ページ番号1006406 更新日 平成30年2月16日

シェールガスのインパクト

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レポートID 1006406
作成日 2010-05-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術非在来型
著者 伊原 賢
著者直接入力
年度 2010
Vol 44
No 3
ページ数
抽出データ 懸念、開発技術の進歩に伴い、地下からの回収が難しいと考えられていたく迫ぱひっ・  エネルギー需給の逼「非在来型」の天然ガス*1が、米国において、シェールガスを中心に注目されている。・  これは天然ガスは化石燃料のなかで同じ発熱量に対する二酸化炭素の排出量が少ないため(石炭10:石油8:天然ガス6)、天然ガス供給増への期待感の高まりと見てとれる。・  本稿は、まず近年一変した米国のガス需給見通しとガス市場に与えた影響に触れる。次にそれをもたらしたとされる「シェールガス」をまとめる。・  次に非在来型天然ガスとして、タイトガスサンド、コールベッドメタン(CBM)、シェールガスという三つの対象に注目し、定義と資源量について概説する。シェールガス開発の主要技術(水平坑井、水圧破砕、マイクロサイスミック)についても概説する。開発技術の一見地味だが、たゆまない進歩(Quiet Revolution)が確実に天然ガスの可採埋蔵量増加につながっていることを読者に知ってもらうために、確認されたシェールガス構造の大きさと生産量の伸びを紹介する。・  さらに、開発による周辺環境へのインパクトを「開発推進派と環境派の攻防」の視点から論じる。・  シェールガスの開発は米国中堅企業により主導されたが、その資源としての規模の大きさに、大手石油会社も続々参入している。日本の商社も増大する生産量に注目し、参入を開始したところ。技術の進歩が20世紀までは地下からの回収が困難と考えられていた「シェールガス」を米国の新たな巨大天然ガス資源へと押し上げた。この非在来型ガスを在来型ガスへ押し上げるうねりは、世界的展開を見せている。まずは、カナダ・欧州・中国ほかへの普及が注目されるところである。これらの地域での開発課題となる技術・インフラのリスクと、それらがガスの生産コストに及ぼす影響に注目すると、普及の速度が見えてくると筆者は感じている。・  最後に、今後の技術進歩への期待も込めて、天然ガス供給源としてのシェールガスの広がりを石油工学者(Petroleum Engineer)の一人としてまとめたい。シェールガスのインパクトアナリシスJOGMEC調査部伊原 賢1.一変する米国のガス需給見通し(ガス市場に与える影響) エネルギー需給の逼迫懸念、開発技術の進歩に伴い、回収が難しいと考えられていた「非在来型」の天然ガスが、米国のシェールガスを中心に注目されている。その様子は、ガス生産量が2005年から年率4%で増加していることからも読み取れる(図1)。 2000年以降、ガスの確認埋蔵量は回復し、第1次のピークとなった70年代に近づいている(図2)。2008年末には240Tcfに達し、2000年より8年で約50%も上昇した。2005年からわずか3年で2割以上(40Tcf)も増えた計算となる。 一方、米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)のエネルギー情報局(Energy Information Administration:EIA)によれば、米国のガス需給のメキシコ湾沖合億cf/日在来型 減退6005505004504001977198219871992199720022007年出所: 米国エネルギー省図1米国のガス生産量推移(1977~2008年)15石油・天然ガスレビューAナリシス2004年見通しでは2003年以降に需要が急増し、国産ガスの増加も追い付かず、LNGを大量に輸入する必要があり、2025年にはガス消費量の28%が国外から輸入されるLNGとパイプラインガスによりカバーされるとの見通しであった(図3)。 それが、2010年EIAの見通しでは2008年末で13%程度あった輸入量は2035年でも消費量の6%ほどにとどまるとしている(図4)。 LNGは現在よりも必要ないとの予測であり、それはLNG輸入量統計にも表れている。2008年、米国のLNG受け入れ量は能力の10%以下であった。米国内の非在来は型天然ガス供給増が堅調なため、10%以上だと市場に捌けない状態にあるということだ。米国市場をあてにしていたLNGは欧州へ仕向け地変更を余儀なくされ、LNGスポット価格を、過去6カ月の原油価格(ブレント)準拠のガス価格より押し下げる方向に働いた。米国向けLNGの大半が必要でなくなり、激安のスポットLNGとして欧州市場に流入したのだ。欧州のガス輸入業者には現状の石油製品価格準拠のガス購入長期契約に再交渉の動きがあると聞く。北米における非在来型ガスの生産増は、米国やカナダのLNG輸入量に減少の効果をもたらした。 また、米国の天然ガス価格は熱量換算で2005年ごろから原油リンクから外れつつある。米国の天然ガス相場は2008年7月の$13.69/MMBtu(百万Btu)をピークに、2009年8月には$3.31/MMBtuまで急落した(図5)。その後は$4/MMBtu近辺で推移している。天然ガス相場の急落には、世界的不況によるガス需要の減少も追い打ちをかけた。 この米国の天然ガス需給見通しに大きな変化をもたらした主役が、非在来型天然ガスの一つに数えられる「シェールガス」で、世界の注目を浴びている。次にそのシェールガスについて、見てみよう。Tcf350300250200150100196919761983199019972004年Tcf=兆立方フィート出所: 米国エネルギー省ホームページtrillion cubic feet3025201513%13%101990出所: 米国エネルギー省EIA20052010199520006%6%20152020202520302035年25201510502008 $ per mmbtu図2米国の天然ガスの確認可採埋蔵量図4米国の天然ガス需給見通し(2010年EIAによる)2010.5 Vol.44 No.316Apr-10Jan-10Jul-09Jan-09Jul-08Jan-08Jul-07Jan-07Jul-06Jan-06Jul-05Jan-05Jul-04Jan-04Jul-03Jan-03Jul-02Jan-02Jul-01Jan-01Jul-00Jan-00Jul-99Jan-99Jul-98Jan-98Jul-97Jan-97Jul-96Jan-96Jul-95Jan-95Jul-94Jan-94Natural GasCrude Oil出所: EIA;Projections:2004 Annual Energy Outlook, 2005 Annual Energy Outlook出所: 米国エネルギー省EIA、NYMEX図3米国の天然ガス需給見通し(2004年EIAによる)図5熱量換算で2005年ごろより原油リンクから外れつつある米国の天然ガス価格Vェールガスのインパクト2.シェールガスの登場 米国の天然ガス需給見通しに大きな変化をもたらし、欧州のガス市場にも少なからぬ影響を与えたことなどから、最近日本でも、「シェールガス」という言葉が、エネルギー関係者のみならず一般の関心も引くようになった。表1は筆者がさる1月、名古屋のラジオ局の取材*2に応じた時に、「シェールガスとは?」という質問と回答についてまとめたもの。ざっと眺めていただくと「世界の天然ガス供給に少なからず影響をもつ天然ガス」であることがお分かりいただけるだろう。 米国におけるシェールガスの生産量は、2000年の1.2Bcf/d(非在来型ガス生産全体の2%)から2008年には4.7Bcf/dと全体の8%を占めるまでに成長した(図6)。(1Bcf/d = 10億立方フィート/日) このシェールガスの存在は今後ますます大きくなると米国エネルギー省DOEは予測している(図7)。 米国におけるシェールガス開発は国内に天然ガス需給緩和の効果をもたらした。需給ギャップを埋めると期待された輸入LNGは経済合理性の観点から、その影は薄くなっている(図8)。 米国の天然ガス供給では、シェールガスとアラスカか表1シェールガスとは?質問1.そもそもどんなガス?性質・特徴・液化天然ガスなどとの違いは?・メタンが90%以上の天然ガス。・ 日本へ輸入されている液化天然ガス(LNG)はエタンやプロパンも少量含有する高発熱量LNG(> 1,085 Btu/cf)が主流。これに対し、シェールガスは低発熱量に分類。質問2.どういう場所に、どんな状態で存在?色は?ん岩が 地下100~2,600mに眠る固く、薄片状にはがれやすい頁(シェール)にガスが含まれる。泥岩の一種。・地下深く、圧密作用を受け石油や天然ガスの根源物質が熱分解を起こし、微細な割れ目(ガスの流路は10-18m2と、そのままでは取り出すこと不可)に閉じ込められたガス。2000年代に入り強い圧力(500~1,000気圧)の水をあててシェールに人工的に大きな割れ目をつくり、ガスを取り出す技術(水平坑井、水圧破砕、割れ目の広がりモニタリング)が確立。水圧破砕には一つの坑井に多量の水(3,000~10,000m3)を用いるので、水の確保や坑排水処理に課題。けつ・ガスは無色。質問3.世界ではどこの国などに埋蔵されている?・ 世界の資源量16,000Tcf。うち20%が地下から回収できるとすると3,200Tcfもの埋蔵量。北米の資源量は3,800Tcf。米国の埋蔵量500Tcf以上。カナダでも生産開始。ほか中国や欧州で商業生産検討中。・ ちなみに、2009年世界の天然ガスの確認残存埋蔵量は6,400Tcf(米国は240Tcf)。質問4.最近、米国で採掘?なぜ?どのくらいの量?・ 米国では取り出しやすい(在来型の)ガス生産が減少。カナダからのガス輸入も減少。LNG輸入も検討したが、自国に豊富に眠るシェールガスの資源量に注目。・ 取り出す技術の適用ノウハウが急速に進歩し、産出価格も低下。・ 2008年世界の天然ガス消費量106Tcf(米国23Tcf、日本3.3Tcf)。米国のシェールガス生産量1.7Tcf(日本の消費量の半分以上)。・ 「米国発のシェールガス革命」とも呼ばれ、米国の非在来型ガス産出量は全産出量の50%超。米国のガス生産量(2009年 21Tcf)はロシア(20.5Tcf)を上回り、世界一。質問5.その影響が世界で出ている?日本は?・ 天然ガスは化石燃料のなかで同じ発熱量に対する二酸化炭素の排出量が少ないため(石炭10:石油8:天然ガス6)、天然ガス供給増への期待感が高まる。・天然ガス全体の供給が増え、ガス価格の安定につながる。・ 日本は地質年代が新しいため、シェールガスの商業生産は期待薄。単位: 1Btu=0.252kcal, cf=立方フィート、1フィート=0.3048m、Tcf =兆立方フィート出所:筆者作成17石油・天然ガスレビューAナリシスPipeline Imports(Canada and Mexico)LNG ImportsU.S. Natural Gas Marketed Production2.42.221.81.61.41.21tcf per monthJul-2009Oct-2008Jan-2008Apr-2007Jul-2006Oct-2005Jan-2005Apr-2004Jul-2003Oct-2002Jan-2002Apr-2001Jul-2000Oct-1999Jan-1999出所: 米国エネルギー省EIA図8米国内ガス市場における輸入LNGの存在感小さくtrillion cubic feet25990199520002005201020152020202520302035年20151050150403020100年らのガス生産増(2035年でそれぞれ6Tcf、1.87Tcf)への期待が大きい(図9)。米国のガス供給の観点からは、非在来型ガスの存在感が増しており、2008年には10.3Tcfと国内生産の50%を超えた(図6)。 CERA、PIRA、WoodMackenzie、DOEほかの専門機関は、米国の天然ガス価格を2030年まで$4~$8/MMBtuのレンジで推移すると予測している(図10)。非在来型ガスの開発技術(水平坑井、水圧破砕、マイクロサイスミック)の進歩により、非在来型ガスの開発コストが熱量換算で在来型ガスと同じ価格帯($5/MMBtu)で生産されるようになったことが価格安定予測の裏付けとなっている。 次に、筆者は石油工学者(Petroleum Engineer)の見地から、この非在来型ガスの定義と資源量について述べる。CBMShale gasUnconventional gas as share of total production (right axis)%60Tight gasbcm300250200150100500454035302520151050Production Capacity(Bcf/day)図7米国の非在来型ガス生産予測図10米国の天然ガス価格予測2010.5 Vol.44 No.318HistoricalHistoricalCERACERA20PIRAPIRAHistoricalHistoricalCERACERAPIRAPIRAWoodMackenzieWoodMackenzieUS DOEUS DOEIEA US import priceIEA US import priceWoodMackenzieWoodMackenzieUS DOEUS DOEIEA US import priceIEA US import price1510502000200420092014201920242029年Priice Projections US$/mmbtuShale gasShale gasCoalbed Coalbed Natural GasNatural GasTight GasTight Gas19901992199420102012出所: DOEレポート「Shale gas primer 2009」1996199820002008200220042006201420162018年出所: 米国エネルギー省EIA1990199219941996199820002002200420062008bcm=10億立方メートル出所: 米国エネルギー省EIA出所: 米国エネルギー省EIA図6米国内ガス生産に対する非在来型ガスの存在感大きく図9米国の天然ガス供給内訳の実績と予測?って生産余力は1986年に16Bcf/dまで膨らみ、1985年から2000年までガスバブルの時代を迎えたのだ。 バブル期の1995年にはガス価は$1.58/MMBtuまで下がって需要が伸び、生産余力は4Bcf/dまで落ち込んで、米国の天然ガス消費の伸びをどう支えるかが課題となった。2000年に入ると、LNG輸入も念頭に入れつつも、その救世主としてシェールガスに注目が集まった。2002~2006年にかけてシェールガス開発技術の3点セット(水平坑井、水圧破砕、マイクロサイスミック:次章4で詳述)がその現場での適用ノウハウに磨きをかけた水圧破砕/フラクチャリング貯留層内に人工的にフラクチャーを形成・伸展させ、流体の流路を確保フラクチャー長さフラクチャー幅シェールガスのインパクト3.非在来型天然ガスの定義と資源量7123456時間経過 21世紀米国での天然ガス需要の補完と天然ガス価上昇に支えられ、かつ、水圧破砕/フラクチャリング技術(図11)の進展に伴い、2008年には米国の天然ガス日産量56.2Bcf/d(年20.56Tcf)の50%も非在来型天然ガスから供給された(図6に見るように、タイトガスサンド33%、コールベッドメタン/CBM 9%、シェールガス8%)。北米を中心に天然ガスの新たな供給源として注目されていることは、既に述べた。 図12は1979年にMastersが提唱した「天然ガスの資源量トライアングル」と呼ばれるもので、非在来型天然ガスの定義によく用いられる。賦存環境が在来型天然ガス資源よりも劣るタイトガスサンド、CBM、シェールガスの開発には、技術の進歩と一定水準以上のガス価が必要である。ただし、非在来型は在来型よりも豊富な資源量が魅力だ。 「1980年以降の米国内ガス供給の動き」を時間軸でフローにすると図13のようになろう。 産業用へのガス使用拡大を目指し、連邦政府や州税の控除対象として80年代から注目されたタイトガスサンドの開発には、垂直井に坑井刺激(水圧破砕 図11)を施しガスを産出していたが、最近の対象は炭酸塩岩・火山岩・石炭層・シェールに広がりを見せており、水平坑井や多段階フラクチャリングが適用されるようになってきた。具体的には、北米を中心に90年代初頭にはコールベッドメタン/CBMにも注目が集まった。その効果がフラクチャーの伸展ジェルプロパント高粘性流体であるジェルを穿孔(せんこう)部から圧入して、貯留層である岩石を破砕しフラクチャーを形成する。ジェルの圧入を続け、フラクチャーの長さや幅を大きくする。形成されたフラクチャーを半永久的に支持するため、プロパントと呼ばれる砂粒状の物質を徐々にジェルに混ぜ圧入する。プロパントの濃度を徐々に上げる。規定量のプロパントを送り終わったら、圧入ポンプを停止する。圧入されたジェルは熱により分解され貯留層に浸(し)み込むため、形成されたフラクチャーは徐々に閉じようとする。しかし、プロパントがフラクチャーを支持し完全に閉じるのを防ぐので、ガスの流路は確保される。貯留層の小さな隙間に溜(た)まっているガスは、フラクチャーを介して坑井内に流れ込み、経済的な生産性を確保することができる。出所: 石油技術協会資料図11水圧破砕技術の概要Gas shalesLow quality.001mdGas hydrates1978:NaturalGas Policy Act;Industrial Plantand Fuel Use Act1986:ProductiveCapacity SurplusPeaks at 16 Bcfper Day1995:Lowest NaturalPrice of the Gas BubbleEra-$1.58 per MMBtu;Productive CapacitySurplus at 4 Bcf per Day2000-01:Energy Crisis2007-mid-2008:US Lower 48Production Surgesby Almost 7 Bcf perDay or Almost 14percent1980:WindfallProfits Tax-Tax CreditIncludes Section 291990:USUnconventionalGas at 5 Bcf per Day2000:USUnconventionalGas at 14 Bcf perDay2002-06:ExperimentingTechnologywith19801980199019902000200020092009Increased TechnologyIncreased PricesSmall volumes;easy to developHighqualityMediumquality1,000md10mdLarge volumes;difficult to developTight gasCoalbed methane0.1md1md=9.87×10-16m2出所: SPE 103356論文出所: 米国エネルギー省EIA図12天然ガスの資源量トライアングル図131980年以降の米国内ガス供給の動き19石油・天然ガスレビューハにより、米国における非在来型ガス(タイトガスサンド、コールベッドメタン、シェールガス)の生産量は急上昇を続けている(1990年5Bcf/d、2000年14Bcf/d、2007~2008年の伸び7Bcf/d)。 図14に非在来型天然ガス資源の賦存環境例を示す。米国のテネシー州とアラバマ州にまたがるチャタヌーガ堆積盆地では、非在来型天然ガスの3点セットであるタイトガスサンド、CBM、シェールガスが確認されている。 非在来型天然ガスの資源量の分布としてよく使われるデータを表2に示す。北米を中心に多くの資源量が期待されており、事実開発は北米を中心に展開している。アナリシスCBMタイトガスサンド在来型ガス田シェールガス出所: USGS資料を基に作成図14非在来型天然ガス資源の賦存環境(米国のチャタヌーガ堆積盆地) 表2非在来型天然ガスの期待資源量分布Coalbed Methane(Tcf)Shale Gas(Tcf)RegionNorth AmericaLatin AmericaWestern EuropeCentral and Eastern EuropeFormer Soviet Union Middle East and North AfricaSub- Saharan AfricaCentrally Planned Asia and ChinaPacific (Organization for Economic Cooperation and Development)Other Asia PacificSouth AsiaWorld3,017391571183,9570391,2154700399,0513,8402,116509396272,5472743,5262,312313016,103Tight-Sand Gas(Tcf)1,3711,293353789018237843537055491967,406Total(Tcf)8,2283,4481,0192355,4853,3701,0975,0943,48786223532,560DISTRIBUTION OF WORLDWIDE UNCONVENTIONAL GAS RESOURCES (AFTER ROGNER 1996, TAKEN FROM KAWATA AND FUJITA 2001)出所:SPE 103356論文4.シェールガスの開発技術(水平坑井、水圧破砕、マイクロサイスミック) シェールガスは在来型ガスと比べ貯留層は不均質でガスの包蔵メカニズムが複数ある。過去20年のこの複雑な貯留層特性への理解は掘削・仕上げ・生産技術の進歩により深まったといえる。具体的には水平掘りや岩石に人工的に割れ目をつくる水圧破砕(図11)といった要素技術の進歩が重要だ。 シェールガスの開発は技術主導型といわれ、製造業・アートに近い技術(図15)を用いる。新規のガス開発事業のため、米国ではメジャーではなく中堅企業中心の事業としてスタートした。複雑できめ細かな作業が必要なことから、作業コントラクターの数が在来型ガス開発に比べ多い。 生産減退率は高く、1坑あたりの生産レートは在来型低いので、生産量確保には従来型に比べオーダーが一桁けた2010.5 Vol.44 No.320ウえ理解し、実践すれば効率的に経済合理性をもってシェールガスを開発できるわけではない。それには、シェールガスを経済的に地下から取り出す「技術サイクル」を習得する必要がある。すなわち、地下に眠る資源ち量を可採埋蔵量に変え得る緻 まず地化学検層データからシェールの鉱物組成(炭酸塩、黄鉄鉱/Pyrite、粘土、石英、Total Organic Carbon/TOC)を分析する。岩石中のTOCを知ることで、マトリクスの孔隙率と水飽和率が分かり、シェールの浸透率とシェール中のガス量(孔隙内とシェールの有機物に吸着の2種類)の推定につながる。シェール中の有機な技術検討が必要だ。つ密みシェールガス層に掘られた水平坑井を横切るフラクチャー分布(マイクロサイスミック) 図15シェールガスの開発技術200m Lateral SpacingFractureFractureStimulation Stimulation 出所: カナダNational Energy Board出所: SPE 107053図16一つの坑口位置から複数の水平部分をもつ坑井図17水平坑井と多段階の水圧破砕のイメージ21石油・天然ガスレビューシェールガスのインパクトよりも多くの井戸数を要する。したがって、一つの坑口位置から複数の水平部分をもつ坑井も出現した(図16)。水平部分の長さが2kmを超える水平坑井や水平部分への多段階水圧破砕(図17)も広く適用されるようになってきた。 割れ目が貯留層中に広がらず、上下に成長し、帽岩(キャップロック)を壊し、他の貯留層や帯水層につながってしまうと、ガスの回収に支障をきたす。そこで、割れ目に関する情報を少しでも多く得るために、割れ目そのものを観測する技術開発が進められてきた。マイクロサイスミック技術(図18)により、できたフラクチャーの成長や広がりも把握できるようになってきた。 ところで、マイクロサイスミックとは、割れ目が形成される時に発生する地震波(P波、S波)を観測し、解析して割れ目の広がりを評価し、ガス回収の効率向上に必要な情報(割れ目のマッピング)を提供する技術である(図19)。2000年以降、マイクロサイスミックには現場で6,000件以上の適用事例がある。しかし、新しく高度な技術であり、技術プロセス(作業の計画、実行、分析、解釈)には厳密さを加える必要があると言われる。 水平坑井、水圧破砕、マイクロサイスミックという、三つの要素技術圧入流体中に含まれた固形物のネットワーク/Fiberが機械的にプロパントを閉じ込めながらフラクチャー内に移動、Fiberは熱により分解され貯留層に浸み込む 米国におけるガス生産量と可採埋蔵量の激増(シェールガス革命 500?780Tcf埋蔵量が期待)。貯留層特性:長い間、根源岩や貯留層構造のシール(蓋)と見なされてきた水平坑井と多段階フラクチャリングフラクチャリング後の貯留層評価 生産量と可採埋蔵量増に必要な技術サイクル 出所: Schlumberger資料よりAナリシス2010.5 Vol.44 No.32219951996199719981999200020012002200320042005200620072008200020052010年1,4001,2001,000800600400200Mcf per Day01995出所: SPE資料Treatment wellMonitoring wellMicroseismReservoirHydraulic fracture出所: ICEP図19微小地震/マイクロサイスムから出る地震波を観測井でモニタリング物はガス源のみならずガスの吸収媒体であることに留意しなければならない。地化学検層データからは粘土分のタイプも分かり、それが水圧破砕に用いる圧入流体の仕様を決めるのに役立つ。 次にElectrical ImagingとSonic検層データからフラクチャーを貯留岩元来のものと掘削上のものに分類し、シェール中で最も浸透率の高い個所を探しあてる。そこに穿孔とフラクチャリングを施し高生産レートを目指す。地層圧力の計測も必要だ。水平掘りや傾斜掘り、MWD(Measurement While Drilling)、ガンマ線検層、Rotary Steerable System他の掘削・検層技術を適用し、貯留岩特性を把握し、貯留岩内の流体挙動シミュレーションを実施し、その結果を坑井刺激法に的確に反映させ、ガスの生産量および可採埋蔵量増に結びつける。シェールガスを開発するオペレーターには、この技術サ図21米国におけるシェールガス生産レートは技術進歩によりV字回復イクル(図20)の理解と適切な実践が求められる。 技術サイクルの適用ノウハウを身に付けたオペレーターが手がける開発プロジェクトでは、作業の失敗が減って効率も高まり、初期生産レートもV字回復が見られる(図21)。総じて、ガスの産出コストも低下傾向にある。 結果として、最初のガス生産レートの効率化、埋蔵量推定精度と経済性の向上につながっている。この技術リスクの軽減が、米国ではシェールガス開発に投資が集中するようになった理由だ。この技術進展と一定のガス価が維持されれば、シェールガスの開発は世界中に進展を見せることとなろう。出所: ICEP図18マイクロサイスミック技術(微小地震/マイクロサイスムを観測・分析し水圧破砕でできた割れ目を評価)出所: Schlumberger図20シェールガス開発に適用される技術サイクル0042006年548Number of Frac jobs per Well679>10123500450400350300250200150100500Gas Wells出所: SPE資料図24Barnettシェール構造におけるフラクチャリング段数の増加り(図24)、シェールに眠る多くのガスを取り出せるようになってきた。このシェール構造では、ガス生産において鍵となるビジネスアイテムも明確になってきた(表3)。 Barnettシェールでの開発成功を受けて、米国の中堅企業は、他のシェールガスを求めて国内のシェール層を掘削し、ガスの産出確認を行っている。2005、2006年にカンザス州のFayettevilleや北東部のMarcellusなどで相次いでガスが確認され、2007年にはChesapeake社がルイジアナのHaynesvilleシェールガスで生産テストを行い、期待以上の生産結果を得た。新たなハイポテンシャルのシェールガスを確認し、賦存状態などが把握され始めたのだ(図25、表4)。北米のシェールガス構造の広がりは広範囲でシェールガスの埋蔵量は500Tcf以上あると期待されている。ちなみに、2009年末世界の天然ガスの確認残存埋蔵量は6,400Tcf(米国は240Tcf)であるので、その量は膨大だ。米国の天然ガス生産者には、シェールガス開発に従事する中堅企業がずらりと姿と見せている(表5)。 シェールガスの供給コスト(図26)について見てみよう。Marcellus/Barnett Core/Haynesvilleシェールの場合、$3~4/mcf($17~22/boe)。これら開発の進むシェール構造ではガス価が$3/MMBtuを下回っても生産は維持されたが、それが長期間続いても生産を維持できるかについては、不明な点(減退曲線の予測や可採埋蔵量の推定精度向上は今シェールガスのインパクト5.シェールガス構造の確認 米国のシェールガス開発は2000年代に入って大きく変わった。シェールガス生産量は2000年に1.2Bcf/dに過ぎなかったが、2008年には4.7Bcf/dまで増加している。これはテキサス州にあるBarnettシェールガスからの生産量が急増しているためで(図22)、シェールガス革命は、このBarnettシェールガス開発の成功がブレークスルーとなった(図23)。 シェールガス生産の拠点となっているテキサス州のBarnettシェール構造では、ガスの貯留層となるシェールに多段階でフラクチャリングを施すことが可能となBarnett20072008年2006199919982005出所: DOEレポート「Shale gas primer 2009」20042003200220002001図22エリア別のシェールガス生産量HaynesvilleBakkenArkomaWoodfordAntrimFayettevilleFort WorthBarnett6,0005,0004,0003,0002,0001,000MMcf/Day0Barnett シェールガスの成功がブレークスルーに(2002?2004年)・生産量は2002年に0.2Bcf/d、2008年に3.7Bcf/d、増加・ガス生産井10,539坑。2008年の年間掘削坑数約3,000・水平坑井、フラクチャリング、イメージング技術など・技術面では、Devon社がリーダーシップ・操業者:229社・生産上位Devon、XTO Energy、Chesapeake、EOG Energy、EnCana同時並行で、新たなシェールガスを相次ぎ確認米国4大シェールガスBarnett, Fayetteville, Haynesville,Marcellus。加えて、Muskwa(カナダBC州Horn River Basin)Chesapeake, XTO Energy, EnCanaなど中堅企業が中心シェールガス探鉱開発コスト(2008年):Chesapeake 2ドル/百万Btu、XTO 1.1?1.6ドル/百万Btu、 Southwestern 1.2ドル/百万Btu(+生産コスト1?2ドル/百万Btu)    開発技術の適用度合いで差出所: 各種資料より作成図23新たなシェールガス構造の確認23石油・天然ガスレビューAナリシス表3Barnettシェールガス生産で鍵となるビジネスアイテム9項目① ガス市場② インフラ③ 供給チェーン④ リース条件需要良好。(Carthage hubでの)ガス価はHouston Ship Channel渡しでヘンリーハブの5~10%減。供給能力アップ(8.6Bcfd)に伴いヘンリーハブとの価格差は$0.1~0.2/mcfに縮小している。大手例えばDevon社は5,000kmにも及ぶパイプラインやガス処理設備を持つ。中小は大手に輸送タリフを支払い、生産ガスをパイプラインへ流す。Barnett, Woodford, Haynesvilleシェールの開発業者は東に向かう10Bcfd規模のパイプラインを共同で敷設する計画あり。多くのパイプライン網につながることでヘンリーハブとの価格差は狭まっている。2008年は開発スピードが加速化し、仕上げやパイプラインへのつなぎ込み業務が一時滞った。2006年には、2~3社の大手サービス業者がこれら業務の寡占状態にあったが、2007年以降は中小業者もサービス業務に参入してきた。その結果、リグレートやフラクチャリングコストが下がってきた。2008年後半の景気低迷による予算不足やWahaハブにおけるガス価低迷から掘削活動は低下した(仕上げされていない坑井は450坑にも上る)。土地のリース契約は地主と締結。リース契約では3年以内に掘削することになるが、地主は地方政府より開発活動に協力的。都市部での掘削許可は難しいが、Chesapeake社は2009年4月Fort Worth市に開発マスタープランを提出。Texas Railroad Commission(テキサス州鉄道協会)は比較的早く7日で掘削認可を出す。⑤ 環境規制都市部における掘削規制/ルール(坑口位置の限定)。⑥ 水の確保と廃棄 ⑦ 税The Barnett Shale Water Conservation and Management Committee(BSWCMC). 2007年北テキサス干ばつの際の非難のターゲット。Texas Railroad Commissionによれば、2008年Barnett Shaleには117坑の圧入井、三つの排水処理設備、排水圧入井24坑。Devon社は典型的な仕上げで使われる350万ガロンの水の24%をリサイクル。2008年リースボーナス$20,000~$28,000/エーカー、サインボーナス$5,000~$10,000/エーカー、ロイヤルティー25%。高コストの坑井には数パーセント程度の減税措置あり。テキサス税制。⑧ 埋蔵量85%のエリアで商業生産可能(40エーカーの間隔で計24,785点の掘削個所)。水平坑井(1坑あたり掘削から生産開始まで30日で2万バレルの液体も併産)。500Bcf生産(40エーカーの間隔で386坑井、掘削リグ5基、リース契約から生産開始まで1年、3D震探、マイクロサイスミック)。熱量1,030Btu/cf。⑨ 生産性/経済性1エーカー=約4,047m2出所: 各種資料より作成BakkenBakkenAntrimAntrimMarcellusMarcellusFayettevilleFayettevilleBarnettBarnettWoodfordWoodfordBarnettBarnettHaynesvilleHaynesville出所: Map Date:March 16,2009 Date sources:Published studies図25有望なシェールガスエリア2010.5 Vol.44 No.324Vェールガスのインパクト表4開発投資に向かうシェールガスのエリアシェールガス名(州)概要Barnett(テキサス)Fayetteville(アーカンソー)3.7Bcf/d(2008)1981年発見面積 5,000sqm深度 6,500~8,500ft層厚 100~600ft2005年確認面積 9,000sqm深度 1,000~7,000ft層厚 20~200ft主な事業者Devon,XTO Energy,Chesapeake,EOG Resources,EnCanaSouthwestern,Chesapeakeポテンシャル・44Tcf(可採埋蔵量)・ Chesapeakeによる最終累計生産量は最大75Tcf・41.6Tcf(可採埋蔵量)・ Chesapeake推定の最終累計生産量は最大75TcfHaynesville(テキサス、ルイジアナ)2007年確認面積 9,000sqm深度 10,500~13,500ft層厚 200~300ftChesapeake,EnCana,Petrohawk・251Tcf(可採埋蔵量)・ 2008年3月、Chesapeake保有エリアで7.5・ Chesapeake推定の最終累計生産量は最大~20Tcf発見と発表。500Tcf超Marcellus(米国北東部)2006年確認面積 95,000sqm深度 4,000~8,500ft層厚 50~200ftHorn River Basin(加BC州)層厚 530ftChesapeake,Atlas Energy,Range ResourcesApache-EnCana,EOG Resources,Nexen・262Tcf(可採埋蔵量)・ Chesapeake推定の最終累計生産量は最大500Tcf超・ EnCana-Apache連合、EOG、Nexenを合わせて、18~31Tcf Recoverablesqm=平方マイル ft=フィート出所: 各種資料より作成。可採埋蔵量はDOEの「Shale gas primer 2009」より表5米国のガス生産量上位12社ランキング2008年生産量 (百万cf/d)2008年生産量 前年比(%)2008年米国での年間掘削数(探鉱井・開発井合計)2009年3月27日時点掘削操業数メジャーBPConocoPhillipsChevronExxonMobilShell中堅企業ChesapeakeAnadarkoDevonXTOEnCanaEOGWilliams1389122456710112,1572,0911,5011,2411,0402,1192,0491,9821,9051,6331,1631,094出所: 各社の2008年度財務報告書およびChesapeake社ホームページ -0.8 -8.8-11.6-15.5 -8.018.2 7.114.030.721.519.819.83848498604424931,7331,5901,0691,247750(ガスのみ)1,542(ガスのみ)1,0542730121218103 282964304511後の課題)も残されている。1坑あたりの平均可採埋蔵量は3.2Bcf。Barnett Non-Core/Fayetteville/Woodfordの場合は、$5~6/mcf($28~34/boe)となっている。ヘンリーハブの天然ガスは熱量換算で中央アパラチアの石炭と同等の安い価格帯($5/MMBtu:石炭か天然ガスかの需要分岐点)で推移しており、Marcellus/Barnett Core/Haynesvilleシェールの場合、十分な経済性をもってガス生産が行われていると見る。ちなみに垂直井からの在来型ガスの供給コストは約$1/mcfである。 このように、シェールガス構造の広がりと競争力のある供給コスト(探鉱・開発・操業コスト、すなわちCAPEX+OPEX)は「米国発のシェールガス革命」とも呼ばれ、米国の非在来型ガス産出量が全産出量の50%を超えるのに大きく貢献し、さらなる拡大が見込まれて25石油・天然ガスレビューAナリシス201020112012201320142015201620172018年8070605040302010Bcf per Day00902出所: 米国エネルギー省EIA図27米国内のガス生産予測(非在来型ガス産出量は全産出量の50%を超えさらに拡大)108642実線AEO2010点線AEO20090198019851990199520002005201020152020202520302035年出所: DOE 2010長期エネルギー見通し / Annual Energy Outlook 2010いる(図27)。 米国における非在来型ガスの産出量増加は、在来型ガス田の減退を補って余りあり、米国のガス生産量は2009年に20.6Tcfとロシア(20.5Tcf)を上回り、世界一のガス生産国へと駆け上がる要因となった。 シェールガスを含む非在来型ガスによる国内ガスの堅調な生産増や可採埋蔵量増が見られれば、ガス価は長期的に下がる傾向となる。しかし在来型ガス田(South Texas、ワイオミング州のPinedale/JonahやPowder River、East Texas, North Louisiana)の生産減退もあり、合計すると2035年までは年21Tcf(60Bcf/d)前後で推移すると見られる(表6)。 したがって、ガス価格に下げの圧力はかかりにくい(図28)。しかし、2008年から2009年は経済危機によりガス価の下落を経験している。454035302520151050$/boeWoodfordWoodfordFayettevilleFayettevilleBarnett Non-CoreBarnett Non-CoreHaynesvilleHaynesvilleBarnett CoreBarnett CoreMarcellusMarcellusBase Production45505560bcf/d65708 7 6 5 4 3 2 1 0$/mcfmcf=千立方フィート出所: WoodMackenzie、EPRINC calculations図26シェールガスの供給コスト図28米国内の井戸元ガス価の実績と予測(2008年ベース、 $/mcf)表6米国の井戸元ガス価、国内生産量、シェールガス、CBM、可採埋蔵量AEO 2010井戸元ガス価(2008年, $/MMBtu)井戸元ガス価(2008年, $/mcf) 1,028 Btu = 1 cf国内生産量(Tcf)シェールガス(Tcf)CBM(Tcf)可採埋蔵量(Tcf)20076.3820087.8520093.2420103.9420115.0220155.5420205.8720256.1820307.1120357.846.568.073.334.055.165.706.036.357.318.0619.091.151.91225.8120.561.491.97235.6320.602.362.19238.8820.012.752.07241.8719.463.021.98246.7619.293.851.89254.6119.984.511.88260.1321.314.941.77259.7722.385.501.85263.3323.276.001.93267.94出所: DOE 2010長期エネルギー見通し / Annual Energy Outlook 20102010.5 Vol.44 No.326Vェールガスのインパクト6.シェールガス開発による周辺環境へのインパクト シェールガスの開発業者にとって、ガス井掘削活動の維持拡大のため、水圧破砕と帯水層汚染との因果関係解明は喫緊の課題となっている。それは、水圧破砕に用いられる多量の水やポンプ類の移動(写1)があるからだ。周辺環境として人口の密集は開発を妨げる要因となる。環境対策には、今までの経験やノウハウが大事となる。 水圧破砕に用いられる流体である水、砂(プロパント)、化学物質の内訳を図29に示す。 環境規制の観点からも、フレッシュな水源をフラクチャリング流体に用いることには限界があり、生産水を処理しフラクチャリング流体として使用することが、シェールガスの生産増に欠かせない。その点で、フラクチャリング流体を早く地層に圧入させるためのポリマーである「摩擦減少剤:Friction Reducer」の開発が重要である。その際、地層への付着を防ぐため併用される殺生物剤(biocide)やスケールインヒビターとの相性も大切になる。 天然ガスの開発・生産活動は、浅部の帯水層や地表の水源を汚染するリスクをはらんでいる。干ばつ時の掘削やフラクチャリング用の水確保も容易ではない。規制や検査、関係機関との連絡調整がリスク軽減に必要となる。それらをクリアした上でシェールからのガス生産はある程度可能となろう。ただ、浅部の帯水層や地表の水源を汚染する可能性をゼロにすることはできない。若干の漏えいやリーク、地下の汚染事例は直接的に水供給システムに影響を与えるものではないが、水圧破砕を伴うシェールガス開発の社会的受容性を低下させるものとなろう。 フラクチャリング流体の取り扱い方について、シェールガス開発推進派と環境派の攻防を図30にまとめた。一方、非在来型ガスの開発技術のうち、水圧破砕の作業には多量の水やポンプ類の移動が必要となり、雇用創出に大きく貢献する(ペンシルベニア州の雇用増4万8,000人)。米国連邦議会はシェールガス開発に伴う雇用創出手段として、この開発を支持している。出所: DOEレポート「Shale gas primer 2009」, Chesapeake写1水圧破砕用の多量の水やポンプ類を積んで井戸元に集結したタンクとトラックFracture Fluid for Marcellus Shale Percent by Weight(With Proppant)Sand8.95%KCL0.05%GellingAgent0.05%ScaleInhibitor0.04%Water90.6%Other0.44%Surfactant0.08%FrictionReducer0.08%Acid0.11%pH Adjusting Agent0.01%Breaker0.009%Crosslinker0.006%Iron Control0.004%Corrosion Inhibitor0.001%Biocide0.001%出所: Arthur,J.Daniel,Brian Bohm, Bobbi Jo Coughlin, and Mark Layne ,ALL Consulting, "Evaluating the Environmental Implications of Hydraulic Fracturing in Shale Gas Reservoirs, "presented at the International Petroleum & Biofuels Environmental Conference, Albuquerque, New Mexico, November 11~13,2008 図29水圧破砕に用いられる流体:水、砂(プロパント)、化学物質の内訳推進派と環境派の攻防 通常のシェールガス井の掘削・刺激作業では、フラクチャリング流体と浅部の帯水層の間に数千メートルの岩石層が存在するため、双方の水が混じり汚染されることは考えにくい。 しかし、開発が進み坑井数が増え、掘削・刺激作業にトラブルや失敗の可能性が高まると、浅部の帯水層や地表の水源が汚染される可能性は否定できない。 特に、浅部に飲料水用の帯水層がある場合(ニューヨーク州のMarcellusシェール)には、ガス開発のペースと規制機関の定める坑排水の処理・管理プロセスを念頭に、周到に計画したガス開発が求められる。経済性に陰り?出所: 各種資料より作成Late in Life, Tubingis Added to Increase Flow Velocity andProductivity AddingAdditional BarrierSurface Casing setShallow to Hang OffWell.<500ft.Cement lsolatesWell from PotentialWater SandFracturesLateralFractures Designed to notProduce “Dirty”Water asimpedes ProductivityWater SandWater SandShalePotential Water SandShaleSandShaleWaterSandstoo Deepto beDrinkingWaterPotentialWater Sand図30フラクチャリング流体の取り扱い方に係るシェールガス開発推進派と環境派の攻防27石油・天然ガスレビュー.大手石油会社も続々参入 中東などの大産油国への進出が難しいなかで、政治的・経済的リスクの低い米国でのシェールガス資源の登場は大手石油会社をも動かしている。2008年に入ると大手石油会社は、続々とシェールガス開発を得意とする中堅企業らとのパートナーを構築して、シェールガス開発に参入し始めた(図31)。[具体的な動き]・・・・・・ BPがChesapeakeのWoodford Shale権益を36億5,000万ドルで買収。 EnCanaとShellがHaynesville Shaleでのガス開発でパートナーシップ。 StatoilとChesapeakeがMarcellus Shaleほかのガス開発でパートナーシップ。 ExxonMobilのXTO Energy買収は米国のシェールガス開発ノウハウを欧州の新規事業へ展開するもくろみ。 TotalはChesapeakeのBarnett Shale権益25%のほかに22億5,000万ドル投資。Chesapeakeはこの投資を元にテキサス州のEagle Ford Shaleにも興味。 Devon社はメキシコ湾大水深の古第三系優良資産(Cascade, Jack, St.Malo:可採埋蔵量3億~9億バレル)を13億ドルで売却し、米国陸上のガス開発に経営資源を集中。 カナダTalismanが2010年、自国のMontneyシェールとMarcellusシェールにおけるガス開発に50億ドル投資。 非在来型ガス開発に日本の商社も相次ぎ参入。生産量有望と判断し、米・豪で先行投資(米シェールガス:住友商事、三井物産。豪CBM:豊田通商)。・・アナリシス大手石油会社も続々参入MuskwaMontneyDeep BasinBakkenGreater Green RiverPiceanceAtoka/NoviHaynesvilleEagle Ford shaleUintaSan JuanBarnettCoalbed methaneShale or limeTight sand2009 Exploration focusConocoPhillips の北米非在来型資源国際石油会社がパートナーシップShell-EnCana(2007)BP、Statoil-Chesapeake(2008)Total-Chesapeake(2010)ExxonMobilがXTOを410億ドルで買収 (2009.12)自らも、非在来型ガス開発を強化ConocoPhillips(北米各地でシェールガス事業を展開中)Devon 米国内ガス開発に経営資源集中(2009.12)住友商事 Barnettシェールに進出(2009.12)三井物産 Marcellusシェールに進出(2010.2)出所: 各種資料より作成図31シェールガス開発への大手石油会社の動き8.カナダにおけるシェールガスの可能性 米国以外での地質的評価も目立った展開を見せている。具体的には、カナダで地元企業が幅広く探査へ動き出した。シェールガスの可能性は、ブリティッシュコロンビア州北東部のHorn River BasinとMontneyシェール、アルバータ・サスカチワン州のColoradoグループ、ケベック州のUticaシェール、ノバスコシア・ニューブランズウィック州のHorton Bluffシェールに広がりを見せている(図32)。(1)特徴 カナダのシェールガス構造のデータ比較を表7に示す。本情報は公開データであり、National Energy Board(NEB)は特に検証していない。カナダ全体のシェールガスの原始埋蔵量は1,000Tcf程度。回収率は20%を想定するも、確認可採埋蔵量の推定は今後の開発状況次第とされる。地下の埋蔵深度の違いから、Under-pressured shales (Coloradoグループ)とOver-2010.5 Vol.44 No.328Vェールガスのインパクトpressured shales (Horn Riverシェール、Montneyシェール、Uticaシェール)に大別される。ガスの包蔵形態は割れ目のフリーガス(Free gas)、鉱物表面の吸着ガス(Absorbed gas)、シェール内部の吸収ガスとなる。Horn River以外のシェールガス構造(Montneyシェール、Coloradoグループ、Uticaシェール)のCO2含有率は1%以下。ノバスコシア州のHorton Bluffシェールのそれは約5%。Horton Bluffシェールは開発評価の初期にあたるため、CO2地下貯留(CCS: Carbon Capture & Storage)についての議論はこれからだ。 採掘活動がうまくいけば、在来型ガスの減退を補う効果が期待されている。 シェールガスの開発は技術主導型。生産減退率や1坑あたりの生産レートの見地から、生産量確保には従来型よりも多くの井戸数を要する。一つの坑口位置から複数の水平部分をもつ坑井も出現した(図16=P.21)。水平Horn RiverMontneyColorado GroupShale Gas BasinsDevonian/Mississippian Shale FairwayUticaHorton Bluff(注) Developing:Barnett, Fayetteville, Haynesville, Woodford, Marcellus, Montney and Horn River Evaluating:Barnett/Woodford, Utica, Gothic and Eagle FordOther shale plays:potential growth in the medium to long term出所: Advanced Resources, SPE/Holditch Nov 2002 Hill 1991, Cain, 1994 Hart Publishing, 2008 modified from Ziff Energy Group, 2008.出所: June Warren Publishing, 2008.図32カナダのシェールガスの可能性図33水平部分への多段階フラクチャリング表7カナダのシェールガス構造のデータ比較Depth(m)Thickness(m)Gas-filled porosity(%)Total organic content(%)Maturity(Ro)*Silica(%)Calcite or dolomite(%)Clay(%)Free gas(%)Absorbed gas(%)CO2(%)GIP/section(million m3)**GIP/section(Bcf)**Play area GIP(billion m3)**Play area GIP(Tcf)**Horizontal well cost, including frac(million $Cdn)Horn RiverMontney2,500 to 3,0001,700 to 4,0001503.2 to 6.20.5 to 6.02.2 to 2.845 to 650 to 1420 to 40663412up to 3001.0 to 6.01 to 70.8 to 2.520 to 60up to 20%less than 3064 to 8020 to 361Colorado30017 to 350less than 100.5 to 12biogenicsand and silt-high---1,700 to 9,000230 to 4,500623 to 1,80060 to 318+8 to 1604,100 to 17,0002,300 to 20,000144 to 600+80 to 70022 to 62>2,800>1007 to 105 to 8 0.35(vertical only)UticaHorton Bluff500 to 3,3001,120 to 2,000+90 to 3002.2 to 3.70.3 to 2.251.1 to 45 to 2530 to 708 to 4050 to 6535 to 50less than 1710 to 5,95025 to 210>3,400>1205 to 9150+2101.53 to 2.0338significant42--52,000 to 17,000+72.4 to 600+>3,700>130unknown*Ro(vitrinte reflectance)is a measure of the thermal maturity of organic matter, values above 1.2 are in the gas window**GIP:gas in place;recoverable gas may be on the order of 20 per cent出所: compiled from various sources29石油・天然ガスレビューAナリシス2008年のカナダのガス生産量16.2Bcfdの約1/3に相当する(消費量7.6Bcfdの約2/3)。・シェールに含まれる天然ガスの起源 Second White Speckledシェールでは浅部に埋蔵・圧密されたバクテリアが天然ガスの起源。バクテリア起源ではメタンのみが生産される。Second White Speckledシェールでは坑壁崩壊の可能性があるので、垂直井からガスを生産する。 一方、地下数キロメートルにあるUticaシェールのガスはバクテリアと熱分解の両方が起源。熱分解起源では、有機物は過熟成帯になり、メタンとNGL(Natural Gas Liquids:天然ガス液)を併産し、CO2も含む。・シェールガス井のフラクチャリング Horn Riverシェールはシリカ分が多いためフラクチャリングの格好の対象となる。フラクチャリングのための水(3,800~1万5,200m3/坑、Barnettシェール1万1,000m3/坑)の確保も重要な課題だが、MontneyシェールではCO2によりフラクチャリングを実施している。Coloradoグループのシェールについては、通常のslick-water(ジェルではない低粘性の水ベースの流体)を用いた水圧破砕はあまり適さず、窒素またはプロパンやブタンの混合物をフラクチャリング流体として用いている。カナダにおけるシェールガスの開発スピードは、プロパント(フラクチャリングによってつくられた人工的な割れ目の支持材)や掘削リグのアベイラビリティーに左右されよう。生産減退の場合、再度フラクチャリングを施し、生産量を回復させることもある。 フラクチャリング流体に含まれる化学物質(計260種類、毒性のベンゼン含む)には、塩酸、生物腐食防止剤ブルタラアルデヒド、ジェルの分解を遅らせる過硫酸アンモニウム、腐食防止剤ジメチルホルムアルデヒド、摩擦減少剤/潤滑剤ポリアクリルアミド、鉱物油、塩化カリウム、シュウ酸水素アンモニウム、エチレングリコール、イソプロパノール他が含まれる。 カナダでは、ガス生産に伴い、坑井から戻ってくるフラクチャリング流体はCO2を含み、パイプの腐食や地層にスケールが発生(炭酸カルシウムにより管路が一部閉塞)する可能性があるため、Barnettシェールのように再利用はしていない。フラクチャリングを施すシェール層は地下2,000m以深と深いので、フラクチャリングに用いた流体が割れ目(フラクチャー)を伝わって、浅部の飲料用の帯水層に達する可能性は極めて低い。比較的浅部のシェールにフラクチャリングを行う際には、強く大き2010.5 Vol.44 No.330部分の長さが2kmを超える水平坑井や水平部分への多段階フラクチャリング(図33)も広く適用されるようになってきた。マイクロサイスミック技術(図19=P.22)により、できたフラクチャーの成長や広がりも把握できるようになってきた。・シェールとはなんだろうはく 剥性で陸源性の堆積岩だが、主にシルトと粘土から構成される泥岩である。Uticaシェールの地上で見られる露頭(シェールと石灰岩の互層)を写2に示す。泥の中の有機物は藻・植物・プランクトンの死骸が確認されている。離りDark beds are shale, light beds are limestone. Part of the dark colour in the Utica Shale comes from organic matter. A writing pen is shown for scale.出所: National Energy Board / NEB Energy Briefing Note: A Primer for Understanding Canadian Shale Gas、NOV. 2009.写2カナダのUticaシェールの露頭(シェールと石灰岩の互層)・Barnettシェールガスとカナダのガス生産量  ColoradoグループのSecond White Speckledシェールや米国のAntrimシェールの開発は、1940年代から始まった。現在最もホットな米国のBarnettシェールからのガス生産レートは3~5MMcfd/坑でスタートした(MMcfd:百万立方フィート/日、カナダの在来型ガスは平均0.2MMcfd/坑、2007年)。Barnettシェールからの全生産量は数年のうちに5Bcfdレベルに達することが期待されている(3.7Bcfd程度、2008年)。5Bcfdレベルはs場もモントリオール、ケベック市、米国北東部州が挙げられる。ニューブランズウィック州とノバスコシア州にまたがるHorton Bluffシェールは、近くにMaritimes & Northeast Pipeline ManagementのメインラインとHalifax Lateralパイプラインが通っており、ガスの供給市場も沿岸部や米国北東部州に広がることが期待される。 次に、各シェールガス構造の情報をもう少し詳細に述べる。(2)Horn Riverシェール 図34にHorn Riverシェールの位置と層序を示す。デボン紀にあたるSlave Point Platformの炭酸塩岩は過去数十年にわたり在来型ガスを生産してきた。Silicaリッチ(45~65%)なシェールは150mもの層厚を持つ。有機物0.5~6%と豊富で熱熟成が進んでいる。原始埋蔵量は約500Tcfとされる。水平坑井20坑とまだ開発初期だが、生産スタート時のレートは16MMcf/dを記録するものもあり、カナダ国内で高い生産性が期待されるシェールガス構造である。EnCana社がCabin Lake近くに2.4Bcf/dのガス処理プラント建設を計画(20億ドル、6系列)していることは既述した。最初の系列は2011年より0.4Bcf/dのガス処理を開始する予定と聞く。ブリティッシュコロンビア州北東部におけるパイプラインの操業会社Spectra Energy社は、現状の1Bcf/dガス処理プラント(Fort Nelson)が半分しかシェールガス用に使えないため、現在Fort Nelsonの北東40kmの所に0.25Bcf/dのガス処理プラントを計画している。Horn River Basin近くのCordova Embaymentにもシェールガス賦LiardLiardBasinBasinHorn RiverHorn RiverBasinBasinExperimental Shale Gas ProjectsCalgaryCalgary出所: Ziff Energy Group, 2008.図34Horn Riverシェールの位置と層序シェールガスのインパクトなフラクチャーをつくることもなく、生産レートや回収率はそれほど大きなものとはならない。坑井より戻ってくるフラクチャリング流体は塩分濃度も高いため、不純物を取り除き、地下深くの水層へ圧入・処分されている。・回収率の違い 一般的に在来型ガスで95%、非在来型ガスで20%(Barnettシェールではなんと50%)とされる。カナダにおけるシェールガスからの水平坑井1坑あたりのガス回収量は1~10Bcf、水平坑井からの初期生産レートは3~16MMcf/d程度である。一方、垂直井ではシリカリッチな有望なシェールでも初期生産レートは1MMcf/d程度と低く、Coloradoグループでは0.1MMcf/d程度のレートに過ぎない。ちなみに2007年カナダの在来型ガスの1坑あたりの初期生産レートは0.2 MMcf/d程度であった。・坑井コスト Montneyシェールでフラクチャリングを施した水平坑井のコストは、1坑あたり500万~800万ドル程度。Horn Riverシェールでは1,000万ドルにも達する。Uticaシェールでは500万~900万ドル程度。これら「Over-pressured shales」に比べ、浅いところからバクテリア起源のメタンのみを生産するColoradoグループの垂直井コストは35万ドルと安く済む。・インフラの整備状況  Spectra Energy社はHorn Riverシェールで事業展開している。1Bcf/dガス処理プラント(Fort Nelson)は半分のみしかシェールガス用に使えないため、現在Fort Nelsonの北東40kmの地点に0.25Bcf/dのガス処理プラント建設を計画している。EnCana社もHorn River シェールで事業をしているが、Cabin Lake近くに20億ドルを投じて2.4Bcf/dのガス処理プラントを計画している。 Montneyシェールにおいて、Spectra Energy社は1億ドル規模の0.22Bcf/dのパイプラインを2009年第3四半期に稼働させた。Nova Gas Transmission社は1Bcf/dのパイプライン敷 カナダ西部のガス生産は2007年半ばより減退傾向にある。シェールガスがその減退傾向を穴埋めできるかについて、NEBは2020年までの予測にシェールガスの数字を盛り込んでいる。ケベック州のUticaシェールでは近くにTrans Quebec & Maritimesパイプラインが走っており、そのガス搬送能力には余裕がある。ガスの供給計画を持つ。ふつ設せ31石油・天然ガスレビューAナリシスCOMPRESSED AND DEHYDRATEDFOR PIPING TO INJECTION WELLSEXISTING FORT NELSONGAS PROCESSING PLANTFort NelsonGas Processing Plant Proposed CCSWell Siles Area出所: Spectra Energy, 2008.存の可能性があるとされる(原始埋蔵量200Tcf程度?)。Horn River Basinではブリティッシュコロンビア州からガスの開発権取得のため、開発業者は20億ドル投資した。Cordova Embaymentでは、まだ4,000万ドルが投資されたに過ぎない。Horn Riverシェールガス構造はユーコン準州や北西準州にまで延びているとされる。 2010年3月、韓国のKogasは、Horn Riverのシェールガス権益をEnCanaから取得し、今後5年間で11億ドルを開発費として支出すると発表した。Kogasにとって北米初の事業となる。また、米国のApache社は、国外LNGのインフラ獲得に向け動き出し、カナダのKitimat LNG事業に参入し、LNG戦略を展開し始めた。アジア市場向け案件といわれる。 Horn Riverシェールガス開発にとって、天然ガスの副産物とCO2の排出レベルが課題とされる。メタンの他にプロパン、ブタン、ペンタン、コンデンセート、H2S、CO2を含む。Horn Riverシェールガスは12%ものCO2を含有している。熱熟成の過程でメタン、有機物、炭酸塩ミネラルがCO2に変化したもので、これはブリティッシュコロンビア州の他のシェールガスのCO2含有率2%に比べ高い。仮に計画どおりHorn Riverシェールからのガス生産が2015年に1.5Bcf/dのレベルになるとすると、CO2排出量は年330万トンレベルに達するとされる。この量は2006年にカナダのパルプ・製紙工場から出されたCO2量595万トンのなんと55%に相当する。ちなみに2006年のカナダ全体のCO2排出量は7億2,100万トンであった。したがってHorn Riverシェールからのガス生産には、CO2の地下貯留(CCS:Carbon Capture & Storage)を併せて実施するよう、ブリティッシュコロンビア州は推奨しており、ガス開発業者のSpectra Energy社やEnCana社は、ガス処理プラントにCCS施設の併設を提案している(図35)。 Spectra Energy社の計画では、天然ガスから分離されたCO2は圧縮・水分除去された後、15km離れた場所にパイプラインで移送され、圧入井を介して、地下2,500mのデボン紀の帯水層へ圧入・貯留される予定である。同社の計画では、CCSの実用性評価のため2009年に1,200万ドルかけて圧入井を2坑掘削した。一方図35Horn Riverシェールガス生産に伴うCO2の地下貯留(CCS)とガス処理プラントEnCana社の計画では、天然ガスから分離されたCO2を成熟油田へのCO2-EOR(CO2による増進回収法)にも使う予定である(サスカチワン州南のWeyburn油田ではCO2-EORとして1,300万トンのCCSの実績がある)。(3)Montneyシェール 三畳紀に相当する東の浅海部の砂から西の沖合の泥まで、広範囲に分布する。天然ガスは東の浅海部起源の砂岩と深海部起源のタイトサンドから生産されている(図36)。シェール構造はLower MontneyとUpper 出所: modified from Ross Smith Energy Group, 2008.図36Montneyシェールの広がりと地質起源2010.5 Vol.44 No.332ナある。シリカ分を含まないため、フラクチャリングを施すのが難しい(水に対して膨潤性あり)。フラクチャリング流体として、窒素、またはプロパンとブタンの混合流体を用いる。地層がもろいため、ガス生産には垂直井を用いる。Wildmereエリアでは、現在20~30坑ほどの浅井戸から3MMcf/d程度生産されている。1坑あたりのコストは掘削から生産ラインのパイプラインつなぎ込みまで35万ドルと、水平坑井を多用する他のシェールガス構造と比べ安く済む。原始埋蔵量の推定は、広範にわたってシェールが分布するので簡単ではないが、100Tcfはあるとされる。(5)Uticaシェール 上部オルドビス紀の地層である。ケベック州のUticaシェールでは近くにTrans Quebec & Maritimesパイプラインが走っており、そのガス搬送能力には余裕がある。ガスの供給市場もモントリオール、ケベック市、米国北東部州が挙げられる(図38)。 Uticaシェールの厚さは150m程度とされる。有機物1~3%で数十年の間、根源岩と見なされてきた。もろいカルサイト/方解石を含むため水圧破砕はガスの流路を確保する手段としてはあまり有効でない。浅部(Shallow Shale)のガスはバクテリア起源であり、より深いところ(Deep ShaleやStructured Shale)のガスは熱熟成/熱分解起源で、自然発生の割れ目に富む(図38)。 多くの井戸は垂直井にフラクチャリングを施したもので、生産レートは1MMcf/d程度。より深いところに掘られた水平坑井にフラクチャリングを施したものは生産レートが0.1~0.8MMcf/d程度とやや期待外れであった。これには、ガス生産に伴い地表に戻ってくる出所: modified from illustration provided by Ziff Energy Group, 2008.図38Uticaシェールの位置と分布シェールガスのインパクトMontneyに分けられる。シェールの層厚は最大で300mと厚いため、Lower MontneyシェールとUpper Montneyシェールそれぞれに対して、上下2段の水平部分を持つ水平坑井も計画されている(図16=P.21)。有機物は1~7%と豊富で熱熟成が進んでいる。原始埋蔵量は80~700Tcfとされる。ガスの開発権取得のため、開発業者は24億ドル投資した。 2005年以降、ガスの生産量は0から2009年7月には水平坑井234坑から376MMcf/dまで上昇した(図37)。個々の坑井は3~5 MMcf/dのレートで生産を開始している。MontneyシェールではCO2でフラクチャリングを実施している。100トンのCO2を用い2kmにも及ぶ水平部分に7~12段階のフラクチャリングを実施した事例もある。 カナダのTalisman社は2010年、Montneyシェールと米国のMarcellusシェールにおけるガス開発に50億ドル投資する予定と聞く。1210Production(106m3/d)Production(106m3/d)864202004-012004-072005-012005-072006-012006-072007-012007-072008-012008-072009-012009-07Well CountWell CountProductionProduction500450400350300250200150100500Well Count出所: National Energy Board/NEB Energy Briefing Note:A Primer for Understanding Canadian Shale Gas、NOV. 2009.図37Montneyシェールの水平坑井数とガス生産量(4)Coloradoグループ アルバータ州とサスカチワン州にまたがる、Medicine Hat and Milk Riverのシェール性砂岩には100年にわたるガス生産の実績がある。また、Second White Speckledシェールは数十年のガス生産の実績がある。アルバータ州のWildmereエリアでは、Coloradoグループのシェールの厚さは200mにも及ぶ。Horn RiverシェールやUticaシェールと違い、Montneyシェールと同じく薄い砂層を挟むシェールである。ガスも、熱分解よりもバクテリア起源のため、メタンのみを生産する「Under-pressured shales」に分類されることは既に述べたとおり33石油・天然ガスレビューtラクチャリング流体の分離がうまくいっていないとの見方もある。Uticaシェールの上部にあるLorraineシェール(図39)も見込みがあるが、粘土分が多く水圧破砕は容易ではない。ある業者は限られた情報ながら原始埋蔵量を120 Tcfと推定している。出所: Ziff Energy Group with modifications from Talisman Energy, 2008.図39Uticaシェール北西~南東の地質断面図(6)Horton Bluffシェール 湖成の泥岩で下部石炭紀の初期にあたる。ニューブランズウィック州のHorton Bluffシェールに属するFrederick Brookシェールは38%のシリカを含むが、粘土分も42%と高い。ノバスコシア州のFrederick Brookシェールの有機物含有量は10%程度と、カナダのほかのシェールガス構造に比べ高い。シェールの厚さは150mを超える(ニューブランズウィック州では1kmにも及ぶものがあるとか)。カナダ西部のシェールガス構造に比べ、粘土分を多く含むため水に対して膨潤性があり、水圧破砕はあまりうまくいかない。Frederick Brookシェールに掘られた垂直井2坑に少しの水圧破砕を施したところ、生産レートは0.15MMcf/dであったとの報告がある。ニューブランズウィック州南部のSussex/ElginサブベースンのFrederick Brookシェールに含まれるガスの原始埋蔵量は67Tcfとの試算がある。ノバスコシア州のWindsor陸上鉱区では69Tcfと試算されている。ただ、このノバスコシア州の場合、大半は取り出しにくい鉱物表面の吸着ガス、シェール内部の吸収ガスとされ、効率的に取り出すには貯留層のシミュレーション等、さらなる検討が必要となる。(7)まとめ カナダ全体のシェールガスの原始埋蔵量は1,000Tcf程度といわれる。回収率20%を想定すると、今後の開発状況次第とはいえ、推定される可採埋蔵量はカナダの在来型ガスの究極ポテンシャルの1/3、ないし、現在残存する在来型ガスの2/3に相当する膨大な量が期待されアナリシスる。しかし、まだ開発は始まったばかりであり、正確な量の推計はできない。開発が進むには、在来型ガス、遠隔地での開発、LNGに比べ生産サイクルコストの優位性が担保されなければならない。 その点で現状開発が保証されるシェールガス構造は、Horn RiverシェールとMontneyシェールに限られよう。Horn Riverシェールで開発に従事するApache社やEOG Resourcesは、ブリティッシュコロンビア州と同州で計画中のLNGターミナルヘのガス供給を検討するMOUを締結した。Uticaシェールは水平坑井3坑からのデータしかなく、開発以降にはまだ時間を要するだろう。Coloradoグループからの浅部垂直井のデータは、アルバータ州のWildmereエリアに限られる。Horton Bluffシェールは、まだ評価に着手したばかりである。 カナダにおけるシェールガスの開発スピードは、水・プロパント(支持材のこと。砂やセラミックビーズを用いる)・掘削リグのアベイラビリティーにも左右されよう。また、水圧破砕のための水(3,800~1万5,200m3/坑、米国Barnettシェールでの実績1万1,000m3/坑)の確保も重要な課題である。シェールガスの生産に伴い、不純物として排出されるCO2地下貯留も関心事となる(図40)。カナダでは幅広く評価が進むが、Horn River BasinシェールとMontneyシェールを中心に開発が進むとされる。開発スピードは、水・プロパント(フラクチャーの支持材)・掘削リグのアベイラビリティー次第。特に、水(3,800?15,200m3/坑)の確保は重要。シェールガスの生産に伴い、不純物として排出されるCO2地下貯留も関心事(Horn River Basinシェール)。 Horn RiverMontneyShale Gas BasinsDevonian/Mississippian Shale Fairway(注) Developing:Barnett, Fayetteville, Haynesville, Woodford, Marcellus, Montney and Horn River Evaluating:Barnett/Woodford, Utica, Gothic and Eagle Ford Other shale plays:potential growth in the medium to long term出所: Advanced Resources, SPE/Holditch Nov. 2002 Hill 1991, Cain, 1994 Hart Publishing, 2008 modified from Ziff Energy Group, 2008.図40カナダにおけるシェールガスの開発スピード2010.5 Vol.44 No.334Vェールガスのインパクト 北米での開発経験から得られたシェールガス開発の検討課題を以下に整理しておきたい。① 貯留層特性の評価② インフラ(パイプライン網、ガス処理設備ほか)の整備③ シェールガス層の広がりと熱熟成度(メタンリッチになっているか)④ 地上アクセス⑤ 開発コスト⑥ 周辺環境(フラクチャリング流体に含まれるわずか0.5%の化学物質と飲料用帯水層との関係、ケーシングからのリーク、フラクチャリング流体の排水処理/ピット)の調査。米国のシェールガス開発において、環境汚染リスクの指摘はあるが、現在まではっきりとした地下のトラブル事例は報告されていない。⑦ 法規制(連邦規制による化学物質公開、ニューヨーク州は水源近くでの開発差し控え)の影響。一方ペンシルベニア州は、シェールガスの開発が累計で州の雇用5万人・税収69億ドルにつながるとして、その開発を支援。9.世界に普及(技術進歩が非在来型ガスを在来型ガスへ)び水になったと言われる。この買収でExxonMobilはXTO Energyの持つシェールガス開発に係る技術と技に期待していると聞く。ConocoPhillipsと3 Legs Resourcesはポーランドで探鉱し、米国Barnett Shaleに近い性状のガス構造を発見したようだ。Shellはスウェーデンで、Totalはフランスで活動中である。 欧州は米国に比べシェールガス開発の初期段階にあたり、開発適用ノウハウの蓄積が不十分だ。米国において、したような地元中堅企シェールガスの確認・開発を牽業の存在もない。インフラ(パイプライン網、ガス処理設備ほか)の不足も否めない。地質的なシェールガス構造は米国のそれと類似性があるも、ガスの生産挙動は開発が進まないと明らかにならないであろう。引いけんん(1)欧州 欧州での動きとしては、ドイツ(GFZ)、フランス(IFP)、オランダ(TNO)の研究機関が2009年から3年間、シェールガスエリアの特定化を行う。ShellやBPなどが資金提供していると聞く。企業ベースでも、ドイツ、オーストリア、ハンガリー等に関心が集まっている(図41)。 具体的には、スウェーデン、ポーランド、ハンガリー、英国、ドイツ、フランス、オーストリアでシェールガスの開発評価が進められている(図42)。 世界石油工学者協会(The Society of Petroleum Engineers:SPE)によれば、550Tcf程度の資源量が期待されるとのこと。ExxonMobilのハンガリーでの失敗が2009年12月のXTO Energy社買収(410億ドル)の呼北米以外での地質評価に発展欧州での動き● ドイツ(GFZ)・フランス(IFP)・オランダ(TNO)の研究機関が、欧州のシェールガスエリアの特定化を目指し、2009年から 3年間の地質評価へ。Shell・BPなどが資金提供。● 企業ベースでも、 ドイツ・オーストリア・ハンガリー他に関心。● ガス価格は北米より割高で域内ガスに対する期待も大きい。 ロシア産ガスへの抑止力? ただし、パイプライン敷設・土地確保・税制面でのインセンティブなど、米国より課題が多い。中国、インド、エジプト、南アへの波及技術・インフラのリスクが開発コストに及ぼす影響に注目出所: 各種資料より作成出所: The Economist図41北米以外でのシェールガス評価の動き図42欧州におけるシェールガスの開発評価地点35石油・天然ガスレビューAナリシス(3)非在来型ガスの生産レベル この「シェールガス」という非在来型ガスを在来型ガスへと押し上げるうねりは、世界的高まりを見せている。まずは、カナダ・欧州・中国ほかへの開発技術ノウハウでんが注目されるところである。当地での開発課題との伝なる技術・インフラのリスクと、それらがガスの生産コストに及ぼす影響に注目すると、伝播の速度が見えてくると筆者は感じている。 世界の非在来型ガスの生産レベルは、2008年で400万boe/日強とLNGの市場規模(8Tcf、世界全体ガス消きっしながら上昇を続けている(図44)。費の7.5%)と拮 2008年には米国の天然ガス日産量56.2Bcf/d(年間20.56Tcf)の50%が非在来型ガスであった。CBMも米国以外の中国、オーストラリア、インド、インドネシアを中心に開発が進んでいる。欧州のシェールガス・ポテンシャル(550Tcf)にも注目したい(図45)。こうした播ぱう抗こGlobal unconventionalgas production(mboepd)LNGUnconventional gas54321 欧州のガス価格はロシアからのパイプラインガスの輸入に頼るため、北米より割高である。域内でのガス生産に対する期待も大きい。ロシアからのパイプラインによる天然ガスに依存してきた英・仏・独をはじめ欧州各国じゅは、ロシア(Gazprom)の呪長期契約による欧州へのガス輸出)から逃れようと、われ先にシェールガス探査に着手していると考える。 まとめると、欧州でのシェールガス開発促進には、次の事項が必要であろう。く(縛ば① 埋蔵量の信頼性と開発経験。② 開発構造の早期囲い込み(米国のような開発業者乱立によるガス価の値崩れを避ける)。③ シェールガスの開発調査は欧州にとってガスの自給割合を増やす意味でも重要。④ 欧州でシェールガスの開発が軌道に乗れば、Gazpromのガス(石油製品価格にリンク)は経済合理性の観点から欧州市場でその魅力が失われることとなろう。⑤ しかし、インフラに制限があることから、今、米国発のシェールガス革命を欧州で議論するのは時期尚早。 したがって、米国ほどのインパクトはないが、欧州においてシェールガスはそれなりの存在感を示すものとなろう。(2)中国 一方、中国は欧州より遅れている。ShellはPetroChinaと四川盆地で活動を開始したところ(図43)。BPはSinopecと中国南西のKaili地区、東のHuangqiao地区におけるシェールガスのポテンシャル評価に着手した。019801984出所: EPRINC198819921996200020042008年図44世界の非在来型ガスの生産レベルはLNGの市場規模と拮抗中国/四川盆地甘粛省甘粛省陜西省陜西省普光(Puguang)ガス田普光(Puguang)ガス田SinopecSinopec竜崗(Longgang)ガス田竜崗(Longgang)ガス田PetroChinaPetroChina湖北省湖北省四川省四川省成都PSCAPSCA金秋(Jinqiu)金秋(Jinqiu)Shell/PetroChinaShell/PetroChina四川盆地PSCAPSCA川東北(Chuangdongbei)川東北(Chuangdongbei)Chevron/PetroChinaChevron/PetroChina羅家(Luojia)ガス田羅家(Luojia)ガス田重慶市重慶市重慶富順?永川JSA(Fushu-Yongchuan)富順?永川JSA(Fushu-Yongchuan)Shell/PetroChinaShell/PetroChina貴州省貴州省鉱区  ガス田  都市雲南省雲南省出所: JOGMEC調査部欧州欧州中国中国アルゼンチンアルゼンチン南ア南ア大手石油会社(メジャー)進出北米北米CBMShale GasTight Gas出所: NPC 2007図43四川盆地におけるShell/PetroChinaのシェールガス共同スタディー鉱区(Fushu-Yongchuan)図45世界の非在来型ガスのポテンシャル分布2010.5 Vol.44 No.336綜Yガス国産ガスGNLパイプラインガス北米ガス指標価格:Henry Hub(ルイジアナ州)などスポット価格①ロシア産ガス(長期契約) 指標価格:石油製品価格リンク (Gas Oil、 Fuel Oil)②英国市場価格 指標価格:NBPスポット価格③ベルギーZeebrugge、オランダTTF 他に西欧・中欧でも市場価格での取引 拡大出所: JOGMEC調査部NGLアジア(長期契約)指標価格:JCC原油価格図46LNG・ガス市場の価格体系⑤ 天然ガスの世界市場は飽和傾向で、価格下げの圧力となろう(原油価格リンクでなくなる)。[世界の天然ガス供給増への期待] 「温暖化と資源問題の現実的解法」としては、化石資源からの完全脱却を想定した脱炭素社会へ一挙に移行しようとすべきではなく、いったん化石資源を中心に多様化と効率化を推し進め、節約の浸透を加えた準・低炭素社会を経た後に、今世紀後半から化石資源依存性の低下とエネルギー・資源利用の効率化・節約を一層進めた低炭素社会に移行すべきであると唱える人は多い。21世紀に入って始まった「シェールガスの広がり」を契機に、天然ガスは化石資源の多様化と効率化に大きな貢献が期待できる「ブリッジ・エネルギー」としての期待が更に高まることとなろう。情勢からLNGの価格メカニズムは変革期に入ったのかもしれない。今後LNGは買い手市場が続くと見られ、最大のLNG輸入国の日本も価格面で恩恵に浴する可能性が高まってきたとも見てとれる。[世界の天然ガス需給市場に急速で根本的な変化] 筆者の思いつくポイントを5点ほど列記する。① 欧州におけるGazpromからのパイプラインガス輸入減:Gazpromインデックスは機能しない? 長期的には新しいインデックスが必要。東アジアでは石油価格準拠廃止の議論はあまり盛り上がっていないが、欧州が変われば大きな波となって影響する。② ロシアや中央アジアの力は低下する:欧州ではLNG・天然ガスのスポット価格と石油価格準拠の長かい期契約価格の乖が大きくなり、ドイツなどの需要家を中心に石油価格準拠の廃止を求める声が上がっている。これは構造的問題。石油価格準拠の合理性の大半は失われたが、今後欧州にシェールガス革命が伝播すれば決定的となろう。米国の石油先物は実際の需給バランスをほとんど反映していないため、LNG・天然ガスのスポット価格と石油との大きな価格乖離は今後も長期にわたって続く可能性が高い(図46)。離り③ 世界的なLNG供給増により、テイク・オア・ペイ契約の最低量に流れるケースがしばしば見られる。低コストのLNGスポットカーゴに目が向く(特に夏場に調達しガスを備蓄)。④ シェールガス革命の進展に伴い、米国内の天然ガス生産見通しに大きな変化。米国発のシェールガス革命はカナダ・欧州・中国を中心に世界へ普及するかもしれない。シェールガスのインパクトまとめ これまで見てきたように、シェールガスは非在来型ガスのなかでも手付かず状態で、埋蔵量も膨大である。また、収益性も高いが、投資もそれなりに必要である。このため、資金面での強力なパートナーが求められる。井戸1本あたりの生産量はそれほど多くないが、大きく広がっているシェールガス鉱床にパートナーの協力を得て、何千本もの井戸を掘れば、生産量の伸びが期待できる。LNGと比べガス生産を始めるまでの時間が短く、市場の動きに連動しながらの生産量調整も容易だ。 シェールガス開発が盛んな米国では石油メジャーが続々と参入している。2008年に石油メジャーの英国BPや米国ExxonMobilのガス生産量は前年比マイナスだった。だが、米国の石油中堅企業のChesapeakeやAnadarko、XTOは前年比二桁の伸びを示した。この差37石油・天然ガスレビューAナリシスはシェールガスを取り扱っているかどうかにかかっていると言われている。 このため石油メジャーは開発技術の取得を目指し、中堅企業との連携を活発化している。とりわけ、昨年末にExxonMobilがXTOを約4兆円で買収して関係者を驚かせた。同じくガス生産大手Devon社も海外の有望な深海油田権益を売却し、その資金を米国内のシェールガス開発に集中すると発表した。それだけ政治や商業、技術リスクの低い資源開発が有利であることを裏付けている。 非在来型のタイトガスサンドは、昨年末に米国の天然ガス生産の統計上の分類で在来型ガスに組み入れられた。生産量が増加し、もはや開発が難しいガスではなくなったからで、在来型と同じ土俵で勝負できるということだ。シェールガスもタイトガスサンドと同じような技術を使って取り出すので、将来は非在来型から在来型資源として扱われる可能性が高い。 日本は地質年代が新しく、シェールガスの商業生産は期待できない。LNG輸入国、日本への影響は直接的にはない。だが、世界のガス供給は増え、原油価格にリンクさせているLNGの価格フォーミュラも変革期にあると思われる。 米国発の「シェールガス革命」がカナダ、欧州に飛び火しLNG需給が緩めば、価格破壊もあり得る。今のままのスピードで開発が進めば売り手と買い手の立場が変わる。日本もその恩恵を受け、現在の長期契約の取引形態も変わるかもしれない。<注・解説>*1: 従来技術では地下から採り出しにくい天然ガス。シェールガスのほかに、タイトガスサンドやコールベッドメタンがある。*2:番組名: CBCラジオ「多田しげおの気分爽快!」1月28日放送 「シェールガスとは?」質問例と回答案【参考文献】1.JOGMECホームページ 石油・天然ガス資源情報「北米のシェールガス革命」、2009年4月20日 市原路子2.JOGMECホームページ 石油・天然ガス資源情報「非在来型天然ガス(タイトガスサンド、コールベッドメタン、シェールガス)開発技術の現状 -Quiet Revolution:技術の進歩は、天然ガスの可採埋蔵量を確実に増やす-」、2009年4月15日 伊原賢3.JOGMECホームページ 石油・天然ガス資源情報「シェールガスの広がり」、2010年2月12日 伊原賢4.JOGMECホームページ 石油・天然ガス資源情報「カナダ:シェールガス開発の行方」、2010年3月12日 伊原賢執筆者紹介伊原 賢(いはら まさる)1983年、東京大学工学部資源開発工学科卒業。1991年、タルサ大(米国オクラホマ州)大学院石油工学修士課程修了。1994年、東京大学博士号(工学)取得。石油学会奨励賞受賞。1983年、石油公団(当時)入団。技術部、石油開発技術センター、アラブ首長国連邦(UAE)ザクム油田操業、生産技術研究室長、天然ガス有効利用研究プロジェクトチームリーダー、JOGMECヒューストン事務所長ほかの勤務を経て、2008年7月より石油・天然ガスの上流技術の調査・分析業務に従事。専門は石油工学とC1化学。趣味はへぼゴルフ、ホットヨガ、グルメ(和食中心)。故郷の博多に加え、現在横浜の住環境も堪能中。2010.5 Vol.44 No.338
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2010/05/20 [ 2010年05月号 ] 伊原 賢
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