ページ番号1006353 更新日 平成30年3月5日

いよいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業

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レポートID 1006353
作成日 2008-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG非在来型
著者
著者直接入力 坂本 茂樹 大野 泰伸
年度 2008
Vol 42
No 6
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 調査部坂本 茂樹JOGMEC 調査部大野 泰伸いよいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業はじめに 豪州東部クイーンズランド州でCBM(Coalbed Methane)*1を使ったLNG事業(以下、CBM-LNGと略記する)案件への関心が一段と高まっている。2007年5月に豪州のCBM生産者Arrow Energy等が最初のCBM-LNG案件を発表してから1年あまり、2008年9月末時点で合わせて6コンソーシアムがCBM-LNG事業の実施を表明している。各コンソーシアムにはそれぞれ海外の有力なLNG事業者がパートナーとして参加している。西豪州沖合大型ガス田開発による在来型LNG案件がコスト上昇、環境問題への対処で液化基地サイトを決められない等の理由で進展が遅れている昨今、新たなLNG事業形態としてCBM-LNG事業への期待が高まっている。CBM生産量は、2000年以降豪州東部で急増しており、豪州の次世代LNG事業向けとして有望な原料ガス供給源になることが期待される。 本稿は、主に、JOGMECがエネルギーコンサルタントWoodMackenzie社への発注で実施した2008年度需要動向調査「豪州のCBM(炭層ガス)を原料とするLNG事業案件の現況と投資可能性」に付随した現地調査による情報を基に執筆した。その内容は、「CBMを使う豪州LNG事業」とその特徴を中心に述べた。CBM自体に焦点をあてた「コールベッドメタンの埋蔵量評価手法および開発・生産技術」(今号同時掲載19ページ参照)と併せてご覧いただきたい。ひっぱく【Executive Summary】 豪州のCBM産業は、2000年以降、地元ガス市場向けの商業生産が軌道に乗って生産量が急増し、この数年で大きな変貌を遂げた。また、世界で初めてCBMを輸出用LNGの原料ガスとして使う事業が計画され、案件は実現に向けて着々と進展している。CBMが輸出用LNGの原料として注目されたのは、国内ガス市場に比べてはるかに高い国際LNG価格連動への期待、そして豪州CBMの増産可能性の高いことの二つの理由による。豪州東部ガス市場価格は世界で最も低い水準にあるが、LNG契約価格は近年のLNG需給逼迫、特にアジア市場の旺盛な需要を背景に、非常に高い水準になると見られている。また今後数十年の豪州CBM生産可能量は豪州東部ガス需要規模を大きく上回ると想定されている。 現時点までに提案された6件のCBM-LNG案件のなかで最も早いArrow Energy/LNG Ltd.(Liquefied Natural Gas Ltd. 豪州の小規模LNG事業者)のGladstone LNG案件は2007年5月の発表であった。それ以降、新規案件の表明が相次ぎ、CBM-LNG案件の進展速度は極めて速い。 CBMの開発・生産は在来型ガス田開発と大きく異なる。CBM生産に際しては、個々のCBM井の生産レートが在来型ガス田生産井に比べて著しく低く、生産性も不安定と言われ、恒常的に非常に多くのCBM生産井による生産を必要とする。また生産初期段階では、ガス生産に先立って大量の随伴水が生じる。 CBM-LNG事業実施に際しては、次の項目が課題になると考えられる。・LNG生産開始に先立つ準備期間におけるCBM生産管理体制(段階的なCBM増産)・資機材高騰と人員不足の環境下で、必要となる掘削リグを含む資機材と労働力の確保・随伴水の処理・LNG買主と金融機関に対して(世界で初めての試みである)CBM-LNG事業の有用性を十分に認識させる*1:炭層メタンガス。豪州では一般にCSG(Coal Seam Gas)の名称があてられている。31石油・天然ガスレビューAナリシス メタン比率の高いCBMを原料とするCBM-LNGはカロリーが低いため、高カロリーLNGを要する買主はLPG注入等によるカロリー調整が必要となる。 クイーンズランド州政府は概してCBM-LNG事業推進に協力的であり、Santos/PetronasのGLNG、BG/QGC(Queensland Gas Company)のCurtis LNGの大型案件は、州政府許認可手続きに際して優遇措置を受けられる“Significant Projects”に認定されている。しかしこれらのCBM-LNG案件はこれから、環境調査を含む多くの許認可過程を経なければならない。 クイーンズランド州では輸出用LNG事業に国内市場向けガス供給義務を求める動きはなく、Gladstone港に予定される液化基地建設も、港湾当局の協力を得て順調に進展する見通しである。同州で適用される陸上ガス生産事業への財務条件は10%のロイヤルティーであるが、今後条件が変更される可能性もあり得る。 総じて、クイーンズランド州のCBM-LNG事業は、下記理由により順調に進展する可能性が高い。・豊富なCBM埋蔵量・沖合ガス田開発に比して相対的に安価なCBM生産コスト・Gladstone港に複数のLNG液化基地建設が可能・クイーンズランド州政府のCBM-LNG事業に対する協力的な姿勢 目下、世界のLNG事業者、買主を含むガス関連産業界の、豪州CBM-LNG事業への注目が高まりつつある。てわ強ごたCBM生産技術を用いてCBM開発を開始した。しかし米国流の大規模投資と在来型掘削リグを使用する開発方式は豪州では高コストのために採算割れとなり、Conocoは1998年にCBM鉱業権を現Origin Energyに売却して撤退した。豪州のガス価格が北米より低かったことも採算悪化の原因になった。 その後のCBM開発は、主に豪州の中小規模の企業によって実施された。彼らはガス売価の低い豪州東部の市場環境を認識し、限られた予算内で、豪州炭に適した低コストの掘削手法を採用して成功した。CBMの安定的い競争相手と見な生産に成功した事業者は、当時、手られたPNGガス事業*2に競り勝って発電所など大口需要家との長期契約を締結していった。クイーンズランド州政府が2000年に州内の発電の13%以上をガス発電にする法令を施行したことも、間接的に豪州のCBM事業を促進させた(図1)。 1990年代半ばから開始されたクイーンズランド州のCBM生産は2005年から急速に拡大した。現在、豪州東部ガス供給に占めるCBM比率は20%に達している(ク1. クイーンズランド州CBM産業の進展(1)CBM生産の進展 豪州はエネルギー資源の宝庫であり、クイーンズランド州はニューサウスウェールズ州と並ぶ石炭産地として知られる。石炭産地は、同時にCBM生産のポテンシャルを持つ。 クイーンズランド州のCBM産業は、石炭産業に端を発する。かつて石炭採掘に際して炭層内のメタンは取り扱いがやっかいな代物だった。石炭生産者は、石炭採掘に先立って、炭層内のメタンを除 去するための坑井を掘削し、メタンはフレア(焼却処理)されるか、採掘場の小規模な発電燃料として使われた。 CBMの商業化はまず米国で開始された。米国では、CBM事業に対する免税措置にも助けられて、1990年代にCBM生産量が急増した。米国ではいわゆる非在来型ガスの増加でガス生産が好調だが、CBMは全米ガス生産量のなかで8%を占めるに至っている。 一方豪州では、初期段階のCBM事業者に米国企業が多かった。そのなかでConoco(当時)は1994年にクイーンズランド州におけるCBM鉱業権を取得し、米国で培っ*2:現在ExxonMobilがオペレーターを務めるPNG LNGの前身。2007年初めにLNG事業へと方向転換するまで、豪州東部市場向けパイプライン・ガス販売を検討していた。2008.11 Vol.42 No.632「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業イーンズランド州内ガス供給に占めるCBM比率は約50%)。(2)主要なCBM生産者 1990年代に豪州でCBM開発を開始した企業は、米国でのCBM開発に成功した経験を持つConoco、Amoco、BHPなどの大企業であったが、彼らは豪州のCBM事業を採算ベースに乗せることができず、順次撤退した。代わってCBM事業に参入したのは豪州の中小規模の企業であり、彼らの間で順次企業買収や合併が進展した。現在の主要なCBM事業者は、Origin Energy、QGC、Santos、Arrow Energyであり、それぞれが各CBM-LNG事業コンソーシアムでCBM生産を受け持つ中核企業になっている(図2)。16,0002P Reserves3P Reserves12,0008,0004,000Reserves (PJ)0Origin EnergyQGCArrow EnergySantos出所:WoodMackenzieBGSunshine GasAGL EnergyMetgascoEastern Star019951996199719981999200020012002200320042005200620072008年出所:WoodMackenzie14012010080604020Gas Production(PJ pa)図1クイーンズランド州のCBM生産量推移図2豪州CBM事業者の埋蔵量(2008年6月)2. CBM-LNGの事業環境 クイーンズランド州を含む豪州東部にはCooperガス田、CBM等地元需要向けの陸上ガス田生産があるが、LNG事業は実施されていなかった。LNGで先行する西豪州の状況と適宜比較しつつ、クイーンズランド州におけるCBM-LNGの事業環境を概観する。(1) 州政府、港湾局を含む関係当局のLNG事業に対する姿勢 クイーンズランド州政府は、総じてCBM-LNG案件に対して協力的である。同州にはこれまでLNG事業がなかったため州政府内部にLNG専門家はほとんどいない。また石炭、鉄鉱石など豊富な天然資源に富む同州は、世界的な資源ブームで天然資源の輸出量が飛躍的に増加しており、関係当局は多忙を極める。それにもかかわらず、これまで州政府のCBM-LNG案件推進に対する姿勢は一貫して協力的であり、許認可手続きは比較的順調に進展していると見られる。 CBM-LNG案件のなかで(各案件の詳細は8章参照)、Gladstone LNGおよびSun LNGの小規模2事業の液化基地サイトはGladstone港の産業用埋め立て地Fisherman's Landingにあり、環境関連事項を含む許認可手続きは相対的に進めやすいと見られる。GLNGおよびQueensland Curtis LNGの大規模2事業の液化基地サイトは、Gladstone港湾内Curtis Island南部に建設される。同島は植生に覆われており、まだ本土との連絡橋もなく、これから本格的な整地と産業施設建設が必要になるために、開発に時間がかかる。しかし両LNG案件ともに、一連の連邦および州政府関連の許認可手続きを州政府が優先的に進める“Significant Projects”に認定されており、時宜にかなう処理手続きが期待されている。 大型沖合ガス田開発案件が集積する西豪州では昨今、環境問題、Native Title(先住民権利、本章(3)参照)がネックとなって液化基地サイト決定が非常に難しい。クイーンズランド州政府の産業政策は、あらかじめいくつかの産業開発地域を絞り込み、そこに産業活動を集中させる方式を採っている。こうすることで、各企業が自ら複数の候補地を選んで許認可手続きを繰り返し、最終的に1カ所に絞り込む過程に投入する時間、労33石油・天然ガスレビューAナリシス出所:JOGMEC出所:JOGMEC写1Gladstone港自然岸のマングローブ写2Gladstone市高台の公園から望むGladstone港遠景 液化基地サイトは、前項で述べたように、長期的な産業政策に基づいて液化基地用地が整備されているGladstone市にあり、自然環境にかかわる問題は発生し難いと考えられる。(3)Native Title(先住民アボリジニの権利) Native Titleはオーストラリアに特有の概念であり、その主要項目は、①(過去に先住民の使用に供されたと考えられる)土地使用に対する補償、②文化遺産の保護、③アボリジニ社会に対する雇用機会創出である。天然資源開発者は、政府およびアボリジニ社会・代表者と緊密な連絡を取りながら開発作業を進めることが求められる。 クイーンズランド州のCBM生産地域の多くは、現在の農耕用土地所有が明確であり、Native Titleにかかわる問題は発生していない。しかしCBM生産者はアボリジニ代表者と協議の上、過去に先住民が該当する土地を使用した可能性を確認している。 Gladstoneの液化基地サイトのうち、Fisherman's Landingは湾内の埋め立て地であるため、Native Titleにかかわる問題は発生しない。Curtis IslandもNative Titleにかかわる問題はないと見られるが、現在関係者が調査中である。(4)液化基地建設時期の集中による懸念 石油上流産業、LNGの液化事業では、数年来の資機材高騰と熟練労働者(エンジニア)不足で、コスト上昇が著しい。CBMのLNG事業化に際しても、この問題を回避することはできない。多くのCBM-LNG案件が、2015年頃までのLNG需給逼迫時における供給開始を狙って、2011~14年のLNG生産開始を目標にしている。2008.11 Vol.42 No.634力を大きく削減できる。CBM-LNG案件が液化基地サイトとしているGladstone港は典型的な好例と考えられる(6章参照)。Gladstone市はもともと主要な石炭積み出し港であり、アルミ産業など素材産業が立地する産業都市である。同市は州政府の長期的な産業政策によって、港湾と産業用地が整備されてきた。州政府と港湾当局は、LNG産業に対して優先的に液化基地の立地を推進する姿勢を固めており、今後50年の長期的視点から工事など港湾再整備を進めてい液化設備用地確保、浚る。 温暖な気候と適度の降雨に恵まれたGladstone市は、海岸線のマングローブなど自然環境と優れた景観を維持しながら、効率的な港湾設備など産業施設を併せ持つ産業都市となっている(写1、写2)。 なお、クイーンズランド州政府はGladstone市よりさらに北方の港も液化基地サイトの候補として挙げているが、開発が進んでいるCBMガス田群(Gladstone市の南西部)からの距離がさらに遠くなるため、現時点ではGladstone市で液化基地建設が進む見通しである。渫せしゅんつ(2)自然環境問題 CBM生産とその液化施設が自然環境に及ぼす影響は、総じて、限定的と考えられる。 CBM生産地域では、CBM坑井、コンプレッサー等生産設備に要する面積が小さく、ガスパイプラインは地中に埋められる。CBM生産地域のなかで、クイーンズランド州内陸乾燥地帯は耕作に適さない荒れ地(植生はま木=低木)であり、環境上の問題は発生しにくばらな灌い。海岸寄りの耕作・放牧地域では、農耕地とCBM生産設備が隣接しているが、互いに協力体制を取っている例もあり、問題は発生していない。かんぼくヌ処であり、限られた資機材、労働力の確保をめぐって競争に拍車のかかることが懸念される。 クイーンズランド州のCBM-LNG案件は、西豪州沖合めLNG案件が苦慮している液化基地サイトに目が立っており、相対的に有利な条件下にある。しかし、一定期間内に資機材、労働力を確保することには限界があるため、いかにこれらを確保するかがLNG事業を実現させるための重要な鍵の一つになる。折しも西豪州沖合で計画されている複数の大型LNG案件*3も同時期の生産開始を予定しており、数年前に比べて建設コストが数倍に上昇している液化設備は今後さらに建設が難しくなると推定される。また各LNG事業者の間で、掘削リグを含む資機材と熟練労働者獲得をしめぐる競争が熾になることも予想され、既に掘削リグの手当てが難しくなっている。Gladstone港においては、輸出量が増加している石炭出荷設備の増強計画も進展中烈れついよいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業3. LNG原料としてのCBMの特徴 CBMをLNGプラントのフィードガスとする場合、液化プラントに対して安定的にガスを送ることが必要である。CBMの生産量は石炭の特性に依存するが、望ましい石炭の特性は以下のとおりである。①石炭表面へのガス吸着量が多い(通常5~30m3/石炭1トン)持していくためには、生産井の10%にあたる50坑の新規掘削を毎年行い、最終的には1,500坑程度が必要となる。これに対し、Plutoでは坑井あたりの生産量は150 mmcf/d、坑井数は初期で5坑、最終でも7坑である。なお、CBMでは坑井間で効果的に排水・減圧する目的もあり、坑井間隔は概ね1~1.5km程度である。②浸透率が高い(通常10mD*4程度、高いもので500mD)③掘削深度が浅い(通常200~1,000m)④最も多くのガスを生成する瀝青炭であるれきせい CBMを原料としてLNGの生産を行う場合、在来型ガス田と比較したその特徴を、以下に示す。なお、定量的な比較対象として、同じ豪州の開発案件であるPluto LNG(西豪州沖合プロジェクト)を取り上げる。(1)圧力が低い CH4(メタン)の多くは石炭表面に吸着されており、通常は静水圧で封じ込められた状態になっている。CBMの生産には、まず排水して減圧する必要がある。生産されるCBMの井戸元での圧力は概ね1MPa以下と低い。したがって、液化プラントまで輸送するには、10~15MPa程度(必要な昇圧幅は輸送距離やパイプライン口径により異なる)まで昇圧するコンプレッサーを、CBMフィールドに設置することが必要である。おおむ(2)坑井あたりの流量が少ない、坑井数が多い 一般に坑井あたりのガス生産量は数mmcf/d以下と少ない。このため、年間350万トンのLNGを生産する場合、初期で500坑程度の坑井が要る。またCBM生産量を維(3)純メタンに近い CBMのガス組成は95%以上がCH4、その他がN2、CO2、C2H6、H2Oであり、液化の前処理でCO2、H2Oを除去すると純メタンに近くなる。H2Sや水銀といった不純物がなく、前処理が少ないメリットがある。しかしプロパン以上の炭化水素が含まれておらず、コンデンセートやLPG販売による早期のコスト回収ができない、冷媒に使用するプロパン等を原料ガスから抽出することができず外部補給が必要となる、といったデメリットがある。また、日本が多く輸入する西豪州やインドネシア、マレーシア産等と比較するとLNG発熱量が低い。(4)ガス生産のプラトーまでに時間がかかる 在来型ガス田では生産開始から数日でプラトーになるのに対し、CBMでは排水により圧力を降下させる必要があり、プラトーまでに6カ月から、長いものでは4年近くを要する。LNGプラントは一般に低ロード運転が難しいため、この期間(ガス生産量が増大する期間であり、Ramp-up期間と称する)に生産されるガスの使用方法を検討しなければならない。国内消費、枯渇ガス田への貯蔵などが検討されている。(図3)*3:Woodside社;Pluto、Browse、Sunshine、Chevron社Gorgon、INPEX社Ichthys、ExxonMobil社Scarborough等。*4:mD=ミリダルシー。1cmあたり1気圧の圧力勾配(こうばい)で、粘度1cP(=1×10-3Pa・s)の流体が1cm2の断面を流れる量を表す単位がダルシーで、その1/1000。35石油・天然ガスレビューAナリシスGas productionWater productionCarpentariaQueenslandCapricornMaryboroughGladstoneTownsvilleBowenNambourGalilee13151719212325272931Eromanga807060504030201005793111出所:WoodMackenzieBrisbaneBrisbaneDarlingMajor CBM Basins0100200km400Murray出所:WoodMackenzieGunnedahSydneyQueenslandNew South WalesSuratSouth Australia図4クイーンズランド州の堆積盆地 Bowen堆積盆地以外では、中生代ジュラ紀(約1億5,000万年前)のSurat堆積盆地が存在し、揮発分が多い瀝青炭から成る(図4)。 CBM生産で先進的なアメリカ・ロッキー山脈東部地域と比較すると、クイーンズランド州の石炭はメタンの吸着量が2~5倍多く、結果として坑井あたりのガス生産量が多くなるため、CBM生産に適していると言える。 水分を除いたガス成分は約97%がCH4であり、N2が2~3%、残りを1%未満のC2H6およびCO2が占める。図3CBMのガス/随伴水生産プロファイル(5)ガス量が変動する 個々の坑井からの生産ガス量には変動がある。ただし、個々の生産量が少なく多数の坑井を必要とするため、それぞれの変動は相殺され、トータルのガス量は比較的安定して得ることができる。通常、40前後の坑井からのガスが集約され、コンプレッサーで昇圧してパイプラインに送るが、このコンプレッサー吐出段階でのガス変動量は、概ね生産量の1%程度である。(6) クイーンズランド州CBMの特徴 クイーンズランド州の石炭は、その約70%がBowen堆積盆地に分布する。これは古生代二畳紀(約2億5,000万年前)の地層に生成された石炭であり、亜瀝青炭/瀝青炭/無煙炭まで幅広く存在する。Bowen堆積盆地のうち、東側は揮発分の少ない瀝青炭/無煙炭から、中心部および北西部は揮発分を多く含む瀝青炭から成る。4. CBMの生産設備(1)CBM坑井 坑井には、自噴井およびPCP(Progressive Cavity Pump)設置井がある。自噴井では圧力制御もしくは流量制御用の調節弁を設置する。CBMでは圧力が低いほどCH4の脱着が進み、生産量が増える。しかし、圧力が低すぎると、後述するコンプレッサーステーションまでのガス送出が非経済的となるため、クイーンズランド州では70~200kPaの圧力で制御されている。坑井から生産されたガスおよび水は、ドラム式のセパレーターで分離され、ガスはコンプレッサーステーションへ送られる。回収された凝縮水はそのまま利用もしくは水処理設備へ送られる。 多数の坑井が必要となるため、通常は無人の設備となり、有人のコンプレッサーステーションで遠隔管理される。PCP設置井ではポンプ駆動電源が必要となるが、生産されるガスを燃料としたガスエンジン等を設置し、坑井元で発電を行っている。クイーンズランド州は雨が少なく、日照時間が長いことから、太陽光パネルを設置し、電源供給を行うといった工夫がなされている(写3、写4)。2008.11 Vol.42 No.636「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業出所:JOGMEC出所:JOGMEC写3QGC社Undulla Noseプロジェクト自噴井(周辺にドラムセパレーターがある)写4Santos社FairviewプロジェクトPCP設置井(2)コンプレッサーステーション コンプレッサーステーションの役割は、40前後の坑井から集約されるガス中に含まれる不純物を除去し、需要地まで送るために必要な圧力まで昇圧することである。クイーンズランド州で生産されるCBMはCH4以外の成分がほとんどなく、コンプレッサーステーションでの不純物除去は脱水処理のみとなる。なお、表1はクイーンズランド州の主要ガスパイプラインの一つである、Queensland Gas Pipelineで規定されているガス組成であり、CBMは脱水処理のみでこの仕様を満足することができる。表1Queensland Gas Pipelineのガス仕様項目水分二酸化炭素硫化水素全硫黄酸素炭化水素露点不活性ガス(CO2含む)ウォッベ指数※2仕様65mg/S m3未満体積3%未満7mg/S m3未満50mg/S m3未満体積0.2%未満10℃未満(1MPa~10MPa)体積6%以下4%以上:総発熱量※1は37.9~42.3MJ/Sm34%未満:総発熱量は35~43MJ/Sm347MJ/Sm3以上52MJ/Sm3未満※1: ガスを燃焼したときに生じる燃焼熱で、炭化水素の水素分の燃焼による水蒸気凝縮分(蒸発潜熱)を含めた発熱量。潜熱を含めない場合は真発熱量という。※2: ガスの品質を表す指標の一つ。発熱量をガス比重の平方根で除したもので、燃焼器ノズルから単位時間あたりに供給される熱量に相当する。出所: Jemena(Queensland Gas Pipelineの保有会社)ホームページより コンプレッサーステーションにおけるプロセスフローは、①セパレーターによる凝縮水分離、②コンプレッサー昇圧、③エチレングリコール等の液体吸湿材による脱水処理、といたってシンプルである。コンプレッサーステーションあたり約40TJ*5/d(約40mmcf/d)のガスが処理され、入り圧70~200kPaから10~15MPa程度まで昇圧される(必要に応じ、別途ブースターコンプレッサーを設置するケースもある)。プラント異常時にはベント放散もしくはフレア放散が行われる。クイーンズランド州の古いコンプレッサーステーションではベント放散されているが、新しい設備では、環境負荷の小さいフレア放散も採用されている。 コンプレッサーステーション吐出のガス中に含まれる水分は、10~50mg/Sm3程度である(発電設備へ直接供給を行っているコンプレッサーステーションでは、200 mg/Sm3を含む場合あり)。一般的には日中の水分量が多く、夜間が少なくなる傾向がある。 コンプレッサーステーションでは、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)によりプラントの監視と制御を行っている。コンプレッサーステーション内のコンプレッサーやポンプ等の起動・停止、バルブの開閉の他、生産井の遠隔操作も可能である(写5)。(3)水処理設備 CBM生産に随伴する水は、炭層によって水質、特に塩分濃度が異なる。塩分濃度が低く、そのまま利用可能な場合は、タンクに溜められ、穀物栽培や家畜の飲用として利用される。一方、塩分濃度が高いか、あるいは不た37石油・天然ガスレビューAナリシス出所:JOGMEC出所:JOGMEC写5QGC社Undulla Noseプロジェクトコンプレッサーステーション写6Arrow社Tipton Westプロジェクト随伴水蒸発池純物を含んでいる場合には、適切な処理を施して利用するか、地中への再圧入が必要となる。 水処理設備の多くは、巨大な貯水池に水を溜め、蒸発により水分のみを大気中に戻し、不要な塩分を取り除くというものである。ただし、現状では回収される塩分の処理方法がクイーンズランド州内で定まっておらず、今後のCBM生産量の増大に伴い広大な用地を必要とすることからも、必ずしも最適な処理方法とは言い難い。Santos社のように、膜分離による水処理プラントを設置し、随伴水の有効利用を推進する動きも見られる。豪州の場合、干ばつに見舞われることも多く、水の有効活用はCBMビジネスにとって不可欠な要素となる(写6)。(4) コンプレッサーステーションから液化設備までのガス・パイプライン Bowen堆積盆地およびSurat堆積盆地から、LNG液化基地が計画されているGladstone市までは、およそ450km離れている。現状、Gladstone市への供給用にQueensland Gas Pipelineがあるが、液化の計画容量はこれをはるかに超過するものであることから、新設の供給パイプラインが計画されている。パイプ口径は液化容量に応じて18インチもしくは30インチで計画されているが、複数のLNGプロジェクトが立ち上がる場合、パイプラインが共同で利用される可能性が高い。(5)CBM生産設備の計画的な増設 坑井あたりの究極可採ガス量は0.2~7Bcf程度であり、生産期間は15~20年となる。供給ガス量を一定に保つためには、生産井の数の10%程度の坑井を、毎年新規掘削することが必要である。既述の例で500坑からガスを生産し、LNGで年間350万トンを生産する場合、毎年50坑の新規坑井と1基地のコンプレッサーステーションの増設を行っていくこととなる。市街地周辺では掘削が日中に限定されたり、農耕地では既存の公道・私道付近でないと耕作の障害となるため掘削位置が限定されたりすることから、試掘の段階で用地確保やスケジュール等も含めて増設計画を定める必要がある。また、この段階で随伴水の性質を分析し、必要な処理設備についても計画に織り込んでいかなければならない。(6)CBM生産設備のオペレーション CBMの生産現場では、コンプレッサーステーションにオペレーターが常駐し、数十に及ぶ坑井も含めて運転管理を行っている。プラント異常時には必要に応じてガスを放散しているが、既存生産設備の多くはベント放散であり、今後は環境負荷低減のためフレア放散ないし放散レスの操業を検討する余地がある。 設備のトラブル等で一時的にガスの生産を止める場合、プロセスフローがシンプルなため短期間の停止であれば再稼働は容易であり、ガスの成分や生産量に大きな変動はない。ただし、長期間の停止を伴うと、ガスを生産している炭層に雨水等が浸入し、石炭表面のメタンが飽和状態にない場合には水圧によりメタンの脱着を妨げ、ガス生産量が低下する。したがって、この場合は排水だけでも継続するオペレーションが望ましい。*5:TJ(tera joule)は10の12乗(1012)joule。1,000TJ=1PJ(peta joule)。1,000TJ≒1bcf。2008.11 Vol.42 No.638「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業5. CBMを原料とする液化設備の特徴(1)ガス組成による特徴① 前処理 在来型ガス田と異なり、H2Sや水銀といった不純物を含まないため、液化設備の前処理は大きく軽減され、二酸化炭素除去および脱水処理が主な前処理となる。辺の工場では多量のエネルギーを消費しているものの、既に十分な燃料ガスが安価で確保されており、相対的に高価となるBOGの燃料使用は期待できない。BOGは燃料あるいは液化設備で冷媒の一部として、液化基地内で自家消費せざるを得ない。② コンデンセート CBMにはプロパン以上の炭化水素が含まれておらず、コンデンセートの回収設備が不要である。しかし、エタンも極少量しか含まれず、冷媒に使われるエタン、プロパン、ブタン等を回収できないため、すべて外部調達することとなる。エタンは工業製品として入手困難なため、エチレンでの代用等を検討する必要がある。(2)生産プロファイルによる特徴 CBMのRamp-up期間中、部分負荷でLNG生産することは難しい。したがって、CBM生産開始とLNG生産開始との間にはタイムラグが生じることになる。この間のガス処理方法を決定しておく必要がある。Santos/Petronas、BG/QGCは在来型ガス田をストレージとして活用する計画で、ストレージの評価を行っている。Ramp-upに限らず、常時オペレーションでもストレージを経由しておくと、CBM生産量の変動やプラント異常時にガスを吸収するクッションとなり、理想的と言える。Arrowは発電設備を建設し、Ramp-upのCBMは発電燃料として使用する計画である。クイーンズランド州では石炭火力発電がベースロードとして使用され、ガス火力発電は主にミドルからピークシェーブ用であるが、Arrowの計画ではRamp-up期間中はガス火力発電をベースロードとして使用する。Origin/ConocoPhillipsの計画は明らかではないが、Originが約300MWの火力発電所を所有、また在来型ガス田も所有しており、発電燃料およびストレージの併用となるものと思われる。(3)立地条件による特徴 液化基地建設予定地であるGladstoneは、セメント工場やアルミ工場等が存在する工業地域である。これは、多くの液化基地が未開拓地に建設されるのとは状況が異なる。水、スチーム、電力などのユーティリティーを外部から調達することも可能であるが、液化基地内で多くのエネルギーを消費するコンプレッサーの駆動源は、基地内のLNGタンクから発生するボイルオフガス(BOG:boil off gas)を使用したガスタービン駆動となろう。周(4)計画されている液化プロセス Santos/Petronas、BG/QGCはいずれもOptimized Cascade Processを採用する見込みである。同プロセスはConocoPhillipsのライセンスであり、Origin/Conoco Phillipsもこれを採用する。このプロセスは、LNGタンクからのBOGを冷媒として利用する、冷媒として工業製品として入手可能なエチレンを使用する、という特徴がある。CBMを原料とする場合、既述のとおり原料ガス中にエタンが極少量しか含まれないため、冷媒にエタンではなく外部調達が容易なエチレンを使うこのプロセスが適している。 Arrow/LNG Ltd.については、LNG Ltd.社が自社設計している液化プロセスを採用する見込みで、Single Mixed Refrigerantの予定である(図5)。C3 サージドラム原料ガスアフタークーラーC3コンプレッサーアフタークーラーC2=コンプレッサー熱交換器C2= サージドラムC2+分離アフタークーラー熱交換器燃料ガスC1コンプレッサー出所:JGC/JOGMECLNG タンクタンク、タンカーのBOG図5Phillips Optimized Cascadeプロセスフロー(5)LNG発熱量 CBM-LNGはそのままでは発熱量の低いLNGとなる。日本をはじめとする東アジアが主要なマーケットであり、より熱量の高いLNGが望まれる。BG/QGCのQueensland Curtis LNGでは、LPG受け入れバース、39石油・天然ガスレビューPGタンクを建設し、積み地で熱量を調整することを検討している。BGはアジア太平洋地域へのLNG供給を強化しており、その供給元としてCBM-LNGが重要となっている。その他プロジェクトでは、現時点において熱量調整の計画は発表されていない。アナリシス6. LNG液化基地サイトの概要(1)Gladstone市 LNG液化基地は、クイーンズランド州Gladstone市に予定されている。南回帰線のすぐ南に位置し、年間を通して降水量が少ない。クイーンズランド州の州都Brisbane市から北へおよそ500kmに位置し、人口は4万人ほど、同州の海上輸送(石炭や鉱物資源、農産物など)の拠点として栄える町である。石炭の積み出し港としては、豪州全体で3番目、18%を占め、クイーンズランド州では2番目、30%を占めている。石炭その他の貿易船が、年間約1,500隻行き交う。(2)LNG液化基地の候補地 既に貿易港として利用されているFisherman's Landing、そこから沖合のCurtis Islandが液化基地の候補地として挙げられている。Fisherman's Landingは工業地域内の埋め立て地で、既に苛性ソーダや液体アンモニア、セメント等の荷揚げ、荷降ろし用の波止場がある。建設資機材等の搬入経路は確保されており、LNG液化基地建設には適しているものの、敷地面積が限られ、比較的小規模なプラントに限定される。土地はGladstoneの港湾局が所有しており、事業者へリースされる。Fisherman's Landingには既存バースが三つあるが、このうちアルミナ製造用の液体アンモニア輸入用のバースを拡張し、アンモニアとLNGとの併用バースが計画されている。 一方のCurtis IslandはFisherman's Landingから沖合2kmほどにある島で、島の北部は国定公園、島の南部の外洋に面した部分はリゾート地であるが、LNG液化基地予定地である島の南部、湾内側には制約となるものはない。現状では植生に覆われた山間の土地であり、島へ渡るアクセス用の橋もないため、用地の造成や橋梁建設、ユーティリティー供給等が必要となる(写7、写8)。(3)Gladstone港の拡張計画 Gladstone港は島を隔てて外洋とつながっており、風、波ともに穏やかな、恵まれた環境にある。ただし、既にCurtis IslandQueensland Curtis LNGQueensland Curtis LNGGladstone LNGGladstone LNGSouthern Cross LNGSouthern Cross LNGGLNGGLNGSun LNGSun LNGFisherman?sLanding2km出所:JOGMEC写7Fisherman's Landing/Curtis Islandの液化基地建設予定地出所:JOGMEC写8Fisherman's Landingの既存アンモニア受け入れバース(対岸はCurtis Island)多数の船が航行している上、Fisherman's Landing/Curtis Islandへ至る航路は、LNG船の喫水に対して現状では水深が浅い。これに対し、港湾局は50年長期計画と題して貿易港としてのさらなる成長戦略を掲げ、航2008.11 Vol.42 No.640「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業路の2重化による運航数の拡大、浚渫による十分な水深の確保を計画している。LNGに限らず、石炭をはじめとする産業全般を誘致するものではあるが、LNG産業に対して協力が得られている点では、プロジェクトを進めやすい環境にある。7. CBM生産にかかわる法制、税制(1) 管轄当局:石油ガス資源開発の陸上鉱区は州政府管轄 豪州の石油ガス資源開発では、陸域および沖合3マイル以内の浅海鉱区は州政府管轄となる。一方3マイル以遠にある沖合油ガス田は連邦政府の管轄であるが、州政府の当該機関が担当窓口を代行している。 クイーンズランド州CBM生産は陸上鉱区で行われ、液化基地も陸上であり、すべて州政府が管轄する事業となる。(2) 財務条件:上流分野(CBM生産)はロイヤルティー10% 陸上の石油ガス生産は井戸元でのロイヤルティー支払い制度が適用される。ロイヤルティー料率は各州で異なるが、クイーンズランド州は10%である。 一方、西豪州をはじめとする沖合3マイル以遠の連邦政府管轄沖合鉱区はPetroleum Resource Rent Tax(PRRT)制度が適用され、税率は40%である。税率は高いものの、未回収経費(探鉱、開発、操業)の翌期以降への繰り越しの際に割り増し回収が可能という有利な条件を享受できる。 クイーンズランド州のガス生産は、もともと国内市場向けであり、輸出事業を想定していなかった。今次、輸出用のCBM生産が計画されるに至り、州政府はCBM生産事業の財務条件を再検討していると言われる。2008年8月時点で、クイーンズランド州政府は財務条件を変更する意図はないとの姿勢である。しかし、輸出用CBM-LNG事業はクイーンズランド州で初めての試みであるため、今後の検討によっては財務条件が改定される可能性を否定できない。ちなみに、最近同州では、輸出用石炭にかかわるロイヤルティー料率が10%から12%に引き上げられている。 液化事業に適用される法人税率は30%である。8. CBM-LNGプロジェクト紹介(1)6事業の概要 各事業詳細は表2参照。 2008年9月末時点で6グループがCBM-LNG事業実施を表明している(ただしSun LNGはCBM生産者Sunshine GasがQueensland Gas Companyによる買収に合意したため、今後の進展が不明)。 すべてのコンソーシアムがCBM埋蔵量の確認作業中であり、LNG事業実施に必要とされる埋蔵量確認までには、まだ時間を要する。またどの程度のLNG生産能力までへの拡張が可能なのか、定まっていない。なお、ほとんどのコンソーシアムがGladstone港に液化基地建設を予定しており、それぞれが個々にCBM生産地域から液化基地へのガス・パイプラインを建設する計画であ(図6)。る① GLNG(パートナー:Santos、Petronas) Santosは豪州の主要なガス生産者であり、豪州東部では陸域Cooperガス田に66.6%の権益を保有するオペレーターである。Cooperは豪州東部市場にガスを供給する大ガス田であるが、2000年から生産が減少に転じている。 Santosは2005年にCBM資産を保有するTippirary社を買収することで、Fairview CBMガス田のオペレーターシップを取得した。同社は豪州東部ガス市場におい41石油・天然ガスレビューAナリシス表2CBM-LNG6事業の概要LNG事業名① GLNG② Queensland Curtis LNG③ Gladstone LNG④ Sun LNG⑤ Southern Cross LNG⑥ Origin/ConocoPhillips事業者LNG構想発表時期 上流(CBM生産)SantosPetronas2007年7月Queensland Gas CompanyBGグループ2008年2月LNG Ltd.、Shell双日、LNG Japan2007年5月Arrow EnergySunshine Gas-Origin Energy2007年12月Sunshine Gas 80%LNG IMPEL2008年5月未定Santos 60%QGC 80%Arrow Energy 70%Petronas 40%BG 20%Shell 30%双日 20%ConocoPhillips2008年9月Origin Energy 50%ConocoPhillips 50%Origin Energy 50%ConocoPhillips 50%Origin Energy 50%ConocoPhillips 50%未定Gladstone港Curtis Island(未確認)350万~1,400万トン/年Optimized Cascade未定2010年2014年4,715 PJ10,122 PJSpring Gully(Bowen)Peat Project, Fairview Project-事業スキーム中流(液化)Santos 60%QGC 30%Arrow Energy 20%Sunshine Gas 30%LNG IMPELPetronas 40%BG 70%LNG Ltd. 80%双日 70%中流(パイプライン)Santos 60%QGC 50%Arrow Energy 50%Petronas 40%BG 50%AGL 50%既設未定LNG販売Santos/PetronasBG液化基地サイトGladstone港Gladstone港Curtis IslandCurtis IslandLNG Ltd.Gladstone港Fisherman's Landing150万~300万トン/年Single Mixed Refrigerant2008年LNG JapanGladstone港Fisherman's Landing50万~100万トン/年Single Mixed Refrigerant2008年2008年 4Q2008年12月2011年250 PJ811 PJ2012年469 PJ1,097 PJ340万~720万トン/年Optimized Cascade2008年2010年 1Q2013年 4Q1,120 PJ2,953 PJUndulla NoseMoranbah ProjectWallon coal fairway“Significant Projects”認定QGCがSunshine Gas買収で合意Lacerta ProjectKorgan NorthLNG Ltd.は液化部門パートナー探しQGCがSunshine Gas買収で合意LNG事業の進展未定LNG IMPELGladstone港Curtis Island70万~390万トン/年未定未定未定2013年----液化設備液化設備能力事業タイミングCBM上流資産液化方式FEED最終投資決定LNG生産開始CBM埋蔵量 2P(08年6月)3P主要なCBM資産300万~1,000万トン/年Optimized Cascade2008年2009年末2014年1,725 PJ4,850 PJFairviewScotia Project備考“Significant Projects”認定出所:WoodMackenzie、他各種情報・報道て在来型ガスとCBMから成るポートフォリオ・ガスを販売することで、買主のCBM購入に対する安心感・信頼を勝ち得ていった。Santos最大のCBM事業はFairviewプロジェクトである。同プロジェクトはCBM生産地域のなかでは最も内陸で乾燥した丘陵地帯にある(写9)。現在の生産量は年間17PJであるが、LNG事業の進展に応じて、2012年には73PJに拡大させる計画である。 Santosは2007年7月に、大規模CBM-LNG事業としては最初に事業実施を発表した。そして2008年6月に、マレーシアLNGで良好な操業実績を持つPetronasとLNG共同事業を行うことを公表した。現在、Santos/ PetronasのCBM-LNG事業(GLNG)は、QGC/BGグループが推進するQueensland Curtis LNG(次項参照)とともに、クイーンズランド州政府による“Significant Projects”のステータスを認定されており、許認可取得に有利な立場にある。液化設備は州都Brisbaneの北方約500kmの産業都市Gladstone港湾内にあるCurtis Island南部に建設される(6章参照)。GLNG事業は2009年末までに最終投資を決定し、2014年に最初のLNG生産を開始する計画である(当初生産能力300万トン/年、プラトー生産20年間)。2008.11 Vol.42 No.642「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業出所:WoodMackenzie図6CBM-LNG5事業のCBMプロジェクト位置(Origin/ConocoPhillips事業を除く)Source: WoodMackenzie SantosはCBMを含むガス生産実績に定評があり、Petronasは経験を積んだLNG事業者であるので、コンソーシアムの組み合わせとしては好ましい。 なお、Santosが登記する南オーストラリア州法令は、同社株主の株保有比率に15%の上限を設けていた(1978年制定)。2008年11月末にこの期限が終了し、15%超のSantos株式取得が可能になる。そうなると、大手LNG事業者によるSantos買収も考えられ、CBM-LNG事業コンソーシアムが変容する可能性があり、事業の安定性に懸念が残る。② Queensland Curtis LNG(パートナー:Queensland Gas Company、BGグループ) Queensland Gas Company(QGC)は1999年に設立された新興のガス生産者であるが、CBM事業推進によって急速に業容を拡大した。QGCはCBM埋蔵量を確定させることで企業価値を高め、AGL(Australian Gas Light Company)など有力なガス買主との長期売買契約を締結することでCBM生産者としての地位を確立していった。主要CBM資産のUndulla Nose(Surat堆積盆地)はSantosのFairviewガス田より海岸寄りに位置してお43石油・天然ガスレビュー出所:JOGMEC写9Santos社Fairviewプロジェクトり、乾燥地帯ではあるが平坦な地形にある(写10)。 QGCとLNG大手のBGグループは、2008年2月にCBM-LNGの共同事業実施を発表した。QGC がCBM生産を担当する。BG はQGCのCBM資産の20%を取得し、液化事業のオペレーターおよびLNGマーケティングを担当する。BGのCBM事業参加は、大手LNG事業者とAナリシス出所:JOGMEC出所:JOGMEC 写10QGC社Undulla Noseプロジェクト写11飼料耕作地の中にあるArrow社Tipton West プロジェクトのCBM生産井して初めてのケースであり、同社の東アジア市場における意欲的なLNG事業戦略と相まって、豪州CBM事業に対する注目度を高めた。 液化設備は、GLNG と同様にGladstone港湾にあるCurtis島南部に建設される。Queensland Curtis LNGは2013年末から2014年初めにかけてLNG生産を開始し、約20年間のプラトー生産を実施する計画である(約350万トン/年、2トレーン・ケースでは約700万トン/年)。 Queensland Curtis LNGのマーケティングはBGが担当する。同社は自社ポートフォリオLNGの一環としてCBM-LNGを販売するため、安定供給を求める買主の信頼を得やすいと考えられる。 QGCは2008年8月、Sun LNG事業を計画しているCBM事業者Sunshine Gas買収で両者が合意したことを明らかにした。買収成立後の具体的な計画は発表されていないが、QGCはSunshine Gasが保有するCBM資産を、Queensland Curtis LNG案件を含む自社のガス販売に使用する計画と言われる。③ Gladstone LNG(パートナー:Arrow Energy、LNG Ltd.、Shell) Arrow Energyはまずガス売買契約を締結し、その後に供給に必要とされるガス開発作業を実施することでCBM事業を拡張してきた。2006年にクイーンズランド州北東部Moranbah ProjectオペレーターのCH4 Energyとの企業統合を通じてCBM資産を拡充させた。Moranbah Projectは、液化基地サイトGladstoneへのパイプライン建設によって、Gladstone LNG事業に対する主要なガス供給源になると見られる。 クイーンズランド州南東部のTipton West プロジェ出所:JOGMEC 写12Arrow社Tipton West プロジェクトが隣接する肉牛飼育場クトはSantos、QGCのCBM生産地よりさらに海岸寄りで降水量の多い平坦な耕作地域にある。ガス田は大規模な肉牛飼育地と飼料耕作地の中にあり、巨大な貯水池に溜められたCBMの随伴水は牛の飲用にも使われている。農業団体との協同がのどかな雰囲気を感じさせる(写11、写12)。 Arrowは海外のCBM開発にも積極的に取り組んでおり、インド、中国等のCBM開発事業に権益を保有している。 ArrowとLNG Ltd.は2007年5月、共同でCBM-LNG事業を実施することを発表した。ArrowがCBM生産を受け持ち、LNG Ltd.が液化事業を担当する。2008年10~12月期に最終投資決定を行った後、2011年のLNG生産開始を目標にしている。液化設備は、Gladstone港にある埋め立て地の産業用地Fisherman's Landingに建2008.11 Vol.42 No.644「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業設される。Gladstone LNGは、150万トン/年の小規模液化設備を計画している(プラトー生産20年間)。 2008年5月、ArrowはIOC大手のShellとCBM事業の提携を発表した。ShellはArrowの豪州CBM資産の30%、海外CBM資産の10%を取得する。しかし、Shellの液化事業への関与はまだ定まっていない。 Gladstone LNGは小規模であり、Ramp-up期間のCBM増産態勢の調整は相対的に容易であると考えられる。しかしLNG操業実績のないLNG Ltd.社が主体となって実施する液化分野のパフォーマンスに懸念が残る。④ Sun LNG(パートナー:Sunshine Gas、双日、LNG Japan)、ただしSunshine GasはQGCによる買収に合意済み Sunshine Gasは2004~2005年にSurat堆積盆地に2件のCBM探鉱権を取得した(Lacerta Project)。2009年初めにCBM生産開始が予定されている。Sunshine Gasは2007年12月に、双日(株)、LNG Japanと共同で小規模CBM-LNG事業を実施すると発表した(1トレーン50万トン/年)。CBMはLacerta Projectから供給される。2008年末までに最終投資決定を行い、2012年にLNG生産を開始する計画であった。 しかし2008年8月20日、QGCによるSunshine Gas買収が明らかになった。Sunshine Gasが保有するCBM資源は、Queensland Curtis LNG案件を含むQGCのガス販売に使われるという。そうなると、Sun LNG案件はCBM供給源を失い、事業見通しが立たなくなる。また同じGladstone港Fisherman's Landingに液化基地サイトを計画するGladstone LNGとSun LNGは一部の設備を共有する計画があったため、QGCのSunshine Gas買収はGladstone LNGに間接的ながら影響を及ぼす可能性が考えられる。⑤ Southern Cross LNG(パートナー:LNG IMPEL) カナダGalveston LNG*6の100%子会社LNG IMPELは2008年5月、Gladstone港に液化基地を建設してCBM-LNGに参入すると発表した。同社によると、既にGladstone港湾局からCurtis Islandに液化基地サイトの認可取得済みであるという。 このSouthern Cross LNG事業は、他のCBM-LNG案件と異なり、特定のCBM生産者との共同事業形態を採っていない。同社は、中小CBM生産者に自社液化基地へのガス供給を開放して彼らに国際LNG価格へのアクセスを可能にする計画だという。同社は70万~130万トン規模のトレーンを最大3基建設し、2013年にLNG生産を開始する計画である。 同社はまた中東ドバイでLNGハブ計画を立案しており、関係会社Kitimat LNGは北米とアジア市場間でLNGの季節取引を計画するなど、地球規模でのLNG取引構想を進めようとしている。⑥ Origin Energy/ConocoPhillipsのLNG事業 Origin Energyは豪州で最大のCBM生産者である(電力販売では豪州第2位)。Originは1990年代半ばから積極的にクイーンズランド州のCBM資産を購入し、またAGLなど豪州東部の有力なガス・電力事業者に対し長期的なガス販売契約を締結することで、CBM生産事業の基盤を固めた。Originは豪州東部陸域最大のCooperガス権益13.19%を保有しているが、同ガス田生産量は2000年頃から減少している。CBMの増産はこのCooperガス田の生産量減少を補っていった。 2008年4月末、大手LNG事業者のBGが、Origin Energyに129億豪ドルで買収を申し入れた。BGは既にQGCとCBM-LNG事業の共同事業実施で合意しているが、アジア市場向けLNG事業展開上、LNG供給力を増強させるために、OriginのCBM資産に着目したと見られる。ちょうどSantosとPetronasとのCBM共同事業が発表されるなど豪州CBM資源への注目度が高まっており、OriginはBGの提示条件を不服として買収提案を拒絶した。 一方、Originは別途、複数のLNG事業者とCBM-LNG共同事業を打診していたが、2008年9月上旬にConocoPhillipsとの提携で合意した。 ConocoPhillipsは96億豪ドルを投じてOrigin Energyと輸出用CBM-LNGの共同事業を行う。投資額はこれまでのCBM-LNG事業のなかで最大規模となる。ConocoPhillipsはOriginのCBM資産とCBM-LNG共同事業の権益50%をそれぞれ保有する。上流分野のCBM生産はOriginが担い、液化事業はConocoPhillipsが担当する。LNG事業計画は、2010年までにFIDを行い、2014年に第1トレーン(350万トン/年)、2015年に第2トレーン(350万トン/年)を稼働させ、以降第3、4トレーン建設を計画するという。液化基地サイトはGladstone港Curtis Islandと見られるが、未確定である。まだ液化*6:北米でガス輸送を行うPacific Trail Pipeline、カナダ西岸にKitimat LNG受け入れ基地計画を進めるKitimat LNG、LNG施設建設やLNG取引を行うLNG IMPELを傘下に持つ。45石油・天然ガスレビュー賴nサイトが定まっていないことから、計画に遅れが生じることも考えられる。(2)プロジェクトコスト概算 BG/QGCのプロジェクトでは上流から液化まで、総額80億豪ドル(≒73億米ドル)と報道されている。LNGの液化容量が年産300万~400万トンであるが、400万トンとしてもLNG年間生産能力あたりのCAPEXは1,825米ドル/tpa(tonne per annum)である。ほぼ同規模のSantos/Petronasのプロジェクトでも2,100米ドル/tpaのコストを見込んでいる。将来拡張を見越した設備投資分(上流、パイプライン)も含んでおり、単純比較は難しいが、既存の在来型液化プロジェクト実績と比較すると2~3倍程度、昨今の資機材費高騰や技術者不足によるコストアップ分を加味してもやや割高と言える。これは、CBMでは掘削深度が浅く、1坑あたりの掘削費用は安価とはいえ、非常に数多くの坑井を必要とすることに起因している。ただし、今後の在来型案件の多くが陸上かアナリシスら離れた海洋ガス田、あるいは地政学的に開発が難しい地域であることを考慮すると、必ずしも割高なCAPEXとも言い切れず、またプロジェクトが円滑に進むことが期待できるため、LNG需給の緩和への期待役割は大きい。 WoodMackenzieの試算によれば、各CBM-LNGプロジェクトおよび比較対象としてのPlutoプロジェクトの損益分岐点は表3のようになる。 CBM-LNGではLPGやコンデンセート販売による早期のコスト回収ができない点は考慮しておく必要がある。表3LNGプロジェクトの損益分岐点GLNGQueenslandCurtis LNGGladstone LNG8.057.778.80PlutoLNG6.68損益分岐点(米ドル/百万BTU)出所:WoodMackenzie9. CBM-LNG事業が持つリスク、課題3)ガス生産の信頼度 Ramp-up期間中、国内ガス供給、貯蔵あるいはCBM生産設備の低稼働運転等が必要である。設計段階の想定とずれが生じると、設備もしくは処理の追加が必要となる。その他、生産ガス量の変動やガス量不足を生じる可能性があるが、多数の坑井があるが故に個々の影響は相殺され、影響は限定的である。② 操業リスク4)適切な探鉱、開発計画 計画的な探鉱、開発を継続することが生産ガス量の維持に必須であり、適切な探鉱、開発計画が重要な要素となる。計画の不備により必要ガス量が確保できないと、契約を満たすために第3者からの代替供給等を伴う可能性がある。5)水処理 水処理が計画どおりに進まないと、量・時期の面でガス生産そのものに影響を及ぼす上、適切な処理が行われないと環境関連法規に抵触するリスクがある。クイーンズラ2008.11 Vol.42 No.646(1)事業化にあたっての課題 CBM-LNG事業におけるリスクについて、技術面、操業面、政策面の三つに大別してリスク内容とその影響についてまとめる。リスク発生の可能性とその影響を加味すると、最も注意を要するのは税制変更に伴うプロジェクトのコスト回収と言える。① 技術リスク1)埋蔵量保証 CBMでは坑井で石炭層を確認することにより、その周囲での確認埋蔵量が増えていく。在来型ガス田と比較して多くの坑井を必要とするが、比較的低コストでの掘削を可能とする技術が豪州のCBM発展のなかで確立されている。埋蔵量が確保できない場合、プロジェクトが進まず上流投資が藻と消える可能性がある。もず屑く2)スケールアップのずれ 試掘の段階でガス生産量を予測し、その後の生産計画に反映していくが、生産量増加の過程でずれを生じ、トータルガス量が設計ガス量に満たない可能性がある。この場合、プロジェクト遅延や、一時的に第3者からのガス代替供給、また追加の坑井掘削が必要となる。「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業ンド州で操業される各CBMプロジェクトでは現状、問題は生じていないが、今後CBM生産拡大に伴い随伴水も多量に生産されると、水処理が規制される可能性もある。6)コンプレッサーステーション操業 コンプレッサーステーションの操業トラブルの可能性があるが、既に実績があり、リスクとしては小さい。また、複数のステーションからのガスを液化設備で集約するため、個々のトラブルの全体への影響は小さい。7)輸送パイプライン操業 コンプレッサーステーションから液化設備への輸送パイプラインでトラブルが発生すると、液化が停止する可能性もあるが、パイプライン操業そのもののリスクは小さい。8)LNGプラント操業 LNGプラントのトラブルにより操業停止となったり、再稼働後に生産量が安定するまでに時間を要するなどのリスクがある。他の供給元からのLNG代替供給を要することもある。③ 政策リスク9)税制変更 現時点でCBM開発およびLNG生産に関する税法上の取り扱いが変更される見込みはないが、今後の計画進展に伴って税率引き上げ等の可能性は残る。この場合、プロジェクトコストの回収に大きな影響を及ぼすことが懸念される。(2)小規模事業のメリット、デメリット Arrow/LNG Ltd./Shellが小規模事業を計画し、Fisherman's Landingの工業用地を確保している。BG/QGC、Santos/Petronasの年産300万トン・クラスの計画はいずれもCurtis slandの造成や橋梁建設を必要とするBG/QGC、Santos/Petronasの大型案件と比較すると、それらが不要なFisherman's Landingでの小規模事業は、比較的短い工期でプロジェクトを立ち上げられるメリットがある。ただし、将来のプラント拡張は、用地制約により限定的となる。 CBM-LNGでは坑井やコンプレッサーステーションの数が多くなる。小規模事業であれば、液化プラントの計画停止や突発停止時に操作対象の設備が少なく、相対的に扱いやすい。また、Ramp-up期間中のガスボリュームが小さく、貯蔵や他用途での処理も容易となる。 一方で、プロジェクトの経済性はデメリットとなる。Santos/Petronas、BG/QGCのプロジェクトでも、単位LNGあたりのCAPEXは比較的高いが、一般的に小規模事業ではスケールメリットが得られず、単位LNG生産量あたりのコストが上昇する。既述のようにCBM-LNGでは大型案件であっても既存の在来型LNGプロジェクトと比較するとやや割高である。 小規模CBM-LNG事業においては、一層のコスト削減に向けた取り組みが求められる。対応策として、CBMフィールドからGladstoneまでの幹線パイプラインやFisherman's Landingのバース・ユーティリティー設備等を他のプロジェクトと共用したり、高額な液化設備パテント料を回避するためLNG Ltd.社の技術を使うことなどが検討されている。ない小規模新興企業が多い。国際ガス価格による収入を得られるLNG事業参入のため、LNG事業ノウハウを持つ国際石油企業の参加を求めている。 LNG需給の逼迫が継続すると見通されることから、原料ガス供給の多様化に貢献するCBMへの関心が高まっている。潜在的なCBM生産国・地域(北米、豪州、中国、インド、インドネシア)のなかで、国内需要規模なことから輸出余力があるのは豪州のみである。が狭また液化事業自体、大手石油企業が今後経営資源を集中投入しようとする高技術・高付加価値型エネルギー分野隘あきょうい10. 外資参入状況と今後の可能性(1)既進出企業とその役割 これまで、豪州のCBM-LNG事業への参入を表明した外国企業は、既述のようにBG、Petronas、Shell、双日、LNG IMPEL、ConocoPhillipsである(8章参照)。すべてがLNG事業を手がける企業であり、有力な液化事業者も含まれている。参入理由は、BGのようにアジア市場へのLNG供給力強化を狙う強い動機を持つ企業から、ShellのようにブームになったCBM事業に対する学習的動機からの参入に至るまで、幅がある。豪州CBM生産者には、LNG事業はもちろんのこと、国際事業経験も47石油・天然ガスレビューAナリシスの一つであり、CBM-LNG事業への参加意欲はさらに高まる可能性が高い。 現時点で6グループがLNG事業実施を表明しているが、その多くがコンソーシアム成立から間もない状況であり、構成メンバーは流動的である。例えば、有力なCBM生産者Santosは、2008年11月に株式保有比率の上限が撤廃され、買収対象になる可能性がある。既存のCBM-LNGコンソーシアム・メンバー以外にも豪州CBM生産者は数多く、これから新たなグループが構成される可能性も高い。(2) 今後参入が考えられる企業:NOC(国営石油企業)、Utility(電力・ガス事業者)、商社 これまで参入した外国企業は大手LNG事業者が中心であり、CBM生産者がLNG事業のノウハウを強く求めていることが分かる。BG、Shellのような大手国際石油企業が参入してから、参入価格が高騰して、いまや十分な資金力のある企業でないと参加し難い状況になった。 LNG液化技術力に対するニーズがある程度満たされた後は、液化技術以外の多様なLNG事業ノウハウに対するニーズが高まると考えられる。豪州CBM-LNGのマーケティングは、東アジア市場が中心になると考えられる。アジアの有力企業(国営石油会社、LNG買主、商社)のなかにはCBM-LNG事業に強い関心を示す企業が多い。現時点でCBM-LNGの既存コンソーシアムに参加するガス下流事業者は、双日、LNG IMPELの2グループのみである。今後液化コンソーシアムのなかにマーケティング関連機能のニーズが高まるにつれて、下流分野で資金力のある日本、中国などの企業の参入が考えられる。11. 世界のLNG供給におけるCBM-LNG事業の位置づけ(1)CBM-LNGの位置づけ 近年、インド、中国など経済発展途上のエネルギー消費大国のガス消費拡大、欧米市場の域内ガス生産の頭打ちによるLNG輸入の増加、また日本の原子力発電所トラブルによるガスへの振り替え需要等により、LNG需給にタイトな状況が続いている。アジア買主のLNGスポットカーゴ引き合いが強く、アジア向けスポットカーゴの価格が一貫して高値を続けている。アジア市場へのLNG供給は、インドネシアのガス生産不振による輸出減少、西豪州沖合新規LNG案件の立ち上げ遅延等を原因として、十分な供給見通しが立っていない。 クイーンズランドのCBM-LNG案件の多くは、このような状況下、2007年から2008年にかけて提案された。CBMの液化事業は実績がなく、CBM生産規模が小さいこと、生産の不安定性への懸念から、提案当初は実現性を疑問視する見方が少なくなかった。しかし、大手LNG事業者が参入し、LNG事業計画が具体化していくなかで、肯定的な見方が強まり、世界のガス産業界でCBM-LNGへの注目度が高まりつつある。同事業実現までにはまだ数年を待たねばならないが、西豪州沖合の有色のない事業の進展力LNG案件と比べても、さほど遜が期待される。 事業化への大きな利点は、液化基地サイトがGladstone港に定まっており、今後の港湾インフラ整備そんを含めて液化設備建設が順調に進展する可能性が高いと見られることである。これは、クイーンズランド州政府の長期的視野に立つ一貫した産業政策に負うところが大きい。この点、LNG輸出で先行し、また膨大な既発見ガス埋蔵量を持ちながら、液化基地サイトが定まらないためにいっこうに新規案件の事業化が進展しない西豪州と対照的である。 CBM-LNGは、十分なCBM埋蔵量の確認、操業の安定性、事業拡張可能性の実証など、まだ未確認の要素が多い。しかし、一定規模の液化事業化に向けて、大きな障害は残っていないと考えられる。 豪州以外のCBM供給可能性を見ると、多くが北米、アジアのエネルギー大消費地(中国、インド、インドネシア)にあるため、輸出用CBM-LNG成立は考え難い。しかし、アジアのエネルギー大消費地域で新たにCBM商業生産が可能となれば、世界のガス需給緩和に大きく貢献する。その意味でも、北米に続く豪州のCBM産業の発展に期待するところが大きいわけである。(2) LNG事業者、LNG買主にとってのインプリケーション オセアニア地域の新規LNG案件は東アジア市場をマーケティング対象としており、特に売価の高い伝統的市場(日本、韓国、台湾)に焦点をあてている。これまで2008.11 Vol.42 No.648「よいよ実現に向かう豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業東アジア市場とともにアジア太平洋LNGの販売先と目された北米は、非在来型ガス生産が好調なことから、2008年のLNG輸入量は前年の50%程度にとどまる見通しであり、翌年以降もこの傾向が続くと見られる。既述のように、有力な液化事業者がCBM生産者のパートナーとして参入した後は、マーケティング、ファイナンス、その他細かなLNG事業ノウハウなど、日本のLNG事業者、買主が得意とする分野のノウハウが求められると考えられる。豪州CBM-LNG案件への算入コストは既に高くなったと言われるが、各コンソーシアムのメンバー構成はまだ流動的であり、新規案件誕生の可能性もあることから、これからの参入余地も決して看過できない。 また日本企業を含む東アジアのLNG事業者、LNG買主にとって、豪州のLNG供給源が多様化されることの意義は大きい。豪州のLNG供給源は、現時点ではほぼ西豪州沖合ガス田によるものに限られている。しかし同地域に特有の問題(環境保護・Native Titleに伴う液化基地サイトの制限、これらを調整する州政府の産業政策)で新規LNG案件に進展が見られない。これまでは西豪州のLNG事業を牽制する対抗勢力はなかった。クイーンズランドのCBM-LNG事業を含む豪州他地域でLNG事業が順調に進展するのであれば、現在手詰まり状態にある西豪州LNG案件、およびその投資環境を調整する西豪州政府当局に対して何らかの政治経済的インパクトを与えることが考えられる。 各方面からの関心が高まるクイーンズランド州CBM-LNG事業の実現が期待される。【参考文献】1. 三宅裕隆、レイニー・ケリー:豪州における炭層ガス(CBM)LNGプロジェクトの概要、石油・天然ガスレビュー 2008.3 Vol.42 No.22. Central Queensland Ports Authority:Port of Gladstone, Port Information Handbook 20083. Central Queensland Ports Authority:Proposed Northern Development at Fisherman's Landing Port Facility4. Port of Gladstone:50 year Strategic Plan5. Santos社:Gladstone Liquefied Natural Gas, Initial Advice Statement6. QGC社:Queensland Curtis LNG Project(BG/QGC), Initial Advice Statement7. WorleyParsons社:Gladstone LNG Project ? Fisherman's Landing, Initial Advice Statement8. Sunshine/Sojitz:Project Sun LNG Project,Gladstone, Initial Advice Statement9. Jemena社:Queensland Gas Pipeline Operations Manual10. 鈴木信市、三神直人:中規模LNGは実現可能なのか?、石油・天然ガスレビュー 2008.3 Vol.42 No.2執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油(株)入社。1991年から日本石油開発(株)で海外の石油上流資産管理。調査グループ 上席研究員)。エリア・スタディーに興味を持っている(主に旧大陸)。2008年は豪州のガス事業に注目する機会が多かった。週末は、競技ボートで夏~秋期の対外レースシーズンが忙しい。他には、連続ドラマ「新上海灘」の再放送を見ている。2004年10月から現職(JOGMEC 石油・天然ガス大野 泰伸(おおの やすのぶ)(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 石油開発支援本部 調査部 調査課 上席研究員(天然ガス・LNG技術)。東京都生まれ 東京大学大学院修了(計数工学専攻)。東京ガス株式会社に入社後、主にLNG受け入れ基地の設計・建設、設備管理に従事。2008年4月より現職。趣味はストイックにやるスキーとエアロビ。4歳の娘・2歳の息子と一緒にスキーができる日を心待ちにしている。49石油・天然ガスレビュー
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
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国・地域 大洋州,オーストラリア
2008/11/20 [ 2008年11月号 ] 坂本 茂樹 大野 泰伸
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