として、イラン政府は2007年6月27日から1カ月あたりのガソリン購入可能量を制限するガソリン割当(ration)制度を開始し、ガソリばくだい*1:生産量全体から油田への圧入向けなどを除いたもの。*2:2007年の日本の消費量は902億m3(世界の3.1%)で、イランの消費量は日本を上回っている。*3:イラン国内の自動車約850万台、バイク約600万台。ガソリン消費量は7,500万リットル/d(約47万b/d)程度(2007年6月時点、イラン国内報道)。*4:1リットルあたりのガソリン価格(2008年9月時点):ガソリン割当制度(レギュラー:1,000リアル<約12円>、ハイオク:1,400リアル<約18円>)、ガソリン割当制度の「枠外販売」(レギュラー:4,000リアル<約50円>、ハイオク:5,400リアル<約68円>。2008.11 Vol.42 No.664\定であるサウスパース・ガス田フェーズ6~8のガスは、油田への圧入用とされているように、圧入用のガス需要は増加すると見込まれる。③ 石油化学産業の原料としての利用促進 イランは、国内の豊富な天然ガスを石油化学の原料として利用し、付加価値をつけた製品にして輸出(一部は国内需要向け)することを目的に、石油化学産業の育成を長期的な計画に基づいて進めている。 現在、イランの2カ所(油田地帯である南西部フーゼスタン州のバンダル・イマームホメイニ地区と世界最大級のガス田であるサウスパース・ガス田に近接する南部ブシェール州アサルイエ地区)に石油化学プラントを集積させるとともに、国内西部にエチレン・パイプラインを建設して沿線にプラントを建設している。この分野でも今後ガス需要が増加すると見込まれる(図1)。ネッカ港24主な油田地域13ノースパース・ガス田ゴルシャン・ガス田フェルドウシ・ガス田主なガス田地域ノースフィールド・ガス田ノースフィールド・ガス田(カタール)(カタール)サウスパース・ガス田サウスパース・ガス田石油化学プラント集積地区 ①フーゼスタン州バンダル・イマームホメイニ地区 (Petrochemical Special Economic Zone) ②ブシェール州アサルイエ地区 (Pars Special Economic/Energy Zone)「カスピ海原油スワップ」用原油受け入れ港 ネッカ(Neka)港(イラン北部カスピ海沿岸)輸出用原油積み出し港 ③カーグ島(約90%) ④ラバン島(約10%) カッコ内は積み出し割合出所:The World Factbookを基に作成図1イランの石油・ガス関連マップンの消費抑制を図ることとした*5。この制度の開始により、ガソリン代替としてCNG(圧縮天然ガス:Compressed Natural Gas)の利用が増加すると見られている。イランでは、ガス利用促進策の一環として以前からCNG自動車の普及促進策が採られており、テヘランでもCNGを利用する乗用車やバスをよく見かけるが、今後はこれまで以上にCNG自動車およびガソリンとCNGの双方に対応した自動車の普及促進が図られるものと思われる。ガソリン割当制度の開始後、既に政府関係者がCNG自動車およびCNGスタンドを増やす旨の発言をたびたび行っている。 以上のように、イラン政府は国内エネルギーのガスへの転換を図るとともに、引き続き利用促進のための投資を行う方針である。しかし、政府の想定以上にガス需要が増加していることから、イラン国内へのガス供給を担当しているイラン国営ガス会社(NIGC)のカサイザデ総裁(イラン石油省次官を兼任)(当時)は2007年6月24日、以下のような警鐘を鳴らす発言を行った。 「現在、イランの人口の約76%に相当する約5,300万人が国内パイプラインを通じてガスを利用している。今後、パイプラインの敷など(国内へのガス供給のために)年間60億~70億ドルの投資が必要となるだろう。イランのエネルギー消費の増加率は1.7%だが、望ましい増加率である0.8%に対して2倍以上になっている。エネルギー消費をコントロールし、削減することができなければ将来において間違いなく危機に直面することになるであろう」(2007年6月25日付テヘラン・タイムズ、ほか)。設せふつ② 油田への圧入 油田への圧入は、主に老朽化した陸上油田に対して行われ、油田内部の圧力を高めることによって原油の増産・生産維持を図っているものである。イランは、中東産油国のなかでも早い時期から原油生産を開始しているために老朽化した油田を多く抱えており、OPECのなかでアルジェリア、ベネズエラに続く第3位のガス圧入量となっている(出所:OPEC統計2007)。この政策も、ガスを圧入することによって市場向けのガスを減少させてでも、輸出が容易な原油の生産量増加を優先させていることを表していると考えられる。また、間もなく生産開始大きなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情*5:購入可能量は車種や業種(タクシーは別枠)などによって異なるが、2007年6月に一般の普通車は1カ月100リットルとして開始され、同年12月に1カ月120リットルに変更された。その後、2008年3月から制度での購入可能量を超える量についての「枠外販売」が開始され、同年6月から「完成車輸入された1,300CC以上、国産車で2,000CC以上の自動車はガソリン割当制度の対象外」とされた。「制度の対象外」とされた自動車は、「枠外販売」のガソリンしか購入できない。これは、「制度の対象外」とした自動車は富裕層が所有しているものと判断したイラン政府による補助金削減策の一環である。なお、「ガソリン割当制度」導入の目的の一つは、国外へのガソリン密輸を防止するためとされている。65石油・天然ガスレビューi3)冬期の国内供給に関する問題 いま見たとおり、イランのガス利用政策は国内需要を増加させる方向のものである。こうしたことから、イランでは近年、需要が増加する冬期において国内のガス供給に支障が出たり、トルコ向けの輸出を一時的に停止したりする事態が発生している。 2008年初めの例では、2007年末頃にトルクメニスタンからのガス供給が停止されたことに加え、イラン国内の例年を上回る量の積雪と、記録的な低温によるガス消費量増加などのために国内のガス供給に支障が生じ、その後トルコ向け輸出をしばらく停止した。国内供給に最も支障が出た時点では、イラン国内のセメント工場や製鉄所などの一部の操業にも影響が出た模様。この際、供給停止の理由につき、トルクメニスタン側は「ガス輸送に関する単なる技術上の問題である」旨発言したが、イラン側の一部は「供給を停止することによって、トルクメニスタン側がガス価格の値上げ交渉を有利に進めることを意図していると考えられる」旨発言した。 NIGCのカサイザデ総裁(当時)は、「イランは、双方による合意に基づいて、今度の冬の期間にトルクメニスタンから日量3,000万m3のガスを輸入するだろう。今度の冬の期間には、ガス消費を節約することが不可欠であり、(ガスの代替として)石油製品を利用することも必要になるだろう」と発言している(2008年9月8日付イラン・ニュース)。 NIGCの予測では、イランのガス生産量は2009年1月に日量4億9,390万m3、同2月に日量5億810万m3。イランのガス消費量は、2009年1月に日量5億6,380万m3、同2月に日量5億5,500万m3とされている。これに基づいて国内生産と国内消費のみを考慮すると、2009年1月は日量6,990万m3が不足、同2月は日量4,690万m3が不足することになる。イラクトルコ(4)イランのガス生産地域 イランの主なガス生産地域は、南部のペルシャ湾沿岸陸上地域およびペルシャ湾海上にあるサウスパース(South Pars)・ガス田となっており、一部の生産はその他地域のガス田からも行われている(図1、図2)。製油所油田ガス田トルクメニスタンアルメニアアゼルバイジャンカスピ海TabrizSanandajAstaraRashtQazvinSavehArakNekaTehranReyKermanshahアフワズ油田アザデガン油田ヤダバラン油田ダルクエイン油田AbadanBandar Khomeniクウェートゴルシャン・ガス田ドロウド油田ペルシャ湾サウジアラビアフェルドウシ・ガス田バーレーンノースフィールド・ガス田(カタール)出所:JOGMEC作成Esfahanマスジェデ・スレイマン油田マルーン油田アガジャリ油田ガチサラン油田イランKermanShirazFiruzabadノースパース・ガス田Asaluyehサウスパース・ガス田Bandar AbbasLavan Islandバラル油田シリ油田オマーンカタールUAEアナリシス(5)サウスパース・ガス田開発計画 イラン最大のガス田はペルシャ湾にあるサウスパース・ガス田である(図2)。このガス田はカタールがLNG開発などを進めているノースフィールド・ガス田と同一構造とされており、イラン側をサウスパース・ガス田と呼んでいる。 サウスパース・ガス田の埋蔵量は、ガス約14兆m3およびコンデンセート約180億バレルとされており、ガス埋蔵量は世界全体の約9%、イラン全体の約50%を占めている(出所:パース・オイルアンドガス会社〈POGC:Pars Oil and Gas Company〉ホームページ)。 イラン国営石油会社(NIOC)は、サウスパース・ガス田、ノースパース(North Pars)ガス田、ゴルシャン(Golshan)ガス田、フェルドウシ(Ferdowsi)ガス田(すべてペルシャ湾海上に存在)の四つのガス田開発を所管する子会社として、POGCを1998年に設立しているが、現時点で開発に着手しているのはサウスパース・ガス田のみである。図2イランの主な油ガス田マップ2008.11 Vol.42 No.666蛯ォなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情 POGCは、サウスパース・ガス田を複数の単位(フェーズ:Phase)に分割して開発を進めており、現時点までにフェーズ24までが入札に付されている。報道では、同ガス田のフェーズは全体で28になる見込みとされている。 現時点までに開発作業が開始されているのはフェーズ1~10、15~18であり、このうち生産が開始されているのはフェーズ1~5である。フェーズ6~10については2008年中に生産が開始される見込みといわれているが、開発の遅滞も指摘されている。 既に生産が開始されているフェーズでは、ガスやコンデンセートなどが生産されている。このうち、コンデンセートなどは主に輸出されているが、ガスについては国内需要向けとされている。また、今後生産開始となるフェーズについてもガスは国内需要向けとされているものが多くあるが、現時点では、フェーズ11~14がLNGプロジェクトによる輸出向けとされている(表2、表3)。表2サウスパース(South Pars)ガス田開発事業の現状フェーズ名フェーズ 1(1997年9月契約)フェーズ 2、3(1997年9月契約)フェーズ 4、5(2000年7月契約)フェーズ 6、7、8(2002年10月契約)フェーズ 9、10(2002年9月契約)フェーズ 15、16(2006年6月頃契約)フェーズ 17、18(2006年6月頃契約)開発企業事業概要Petropars(イラン)*Total(仏)*、Petronas(マレーシア)、Gazprom(露)Eni(伊)*、Petropars、NICO(イラン)Petropars、StatoilHydro(ノルウェー)*GS(韓国)*、IOEC(イラン)、OIEC(イラン)ハタモル・アンビア建設本部(Khatam ol-Anbiya Reconstruction Headquarters)IDRO(イラン)、OIEC、 IOEC国内向け天然ガスおよびコンデンセート等生産。2004年4月生産開始。フェーズ2、3事業に次ぎ2番目に生産開始。国内向け天然ガスおよびコンデンセート等生産。2003年2月生産開始。国内向け天然ガスおよびコンデンセート、LPG等生産。2005年4月生産開始。イラン南西部アガジャリ油田への圧入用天然ガス等生産。2008年中に生産開始見込み。国内向け天然ガスおよびコンデンセート、LPG等生産。2008年中に生産開始見込み。国内向け天然ガス、コンデンセート、石油化学向け原料等生産。国内向け天然ガス、コンデンセート、石油化学向け原料等生産。2007年7月開発作業開始。フェーズ 19、20、21、22フェーズ 23、24未定:2006年2月末に入札公告を新聞等に掲載。Shell、Total、Eni、StatoilHydro、Sinopec、Lukoil、BHP、Petrobrasが資格審査を通過したとされている。未定:2006年7月に入札公告を新聞等に掲載。10月に再公告。11月末が提出期限とされていた。国内向け天然ガス、石油化学向けエタン、LPG、輸出用コンデンセート、硫黄等生産。国内向け天然ガス、石油化学向けエタン、輸出用LPG、コンデンセート、硫黄等生産。(注) *はオペレーター。フェーズ 11~14については表3を参照。フェーズ 19~24に関しては上記の区分で入札公告が掲載されたが、最近の報道ではフェーズ 19、フェーズ 20~21、フェーズ 22~24の区分で19~21はイラン企業、22~24はトルコ企業と交渉などを実施中とされている。出所:報道等から筆者作成表3イランのLNG計画LNG計画名称および対象ガス田生産量(万t/年)関係企業事業概要ParsLNG計画(SPフェーズ11)IranLNG計画(SPフェーズ12)PersianLNG計画(SPフェーズ13、14)North Parsガス田(原始埋蔵量約59兆cf)1,000Total、Petronas、NIOC(イラン)1,000Petropars。2007年4月にOMV(オーストリア)とHeads of Agreement締結。その他の企業とも協議中。1,600Shell(英蘭)、Repsol YPF(スペイン)、NIOC2,0002006年12月にCNOOC(中国)とNIOCがMOU締結Golshanガス田&Ferdowsiガス田※12,000年間生産量合計7,6002007年1月にSKS(マレーシア)とNIOCがMOU締結。同12月にガス田開発について両者が契約締結。生産開始見込み時期:2014年頃投資決定見込み時期:不明生産開始見込み時期:2012年頃生産開始見込み時期:2014年頃投資決定見込み時期:不明投資額合計160億ドル以上(ガス生産約50億ドル、ガス液化設備約110億ドル)、4フェーズで開発、操業開始まで約8年。ガス田開発契約は60億ドル相当。MOUでは、投資額合計160億ドル程度(ガス生産約50億ドル、ガス液化設備約110億ドル)。(注)SPはSouth Parsガス田の略。ParsLNG計画とPersianLNG計画については、2008年春頃から対象フェーズについて再検討している模様。※1:Golshan:原始埋蔵量約50兆cf、Ferdowsi:原始埋蔵量約10兆cf出所:報道等から筆者作成67石油・天然ガスレビューi6)イランのガス輸出実績および計画① LNGによる輸出計画 イランからのLNGによるガス輸出実績はなく、着手が決定されているLNGプロジェクトもない。現時点において技術的な検討などがある程度進んでいるものはサウスパース・ガス田における三つの計画、技術的な検討などを含めて構想段階にあると思われるものはほかの三つのガス田を対象とした計画である。 POGCのトルカン社長(当時)は2007年2月、LNG計画について「カタールとイランの将来のLNG生産能力はほぼ同程度となるであろう。計画では、カタールのLNG生産能力は2011年までに約7,700万t/年に達するとされているが、イランが計画しているLNG生産能力は合計で約7,600万t/年である。内訳は、サウスパース・ガス田から3,600万t/年(ParsLNG計画:1,000万t/年、IranLNG計画:1,000万t/年、PersianLNG計画:1,600万t/年)、ノースパース・ガス田から2,000万t/年、ゴルシャン・ガス田およびフェルドウシ・ガス田から2,000万t/年の生産を計画している」と発言している(イラン国内報道)(表3)。・サウスパース・ガス田でのLNG計画 ParsLNG計画はTotalおよびPetronas、PersianLNG計画はShellおよびRepsol YPFの大手外国石油会社とイラン側が数年前から共同で計画しており、技術的検討なども進められている。しかし、これらの計画についてもイラン側との交渉が長期化していることなどにより、計画に対する最終的な投資決定は行われておらず、着手されていない。さらに、イラン側の要請に基づいて2008年春頃から、ParsLNG計画とPersianLNG計画に割り当てられる予定であったフェーズを変更する方向で協議が行われている模様であり、最終投資決定時期の見通しは立っていない。 IranLNG計画については、イラン側が設立したIranLNG社が単独で事業を進めており*6パートナーとなる資本と技術を持った外国企業を探している状況と見られている。報道によれば港湾設備建設などの基礎的な工事が実施されている模様だが、今後プロジェクトを本格的に進めていくには外国企業の参加が必要であろうと見られる。 なお、サウスパース・ガス田でのLNG計画で利用するガス液化施設は、サウスパース・ガス田のガスを利用した石油化学プラントが集積しているブシェール州アサアナリシスルイエ地区の約60km北にあるトンバック(Tombak)地区に建設される計画となっている。・その他のガス田でのLNG計画 ノースパース・ガス田は、1967年に発見され原始埋蔵量約59兆cf、可採埋蔵量約48兆cfとされている。NIOCは2006年12月、CNOOCと同ガス田開発に関するMOUを締結した。MOUの内容は、同ガス田を4フェーズで開発して2,000万t/年のLNGを生産すること、160億ドル以上の投資(ガス液化設備110億ドル程度、ガス生産50億ドル程度)、操業開始まで8年程度、LNGはイラン側とCNOOCで50%ずつの権益を持つなどとされているようである。 ゴルシャン・ガス田(沖合約65km)とフェルドウシ・ガス田(沖合約85km)の原始埋蔵量はそれぞれ42兆~56兆cf、9兆~13兆cfとされている(これら三つのガス田の埋蔵量の出所はPOGCホームページ)。NIOCは2007年1月、SKSと両ガス田開発に関するMOUを締結した。その内容は、両ガス田を開発して2000万t/年のLNGを生産すること、160億ドル程度の投資(ガス液化設備110億ドル程度、ガス生産50億ドル程度)、LNGはイラン側とSKSで50%ずつの権益を持つなどとされている模様である。NIOCとSKSは2007年12月、上記MOUのうちガス生産部分について契約を締結した。 これら三つのガス田開発については、これまでに技術的な検討などがあまり行われていないこと、CNOOCとSKSが資本、技術および経験などの点でLNGプロジェクトを遂行することが可能なのか明らかでないことなどから、今後の推移を見守る必要があるものと思われる。・LNG計画に関するイラン政府の動向 イランとインドは2005年6月、LNG売買契約(500万t/年)を締結した。しかし、イラン側が契約締結後の油価上昇に基づいてLNG価格の見直しを求めているとされており、イラン側による契約の批准がされておらず、価格に関する交渉が継続されているようである。 報道では、イラン側はLNGの輸送にイラン側船会社(イラン国営タンカー会社〈NITC〉、Islamic Republic of Iran Shipping Linesなど)を関与させる方針であるとされ、LNGプロジェクトに関与する外国企業とイラン側船会社が共同会社を設立するための協議を行っているといわれている。*6:イラン側が設立したIranLNG社が、ペトロパース(イラン)に権益を与えている。2008.11 Vol.42 No.668蛯ォなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情② パイプラインによる輸出実績および計画・パイプラインによる輸出実績 パイプラインでは、既にトルコ向けに輸出が行われている。≪トルコ向け≫ 1996年、イランとトルコの間で22年間の天然ガス販売契約が調印された。契約総額はパイプライン建設を含めて200億ドル程度、2007年までに99億m3/年を輸出するという内容とされていた模様だが、2007年の輸出量は60億2,000万m3/年となっている。当初予定よりも3年程度遅れて2002年12月に天然ガス輸出が開始されたが、技術的トラブルなどによってたびたび輸出が停止しているようである。また、近年はイランの冬の国内消費量が増加して輸出余力がなくなるために一時的に輸出が停止される場合がある。・契約済みのパイプラインによる輸出計画≪アルメニア向け≫ 1992年、イランとアルメニアは全長約149kmのパイプラインによるガス供給に関するMOUを締結。計画ではイラン北部のタブリーズから国境までの約100km、アルメニア領内の約40kmのパイプラインを建設する予定であった。しかし、ガス価格およびパイプラインルートに関する交渉が長期にわたって難航した結果、ガス販売契約およびパイプライン建設契約が締結されたのは2004年5月であった。その後、2007年3月にイランからの輸出が開始されたと報道されたが、実際には2008年9月時点まで開始されていない模様。販売量は、20年間で約360億m3とされている。なお、イランからのガス供給とアルメニアからの電力供給によるスワップ契約とされている。≪スイス企業向け≫ 2008年3月17日、EGL社(スイス)とNIGEC(イラン国営ガス輸出会社)は年間55億m3のガスを25年間にわたって売買する契約を締結した。契約額は25年間で180億ユーロから270億ユーロになる見込みとされている。同契約の締結には、カルミ=レ・スイス外務大臣が同席した。イランからの天然ガスをアゼルバイジャンからの天然ガスとともにギリシャからアルバニア経由でイタリアに至るガス・パイプライン(トランス・アドリア・パイプライン)に供給し、イタリアにあるEGL社が保有する発電所の一つに供給する予定。EGL社は、イランからの供給は2009年に開始される予定であるとしている。≪アラブ首長国連邦(UAE)向け≫ NIOCは、UAEのクレセント社とペルシャ湾海上イラン領にあるサルマン油ガス田*7からのガス輸出に関する契約を締結。当初の輸出開始予定は2005年12月であったとされているが、工事の遅れおよびイラン側からのガス価格見直し要請などにより輸出は開始されていない。2006年4月、ヴァジリ・ハーマーネ・イラン石油大臣(当時)は、契約上原油の国際価格が上昇した場合にはイラン側がガスの輸出価格を見直す権利があるとされており、原油1バレルあたり18ドルをベースとして契約が締結されたものの原油価格が60ドル以上に高騰したことが、イラン側に価格の見直しを行わせることとなったと発言している。・パイプラインによる輸出計画 現在、初期的な段階を含めて交渉中であると思われる主なパイプラインによる輸出計画は下記のとおりである。≪パキスタンおよびインド向け(IPI(イラン・パキスタン・インド)パイプライン計画:ピース(Peace)パイプライン計画)≫ サウスパース・ガス田から陸路パキスタンを経由してインドまで、全長2,700km程度を結ぶ計画。現在、パイプライン建設・ガス販売などの契約締結を目的とした3カ国による交渉が行われており、2011年操業開始見込みとされている。1993年、イランとインドが両国間の陸上パイプラインに関するMOUを締結してFS(フィージビリティー・スタディー)を開始。また、2002年にイランはパキスタンとの間でパキスタン経由インドまでのパイプラインに関するFS実施について合意。本FSは当時のBHP(オーストラリア)が実施し、40億ドル程度のコストと結論された。一方、インドの要望によりパキスタンを回避する海中ルートのFSも実施されたが、建設コストが経済性に見合わないと結論されている。長年にわたりインド・パキスタン間の緊張した政治情勢から進展が見られなかったが、2004年以降両国間で和平プロセスが開始されたことによって3カ国による協議が実施されており、近い将来合意に達することを目標としているとされる。イランからの輸出量は、第1段階では6,000万m3/d、第2段階では1億5,000万m3/dとされている。≪欧州向け≫・ナブッコ(Nabucco)・ガスパイプライン計画 OMV(オーストリア)、MOL(ハンガリー)、SNTGN Transgaz SA(ルーマニア)、Bulgargaz(ブルガリア)、69石油・天然ガスレビューAナリシススのイラン経由トルコまでの輸送を実施する共同会社の設立が合意されたとのこと。≪オマーン向け≫ 2007年6月、ヴァジリ・ハーマーネ・イラン石油大臣(当時)とスルタン・オマーン商業大臣との間で、10億cf/dのイラン産ガスをオマーンに輸出する初期合意書が締結されている。その後、2008年9月、ノーザリ・イラン石油大臣がオマーンを訪問し、オマーン石油大臣との間で、キーシュ・ガス田の共同開発、オマーン向けのガス輸出について協議した。本件については、イランが将来、オマーンにあるLNGプラント向けにガスを供給する構想もある模様。≪クウェート向け≫ クウェートとの間で2005年3月、2007年から25年間のガス輸出に関するMOUを締結した。クウェートは、輸入したガスを発電および海水淡水化に利用する見込みとされている。現時点まで進展はない模様。≪バーレーン向け≫ バーレーン石油ガス大臣は2007年5月、2015年までにガス・パイプラインを建設してイラン産ガスを輸入することを計画しており、イランとの交渉は既に開始されているが、妥結するには数年程度かかると思われる旨発言している。≪ギリシャ向け≫ 2002年、イランはトルコまでのガス・パイプラインをギリシャまで延長し、ガスを輸出する総額3億ドルの合意をギリシャと締結した。現時点までにガスの輸出は開始されていないが、イランは将来ギリシャを経由してブルガリアおよび(海底パイプラインを経由して)イタリアまで送ガスすることを検討していた模様である。BOTAS(トルコ)、RWE(ドイツ)がナブッコ・ガスパイプライン社を設立して検討しているカスピ海地域、中東地域、エジプトなどからのガスを欧州向けに輸送するガスパイプライン計画。全長約3,300km、建設費約79億ユーロ、建設開始2010年、操業開始2013年、最大輸送能力310億m3/年が想定されており、イランはガス供給源の一つとして有力視されている。・ パース(Pars)・ガスパイプライン(ペルシアン(Persian)・ガスパイプライン)構想 トルカン・イラン石油省計画担当次官は2008年9月、「イランは、ナブッコガス・パイプライン計画と契約を締結しておらず、かかわりはない。イランは、トルコ、ギリシャ、イタリア、スイス、オーストリア、ドイツを結ぶパース・パイプライン構想について主要な欧州企業と協議している。この企業について明らかにはできないが、OMVではない。この構想は、EUが支援しているナブッコ計画、Gazpromによるサウス・ストリーム計画に対するイランからの回答である。イラン国内への投資が困難だとしても、イランのガスを求める企業がイラン国境までのパイプラインに投資することを妨げる障害はないであろう。イランは国境までガスを輸送すれば良い」と述べた。同次官は10月にも同様の趣旨の発言を行っている。この構想の建設費は40億ドル程度、ガス輸送能力は370億m3/年程度であると報じられているが、建設開始や操業開始の時期は明らかではなく、どの程度まで検討が行われているかも不明である。≪トルコとのガス輸出関連協力≫ 2007年7月、トルコとの間でイラン産およびトルクメニスタン産ガスのトルコ経由でのヨーロッパ向け輸出に関するMOUが締結された。報道では、サウスパース・ガス田のあるブシェール州アサルイエからトルコ経由欧州までのパイプライン建設およびトルクメニスタン産ガ2. 石油事情 イランの原油埋蔵量は1,384億バレルと世界全体の11.2%を占めており、世界第2位である。約420万b/dとされている生産量においても、世界第4位、OPEC加盟国中第2位を占める大産油国である。輸出量も約250万b/dと世界有数の輸出国である(表4)。 一方、近年では主に自動車台数の増加を主な要因とし*7:UAEとの共有油ガス田。UAE側はアブ・アル・ブクーシュ・油ガス田。2008.11 Vol.42 No.670蛯ォなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情表4イランの石油事情埋蔵量可採年数生産量※1国内消費量輸出量1,384億バレル86.2年440.1万b/d(Natural Gas Liquid<NGL>含む)162.1万b/d246.7万b/d世界第2位(世界の11.2%) 世界第4位(世界の5.4%)世界の1.9%b/dは、日量バレル。1バレル=約159リットル。※1: 報道におけるイラン側関係者の原油生産量に関する発言(2008年5月22日のジャシュンサズNIOC総裁発言他)によれば、2008年春時点で約420万b/d。出所: 2008年版BP統計(埋蔵量は2007年末、生産量と消費量は2007年の数値)、OPEC統計(輸出量の欄、2007年の数量)てガソリン・軽油の国内消費量が増加している。イラン石油省関係者のなかには、イランの最大の課題は国内消費量のコントロールであると指摘する向きもある。(1)日本との関係① イランからの原油輸入 日本のイランからの原油輸入量は、2007年実績で49万9,000b/d(総輸入量の12.1%、日本の原油輸入元として第3位)となっている(図3)。 一方、1970年代初めにはイランからの輸入量は約160万b/dで総輸入量の40%(輸入元第1位)程度を占めていた時期があったが、1979年のイラン革命後はその数量を減らし、現在の輸入量は最盛期の1/3以下となっている。② イランからの原油輸出 日本は、近年においてはイランが原油の約20%を輸出している第1位の輸出先であるとされており、2006年実績では日本向け輸出は17.9%とされている(図4)。1970年代以降は、ほぼ一貫して日本が最大級の輸出先であったものと想定される。(2)イランにおける石油・ガス開発 イランでは、イラン国営石油会社(NIOC)が原油・ガスの探鉱・開発を所管しており、実際の事業はNIOCの地域別子会社が行っている。このなかで、NIOCがイラン側の資金と技術による探鉱・開発では不十分であるなどの理由で外国の資金および技術を導入して探鉱・開発を行うことを決定したプロジェクトについてのみ、外国石油会社が関与している。 また、NIOCやその地域別子会社はそれぞれに多数の子会社を設立して事業を行っており、NIOCの子会社としては、ペトロパース(Petro pars)(サウスパース・ガス田開発に参加中)やペトロイランなど、外国石油会社と同様にNIOCと契約して事業を行っていると考えられる会社もある。【NIOCの地域別子会社】① イラン南部国営石油会社(NISOC:National Iranian South Oil Company) NIOC最大の子会社で、フーゼスタン州アフワズを拠サウジアラビア26.9%UAE24.5%その他15.9%インドネシア3.0%クウェート7.2%カタール10.4%イラン12.1%日本17.9%中国13.4%インド12.1%その他13.8%ギリシャ4.7%台湾4.7%南アフリカ5.1%フランス5.4%トルコ7.1%韓国8.2%イタリア7.6%イランからの輸入量は49.9万b/d総輸出量:約250万b/d出所:経済産業省統計出所:米国エネルギー省ホームページ図3わが国の国別原油輸入割合(2007年)図4イランの原油輸出先(2006年)71石油・天然ガスレビュー_としている。同社はイラン南西部フーゼスタン州およびその周辺地域における油ガス田に関する事業を担当。2007年の生産量は、イランの全生産量の約80%を占める約320万b/d。② NICOC(National Iranian Central Oil Company) (Iran Central Oil Field Companyという名称が使われているケースもある) NISOCが担当するイラン南西部以外の地域の陸上油田に関する事業を担当。主な油田群はイラン中西部のSouthern Zagros油田群等で、2007年の同社生産量は約10万b/d。③ イラン海上石油会社(IOOC:Iranian Offshore Oil Company) 1979年の革命後、革命前にイラン領ペルシャ湾で操業していた各石油会社(米国資本の企業も含む)を再編成して設立された会社であり、海上油田に関する事業を担当。同社の主な操業対象油田は、Bahregan油田等のカーグ島付近の北部海上油田と、Lavan島付近の南部海上油田。2007年の同社生産量は約70万b/d。④ POGC(Pars Oil and Gas Company) ペルシャ湾海上の四つのガス田(サウスパース・ガス田:世界最大級の天然ガス田、ノースパース・ガス田、ゴルシャン・ガス田、フェルドウシ・ガス田)に関する事業を担当するために1998年に設立。同社はこれら四つのガス田開発に関する外国石油会社を含む石油会社とのバイバック(buy back)契約(後述:(5)の①)締結等およびサウスパース・ガス田の原油層(サウスパース油田)の探鉱開発事業を所掌しているようである。アナリシスは、早い時期から油田開発が行われていた。そのため、既存油田の多くで老朽化が進んでいる。イランの原油生産量は、ほとんどの油田で外国石油会社が実質的に操業を行っていた1970年代に600万b/d程度まで増加したが、1979年の革命によって外国石油会社を排除してNIOCが独力での油田操業を開始したことによる技術不足・資金不足の問題や革命後の混乱などの理由によって、1980年には生産量が100万b/d台まで急激に低下した。その後、近年は400万b/d台まで生産量が回復してきているものの、既存の油田の老朽化・成熟化が進んで油層内部の圧力が低下してしまっているため、生産量が減少する傾向にあるとされている。1年間の自然生産減退量について、20万~30万b/d程度と指摘している専門家がある一方(例:①2004年6月14日付MEES、FACTS Inc. Fesharaki代表発言「20万~25万b/d」、②2005年10月2日付IranOilGas.com、Ali Vataniテヘラン大学石油学部教育研究部長発言「20万~30万b/d」)、米国エネルギー省ホームページでは「40万~50万b/d」と指摘されている。1979年イラン革命と外資排除による本格的な国有化を開始1995年外資の再参入7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,000日量(千バレル)生産量輸出量消費量1953年モサデク首相失脚1954年AIOCを含む外国コンソーシアムが復帰1908年中東地域初の油田マスジェデ・ソレイマン油田発見1951年モサデク政権による国有化とNIOC創設1912年同油田からの生産開始019131919192519311937194319491955196119671973197919851991AIOC(現BP)による独占的操業外国コンソーシアムなどによる操業イラン側単独操業19972003年イラン側主導、一部外資による操業⑤ カザール*8(Khazar)Oil Exploration and Production 出所:OPEC統計2007Company イラン領カスピ海における探鉱開発を担当。カスピ海南部イラン領海内における地質スタディー等も、同社が所掌している模様。なお、カスピ海南部は現時点においても国境が確定していない。(3) イランにおける既存油田の老朽化による生産量減少・既存油田の老朽化による生産量減少 1908年に中東地域で初の油田が発見されたイランで*8:「カザール」はペルシャ語で「カスピ海」の意味。図5イランの原油生産量、輸出量、消費量・主要4油田の生産量減少 こうした自然減退は、イランの主要4油田の生産量の減少に象徴的に表れている。これら主要4油田からの生産量は、1974年と2007年を比較すると約400万b/dか2008.11 Vol.42 No.672蛯ォなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情表5イランの主要4油田の生産量推移(b/d)1.マルーン油田2.アガジャリ油田3.アフワズ油田4.ガチサラン油田主要4油田合計イランの生産量合計1974年105万4,000101万95万5,00091万2,0002007年約45万約20万約80万約48万393万1,000(65.3%)602万2,000(100%)約193万(47.9%)403万1,000(100%)出所: 主要4油田の生産量は2008年1月9日付IranOilGas.com、イランの生産量合計はOPEC統計ら約200万b/dまで減少していることが分かる。なお、表5の4油田はいずれもイランの主な原油生産地域である南西部フーゼスタン州およびその周辺にあり、2007年時点においてイランの生産量の約半分を占めている。・既存油田における2次回収 既存油田の生産量を維持・増加させるためには、老朽化した2次回収(ガスを油田に圧入して油田内部の圧力を高める等)が必要であるが、これまでのイラン側の対応は、資金面でも技術面でも不十分なものとなっている。 イランでは、老朽化の進んだ油田に対して、陸上油田にはガス圧入、海上油田には水圧入が主に行われているようである。しかし、資金や技術が不足しているため、圧入するガスや圧入用の施設が十分には確保できていないのが現状である。デルパリッシュ・NIOC企画担当役員は、「これまでの調査の結果、現時点でイランの油田に圧入すべきガスの量は日量3億3,000万m3とされている。現在、ガス圧入を行っているイランの主要油田は、マルーン油田、ガチサラン油田などであるが、圧入用の施設が不足しているために計画どおりの量は圧入されていない。イランの第5次5カ年計画(2010年3月~2015年3月)期間中には計画どおりの量が圧入されるであろう。現在、日量約9,000万m3のガスがイランの油田に圧入されているが、ガスの量が不足しているだけではなく、圧入施設も不足している」と述べている(2007年5月3日付IranOilGas.com)。なお、イラン国内のガス供給システムでは、国内生産全体から国内一般需要家向けに優先的に供給され、残余の量を油田に圧入するシステムとなっている。そのため、一般需要が少ない夏期は圧入量をある程度確保できるが、需要が増加する冬期は夏期よりも圧入量が減っているのが現状である。 アガジャリ油田へのガス圧入は、サウスパース・ガス田のフェーズ6~8から生産されるガスを約500kmのパイプラインで同油田まで輸送して行う大プロジェクトとして施設を建設中であり、当初計画よりも遅れているものの今後数カ月以内に開始される見込みとなっている。なお、イラン側によれば、現時点ではアフワズ油田に対するガス圧入計画は存在しないという。 専門家による発言に見るように、筆者がイランに着任した2005年の時点で既にこの自然減退のことが広く指摘されていた。加えて、その後も2次回収のためのガス圧入なども十分には行われていない。こうした状況にもかかわらず、統計上では現在に至るまでイランの原油生産量が維持もしくは増加しているのは、特段の目立った新規油田開発案件や外国石油会社の進出案件がない状況下で、NIOCおよび地域別子会社が増産のための努力を懸命に行ってきているためであろうと考えられる。(4)イラン政府の「新たな石油開発政策」 2008年5月頃、イラン国営石油会社(NIOC)のジャシュンサズ総裁は、今後のイランの石油開発政策について、以下のように発言した。 「イラン石油省の二つの優先課題は、小規模な油田の開発と油田からの原油回収率の向上である。われわれは、イランにおいて新たな大油田が発見されることは期待していないが、原油回収率を向上させる計画が実施された場合には、イランの石油生産量を日量550万バレルまで増加させることができるだろう」(2008年5月26日付IranOilGas.com)。 「現在のイランの油田からの原油回収率は平均で27%であるが、今後向上させる計画である」(2008年6月2日付IranOilGas.com)。 イランでは数年前まで将来の目標生産量を700万b/d程度とした計画もあったようであるが、いま述べた「新73石油・天然ガスレビュースな石油開発政策」は、詳細が不明とはいえ、イランが現実を見据えて改めて策定したものと思われる。 イランは独力で探鉱・開発を行っていくことを望んでいるが、イラン側の開発資金不足を主な理由としてこれまで参入の機会がなかった小規模油田の開発に外国石油会社が参入する機会が想定される。また2008年で石油産業誕生100周年を迎えるイランは、老朽化して生産量が減少しつつある多くの油田からの原油回収率を向上させるための資金と技術をこれまで以上に外国石油会社に求めていくものと見られる。(5)バイバック契約と米国による対イラン制裁① バイバック契約 イランでは、憲法により外国企業に対して自国資源開発の権益を与えることが禁止されており、この憲法上の制約と外資導入の必要性の妥協策として考案されたのがバイバック契約である。契約内容は、外国企業が探鉱、開発および生産に係るコストを全額負担し、開発に成功すれば外国企業はコストとともにあらかじめ取り決めた報酬を(原油などで)回収することができるというものである。契約上固定されたコストが契約後に上昇した場合に対応が困難になる一方で、高騰を続けている資材費などのためにコストが上昇するケースが多いこと、プロジェクトに関与できる期間が数年程度でありPS契約と比較して短いことなどから、多くの外国企業からは厳しい条件であると考えられている。 なお、契約期間が短い理由としては、イランが外国企業に主に求めているのが新規の探鉱・開発よりも老朽化した油田の修復にあるためであるとされている。② 米国による対イラン制裁(イラン自由支援法:IFSA<ILSAを改訂>) イラン・リビア制裁法(ILSA: Iran Libya Sanction Act)は、イランをテロ支援国家と非難する米国が1996年8月に制定した法であり、イランの石油部門に年間4,000万ドル(現在は2,000万ドル)以上の投資を行い、同国の石油・天然ガス資源開発に著しく寄与した外国企業に対して制裁を科すというもの。同法は2001年8月、米国上下両院の決定により5年間延長(なお、リビアについては、2004年4月に同法の適用解除)、その後2006年9月「イラン自由支援法案(IFSA)」が成立(内容的にはILSAに近い模様)している。なお、EU諸国等は同法に対して反発しており、これまでに適用された案件はない。アナリシス(6)カスピ海原油スワップ イランは、北部がカスピ海、南部がペルシャ湾に接しているという地理的重要性を生かし、海への出口を持たない中央アジア諸国にとって貴重な原油輸出ルート国の一つとなっており、1996年にカザフスタンと、1998年にはトルクメニスタンと原油スワップ契約を締結した他、ロシアとの間でもスワップを行っている。このスワップは、中央アジア諸国産の原油をイランのカスピ海沿岸ネッカ港で受け取り、同原油はイラン国内で消費、代わりに同量のイラン原油をペルシャ湾岸の輸出ターミナル(カーグ島等)から供給するものである(P.65の図1参照)。 2008年8月には、グルジア紛争などの影響でACG原油の通常の輸出ルートとしているBTCパイプライン等が利用できなくなったアゼルバイジャンが、初めてこのイラン経由スワップを利用して原油輸出を行った模様である。(7)イランへの外国石油会社の参入状況 既述のように、イランでは1908年に中東地域初の油田であるマスジェデ・ソレイマン油田が発見され、同油田開発のために翌年設立されたAnglo Persian Oil Company(1934年 にAIOC:Anglo Iranian Oil Companyと社名変更。現在のBP)は英国政府の支援などを受けてイランでの活動をほぼ独占しつつ拡大させた。その後、1951年にモサデク政権によってイラン国営石油会社(NIOC)が設立されイランの石油産業は国有化された。しかし1953年にモサデクは失脚し、1954年にAIOCを含む欧米石油会社によるコンソーシアムがイラン国内での事業に復帰した。その後、1979年のイラン革命によってNIOCがすべての探鉱・開発事業を担当することとなり、外国石油会社はイランでの活動から排除された。 1995年、NIOCはTotalとシリA・E油田に関するバイバック契約を締結し、これが革命後初めての外国石油会社のイランへの参入となった。その後、同年11月に第1次バイバック・プロジェクト、1998年には第2次バイバック・プロジェクト、サウスパース・ガス田開発事業、数回の探鉱鉱区入札などによって外国石油会社がイランに参入している。1995年以降、これまでの外国石油会社参入実績は31プロジェクト、外国会社27社となっている(表6)。2008.11 Vol.42 No.674蛯ォなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情表6イランにおける外国石油会社の活動状況(2008年9月現在、31プロジェクト、外国石油会社27社)【開発案件】油・ガス田名Sirri A & E(1995年7月契約)South Pars(フェーズ 2&3)(1997年9月契約)Doroud(1999年3月契約)Balal(1999年4月契約)Soroosh(1999年11月契約)Nowrooz(1999年11月契約)South Pars(フェーズ 4&5)(2000年7月契約)Masjed-e-Suleyman(2001年3月契約)Darquain(2001年6月契約)South Pars(フェーズ 6、7、8)(2002年10月契約)South Pars(フェーズ 9&10)(2002年9月契約)Azadegan(2004年2月契約)Jofeir(2007年9月契約)Yadavaran(2007年12月契約)Golshan(2007年12月契約)Ferdowsi(2007年12月契約)12345678910111213141516【探鉱案件】17Anaran鉱区(2000年4月契約)18 Munir鉱区(2001年1月契約)19Zavareh-Kashan鉱区(2001年1月契約)20 Mehr鉱区(2001年4月契約)21Farsi海上鉱区(2002年12月契約)2223242526Tusan海上鉱区(2004年6月契約)Frouz海上鉱区(2004年10月契約)Iran-Mehr海上鉱区(2004年10月)Kuhdasht鉱区(2005年契約)Saveh鉱区(2005年契約)75石油・天然ガスレビュー関係会社Total(仏)* 70%Petronas(マレーシア) 30%Total* 40%Petronas 30%Gazprom(露) 30%Total* 55%Eni(伊) 45%Total* 46.75%Eni 38.25%Bow Valley(カナダ) 15%RD/Shell(英/蘭)* 70%INPEX(日本)、JAPEX(日本) 20%注)日系企業両社は蘭法人を設立し事業参加。OIEC(イラン) 10%Eni* 60%Petropars(イラン) 20%NICO(イラン) 20%CNPC(中国)* 49%Naftgaran(イラン) 51%Eni* 60%NICO 40%Petropars 60%StatoilHydro(ノルウェー)* 40%GS(韓国)* 42% IOEC(イラン)、 OIEC 58%NICO* 90%INPEX(日本) 10%Belarusneft(ベラルーシ)* 100%Sinopec(中国)* 100%概要2001年3月イラン側へハンドオーバー2002年1月生産開始。2003年1月イラン側へハンドオーバー2003年10月生産開始2004年8月イラン側へハンドオーバー2005年8月イラン側へハンドオーバー2005年4月生産開始。2001年3月Sheer Energy(カナダ)がオペレーターとして契約締結、2004年8月CNPCに譲渡。16万b/dを目標とするフェーズ3に移行済みガスはIGAT5を経てアガジャリ油田他に圧入する計画。2008年中に生産開始見込みEPC契約。(GSは旧LG)。2008年中に生産開始見込み2008年2月頃から約2万b/d生産投資額:フェーズ1、2それぞれ250百万ドル。契約対象のフェーズ1生産量は1.5万b/d見込み総投資額:20億ドル程度(入札後決定の模様)。計画では、フェーズ1で8万5,000b/d、フェーズ2で10万b/dを追加SKS(マレーシア)* 100%総投資額:60億ドル。計画では、5年半程度で生産開始。100億ドル相当のLNG関連契約締結の計画がある模様StatoilHydro* 75%Lukoil(露) 25%Edison(伊)* 50%Lundin(スウェーデン) 30%、Petronas 20%第2次バイバック事業(1998年)、アザール(Azar)油田を発見し、開発に向けて交渉中第2次バイバック事業(1998年)。商業量を発見できずに終了Sinopec* 100%第2次バイバック事業(1998年)。商業量を発見できずに終了OMV(オーストリア)* 34%Repsol YPF(スペイン) 33%Sipetrol(チリ:撤退) 33%ONGC(インド)* 40%IOC(インド) 40%OIL(インド)20%第2次バイバック事業(1998年)。バンデ・カルヘ(Band-e -Karkhe)油田を発見し、開発に向けて交渉中(注:Sipetrolは撤退した模様だが、権益譲渡先は不明)商業量を発見し、開発に向けて交渉中Petrobras(ブラジル)* 100%2002年探鉱鉱区入札(8鉱区)。作業義務:震探、掘削Repsol YPF* 100%2002年探鉱鉱区入札(8鉱区)。作業義務:各鉱区に試掘CNPC* 100%2002年探鉱鉱区入札(16鉱区)。作業義務:震探、掘削PTT(タイ)* 100%2002年探鉱鉱区入札(16鉱区)。作業義務:震探、掘削(以下、次頁に続く)Aナリシス27282930Garmsar鉱区(2006年6月契約)Khorramabad鉱区(2006年9月契約)Dayyer鉱区(2008年1月契約)Danan鉱区(2008年3月契約)31 Moghan-2鉱区(2008年4月契約)Sinopec 100%2002年探鉱鉱区入札(16鉱区)。作業義務:震探、掘削StatoilHydro* 100%2002年探鉱鉱区入札(16鉱区)。作業義務:震探、掘削Edison* 100%2007年探鉱鉱区入札(17鉱区)。作業義務:震探、掘削PetroVietnam(ベトナム)* 100%2007年探鉱鉱区入札(17鉱区)。作業義務:震探、掘削INA(クロアチア)* 100%2007年探鉱鉱区入札(17鉱区)。作業義務:震探、掘削(注) *はオペレーター。特に記載がない場合はすべてバイバック契約形態による事業。【探鉱案件(交渉中)】カスピ海南部Petrobras、CNPC、ONGC【参考】外国石油企業と交渉を実施したその他の事業(第2次バイバック事業)油ガス田名会社名概要Bangestan陸上・Ahwaz・Mansuri・Ab-TeymourPetroIranガス圧入によるEOR事業。1998年の入札当初は、3油田の一括開発と個別開発のオプションがあったが、Ahwaz先行の方針に決定された。2004年12月、NIOCは入札をキャンセルし、PetroIranが開発事業を担当することが決定。 Cheshmeh-Khosh陸上NICOCガス圧入によるEOR事業。1999年にCepsa(スペイン)と交渉開始。その後、OMVが交渉に合流。2004年1月NICOCがEPC契約締結出所:報道等から筆者作成 外国石油会社による探鉱事業によって発見された油ガス田として以下の三つがあり、現在、いずれも開発契約を締結するための交渉が行われているとされている。【外国石油会社による探鉱によって発見された油ガス田】・アザール(Azar)油田 イーラム州西部アナラン(Anaran)鉱区(油層がイランとイラクに跨っている可能性がある模様)(外国石油会社:StatoilHydro、Lukoil)またが・バンデ・カルヘ(Band-e-Karkhe)油田 フーゼスタン州西部メフル(Mehr)鉱区(生産見込み量は、日量約2万バレル程度)(外国石油会社:OMV、Repsol YPF)・Farsi鉱区 ペルシャ湾海上で油ガス田を発見(外国石油会社:ONGC.IOC.OIL)3. まとめ① イラン国内のガス田の開発をさらに進めることによって今後イランが本格的なガス輸出を行うためには、国内消費量の増加を上回る開発を行う必要があるが、国内の資本および技術のみで開発を行うことは困難であり、外国の資本および技術の導入が必要と考えられる。② また、イラン国内の油田開発を独自で行うための資金、そして原油回収率を向上させる技術がイラン側には不足しており、油田開発にも外国の資本および技術のさらなる導入が必要であろう。③ 外国の資本および技術の導入に際しては、イランをめぐる国際環境の悪化やイランの契約条件に対する2008.11 Vol.42 No.676Cランからのガス輸入を検討している。これは、既に世界各国におけるガス開発が進行しているために、今後輸出余力がある数少ない国の一つがイランであると考えられていることが大きな理由だと思われる。既述のとおり、イランでのガス開発には課題もあるこが、各国は虎とイランでのガス開発への参加およびガス輸入の機会をうかがっていることも見逃せない。々た眈た視しんん⑤また、イランは石油についても埋蔵量世界第2位であり、ポテンシャルは引き続き高い。最近のイランはガスに対する注目度が高いが、開発に参入できる可能性などの観点を含めて石油開発についても引き続き注目すべきであろう。ツの種類が多いことに驚いた。花屋では、多くの種類の花が飾られており、イラン人のおじさんの店員が非常にきれいに花をアレンジしている。私も数回依頼する機会があったが、その度に安さとセンスの良さに感心した。イランでは結婚式の際に花婿の車をたくさんの花で飾り、花婿がその車で花嫁を迎えに行って式場まで一緒に向かうのが一般的であり、日本の土曜日にあたる木曜日の夕方などには花で飾った車をよく見かけた。ケーキ屋では数多くの種類のケーキやドライフルーツが売られており、近所のケーキ屋ではイラン人が箱いっぱいのケーキを1kg単位で大量に購入していくのを毎週のように見かけた。 またイランでは、親戚や友人と集まってパーティーをする機会が非常に多い。われわれも、イラン風菓子とともにケーキを味わった。フルーツについては、スイカ、メロン、ザクロの他数多くの種類が日本に比べるとずっと安く売られており、滞在期間中に家族で多くの量を食べた。 一方、イランは公式統計でも年間二十数パーセントにものぼる物価上昇に直面している。実際の物価上昇率は公式統計を上回っているとも言われており、ケーキやフルーツを含めてさまざまな品の価格が上昇し、私が離任する頃には、着任時と比較して随分値上がり外国企業側の不満などが障壁となっており、本格的な開発には課題も大きいと思われる。国際環境の悪化は、イランでの事業がファイナンス面で制約を受けるなどの悪影響を生じさせている。また、イランでの石油・ガス開発契約であるバイバック契約は、契約上固定されたコストが契約後に上昇した場合に対応が困難となっている一方で、高騰を続けている資材費などのためにコストが上昇するケースが多いこと、プロジェクトに関与できる期間が短いことなどから多くの外国企業からは厳しい条件であると考えられている。④ こうしたなかでも、ガス埋蔵量世界第2位のイランのポテンシャルは引き続き高く評価されており、既述のガス輸出計画にあるとおり多くの国および企業が4. イランでの生活 筆者は、2005年春から2008年秋まで首都テヘランで生活したが、その間に感じたことを若干紹介してみたい。 イランについて皆さんはそれぞれに印象をお持ちだと思うが、私個人について言えば、着任前の印象と実際に生活してみての印象は大きく異なるものであった。テヘランで生活してみて、花屋・ケーキ屋の数とフルー出所:筆者(左)写テヘランの花屋にて77石油・天然ガスレビュー大きなポテンシャルを秘めるイランの天然ガス・石油事情008.11 Vol.42 No.678アナリシス車し イラン人は、約2,500年前のアケメネス朝ペルシャ、その後のササン朝ペルシャなど大帝国を築いた歴史に誇りを持っている。また、ササン朝から日本に渡来しだた文物が、奈良の正倉院に保存され、祇園祭りの山に飾られていることなど、日本との長い交流の歴史を持っており、さらに全般的に親日的な人々が多い。今後、こうした文化的基盤をもとに、油ガス田開発においても両国間の関係が発展するように微力ながら努めていきたい。したと感じることも多かった。また、女性は外出の際、髪の毛を隠すためのへジャブとコートの着用が義務づけられているが、このことが生活上の困難さを増している。 日本の4倍以上の面積があるイランの国土は多様であり、イラン国内を旅行した際には、ペルシャ湾沿岸の高温多湿、イラン中部の土漠の乾燥、カスピ海沿岸の湿潤な気候を実感し、テヘランでは冬の積雪と氷点下の気温および夏の乾燥した高温を体感した。【参考文献】1.米国エネルギー情報局ホームページ:Country Analysis Briefs Iran、 Energy Information Administration、 United States http://www.eia.doe.gov2.パース・オイルアンドガス会社ホームページ http://pogc.ir執筆者紹介石澤英俊(いしざわ ひでとし)埼玉県さいたま市出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1993年石油公団(当時)入団。経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課出向、Arthur D. Little School of Management修了などを経て、2005年春から2008年秋まで在イラン日本大使館勤務。合気道初段。イランでは日本の武道に人気があり、イランでの合気道の稽古にも参加した。家族は妻、長男、長女。 |
| 地域1 | 中東 |
| 国1 | イラン |
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