ページ番号1006396 更新日 平成30年2月16日

拡大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響

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レポートID 1006396
作成日 2010-01-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 市場非在来型
著者
著者直接入力 坂本 茂樹 板部 伊三雄
年度 2010
Vol 44
No 1
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC調査部坂本 茂樹JOGMECプロジェクト推進部板部 伊三雄拡大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響はじめに 非在来型ガス(シェールガス、CBM<炭層メタンガス>、タイトサンドガス)の生産の拡大がアジア太平洋地域のLNG需給、そして世界のガス需給に対する見方を変えようとしている。 非在来型ガスの商業化はまず北米で本格化して、1990年代~2000年代にかけて生産量を大きく増やした。2009年時点では、米国のガス生産量のなかで非在来型ガスの占める割合は既に50%を超えている。2008年には、非在来型を中心とする国内ガス生産の好調でLNG輸入量が前年比で約50%減少する事態となった。米国エネルギー省は、2008年12月に発表したエネルギー長期見通しのなかで、将来の国内ガス生産量を上方修正して、これまで拡大すると見られてきたLNG輸入量を大幅に削減するという大きな変更を行った。 2009年の年初以降、非在来型ガス開発議論が世界的に活発化している。欧州ではCBMとともにシェールガスの本格的な開発検討が行われようとしている。欧州のシェールガス開発は、採算に関する課題からまだ10年先の話と言われてきたが、2009年には、フランス、ドイツ、およびその他中欧地域でシェールガス開発の具体的な検討が報道されている。フランスではシェールガス開発鉱区設定が検討され、ドイツ、ハンガリー、ポーランドでも具体的なシェールガス開発検討の動きが見られる。企業別には、ExxonMobil、ConocoPhillips, Marathonの米国勢は現地企業、子会社を通じて調査を実施し、Statoil、Total等欧州企業は北米シェールガス生産者と提携して検討を行っている。 アジア太平洋地域では、有力な石炭生産国でCBM事業が着々と商業化を迎えている。既に先行する豪州クイーンズランド州では2000年以降生産の急拡大したCBMが域内ガス供給に占める比率を高めている(同州内ではほぼ50%)。また輸出LNG向けCBM供給の事業モデルが成立し、とりわけ有望なCBM-LNG4案件が投資決定に向けた準備を進めている。 アジアの石炭生産国では、2007~2008年に中国、続いてインドにおいてCBM商業開発が開始された。両国ともに大石炭生産国であるとともに大エネルギー市場(消費地)でもあり、政府とCBM事業者は、拡大する国内ガス市場向け供給を視野にCBM生産を拡大させようとしている。インドネシア、ベトナムでもCBM開発が注目され、特にインドネシアでは政府・国有石油企業による活発なキャンペーンが行われている。 JOGMECは2009年度ガス市場・事業動向調査のなかで、世界各地で議論が活発化した「非在来型ガス事業の展望とLNG需給への影響」を取り上げ、コンサルタントWoodMackenzie社とともに主にアジアのCBM生産動向を中心とする調査を実施した。世界の非在来型ガス生産地域のうち、将来もシェールガス等の非在来型ガス生産を増やすと見られる北米は、将来のLNG輸入量の下方修正という形で世界のLNG需給に大きな影響をもたらす存在と世界的に見なされている。さらにCBM-LNG事業の実現を目指す豪州も、LNG供給能力が大きく拡大することから同様に世界のLNG需給に大きな影響を与えるものとみなされている。一方、アジアの石炭生産国では、CBM生産に際して法制度整備、輸送設備(パイプライン)建設、市場環境改善などに解決すべき課題が多く、少なくとも2020年頃までに世界LNG需給に影響を与えるほどのCBM生産拡大は考え難いと見なされている。25石油・天然ガスレビュー{稿では次の構成により、主要地域の非在来型ガス生産の現状、見通しを述べたうえで、将来の世界LNG需給への影響を考える。アナリシス1.北米の非在来型ガス生産の現状、見通し2.非在来型ガス生産の可能性が世界各地に拡大3.中国の非在来型ガス生産の現状、見通し4.インドの非在来型ガス生産の現状、見通し5.インドネシアの非在来型ガス生産の現状、見通し6.非在来型ガス生産が世界LNG需給に与える影響 なお、豪州クイーンズランド州CBM-LNG案件の詳細は、次号に掲載する。 2009年12月時点で、世界経済はまだ不況期にあり、特に東アジア市場のLNG需要が低迷している。しかし中長期的には、人口・経済規模の大きいアジア市場のエネルギー需要が伸びるというのが、エネルギー関係者の共通認識である。非在来型ガス開発が本格化することでエネルギー供給源の多様化が進めば、当該地域内のエネルギー供給安定化に貢献し、さらには世界LNG需給、強いては世界ガス需要の拡大への影響度が強まると考えられる。 末尾に中国の柳林CBM生産フィールド訪問をエッセー風に記した。さかのぼし、シェールガス、タイトサンドガス、CBMなど非在来型ガスの生産量が静かに増加していた。米国の非在来型ガス生産は2008年に大幅な増加を示し、同年のLNG輸入量を前年比▲54%と大きく減少させて、ガス需給に対する影響の大きさを見せつけた。米国エネルギー省の非在来型ガス生産見通しを過去に遡ってみると、この数年来、ほぼ一貫して上方修正されてきており、特に2009年の上方修正幅(2008年末に計画作成)が大きい(図1)。 北米は、世界最大のガス消費地域である。在来型ガスの生産量が減少に転じ、その需給ギャップを補う形で、主に独立系事業者による非在来型ガス開発が他国に先駆けて行われ、開発技術の革新努力が続けられてきた。2000年代半ばにはガス価格が比較的高く、非在来型ガス開発投資が増加した。(2)シェールガス生産の飛躍 非在来型ガス生産のなかでは、タイトサンドガスの比率が最も高い。しかし近年はシェールガスの生産量増加が著しく、将来はシェールガスが非在来型ガス生産を牽引すると見られている。シェールガス開発では掘削活動が活発化し、技術革新によって生産コストがLNG輸入コストを下回るようになった。現在は、テキサス州Barnettシェールガス田が主力生産地であり、Woodford、Fayettevilleガス田(オクラホマ、アーカン2010.1 Vol.44 No.126(1)非在来型ガス生産が好調 北米の非在来型ガスの堅調な増産傾向が2008年に大きくクローズアップされた。 米国の在来型天然ガス生産量は過去に数回のピークを経験している。最後のピークはメキシコ湾沖合ガス田生産最盛期の2001年であった。以降、在来型天然ガス生産量は徐々に減少していき、米国ガス市場は輸入LNGへの依存度を徐々に高めるものと考えられていた。しか年2030202920282027202620252024202320222021202020192018201720162015201420132012201120102009200820072006200520042003200220012000199919981997出所:FACTS社(2009年3月)、米国エネルギー省図1米国エネルギー省の非在来型ガス生産見通しtcf1412108 6 4 2 01. 北米の非在来型ガス生産の現状、見通し@一方、かつて北米のガス需要増加に対して主要なガス供給源になると考えられていたLNGの輸入は、2012年以降ほとんど増加しないと見られている。ガス需給が緩んだ2009年には、米国が輸入するLNGの再輸出が、カナダでの液化設備建設によるLNG輸出案件とともに取りざたされた。 さらに、北米の非在来型ガス生産の増加は、既存の世界LNG需給の概念さえも大きく変えた。カタールなど大型のLNG案件は、英国、および輸入拡大が想定された米国へのLNG輸出を前提に計画されていた。北米でLNG需要が増加しないという大きな見通しの変化、さらに2008年以降の世界不況により世界のLNG需要規模自体が下方修正されたため、世界の新規LNG案件は大きな影響を受けた。% Conventional gas out of total gas supply (RHS)807060504030201002020年Production (mmcfd)70,00060,00050,00040,00030,00020,00010,00002000200520102015出所:WoodMackenzie社、2009年8月図3米国のガス生産見通しmmtpa18016014012010080604020020092010201120122013201420152016201720182019Total LNG Demand(May09)Total LNG Demand(Jun07)Total LNG Regas Capacity2020年出所:WoodMackenzie社、2009年8月図4北米のLNG輸入見通し:下方修正ソー州)等が続く。新たに、Haynesville(テキサス・ルイジアナ州、2008年)、Marcellus(ペンシルベニア・ウェストバージニア州等を含む北東部一帯)にシェールが出現し、今後シェールガスが北米の非在来型ガス生産に対する貢献度をさらに高めると見られている(図2)。2009年12月中旬、ExxonMobilが非在来型ガス中心で北米最大のガス生産者XTO社買収を発表して大きな話題になった。Shale Gas BasinsDevonian/Mississippian Shale FairwayMarcellusMarcellusWoodfordWoodfordFayettevilleFayettevilleHaynesville/Haynesville/Bossier Bossier BarnettBarnett出所:カナダ天然資源省、2009年11月図2Premier for Understanding Canadian Shale gas 非在来型ガス生産の堅調な増加と2008年半ば以降の世界不況に伴う需要減少によって、2008年初めに$13/MMBtuであった米国のガス価格は2009年半ばに一時$2/MMBtu台まで下落した。しかしガス価格と掘削活動の動きにはタイムラグがあるほか、シェールガス開発の掘削活動はCBM等他ソースガス田の開発活動に比してガス価格下落による影響が軽微であったため、ガス需要の減少にもかかわらず比較的堅調な生産が続いている。(3)北米のガス需給と世界LNG需給に対する影響 北米のガス生産は、2010~2011年は低価格のLNG輸入の増加で若干減少するものの、経済回復とともに緩やかに増加すると想定されている。生産増加を担うのはシェールガス、タイトサンドガスなど非在来型ガスであって、在来型ガスの生産は漸減する見込みである。2008年時点で50%を下回った在来型ガスの比率は、2020年時点では30%以下に減少すると予測されている(図3)。27石油・天然ガスレビュー拡大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響. 非在来型ガス生産の可能性が世界各地に拡大アナリシス 現在、非在来型ガスの商業生産が本格化しているのは、世界最大のガス消費国である米国を中心とする北米、次いでCBM生産量が増加している豪州クイーンズランド州である。 非在来型ガス資源は、北米以外にも多くのポテンシャルがあると考えられており、中東、旧ソ連、アジア太平洋を含む各地域の非在来型資源の推定埋蔵量も発表されている(図5)。ロシア、中東などは在来型ガス資源が豊富に存在するため、非在来型ガス資源の潜在ポテンシャルは高いが、まだ開発段階には至っていないと考えられる。世界最大のガス消費地域でありながら在来型ガス生産量が減少に転じた北米だからこそ、開発技術の進歩とともに非在来型ガスの開発が先行したとも考えられる。 非在来型ガス資源のなかでシェールガス開発は、北米以外では欧州(ドイツ、フランス、ポーランド等)で検討が開始されようとしている。一方CBMは、世界各地に広がる多くの石炭産出国に開発可能性がある。豪州クイーンズランド州では、既に地元発電需要向けに商業生産が行われており、さらに多くの輸出用LNG案件が計画されている。 エネルギー需要拡大が見込まれるアジアでは、中国、インドが2007~2008年に既にCBM商業生産を開始している。インドネシアでは2008年に初めてのCBM探鉱・開発にかかわるPS契約が締結され、政府と国有石油企業PertaminaはCBM開発に対して積極的な企業誘致を行っている。 以下、章を追って、アジア石炭生産国のCBM開発の取り組みと現況を記す。出所:Schlumberger、2009年2月(Rogner 1997)図5非在来型ガス資源埋蔵量の推定Trillion cubic metres(at end of 2007)44.717?1131.9361.183.0132.5101.619?766.02032???0.423Gas Demand(bcm)>5025-5010-25<10CBM resourcesNatural Gas reserves2出所:Tri-Zen社、“Gas Asia 2009”説明資料、2009年3月図6CBM資源量(可能性)2010.1 Vol.44 No.128i2) 中国のCBM事業者:国有石油会社系および外資ベンチャー系が主流 中国の主要なCBM事業者は1996年に設立された国有の中聯煤層気有限責任公司(China United Coalbed Methane Corp Ltd.、CUCBM、以下「中聯CBM」と記す)である(大手石炭企業の中煤能源集団とCNPCの各50%出資企業)。同社は2007年10月に鉱山資源法が改正されるまで、CBM事業と同事業にかかわる外資との独占契約権を有していた。これまで中聯CBMと外資系企業との共同事業として、20以上のPS契約が締結されている。 2007年の鉱山資源法改正に伴う中聯CBMの外資との共同事業独占撤廃に伴い、CNPCは保有する中聯CBM株式50%を2008年に中煤能源集団に譲渡した。一方で、CNPCは2008年に子会社PetroChina CBM(中石油煤層気有限公司)を設立し、同社を通じて独自にCBM事業を推進しようとしている。CNPCはガス輸送幹線「西気東輸」の操業者でもあり、同パイプライン沿線の山西省で生産するCBMを沿海の消費地に輸送できる利点を有する。大手国有石油企業Sinopecも、非在来型資源生産を増やすことを目的にして、CBMとオイルシェール開発に取り組もうとしている。2011~15年に複数の大規模なCBMガス田評価完了を目的に、南京に非在来型石油ガスの調査・技術センターを設立した。今後は、国有石油企業を軸とするCBM事業進展が予想される。 1990年代にはChevron、Shell、ConocoPhillips、Ivanhoe、Phibro等外資大手が国有の中聯CBMとの共同事業者として参入したが、その多くが撤退した。その後、CBM事業にはAAGI(Asian American Gas、亜美大陸媒層気有限公司)、Fortune(英国・香港系)、Far East Energy、Green Dragon Gas(香港系)等の専業ベンチャー企業が進出した。これらの企業は、米国での留学、事業経験のある大陸出身者、香港資本による経営が多く、中国での事業経営に通じていることから、比較的良好な成果を収めている。2008年11月には、豪州のCBM生産者Arrow Energyが陝西省の石炭企業Bin Chang Miningとの共同事業としてCBM事業に参入し、CBM事業商業化の可能性を検討しようとしている。筆者が2009年8月にArrow Energy北京事務所を訪問した際、同社代表は「CBM開発事業はマージンが低く、デリケートな操業い明め 中国は群を抜く世界最大の石炭産出国(世界の40%)であり、米国、ロシアに次いで豊富な石炭埋蔵量を持つ(BP統計)。中国の天然ガス消費は近年増加し始めたばかりであって、国内エネルギー供給に占めるガス比率は3%強に過ぎない。そのなかで、CBM等石炭系ガス比率は、ガス生産量全体の6%程度に達していると見られれいる。中国のCBM開発への関心は、まだ黎期にあるものの大都市向けのガス幹線パイプラインの整備とともに消費が増加しつつあるガス需要に支えられている。中国の主要な石炭生産地域は、最大生産地の山西省をはじめ、陝西省、内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、黒龍江省、南方では安徽省、江西省に広がっている。 中国政府はCBM原始埋蔵量を1,300Tcfと推定しており、可採埋蔵量は70Tcf以上と見られる(Wood Mackenzie社)。中国のCBM可採埋蔵量のうち開発されているのはわずか1%程度であり、同国の巨大なエネルギー市場規模もあって、今後のCBM開発可能性は大きい。(1)政府のCBM事業の目標 中国政府は国内エネルギー消費に占めるガス比率(現在3%)を2015~2020年に10%に引き上げる目標を掲げている。中国では今後のガス需要の増加による需給ギャップの拡大が懸念されている。CBMは国産在来型ガス生産、ガス輸入(パイプライン、LNG)とともに、今後の重要なガス供給源と認識されている。ガス供給源のなかでは、国際市場価格で取引されるLNG輸入価格が最も高額と考えられるため、CBMはパイプライン・ガス輸入とともに、LNG輸入に優先されるガス供給源として位置づけられている。 政府は2006年に発表したCBM開発・利用11・5計画(2006~2010年)最終年で100億m3のCBM生産目標を掲げている。PetroChinaを含む国有石油企業は、政府目標の達成は可能との公式見解を発表しているが、多くの外資企業は、目標が過大で実現不可能と見ている。 CBM開発は、石炭法で規定され、CBM事業の契約形態には、PS契約が使われる。2007年末時点で98CBM鉱区が登録されているが、うち86鉱区の面積は部分的に石炭開発鉱区と重複しており、制度的対処が十分にはなされていないと考えられている。29石油・天然ガスレビュー拡大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響3. 中国の非在来型ガス生産の現状、見通しAナリシスガス市場が未成熟で、広域輸送設備が未整備であることから、CBMの販売方法は、①近隣に建設する小規模LNG(5万~10万トン/年程度、タンクローリーで沿岸消費地にLNGを供給)、②CNG充填所(車両用圧縮天然ガス供給)、③系列下の発電所向け供給に限定される。 中国では、新疆ウイグル自治区など内陸部にあって「陝京」パイプライン、「西気東輸」パイプラインなど幹線にアクセスし難いガス田では、小型LNGという事業モデルが成立している。新疆広匯液化天然気発展有限責任公司は、PetroChinaトハ油田の随伴ガスを液化し、製造されたLNGを長距離ローリーで消費地の沿海地方に輸RUSSIARUSSIAMONGOLIAMONGOLIACHINACHINAJAPANJAPANVIETNAMVIETNAMPHILIPPINESPHILIPPINES管理が求められる。したがって高利益志向で高コスト体質のメジャーには不向きな事業タイプと考える」との見解を述べた。(3)CBM開発、生産、販売の現況 中国では過去12~13年のCBM開発過程を通じて、全体の1%程度が開発されたにとどまっている。主要なCBM埋蔵地域は山西省(沁水<Qinshui>盆地)、オルドス盆地(陝西省・内モンゴル)、ジュンガル盆地(新疆ウイグル自治区)である(図7)。 中国の石炭資源の1/3は山西省に賦存し、同省は中国で最大のCBM開発の可能性を秘めている。CBM資源の1/3にあたる約350 Tcfが山西省南西部沁水盆地と河東(Hedong)地域に賦存していると考えられている。また同省には、2系列の広域ガス幹線(「陝京」パイプライン、「西気東輸」)が通じているため、ガス輸送の条件が比較的良好である。しかし圧力の低いCBMをガス幹線に送り込むにはコンプレッサー等の投資が必要になるため、CBM輸送は必ずしも経済的ではないと考えられている。 CBMの既存生産は、沁水盆地で商業生産が開始されたが、生産・販売量はまだ小規模にとどまっている。事業者は中聯CBM、および同社と共同事業を行うAAGI、Fortune等外資系企業である。CBM生産地周辺のKAZAKHSTANKAZAKHSTANINDIAINDIASRILANKASRILANKA出所:WoodMackenzie社、2009年8月図7中国の主要CBM生産地域:オルドス盆地(陝西省・内モンゴル自治区)、沁水盆地(山西省)、ジュンガル盆地(新疆ウイグル自治区)出所:中聯煤層気有限責任公司 2009年8月 CBM2009出所:中聯煤層気有限責任公司 2009年8月 CBM2009 写1小型LNG液化プラント写2CNG充填所2010.1 Vol.44 No.130g大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響ロシア→中国ロシア→中国(アルタイ)(アルタイ)トルクメニスタン→中国トルクメニスタン→中国(ウズベキスタン・(ウズベキスタン・ カザフスタン経由) カザフスタン経由)満州里満州里カラマイ油田カラマイ油田阿拉山口阿拉山口カラマイカラマイ第2西気東輸コルガスコルガス独山子独山子二連油田二連油田ロシア→中国ロシア→中国(チャヤンダ)(チャヤンダ)大慶大慶大慶油田大慶油田ハルビンハルビン吉林吉林ウルムチウルムチ?善?善吐哈油田吐哈油田輪南輪南タリム油田タリム油田青海油田青海油田塔中油田塔中油田花土溝花土溝玉門玉門渋北ガス田渋北ガス田西気東輸長北ガス田長北ガス田山西省フフホトフフホト北京北京撫順撫順瀋陽瀋陽大連大連秦皇島秦皇島曹妃旬曹妃旬天津天津銀川銀川中衛中衛靖辺靖辺ゴルムドゴルムド蘭州蘭州長慶油田長慶油田咸陽咸陽ラサラサ四川ガス田四川ガス田達州達州成都成都石家荘石家荘濮陽濮陽済南済南青島青島鄭州鄭州淮北淮北西安西安川気東送川気東送宜昌宜昌南京南京江蘇江蘇上海上海杭州杭州九江九江平湖ガス田平湖ガス田武漢武漢南昌南昌長沙長沙重慶重慶貴陽貴陽昆明昆明柳州柳州広州広州茂名茂名ミャンマー → 中国ミャンマー → 中国南寧南寧北海北海堪江堪江福建福建広東広東深?深?香港香港出所:各種資料を基にJOGMEC作成崖城ガス田崖城ガス田Daning WEP 40km 0.5bcm/aDaning WEP 40km 0.5bcm/a図8中国のガス・パイプライン網Daning?Linfen 0.5bcm/a送して産業需要家に供給している。中国には20を超える小規模液化設備が存在すると言われ、山西省にもCBMを原料とする2件の小規模液化プラントがある。こうした小型液化事業の原料ガスとしてCBMの利用拡大が考えられる。また中国都市部では、排気ガスによる大気汚染対策として、インドのデリー、ムンバイなど主要都市に倣って業務用車輌にCNG車の導入が進められつつある。CBMはこの輸送用CNG需要を獲得できる可能性が高い。 なお、CBMは国産の在来型天然ガスに比べて生産コストが高く、現在の販売先は地方の特定需要家に限定されているため、双方の交渉で販売価格を決めることができる。国産在来型ガスに用いられる政府公定価格は適用されていない。 CBM生産者は、幹線パイプラインへの接続線が整備されて沿岸の主要消費地への本格輸送が可能になれば、生産量を増加できると認識している。 オルドス盆地、ジュンガル盆地での開発は、まだ探鉱、試験生産の段階にとどまっている。(4)CBMの広域輸送、パイプライン建設 2006年に策定されたCBM開発・利用11・5計画(2006~2010年)に基づき、山西省で生産されるCBMを市場に輸送するためのパイプラインが整備されつつある。CNPCは、2008年6月にCBM生産地域の沁水盆地から「西気東輸」への接続パイプライン(沁水~端氏<Duanshi>PL、35km)建設を開始し、2009年9月に完成させた。これ31石油・天然ガスレビューShaanxi?Beijing No1 pipelineBaode?Ningwu 0.5bcm/aXingxian?Fuping 280km1bcm/aXingxian?Fuping 280km1bcm/aShaanxi?Beijing No2 pipelineShaanxi?Beijing No2 pipelineGujiao?Shijiazhuang 250km 0.5bcm/aDayu?Pingyou 164km 0.6bcm/aDuanshi?Pingyao 280km 1bcm/aDuanshi?Anyang 265km 0.5bcm/aJinfeng?Qinshui 35km 3bcm/aDuanshi?Bo’ai 120km 1bcm/aWest East pipelineDuansi?Yuncheng 340km 1bcm/1Duansi?Yuncheng 340km 1bcm/1Proposed CBM pipelinesProposed CBM pipelinesUnder constructionUnder construction出所:Tri-Zen社図9山西省のCBMパイプライン計画出所:中聯煤層気有限責任公司 2009/8月 CBM2009図10山西省沁水(Qinshui)地域のCBM PL建設計画により、沁水盆地で生産されるCBMを、長距離パイプラインを経由して沿海地域の大消費地に輸送することが可能になる。CNPC子会社で国内CBM事業を担当するPetroChina CBMは、他のCBM生産者による接続パイプラインへの第3者アクセスも可能としている。Aナリシスい。中国政府は徐々にガスの市場価格化を実現させようとしているが、非在来型ガス開発を促進させるため、適切な生産インセンティブを与える価格設定が必要となる。(6)中国のCBM生産の見通し 中長期的な中国の非在来型ガス供給をどのように見るべきだろうか。共同で調査を実施したWoodMackenzie社は、2020年までのCBM供給について次のように見ている(図11)。 すなわち、CBM生産量は順調に拡大し、2020年には2008年の14倍に拡大する可能性がある。CBM生産を地域別に見ると、沁水盆地で安定的な生産が期待される一方で、2010年代半ばからジュンガル盆地の生産量も拡大する可能性がある。 一方、中国全体のガス供給に占める国産CBMの比率は、2015年に3%、2020年に4%という穏やかな比率にとどまる。中国市場へのガス供給は、在来型国産ガスが60%程度と引き続き大半を占め、2020年までに拡大する旧ソ連(トルクメニスタン、ロシア)からのパイプライン・ガス輸入、LNGがこれに続くと見る。国産CBM生産は、中国のガス供給の一翼を担うものの、少なくとも2020年頃までは、CBM生産が同国のガス需給、国際LNG需給に及ぼす影響は限定的と考えられる。 なお、中国でシェールガス開発の可能性を調査する動きもある。2009年11月末、ShellとCNPCは四川省Fushun-Yongchuan鉱区でシェールガスについての共同開発を調査するフィージビリティースタディー契約を締結した。2010.1 Vol.44 No.1322020年201920182017201620152014201320122011201020092008ジュンガルオルドス沁水出所: WoodMackenzie社、2009年8月図11ベースン別CBM生産見通しmmcfd1,6001,4001,2001,0008006004002000 また中聯CBMと6社のパートナーは、河南省博愛(Bo’ai)から山西省端氏を接続する120kmのパイプラインを建設中である。他にも、山西省内で20系列のCBMパイプライン建設が計画されているが、まだ着工されていない。PetroChinaは、既に中聯CBMを上回る広域にわたるCBM鉱区面積を確保しており、パイプラインによる輸送上の利点と強固な財務体質を生かして、野心的なCBM事業を計画している。 今後は、広大な鉱区面積に加えて、「西気東輸」および同幹線への接続線という広域輸送手段を持つPetroChinaの動きが注目される。(5)中国のCBM開発への課題 中国のCBM開発、生産はまだ初期段階にあるが、今後、米国、豪州並みの発展を達成するためにはいくつかの課題が考えられる。・法令 石炭ライセンス(地方政府管轄)、CBMライセンス(中央政府)のオーバーラップが生じており、法令の整備が必要。・技術 各地域によって石炭層の構造・特徴が異なるため、米国、豪州での技術とは別に、中国に適した独自のCBM生産技術の開発が求められる。・輸送設備 沿岸の主要ガス消費地への本格的な長距離輸送手段が確立されておらず、販路が地域の小規模市場に限定されるために、CBMを増産できない。2009年9月にPetroChinaが幹線「西気東輸」への接続線建設を完成させた。今後は接続線への第3者アクセスを含む輸送手段の確立が望まれる。また、低圧のCBMを高圧の幹線に送り込むためのコンプレッサー建設に伴うコストアップへの対応も必要となる。・随伴水処理 現在はCBM生産規模が小さいこともあり、小規模な貯水池で随伴水含有物を沈殿させた後に黄河に水を流すという、簡単な処理方法が取られている。将来生産規模が拡大し、環境問題意識が高まれば、厳しい随伴水処理方法を求められる可能性がある。・ガス価格 PetroChinaが供給する国産在来型ガスは政府の公定価格で販売される。CBMがPetroChina調達ガスとともに長距離パイプライン経由で沿岸消費地に供給される際、CBMに適用される価格が明確になっていなg大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響mmcfd30,00025,00020,00015,00010,0005,0000200920102011201220132014201520162017201820192020年出所:WoodMackenzie社、2009年8月出所: WoodMackenzie社、2009年8月図12ガス供給源比率想定(2015~20年)図13中国のガス供給可能性検証されていない。 CBM事業者は、国有ONGC、インド財閥系リライアンスを含むインドの石油ガス開発企業が多い。IOCでは、Coal Field77DelhiDelhiJagdishpurJagdishpurKotaKota11AsansolAsansolKolkataKolkata3322Damondar ValleyDamondar Valley44 55BijaipurBijaipur668899PunePuneUranUranHyderabadHyderabadKakinadaKakinadaDhirubhai(Reliance)Dhirubhai(Reliance)1010出所:「インド第4回CBM公開入札10鉱区(石油天然ガス省 2009年4月入札資料))」に加筆図14インド第4回CBM公開入札10鉱区 インドは中国に次ぐアジアの主要な石炭産出国であり、石炭が1次エネルギー供給に占める比率は約50%と高い。インドの主要石炭産地は、オリッサ、ジャルカンド、ビハール、西ベンガル州などバングラデシュ以西のインド北東部各州に広く分布している。一方これらの地域は、インドでは産業化が遅れた貧しい地域とされている。(1)政府政策、CBM鉱区付与、事業者、法制 CBM開発の政府方針は、1997年に公表された。石油天然ガス省がCBM開発法令を管轄する。CBM探鉱・開発にかかわるモデル契約が公開されており、10%ロイヤルティー、商業発見ボーナス等の支払いが規定されている。 インド政府は2001~2006年にかけて3回にわたるCBM鉱区公開入札を実施し、26のCBM鉱区が付与された。2009年の第4回CBM鉱区公開(10月12日付与)では8鉱区が付与され、これまでに合計34鉱区が成立している。主要なCBM事業地域は、石炭産地の東部である(西ベンガル、ジャルカンド、オリッサ、ビハール諸州)。2009年4月に公開された第4回CBM公開入札の10鉱区を図14に記す。該当鉱区は、オリッサ、ジャルカンド、マディア・プラデシュ州等北東部を中心に6州にわたっている。これまで付与された34鉱区で50TcfのCBM資源の可能性があると言われるが、まだ4. インドの非在来型ガス生産の現状、見通し33石油・天然ガスレビューAナリシスはCBM生産の課題だが、これまでのところ、インドの随伴水の性状は良好で、再利用も可能と聞いている。 現時点ではインドのCBM生産量は少なく、長距離輸送手段がないために、CBMの販路は主に生産地域周辺の産業需要家向け(鉄鋼など産業用燃料)、CNG原料向け販売にとどまっている。25N88E24N23N22N86E87E86E87ERailway NetworkGas Pipeline(proposed)Industrial Centre88ECBMLeases2010.1 Vol.44 No.1342020年201920182017201620152014201320122011201020092008出所: WoodMackenzie社、2009年8月図16インドのCBM生産可能性図15Damodar、Rajmahal堆積盆地(西ベンガル/ジャルカンド州)mmcfd100908070605040302010085E80km80km出所: WoodMackenzie社、2009年8月85E25N豪州Arrow Energyが3CBM鉱区を保有しており(ジャルカンド、チャティアガル州)、インドでのガス事業に長い歴史を持つBGも参加を検討していると伝えられる。 開発ライセンスの担当当局によると、石炭ライセンス(石炭省)、CBMライセンス(石油天然ガス省)とは管轄省庁が分かれており、石炭省が「今後20年は石炭を生産しない」と認めた地域にのみCBM鉱区を設定するために、両ライセンス間に深刻な問題は発生していないという。しかし事業者は、時に、石炭ライセンス、CBMライセンス該当区域のダブリが生じている、と認識しているとのことである。24N(2) CBM事業状況(商業化、販売)、生産見通し002020404022N23N 2007年7月、Great Eastern Energy Corporation(GEEC、非在来型エネルギー開発に特化したインド民間企業)が西ベンガル州Damodar ValleyのRaniganj鉱区において、インドで最初のCBM生産を開始し、同州AsansolでCNG用に供給を開始した。同社は地元産業需要家向けCBM供給用に11.8kmのパイプラインを建設し、2009年1月に試運転を開始した。2009年3月に西ベンガル州鉄鋼企業Mackeil Ispat & Forging Ltd.とガス売買契約を締結し、6月に1,570Mcfdのガス供給を開始した。 リライアンス社は2009年にマディア・プラデシュ州でCBM生産開始を計画している。Essarは2010年1~2月に商業生産を開始する段階と見られる。他社(LANCO、ONGC、Reliance N.R.)はそれぞれ、探鉱、試験生産段階にある。 インドの石炭は灰分が高く(30~40%)、カロリーが低い(4,500kcal/kg)など性状が悪い。豪州炭等に比べCBM生産には向かないと言われている。インドのCBM井戸元生産コストは$2~3/MMBtu程度で、さらにコンプレッサー設置とパイプライン輸送費で$1/MMBtu程度がかかるものと見られる。井戸元生産コストは在来型ガスと大きな差異はないが、規模のメリットが得られないこと、さらに消費地への輸送手段のない東部石炭生産地域にあることから、商業化が難しい。随伴水の生産g大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響 CBM鉱区は取得から商業生産に移行するのに10年程度が必要である。既存鉱区の取得者がある程度順調に開発作業を進展させることが可能と仮定すると、CBM生産量は2020年頃に30MMcmd(=1bcfd)に達する可能性があるため、インドのCBMは中長期的には供給力を増すポテンシャルがあるといえる。しかしそれは2020~2025年以降の話であり、2020年以前の生産量と国もっぱらの見内ガス需給に与える影響力は限定的というのが専方である。(3)CBM開発の課題 商業ベースのCBM生産者GEEC社(ジャルカンド州/西ベンガル州)は、地元Asansol近辺のCNGおよび鉄鋼等産業用燃料向けにCBMを販売している。しかし東部の石炭生産地には大都市が少なく、産業化が遅れているため、ガス需要の喚起は難しい。各州の発電公社は財務体質の悪さで知られており、発電用に良好な売価を期待することはできない。石炭の質が悪く、CBM生産に不向きといわれることもコストアップ要因である。開発・生産技術面では、専門家からインドの石炭の特徴を生かした最適な技術、操業ノウハウ確立には時間が必要と指摘されている。 販路拡大に向けた課題は、大消費地へのガス輸送のインフラがないことである。しかし、中長期的には、インド東部とデリー首都圏とを結ぶ幹線パイプライン建設が実現する見通しが出てきた。2009年4月に生産開始されたリライアンス社東海岸沖合ディルバイ・ガス田の生産ガス輸送、および西部、南部に建設が計画されるLNG受入基地を結ぶ複数のパイプライン建設がリライアンス社とガス公社GAILによってそれぞれ計画されている。 リライアンスは、既に東海岸から西海岸への亜大陸東西横断パイプラインを完成させ、今後は東部、南部へ伸TURKMENISTANTURKMENISTANDauletabadDauletabadAFGHANISTANAFGHANISTANHeratHeratHeratHeratHeratKabulKabulKabulKabulKabulIslamabadIslamabadIslamabadIslamabadIslamabadCHINACHINAKandharKandharKandharKandharKandharFaisalabadFaisalabadFaisalabadFaisalabadFaisalabadMultanMultanMultanMultanMultanPAKISTANPAKISTANIRANIRANSuiSuiKarachiKarachiKarachiKarachiKarachiKotaKotaDelhiDelhiDelhiDelhiDelhiBijaipurBijaipurINDIAINDIADahej (Petronet)Dahej (Petronet)Dahej (Petronet)Dahej (Petronet)Hazira (Shell)Hazira (Shell)Mumbai HighMumbai HighDabhol(Ratnagiri)Dabhol(Ratnagiri)PurnPurnUranUranHyderabadHyderabadJagdishpurJagdishpurBHUTANBHUTANBANGLADESHBANGLADESHKolkataKolkataMYANMARMYANMARShweShweKakinadaKakinadaKakinadaKakinadaDeen Dayal(GSPCL)Deen Dayal(GSPCL)Dhirubhai(Reliance)Dhirubhai(Reliance)BangaloreBangaloreBangaloreBangaloreChennalChennalChennalChennalKasargodKasargodTuticornTuticornTuticornTuticornKochiKochiSRI LANKASRI LANKAMangaloreMangaloreMangaloreMangaloreGas fieldsExisting Pipeline (GAIL)Planned Pipeline(GAIL)Exiting Pipeline(Reliance)Planned Pipeline(Reliance)LNG Terminal出所: JOGMEC図17インドのガス・パイプライン、LNG受入基地(計画を含む)びる支線建設を計画している。GAILは西ベンガル州コルカタ、ハルディアとデリーにつながるJagdishpurを接続するパイプラインを2013年に建設開始する計画である。同パイプラインは石炭およびCBM生産地域を通るため、CBMの生産が本格化する場合、消費地への長距離輸送に何らかの道筋がつけられる可能性がある。 最後に、ジャルカンド州など東部石炭生産地域(貧困地域)では、社会的、政治的な混乱が発生することがあり、用地買収等が滞って資源開発に障害となることも想定される。5. インドネシアの非在来型ガス生産の現状、見通し インドネシアは発展途上社会で、地方でのエネルギー供給は非商業エネルギーによるところが大きい。将来は経済開発と都市化による電力需要の増加が予想され、そのためガスをはじめとするエネルギー需要の増加が考えられる。またインドネシア経済はジャワ島への集中度が高く、エネルギー消費量の50%以上がジャワ島で消費される。どのようにしてジャワ島にエネルギーを供給するかが課題である。熱帯に位置するイスラム社会のインドネシアでは、暖房等の家庭・業務用のガス需要がほとんどないため、ガスは専ら発電用および産業用燃料として消費される。35石油・天然ガスレビュー010.1 Vol.44 No.136アナリシス対た インドネシアのCBM開発にかかわるルール作りは遅れていると言われ、政府は早急に事業環境を整備しようとしている。エネルギー鉱物資源省は、CBM開発に石油ガス開発法令を適用すると規定した。該当部局MigasによるCBM鉱区公開は、通常の公開入札(Regular あいいTender)と事前スタディーに基づく提案に伴う相交渉(Direct Offer)を通じて行われる。契約形態は、石油ガス開発に準じて、PS契約を用いる。CBM開発に対するインセンティブ措置として、コントラクターに対する利益配分比率をガス標準ケースの30%に代えて40~50%を適用する。 なお政府は、石油消費抑制の措置として、価格インセンティブを付けた上で輸送用燃料としてのCNG(圧縮天然ガス)、家庭厨房用燃料としてLPG普及を進めつつある。(2)CBM開発の現況 インドネシアでは、まだCBMの商業生産はないものの、2008年に複数の民間企業(Medco、Ephindo、 PT Ridlatama Mining Utama、PT Samantaka Mineral Prima等)を中心に7件のCBM鉱区にかかわるPS契約が締結され、探鉱が実施されている。2009年に計画された南スマトラおよびカリマンタン島のCBM鉱区で実施される8~10坑のCBM井掘削結果によって、既存鉱区のCBM開発可能性がある程度明確になると見られている。潜在的なCBM事業参入希望者も多いと言われる。出所: エネルギー鉱物資源省 「第2回CBM会議」説明資料、2009年3月図18インドネシア政府エネルギー供給政策(目標)(1)インドネシア政府の政策 インドネシアのCBM資源量は450Tcfと言われ(政府系Remigas推定)、在来型天然ガス埋蔵量の2倍に相当する(インドネシア政府の認識)。しかしCBMの商業的生産可否は未確認であり、今後の評価作業が必要である。同国では、政府系エネルギー研究機関と民間企業による数年来の試験的調査を経て、2008年5月に最初のCBMにかかわるPS契約が調印された。 インドネシア政府は国内市場向けエネルギー供給政策の基本として、現在高いレベルにある石油比率を引き下げ、代わって国産の石炭、ガス、および新エネルギー・再生エネルギー比率の拡大を掲げている。CBMは、2025年に、再生エネルギー、原子力等と合わせてエネルギー供給全体の5%を占めることを目標にしている。GMB SEKAYU BLOCK(KONSORSIUM MEDCO CBM SEKAYU-SOUTH SUMATRA ENERGY INC)RESOURCES : 1.7TCFRECOVERY FACTOR : 45%AVERAGE PRODUCTION : 55.65MMCFDGMB BENTIAN BESARBLOCK(PT RIDLATAMA MINING UTAMA)RESOURSE : 2.3TCFRECOVERY FACTOR : 45%AVERAGE PRODUCTION : 22MMCFDGMB INDRAGIRI HULU BLOCK(PT SAMANTAKA MINERAL PRIMA)RESOURSE : 5.5TCFRECOVERY FACTOR : 35%AVERAGE PRODUCTION : 26MMCFDIINDIAN OCEANNDIAN OCEANGMB BARITO BANJZR Ⅱ BLOCK(PT BARITO BASIN GAS)RESOURSE : 2.7TCFRECOVERY FACTOR : 58.2%AVERAGE PRODUCTION : 80MMCFDGMB SANGATTA ⅠBLOCK(CONSORTIUM PT PERTAMNA HULU ENERGIMETANA KALIMANTAN A-SANGATTA WEST CBM INC)RESOURSE : 1.3TCFRECOVERY FACTOR : 37.4%AVERAGE PRODUCTION : 20MMCFDGMB KUTAI BLOCK(CONCORTUM KUTAI WEST CBM INC・NEWTCN ENERGI CAPITAL LTD)RESOURSE : 5TCFRECOVERY FACTOR : 42%AVERAGE PRODUCTION : 214MMCFDGMB BARITO BANJARⅠBLOCK(PT INDOBARAMBAI GAS METHAN)RESOURSE : 2.8CFRECOVERY FACTOR : 50%AVERAGE PRODUCTION : 82MMCFD出所:エネルギー鉱物資源省 「第2回CBM会議」説明資料 2009年3月図19インドネシアで2008年に締結されたCBMのPS契約g大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響 カリマンタン島では、Ephindoのコンソーシアム、SangaSanga鉱区のVICO(BP-Eniの共同事業)が掘削を予定している。Ephindoはカリマンタン島東北に位置するSangatta CBM鉱区に2009年2月に豪州Arrow Energy社のファームインを受け入れた。Ephindo-Arrowのチームは米国のCBM事業を経験したエンジニアを含み、米国で使われた技術を用いている。Ephindoはまた石炭企業との共同事業でボンタン液化基地に近いCBM Kutai鉱区の付与を受け、商業生産の可能性が実証されればボンタン液化基地へのガス供給を望んでいると言われる。EphindoのPS契約等経済条件は明らかになっていないが、政府は市場価格(売り手/買い手の合意価格)を適用させ、標準PS契約条件より低いロイヤルティー料率を適用させるなどの優遇措置を認めていると言われる。 なお、2008年に政府系研究機関Lemigasが南スマトラRambutanガス田で実施した実験井掘削は、生産性が低く商業水準に至らなかったと見られる。 2009年には5月、8月、11月合わせて11件のCBM鉱区に係るPS契約が調印された。 BPは2009年11月末、VICOがSangaSanga鉱区でCBMを開発するPS契約に調印したことを明らかにした。SangaSanga鉱区CBM開発は、VICOがオペレーターを務め、BP、Eniの他にVic、台湾Opicoil、日本Universe KalimantanKalimantanINDONESIAIndian Oceanm002m0001m0002BangkaBangkaBontang LNG PlantBontang LNG PlantINDONESIAINDONESIASantan TerminalSantan TerminalWest SenoWest SenoSangaSangaSangaSangaBalikpapan RefineryBalikpapan Refinery出所:JOGMECRanggasRanggasGehemGehemOffshoreOffshoreMahakamMahakamTotalTotalGendangGendangGendaloGendaloMahaMahaVICO BlocksChevron BlocksGas FieldOil Field図20VICOのSangaSanga鉱区を含むボンタンLNG事業地域37石油・天然ガスレビューGas and Oilが参加し、2012年までに試験生産を開始する計画である。 VICO鉱区は、マハカム沖等ボンタン液化基地向けガス供給鉱区のなかで炭層が最も浅い位置にあるため、CBM生産に有利と言われる。VICO親会社のBPは米国での生産経験からCBM事業のノウハウを有する。ボンタンLNG事業鉱区にはガス・パイプライン、コンプレッサーが完備されていることから、CBM生産開始のための輸送インフラは整っており、事業実施に有利と見られる。(3)CBM開発の課題 CBM事業者は、事業へのインセンティブ導入を主張する。CBM生産事業は多くの生産井掘削が必要となるため、同国陸域/浅海域の在来型ガス田開発と比べて上流のガス生産コストが高くなる。したがって、生産物のコントラクター取得比率を引き上げるなど契約条件を改善しないと採算水準に達しないと見ている。在来型ガス田開発と同様に、1坑掘削の度に政府への報告・承認を求められると時間・コストがかかるため、ルールの簡素化が必要と見ている。また安価な認可価格が適用される国内市場向け供給義務25%の適用はCBM事業には厳しいため、国内市場向けの供給義務緩和を求める意見もある。 CBM開発の基本的な法令不備も指摘される。過去、中央政府が小規模な石炭開発権限を地方政府に譲った経緯から、現在のCBM開発に際し、中央政府の規定(石油ガス開発)と地方政府の規定(石炭開発)との矛盾が懸念されている。また、石炭開発法と2001年制定の新石油ガス法との間にも矛盾がある。こうした法的不備が残っていることから、CBM開発には試行錯誤が避けられないと予想されている。こうした法的、事業環境上の不備から、外資企業はまだ積極的にCBM事業に参入する段階ではないと考えており、主要なCBM開発事業者は地元企業Medco、Ephindo等である。 また、石炭の質は地域によって異なるため、CBMの質、その資源量など技術的観点から不明な点が多く、スマトラ→ジャワ島ガス・パイプライン輸送能力不足(5年程度でフル操業)で、スマトラ島のCBM生産開始時にジャワ島への余剰能力はないとの懸念もある。 インドネシアを含むアジアの石炭生産国でCBM開発に携わる豪州Arrow Energyは、インドネシアのCBM開発にはまだ課題が多いと認識しており、CBMを次世代エネルギーと囃す前に現実の採算性を直視すべきである、としている。はやAナリシスるが、まだ課題が多いと見なされるCBM開発に本格的に進出しようとする企業は少数と見受けられる。(4) インドネシアのCBM生産見通し、LNG事業への影響 インドネシアのCBM開発は既述のような課題を抱えている他に不透明要因が多いため、想定生産量にも幅がある。事業が順調に進展したとしても、本格的な生産は2015年以降となる可能性が高い。 インドネシア政府は今後国内のガス需要が急増するとして、LNG輸出を制限してガスを優先的に国内供給する政策を掲げている。しかし、新規発電所としては石炭火力発電所が増える可能性が高く、必ずしもガス需要は大幅に増加しないと考えられる。今後のガス需給は、ガス需要増加の見方、LNGの輸出・国内市場向けの供給見通し、スマトラなどジャワ島へのパイプライン供給が可能な在来型ガスの生産動向等が主要な要素になる。 このように不確定要因が多いなかで、インドネシアのCBM生産が2020年頃までに国内市場向けガス供給に与えるインパクトは限定的なレベルにとどまると考えられる。年2020201920182017201620152014201320122011201020092008出所: WoodMackenzie社、2009年8月図21インドネシアCBM生産可能性(ベースケース)mmcfd9080706050403020100 インドネシア企業もCBM開発にはまだ課題が多いと見ている節がある。インドネシアでのCBM開発を専業とするEphindoは、同国にはCBM技術データが乏しく、政府・企業内ともにその開発に知見・経験を持つ人員が少ないことを認め、CBM開発先進国での教育訓練が必要としている。 インドネシアのCBM開発に対する課題は、次のようにまとめられる。a . 潜在的なCBM資源量は多いが、まだ開発可能性の段階であり、「埋蔵量」とは認識できない。b . インドネシア市場の安いガス価格では、相対的に高コストのCBM開発に採算性を期待し難い。政府のインセンティブが求められる。c . インドネシアに適したCBM開発の技術が確立されていない。南スマトラの試験生産では標準的な掘削技術が使用されたが、同国のCBM資源は他(豪州、米国)より掘削深度が深い(1,000m以深)。ふつ設せd . CBMの輸送手段が確立されていない。生産量が少なには資く、圧力が低いCBM専用のパイプライン敷金がかかりすぎる。ボンタンLNGへのガス供給地域SangaSanga鉱区のガス輸送インフラは整備されているが、現在は第3者アクセスが認められていない。e . 新規ガス田開発に際しては、25%以上の国内市場供給義務が求められている。インドネシアのガス価格が市場価格となって国際価格に近付くのには時間がかかると見られるため、SangaSanga鉱区のようにLNG液化基地に供給する場合、同国のLNG事業環境(輸出可能性)がCBM事業推進に影響を与えることが考えられる。 総じて、外資系企業には、インドネシアに有望な在来型資産を持ち、深海、東部フロンティアの在来型資源の探鉱ポテンシャルを重視している企業が多い。既存ガス供給者のVICOを別にすると、Arrow Energy、ShellのようにインドネシアのCBM開発に目を向ける企業もあ6. 非在来型ガス生産が世界LNG需給に与える影響 2007~2008年にかけて北米のガス需給に大きなインパクトをもたらした非在来型ガスは、今後も北米ガス需給を見る上で最も重要な要素の一つである。米国の非在来型ガスはシェールガス、タイトサンドガスを中心に今後も生産量の増大が見込まれ、ガス生産量全体に占める非在来型ガス比率は2020年に70%を超えると想定される(図3)。域内ガス生産量の増加に伴い、北米のLNG輸入量は2012年以降増加しない可能性が高い。これは、北米のLNG需要増加を前提に計画されたLNGプロジェクトには大きな打撃であり、アジア新興市場など他市場2010.1 Vol.44 No.138キ可能性がある。将来的には、2009年に本格的に検討が始まったと見られる欧州のシェールガス開発の行方も注目されよう。 一方、アジア石炭生産国におけるCBM生産は、まだ大きく生産量を伸ばす段階ではなく、当面は国内ガス需給に影響を与えるにとどまると見られる。国内に成長する大規模ガス市場を持つ中国、インドからは、ガス輸出は考えられず、インドネシアもLNG輸出余力は減じるだろう。アジアのCBM事業(対象)国では、CBM開発に係る法制の整備、輸送手段整備、ふさわしい開発技術の確立、国内市場向け販売価格等に課題を抱えており、2020年頃までに大きく生産量を増やすことは考え難い。 伝統的産油国のインドネシアでは、ExxonMobil、ConocoPhillips、Statoil等の外資企業は、なお高いポテンシャルを期待できる石油を目的とする探鉱への集中投資の継続方針を明らかにしている。インドネシア最大の石油生産者Chevronは、インドネシアを含むアジア深海開発に積極的に取り組むが、Shell等と異なり、インドネシアのCBM開発には投資する予定がないと明言している。インドネシアのCBM資源を評価した上で、最終的に既存深海資産を含む在来型資源開発に今後も集中する判断をしたという。Arrow EnergyのようにCBM開発に特化した企業、 Shellのように先端分野に先行投資する企業は例外といえよう。しつ烈れへのLNG輸出を模索する動きがある。今後の世界LNG需給を見る上で、北米の非在来型ガス需給動向は見逃せないファクターとなった。 豪州クイーンズランド州では、CBMを原料とするCBM-LNG事業の成立が間近である。Queensland Curtis LNG(BG Group)、GLNG(Santos/Petronas)、Gladstone LNG(Arrow Energy/Golar LNG/LNG Ltd.,)の3プロジェクトは2010年に最終投資決定の予定である。豪州の新規LNG案件中、クイーンズランド州CBM-LNG事業の占める比率は30%以上を占め、順調に進展すればやがてカタールを上回って最大のLNG供給国になる可能性を持つ豪州案件のなかでも強いインパクトを持つ。 しかし、CBM-LNG事業については世界で一つも実績がないため、安定的な供給が実証されていない。世界のLNG需要家は、大量のCBMの液化基地への供給が安定的に実施可能かどうかに着目している。また主に高カロリーLNGを消費してきた東アジアガス需要家は、低カロリーのCBM-LNGプロジェクトの契約にはためらいを見せている。LNG市場環境としては、CBM-LNG案件とほぼ同時期の2015年頃から生産開始を計画する西豪州に沖合ガス田開発案件も多く、販売先獲得の競争は熾なると思われる。首尾よく市場の支持を獲得できない場合は、事業の遅れ、中止の可能性さえも考えられる。 いずれにせよ、北米および豪州の非在来型ガス生産の動向は、国際LNG需給に対して極めて強い影響を及ぼ拡大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響表豪州のLNG供給力(可能性)事業名オペレーター最初FID最大液化能力(万トン/年)2009201120072010 2012??20102010 2010? 2010??ChevronChevronWoodsideINPEXWoodsideWoodsideSantos/PetronasBGArrow/LNG L./GolarOrigin/ConocoPhillipsShell/ArrowWoodsideConocoPhillips1,5002,5002,0008001,500?8,3001,0001,2003001,400?3,90012,2001,63032014,1507,700地域西豪州新規案件QLD州GorgonWheatstonePlutoIchthysBrowseSunrise西豪州合計Gladstone LNGQueensland Curtis LNGG LNG(Fisherman's Landing)Australia Pacific LNGShell QueenslandQLD州(CBM-LNG)合計新規合計西豪州北部準州北西大陸棚(NWS)ダーウイン既存事業総計カタール液化能力(計画完成後、比較)出所:各種情報・報道より筆者作成39石油・天然ガスレビューAナリシス 柳林CBM生産フィールド訪問記 2009年8月上旬、中国のCBM生産サイトに向かうため、内陸部の山西省の高速道路を走る車中にいた。 華北平原(河北省、河南省、山東省)の縁ふちに位置する山西省南部の晋城を後にして、同省の省都・大原に向かって北上すると、徐々に起伏の多い山がちの地形に変わっていく。高速道路は、時にトンネルを抜けながら、谷間にあたる地形を進んで行く。大原の手前数十キロメートルの所で、同省中西部で陝西省との境に位置する次の目的地・柳林への直線距離を取るため、ドライバーが高速道路を下りて一般道へと移った。すると道路事情がにわかに悪化した。車は、工事中でほこりっぽく、大きな窪みが随所にある劣悪な道を対向車埃を意識し、あるいは対向車の通行を待ちながら、時間をかけて進まざるを得なくなった。2時間ほど悪戦苦闘しながら、ようやく柳林市へ通じる高速道路に入った。さすがに有名な石炭生産地だけあって、車は高速道路の両側に並ぶ、石炭採掘地、貨車への積み込み設備、石炭火力発電所あるいは化学工場などを脇目に通り過ぎて行く。 柳林市は、それまで南に流れる黄河が東方に大きく向きを変える前に黄土高原の真っただ中を、内モンゴル自治区から山西省と陝西省の省界に沿って南進する途上に位置する。高速道路から見ると、高速道路に沿って点在する街中に工事中の高層住宅群が見える。こんな内陸の黄土高原に、なぜ高層住宅が建つのかと訝いぶかれるが、石炭採掘所、化学工場など主な産業拠点の労働者用住宅の建設現場であろうか。 人口の多い中国では、内陸の地方都市でも高層のホテル、オフィスビル、集合住宅が林立している。柳林市とて例外ではなく、筆者が投宿したホテル正門前の表通りには立派なオフィスビルがそびえていた。移動と悪路に難儀し到着時間が遅くなったので、その日はホテル内のレストランで夕食を取り、あまり外を見ることなくベッドに入ってしまった。 翌朝明るくなった窓から正門と反対側の外の景色に目をやると、小高い丘の斜面を利用した半地下式の住居が並ぶ珍しい光景が広がっていた。中国の集落でよく見かけるのだが、朝早いうちから、お年寄りが戸口外の小さな椅子に座って外を眺めていた。もう、朝食の支度は済んだのであろうか。 柳林市内から車で約30分の距離にある、英国/香港系資本のFortune(富地)柳林燃気有限公司に向かった。Fortuneは、やはり外資の豪州系Molopo社とともに柳林CBM事業2010.1 Vol.44 No.140g大する非在来型ガス開発の展望とLNG需給への影響で試験生産を実施している。柳林CBMは2009年2月、国家科学技術重点項目(State science & technology significant project)に認定され、商業開発移行後に販売などに際して国家支援を受けやすくなったという。 8月中旬の中国内陸では、雲の切れ間から降り注ぐ日の光がことのほか強く感じられる。車は、高台の斜面に植えられたナツメの木の実が若干赤く色づき始めた丘の道を過ぎて行く。 CBM生産サイトは、当地を南北に流れる黄河の山西省側河岸にあった。河南省、山東省以北の華北平原は小麦文化地帯である。春に冬小麦を収穫した後、農地にはトウモロコシが蒔まかれ、夏の華北平原は一面のトウモロコシ畑で覆われている。Fortune社の柳林CBM実験生産サイトは黄河河岸のトウモロコシ畑の中にあった。 生産サイトでは、濃紺ユニホームのFortune社社員と一緒に、赤いヘルメットとユニホームを着用したSinopec職員が対応してくれた。同CBMサイトの商業生産移行の後、政府側企業としてCBM事業に意欲を持つというSinopecが参入するのであろう。 柳林ガス田は2008年に生産を開始、5坑の生産井でCBMを生産している。坑井は垂直井で、掘削深度は約700mだという。生産レートは日量1,000m3である。柳林CBM事業は、生産井5本の試験生産段階にあり、生産サイトの規模は小さい。トウモロコシ畑の一角に開かれた生産サイトの一連の設備のみで構成される。豪州クイーンズランドでLNG事業を手がけるために500~1,000坑の生産井を掘削しようとするArrow EnergyやQueensland Gas Co.の生産サイトの広大さとは様子がまるで違う。 思い起こせば、豪州CBM事業では、随伴水の処理方法が大きな課題であった(石油・天然ガスレビュー2008年11月号の「いよいよ実現に向かう豪州クイーンズ ランド州のCBM-LNG事業」参照)。豪州CBM生産者は、現在はまだLNG事業成立には至っておらず、生産したガスを専もっぱら地元の発電所や都市ガス向けに供給している。それでも、ガス生産に先だって出てくる随伴水は大量であり、彼らは随伴水を蒸発させるために大きな人工池(湖)を造っている。塩分濃度の低い随伴水は灌かん漑がいや肉牛飲用に使われているが、利用率は10%程度に過ぎないと言われる。 環境問題への関心が高い豪州では、CBM生産に際する随伴水処理が地域社会の大きな課題の一つである。今後随伴水の自然蒸発は徐々に縮小され、処理の義務付けと処理済み水の再利用が図られる。ただし水処理には費用がかかるため、どのようなタイムスパンでどの程度の水処理を行っていくのか、CBM事業者も計画を作り上げてはいない様子である。今後、地域社会、CBMサイト近辺の農場主・牧場主と協議を続けていくという。Fortune社柳林CBM:トウモロコシ畑と黄河を望むFortune社柳林CBM:生産サイトでの説明豪州クイーンズランドTipton West (Arrow社)随伴水 evaporation pond41石油・天然ガスレビューAナリシス この豪州と比較すると、柳林CBMの随伴水処理は極めて簡単であった。生産サイト敷地の黄河側の一角に小さなスイミングプール程度の貯水槽が設置されている(縦15m、横5m、深さ3m)。この貯水槽に随伴水を溜め、水中の成分を沈殿処理した後に黄河に排水するのだという。処理方法の効果は定かではなかった。CBM生産サイトの脇を流れる黄河の水は既に黄土高原を舐なめてきた後で茶色く濁っていたからだ。Fortune社柳林CBM:随伴水の沈殿用貯水池 ここのCBM事業の課題の一つは、広域輸送手段がないために、近隣のガス市場への販売に頼らざるを得ないことである。しかし四川省などガス生産地域を除いて、2004年の「西気東輸」パイプライン完成後に中国内陸都市へのガス供給が開始されたばかりであり、山西省周辺に確立されたガス消費地が存在するわけではない。Fortune社は、省南部で隣接する河南省の主要都市(省都の鄭州、古都洛陽と開封)に、やがて地域ガス市場が成立することを想定して都市ガス事業に参入し、自社が生産するCBMをガス供給源の一つとして使用することを計画している。 中国政府は壮大なCBM生産計画を掲げ、主要なCBM事業者であるPetroChinaなど国有石油会社は政府計画を実現可能と肯定している。しかし、Fortune、米系Asian American Gas(亜美大陸媒層気有限公司)など外資企業は、CBM事業の進展には慎重な見方を崩さず、政府計画の実現は難しいとの認識であった。彼らは、PetroChinaが建設を計画するCBMガス田から「西気東輸」への接続パイプライン完成にも懐疑的であった。Fortune社柳林CBM:生産サイト脇を流れる黄河本流 このCBM生産サイト訪問からわずか1月後の9月中旬、PetroChina が35kmの接続線を完成させ(沁水~端氏パイプライン)、「西気東輸」経由でCBM輸送を開始するとの報道に接した次第である(本文3章(4)参照)。まだCBMパイプライン計画のほんの一部が完成したに過ぎないが、多くのCBM事業者が実現を危ぶんでいた沿岸地域大消費地への遠隔輸送の第一歩になる可能性がある。中国政府系企業は情報公開で後れをとり、事業活動を正確につかむのにひと苦労する。しかし、現在は山西省で細々と営まれているCBM事業が、国内に大消費地を抱える中国で、やがては豪州CBM事業のように発展する日が来ることを期待してやまない。執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)1991長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油(株)入社。年から日本石油開発(株)にて海外の石油上流資産管理。2004年10月から現職(JOGMEC石油天然ガス調査グループ 上席研究員)。エリア・スタディーに興味を持っている(主に旧大陸)。2009年は本稿で紹介した世界の非在来型ガス事業動向に注目した。対外レースに備えて、週末の競技ボート練習を続けている。板部 伊三雄(いたべ いさお)福岡県出身。一橋大学商学部卒。三菱東京UFJ銀行、石油公団を経て2005年4月よりJOGMECへ。家族は妻、娘2人、息子1人。趣味は草野球、散策、寺社巡り。最近写経と座禅を始めたが股関節が固すぎて足が組めない。2010.1 Vol.44 No.142
地域1 グローバル
国1
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2010/01/20 [ 2010年01月号 ] 坂本 茂樹 板部 伊三雄
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