北極圏の石油ガス探鉱開発状況
レポートID | 1006401 |
---|---|
作成日 | 2010-03-19 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
分野 | 技術探鉱開発 |
著者 | |
著者直接入力 | 佐藤 大地 |
年度 | 2010 |
Vol | 44 |
No | 2 |
ページ数 | |
抽出データ | アナリシスJOGMEC ロンドン事務所佐藤 大地北極圏の石油ガス探鉱開発状況はじめに 北極圏とは、ほぼ北極点を中心とした高緯度地方で、太陽の沈まない夏の白夜、また、冬に太陽の昇らない極夜になる北極線(北緯66度33分)以北の地域を指し、荒天、氷・海氷により、石油ガス探鉱においてもチャレンジングな地域と考えられています。 一方で、同地域は、① 探鉱開発技術の発達、② 世界的な経済悪化の影響を受けながらも新興国(BRICs)などの人口増と経済発展を受けた石油ガス消費量の増加基調と、それに伴う油価の上昇による経済性の向上期待、③更には地球温暖化の影響とも言われる近年の北極圏の海氷の減少傾向による開発にかかる自然条件の緩和期待があることなどから、にわかにクローズアップされ始めています。その上、④アメリカ地質調査所(USGS:US Geological Survey)が、2000年に公表した世界の未発見資源量評価プロジェクト「World Petroleum Assessment 2000」で未評価であった地域の評価を進めた北極圏の未発見資源量評価プロジェクト「the Circum-Arctic Resource Appraisal(略称:CARA)」(2008年5月結果公表)の結果でも、世界の未発見資源量の天然ガスでは30%、石油でも13%と多くの未発見資源量が期待される地域として、今後の探鉱・開発の進展が注目される地域の一つとなっています。 同地域は、JOGMEC石油・天然ガスレビューでも、ロシア北極海の資源ポテンシャルや北極圏LNG開発などで、取り上げられていますが、本稿では、USGSの評価概要のおさらい、最新の氷の状況、関連地域の入札の動き、実際の既存生産企業概況、および、近年の探鉱の動きに焦点を当て、報告することにしたいと思います。1. 北極圏の未発見資源量米国地質調査所による未発見資源量評価概要① 評価対象と手法 まず、USGSの評価結果を見てみましょう。CARAでは、北極圏(北緯66.56度以北)の3km以上の堆積物がある地域を対象に、在来型技術で採取可能な石油ガス資源*1(コールベッドメタン、ガスハイドレートやオイルシェールなどの非在来型資源は含めない)について評価しており、リスクを加味した資源量の推定をしています。リスクを加味したというのは、可採埋蔵量が石油相当で5,000万バレル以上(ガスで3,000万立方フィート)の発見が一つはある可能性が10%以上あるものを評価したというものです。この可能性というのは、石油ガス交渉が成立するための要素として、(1)炭化水素が集積(根源岩の存在とその熟成が十分である)する可能性、(2)岩石(貯留岩、トラップ、帽岩が存在する)が存在する可能性、また、(3)タイミング(炭化水素の移動17石油・天然ガスレビュー出所:The USGS Circum-Arctic Resource Appraisal for the work図1USGSの未発見資源量推定手法時期とトラップ形成時期)が合っている可能性を考えて、それぞれが成立し石油鉱床となる可能性のことです。資源量の評価においては、北極圏は他の地域と異Aナリシス7割以上が三つの地域、カラ海を含む西シベリア(651兆立方フィート)、東バレンツ海(318兆立方フィート)、アラスカ北極圏(221兆立方フィート)に賦存すると評価されています。国別に見ても、特にロシアに大きな未発見ガス資源が賦存するだろうと評価されています。また、石油についても未発見石油資源量の7割以上が五つの地域、アラスカの北極圏(300億バレル)、カナダのマッケンジーデルタ沖合(97億バレル)、東グリーンランド(89億バレル)、東バレンツ海(74億バレル)、西グリーンランド-東カナダ間(72億バレル)に賦存するとされ、ガスほどではないにしろ、これも偏在すると評価されています。UNDISCOVERED GAS(trillion cubic feet)>1006?100<6Area not quantitatively assessedArea of low petroleum potential出所:The USGS Circum-Arctic Resource Appraisal for the work図3CARAの北極圏の未発見ガス資源量UNDISCOVERED OIL(billion barrels)>101?10<1Area not quantitatively assessedArea of low petroleum potential出所:The USGS Circum-Arctic Resource Appraisal for the work図4CARAの北極圏の未発見石油資源量2010.3 Vol.44 No.218PROBABILITYPROBABILITY(percent)(percent)10010050?10050?10030?5030?5010?3010?30<10<10Area of low petroleum potentialArea of low petroleum potential出所:The USGS Circum-Arctic Resource Appraisal for the work図2CARA評価地域と発見可能性(%)なり、石油ガスの探鉱が進んでおらず、地震探査データ、坑井データなどがないか、ほとんどないため、これらのデータを基に生産シミュレーションして推定する方法や容積法を基にして推定する方法などはとれません。そこで、石油ガスの賦存が知られる既存地域の地質や石油ガス集積状態の類似性を考察し、World Petroleum Assessment 2000で作成したUSGSの既存地域の石油ガス情報を集めたデータベースを基に、最終的には統計を用いた確率論的手法であるモンテカルロシミュレーションを用いて見積もっています。このデータベースは米国を除く既知の石油ガスデータの95%をカバーすると言われています。また、本評価では経済性は考慮されておらず、厚い氷に覆われた地域も含めての評価となっています。②評価結果概要 USGSがCARAで評価した33地方のうち、25地方で発見可能性が10%以上と評価され、資源量まで推定されました。あとの8地域は発見可能性が10%未満で資源量は推定されていません。資源量評価では石油、天然ガス、天然ガス液に区分され、それぞれ約90億バレル、1,670兆立方フィート、440億バレルと推定され、そのほとんどが水深500m以浅の海域にあると評価されています。これは、石油で見ると世界全域の未発見資源量の13%、天然ガスでは同じく30%にあたります。 北極圏ではガス資源量が石油資源量の3倍と、ガスにより大きな資源の賦存する可能性があると評価されました。この未発見ガス資源量も賦存期待地域に偏りがあり、Oリーンランド北極海ラプテフ海ロシア東シベリア海北米大陸チュクチ海ボーフォート海アメリカアラスカオホーツク海ベーリング海太平洋カナダ北極海ラプテフ海ロシアカナダ東シベリア海ボーフォート海チュクチ海アメリカアラスカオホーツク海ベーリング海太平洋に覆われていません。これは、大きくは海流の影響によるものと考えられ、南の比較的暖かい海水を運んでくる地域に氷の発達が少なく、また、河川の流れ込む地域でも氷の発達が抑えられているように見えます。一方、海氷が南方向にどれくらい広がるのかを見てみましょう。冬季は大西洋ではグリーンランド東岸、カナダ北東部のラブラドル沿岸(Labrador)、太平洋側では、ベーリング海ならびにサハリンからオホーツク海まで海氷が広がっています。これらの地域では流氷などへの対策を立てないと開発を進めることができません。冬季の海氷状況(2009/3/10)夏季の海氷状況(2009/9/20)ヨーロッパユーラシア大陸北大西洋スカンジナビアノルウェー海グリーンランド海バレンツ海グリーンランドノバヤゼムリャカラ海氷ラブラドルラプラドル海ヨーロッパ北大西洋スカンジナビアノルウェー海グリーンランド海バレンツ海ノバヤゼムリャカラ海グリーンランドラブラドルラプラドル海近年の北極圏の氷の状況① 氷が発達する時期 北極圏の探鉱開発作業、特に海洋での作業では、氷の状態を常に把握しておくことが安全かつ低コストに作業を進めるのには必要です。北極圏の氷の発達状況を見てみると、通年では9月ごろ氷が海を覆う面積が最も小さくなり、逆に2月から3月にかけて最も氷が海を覆う面積が大きくなります(図5)。北極圏での作業は氷が発達する時期に影響され、海洋での調査などは氷の発達の少ない時期に限られます。これは場所、その年の氷の発達状況、装備・作業体制にも左右されますが、例えば2008年のグリーンランドの海洋でのある調査では、7月から11月ごろを作業期間と見積もり、おおむね順調に作業ができたようですが、2009年は氷の影響が大きく、しん作業が予定どおり進ょくしなかったとも聞いています。捗ち北極圏の石油ガス探鉱開発状況2. 北極圏の氷出所:宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供(一部加筆)図6北極圏の夏季と冬季の海氷状況(白色の部分)出所:National Snow and Ice Data Centerのホームページより図5北極海における海氷面積の年間変化② 氷が発達する地域 一概に北極圏といっても、氷が発達する地域とあまり発達しない地域があります。 人工衛星による北極圏の海氷のデータが取得されています。図6は、北極海の海氷の発達を示すように処理された人工衛星画像です。ロシアのノバヤ ゼムリャ(Novaya Zemlya)島から西のバレンツ海は氷が発達する冬季においてもほとんどの海域が海氷に覆われていません。また、氷の少ない夏季では、ロシアのシベリアの北に位置する海域からアラスカの北側の海域にかけても氷19石油・天然ガスレビュー出所:Norsk Polar Instituteのホームページより図7北極圏の海流Aナリシス出所:National Snow and Ice Data Centerのホームページより図8北極圏の海氷面積の変化(1979年~2009年)海氷の少ない夏季の変化(左から2003年?2008年9月20日)2007年2007年2007年2004年2004年2004年2005年2005年2005年2006年2006年2006年氷氷2008年2008年2008年ユーラシア大陸海氷の多い冬季の変化(左から2003年?2008年3月10日)2004年2004年2004年2005年2005年2005年2006年2006年2006年2007年2007年2007年2008年2008年2008年③ 海氷面積の経年変化 北極圏の海氷が減少しているとよく言われるようになってきています。どれくらいの割合でどの地域の海氷が減少してきているのでしょうか?同じく人工衛星データから見てみましょう。図5でも2009年の海氷面積が1979年~2000年の平均、1979年~2009年の平均に比べて狭くなっているのが分かります。図8は1979年から2009年までの12月時点の海氷面積の変化をグラフにとったものですが、隔年のばらつきはあるものの、減少傾向にあることが分かります。この傾向を見てみると、およそ年に3.3%の割合で海氷面積が減少しているとのことです。 図9は、2003年~2008年の夏季と冬季の実際の海氷面積の変化を衛星画像で見たものです。ここでも各年の海氷の発達にばらつきが見られますが、夏季ではグリーンランド・カナダ側よりロシアの沖からバレンツ海にかけての地域で年による海氷発達の違いが大きいように思われます。また、冬季は氷の南限域であるオホーツク海、ベーリング海、グリーンランド南部で年による海氷発達の違いが大きいように思われます。詳しく見ると海氷の厚さや流れてくる氷山の数が大きさなどさまざまな違いがありますが、ここでは海氷面積を見てみました。2003年2003年2003年2003年2003年2003年出所:宇宙航空研究開発機構(JAXA)提供(一部加筆)図9北極圏の海氷面積の変化図(1979年~2008年)3. 油ガス田概況 ここまでは、北極圏でこれから発見される可能性のある石油ガスとそれを取り巻く自然環境の変化として海氷の状況変化を見てきました。次に、これまでの石油ガスの探鉱開発状況について見てみましょう。(1)油ガス田数北極圏全域の石油ガス発見数 北極圏全域での油ガス田発見数は400を超えます。その大部分は陸域で発見されており、284が発見され、これは全体の約7割を占めます。また、油ガスが発見されたのは、ロシア、カナダ、アメリカ、ノルウェーの4カ国となっています。油田・ガス田ともその多くはロシアで発見され、特にロシア陸域は西シベリア北部やティマンペチョラ北部とそれらの北延長海域で多く、次にカナダとなります。また、海での発見が最も多いのはカナダです。2010.3 Vol.44 No.220k極圏の石油ガス探鉱開発状況 北極圏で埋蔵量規模の大きい油ガス田を石油換算で上位20までを並べてみると、このうち15がガス田、五つが油田です。また、国別では17がロシア、あと三つはアメリカにあります。409総数:230ロシア:85カナダ:62アメリカ:ノルウェー:32(IHSデータより)占める割合は70%を超えます。すなわち、既発見埋蔵量においても北極圏はガスの賦存割合が大きいということが言えます。ただ、これは石油の埋蔵量が小さいというわけではなく、例えば、ロシアでは、石油の既発見可採埋蔵量の約9%が北極圏の占める割合ですが、これは、230億バレルと決して小さい数字ではありません。また、世界の油ガス田の可採埋蔵量の上位25のなかにも北極圏の油ガス田は四つ(ガス田3、油田1)入っており、北極圏の油田についても、小さいものしか期待できないというわけではないと思います。アメリカの北極圏の既発見可採埋蔵量アメリカの北極圏の既発見可採埋蔵量ロシアの北極圏の既発見可採埋蔵量ロシアの北極圏の既発見可採埋蔵量ガス6,760天然ガス液938天然ガス液9,017石油23,076Total= 29,825 MMboeTotal= 272,992 MMboe石油22,128北極圏の既発見可採埋蔵量北極圏の既発見可採埋蔵量石油47,323天然ガス液10,202Total= 311,694 MMboeガス240,900各国の割合88%ロシア10%アメリカカナダ2%ノルウェー?1%(IHSデータより、MMboe比較)ガス254,170カナダの北極圏の既発見可採埋蔵量カナダの北極圏の既発見可採埋蔵量天然ガス液86石油1,811Total= 6,358 MMboeガス4,461ノルウェーの北極圏の既発見可採埋蔵量ノルウェーの北極圏の既発見可採埋蔵量(スバールバル諸島含む)天然ガス液161石油308Total= 2,515 MMboeガス2,049単位: 石油(MMbbl)、ガス(MMboe)、天然ガス液(MMbbl)で2Pの可採埋蔵量出所:IHSEデータなどより作成図12北極圏の既発見石油ガス可採埋蔵量ZapolyarnoyeZapolyarnoyeロシアロシア油田ガス田北極圏の油田北極圏のガス田Prudhoe BayアメリカPrudhoe BayアメリカBovanenkovskoyeBovanenkovskoyeロシアロシアYamburgskoyeYamburgskoyeロシアロシア200,000150,000100,00050,000可採埋蔵量(MMboe)005出所:IHSEデータより作成1015可採埋蔵量順2025図13世界の油ガス田可採埋蔵量上位25での北極圏にある油ガス田(3)北極圏の主要油ガス田①北極圏の主要油田 Prudhoe Bay油田(1968年発見):北極圏で発見され出所:the USGS Circum-Arctic Resource Appraisal for the work図10北極圏に分布する油ガス田分布図総 数:409陸 域:284陸海域: 24海 域:101陸域69%海域25%陸海域6%出所:IHSEデータより作成図11北極圏の発見油ガス田数(2)可採埋蔵量(2P*2ベース以下同じ)北極圏に分布する石油ガスの既発見可採埋蔵量 一方、既発見埋蔵量はどうでしょうか。北極圏全体では、石油換算で3,117億バレルの可採埋蔵量と見積もられ、その約82%がガス、15%が油で、あと3%が天然ガス液です、圧倒的にガスの発見が多くなっています。逆にアメリカでは、既発見炭化水素に占める石油の割合は約75%にもなります。他の2カ国ではロシア同様ガスの21石油・天然ガスレビュートいる油田のうち最大のもので、アメリカ北部アラスカのノーススロープの陸域から海域に位置します。面積は76.3 km2。オペレーターはBPで、各社の権益比率はBP 26.36%、ExxonMobil36.4%、ConocoPhillips 36.08%、Chevron 1.16%とメジャー各社が参加しています。可採埋蔵量は油で143億バレルあまり、ガスで19.7兆立方フィートにのぼり、1977年に生産開始され、現在も生産中です。累積生産量は油で112.3億バレル(2008年)、2008年の年間生産量は油で1億800万バレル、ガスが27億立方フィートでした。生産開始時に油の原始埋蔵量250億バレルの40%が回収されると期待されましたが、今日では技術の進展により回収率60%以上が期待されています。また、近傍にも多くの油ガス田が見つかっています。アナリシスにGazpromはAchimov貯留層からの生産テストを開始しました。引き続いて同層から2008年11月12日には商業生産を開始しています。また、2009年11月12日のGazprom発表ではマネジメント委員会で承認された投資計画案には、Urengoyskoye ガス田のZapadno-Pestsovaya 地域の開発前作業が含まれているということです。また、海域で最大のガス田であるShtokmanガス田の開発前作業も同計画案に含まれているということです。Urengoyskoye ガス田出所:IHSEより(一部加筆)図15北極圏で最大のガス田: Urengoyskoye ガス田(東シベリア)AuroraPolarisOrionBorealisMidnight SunPrudhoe bay出所:IHSEとBPリーフレットより作成図14北極圏で最大の油田:Prudhoe Bay油ガス田(アラスカ)②北極圏の主要ガス田 Urengoyskoye ガス田(1966年発見):北極圏で発見されているガス田のうち最大のもので、ロシア・西シベリア北部の陸域に位置します。面積は2,404.6 km2。オペレーターはGazpromで、100%の権益を持っています。可採埋蔵量は、油で10億バレル、ガスで381.6兆立方フィート、天然ガス液38.9億バレルで、1977年に生産開始され、現在も生産中です。累積生産量は油で0.7億バレル、ガスで180兆立方フィート、天然ガス液で5.7億バレル(2007年)。2007年の年間生産量は油で330万バレル、ガスで4.7兆立方フィート、天然ガス液で2,840万バレルでした。 同ガス田の開発は今も続いており、2008年7月15日(4)北極圏のプレーヤー①北極圏の操業会社(オペレーター) 北極圏で活動している会社のうち、オペレーターとして活動している会社は、80社近くになります。このうち、主だった会社として、可採埋蔵量の上位10社は、Gazprom、 BP、 Ministry of Natural Resources Russian Federation and Komi Republic (MNR)*3、Lukoil、Statoil(STAT HYD P)、ConocoPhillips(COP)、RD Shell(SHELL)、 Petro-Canada(PETROCAN)、 Naryanmarneftegaz JV (NARYAN MNG)、 ExxonMobil(XOM)です。また、発見数上位10社に入っていますが、可採埋蔵量上位10社から漏れているのは、Imperial Oil Resources Ltd(IMPERIAL)とRusvietpetro(RUSVIET PT)です。またそれぞれで10位には入りませんが、主な企業としては、Rosneft、Eni、Devon、Suncor Energy Inc(SUNCOR)、Chevronなどがあり、北極圏での操業プロジェクトを持っています。このなかで日本人にあまりなじみのない会社であるNARYAN MNGはLukoilとCOPとのJV会社(それぞれ持ち分70%、30%)で、 RusVietはロシアの独立系石油企業である2010.3 Vol.44 No.222k極圏の石油ガス探鉱開発状況ZarubezhneftとベトナムのPetroVietnamとのJV会社(それぞれ持ち分51%、49%)です。発見数会社(略称)北極圏の会社別発見数上位埋蔵量(MMboe)17,4216,19529,944195,0331,1837,1272,8591,7852,3575911MNR2COP3BP4GAZPROM5IMPERIAL6LukOil7PETROCAN8STAT HYD P9NARYAN MNG10RUSVIET PT60292727241817171513発見数会社(略称)北極圏の会社別埋蔵量上位埋蔵量(MMboe)195,03329,94417,4217,1276,1953,4542,8592,3571,7851,5351GAZPROM2BP3MNR4LukOil5COP6SHELL7PETROCAN8NARYAN MNG9STAT HYD P10XOM赤は発見数上位10に入る会社。2727601829111715172MNRはMNRロシア、MNRコミ共和国を含む。Petro-Canadaは2009年8月Suncorに買収統合されているが、ここでは統合前として扱う。また、ごく一部ではあるがJVにつては、参加会社で重複して計算。出所:IHSEデータより作成E.SiberianE.SiberianSeaSeaChukchiChukchiCanadianCanadianBeaufortBeaufortArctic IslandsArctic IslandsAmerasiaAmerasiaBasinBasinEurasiaEurasiaBasinBasinGreenlandGreenlandBP/Rosneft regional 2D seismic出所:BPホームページよりLaptevLaptevSeaSeaNorth KaraNorth KaraSouth KaraSouth KaraBarents SeaBarents SeaProductionProductionDiscoveryDiscoveryExplorationExploration図16北極圏の会社別油ガス田発見数と可採埋蔵量(2P)図17BPの北極圏周辺プロジェクト②生産プロジェクトを持つ北極圏の操業会社 北極圏で2009年11月の情報で、生産中のプロジェクトを持つ会社を可採埋蔵量上位10社から何社か見てみましょう。なお、以下の地域でいう西シベリア、ティマンペチョラは北方海域を含めています。 まず、可採埋蔵量ベースで1位のGazpromには27の発見があり、総可採埋蔵量は1,950億バレル(石油換算、以下同じ)で、すべてティマンペチョラ地域に分布し、陸域、海域のプロジェクトがあります。このうち、生産中のプロジェクトは五つで、いずれも西シベリア陸上に位置したガス田です。また、Shtokmanガス田は同社の100%子会社であるSevmorneftegazを操業会社としており、これは既述の数字には入れていません。 同2位のBPには27の発見があり、総可採埋蔵量は299億バレルで、カナダとアメリカに位置します。アラスカのノーススロープでは13、カナダでは、マッケンジーデルタとパリー(Parry)諸島域に14の油ガス田があります。このうち生産プロジェクトは、アラスカの陸海にある13の油田のうち、評価中の一つ、一時生産停止中の二つを除き、既述のPrudhoe Bay油田を含む10油田です。このうち、陸上油田が三つ、陸から海域に広がる油田が三つ、海域の油田が四つになります。海域の油田は水深3~10m、最大20mの比較的浅い海に位置しています。BPは1959年にアラスカに事務所を開くなど比較的早くから北極圏での探鉱を進めてきています。このうちアラスカはBPの資源供給地として2番目の位置を占めるとされます。また、2010年1月でもBPのCEOであるTony Haywardのロシアの北極圏資源へのアプローチに積極的な発言が伝えられるなど、北極圏に積極的な企業の一つです。 同4位のLukoilには18の発見があり、総可採埋蔵量は71億バレルで、すべて西シベリア、ティマンペチョラ地域に分布します。西シベリアのSalekaptskoye油田は、陸域から海域に位置しますが、他のプロジェクトはすべて陸域です。生産中のプロジェクトは、九つの陸上油ガス田で、西シベリアのNakhodkinskoyeガス田以外は、ティマンペチョラに位置します。ティマンペチョラのKharyaginskoye油田のTotalとの操業など、生産プロジェクトは単独操業の形をとるものはありません。 同5位のCOPには29の発見があり、総可採埋蔵量は62億バレルで、カナダとアメリカに分布します。カナダではマッケンジーデルタに海域八つを含む10プロジェクトがあり、アメリカではアラスカのノーススロープで海域と陸から海域にまたがる計二つを含む19プロジェクトがあります。生産中のプロジェクトは七つで、いずれもノーススロープにあり、陸から海域に延びる一つと六つの陸域で油を生産しています。 同8位のNARYAN MNGには15の発見があり、総可採埋蔵量は24億バレルで、いずれもロシアのティマンペチョラ地域に位置します。陸域から海に広がるMedynskoye油田以外は陸域に位置します。生産プロジェクトはKhylchuyuskoye Yuzhnoye油田(可採埋蔵量5億3,600万バレル)を筆頭に四つの陸上油田があります。 また、生産プロジェクトはありませんが、可採埋蔵量ベースで10位に入ったそのほかの会社を簡単に見てみましょう。可採埋蔵量ベースで3位に入るMNRは60の発見がありますが、生産プロジェクトはありません。すべてロシア国内で東西シベリア、ティマンペチョラ地域23石油・天然ガスレビューAナリシスクトを持つ操業会社は、オホーツク海 サハリンで、サハリンI、IIのプロジェクト以外ではRosneftがあります。同社はOdoptu-More Severnoye油田(1970年発見、可採埋蔵量3,700万バレル、水深最大30m)で生産しています。また、カナダ東部沖ではXOMが、Hibernia油田(1979年発見、可採埋蔵量16.3億バレル、水深最大80m、1997年11月生産開始)を含む五つの油ガス田で生産中です。そのほかに同地域ではHusky、Suncorがあり、HuskyのWhite Rose油田(1985年発見、可採埋蔵量8億3,400万バレル、水深最大122m、2005年11月生産開始)、SuncorのTerra Nova油田(1984年発見、可採埋蔵量4億3,300万バレル、水深最大95m、2002年1月生産開始)で生産中です。などに広い地域で油ガス田を持っています。このうち、二つは一時的に生産停止の油ガス田です。そのほか、別に開発中のプロジェクトが12あります。 同6位に入るSHELLも北極圏では生産プロジェクトはありません。ただ、氷海となる北極圏と同様厳しい環境のサハリンで、サハリンIIプロジェクトで生産しています。北極圏では11の発見があり、総可採埋蔵量は35億バレルで、カナダ マッケンジーデルタ アラスカノーススロープに分布します。カナダでは海域から陸域の一つを含む九つのプロジェクト、アラスカ ノーススロープ海域の二つのプロジェクトで操業会社となっています。 同7位のPetro-Canada*4には17の発見があり、総可採埋蔵量は29億バレルで、カナダ マッケンジーデルタの一つ以外はパリー諸島域に位置します。パリー諸島の島に位置するBent Horn油田(1974年発見、可採埋蔵量600万バレル)は1985年7月に生産開始されましたが、現在は一時生産停止中です。 同9位のSTAT HYD Pには17の発見があり、総可採埋蔵量は18億バレルで、ノルウェーのバレンツ海とノルウェー海に位置します。バレンツ海のSnohvitガス田(1984年発見、可採埋蔵量6億9,500万バレル、水深335m)は2007年9月に生産開始されましたが、現在は一時生産停止中です。 同10位のXOMは二つの発見があり、総可採埋蔵量は15億バレルで、ともにアラスカ ノーススロープ地域に位置します。これらは評価中であり、生産油ガス田はありません。しかし、XOMには氷海となる北極圏と同様の厳しい環境のサハリンのサハリンIプロジェクト、カナダ東部沖での生産プロジェクトがあります。③その他氷海で生産プロジェクトを持つ操業会社 北極圏以外で氷海になる地域としては、オホーツク海、カナダ東部沖があります。これらの海域で生産プロジェ出所:ExxonMobilリーフレットより図18ExxonMobilの北極圏周辺プロジェクト4. 近年の探鉱・開発状況(1)入札関係北極圏で予定される最近の入札情報(2010年1月現在) 2010年1月現在で公表されている北極圏の入札情報のうち、終了年月が2010年3月以降のものを表1に示しました。グリーンランドでカナダとの間の海域北部にあたるバフィン湾が2009年にBaffin Bay 入札ラウンド2010として正式にアナウンスされました。入札締め切りは、2010年5月1日、各鉱区面積8,200~1万5,000km2で計14鉱区総面積15万1,358km2を対象にしています。グリーンランドの入札ラウンドは2006/2007年にこの2010.3 Vol.44 No.224k極圏の石油ガス探鉱開発状況南接するDiscoWest地域で行われたのに続くものですが、その間にはグリーンランド南部海域のオープン地域で四つの鉱区が付与されています。また、グリーンランド東側のグリーンランド海域においても詳細はアナウンスされていませんが、2013年には入札が行われる予定とのことです。 また、北極圏の他の地域の最近の入札状況を振り返れば、2008年2月にアラスカ北西海域のチャクチ海(Chukchi Sea)で探鉱ライセンスラウンドが行われています。入札にはSHELL、COP、Repsol YPFなど7社が参加し、5,354鉱区のうち、488鉱区が落札されています。 また、ノルウェーでも、2008/2009年に実施された第20回の入札(79鉱区の公開)において、北極圏のバレンツ海、ノルウェー海を含む地域で入札が行われています。この入札全体では42の石油会社に38の生産ライセンスが付与されています(Oil Voice 22 Jan 2010)。また、このなかで、出光スノーレ石油開発株式会社が三つの探鉱鉱区で権益を取得しました。そのうち、バレンツ海(PL537鉱区:オペレーターOMV)、ノルウェー海(PL522鉱区:オペレーターBG)は北極圏に位置し、現在日本の石油会社が権益を保有する北極圏の鉱区になっています。 そのほかロシアのティマンペチョラ陸域においてもAuction 2 Mar 2010やAuction 3 Mar 2010など2010年1月から2月の締め切り予定で入札が行われています。Greenland SeaGreenland SeaBid Round Bid Round Baffin BayBaffin BayBid Round 2010Bid Round 2010Greenland出所:Baffin Bay 入札説明資料に加筆図19グリーンランドの入札鉱区表北極圏で予定される最近の入札情報開始年月日終了年月日陸域/海域環境鉱区面積水深10,1679,39215,22010,0009,9918,17011,09110,61811,80212,17913,4108,52210,22610,569500~800m400~600m500~2,000m500~2,000m500~1,500m250~500m800~2,000m500~2,000m200~500m500~2,000m200~1,000m1,000~2,000m200~1,000m500m1,900200~1,500m95,600100~2,500m21,500200~2,000m2010/5/1Deep WaterOffshore2013/10/15Deep Water~ShelfDeep Water鉱区名Blck 1Blck 2Blck 3Blck 4Blck 5Blck 6Blck 7Blck 8Blck 9Blck 10Blck 11Blck 12Blck 13Blck 14国入札名Baffin Bay 2010デンマーク(グリーンランド)Greenland Sea Northeastern AreaGreenland Sea Northern AreaGreenland Sea Southern AreaGreenland Sea 2012出所:IHSEデータより作成25石油・天然ガスレビューAナリシス出所:ExxonMobilリーフレットより図22Ted LinkとNorman Wells oil field②北極圏の探鉱井数と発見油ガス田水から見た探鉱 IHSEのデータを基に、図23~図26にそれぞれ、北極圏の国別の探鉱井掘削数、北極圏の陸海別の探鉱井掘削数、北極圏の国別の発見油ガス田数、北極圏の陸海別の発見油ガス田数をグラフで示してみました。 探鉱井の掘削数の推移を見てみると(図23)、1944年のカナダの探鉱井の掘削の後、ロシアとアメリカでの掘削が続き、1950年代にはロシアの掘削が多くなってきています。1960年代から1970年代にかけてはカナダでの坑井が増加しましたが、1973年ごろから徐々に減少しました。替わりにロシアでの掘削数が1970年代半ばから1993年にかけて他の地域を圧倒します。また、アメリカでは1940年代後半から1950年代初めにかけて掘削数が増加しており、1968年のアラスカ ノーススロープPrudhoe Bay油ガス田の発見により、翌年さらに増加しています。年による増減はあるものの継続して掘削が続けられています。グリーンランドでは西側海域に1970年代後半から計8坑が掘削されています。019401945195019551960196519701975198019851990199520002005掘削年出所:IHSEデータより作成図23北極圏の国別探鉱井数の推移2010.3 Vol.44 No.226United StatesRussiaNorwayGreenlandCanada14012010080604020探鉱井数出所:The Minerals Management Service図20Chukchi Seaの入札地域出所:NPD(Norwegian Petroleum Directorate)ホームページより図21Norwayの第20回入札エリア(2)探鉱概況①北極圏の初期の石油ガスの探鉱 北極圏における石油ガスの探鉱の始まりははっきりとはしないものの、1920年には当時の最も北に位置するNorman Wells油田がImperial Oil Limited(インペリアル オイル)のTed Linkによって、カナダの北西テリトリーの北極圏近傍で発見され、1932年より生産が始まりました。Tedはインペリアルオイルのチーフジェオロジストを務め、カナダ北西テリトリーで地質調査に航空機を商業的に使用したパイオニアであり、航空写真や地質断面も利用したということです。k極圏の石油ガス探鉱開発状況 また、海域での掘削は1970年代後半以降に本格化しますが、多少の増減があるものの現在まで継続されています(図24)。そして、1977年以降ノルウェー海では水深1,000mを超える大水深域に13坑が掘削されています。グラフには、ロシアの坑井について330坑以上の掘削年不詳の陸上坑井データが含まれておらず、また、油ガス田の発見年と比べても最初の発見油田が1943年であるのに、最初の坑井が1944年であることから坑井データの一部欠落があることが分かりますが、大まかな探鉱推移を把握することができます。 次に発見油ガス田の推移を見てみましょう(図25)。 ここでの最初の発見は、1943年のロシアで陸域においてです。1950年代初期にかけていくつかの発見がロシア・アメリカでありました。ただ、本格的になるのは、1960年代後半からです。ロシア・アメリカでの発見に続いて、1969年から1980年代半ばにかけてカナダでの探鉱井掘削が活発化しました。しかし、1990年を最後に2003年に掘削が再開されるまで12年の空白があります。この時期、原油価格は低迷しておりロシア・アメリカでも発見数は伸び悩でいます。 ロシアでは現在まで大きな増減があるとはいえ、継続して油ガス田の発見が続いており、1969年と1970年、1975年、1977年には年間五つ以上の発見があり、1980年代後半から1990年初期にかけては10以上の発見が続きました。特に1990年には20の発見が見られます。アメリカは1960年代後半以降、散発的な発見があり、1969年、2000年には、それぞれ五つ、四つと若干ですがまとまった発見が見られます。ノルウェーは1977年以降に発見が見られ、近年では2008年にバレンツ海・ノルウェー海でそれぞれ四つ、二つの計六つのまとまった発見がありました。 また、海域での発見が本格化するのは1974年以降です。ロシアでは陸上を中心に海域でも発見が続いています(図26)。019401945195019551960196519701975198019851990199520002005掘削年019401945195019551960196519701975198019851990199520002005発見年出所:IHSEデータより作成出所:IHSEデータより作成図24北極圏の陸海別探鉱井数の推移図26北極圏の陸海別発見油ガス田数の推移海域陸から海域陸域30252015105発見数海域陸域14012010080604020探鉱井数019401945195019551960196519701975198019851990199520002005発見年出所:IHSEデータより作成出所:BP統計2009より図25北極圏の国別発見油ガス田数の推移図27原油価格の変遷27石油・天然ガスレビューUnited StatesRussiaNorwayCanada30252015105発見数i3)開発概況(発見から開発までの年数など) 北極圏で発見された油ガス田409のうち、現在生産中なのは、68あります。そのほか、一時生産停止中の油ガス田*5がバレンツ海のSnohvitガス田やカナダ パリー諸島のBent Horn油田やロシア、アメリカに八つがあります。これら一時生産停止中の油ガス田を除いた既発見未開発油ガス田は、既発見の83%あまりに及び、北極圏ではその多くが生産に至っていません。 68の生産中の油ガス田の発見から生産までの平均年を見てみると、12.7年になり、これは陸域では12.9年、海域では9年、陸から海域に位置する油ガス田では13.5年となっています(生産開始年不詳のロシア陸上3油田を除く)。 図29は北極圏での油ガス田の発見から生産に至る年数をプロットしたものです。グラフの発見から生産までの年数が0になるのは、発見年に生産が開始されたものアナリシスを一部含みますが、多くは現在生産に至っていない油ガス田です。発見から生産開始までの早い例としては、1949年、アラスカノーススロープ陸域で発見されたSouth Barrowガス田があり、同年生産開始しています。また、長くかかった例としては、1965年ロシア 西シベリアで発見されたZapolyarnoyeガス田は生産開始が2001年と、発見から生産まで36年を要しています。発見から生産までの年数のばらつきは大きいものの、生産に至った油ガス田のみに着目すると最近の発見に従い、生産開始までの年数が短くなってきているように見えます。しかし、未生産油ガス田も多く、発見の時期、場所などにより、ばらつきが大きいということも言えるかもしれません。Norway32United States62Russia 230総数: 409総数: 409陸域: 284陸域: 284陸海域: 24陸海域: 24海域: 101海域: 101海域陸海域陸域Canada85出所:IHSEデータより作成図30北極圏の油ガス田の国別発見数22 ロシアでは230の発見があり、そのうち201が陸域で、あとは海域もしくは陸から海域にかけての油ガス田です。生産中の油ガス田は46あり、一時生産停止中2を除いて、既発見未開発油田の割合は77%弱になります。開発中33、開発承認待ち67、評価中51で開発承認待ちが最も多い割合になっています。生産前の182のうち、評価作業などが行われている油ガス田が151あり、開発111122474747474444444418181818121212122244oducingrP886666Temporarily shut-in11scoveryiDod, enhanced od, improved ecovrPrecovrPrプロジェクト ステージ別13913960606673733322818181812424242422225555555572724477616141414141666633333232323216014012010080604020発見油ガス田数0AppraisingAwait devel approvalDeveloping出所:IHSEデータより作成図28北極圏の油ガス田のプロジェクトステージ別油田数図29北極圏の油ガス田の発見から生産までの年数図31ロシア 北極圏の油ガス田のプロジェクトステージ別油田数2010.3 Vol.44 No.228総数: 230総数: 230陸域: 201陸域: 201陸海域: 11陸海域: 11海域: 18海域: 18海域陸海域陸域42422240402222Temporarily shut-inoducingrP11333333292931313328286767662259595151121239398070605040302010発見油ガス田数海域の油ガス田陸から海域の油ガス田陸域の油ガス田0194019501960出所:IHSEデータより作成1970発見年1980199020002010000044440AppraisingAwait devel approvalDeveloping出所:IHSEデータより作成scoveryiDod, enhanced od, improved ecovrPrecovrPrプロジェクト ステージ別403530252015105発見から生産までの年数i4)北極圏の探鉱開発の課題 北極圏における探鉱開発が難しいポイントを整理してみましょう。・遠隔地であること 市場、資機材調達地から遠く、熟練技術者や作業員など人材確保の観点からも、また既存の供給地から離れていることから、その確保が困難で、よりコストがかかるようになります。また、ヘリコプターの航続距離を超えた遠隔地となる可能性もあります。・氷環境の影響 海域においては、流氷(floating ice)、氷山(iceberg)、(pack ice)に直接ぶつかっても大丈夫流動してくる叢な建造物や、ぶつからないように氷の季節に一時退避できるシステムが必要であったり、浅海では氷山の下部が海底を引っかくことの対策として海底パイプラインや海底建造物の埋設などの措置が必要になります。海氷地域では、海氷を避けるための砕氷船の配置や砕氷能力のある船を採用する必要の出てくる場合もあります。掘削リグや生産施設などの海上施設への資材や補給物質の運搬氷ひそうょう発見のみの油ガス田が21で、割合では57%と最も高くなっています。また、増進回収法が適用されている油ガス田が17と多くなっており、これはアメリカの特徴にもなっています。 ノルウェーでは32の発見があり、そのうちスバールバル諸島を除く30が海域の油ガス田です。生産中の油ガス田はなく、一時生産停止中が1あります。このうち開発中5、評価中8で、発見のみの油ガス田が18で割合では58%と最も高くなっています。総数: 32総数: 32陸域: 陸域: 22陸海域: 0陸海域: 0海域: 30海域: 30海域陸海域陸域18181616220000scoveryiDod, enhanced od, improved ecovrPrecovrPrプロジェクト ステージ別00oducingrP11Temporarily shut-in555500Await devel approvalDeveloping8888Appraising20181614121002468発見油ガス田数(注)スバールバル諸島を含む出所:IHSEデータより作成北極圏の石油ガス探鉱開発状況に向けての評価などの動きのあるものが83%に達しています。これは後述する他の国より高い割合で、ロシアの特徴にもなっています。 カナダでは85の発見があり、そのうち39が陸域で、あとは海域もしくは陸から海域にかけての油ガス田です。生産中の油ガス田は一つで、一時生産停止中1を除いて、およそ99%が既発見未開発油ガス田です。開発承認待ち5、評価中9に対して、発見されたままになっている油ガス田が69と最も多い割合になっています。海域での発見数も45%あまりに上ります(陸から海域の油ガス田を加えると54%以上)。 アメリカでは62の発見があり、そのうち42が陸域で、あとは海域もしくは陸から海域にかけての油ガス田です。生産中の油ガス田は21であり、一時生産停止中4を除いて、既発見未開発油田の割合は73%程度になります。開発中3、評価中13です。生産前の37のうち、総数: 85総数: 85陸域: 39陸域: 39陸海域: 8陸海域: 8海域: 38海域: 38海域陸海域陸域00001111図34ノルウェー 北極圏の油ガス田のプロジェクトステージ別油田数scoveryiDod, enhanced od, improved oducingrPTemporarily shut-inecovrPrecovrPrプロジェクト ステージ別図32カナダ 北極圏の油ガス田のプロジェクトステージ別油田数総数: 62総数: 62陸域: 42陸域: 42陸海域: 5陸海域: 5海域: 15海域: 15海域陸海域陸域1414224488332211scoveryiDod, enhanced od, improved ecovrPrecovrPrプロジェクト ステージ別441133441133oducingrPTemporarily shut-in69693434662929212177141499222266111155222222220AppraisingAwait devel approval111100Developing8070605040302010発見油ガス田数出所:IHSEデータより作成3333Developing0Appraising00Await devel approval131322111010252015105発見油ガス田数出所:IHSEデータより作成図33アメリカ 北極圏の油ガス田のプロジェクトステージ別油田数29石油・天然ガスレビューAナリシスに使われるサプライボートなどの船舶の使用が制限されることも想定しなければなりません。最近のニュースでもStatoilはChukchi海の2,400km2の3D地震探査データ取得にFugro社の、大きく近代的なC-classの地震探査船を使用したデータ取得契約にサインしたとのことです。この探査船はノルウェーの船級協会DNVのICE Classificationを受けているものだそうです。(firstbreak 2010年1月号)。 陸上においても積雪への対応、永久凍土層や地表が冬に凍り夏に溶ける不安定な場所での建造物の設置に対応する必要が出てきます。 そのほか、建築物や飛行機の翼などさまざまなものに氷が張り付く氷結(freezing)や着氷(icing)対策として、氷が付着しにくい構造形態をとることも不可欠です。・ 気象観測と氷のモニタリング また、気象状況の変化を的確にとらえ、作業の安全や物資の輸送を確実に行ったり、そもそもの現地設置物などの仕様を決めるために、氷の状況などを的確に把握すること、海氷の観測システムやデータ収集システムが必要となります。・ 日照時間 冬季には極夜になり、その前後でも日照時間が限られることになります。屋外での作業時間が限られるとともに、屋外での十分な照明設備などが必要になります。・北極圏の気象 北極圏の気象は厳しく嵐なども発生しますが、北極圏のハリケーンとも呼ばれるポーラーロー(Polar Lows)は、サイズ200~400km、地表風速15~32m/sに達し、急激に発達・消滅し、予測なども難しく海難事故にもつながる気象現象で、北極前線の北のスカンジナビア周辺の外洋で発生するものがあります。・環境への影響 北極圏は人間以外の生物にとっても生存環境が厳しいところであるゆえに、自然環境・生態系への影響に十分配慮した活動が求められる地域です。1989年のアラスカ南部での原油流出事故では、海鳥25万~50万羽、ラッコ2,800~5,000頭が死ぬなど多くの生物に影響を与えました。現在では、石油探鉱活動の前に生物や自然環境への影響調査がなされるようになってきています。例えば、グリーンランドでは、石油探鉱による環境への影響調査として、カモメ類やカモ類などの海鳥、タラ、オヒョウやシシャモなどの魚類、エビなど甲殻類や貝類、ホッキョクグマ、セイウチ、アザラシやクジラなど海洋哺乳類などの調査を行い、影響の少ないエリアで鉱区設定を行っています。その地に生息する生物は生息域が限られ、また全く人跡未踏の地域とも限らず、漁業などへの影響も含め、地域の住人への配慮・理解を得ることも必要になります。アラスカの北極圏野生生物保護区(ANWR: Arctic National Wildlife Refuge)などの自然保護地域を避けるなどのことも欠かせません。・技術課題 サハリンIでは陸から9km沖合にある油層に大偏距坑井を掘削し、生産しています。比較的陸域に近い地域では、このような大偏距坑井による開発を行うこともできますが、掘削方向のコントロールや長い距離の水平井を掘削するなどの技術が求められます。また、北極圏ではバレンツ海に見られるような大水深域もありますので、大水深での掘削・開発技術も必要になってきます。特に出所:GKSSホームページより出所:ExxonMobilリーフレットより図35スカンジナビア半島北部の巨大低気圧図36サハリン I での大偏距掘削2010.3 Vol.44 No.230k極圏の石油ガス探鉱開発状況探鉱開発では、このように最新技術への対応に加え、氷環境への対応をはじめ、ともかく厳しい自然環境下でプロジェクトを進めていくマネジメント力など総合的な技術力が問われます。北極圏の排他的経済水域の問題が解決しているわけではありませんが、北極圏に存在する国は政治的に安定した国が多く、他のフロンティア地域に比べて地政学的なリスクが少ないと言えるかと思います。その代わりに、本当の技術力が問われる地域と言えるかもしれません。まとめ 北極圏での期待される資源量、氷の状況、油ガス田の開発状況を駆け足で見てきました。技術的にも困難ではあるものの、新たな石油ガス発見の可能性の高いフロンティアエリアとして、魅力的な地域だと思います。もちろん単独での探鉱開発には難しい地域ではありますので、技術力・資金力を持ったパートナーとリスクをシェアリングしながら、中長期的に取り組むことも念頭に置かなければならないでしょう。北極圏で活動する各社の動向についても今後とも注意深く見守っていきたいと思います。 また、今まで在来型の石油ガスについての状況について述べてきましたが、USGSの2008年評価では、非在来型としてガスハイドレートの資源量がアラスカ ノーススロープ地域に賦存し、85.4兆立方フィートのガスが既存技術で可採可能だと推定されています。今後、ますます北極圏が魅力的になっていくかもしれません。<注・解説>*1: ここでは天然ガス液(NGL:Natural Gas Liquid)を含む。*2: 確認鉱量(proved reserves)+ 推定鉱量(probable reserves)を合わせた埋蔵量で、BP統計で発表される確認鉱量より数字が大きくなり、会社発表などではよく使われる。*3: MNRはMNRロシア、MNRコミ共和国を含む。*4: Petro-Canada は2009年8月、Suncorに買収統合されているが、データは統合前。*5: 石油の発見から生産、生産停止に至るまでのプロジェクトのステージとして、各段階に分けてみることができます。通常のステージは、油ガス田の発見(discovery)、評価(apprising)、開発承認待ち(await developing approval)、開発中(Developing)、生産中(producing)、増進回収法 (EOR: enhanced oil recoveryもしくはIOR:improved oil recovery)ですが、何らかの理由で生産を一時調停している場合もあります(temporarily shut-in)。【参考文献】1.Assessment of Gas Hydrate Resources on the North Slope, Alaska, 20082.Assessment of Undiscovered Oil and Gas Resources of the East Greenland Rift Basins Province3.Assessment of Undiscovered Oil and Gas Resources of theWest Greenland?East Canada Province, 20084.BP Exploration (Alaska) Inc. , 2009, bp in Alaska (リーフレット)5.Charpentier, R.R., Klett, T.R., and Attanasi, E.D., 2008, Database for assessment unit-scaleanalogs (exclusive of the United States): U.S. Geological Survey Open-File Report 2007-1404, 61 p.6. ExxonMobil, 2008, arctic leadership (リーフレット)7. Mike Daly, Exploration in BP (BPホームページより)31石油・天然ガスレビューAナリシス8. USGS Circum-Arctic Resource Appraisal Assessment Team, 2008, Circum-Arctic Resource Appraisal: Estimates of Undiscovered Oil and Gas North of the Arctic Circle9. USGS World Assessment Team, 2000, U.S. Geological Survey World Petroleum Assessment 2000-Description and Results: U.S. Geological Survey Digital Data Series ? DDS60(with CD-ROM)10. 記事, Arctic date Fugro 'C' vessel, first break Volume 28, January 2010, 24p11. JOGMEC石油・天然ガスレビュー -2009年7月号、原田 大輔「ロシアの石油・天然ガス開発概観:最近の動向と今後の見通し(上)」 -2009年9月号、原田 大輔「ロシアの石油・天然ガス開発概観:最近の動向と今後の見通し(下)」 -2009年9月号、大野 泰伸「液化技術を知って北極圏LNG開発を展望する」 -2007年11月号、本村 眞澄「ロシア北極海の資源ポテンシャルとシュトックマン・ガス田の開発」12. JOGMEC石油・天然ガス資源情報 市原 路子「企業:相次ぐ資産売却方針 -財務改善とともに企業戦略の練り直し」(2009年12月16日)BMP(Bureau of Minerals and Petroleum)参考ホームページhttp://www.bmp.gl/BPExxonMobilGAZPROMhttp://www.bp.com/bodycopyarticle.do?categoryId=1&contentId=7052055http://www.exxonmobil.com/corporate/http://www.gazprom.com/International Arctic Researchhttp://www.ijis.iarc.uaf.edu/jp/index.htmMMS(Minerals Management Service Alaska OCS Region)http://www.mms.gov/alaska/National Snow and Ice Data Centerhttp://nsidc.org/Norsk Polar Institutehttp://npweb.npolar.no/englishNPD(Norwegian Petroleum Directorate)http://www.npd.no/engelsk/cwi/pbl/en/index.htmUSGS:CARAhttp://energy.usgs.gov/arctic/USGS:Oil and Gas - World Petroleum Assessmenthttp://pubs.usgs.gov/dds/dds-060/宇宙航空研究開発機構(JAXA)関連http://www.ijis.iarc.uaf.edu/jp/index.htm執筆者紹介佐藤 大地(さとう だいち)1991年 筑波大学 第一学群 自然学類 地球科学専攻 卒業。同年4月に石油公団(JNOC)に入団。1992年JNOC 海外地質構造調査部、1995年(財)石油開発情報センター研究部勤務、1998年JNOC 石油開発技術センター地質・地化学研究室、2000年石油資源開発(株)長岡鉱業所技術一部勤務、2002年JNOC 技術部、2004年独立行政法人 石油天然ガス金属鉱物資源機構(JOGMEC)移籍と同時にJNOC 技術評価部勤務、2005年JOGMEC石油・天然ガス開発技術調査グループ、2006年夏よりJOGMECロンドン事務所 副所長。家族の笑顔が心の支え、血圧と体重が気になる40代。2010.3 Vol.44 No.232 |
地域1 | グローバル |
国1 | |
地域2 | |
国2 | |
地域3 | |
国3 | |
地域4 | |
国4 | |
地域5 | |
国5 | |
地域6 | |
国6 | |
地域7 | |
国7 | |
地域8 | |
国8 | |
地域9 | |
国9 | |
地域10 | |
国10 | 国・地域 | グローバル |
Global Disclaimer(免責事項)
このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
PDFダウンロード5.6MB
本レポートはPDFファイルでのご提供となります。
上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。
アンケートの送信
送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。