ページ番号1006402 更新日 平成30年3月5日

飛躍するオセアニアのLNG事業:展望と課題

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レポートID 1006402
作成日 2010-03-19 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG非在来型
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2010
Vol 44
No 2
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 調査部坂本 茂樹飛躍するオセアニアのLNG事業:展望と課題第1章 オセアニア(豪州、パプアニューギニア)の新規LNG案件の進展がめざましい。同地域はやがて東アジア市場向けのLNG最大供給地になると目されている。 本章でオセアニアのLNG事業を概観した後、第2章でいくつかの観点からの分析を試みる。1.西豪州沖合LNG案件 西豪州沖合では豊富なガス埋蔵量を背景に、大型LNG案件が着々と進展している。特に北西大陸棚(North West Shelf、NWS)地域のプロジェクト進展が目覚ましい。既存のNWS LNG案件に続き、豪州大手石油ガス企業WoodsideがPluto LNG第1トレイン(430万トン/年)の最終投資決定を行ったのは2007年7月であった。その後約2年間の最終投資決定空白期間を経て、2009年9月にChevronがGorgon LNG(1,500万トン/年)の投資決定を行った。2010年以降、ChevronのWheatstone LNG(当初860万トン/年、最大2,500万トン)、WoodsideのPluto LNG拡張(第2、3トレイン)等の大型優良案件の投資決定が行われようとしている。 Browse地域では、国際石油開発帝石株式会社(INPEX)のIchthys LNGプロジェクトが進んでおり、Woodsideがオペレーターを勤めるBrowse LNGも2010年2月に開発方針が合意された。他に、Shellが洋上液化方式(FLNG)にてPreludeガス田開発(350万トン/年)を手掛けようとしている。 ShellのPrelude LNGは初めての洋上液化事業の試みでガス関係者の注目を浴びているが、安定的な操業可能性を確認した上で、事業化に持ち込むまで解決すべき課題は少なくない。 西豪州沖合LNG案件は、計画が公表されている液化能力合計が8,000万トンを超える。既存事業(NWS、ダー表1豪州北西大陸棚(NWS)の主要な新既LNGプロジェクト① PlutoWoodside*関西電力東京ガス第1トレイン2007年2011年90.0%5.0%5.0%第2、3トレイン2010~2011年2013~2014年WoodsideBurrup半島430万トン×2430万トン/年東京ガス:150万トン+オプション25関西電力:175万トン+オプション25(2011~2025年)Chevron*ShellExxonMobil② Gorgon50.0%25.0%25.0%Chevron*ApacheKUFPEC② Wheatstone75.00%16.25%8.75%2011~2012年2016年ChevronOnslow、Pilbara860万トン/年東京電力:410万トン九州電力:68万トン2009年2014年各社の個別販売Barrow Island 1,500万トン/年(Chevron)750万トンGS Caltex、中部電力、東京ガス大阪ガス、新日石、九州電力Kogas、CNOOC(Shell)375万トンPetroChina、BP、Shellポートフォリオ(ExxonMobil)375万トンPetroChina、Petronet LNG5.0Tcf43Tcf中部電力、東京ガス、 大阪ガス3社はChevronの上・中流事業に参入2社はChevronの上・中流事業に参入東京電力(15%)、九州電力(1.83%)LNG事業名事業者*オペレーター事業タイミング最終投資決定LNG生産開始事業スキームLNG販売者液化設備液化基地サイト液化設備能力LNG販売先ガス埋蔵量備考出所:各種情報・報道1石油・天然ガスレビューAナリシス しかし2008年以降の世界経済不況、北米の域内ガス生産が好調等の理由から中長期的な世界LNG需要が下方修正された。計画されるLNG供給量の増加に見合った需要増加がなければ新規案件は契約を獲得できずに事業実現が難しくなる。豪州の新規LNGプロジェクトの事業環境は決して万全とは言い難い。勢せウィンLNG)の4倍に相当する膨大な設備計画である。Pluto、Gorgon、Wheatstoneなど先行するプロジェクトは東アジアのLNG需要を着実に獲得している。豪州の新規LNGプロジェクトは、供給力増加余地に乏しい東南アジアLNG事業に代わって、今後東アジア向けLNGすう主要供給地域となるのは確実な趨いにある。WA-404-PWA-404-PWoodsideWoodsideWA-370-PWA-370-PWoodsideWoodsideWA-350-PWA-350-PWoodsideWoodsideNorth West ShelfNorth West Shelf(Woodside)(Woodside)ScarboroughScarborough(ExxonMobil)(ExxonMobil)JanszJanszWA-390-PWA-390-PHessHessPlutoPluto(Woodside)(Woodside)Wheatstone(Chevron)mm1,0001,000Indian Ocean1,000m1,000mAUSTRALIAAUSTRALIANWS NWS LNG PlantLNG PlantGorgonGorgon(Chevron)(Chevron)Gorgon LNG Plant Gorgon LNG Plant (planned)(planned)PlutoPlutoLNG PlantLNG Plant(planned)(planned)BARROWBARROWILANDILANDmm200200mm000011Wheatstone Wheatstone LNG Plant LNG Plant (planned)(planned)OnslowOnslowPilbaraPilbaraAUSTRALIAAUSTRALIAGas FieldOil FieldLNG Plant出所:各種情報・報道Northern TerritoryArgusArgusCruxCruxKontiki1WA-314-PWA-314-P(Conoco Phillips)(Conoco Phillips)WA-315-PWA-315-PPoseidon1Prelude1Poseidon2TorosaTorosa(Woodside)(Woodside)PoseidonPoseidonWA-398-PWA-398-PWA-371-PWA-371-PPrelude(Shell)Prelude(Shell)FLNGFLNGEchuca ShoalsEchuca ShoalsConcerto1WA-281-PWA-281-P(Santos )(Santos )Ichthys(INPEX)Ichthys(INPEX)Burnside1CallianceCalliance(Woodside)(Woodside)BrecknockBrecknock(Woodside)(Woodside)DarwinDarwinCapeCapeLondonderryLondonderryGas FieldLNG PlantLicense AreaWellAUSTRALIAAUSTRALIAKimberleyKimberleyAUSTRALIAAUSTRALIAJames Price PointJames Price Point出所:各種情報・報道図1北西大陸棚のLNG事業とガス田図2Browse地域のLNG案件とガス田2. クイーンズランド州CBM-LNG 石炭生産地域である豪州東部は豊富な炭層メタンガス(以下CBM、Coal Bed Methane)埋蔵量を持つが、人口が少なく製造業の集積がないため、域内ガス需要規模が小さい。クイーンズランド州のCBM生産者は、ガス事業モデルとして、CBMを原料とするLNG事業計画(以下CBM-LNG)を考案した。2007年5月、7月にArrow EnergyおよびSantosがそれぞれCBM-LNG事業計画を公表してから、3年近くが経過しようとしている。2010年1月時点で、4コンソーシアムがCBM-LNG案件の商業化を推進しようとしている(表2)。 4コンソーシアムともに2010年に最終投資決定を予定している。うち、GLNG(Santos/Petronas)、Queensland Curtis LNG(BGグループ)、Gladstone LNG(Arrow Energy/LNG Ltd./Golar LNG)は、LNG売買契約(または覚書)を締結済みで、2010年に最終投資決定を行う可能性が高い。なかでも、世界的な大手LNG事業者であるBGグループがオペレーターを務めるQueensland Curtis LNGは、同社が排他的LNG供給権を持つチリ、シンガポール向け供給が可能であること、中国CNOOCと長期契約(360万トン/年)に合意していることから、最終投資決定の実現性が高い。 プロジェクトの最近の進展として、2010年1月にGladstone LNG(Arrow Energy/LNG Ltd./Golar LNG)の事業スキーム変更が発表された。中流部門は、“InfraCo”(液化設備以外のタンク、港湾などLNG関連のインフラ計画、建設を担当)と“TrainCo”(液化部門担当)に分割される。株主構成は、InfraCoはLNG Ltd.とArrowが51:49の比率、TrainCoはArrowが100%所有する。LNGマーケティングを担当するGolar LNG Energyも中流部門に参加する予定とされるが、具体的な参入方法は定まっていない。また、豊田通商が豪AJ Lucas社からSurat BasinのCBMパーミットATP651権益15%を取得する(BGグループにCBMを供給)。 CBM-LNG事業の最終投資決定タイミングが近づいて2010.3 Vol.44 No.22キるオセアニアのLNG事業:展望と課題表2豪州クイーンズランド州の主要なCBM-LNGプロジェクトLNG事業名① GLNG② Queensland Curtis LNGSantosPetronasBGグループ(QGC、Pure Energy買収)③ Gladstone LNG(Fisherman's Landing)Arrow EnergyLNG Ltd.Golar LNG④Australian Pacific LNGOrigin EnergyConocoPhillips事業者事業タイミングLNG構想発表最終投資決定LNG生産開始事業スキーム2007年7月2010年2014年2008年2月2010年2014年2007年5月2010年2012年2Q?2008年9月2010年末2014年末中流(液化)上流(CBM生産)Santos   60%Petronas  40%Santos   60%Petronas  40%中流(パイプライン)Santos   60%Petronas  40%BG      100%(CNOOCが5%出資計画)BG      100%(CNOOCが出資計画)BG      100%LNG販売者PetronasBGArrow Energy 100%“TrainCo”Arrow Energy 100%“InfraCo”LNG Ltd.   51%Arrow Energy 49%Golar LNG Origin Energy  50%ConocoPhillips  50%Origin Energy  50%ConocoPhillips  50%Origin Energy  50%ConocoPhillips  50%ConocoPhillips液化設備液化基地サイト液化設備能力液化方式CBM上流資産CBM埋蔵量2P(2009年8月)主要なCBM資産LNG販売先備考Gladstone港Curtis Island350万トン/年Optimized CascadeGladstone港Curtis Island370×2=740万トン/年Optimized CascadeGladstone港Fisherman's Landing150×2=300万トン/年Single Mixed RefrigerantGladstone港Curtis Island350×4=1,400万トン/年Optimized Cascade3,650 PJ4,422 PJ(Arrow+Shell)3,436 PJ7,218 PJFairviewArcadia、Roma・2009/6月 PetronasとHOA締結  200 +オプション100万トンSurat堆積盆地・第1トレイン チリ、シンガポール向け・第2トレイン CNOOC向け 2009/5月 HOA締結・豊田通商 上流資産の一部に出資Bowen、Surat堆積盆地(Korgan North)・2009/9月  豊田通商とHOA締結 150万トン(1トレイン分)未定Spring Gully(Bowen)Peat Project、Fairview・Shell→Arrow上流資産 30%出資・2010年1月  環境影響評価草案を州政府に提出出所:各種情報・報道/埋蔵量:Energy Quest社 2009年8月いるものの、同事業モデルはまだ実現事例がないため、はたして安定的なLNG供給が可能であるのか課題も多い。言い換えると、それだけ期待も大きい。また、CBM生産に先だって大量に生産される随伴水処理も課題である。現在では随伴水蒸発用の大きな貯水池を設けているが、自然蒸発は徐々に禁止される。今後は処理過程を経て随伴水の再利用が促進される。濾過設備など水処理施設設置はコストアップになるため、多くの事業者は随伴水処理方法をまだ十分には定めていないと見られる。 一方、豪州東部陸域の資源開発は地域住民参加型である。CBM開発に際しても地域社会、農場主、牧場主代表が招かれて彼らの見解を堂々と主張する。時には「エネルギー開発か、食料生産か?」といった刺激的なスローガンも掲げられる。しかし彼らの多くは資源開発に反対するのではなく、農業や牧畜と調和の取れたガス開発が行われ、環境に悪影響を及ぼさない資源開発を望んでいる。 すべてのLNGプロジェクトが、州都ブリスベンから3石油・天然ガスレビュー出所:WoodMackenzie社 2009年11月図3豪州クイーンズランド州のCBM-LNG案件約400km北方に位置するGladstone湾内に液化サイトを建設する。以前、Santosが個々のコンソーシムが計画するCBM-LNGプロジェクトを統合しようと呼び掛けを行ったがその時には具体的進展はなかった。2010年Aナリシス2月末にBGグループのQGC(Queensland Gas Co.)かAustralian Pacific LNGと契約を結び、Queensland Curtis LNG生産初期の2年間、部分的にCBM供給を受けることが合意された。 既述のように、GLNG等先行する3プロジェクトは、LNG販売先にある程度のめどをつけた上で2010年に最終投資決定を下したい意向だ。しかし、メタン比率が高い(約98%)CBMはカロリーが低く、高カロリーガスを使用する東アジア伝統市場(日本、韓国、台湾)需要家はまだCBM-LNGの契約に動いていない。複数のCBM-LNG案件が操業開始を計画する2014~2015年は、西豪州沖合の大型LNG案件(Gorgon、Pluto-2,3、Wheatstone)の操業開始時期と重なる。2015年以降に生産開始を計画するオセアニアLNG案件が多いため、中長期的にはアジア太平洋地域でLNGの需給緩和が見込まれる。こうした需給予測を前提に東アジア伝統市場のLNG買い主は、まず高カロリーの西豪州沖合LNG案件の契約を進めている。クイーンズランド州のCBM-LNG事業者にとって、厳しいマーケティング環境が続くと考えられる。3. パプアニューギニア(PNG)のLNG案件 PNGには、現在Oil Searchが操業するKutubu地域等の原油生産があり、随伴ガスも生産される。しかしPNG国内ではガス需要が乏しいため、1980年代から隣国の豪州東部市場向けにガスをパイプライン輸出する計画が検討されてきた(PNGガスプロジェクト)。一方、豪州東部ガス市場では、2000年代初期から増産が顕著になった炭層メタンガス(CBM)との競合が厳しくなったことから、ExxonMobilをオペレーターとするコンソーシアムが2007年2月、同ガスプロジェクトをLNG輸出事業に変更した(PNG LNG)。 PNG LNGはその後2年の短期間で開発計画とLNG売買計画を固め、2009年12月、最終投資決定を行った。PNG LNGは、ガス生産地域が内陸高地にあってパイプラインなど設備建設の難しさや高コストが予想されるものの、同国の資源開発関連の財務条件が良好である他、ガスが液分を含むことなどから、良好な事業採算が期待表3パプアニューギニアの主要なLNGプロジェクトLNG事業名① PNG LNG②Liquid Niugini GasExxonMobilOil SearchSantos新日石グループIPBC(PNG政府)MRDC(PNG地権者)Petromin33.2%29.0%13.5% 4.7%16.6% 2.8% 0.2%2009年2014年上記事業者に同じ上記事業者に同じExxonMobilPort Moresby660万トン/年東京電力    180万トン大阪ガス    150万トンSinopec     200万トンCPC     130万トン9Tcf事業者事業タイミング最終投資決定LNG生産開始事業スキーム上流(CBM生産)中流(液化)LNG販売者液化設備液化基地サイト液化設備能力LNG販売先ガス埋蔵量備考出所:各種情報・報道InterOilPetromin77.5%22.5%2010年2014年Port Moresby500万トン/年未定・2010年にパートナー入札を行う・LNG生産に先行してコンデンセート 生産を開始する計画2010.3 Vol.44 No.24PL 238PPL 238InterOilInterOilElk/AntelopeElk/AntelopeGulf of PapuaLiquid Niugini GasLiquid Niugini GasPortPort Moresby MoresbyPNG LNGPNG LNGPAPUA NEW GUINEAPAPUA NEW GUINEAExxonMobilExxonMobilAngoreAngoreMoranMoranJuhaJuhaHidesHidesKutub ProjectKutub ProjectOil SearchOil SearchINDONESIAINDONESIAINDONESIAPAPUA PAPUA NEW NEW GUINEAGUINEAAUSTRALIAAUSTRALIAQLDNSWAUSTRALIAAUSTRALIA出所:各種情報・報道図4PNGのLNG案件およびガス田飛躍するオセアニアのLNG事業:展望と課題される。PNGでは、地権者部族間での発砲を含む不穏な抗争が報道されることがある。しかしExxonMobilが主導するPNG LNGプロジェクトは、西豪州沖合LNG案件とともに、最も有望視されるオセアニアの新規LNG案件と認識されている。 PNGでは、カナダに登記する独立系InterOilが2006~2008年に陸域で発見したElk/Antelopeガス田をLNG事業として開発することを計画している(Liquid Niugini Gas)。Liquid Niugini Gasは金融危機で体力を消耗したMerrill Lynchが撤退した後、2010年に新規パートナー参入を決める計画である。ガス田評価作業を継続してLNG事業実施の前提となるガス埋蔵量を確定し、2010~2011年に最終投資決定を行うと見られる。 Talisman社もLNG事業を検討中と言われる。第2章 本章では六つの切り口から、前章で概況を述べたオセアニアLNG案件の分析を試みる。1.北西大陸棚;大型(拡張)LNG案件はPluto、Wheatstoneを軸に展開か?(1)北西大陸棚の新規LNG案件 沖合ガス資源に富む西豪州北西大陸棚では、既存のNWS LNG事業に加えて、Pluto、Gorgon、Wheatstone LNG案件が計画されている。オペレーターLNG案件最大液化能力(年間)Woodside ChevronChevronPlutoGorgonWheatstone2,000万トン1,500万トン+拡張1,000万トン2,500万トン Chevronは2009年9月のGorgon LNG最終投資決定(液化設備1,500万トン/年)に際して、同プロジェクトの拡張計画を示唆していた。しかし液化設備を建設するBarrow島は、ウミガメなど希少生物保護のための環境規制政策が非常に厳しく、Gorgon LNGの液化設備拡張は非常に難しいと考えられる。北西大陸棚地域の次世代大型LNG事業は、WoodsideのPlutoとChevronのWheatstoneプロジェクトを軸に展開されると考えられる。(2)Wheatstone LNGプロジェクトの展望 Chevronは2004年にWheatstoneガス田を発見し(近隣のIagoガス田発見は2001年)、2008年3月、独自のLNG事業計画を公表した。Wheatstone液化設備は、Pilbara海岸Onslow近郊のAshburton Northに建設される。当初は液化設備2トレイン(液化能力430万トン×2基=860万トン/年)で生産を開始するが、2009年4月に政府当局に提出した環境影響評価調査では最大2,500万トンの液化設備を申請している。Chevronは2011年初め、液化設備当初2トレイン(液化能力860万トン/年)の投資を決め、2015年のLNG生産開始を目標にしている。 Chevronが操業するWheatstoneとIagoガス田(ShellがIagoガス田の約50%が存するWA-16-Rライセンス権益33.3%を保有するため、Wheatstone LNG全体に占めるChevron権益は約95%)埋蔵量は8Tcf程度であり、Wheatstone LNGの立ち上げおよび拡張には、更に新規探鉱によるガス発見、と第3者からのガス調達が必要であった。Wheatstone LNG を計画するChevron、Pluto LNG拡張を計画するWoodsideは積極的にガス資産を持つ第3者からのガス購入交渉を行っており、両社は競合関係にあった。そしてガス購入相手先の候補はApache/KufpecグループおよびHessであった。 Chevronは、米国独立系Apacheとクウェート(Kufpec Kuwait Foreign Petroleum Exploration Co.)のコンソーシアムからのガス調達交渉でWoodsideに競り勝ち、その結果2009年10月22日、同コンソーシアムのWheatstone LNGプロジェクト参加で双方が合意した。Apache/KufpecとChevronが交わした契約内容は、次のとおりである。5石油・天然ガスレビューAナリシスa. Apache/Kufpecコンソーシアムは、西豪州沖合WA-356-Pライセンスにおける発見ガス田(Julimar, Brunello)からWheatstone LNG第1、2トレインに対して原料ガスを供給する。b. Apache/Kufpecは、Wheatstone LNG第1、2トレインに権益25%を取得する(Apache=16.25%、 Kufpec=8.75%)。なる。Wheatstoneのような西豪州沖合LNG案件に参入することで、事業者がプレミアム市場と見なす好販売条件の東アジアLNG市場への販売も視野に入る。東アジア市場へのLNG輸出は、豪州国内市場向けガス供給に比べて、ガス事業の価値を大きく高めるものと考えられる。WA-370-PWA-370-P WA-350-PWA-350-P(Woodside)(Woodside)(Woodside)(Woodside)Pluto(Woodside)Pluto(Woodside)North West ShelfNorth West Shelf(Woodside)(Woodside)ScarboroughScarborough(ExxonMobil)(ExxonMobil)JanszJanszBrunello1Julimar1Achilles1WA-390-PWA-390-P(Hess)(Hess)Gorgon North2Wheatstone(Chevron)Wheatstone(Chevron)WA-356-PWA-356-P(Apache)(Apache)1,0001,000mmIndian Ocean1,000m1,000mWA-205-PWA-205-P(Chevron)(Chevron)mm200200mm000011GorgonGorgon(Chevron)(Chevron)Gorgon LNG Plant Gorgon LNG Plant (planned)(planned)BARROWBARROWISLANDISLANDNWS NWS LNG PlantLNG PlantPlutoPlutoLNG PlantLNG Plant(planned)(planned)Gas FieldOil FieldLNG PlantLicense AreaWellAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAOnslowOnslowWheatstone Wheatstone (planned)PilbaraPilbaraLNG Plant LNG Plant (planned)出所:各種情報・報道図5北西大陸棚:ガス田・パイプラインとApache鉱区(WA-356-P) Apache/KufpecのWheatstone LNG参加により、Chevronは同LNGプロジェクトの実現性を大きく高めることが可能となった。Chevronは、自社で100%近い権益を保有していたWheatstone事業にApache/Kufpecを権益25%で招じ入れるため、これまで自社ですべてを決定できた操業自由度に若干の制限が加えられる。しかしApache/Kufpecの事業参加はChevronに大きなメリットをもたらす。 具体的には、Chevronは、第3者からのガス調達のうちで最も確実性の高いApache/Kufpecのガス資源を自社Wheatstone LNG事業向けに確保できた。資金調達面でもメリットがある。Chevronは2009年9月に同社の長年の懸案だったGorgon LNGの最終投資決定を行った。大型プロジェクトのGorgonは総額で430億豪ドル(400億米ドル)の投資を要する。Chevronは続いて実施するWheatstone LNGに約178億米ドルの投資を計画しているが、事業参加するApache/Kufpecがそのうちの45億米ドル(25%相当)を負担するとのことで、資金調達に余裕が生じる。 なお、LNG事業経験がないApache/Kufpecは、Chevronの事業パートナーとなることで、技術、コマーシャルを含むLNG事業ノウハウへのアクセスが可能に(3) Woodside社Pluto LNGプロジェクト拡張の展望 WoodsideはPluto第1トレイン(430万トン、2007年投資決定)完成に最大の優先順位をおいて事業を推進している。同液化設備は2010年初に85%が完成しており、2011年に日本向け輸出を開始する計画である。 既述のように、Plutoは最大2,000万トンへの設備拡張を申請している。しかしPlutoガス田確認済み埋蔵量は5Tcf程度であり(PlutoおよびXenaガス田、2Pベース)、拡張計画には不十分である。Woodsideは目下、Pluto LNG第2、3トレイン向けに供給する原料ガス確保に全力を傾注しており、野心的な探鉱キャンペーンを展開するとともに第3者からのガス調達を交渉中である。状況はChevronのWheatstoneプロジェクトに類似している。供給相手先候補は、Apache/KufpecグループとHessであった。Pluto第2トレイン最終投資決定は2010年後半と見られている。 Apache/KufpecはWoodside社Pluto LNG拡張(第2、3トレイン)向けにガスを供給する可能性が高いと見られていたが、2009年10月にChevron社Wheatstoneへのガス供給が合意された。Apache/Kufpecの決定はWoodsideにとって少なからず打撃であり、今後は第3者からのガス購入、そして自社探鉱の成功が必要となる。 WoodsideはHessのWA-390-P鉱区を含む第3者からのガス調達交渉に注力する一方、自社の探鉱活動を加速化する。WoodsideはPluto拡張計画のガス調達の一環として、2009年第4四半期から2010年にかけて、Plutoガス田周辺を含むCarnarvon堆積盆地で24坑の掘削を計画している。同社はPluto拡張計画と探鉱等投資に備えて、2009年11月初旬に非コア資産の処分を決めた(ビクトリア州沖合Otway油ガス田資産売却を含む)。 Woodsideは続いて2009年11月10日、Pluto LNG拡張(第2、3トレイン)に係るFEED作業を発注し、事業拡張に対する意気込みを示した(発注額;12億豪ドル(約950億円)、発注先;Foster Wheeler/WorleyParsonsコンソーシアム、 KBR)。 Hessは相当量の埋蔵量を持つと見られるWA-390-P鉱区発見ガスに関して、ガス処分方法を定めるのは次期尚早として、方針を明言していない。しかし同社が2010.3 Vol.44 No.26キるオセアニアのLNG事業:展望と課題Woodside、Chevronの両社とそれぞれガス販売に関する交渉を行っていることは明らかと見られている。(4) 西豪州におけるガス事業者としてのChevronとWoodside Chevronの西豪州/北部準州全体の在来型ガス埋蔵量は、Woodside(全体の約26%)に次いで2番手であり(全体の12%)、これはWoodsideの半分以下である。Woodsideは豪州最大のガス埋蔵量保有者だが、チモール海、Browse地域に多くのガス資源を持っており、有力LNG案件が集中するCarnarvon堆積盆地のガス資産はPlutoガス田にとどまる。一方Chevronは大型案件のGorgonに加え、Wheatstoneガス田を保有しており、同地域では最も存在感が大きい。 既述のように、北西大陸棚Carnarvon堆積盆地で大型LNG計画を持つのは、Chevron(Wheatstone、Gorgon)とWoodside(Pluto)である。環境保護対策をクリアして液化設備拡張が可能なのは、Wheatstone とPlutoであり、同地域の将来のLNG事業はこの2案件を軸に展開されると考えられる。CNOOC3%Apache4%ENIENI5%5%MIMIMIMI11%11%ShellShell11%11%Santos3%WoodsideWoodside26%26%ChevronChevron12%12%BPBP11%11%BP1%Santos1%Kufpec2%Apache4%Woodside1%1%HessHess9%9%ShellShell11%11%ChevronChevron37%37%ExxonMobilExxonMobil16%16%BHP BillitonBHP Billiton17%17%BHP Billiton11%出所:Energy Quest社出所:コンサルタント・データ図6沖合ガス田のガス埋蔵量比率(西豪州+北部準州、2009年8月)図7北西大陸棚Carnarvon堆積盆地のガス埋蔵量比率2. 西豪州沖合深海の探鉱成果は順調次世代LNGへのガス供給を念頭に置く深海域探鉱の見通し 豪州、とりわけ人口密度が低く温暖な西豪州北部ではガス需要規模が小さく、国内市場向けガス価格は安い。したがって、ガス事業者が目指す市場は、地理的に近く販売価格が高い東アジアLNG市場である。この観点から見ると、西豪州沖合は世界で最も恵まれたガス探鉱地域の一つと言える。これまで述べてきたように、大手LNG事業者Chevron、Woodsideを含み、Hess、Apacheなどガス事業を世界的に展開する国際企業が北西大陸棚地域で積極的な探鉱活動を展開しているわけだが、探鉱の中心地域は、従来の浅海域から、徐々に沖合深海へと移りつつある。ChevronのGreater GorgonエリアのChandon、Clio(2006年)、WoodsideのPluto(2005年)など近年の主要なガス田は、水深1,000~1,200mの深海域で発見さ7石油・天然ガスレビューれた。2009年の発見では、10月下旬に発表されたChevronのAchilles-1を含み、主要な発見はやはり深海域であった。オペレーター坑井名/鉱区発見時期ガス供給先候補水深(m)1,096Wheatstone?2009年12月Satyr-1/WA-374-PYellowglen-1/WA-268-PChandon-2/WA-268-PAchilles-1/WA-374-PClio-2/WA-205-PKentish Knock-1/WA-365-PNoblige-1/WA-404-PMartell-1/WA-404-PChevronWoodside2010年 1月1,090Gorgon2009年12月1,143Gorgon2009年10月2009年 8月2009年 8月2010年 1月2009年 2月1,126Gorgon990Wheatstone?1,200Wheatstone?1,312Pluto LNG拡張 同地域における主要事業者であるChevronおよびWoodsideが広い鉱区面積を占めている。WoodsideはGorgon事業Janszガス田北方に広い鉱区面積を保有して「る。同社は、Pluto向けガス供給を確保するために2009年第4四半期から2010年にかけて、野心的な24坑の掘削計画を公言している。 Chevronは、Greater Gorgonエリア西方鉱区に加えて、これまで深海フロンティアとして探鉱実績の少なかったScaboroughガス田西方深海域に広い鉱区面積を保有している。2009年夏季に付与された最も新しい深海鉱区(WA-434-P、WA-439-P)は、Woodside、Chevronがそれぞれ1鉱区ずつを獲得した。 Wheatstone、Plutoという有望な次世代LNG案件が存在することで、オペレーターのChevron、Woodside、そして両社のLNG事業へのガス供給を目指すHess、Apacheなど第3者事業者による探鉱は今後も活発な活動が維持されると考えられる。残存炭化水素資源のうち、ガス比率が高いアジア太平洋地域における、ガス田開発事業環境の優位性が、探鉱活動の重要な条件であることが分かる。アナリシスNoblige1WA-370-PWA-370-P(Woodside)(Woodside)WA-350-PWA-350-P(Woodside)(Woodside)North West ShelfNorth West Shelf(Woodside)(Woodside)PlutoPluto(Woodside)(Woodside)WheatstoneWheatstone(Chevron)(Chevron)WA-356-PWA-356-P(Apache)(Apache)WA-404-PWA-404-P(Woodside)(Woodside)WA-268-PWA-268-P(Chevron)(Chevron)Martell1Chandon2Chandon1Yellowglen1ScarboroughScarborough(ExxonMobil)(ExxonMobil)Larsen1ChandonChandonJanszJanszAchilles1WA-390-PWA-390-P(Hess)(Hess)WA-374-PWA-374-P(Chevron)(Chevron)GorgonGorgon(Chevron)(Chevron)WA-205-PWA-205-P(Chevron)(Chevron)mm1,0001,000Satyr1Indian Ocean1,000m1,000mBARROWBARROWISLANDISLANDAUSTRALIAAUSTRALIAmm200200mm000011OnslowOnslowPilbaraPilbaraWheatstone Wheatstone LNG Plant LNG Plant (planned)(planned)出所:各種情報・報道NWS NWS LNG PlantLNG PlantGorgon LNG Plant Gorgon LNG Plant (planned)(planned)PlutoPlutoLNG PlantLNG Plant(planned)(planned)AUSTRALIAAUSTRALIAGas FieldOil FieldLNG PlantLicense AreaWell図8北西大陸棚における最近の掘削成果NWS NWS LNG PlantLNG PlantPlutoPlutoLNG PlantLNG Plant(planned)(planned)AUSTRALIAAUSTRALIAIndian OceanWA348-PWA348-P(Woodside)(Woodside)ScarboroughScarborough(ExxonMobil)(ExxonMobil)WA268-PWA268-P(Chevron)(Chevron)WA364-PWA364-P(Chevron)(Chevron)WA-365-PWA-365-P(Chevron)(Chevron)WA347-PWA347-P(Woodside)(Woodside)WA-404-PWA-404-P(Woodside)(Woodside)JanszJanszWA-369-PWA-369-P(W)(W)WA-269-PWA-269-P(Woodside)(Woodside)WA-370-PWA-370-P(W)(W)WA-350-PWA-350-P(W)(W)North West ShelfNorth West Shelf(Woodside)(Woodside)PlutoPluto(Woodside)(Woodside)WheatstoneWheatstone(Chevron)(Chevron)WA-434-PWA-434-P(Woodside)(Woodside)WA-439-PWA-439-P(Chevron)(Chevron)WA-383-PWA-383-P(Chevron)(Chevron)WA-390-PWA-390-P(Hess)(Hess)WA-374-PWA-374-P(Chevron)(Chevron)WA-356-PWA-356-P(APACHE)(APACHE)GorgonGorgon(Chevron)(Chevron)WA-366-PWA-366-P(Chevron)(Chevron)WA-367-PWA-367-P(Chevron)(Chevron)mm1,0001,000WA-392-PWA-392-P(Chevron)(Chevron)WA-205-PWA-205-P(Chevron)(Chevron)WA-392-PWA-392-P(APACHE)(APACHE)WA-205-PWA-205-P(Woodside)(Woodside)WA-433-PWA-433-P(Woodside)(Woodside)Gorgon LNG Plant Gorgon LNG Plant (planned)(planned)BARROWBARROWILANDILANDOnslowOnslowPilbaraPilbaraWheatstone Wheatstone LNG Plant LNG Plant (planned)(planned)m001200m 100m200m000m000m,,11WA-430-PWA-430-P(Woodside)(Woodside)WA-271-PWA-271-P(Woodside)(Woodside)AUSTRALIAAUSTRALIAGas FieldOil FieldLNG PlantLicence Area出所:各種情報・報道図9各社の北西大陸棚沖合鉱区保有状況3.東アジア市場のLNG調達;進展するオセアニア新規案件へ軸足移動 オセアニア(豪州、PNG)の新規LNG案件が着実に進展するにつれて、東アジア主要買い主によるLNG売買契約合意、締結が進んでいる。日本、中国の買い主を中心に、多くの覚書(HOA)が締結されていたが、2009年後半に豪州GorgonとPNG LNGの投資決定が行われたのを機に、同プロジェクトの多くの購入者との間で売買契約が締結された。 中国の買い主(CNOOC、PetroChina、Sinopec)はオ2010.3 Vol.44 No.28キるオセアニアのLNG事業:展望と課題セアニア案件とともに2008年にカタールと締結したLNG契約が多かったが、日本の買い主の多くは新規契約をオセアニア案件と契約している。 日本買い主の新規契約は、豪州では、ChevronのGorgonとWheatstone、そしてWoodsideのPlutoである。いずれも西豪州沖合ガス田プロジェクトで、日本市場が好む高カロリーLNGを供給する。購入先のChevron、Woodsideは定評ある大手LNG事業者であり、既存のNWSプロジェクトパートナーとしてなじみも深い。パプアニューギニアのPNG LNGも大手事業者ExxonMobilが計画する案件で、高カロリーLNGを供給する。このように、日本のLNG長期契約先としては、大手事業者による安全性の高いプロジェクトが選ばれている。 更に日本の大手買主(東京電力、東京ガス、中部電力、関西電力、大阪ガス)は、豪州新規案件(ChevronのGorgon、Wheatstoneプロジェクト、WoodsideのPlutoプロジェクト)に権益を取得し、上流、中流事業に参画する。積極的なガス探鉱を実施している両社の探鉱活動にも既に共同参加しており、両社のLNG拡張計画に対し強くコミットしていくという姿勢が窺 日本のLNG調達先は、伝統的に自らプロジェクト立ち上げにかかわった東南アジアが中心であった(インドわれる。うかがネシア、マレーシア、ブルネイ)。しかし東南アジアのLNG供給力は大きく変わろうとしている。2009年まで一貫して日本向けLNGの最大供給国であったインドネシアとの全契約数量は(2008年実績約1,400万トン)、これが2011年には600万トンへと大幅に削減される。その3年後には、その時の需給状況によるとの条件付きながら更に半減される。インドネシアの基本方針は、ガスを国内市場に供給した後の残余供給力の範囲内でLNGを輸出するということである。これによりLNG輸出国としての地位は大きく後退する。マレーシア、ブルネイにLNG輸出削減の予定はないが、新たな大規模ガス田発見はないため、現在の供給力をいつまで維持できるかが課題である。東南アジア3カ国のLNG輸出量は1990年代からほぼ横ばいだが、カタール、豪州、ナイジェリアなど新興輸出国の数量増加により、世界全体に占める東南アジアのLNG輸出比率は漸減している。 しかし表4に示したように、新規LNG契約のほとんどはオセアニア新規案件との契約である(多くは東南アジア契約更改期に伴う代替需要)。インドネシアからのLNG輸入数量が削減される2011年にマレーシアがインドネシアに代わって日本向け最大のLNG供給国になると見られる。しかし同年に生産開始するPlutoをはじめ、表4日本のオセアニアLNGプロジェクトからの購入数量[ 新規LNG案件 ]Gorgon(Chevron)Wheatstone(Chevron)Pluto(Woodside)PNG LNG(ExxonMobil)買い主東京電力*九州電力*万トン40068輸入開始買い主2016~17年2016~17年関西電力*東京ガス*万トン200175輸入開始2011年2011年買い主東京電力大阪ガス万トン150150輸入開始2014年2014年468375300Darwin(ConocoPhillips)買い主東京電力東京ガス万トン200100輸入開始2006年2006年300輸入開始2014年2014年2014年2015年買い主大阪ガス*東京ガス*中部電力*九州電力新日石合計新規合計万トン14011015030304601,603[ 既存LNG案件 ]NWS(Woodside)更改2009年2009年2009年2009年2005年、2009年2006年、2009年2004年、2009年2005年2004年、2009年2004年、2009年買い主中部電力東京電力東北電力関西電力中国電力九州電力東京ガス静岡ガス大阪ガス東邦ガス合計既存合計新規+既存合計万トン110301009014012016010150110102013202,923(注)オプション数量を含む、*:事業権益取得出所:各種情報・報道9石油・天然ガスレビュー居Bの大型案件が順次LNG生産を開始する。2014~2015年にはオセアニア(豪州、PNG)が東南アジアに代わって最大の日本向けLNG供給地域になる可能性が高い。 豪州には新規LNG案件数が多く、液化能力は世界最大となる勢いであり、2015年以降操業を開始する新たなプロジェクト成立に伴い、オセアニアLNGプロジェクトによる日本向け供給比率は更に高まると見られる。アナリシス億m32,5002,0001,5001,0005000199619971998出所:BP統計1999アラスカ他トリニダード・トバゴ赤道ギニアナイジェリアリビアエジプトアルジェリアオマーンアブダビカタール豪州ブルネイマレーシアインドネシアナイジェリアアルジェリアエジプト赤道ギニアノルウェーアラスカT.トバゴオマーンカタールUAE豪州ブルネイインドネシアマレーシア200020012002200320042005200620072008年出所:各種情報・報道図10世界の国別LNG輸出量推移図122008年の日本のLNG輸入先%7060504030201001996199719992000出所:各種情報・報道199820012002200320042005200620072008年図11東南アジア3カ国のLNG輸出量の全体に占める比率その他インドネシアオセアニア%100908070605040302010020082015出所:各種情報・報道図13日本のLNG輸入先の変化(2008年→2015年)、輸入数量は同程度と想定4. 豪州政府リテンションリース承認の厳格化 → Browse LNG始動へ(1)豪州連邦政府、既発見ガス田開発促進策へ 豪州連邦政府は、これまで未開発ガス田の開発作業着手に猶予期間を設けてきた政策に対して、厳しい姿勢に転じている。 豪州沖合ではガス発見率が高い。ガス田発見の場合、その商業化は石油に較べて多額の資金と長期の開発期間を要する。高額な設備建設(パイプライン、液化設備)、更に事前に販売先確保が必要であるため、慎重な準備と検討が求められる。そのため、炭化水素を発見しても、発見対象地域に申請したリテンションリースの更新を繰り返すことによって、ガス田開発を先送りする事例が多かった。 統計によると、豪州沖合連邦鉱区のガス発見に際してリテンションリースによって開発を先送りする事例は、1990年にはわずか4%であったが、2000年には29%、2008年には40%へと増加しているという。 豪州連邦政府のリテンションリース抑制に関する政策は、「資源開発に着手しなければリテンションリースを認めない」“use it or lose it”に基づいている。連邦政府は、管轄する沖合鉱区でガス発見があっても開発が先送りされて資源の商業化に繋がらない事例の増加を憂慮し、既に2009年にリテンションリース承認に制限を設ける意向を表明していた。2010.3 Vol.44 No.210キるオセアニアのLNG事業:展望と課題(2)西豪州政府のKimberley液化ハブ構想 西豪州の現保守連立政権(Barnett首相)は、2008年9月に前労働党政権からKimberleyスタディー(Browse地域に液化設備1基地のみを建設する構想)を引き継ぎ、2009年初めにJames Price Pointを液化基地候補に選定した。西豪州政府は、州内にLNG液化基地を含む有力な産業を誘致して雇用を創出し、州経済の活性化を図るために、Browse LNGプロジェクトの早期実現を望んでいる。Barnett首相は、前労働党政権末期の2008年9月、やはりBrowse地域にあるINPEX社Ichthysガス田の液化基地が西豪州ではなく北部準州のダーウィンに決まったことに遺憾の意を表明していた。Browse LNGに関しては、西豪州内で速やかに商業化されることを強く望んでいた。開発方法が合意できなかったのである(BP、Chevron、Shell、BHP Billiton、オペレーターWoodside)。 Browse LNG事業オペレーターのWoodsideは、もともと西豪州政府が認定したKimberley液化ハブ案に同調して本LNGプロジェクトを推進しようとしていたため、同様にプロジェクト推進を図る政府提案に歓迎を表明した。Woodsideはプロジェクトを推進させるために、政府に対して、Kimberley液化ハブ構想に反対するパートナーへの圧力行使を求めていた。しかし他パートナー4社(BP、Chevron、Shell、BHP Billiton)は共に、Kimberley液化ハブ案とBrowse液化方式の早期決定に慎重な姿勢を取っていた。Woodside以外のパートナー4社にとっては、政府から厳しい要請を突き付けられたことになった。(3) 連邦政府/西豪州政府のBrowseガス田開発促進Indian OceanWesternAustralia2,000m2,000m1,000m1,000m0m0m0022Prelude(Shell)Prelude(Shell)FLNGFLNGArgusArgusTorosaTorosa(Woodside)(Woodside)BrechnockBrechnock(Woodside)(Woodside)CallianceCalliance(Woodside)(Woodside)James Price PointJames Price PointBroomeBroomeNorthernTerritoryCruxCruxShellEchucaEchucaShoalsShoalsIchthysIchthys(INPEX)(INPEX)KimberleyKimberleyAUSTRALIAAUSTRALIADarwinDarwinCapeCapeLondonderryLondonderryGas FieldLNG PlantAUSTRALIAAUSTRALIABurrupBurrup出所:各種情報・報道図14Browseガス田群と液化候補サイト、パイプラインルート(4)Browse LNG始動へ 既発見ガス資源のライセンス失効を恐れたBrowseコンソーシアムは、政府案への返答期限内の2009年12月末に、政府提案の受け入れを返答した。そして2010年2月上旬、Browse コンソーシアムは Kimberley海岸James Price Pointに液化基地を建設するガス田開発案に合意することを表明した。 資源開発促進策を明確にして、企業が従わないのであれば資源開発権を召し上げる権限をちらつかせた豪州政府側の姿勢に、Browse LNGガス田開発の先延ばしを目論んでいたノン・オペレーター・パートナーは屈しざるを得なかったと考えられる。 Browseガス田群に早期開発を主張していたオペレーターWoodsideにとって、豪州政府側のBrowse LNGコンソーシアムに対する強硬な姿勢は同事業推進に向けて要請 2009年12月2日、豪州連邦政府/西豪州政府は、西豪州沖合Browse LNGガス田群(Brecknock, Torosa, Calliance)の対象リテンションリース更新に際してオペレーターWoodside(権益50%)に、120日以内に州政府がLNGハブ候補に認定したKimberley海岸への液化設備建設を受け入れるか、あるいは経済合理性のある他の候補を提案するように申し渡した。併せて3年以内にBrowse LNGプロジェクトの最終投資を決定することを求めた。またBrowse LNGコンソーシアムに対して、この政府提案を受領した12月2日から30日以内に、政府提案受入可否の返答を求めた。 Browse LNG案件は、1970年代に主要ガス田(Torosa、Brecknock)が発見されていた。ガス田群の埋蔵量は14Tcfを超える大規模資産である。Browse LNGコンソーシアム各社の権益は次のとおりである(ガス田ユニタイズ後)。Torosa/BrecknockCallianceWoodside(オペレーター)BPChevronShellBHP Billiton合計50.0%16.67%16.67%8.33%8.33%100%40%18%18%11%13%100% 主要ガス田発見から既に30~40年が経とうとしているのにもかかわらず、当時コンソーシアム内でガス田開発への合意が無かった。以前は、沿岸までの距離が長く消費地に遠いため、適切なガス商業化方法がなく、ガスに上らなかったと考えられる。しかし現在田開発が俎の事情は、世界でも最も有力な複数石油会社から成るパートナー間のガス事業戦略が異なるために開発時期と上じそょう11石油・天然ガスレビューュい追い風になった。Woodsideは2月上旬にコンソーシアムが西豪州政府提唱によるJames Price Point液化サイト案受入に合意した後、直ちにプレFEED作業を発注した。(5) コンソーシアム各社で異なるLNG事業戦略:Browseガス田開発オプション これまでBrowse LNG事業が進展しなかったのは、コンソーシアム各社がそれぞれのLNG事業戦略を持ち、Browseガス田群開発方法に関して各社の利害が異なるためであった。Browseガス田をLNG事業として開発するオプションは、次の二つに絞られていた。a. James Price Pointに液化基地を新設(ガス田からKimberkey海岸液化サイトに300kmの海底パイプラインを建設、Kimberkey液化ハブ案)b. 既存の北西大陸棚(NWS、North West Shelf)プロジェクトへの原料ガス供給に使う(ガス田から液化サイトへの海底パイプライン距離1,000km) オペレーターWoodsideは「a . James Price Point液化基地案」を支持していたが、他パートナーはBrowseガス田開発方法の早期決定に反対しており、更に「b . NWSプロジェクトへのガス供給」を指向していた。オペレーターWoodsideと他パートナーとの異なる立場、利害関係を次に記す。① オペレーターWoodside:James Price Point液化基地案とガス田早期開発を主張 Woodsideは豪州で最大のガス埋蔵量を持つガス事業者であり、NWS LNGのオペレーターを務めている。同社の目下最優先の新規LNG案件は、2011年の生産開始を計画する北西大陸棚のPluto LNGである。しかしWoodsideは、Browse LNG対象ガス田群を含むBrowse地域およびSunriseガス田を含むチモール海に、より多くのガス資産を有しており、これら地域のガス資産商業化がPlutoプロジェクトに次ぐ課題である。 更にWoodsideは、西豪州政府が推奨するKimberley液化ハブ計画を全面的に支持していた。同計画が実現する暁には、同国のLNG企業で最有力のWoodsideが液化ハブの単独オペレーターになる可能性が高い。 Woodside CEOのVoelte氏は2009年11月末、Browse LNG案件に対する見解を次のように述べた。Browse地域の生産ガスをKimberley基地(James Price Point)で液化する場合、早ければ2015~2017年に操業を開始でアナリシスきるが、NWS基地にガスを供給する場合(1,000 kmパイプライン建設)、商業生産開始が2022~2023年以降へと先送りせざるを得ないので、Browseガス田資産価値が下がってしまう。Browseガス田がNWS LNG向けに原料ガスを供給する場合、既存のNWSガス田供給力減退の後となるため、2020年代半ば以降にずれ込む可能性が高い。Voelte氏はBrowse LNGの他パートナーにKimberley液化基地案優位性への再考を求め、もし賛同できないのであれば権益買い取りに応じるとも述べていた。② 他のパートナー:James Price Point液化基地案、ガス田早期開発に慎重な姿勢 他パートナーは、オペレーターのWoodsideが推進しようとするJames Price Pointを液化基地とする早期開発案に慎重な姿勢であった。彼らは、何の産業施設もないJames Price Pointに新たに港湾造成から始める液化設備建設に伴う投資額の大きさを懸念していた。既存のNWS LNGに原料ガスを供給する場合は、パイプライン新設を除いて新たな大型投資は発生しない。ちなみに、Browse LNGパートナーはすべてNWS LNGパートナーでもある。 また、Kimberley液化ハブが実現した場合にオペレーターになることが確実なWoodsideと比べると、ノン・オペレーター・パートナーのメリットは小さい。 更に、BP、Chevron、Shellは世界的に有力なLNG事業者であって、各社が優先的に推進する自社オペレーター案件を抱えている。とりわけChevron、Shellは、西豪州においても自社オペレーター事業を展開しようとしている。事業者によって、それぞれの案件推進の優先順位、事業戦略が異なる。a.Chevronの西豪州LNG案件 Chevronは有力LNG案件Gorgon、Wheatstoneのオペレーターであり、北西大陸棚ではWoodsideを大きく上回る最大のガス埋蔵量保有者である(図7参照)。 Chevronは2009年9月に大型案件Gorgonプロジェクトの投資決定を行い(1,500万トン/年)、更に2011年にはWheatstone LNGプロジェクトへの投資決定を予定している(当初液化設備能力860万トン/年、2,500万トン/年への拡張が可能)。当然ながら自社オペレーター案件を優先的に推進しようとしており、相次ぐ自社案件投資額も多額に達する。このため、自社案件以外の投資を当面控えたいとの思惑がある。2010.3 Vol.44 No.212ト件の優先順位が高く、権益比率の低いノン・オペレーター案件の優先順位は下がる。将来的に新規LNG案件の需要獲得競争は熾烈になると見られることから、自社LNG案件とBrowse LNGのマーケティングとのタイミングを重ねたくないとの思惑があると考えられる。 このように、投資額が大きく、LNG長期売買契約が投資決定の前提となるアジア太平洋地域のLNG案件には、各事業者の事業優先順位と戦略が複雑に絡み合う。Browse LNG案件の場合、ガス田開発権付与の権限を有する豪州連邦政府、自州の経済開発促進を望む西豪州政府の意向も大きな要素である。つまり将来の需要獲得競争で自社オペレーター案件を優先させたい各パートナーの事業戦略は、下手をするとガス資産のライセンス自体を失うリスクを抱えることになりかねない。Browse LNG事業者はガス資源開発権を維持するために、豪州連邦政府が求めるガス田早期開発と西豪州政府が提唱する液化基地サイトに合意した。 なお、やはりリテンションリース更改期を迎えるChevronのWheatstoneガス田の該当鉱区も早期投資を求められたが、既にLNG事業に向けたガス田開発を進める同コンソーシアムは政府要請に沿う作業を計画している。つ烈れ またGorgonの自社販売分はほぼ売買契約締結済みであるが、Wheatstoneは拡張計画分を含めてマーケティングの最中である(2015年以降に生産開始予定)。豪州には2015年以降に生産を開始するLNG案件が数多く、し長期契約の需要獲得競争が熾になると考えられる。LNG獲得に際して、Woodside以外のBrowse LNGパートナーは、自社オペレーター案件のマーケティングを優先させたいのが本音であろう。b. Shellの洋上液化案件Prelude LNG、クイーンズランド州のCBM-LNG案件 一方、ShellはGorgon、Browse、NWSのノン・オペレーター・パートナーであって、Chevronのように豪州に自社の大型オペレーター案件を抱えているわけではない。同社が推進するLNG案件は、Browse地域のPreludeガス田開発である(360万トン/年)。初めての洋上液化プロジェクトと目されており、洋上液化事業を目指す同業他社の関心を集めている。 更にShellはクイーンズランド州のArrow Energy社CBM資産に30%を出資しており、単独でCBM-LNG事業を実施するに十分なCBM資源を持つとされる。一方Browse LNGの自社権益は10%程度にとどまる。Shellに関してもChevronと同様に、自ずと自社オペレーター飛躍するオセアニアのLNG事業:展望と課題5. 豪州新規LNG案件の死角:コスト高、労働者不足(エンジニア+労働者)、資機材調達に限界(1)コスト高、資機材調達の限界 豪州沖合ガス田LNG案件は、概してコストが高いと言われる。2000年半ばから資機材、建設サービスコストは一貫して上昇してきたが、2008年の世界経済不況に伴って、まず資機材の価格が下落した。しかし、建設コスト、サービスコストは資材価格下落に比べてまだ高止まりしている。さらに、世界の石油ガス上流事業コストが下落傾向にある一方で、豪州LNG事業コストは高止まりしている。これには、豪州が国内労働力保護政策を採って海外からのエンジニア、単純労働者受け入れを厳しく制限している事情がある。完成が近いWoodside社Pluto LNG第1トレイン建設コストは、2007年9月に最終投資決定した際の投資額は120億豪ドルであった。これに対して2010年2月時点のコスト見積もりは10%程度増加しており、同社はコストオーバーランに悩んでいると言われる。WoodsideはBrowseガス田開発の資金調達の目的もあって、2009年12月に25億豪ドルの増資を実施した。Chevronの大型事業Gorgon LNGは、2007年に事業概要(液化能力1,000万トン)が発表されたのち、コスト情報の公開が無かったが、2009年9月に最終投資決定が行われた際の投資額は430億豪ドルと発表され(液化能力1,500万トン)、液化能力当たりの投資額は2倍近い増額となった。 2009年9月に最終投資決定を行なったChevron社Gorgonに続き、2010~2011年にかけて、西豪州Wheatstone、Pluto第2,3トレイン、クイーンズランド州の複数のCBM-LNG案件などが続々と投資決定を計画している。その後も商業化を計画する新規LNG案件が数多い。計画上では、2014~2015年に建設作業を行う可能性のあるLNGは15プロジェクトにも達する。しかし、資機材、労働力調達(労働力問題は後述)に限界があることから、同時期に多くの液化トレイン建設を並行13石油・天然ガスレビューオて行うことは不可能である。同時進行が可能なのはせいぜい3~4件との見方もある。 2010年に入り、豪州の金融系アナリストから、数多い豪州LNG案件の実現性に対する懸念が頻繁に発せられるようになった。計画される新規LNG案件のなかには物理的な制約で完工が遅れたり、実現できないケースの発生も考えられる。一般には優位性のある案件が販売先を確保して設備建設を先行させるため、販売先獲得・投資決定に遅れる案件は事業環境が相対的に不利になる可能性が高い。(2)労働力不足、ストライキ頻発 豪州は労働者の移入が厳しく制限されており、石油ガス産業、LNG産業では、エンジニア、労働者共に外国からの受け入れが難しい。したがって、複数の新規LNGプロジェクトの設備建設が開始されると、労働力調達が限界に達する可能性が高い。 豪州LNG業界は当然ながらこの労働力確保の難しさを認識しており、新規プロジェクトは基本設備を海外で組み立てて持ち込む方式を多用している。それでも、Woodside社Pluto-1トレイン(430万トン)では約3,000人、Chevron社Gorgon(1,500万トン)では1万人の新規労働力が国内で必要と言われる。 保護された豪州労働市場ではしばしばストライキが発生する。2009年12月以来、Woodsideが完工を急ぐPluto第1トレイン建設現場で頻発する建設労働者のストライキが報道された。Pluto LNG建設作業ではWoodsideが提示した新たな住居規定に不満を持つ建設労働者がストライキを行った。12月以降、約1300人の労働者が断続的にストライキに参加した。政府が違法ストライキに警告を発し、ストライキ禁止令延長等の措置を取ったこともあって、2010年1月末にストライキは一旦収束した。 更に、海運労働者のストライキもしばしば報道される。2009年末の2カ月にわたる港湾労働者のストライキでWoodside、BHP Billiton等石油ガス企業が被った損害は約100万豪ドル/日と言われ、豪州商工会議所は資源供給国としての豪州の信頼を損ねることへの懸念を表明した。海運業界では労働者側から法外な賃上げ要求が行われ、労働コストが上昇している。 労働争議に係るコストも、WoodsideのPluto建設コスト増額の一因になっていると考えられる。石油ガス業界では、今後5年で複数の新規LNG案件が立ち上がるため、熟練労働者不足などによる作業遅延やコストアップなどの障害が懸念されている。アナリシス 一方、未確定だが、労働力確保に向けた明るい材料もある。豪州連邦政府、西豪州政府ともに、石油ガス産業発展に際して熟練エンジニア育成を認識しており、これから対策に乗り出す構えだという(2010年1~2月、豪州石油業界紙、業界団体APPEA報道)。具体的には国内で石油ガスエンジニア育成のプログラムの充実を図り、また海外からの熟練エンジニア受け入れが検討される。こうした検討が軌道に乗って実現すれば、LNG産業の労働力不足が緩和される可能性もある。(3) 新規LNG事業遅れの懸念、LNGプロジェクト間の優劣格差が拡大する可能性 資機材調達の限界、労働力不足を背景として、新規LNG案件の立ち上げが遅れる懸念がある。先行する新規LNG案件で、設備の85%以上が既に完成している(2010年1月時点)Woodside社Pluto第1トレインであっても、生産開始予定時期2011年の実現を危ぶむ見方がある。2010~2015年にGorgon他の後続プロジェクトが続々と設備建設を開始すると、前述したように、労働力、資機材調達の限界によって、建設作業が滞る可能性が高い。 この過程で、プロジェクト間の優劣格差が拡大する可Curtis Island(Santos BG LNG Project)Fishernan’sLandingPort of Gladstone出所:Golar LNG、2009年3月図15Gladstone港およびGladstone LNG液化サイト2010.3 Vol.44 No.214キるオセアニアのLNG事業:展望と課題能性が考えられる。優位に立つ企業は、総合力で勝り、LNG需要家の信頼を勝ち得て早期にLNG売買契約を獲得でき、速やかに最終投資決定を実施できる企業である。西豪州沖合で大型LNG案件を計画するWoodside、Chevronは優位性のあるグループに入る。事実、2009年末までに日本の主要LNG需要家は次々と両社の新規LNG案件との契約に合意した。一般に、沖合ガス田案件を手掛ける企業にはLNG事業経験のある有力企業が多い。クイーンズランド州でCBM-LNG事業を計画するコンソーシアムのなかでは、BGグループによるQueensland Curtis LNGが優位な位置にあると考えられる。同社は世界的に有力なLNG事業者であり、LNG販路としては入札で獲得したチリ、シンガポール市場の他にCNOOCとの売買契約に合意している。 相対的に不利な立場にある企業は、規模、資金力で劣り、LNG需要を獲得できずに最終投資決定が遅れる企業である。投資決定が遅れると、労働力・資機材獲得競争で後手に回り、下手をすると事業を成立できない可能性がある。クイーンズランド州のCBM生産者には地元の小規模企業が多い。コンソーシアム内に有力企業がいないと、資金力、販売量で劣後することがあり得る。一事例を挙げる。Gladstone LNG(Fishernan's Landing LNG)を手がけるCBM生産者Arrow Energyは、アジア各地で果敢にCBM事業に取り組む新進気鋭の企業である。Gladstone LNGはGladstone港埋立地のFishernan's Landingに液化基地サイトを定め、2010年第1四半期の最終投資決定、2013年の生産開始を計画している。しかしまだLNG事業実績のないベンチャー企業LNG Ltd,.(液化事業者)、Golar LNG(海運)と組むコンソーシアムの力不足は如何ともし難い。Gladstone LNGはコンソーシアムの再編成を行い、2010年2月に、資金力のないLNG Ltd.,に代わってArrow Energyが液化部門100%をカバーすることが表明された。豪州の中小規模CBM生産者であるArrowに、LNG投資への負担が重くのしかかる。6. 世界LNG市場環境の悪化、カタールLNGのアジア市場への参入(1)LNG市場環境の変化 2008年以降、LNG市場環境は大きく変化した。第一に、米国の非在来型ガス生産の拡大に伴う米国のLNG需要の減少である。米国エネルギー省は、国内ガス生産の見方を上方修正するとともに、将来のLNG輸入想定量を下方修正した。今後着実にLNG輸入量を増やして一大LNG市場になると考えられていた米国市場への期待は大きくしぼんだ。 次に2008年の世界不況でガスを含むエネルギー需要が落ち込んだ。東アジアの生産拠点は大きな打撃を受け、LNGを含むガス需要見通しが下方修正され、回復に時間がかかると見られる。また不況をきっかけに、これまでエネルギーを多消費してきた米国など消費者のエネルギー消費姿勢に変化が見られ、エネルギーの効率的消費が叫ばれるようになった。世界的に低炭素社会を目指す流れから再生可能エネルギー利用も強く唱えられるようになった。世界景気が回復した後も、ガスを含む化石燃料の消費形態が従来と同じ水準に戻るのか否かは疑問視されている。(2)Browse LNG潜在購入者の変化 Browse LNGオペレーターのWoodsideは、PetroChina、台湾CPC(中華石油)を含むアジア需要家とBrowse LNGの販売交渉を実施していた。PetroChinaとは2007年9月にkey terms agreementを締結し、2013~2015年以降供給を開始する200~300万トンのLNGの売買条件を検討していた。このkey terms agreementが期限となる2009年12月末に、PetroChinaは契約を終結することを決めた。同社はBrowse LNGの事業進展が不透明となり、予定していた2013~2015年の供給開始が難しくなったことを理由として挙げた。一方で、2007年当時と2009年末ではLNG需給見通しが大きく変化している。2007年当時は将来のLNG需給タイト感が強かった。しかしその後の北米の非在来型ガス生産の拡大に伴うLNG必要輸入量の下方修正、2008年の世界不況に伴うガス需要の下方修正等により、LNG需給緩和化への見方が強くなった。2009年に行われたLNG長期契約交渉では、市場環境が買手市場に転じたと言われる。PetroChinaは2007年の売手市場当時に提示された売手有利の売買条件を一旦反故として、数多いオセアニア15石油・天然ガスレビューNG案件のなかから新たに有利な購入条件を引き出す狙いがあったと考えられる。 これに対して、台湾CPCはBrowse LNGに係るWoodsideとのpreliminary agreement期間を延長した。CPCはそれぞれ2015、2018年に終結するインドネシア、マレーシアとのLNG売買契約の代替プロジェクトを探す必要がある。また同社は、BrowseからLNGを購入するとともに、同プロジェクトの権益取得を希望していると言われる。(3)カタールのアジア市場への参入 カタールのLNGメガプロジェクトは、ExxonMobil、ConocoPhillips、Shell等メジャーと国営石油会社カタール石油との共同事業であり、米国および英国市場向け供給を目的に計画された。最近の米国LNG市場の縮小は、これら事業者にとって大きな誤算であった。カタールのメガプロジェクトは販売政策を方向修正して、従来比でアナリシスアジア市場での長期契約を狙うようになり、2008年には中国向けに複数の売買契約を締結した。カタール石油のアジア市場向けLNG販売政策は石油等価が基本方針であり長期契約の値下げは行わないと言われている。現時点でカタールの東アジア進出は限定的と見られている。しかし豊富なコンデンセート販売で収益を確保できるカタールLNG事業はコストが安いと見られ、LNG販売者として有利な立場にある。今後の世界LNG需給によっては、柔軟に販売方針を変える可能性がある。 将来は、カタールと豪州がLNG事業者の2大勢力となると見られる。高コストの豪州LNGプロジェクトがカタールプロジェクトと競う場合、コスト面で厳しい局面が考えられる。しかしカタール・プロジェクトパートナーのExxonMobil、ConocoPhillips、Shellはいずれもオセアニアにも自社LNG案件を持つため、実際の事業展開を想定することは難しい。7. オセアニアの新規LNG事業の展望 オセアニアの新規LNG案件は、世界の新規案件の中で、相対的に有利な地位にあることには疑問の余地がない。豪州にはLNG向けのガス資源が豊富である。国内需要規模が小さいため、ガス輸出余力が大きい。この点で、国内市場にガスを振り向けるためにLNG輸出を削減させようとするインドネシアなど東南アジアの既存LNG輸出国と大きく異なる。地理的に、LNG事業者がプレミアム市場と見なす東アジア市場に近い。また発展途上経済がほとんどのLNG輸出国の中にあって、豪州は例外的に先進経済圏に属しカントリーリスクが低い。 豪州新規LNG案件の課題は、前項までに挙げた高コスト、労働力不足、および数多い新規LNG案件が一斉に設備建設を開始する際に懸念される労働力と資機材調達の限界である。労働力不足は制度的な要因であり、政策変更によってある程度の対処は可能であるため、何らかの対策が望まれる。 太平洋経済圏にあって液化設備能力を拡大するオセアニアのLNG産業は、日本への主要エネルギー供給地としての性格をますます強める。両地域間の繋がりの深化が期待される。執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油(株)入社。から日本石油開発(株)にて海外の石油上流資産管理。上席研究員)。エリア・スタディーに興味を持っている(主に旧大陸)。2010年2月から「2012年世界ガス会議」を準備するガス市場委員会の東アジア・グループリーダーとしての任務を開始した。対外レースに備えて、週末の競技ボート練習を続けている。1991年2004年10月から現職(JOGMEC石油天然ガス調査グループ2010.3 Vol.44 No.216
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
地域2 大洋州
国2 パプアニューギニア
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国・地域 大洋州,オーストラリア大洋州,パプアニューギニア
2010/03/19 [ 2010年03月号 ] 坂本 茂樹
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