ページ番号1006395 更新日 平成30年2月16日

ブラジルの最近の動向と政府のプレゼンス Chegou a Hora de (has come the time of)Take Off!?

レポート属性
レポートID 1006395
作成日 2010-01-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般基礎情報
著者
著者直接入力 近田 亮平
年度 2010
Vol 44
No 1
ページ数
抽出データ アナリシス日本貿易振興機構 アジア経済研究所近田 亮平ブラジルの最近の動向と政府のプレゼンスChegou a Hora de (has come the time of) Take Off !?はじめに ブラジルはBRICs*1の一国に挙げられながら、相対的な経済成長の低さに加え、地理的な遠さや多くの人が持つ“失われた80年代”のトラウマなどから、日本では同国への関心がさほど高くなかったといえる。しかし最近は、リオデジャネイロ(以下、リオ)でのオリンピック開催決定や、ブラジルの“Take Off(離陸)”をイメージした『The Economist』誌の表紙などに見られる世界的な同国への注目の高まりが、日本にもようやく到達した感がある。そこで本稿ではブラジルの経済、政治、社会、およびプレソルト(Pre-Sal)油ガス田開発(後述)などでの政府のプレゼンスに関して、「Chegou a Hora de(~の時が来た)」という同国でよく使われるフレーズを軸に最近の動向を概括することにする。プラス成長が予測されていることから[国際協力銀行<JBIC>2009年11月]、四半期GDPが前期比で2期連続マイナスと定義される景気後退期(recession)をテクニカルにも実質的にも脱する時が来たといえよう。 第2四半期GDPの需要面を見ると、家計支出(前期比2.1%、前年同期比3.2%)が経済成長を牽引しており、ブラジルの景気回復が内需主導型であることがわかる。また、総固定資本形成(同0.0%、同▲17.0%)は昨年のレベルまでは達していないが、第1四半期の前期比が▲12.6%だったことから投資が戻りつつあることがわかる。貿易も前年に比べ取引額は減少しているが、最大の貿易相手国となった中国の経済が好調なこともあり、輸出は前期比14.1%と大幅な伸びを記録した(第1四半期は▲16.0%)。また輸入に関しても、国内需要が堅調であるほか為替市場でレアル高傾向が強まったことなどから、前期比1.5%のプラス成長へと転じた(第1四半期は▲16.8%)。 一方の供給面は、金融をはじめとするサービス業(同1.2%、同2.4%)が前期だけでなく前年同期比でもプラスの伸びを記録し、同部門の好況さを示すものとなった。また前期比に関し、第1四半期▲3.1%と最も落ち込みの大きかった工業が2.1%のプラス成長に転じており、世1. 世界経済危機を脱したブラジル経済(1)Chegou a Hora de 景気回復のGDP ブラジルの2009年第2四半期GDPは、世界金融危機発生前の前年同期比では▲1.2%であるが、前期比で1.9%のプラス成長を記録した(図1)。そしてGDPが、▲3.4%と大幅に悪化した2008年第4四半期の後、2009年第1四半期に▲1.0%と回復傾向へ向かったことや、第3四半期が前期比2%強、2009年通年で若干ではあるが%6.26.86.4前年同期比年初累計前年比:季節調整済み5.11.51.31.31.9?1.0?1.8?1.2?1.52008/Q22008/Q32008/Q42009/Q12009/Q2?3.487 6 5 4 3 2 1 0?1?2?3?4出所:ブラジル地理統計院(IBGE)図1最近の四半期GDPの推移43石油・天然ガスレビューAナリシス十万台3.532.521.510.502004/12004/52004/92005/12005/52005/92006/12006/52006/92007/12007/52007/92008/12008/52008/92009/12009/52009/92010.1 Vol.44 No.14409/909/709/509/309/108/1108/908/708/508/308/107/1107/907/707/507/307/106/1106/906/706/506/306/105/1105/905/705/505/305/104/1104/904/704/504/304/1(注)法人および個人向けで、資金用途制限の有無を問わない全融資。出所:ブラジル中央銀行図4銀行貸出残高のGDP比と政府系金融機関比率:2004年~2009年9月財の旺盛な国内需要と深く関連しているのが信用市場の拡大であり、銀行貸出残高のGDP比は近年右肩上がりで上昇している。特に金融危機発生後は政府が景気対策として積極的に金融支援を行ったため、政府系金融機関の割合が増加している(図4)。 この信用市場の拡大は新中間層への融資拡大による部分が大きく、この融資を可能にしているものに、世界経済危機の影響を受けながらも近年増加している正規雇用が挙げられる(図5)。そして、この正規雇用の創出の一翼を担う工業生産や(図6)、天然資源をはじめ多様な輸出品とレアル高で割安な輸入品を十分に購買し得る国内市場を背景とした貿易は(図7)、徐々にではあるが不況からの回復傾向にある。つまり現在のブラジルは、%GDP比政府系比率50454035302520(注)商用車、トラック、バスも含む。出所:ANFAVEA(ブラジル自動車メーカー協会:http://www.anfavea.com.br/)図3国内自動車販売台数の推移:2004年~2009年10月151050?5?10?15?20%14.1前期比前年同期比1.93.22.12.20.0?1.9?0.11.52.12.41.2?0.1?4.2?7.9?11.4?17.0?16.5出所:IBGE図22009年第2四半期の概要界経済危機の影響が強かった製造業などでも景気回復の兆候が見られた(図2)。(2)“新中間層”が出現した資源大国 このように、景気の回復傾向が見られる2009年第2四半期GDPには、現在のブラジル経済のポジティブな特徴が表れており、そのなかに“新中間層”と呼ばれる人々による国内市場の拡大がある。この新中間層とは世帯月収が約US$613~US$2,641*2に該当する人々で、1993年には全人口の約30%であったが現在では約50%*3に達し[FGV(ジェトゥリオ・バルガス財団)2008]、世界経済危機にもかかわらず増加傾向にあるとされる[FGV 2009]。この新たに経済的上昇を果たした人々は、「第三の道」を模索した前カルドーゾ政権期の「社会自由主義モデル」、そして、社会政策を一つの支柱に据えることで新たな中間層の創出と大衆消費市場の拡大を実現し、より包括的で格差が少なく、かつ持続可能な発展を達成しようとする、ルーラ政権の「社会開発主義モデル」[近田 2008]という、二つの長期政権による取といえよう。そして今、ほぼ1億人へと膨り組みの賜れ上がった中間層が、ブラジルの国内消費を牽引しているのである。 中間層がより多く購入し、資源大国ブラジルのオランダ病*4化を回避させているものに、主に国内で生産される耐久消費財がある。これらには白物家電や通信機器、さらには自動車などが含まれる。そのなかで自動車に関して見ると、昨年来の世界経済危機の影響で一時的に国内需要が落ち込んだものの、政府の減税策が功を奏したこともあり、今年に入り販売台数は回復し過去最高を更新した(図3)。そして、自動車をはじめとする耐久消費物もたまのuラジルの最近の動向と政府のプレゼンス Chegou a Hora de (has come the time of) Take Off !?(注) 毎年12月に雇用状況が悪化する主な要因として、12月はバケーション・シーズンで職探しをしない人が多くなる一方、年末商戦という季節要因から非正規の臨時雇用が増えることが挙げられる。出所: ブラジル労働雇用省Evolucao de Emprego do CAGED-EEC(http://estatistica.caged.gov.br/)出所:IBGE図6工業生産指数の推移:2004年~2009年9月前年同月比前月比(季節調整済み)%151050?5?10?15?202009/92009/72009/52009/32009/12008/112008/92008/72008/52008/32008/12007/112007/92007/72007/52007/32007/12006/112006/92006/72006/52006/32006/12005/112005/92005/72005/52005/32005/12004/112004/92004/72004/52004/32004/1?25新規雇用失業雇用状況(新規雇用?失業)万人1751257525?75?125?175図5正規雇用者数の推移:2004年~2009年10月億US$輸出輸入貿易収入2101901701501301109070503010億US$200150100500?50?100外貨フロー対内直接投資(FDI)資本収入?102004/012004/052004/092005/012005/052005/092006/012006/052006/092007/012007/052007/092008/012008/052008/092009/012009/052009/09出所:ブラジル商工開発省(http://www.mdic.gov.br/)図7貿易収支の推移:2004年~2009年10月(注)資本収支は2009年9月まで。出所:ブラジル中央銀行図8資本収支と外貨フローの推移:2007年~2009年10月「天然資源輸出のグローバル・プレーヤーとして存在感を高めながら、同時に国内市場の活力を高めることによって資源輸出国が陥りやすい脱工業化を回避している」[浜口 2009a:27]のである。そして、このようなブラジルの経済ファンダメンタルズが好感されたことに加え、ソブリン格付けの引き上げやIMFへの100億ドル以上の拠出、さらにはオリンピック開催決定などを受けた先行き期待感が高まり、世界金融危機で海外へ引き上げられた資金が再びブラジル国内へ還流することとなった(図8)。(3)プチ・バブルなどの懸念 しかし、概して好調なブラジル経済にもいくつかの懸念材料があり、特に顕著になってきたのが金融市場の“プチ・バブル”である。とりわけ、期待や注目が過度に高まったブラジルに対し海外投資家などが行っている投機的な“ブラジル買い”が挙げられる。ブラジルの株式と為替相場は2008年9月のリーマン・ショック以前も、原油市場などでの投機を背景とした足の速い大量の資金が流入し、株価とレアルは高騰した状態となっていた。それが金融危機の影響で投機のメッキが剥がれて急落し、2009年初めに底入れしたものの、その後の回復基調がペース的に金融危機前を上回り、レベル的にはリーマン・ショック以前同様に“本来の力”を超えたところにまで至る状況となった(図9、図10)。 これに対して政府は、10月に国内へ流入する資金(対は45石油・天然ガスレビューAナリシス11/29/27/25/23/21/211/29/27/25/23/21/211/29/27/25/23/21/211/29/27/25/23/21/211/29/27/25/23/21/211/29/27/25/23/21/22004年2005年2006年2007年2008年2009年9/247/104/242/411/179/36/204/41/1710/258/95/243/812/159/277/134/272/711/229/29/157/14/151/2711/98/206/43/191/22004年2005年2006年2007年2008年2009年出所:サンパウロ株式市場(www.bovespa.com.br/)出所:ブラジル中央銀行図9サンパウロ株式相場(Bovespa)の推移:2004年~2009年11月24日図10レアル対ドル為替相場の推移:2004年~2009年11月24日p75,00065,00055,00045,00035,00025,00015,000R$3.33.12.92.72.52.32.11.91.71.52009/092009/072009/052009/032009/012008/112008/092008/072008/052008/032008/012007/112007/092007/072007/052007/032007/012006/112006/092006/072006/052006/032006/012005/112005/092005/072005/052005/032005/012004/112004/092004/072004/052004/032004/01全体90日以上全体15日以上法人法人個人個人%181614121086420(注)農業向け融資および社会経済開発銀行などの政府特別融資を除く、資金用途制限のない融資。出所:ブラジル中央銀行図11銀行の不良債権比率(全体比):2004年~2009年9月アクセスを獲得し始めた中間層に対するものを意味するのである。 しかしブラジルの場合、資金使途のほとんどが不動産ではなく自動車などの耐久消費財であり、サブ・プライム・ローン問題のような債権のデリバティブ化は行われなかったため、米国のような事態に陥る可能性は非常に低いといえる。なお、ブラジルでは金融機関への規制が厳しく*5、このことが一要因で同国は世界金融危機の影響が軽微だったとされる[JBIC 2008年10月]。だがその一方でこの厳しい規制は、金融機関の収益源である貸2010.1 Vol.44 No.146内外国直接投資<FDI>などは除く)に2%、11月に海外でのブラジル企業の有価証券(ADR)取引に1.5%の金融取引税(IOF)を暫定的に課すことを決定した。同措置に対して海外投資家や企業などから不満の声が上がったことはいうまでもないが、国内外の専門家や政府内部でも賛否両論が沸き起こった。それらは、同措置の投機資金対策や輸出促進策としての有効性、財政難の政府が税収増を意図して実施した可能性、政府の市場への介入のあり方や是非などをめぐるものである。これに対して市場は株価とレアルの上げ止まりという形で反応し、一時的である可能性もあるが、市場での信用低下や混乱を招かずに膨張し過ぎたバブルを“プチ崩壊”させる効果はあったといえよう。市場への政府の介入にはさまざまな意見があるが、少なくとも持続的成長の阻害要因となる投機的な動きに対し、政府はこれに対処する責務があるといえ、ブラジル以外の新興諸国でも同様に政府による一定の規制が採用されつつある。 また、懸念されるプチ・バブルには不良債権問題も含まれている。既述のように近年ブラジルでは信用市場が拡大しているが、世界金融危機の発生により銀行の不良債権比率が拡大することとなった(図11)。ブラジルで不良債権と中央銀行が定める「90日以上の返済延滞」は最高で約6%であるが(図中の点線)、「15日以上の返済延滞」を含めると約10%に達する(図中の太線)。双方ともに法人よりも個人の不良債権率が大幅に高く、2009年3月に「15日以上の返済延滞の個人向け融資」は15.8%にまで達している。つまりブラジルの不良債権プチ・バブルは、主に個人向け融資、特に最近クレジットへのuラジルの最近の動向と政府のプレゼンス Chegou a Hora de (has come the time of) Take Off !?対顧客金利平均スプレッド平均法人法人個人個人%706050403020102009/092009/072009/052009/032009/012008/112008/092008/072008/052008/032008/012007/112007/092007/072007/052007/032007/012006/112006/092006/072006/052006/032006/012005/112005/092005/072005/052005/032005/012004/112004/092004/072004/052004/032004/01(注)農業向け融資および社会経済開発銀行などの政府特別融資を除く、資金用途制限のない融資。出所:ブラジル中央銀行出スプレッドを厚くさせ、不良債権に対する引き当て分ととらえることもできるが、結果的に対顧客金利の上昇を招いているといえる(図12)。 またこの他の懸念材料として、本稿の最後で指摘する政府の財政とプレゼンスの問題、さらには、最近の現象ではなく構造的な問題である「ブラジル・コスト」も挙げることができる。この「ブラジル・コスト」とは、後述するような汚職や改善されない治安の問題をはじめ、ハードルの高さや制度の複雑さだけでなく負担割合が不公平な税金[山崎 2008]、労働者の給与と同額程度の費用がかかる雇用コスト[JBIC 2009年5月]、官僚主義などに起因するサービスや手続きの非効率性、交通や物流インフラの遅れなどである[近田 2008]。図12銀行の対顧客貸出金利(年利)とスプレッドの推移2. 大統領選挙を前にしたブラジル政治(1)Chegou a Hora de 政治の季節 ブラジルでは2010年10月に大統領選挙*6が行われる。どの候補者に投票するかを問う世論調査(民間の調査機関IBOPEが実施)によると、2009年9月時点では、カルドーゾ前大統領が所属する最大野党PSDB(ブラジル社会民主党)のセーハ知事(サンパウロ州)が34%でトップだった。ルーラ政権ナンバー2で与党PT(労働者党)のロウセフ文民官は、過去に2度大統領選へ出馬した経験のあるPSB(ブラジル社会党)のゴメス下院議員と同率の14%であった。次に、PTを追放された急進左派PSOL(自由と社会主義党)のエレーナ上院議員、8月に政府方針との意見相違がもとでPTからPV(緑の党)へ移籍したマリーナ上院議員(前環境大臣)が続いている(図13)。なお表1は、ブラジルの主要政党についてまとめたものである。 大統領選挙当日まではまだ時間があるが、ブラジルの政界には選挙へ向けた政治の季節が既に到来している。その一端として挙げられるのが、2009年半ばに取りざたされたサルネイ上院議長をはじめとする上院議員の汚職疑惑事件である。同事件は、縁故主義に基づく極秘特権を上院議員が長年にわたり有していたとされるものだが、疑惑の中心人物のサルネイ議長がルーラPT政権内で連立を組む国内最大政党のPMDB(ブラジル民主運動党)所属の有力な政治家であるため、事態は混迷の度を深めることになった。 つまり、大統領選挙ではPMDBの協力が不可欠と考えたルーラ大統領や与党PTが、辞任一歩手前まで追い込まれたサルネイ議長を執拗に擁護し、力ずくでの事態収拾に乗り出したのである。その際、サルネイ一族の企業の不正取引をロウセフ文民官が政治的圧力でもみ消そうとした疑惑が浮上したり、同問題をめぐるPT内部の意見対立が醜態または滑稽ともいえる格好で国民の眼前にさらされたりした。そのため、サルネイ議長の辞任は回避できたものの、PTやロウセフ文民官のイメージは%35302520151050341414131086Jose Serra´PSDBCiroGomesPSBDilmaRousse?PTHeloisaHelenaPSOLMarinaSilvaPV白票・無効票未決定??出所:IBOPE(http://www.ibope.com.br/)図13大統領選挙の投票動向調査の結果:2009年9月時点47石油・天然ガスレビューAナリシス表1ブラジルの主要政党の概要:2009年11月時点傾向政党名日本語訳PC do Bブラジル共産党PDT民主労働党概要1922年創立PCB「ブラジル共産党」(現存)一部→1962年結成→長期非合法→1987年再結成軍政期野党MDB「ブラジル民主運動」一部→1980年結成(1945年創立のPTBが起源):ブラジルの政党として社会主義インターナショナルに唯一加盟左派PSBブラジル社会党1947年創立→1986年再結成:ゴメス下院議員の所属政党PSOL社会主義と自由党 PT除名の一部急進左派→2004年結成:大統領選挙にも独自候補(エレーナ党首)PT労働者党“新たな左派”政党として1980年結成:当初は急進左派的だったが近年は穏健化し、ルーラ大統領が所属する現与党中道(左派)保守(右派)PMDBPRBPSDBPTBDEMPPPRブラジル民主運動党 MDB→1980年結成:現在、議員・党員数は最大だが、政治理念があまり明確ではない“乗り合いバス”的政党 PDS一部→1985年結成PL「自由党」一部→2005年結成:プロテスタント系キリスト教との関係が深い ブラジル共和党ブラジル社会民主党 PMDB一部→1988年結成:カルドーゾ前大統領とセーハ知事の所属政党で、近年PTと大統領選挙を争うMDB→1980年結成(1945年創立のPTBが起源)→2003年PSD「民主社会党」を統合軍政与党ARENA「国家革新同盟」→PDS「民主社会党」→1985年PFL「自由戦線党」→2007年改名ブラジル労働党民主党進歩党共和党PDS一部→1995年PPB「ブラジル進歩党」→2003年改名PDS一部→PL一部→2006年PRONA「国家秩序再建党」と統合し改名(注)政党名はアルファベット順であり、該当政治色の強弱ではない。淡青色の網掛け部分は、政党は上下院議員数が上位4位までの主要政党。出所:選挙最高裁判所(http://www.tse.gov.br/)や各政党のホームページなどを基に作成。た(2)ポスト・ルーラの次はルーラ? 政局がポスト・ルーラをめぐり激しさを増す一方、ルーラ大統領は政権2期目終盤も高い支持率を誇っている。さきの世論調査では、同大統領を「評価する」と答えた人の割合は81%に上り、「評価しない」は17%にとどまっている。2005年に政権与党を取り巻く一連の大汚職事件が発覚し、一時的に支持と不支持の割合が逆転したが、その後は再び上昇し最近は80%前後で安定している(図14)。この主な要因としては、“ルーラ主義(Lulismo)”と呼ばれるルーラ大統領個人のカリスマ性けた交渉能力に基づく信任の厚さに加え、現実主義や長に根差した経済運営、減税や融資拡大などの政府の対策による景気回復、G20をはじめとする国際政治の舞台での存在感の増大などが挙げられる。 このように国民から支持されるルーラ大統領に対しては、当然のごとく大統領選挙への再出馬を求める声が高におわせる発言を行ったまり、大統領本人もその可能性を匂時期もあった。しかし、ブラジルは大統領の連続3選を憲法で禁止しているため、第3次ルーラ政権へ道を開くには憲法改正が必要であり、結局ルーラ大統領は、近隣諸国の大統領が相次いで国民投票に訴え連続再選を果2010.1 Vol.44 No.148損なわれることとなり、それが世論調査の結果に表れたといえる。 また近年の大統領選挙でPTと常に争っているPSDBも、党内候補者選びに関して駆け引きの度合いを日に日に増している。現時点では、2002年の大統領選挙でルーラ候補(当時)に敗れたセーハ知事が最有力であるが、支持率が高いだけでなく、PTとも協力的な関係を持つネーヴェス知事(ミナス・ジェライス州)の出馬の可能性も取りざたされている。11月には、以前PSDBに所属していたゴメス下院議員がネーヴェス知事への支持を表明するなど、同党の候補者が正式に決まるまでには依然、紆うがあると考えられる。つょく折せ曲き余よ 2010年10月に向けた政治の季節へ既に突入したブラジルでは、隠蔽されてきた政治腐敗が暴露される可能性も考えられる。しかし、有力であるPTまたはPSDBのどちらが選挙で勝利しようとも、ブラジルの大局的な方向性に変化はないと予測される。なぜなら、左から穏健化したPTとそれにより若干右に押し出された形のPSDBという大雑な違いはあるが、両党ともに中道“左派”政党ということができ、そのことを2003年の政権交代時にブラジルも世界もすでに経験しているからである。把ぱざっwLula, O Filho do Brasil(ルーラ、ブラジルの息子)』という映画が上映され話題となった。 ストーリーはサンパウロ大学の歴史学で博士号を取得した論文に基づいている。それは、ブラジルでも貧困な北東部の貧しい家庭に生まれ、幼少期にサンパウロへ移住し家族のために働きながら、やがて労組のリーダーとして頭角を現していくというルーラ大統領の半生が、ブラジルの発展の歴史をある意味具現化しているとの観点から、描かれているとされる。この映画は2010年1月からブラジル史上最大規模で全国上映されることが決まっており、政治的文脈を抜きにして大変興味深い映画であるが、上映の時期や規模に関して批判を受けることは免れないといえよう。 しかし、さまざまな批判があったとしてもこの映画が選挙戦に与える影響は大きいと考えられる。あくまで今からの予測であるが、国内だけでなく海外でも人気が高く、サッカーのワールド・カップとオリンピック誘致の功労者であるルーラ大統領が、後者の開催時に再び大統領でいられるよう、前者が開催される2014年の選挙に出馬すれば再び選出される可能性は低くないともいえよう。2009/092009/062009/032008/122008/092008/062008/032007/122007/092007/062007/042006/122006/092006/062006/032005/122005/092005/062005/032004/122004/092004/062004/032003/122003/092003/062003/03出所:IBOPE(http://www.ibope.com.br/)図14ルーラ大統領に関する世論調査結果の推移:2003年~2009年9月評価する評価しないわからない/未回答%9080706050403020100いったしたのとは異なり、“一”大統領の座を退くことを決意した。このルーラ大統領の決断とそれを是とした国民の総意に、ブラジルにおける民主主義の定着を見ることができるといえよう。 しかし、11月にブラジリアで開催された映画祭で、旦たんブラジルの最近の動向と政府のプレゼンス Chegou a Hora de (has come the time of) Take Off !?3. 改善傾向ながらも課題が残るブラジル社会(1)緩やかな改善傾向 ブラジルでは1980年代の政治的な民主化と、1990年代の経済的な安定化により政治と経済の制度的な整備が進んだことで、近年、積極的かつ継続的な社会政策の実施が可能となった。その結果、ブラジルの悪しき代名詞の一つとされる不平等が特に21世紀に入ってから是正されつつあり、国民間の所得格差を表すジニ係数は過去30年間で最も低い水準に低下している[近田 2008]。2009年9月発表のIBGE(ブラジル地理統計院)の全国家計調査(PNAD)2008年版でも、人口の更なる少子高齢化や人種混交の進展とともに、不平等や貧困の問題が概ね改善傾向にあることが確認された(表2)。 しかし、ブラジルの不平等や貧困などが改善するスピードは、世界の他の諸国に比べより緩やかだといえる。2007年に発表されたUNDP(国連開発計画)のHDI(人間開発指数)で、ブラジルは過去30年間で初めてHDIの0.800ポイント以上と定義される上位国にランク付けされた*7。しかしHDIの世界ランキングにおけるブラジおおむルの順位は、2007年の69位、2008年の70位、2009年の75位と少しずつだが下がってきている。国民全体の不平等や貧困の改善には、世界第5位の国土の広さや人口の多さというブラジル固有の要素が障壁になっている面もあるが、国民や政府の取り組むべき課題は依然山積しているといえる。(2)Chegou a Hora de オリンピックだが ブラジルが取り組まなければならない課題の一つに治安問題が挙げられる。特にファヴェーラ(favela)と呼ばれる土地不法占拠を起源とする貧困層居住地区の問題は、その外観や居住環境だけでなく麻薬犯罪組織との関連において世界的に広く知られている。そしてこの問題の一端を表す例として、南米初のオリンピック開催が決定したリオにおいて、そのユーフォリズム(幸福感に満ちた雰囲気)に冷や水を浴びせるような事件が発生した。 オリンピック開催決定から1カ月後の11月、低所得49石油・天然ガスレビュー010.1 Vol.44 No.150アナリシス表22008年全国家計調査の概要概要:2007年→2008年0~4歳の居住人口割合7.3%→7.2%(1999年9.3%)60歳以上の居住人口割合10.5%→11.1%(1999年9.0%)合計特殊出生率1.95→1.89(1960年6.28、1998年2.43)肌の色:白人49.2%→48.4%、混血42.5%→43.8%、黒人7.5%→6.8%、その他(黄色・先住民)0.8%→0.9%(1940年:白人64.0%、混血21.0%、黒人14.0%、その他1.0%)15歳以上の非識字者10.1%→10.0%(北東部19.9%→19.4%)機能的非識字者21.8%→21.0%6~14歳の就学率97.0%→97.5%10歳以上の平均修学年数6.9年→7.1年失業率8.2%→7.2%(2003年9.7%)10歳以上の就労者の月額実質所得R$1,019 →R$1,036(1998年R$1,074、2004年R$883)10歳以上の就労者のジニ係数0.521→0.515(1998年0.567)住宅インフラ普及率:上水道83.2%→83.9%、下水道・浄化槽73.4%→73.2%、ゴミ収集87.3% →87.9%、電気98.2%→98.6%、電話76.8%→82.1%耐久消費財所有率:レンジ98.1%→98.2%、冷蔵庫90.7%→92.1%、洗濯機39.2%→41.5%、テレビ94.4%→95.1%、インターネット接続パソコン20.0%→23.8%5~17歳の児童の就労率10.9%→10.2%人口教育労働・所得住宅児童労働出所:IBGE [2009]などを基に筆者作成。惧ぐき大停電(apagao)も大きな注目を集めた。これは、世界第2位のイタイプー水力発電所近郊で発生した悪天候による送電トラブルが原因とされ、国内電力生産の約75%が水力発電であることから[ブラジル大統領府官房庁 2009]、サンパウロやリオなどの18州で電気の供給が最大7時間以上ストップしたものである。ブラジルは2001年にも降雨不足による全国的な電力危機に陥っており、政府は電気供給問題を解決すべく、「PAC(成長加速化計画)」*8と呼ばれる経済政策による大規模なインフラ整備を試みている。しかし今回の大停電発生により、世界的なイベント開催への危の念が国内外で高まったことは否めないであろう。 これらなかなか改善しない諸問題のためもあり、ブラされたこともある。しジルは“永遠に未来の大国”と揶かし、現在のブラジルは長期的な展望を立てられるようになったことで、オリンピック獲得に3度も挑戦し続けることができ、事前の評価は決して高くなかったにもかかわらず最終的に開催を勝ち取ることができたともいえる。したがって、問題解決への道のりは長く険しいといわざるを得ないが、オリンピック誘致と同様の熱意や継続性を持って取り組めば、遠かった“未来”が「Chegou a Hora!」といえる日の到来する可能性も非現実的ではないといえよう。揄ゆや者層が多く住むリオ北部のファヴェーラにおいて、麻薬取り締まり作戦を行っていた軍警察と犯罪組織の間の対立が大規模な銃撃戦へと発展した。この暴力的な衝突で、同地域の上空を飛行していた軍警察のヘリコプターが犯罪組織により撃墜され、搭乗していた軍警察官2名が死亡し4名が重傷を負ったほか、少なくとも8台もの市内バスが焼き討ちに遭うなど、リオ北部地域はカオス状態に陥った。そして、その後も同地域では1週間以上にわたり武力対立が散発的に続いたため、事件発生日に12名だった死者数は40名以上に達する事態となった。 ブラジルはオリンピック開催が同国の貧困削減につながる点を誘致する際のアピールの一つとした。オリンピック開催は同国にUS$511億(2009~2027年)の経済効果をもたらすとの試算があり[大岩 2009年10月8日]、これにより貧困と犯罪が連関するファヴェーラの問題が改善に向かうことも期待できよう。しかし、ブラジルまたはリオのファヴェーラ問題の根の深さは、麻薬と結びついた一つの産業またはローカル権力として機能してしまっている点にあるともいえる。ブラジルの治安問題がワールド・カップとオリンピックという二つの世界的なイベントを機に根本的な改善に向かうのか、それとも1992年の国連世界環境会議開催時のように一時的な不可視状態で終わるのかが、今後の国民と政府の双肩にかかっている。 ユーフォリズムへの冷や水という意味では、11月のミっ このように逼する財政に対して政府が打ち出した方策の一つに、財政目標の下方修正が挙げられる。政府はまず4月に、ブラジル石油公社ペトロブラス(Petrabras)関連の費用を政府のプライマリー・サープラス算出から除外することにより、財政収支のプライマリー・サープラスのGDP比目標値を3.8%から2.5%へと変更した。そしてさらに9月、今度はPACも財政計算から同様に除外できる権限を議会から得て、目標値を1.56%まで下げられる可能性を政府は手に入れた。このような景気対策などと財政支出の兼ね合いという問題は、何もブラジルに限ったことではない。しかし、財政悪化を操作的かつ人工的ともいえる手法で調整することは、問題の先送りいんまたは隠でもあるとともに、持続的な経済発展を阻害ゆがする政府の歪んだ介入ともいえ、専門家などから批判を浴びることとなった。 しかしブラジルはこれから先、政府の経済政策であるPACによるインフラ整備に総額US$8,283億、次いで述べるプレソルト・ガス油田開発に約US6,670億[ブラジル大統領府官房庁 2009]、更に2014年のサッカー・ワールドカップに約US$500億、オリンピックに約US$144億もの巨額の資金が必要だとされる。これらの金額には重複するものも含まれているであろうし、最近の増大しつつあるブラジルの国際的な信用力をもってすれば、これらは獲得可能な金額なのかもしれない。増加傾向にある公的債務に関しても、連邦政府債務の連動指標別構成割合を見ると、一時は30%を超えていた為替連動のものはほとんどなく、近年安定して推移している物価とSelic(政策金利)、および固定のものが最近では3分の1ずつを占めており、債務リスク対策の質的改善が進んでいるといえる(図16)。 しかしその一方で、ブラジルでは公共事業などの費用が政治的な腐敗などにより当初予算を大幅に上回る場合が少なくない。例えば、リオ市が建設を試みた「音楽の街(Cidade da Musica)」というイベント・ホールは、当初予算が9,000万レアルであったにもかかわらず、その約5倍もの4億3,100万レアルが費やされ、しかも市長の交代により完成に至らぬまま1年近くも放置されることとなった。景気対策は必要不可欠としても、このようなブラジルの悪しき政治迫ぱ?5い蔽ぺ230145?4く%?3?2?1ブラジルの最近の動向と政府のプレゼンス Chegou a Hora de (has come the time of) Take Off !?4. 国家の発展における政府のプレゼンス(1)政府主導の景気回復と大プロジェクト ブラジル政府は世界的な金融危機と同時不況への対策として、特に近年拡大した国内市場を牽引する中所得者層をターゲットに、耐久消費財や建築資材の暫定的な減税や融資枠の拡大など、大規模な財政出動を伴う景気刺激策を打ち出した。これら政府の景気対策が功を奏し、第2四半期GDPに見られるように、ブラジル経済は世界のなかでも相対的に早く不況から抜け出せたといえる。しかし、官製需要によるところが大きい景気回復は、企業からの税収が依然少ないなかでの歳出増となるため、公的債務額の増加(純公的債務額の対GDP比:2008年11月37.7%→2009年9月44.92%)やプライマリー・サープラス(利払い費を除く財政収支黒字)の減少をもたらし、政府の財政状況の悪化要因となっている(図15)。 しかし政府は、景気対策以外でも公的支出を増やす決定または方針を打ち出している。その具体例としては、ボルサ・ファミリア(Bolsa Familia)*9給付金の物価上昇率(6%弱)を上回る金額調整(9月から9.67%アップ)、公務員給与(160億レアル増)や社会保障給付金の上方修正などがある。これらの公的支出増には、物価上昇分を反映させる定期的な修正も含まれるが、来年に迫った大統領選挙が少なからぬ影響を与えていると考えられる。億R$?250?200?150?100?50050100150200250Primary SurplusGDP比(%):12カ月2009/082009/072009/062009/052009/042009/032009/022009/012008/122008/112008/102008/092008/082008/072008/062008/052008/042008/032008/022008/012007/122007/112007/102007/092007/082007/072007/062007/052007/042007/032007/022007/012009/09名目財政収支GDP比(%):12カ月(注)左軸が公的部門のプライマリー・サープラスの実額で、右軸は対GDP比割合。数値は連邦政府、地方政府(州・市)、公社(ペトロブラスを除く)の合計。なお支出必要額であるため、数値のマイナス(上部)は黒字、プラス(下部)は赤字を意味する。出所:ブラジル中央銀行図15政府財政の推移:2007年~2009年9月51石油・天然ガスレビュー010.1 Vol.44 No.152アナリシスわいょく曲きを発表したものの、実際には油田開発の遅れなどからまだ自給自足体制には至っていない。しかし、今後プレソルト油ガス田の開発を進めることで、ブラジルは石油の自給率を達成するだけでなく、将来的には石油輸出国になることがほぼ確実視されている。 このプレソルト・油ガス田に関してルーラ大統領は2009年8月31日、その開発方針案を正式に発表した。この政府案には、プレソルト・油ガス田開発の管理運営を行うべくペトロブラスとは別に新たな公社ペトロ・サル(Petro-Sal)を設立することや(開発自体は入札でプロジェクトを落札したコンソーシアムやペトロブラスが行う)、同油ガス田から得られる利益の一部を社会分野(教育、文化、科学技術、環境)へ優先的に配分するため社会基金(Fundo Social)を創設することなどが盛り込まれている。 また、油ガス田や開発施設の所有権をコンソーシアムではなく連邦政府(国家)に付与すること、制限のなかった油ガス田へのアクセスを、これも連邦政府と分有にすること、連邦政府はロイヤルティーなどのほか石油や天然ガス自体を直接受け取ること、ロイヤルティーの分配率を新たに規定すること、などの変更が行われることになった。したがって政府案の内容は、国家的資源開発プロジェクトにおける政府のプレゼンスの増大が意図されているとして、国内外で大きな反響を呼ぶことになった。 そしてそれらの反響とは、プレソルト・油ガス田をイデオロジカルな政争の具とし、マーケットの歪や外資の逃避を招く資源ナショナリズムの発現であるとの批判や危惧に加え、既存の油ガス田開発における恩恵を今までより多く享受してきた州の知事が反対の意を明確にする一方、他の州知事がこれに反発するなど、既得権益の調整や利益の再分配方法に関する対立や、政府の所有形態、競争入札の有無、必要投資額と他の産業への影響、環境問題など開発方式に関する喧の論議というものであった。また、政府が同法案を大々的に宣伝し早期成立を主張した点に対しても大統領選挙のキャンペーンだとの批判が起こり、結局政府は法案の成立時期を遅らせるなどトーン・ダウンせざるを得ない状況となった。その結果プレソルト・油ガス田の開発案に関しては、法制化される見通しの2010年前半まで、今後もしばらくは引き続き紆余曲折が続くものと見られている。 ただし、プレソルト・油ガス田開発に見られる“大きな政府”の傾向は、最近のブラジルにおいて他の局面でも見え隠れする現象だともいえる。具体的には、エネルギー、金融、通信などの分野において政府関連機関を近年増設したこと、政府に対して批判的な研究も行ってき囂ご囂ご々けけんんうう2009/072009/042009/012008/102008/072008/042008/012007/102007/072007/042007/012006/102006/072006/042006/012005/102005/072005/042005/012004/102004/072004/042004/012003/102003/072003/042003/012002/102002/072002/042002/012001/102001/072001/042001/01出所:ブラジル中央銀行図16連邦政府債務の連動指標別割合の推移:2001年~2009年9月文化や大統領選挙との関連で増加傾向にある公的支出を削減しなければ、今後必要となる大規模プロジェクトの資金調達を可能にする、より持続的な経済発展は実現困難だともいえよう。(2)プレソルトに見られる“大きな政府”? ブラジルが一大国家開発プロジェクトとして推進するものにプレソルト(下部白亜系の岩塩層直下の炭酸塩岩を貯留岩とする大水深・大深度の新プレイ)油ガス田がある(図17)。同油ガス田はリオやサンパウロ州沖合の海面から約7,000m以深の海底に位置し、近年次々に発見された油ガス田で、予測される石油の埋蔵量は106億~160億バレルと見られている[ブラジル大統領府官房庁]。ブラジルは2006年4月に石油自給率100%の達成ブラジルエスピリトサント盆地エスピリトサント盆地岩塩分布エリアリオデジャネイロリオデジャネイロJubarte鉱区Jubarte鉱区JubarteJubarteCaxareu鉱区Caxareu鉱区CaxareuCaxareuPirambu鉱区Pirambu鉱区PirambuPirambuBM-C-30鉱区BM-C-30鉱区Wahoo Wahoo サンパウロサンパウロBM-S-52鉱区BM-S-52鉱区CorcovadoCorcovadoBM-S-54鉱区BM-S-54鉱区BM-S-10鉱区BM-S-10鉱区ParatiParatiBM-S-11鉱区BM-S-11鉱区TupiIaraTupiIaraカンポス盆地カンポス盆地BM-S-8鉱区BM-S-8鉱区Bem-te-Vi Bem-te-Vi BM-S-21鉱区BM-S-21鉱区CarambaCaramba100Kmサントス盆地サントス盆地BM-S-22鉱区BM-S-22鉱区AzulaoAzulaoGuaraniGuarani出所:各種資料よりJOGMEC作成BM-S-24鉱区BM-S-24鉱区Jupiter Jupiter GuaraGuaraCariocaCariocaIguacuIguacuBM-S-9鉱区BM-S-9鉱区図17プレソルトで発見があった主要鉱区図その他固定Selic物価為替%1009080706050403020100uラジルの最近の動向と政府のプレゼンス Chegou a Hora de (has come the time of) Take Off !?た政府系研究機関IPEA(応用経済研究所)に組織改変などを通して政治的介入を行ったこと、景気刺激策として政府が主張する融資増加や貸出スプレッド引き下げに消極的だったブラジル銀行(Banco do Brasil)の総裁を4月に交代させたこと、などに端的に表れている。 ブラジルは過去に、輸入代替工業化や内陸開発などを政府のある意味、強引なイニシアチブの下で進め、短期的な繁栄の後に長く深い混乱の時期を経験してきた。近年のブラジルの安定的発展が、今までの経験を生かした脱イデオロギーかつ現実路線によって実現されている一方、“大きな政府”という政治文化は同国の根底に依然として存続しているともいえる。国の威信を懸けたプロジェクトやイベントが、財政赤字の増大や軍事クーデターの誘因ともなったブラジリア建設の二の舞いとならぬよう、ブラジルは過去の教訓から学ぶべき点も多いといえよう。おわりに 「Brazil takes off」との論説を組んだ『The Economist』誌は、過去の懐疑的見方を覆すような経済成長を遂げている現在の“新しいブラジル(the new Brazil)”について、中国にはない政治の民主主義があり、インドのような宗教や民族の対立や隣国との紛争がなく、ロシアと異なり輸出が石油や武器ばかりでなく外国人投資家を尊重する点を評価している。そして、最大の懸念として「自信過剰(hubris)」を挙げながらも、ブラジルは今までの改革や民主的議論を通じて定めた自らの進路へ向かい“離陸”したと結論付けている[The Economist 2009]。 同誌が指摘する自信過剰と、本稿で指摘した政府のプレゼンスが若干オーバーラップする感も否めなくもないが、安定性や予測可能性が高まり、資源を持つ“普通の国”になったことが新しいブラジルの強みだといえる[浜口 2009b]。したがって現在のブラジルは、行程には依然多くの困難もあるだろうが、過去の試行錯誤による紆余曲折から見出した自らの目指すべき方向性へ向け、まさに離陸する時が来たといっても過言ではなかろう。<注・解説>*1: BRICsとは、資源や市場規模などから21世紀に最も経済成長が見込まれる諸国として、米国のゴールドマン・サックス証券会社が選んだ、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国の英語表記の頭文字を合わせたもの(sは複数形のs)。当初はコマーシャルな宣伝文句であったが、最近では4カ国の首脳会議が開催されるなど、新興諸国の代表的存在として世界的に注目されている。*2: FGV [2009]の基準は1,115~4,807レアル。同調査が発表された2009年9月の平均レートUS$1=1.82レアルで米ドルに換算。*3: 母集団および標本単位を何にするか(人数、世帯、経済活動人口など)によって数値が異なり、調査研究のなかには同数値が50%を超えるものもある。*4: オランダ病とは、天然資源輸出への依存により国内の製造業などが衰退してしまう現象を意味する。第1次石油危機の際、オランダは価格が高騰した天然ガスの輸出で経済成長を遂げたが、自国通貨の為替レートが上昇したため、海外市場向けが主だった国内製造業が打撃を受け、福祉を充実させていたこともあり、景気停滞と財政破綻に陥ったことから、この名称が付けられた。*5: 新BIS規制のレバレッジ率(リスクアセット+マーケットリスクの総額/純資産)12.5倍未満に対してブラジルとなった(不は9倍未満、中銀の事前許可なしでの「外国の債権」購入の禁止など。そのため、「国際金融危機の癌動産)<デリバティブの証券化商品>などが一切銀行のポートフォリオに存在しない」[JBIC 2008年10月]。がん*6: 同時に州知事、上院議員、連邦下院議員、州下院議員の選挙も実施される。53石油・天然ガスレビュー?7: HDIは発表年の2年前のデータを基にするため、ブラジルが実質的にHDIの上位国入りしたのは2005年となる。*8: PACはインフラ整備のほかに減税などの財政措置も含む。*9: ルーラ政権の代表的な社会扶助政策で、子供の就学などを条件に低所得家庭に対して生活補助金を与える条件付き所得再分配政策。アナリシス【主要参考文献およびインターネット・サイト】1 . 大岩 令『世界のビジネスユース日刊通商弘報』(http://www.jetro.go.jp/biznews/)、日本貿易振興機構。2 . 国際協力銀行(JBIC)リオデジャネイロ駐在員事務所『JBICブラジル政治・経済四半期レポート』国際協力銀行。3 . 近田 亮平『月間ブラジル・レポート』(http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Latin/Brazil/)、日本貿易振興機構アジア経済研究所。4 . 近田 亮平[2008]「ブラジルのルーラ労働者党政権―経験と交渉調整型政治にもとづく穏健化」遅野井 茂雄・宇佐見 耕一編著『21世紀ラテンアメリカの左派政権―虚像と実像』日本貿易振興機構アジア経済研究所。5 . 浜口 伸明[2009a]「ブラジルの経済成長における消費者金融の役割」『国民経済雑誌』第199巻、第1号。6 . 浜口 伸明[2009b]「特集 国際金融危機とラテンアメリカ:ブラジル―楽観の理由」『ラテンアメリカ・レポート』Vol.26、No.1。7 . ブラジル大統領府官房庁、企画・予算・運営省、大統領府港湾特別庁、外務省[2009]『ブラジル経済成長加速化計画(PAC)・ブラジル投資セミナー』(http://www.brasemb.or.jp/~secom/PAC_Seminar.htm) 11月13日。8 . 山崎 圭一[2008]「「ブラジルコスト」の歴史的背景とコスト削減の展望--未熟な「福祉国家」の税源涵養策」、『貿易と関税』第56巻、第1号。9 . Banco Central do Brasil(ブラジル中央銀行:http://www.bcb.gov.br/)SGS(データベース:https://www3.bcb.gov.br/sgspub/).10 . FGV(ヴァルガス財団)[2008] Miseria e a nova classe media na decada da igualdade(http://www.fgv.br/cps/desigualdade/)Rio de Jeneiro: FGV.11 . FGV(ヴァルガス財団)[2009] Crise economica nao afeta expansao da classe media(http://www3.fgv.br/ibrecps/Clippings/lc1609.pdf).12 . IBGE(ブラジル地理統計院:http://www.ibge.gov.br/)SIDRA(データベース:http://www.sidra.ibge.gov.br/).13 . IBGE(ブラジル地理統計院:http://www.ibge.gov.br/)[2009] Pesquisa nacional por amostra de domicilios 2008: (http://www.ibge.gov.br/home/estatistica/populacao/trabalhoerendimento/pnad2008/), sserodacidn sod esetniiRio de Jeneiro: IBGE.14 . O Estado de Sao Paulo(オ・エスタード・デ・サンパウロ紙デジタル版:http://www.estadao.com.br/).15 . Petrobaras(ブラジル石油公社:http://www.petrobras.com.br/)Pre-Sal(http://www2.petrobras.com.br/presal/).16 . The Economist [2009] Brazil takes off, Nov.12th.執筆者紹介近田 亮平(こんた りょうへい)〈学歴〉2002年、東京外国語大学大学院博士前期課程修了。〈職歴〉 1996年、東京三菱銀行(当時)に入行。2001年、日本貿易振興機構アジア経済研究所に入所。2005年からブラジル政府のIPEA(応用経済研究所)客員研究員(リオデジャネイロ)。2007年3月、現職場に復帰し、ブラジルの地域研究に従事。〈趣味〉スポーツ、スポーツ観戦、お酒、ラテン・ダンス〈近況〉ブラジルがようやく日本でも注目され始め、業務に関してはうれしい悲鳴。2010.1 Vol.44 No.154
地域1 中南米
国1 ブラジル
地域2
国2
地域3
国3
地域4
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国7
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国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ブラジル
2010/01/20 [ 2010年01月号 ] 近田 亮平
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