ページ番号1006410 更新日 平成30年2月16日

上流事業のメジャー主導は続く???

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レポートID 1006410
作成日 2010-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業基礎情報
著者
著者直接入力 池ヶ谷 清貴 市原 路子
年度 2010
Vol 44
No 4
ページ数
抽出データ 捗ち 当部は1998年、油価がバレル12ドルに落ち込み、BPのAmoco買収に始まった歴史的な上流事業M&Aにより、中堅企業の多数が消滅した状況等を、石油・天然ガスレビュー2002年3月号に「上流企業のサバイバル」としてまとめた。本稿は、その後起きたテロ、イラク政変そして、高まったピークオイル論議、新興国経済発展等により、変質した上流事業の現況をこれまで業界をリードしてきたメジャークラスの企業を中心に記述したものである。 「上流企業のサバイバル」執筆時の上流事業の背景分析の視角として ①株主価値の極大化を求める投資家の影響 ②世界的な上流案件の巨大化 ③天然ガスへのエネルギー転換 ④欧米地場事業の成熟化―― については、テロによる欧米回帰現象はあったものの、大きくは変化がない(当時から天然ガスへのょくしん転換は各国の石炭に対する政治的思惑が障害となり、進は遅々としていた状況に変わりはない)が、米国のシェールガス革命という、世界のエネルギー情勢を一変させるかもしれない事象も生じている。 当部レポートに記述されてはいるが、本稿により、改めて上流事業におけるNOCの存在が日に日に拡大していることを確認して頂けるはずである。 従来、上流事業は、IOCが資源へのアクセスを求め、産油国・NOCが資源のマネタイズを求めるというWIN-WINモデルで成り立ってきた。このモデルは利権契約から生産分与(PS)契約へと契約形態が変わり、契約条件が厳しくなっても基本的に変わることはなかった。産油国はIOCの技術・資金が必要だったからである。 ところが、継続する高油価が産油国NOCを、そして新興国の経済拡大が、中国等の別タイプのNOCまで豊富な資金を持つ存在に変貌させてしまった。また、技術は手数料を払えばサービス企業から提供される。最近では中国のNOCのように技術・資金を持ち、自国の市場提供も可能というNOCが産油国NOCと共同で事業を行うケースまである。 本稿では、IOCが、こうした在来型資源へのアクセス状況により、米国シェールガスをはじめとする非在来型資源にその投資を傾斜している状況もおわかり頂けるはずである。メジャー保有の資源量の7割は既に非在来型資源開発(LNG大水深含む)によるものという現実がある。 本稿が広い意味での上流事業への関心とご理解への一助となれば幸いである。はじめにアナリシスJOGMEC調査部池ヶ谷 清貴JOGMEC調査部市原 路子上流事業のメジャー主導は続く???1. 攻めのNOC(国営石油会社)と守りの欧米企業の二極化(1) 海外進出を活発化するNOC 2002年「上流企業のサバイバル」執筆時に見られなかった顕著な変化として当部の著書にもなった『台頭する国営石油会社(NOC)』に示した状況が挙げられる。 1928年から1973年の第1次石油危機まで世界の石油生産量の7割を支配し、石油価格の決定力を有していたIOC(International Oil Company:国際石油会社、ここでは欧米企業)の代表であるいわゆる石油メジャーズ(旧セブンシスターズ)の巨大化した5大スーパーメジャーズ(ExxonMobil、Shell、BP、Chevron、Total)は、価格決定力はおろかその埋蔵量の合計でも世界の約4%のみを有する存在となってしまった。代わって権勢を振るうのが、世界の確認可採埋蔵量の約8割(図1)を占め、高油価に支えられ資金力も豊富となる等、随所に強みを持つようになった産油国等国営石油会社のNOC(National Oil Company)である。NOCは、国の事情、規模等々により、多種多様*1で、旺盛で広範な新興国への投資が活発化するのに伴い、年々その海外への進出も増え、拡37石油・天然ガスレビュー蛯キる傾向にある。表2(P.40)は業界の専門誌PIWが毎年売り上げ、埋蔵量等々のさまざまな指標を基に作成しているもので、企業規模の評価の一つである。右端には国が企業に保有する持ち株比率を示している。50社のうち、なんと2/3がNOCによって占められている。 2009年に行われたイラクの入札ラウンドは、この状況を示した一つの例と言える(表1)。IOCの獲得数は、7件にとどまり、NOCの獲得数が、これを上回る15件となっている。(百万boe/d)9.79.75.0??4.03.02.01.00.0GazpromCNPCExxonMobilBPスーパーメジャーNOCTotalPetronasShellChevronPetrobrasConocoPhillipsStatoilONGCnopecCNOOCiS出所:各種資料よりJOGMEC作成アナリシス 欧米民間企業でもあるIOCは、株式市場で他業種の企業とパフォーマンスを比較されることから、株主の顔うかが色を窺いつつ、制約された投資額のなかで事業戦略(得意分野)、収益性、リスクなどを総合的に評価して投資するプロジェクトを選択し、優先順位をつけて投資を行う。一方、NOCは、政策目標を基に、時には収益性や自己の技術力を顧みず、量的確保を目標に外交と資金力を背景に広範な案件に参画を試みているように思われる。このような戦略を可能にしているのは、長期にわたり高騰し今も高価格で高止まりしている油価*2によって得られた大きな資金力と後述する拡大・成長したサービス会社の存在である。 従来、NOCの海外への進出は自国での油・ガス田開発の経験を活かしたものであった。例えば、ノルウェーのStatoilは沖合・極地開発、ブラジルのPetrobrasは大水深開発、マレーシアPetronasはLNG開発など自国内で身につけた独自技術・ノウハウを広く活用するために世界へ進出していた。ところが、2001~2004年にかけては、国内需要が急増した中国とインドのNOCが供給元確保のため、海外進出に本格的に乗り出してきた。これらNOCはここ数年で投資額を拡大し、その結果である海外生産量も順調に拡大している(図2)。 近年では、このNOCによる海外上流事業への参加傾向はますます勢いを増す方向にあると言える。コロンビ表12009年に入札が実施されたイラク石油開発案件への企業参入2010.7 Vol.44 No.438図1スーパーメジャーとNOCの石油・ガス生産量会社名契約獲得件数(その後の合意も含む)1121114222111121ExxonMobilBPShellTotalEniOccidentalPetronas(マレーシア)*CNPC(中国)*Kogas(韓国)*Sonangol(アンゴラ)*CNOOC(中国)*Japex(日本)Lukoil(ロシア)Gazprom(ロシア)*TPAO(トルコ)*Statoil(ノルウェー)*欧米民間企業その他(千boe/d)7006005004003002001000Petrobras2004年2008年(注)ONGCのみ2007年の数値PetronasStatoilONGCCNPCnopeciSCNOOC(注) ブラジルPetrobrasについては、国内で発見された巨大埋蔵量の探鉱・開発に巨額な投資を必要とすることから、国内投資を主とする方向に転換し、例外となる出所:各社年報等より作成図2NOCの自国外生産量*:NOC出所:JOGMEC纓ャ事業のメジャー主導は続く???世界の石油埋蔵量と生産量(千バレル/日)30,00025,00020,00015,00010,0005,000016,42516,425198924,35724,35722,32822,32819992009年■ 中東国別生産量(上位5カ国) サウジアラビアイランUAEイラククウェート1989年5,6352,8942,0242,8381,4081999年8,8533,6032,5112,6102,0852009年9,7134,2162,5992,4822,481中東 全体16,42522,32824,357(千バレル/日)20,00016,00012,00016,72716,72717,70217,7028,0004,000014,48014,480198919992009年北米北米CIS東欧・西欧CIS東欧・西欧中東中東アフリカアフリカアジア・太平洋アジア・太平洋中南米中南米(千バレル/日)16,00012,00014,01414,0148,0004,000013,67813,67813,38813,388198919992009年■ 北米国別生産量 1989年9,1591,9582,897アメリカカナダメキシコ1999年7,7312,6043,3432009年7,1963,2122,979北米 全体14,01413,67813,388(千バレル/日)8,0006,0004,0002,00006,7606,7606,6996,6994,1664,166198919992009年■ CIS東欧・西欧国別生産量(上位5カ国) ロシアノルウェーカザフスタンイギリスアゼルバイジャンCIS東欧・欧州 全体1989年11,1351,5675361,9292681999年6,1783,1396312,9092792009年10,0322,3421,6821,4481,03316,72714,48017,702(千バレル/日)9,0008,0006,0004,0002,00008,0368,0367,5567,5566,4926,492198919992009年■ アジア・太平洋国別生産量(上位5カ国) 中国インドネシアインドマレーシアオーストラリア1989年2,7601,4817196005671999年3,2131,4087367376252009年3,7901,021754740559アジア・太平洋 全体6,4927,5568,036■ 中南米国別生産量(上位5カ国) 2009年2,4372,029685676495ベネズエラブラジルコロンビアアルゼンチンエクアドル1989年2,0126134074922861999年3,1261,133838847383中南米 全体4,1666,6996,760(千バレル/日)12,00010.0008.0006,0004,0002,00006,2176,21719899,7059,7057,5837,58319992009年ナイジェリアアルジェリアアンゴラリビアエジプト1989年1,7751,2804601,1648781999年2,0661,5157451,4258272009年2,0611,8111,7841,652742アフリカ 全体6,2177,5839,705■ アフリカ国別生産量(上位5カ国) ■石油埋蔵量の推移(1989年?2009年)3.4%3.4%9.7%9.7%5.9%5.9%8.4%8.4%6.9%6.9%1989年10064(億バレル)65.7%65.7%6.4%6.4%3.7%3.7%7.8%7.8%9.9%9.9%9.0%9.0%1999年 10856(億バレル)63.2%63.2% 5.5% 3.2% 3.2% 5.5%9.6%9.6%10.3%10.3%14.9%14.9%2009年 13331(億バレル)56.6%56.6%中東中南米CIS東欧・西欧アフリカ北米アジア・太平洋出所:BP統計よりJOGMEC作成(誰が石油(埋蔵量)を持っているか?)出所:Texas大学HPのライブラリーより(http://www.energybulletin.net/print/37329)39石油・天然ガスレビュー\2PIW's Top 50: How The Firms Stack Upアナリシス2008Rank2007Rank1234567899111213141516171819202122232425262728293031323334353637383840414242444444474849501234567891011141213151618171821202224232527262829303132323434364339393750424541464447485238PIWIndex2933374953556587909092101103109113123127129135141152161162168173175184188192222228236258265266269279295295297300301301302302302306314317325CompanyCountryStateOwnership(%)Saudi AramcoNIOCExxon MobilPDVCNPCBPRoyal Dutch ShellConocoPhillipsChevronTotalPemexKPCSonatrachGazpromPetrobrasRosneftLukoilPetronasADNOCEniNNPCQP旧INOC※Libya NOCSinopecEGPCStatoilHydroRepsol YPFSurgutneftegasPertaminaONGCMarathonPDOEnCanaUzbekneftegasSocarTNK-BPApacheCNRSPCKazmunaigasDevon EnergyHessAnadarkoOccidentalOMVBGCNOOCNovatekEcopetrolSaudi ArabiaIranUSVenezuelaChinaUKUK/NetherlandsUSUSFranceMexicoKuwaitAlgeriaRussiaBrazilRussiaRussiaMalaysiaUAEItalyNigeriaQatarIraqLibyaChinaEgyptNorwaySpainRussiaIndonesiaIndiaUSOmanCanadaUzbekistanAzerbaijanRussiaUSCanadaSyriaKazakhstanUSUSUSUSAustriaUKChinaRussiaColombia10010010010010010010050.002332.275.161001003010010010010075.841006510074.146010010010010031.566.4189.9※現在はイラク石油省の一部出所:http://www.piwpubs.com/DocumentDetail.asp?document_id=6484792010.7 Vol.44 No.440纓ャ事業のメジャー主導は続く???がないほどである。アのEcopetrol、アンゴラのSonangol、さらに韓国のKNOCやベトナムのPetrovietnam等、アジア勢も加わいとまり枚挙に暇 NOCの海外進出には、先行者をモデルにするケース(追随型)も見受けられる。コロンビアEcopetrolは、ブラジルで成功したPetrobrasをモデルにしている。ブラジルは1990年代終わり、外資に対し上流資産への参入を一部開放し、国内生産量を200万boe/dまで伸ばした。コロンビアも同様に外資導入を積極化し、これもPetrobrasに倣って国営石油会社を上場企業とするため、株式の一部を売り出して、資金調達の多様化も図り、海外展開の原資とした。2009年初めには、Shellと提携し、国内操業を共同で行うこととし、交換に、メキシコ湾権益の一部を譲り受けた。2010年3月の米国メキシコ湾の探鉱鉱区の入札では、22鉱区に応札し19の鉱区を約1,500万ドルで取得した。この入札では、Shell・BPと並び、取得鉱区数で上位10社内に入っている。 韓国KNOCも、日本の石油公団を参考にして設立された。しかし、石油公団が廃止に追い込まれたのを尻目に、韓国の掲げる2008年以降の資源確保戦略に従い、2009年にはペルーとカナダの地元企業2社を買収する等、投資対象を広範に広げ、積極的に海外への投資を行っている。 他のNOCの海外進出を見ると、アジアではPetrovietnamやタイのPTTEPも周辺諸国のみならず、ベネズエラ、ウズベキスタンやアルジェリアなど世界に進出し、世界で展開する上流プレーヤーに加わった。 近年、大産油国の一角を占めるアンゴラの国営石油会社Sonangolも、2008年からブラジル及び米国メキシコ湾の大水深域の探鉱に乗り出し、2009年12月のイラク第2次油田開発入札において、重質油田の開発を単独で落札して同国政府と正式調印した(Sonangolが十分な技術力を有するかは疑問)。ロシアのGazpromも、欧州地域に発電所・パイプライン等を保有する中下流企業に資本参加してガスの供給先を確保するという長く行ってきた投資戦略を、最近は、海外の上流事業にまで拡大させている。例えば、Sonatrach(アルジェリア)や、PDVSA(ベネズエラ)、Petrovietnam(ベトナム)、Statoil(ノルウェー)等のNOCともパートナーを組んで海外の権益を取得、北米のガスビジネスにも関心を示している。 従来のNOCは、石油・ガスの生産という限定的な収入(資金源)に頼っていたため、国内のインフラ整備をするのが主流(精いっぱい)であった。しかし、近年は海外への進出にあたり、自社の売上収入のみならず、政府資金や国内で操業する民間企業が支払うロイヤルティーを原資として、あるいは政府保証等による債券の発行等の表4海外上流資産の取得事例アンゴラSonangol発表時期内容2009年12月イラク第2次入札において北部Qayara油田、Najmah油田(両油田ともに重質油油田)に単独応札し落札米国ベンチャー上流企業Cobalt Internationalが保有するメキシコ湾大水深12カ所(探鉱鉱区)の25%を取得。その交換に、CobaltはアンゴラBlock9及びBlock12の権益各々40%を取得2008年11月 Petrobrasよりブラジル南カンポスの2鉱区の2009年4月権益を取得韓国KNOC(企業買収のみ記載)発表時期内容表3海外進出を積極化しているNOC2009年2月2009年11月 カナダ企業Harvest Energy(主にオイルサンド事業)を43億カナダドルで買収Ecopetrolと共同で、ペルーのE&P企業Petro-Tech Peruana(ペルー国内に11鉱区を保有)を買収コロンビアEcopetrol発表時期2010年3月2009年4月2009年4月2009年3月2009年2月内容米国メキシコ湾探鉱鉱区入札で、22鉱区に応札して19鉱区を総額15百万ドルで落札。Talismanと共同でペルーの探鉱鉱区(Block 158)を取得Anadarkoからブラジル沖合鉱区の50%を取得米国メキシコ湾探鉱鉱区入札で、35鉱区に応札して26鉱区を総額20百万ドルで落札KNOCと共同で、ペルーのE&P企業Petro-Tech Peruana(国内に11鉱区を保有)を買収企業背景・目的Petronas(マレーシア)Petrobras(ブラジル)Statoil(ノルウェー)ONGC(インド)CNPC(中国)Sinopec(中国)CNOOC(中国)Gazprom(ロシア)Sonangol(アンゴラ)Ecopetrol(コロンビア)KNOC(韓国)PetroVietnam(ベトナム)自国での油・ガス田開発の経験を活かす国内のエネルギー安定供給自国の需要増大や資金力先発NOCを参考にした海外進出海外進出の時期1990年代後半~2001年ごろ~2008年ごろ~第1陣第2陣第3陣出所:各種資料より筆者作成出所:各種資料より筆者作成41石油・天然ガスレビューAナリシス限定的である。メジャーのようにLNG事業にもオイルサンドにも多方面に進出するのではなく、例えば、Occidentalは北米以外では中東と南米にEOR事業(石油増進回収)を強みに進出し、Anadarkoはブラジルや西アフリカなどの大水深域(米国メキシコ湾有数のサブソルト等に関する大水深技術を活用)に投資先を集中させている。中堅企業では、油価等の下落などで収益性が急激に厳しくなると、財務バランスの改善に努め、同時に抜本的な投資戦略の変更を余儀なくさせられるのが特徴となっている。 これらの結果から、過去に当部が注目したスーパーメジャーと中堅企業のIOC二極化が近年はさらに進行しているように思われる*3。例外は、ChesapeakeとXTO Energy等シェールガス革命に係った企業である。このクラスの企業は米国業界の歴史上、最も油価・経済情勢の変動に弱く、リーマンショックのせいで成長は一時的に鈍化し、ファイナンス上も問題を生じるかに思われたが、シェールガス事業の有望性から、その回復は非常に速かった。 スーパーメジャーは多角的に多地域に事業を展開しており、生産量規模で200万~400万b/dの巨大企業である。上流専業の中堅企業は拡大を指向するものの、80万b/d前後を上限に規模拡大に苦戦中である。 この中間に位置する100万boe/d弱から200万boe/dの規模には、Eni(イタリア)とRepsol YPF(スペイン)10年<可採年数ExxonMobilBPShellChevronTotalConocoPhillipsEniRepsolYPF中堅企業5,00010,00015,00020,00025,000確認埋蔵量(百万boe)4,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,00050000生産量(千boe/d)出所: 各社年報等より作成。生産量、確認埋蔵量ともに石油とガスの合計値。確認埋蔵量はすべて米国証券取引委員会(SEC)基準。図3スーパーメジャーの規模(2008年)2010.7 Vol.44 No.442さまざまな手段を用い、膨大な資金の調達が可能になっている。中国は、政府系銀行の産油国への融資実行に対する見返りとして油・ガス田資産を取得するという手法も用いているとのことだ。(2)守りの欧米石油会社の戦略は規模で異なる メジャーはR&Dやパイロットプラントを通じて技術開発を行い、新たな資源開発分野を切り開くことで、過去に困難とされた石油・ガス埋蔵量からの生産を可能にしてきた(石油開発の歴史は技術により困難な資源開発を容易にすること<イージーオイル化>で成立してきたものである)。 メジャーは①上流では、自社で多数の大型オペレーター案件を抱え、そこに他のIOC等をノンオペで入れ、逆に他社オペレーター案件に参加し、リスク分散も行い、②中流では流通の要となる基幹パイプラインを建設・保有し、他社に提供し、使用料を取る。多くのLNGプロジェクトを主導し、上流から、流通の大きな部分を管理し、③下流では大型の主力石油精製所を有し、販売網の多くを管理し、安定的な需要先を確保している。このようなメジャーの体制は長年にわたり、時には他社を吸収・合併する等して行ってきた買収・統合・放棄(M&A&D)によって利潤極大と成長を志向するなかで、築かれたものである。このようにして形成された安定的な財務基盤がさらなる成長・拡大戦略の世界レベルでの実行を可能にしている。 一方、中堅企業は、人材が少なく、資金調達・資源へのアクセスも限定されるため、選択肢を狭め、戦略的に投資を集中する必要がある。このため、メジャー、NOCの関心を引かないごく狭い範囲の特殊分野(成熟地域の回収率向上)特定資源を対象とした技術開発等、資本投下先を戦略的に選択し集中することで効率的な投資を行い、収益の拡大につなげようとしている。例えば、2009年にDevon(2009年生産量68万boe/d)は、その戦略として北米陸上を投資先として選定し、また、カナダのEnCana(2009年第4Q生産量47万boe/d)は北米非在来型ガス開発に特化することとした。また、同じカナダのSuncor(同65万boe/d)は、自国のオイルサンド事業開発をコアビジネスとする石油の一貫操業体制を戦略とした。英BG(2009年生産量64万boe/d)はガス開発&LNG事業に特化した戦略を長期にわたり継続している。 その他、米Aapche(2009年生産量58万boe/d)、米Occidental(同64万boe/d)、米Anadarko(同62万boe/d)は一部で北米以外に進出しているが、その進出エリアは纓ャ事業のメジャー主導は続く???の2社が該当していた。これらの企業も自国に下流部門を有し、一貫操業をして国際展開するメジャー型の企業である。しかし、元は国営で、いまだに政治力学が働きやすい。例えば、2008年末の株価急落時、Repsol YPFの株式20%取得をLukoil(ロシア)が狙っているとメディアが報じ、スペイン政府が政治問題化し、立ち消えとなった例がある。同社の子会社YPFの株式を中国企業が買うわさも度々出ては消えている。これは、同社の収するとの噂生産量が著しく減少し、株価が低迷しているためで、この2年間に15%減、2008年の生産量は100万boe/dを割って95万boe/dまで落ち込み、埋蔵量の伸び悩みも続いている(表6では中堅企業に降格させた)。 Eniでは、2009年9月に機関投資家からガス&パワー部門の分離・分社化を求める要請が出されたが、イタリア政府の反対で成立しなかった。イタリア政府が重要案件に拒否権を有し30%の株主でもあるEniの組織改革は今後も難しいと言えそうだ。表52002年ごろの企業規模グループ生産規模埋蔵量規模上流コアの現状2大コアエリアシェアスーパーメジャー200万boe/d超100億boe以上メジャー準メジャー(中堅企業)100万boe/d超40億boe以上25万boe/d超10億boe以上多様なコアの維持拡大主要コアの維持拡大地場以外のコア確立約4~7割約5~7割ExxonMobilShellBPChevronTexacoTotalFinaElfEniRepsol YPFConocoPhillips9割以上(Amerada)、Hess(Kerr McGee)、Occidental(Burlington)、BG(PanCanadian)、Marathon(Unocal)、Devon、Anadarko、TalismanApache、BHP、(Enterprise)中小小規模小規模コア絞り込み9割以上MurphyCairnSocoEnron O&G(現EOG)(  )内の企業は、その後他者に買収されている。出所:石油・天然ガスレビュー2002年3月号「上流企業のサバイバル 」より抜粋表6現在の企業規模グループ生産規模埋蔵量規模上流コアの現状メジャー100万boe/d超40億Boe以上主要コアの維持Eniスーパーメジャー200万boe/d超100億Boe以上多様なコアの維持拡大ExxonMobilBPShellChevronTotalConocoPhillips中堅企業25万~100万boe/d10億~40億boe/d地場以外のコア確立北米集中Repsol YPFOccidentalAnadarkoApacheBGHessTalismanMarathonDevonEnCanaSuncorCNRChesapeakeEOG海外進出する国営石油会社Gazprom、Petrobras、Statoil、CNPC、Petronas、ONGC、CNOOC、Sinopec他出所:各種資料より筆者作成43石油・天然ガスレビュー. 一貫操業会社(欧米メジャー)の変容(1) 利益率と部門の大きさに相関がない従来の一貫操業モデル IOCの代表であるスーパーメジャーの特徴の一つは、グローバルに探鉱・開発から精製・流通・販売まで一貫操業を展開しているところにある。 下流事業では、主に欧米で流通及び販売網の多くを保有し直接石油販売を行っている。そこには興味深い共通点がある。各社ともに石油生産量より石油精製能力が上回り、さらに精製能力よりも石油販売量が上回っている。つまり、消費者に近づくにつれ、シェア(取り扱い量)が増えていることを示している(図4)。 実際の数値で見ると、スーパーメジャー上位3社の石油生産量は日量150万~250万b/dであるが、サービスステーション等による石油販売量は500万b/dを超えて(千b/d)8,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000石油生産量精製能力石油販売量ExxonMobilBPShellChevronTotalConocoPhillips出所: 各社の年次報告書より作成。(2008年実績)図4上流と下流の関係アナリシスいる。また、従業員数でも精製及び販売部門が大多数を占めている。Shellの従業員10万人中、上流部門に2万人、下流部門に6万人弱。BPも同様で、従業員9万人のうち上流部門に2万人、下流部門に6万人が、配置されている。 しかし、このシェアとは反対にメジャーの投資の大半は、石油・ガスの上流部門に向かっている(図5)。メジャー各社の投資の7~8割は上流部門に向かい、利益も同様で上流部門が主となっている。2008年(WTI平均価格100ドル/バレル)は価格高騰により上流部門での収益額が例年よりさらに押し上げられ、収益全体の8~9割にも達している(図6)。遡って2005年時(WTI平均価格56ドル/バレル)で見ても上流部門は、全体の6~9割を占めていた。1980~1990年代前半にかけて下流事業の低い利益率が注目されて以来、一貫操業会社の間では上流事業に投資を優先する方策が継続され、この傾向は常態化している。 なお、NOCも一貫操業システムを有している場合が多い。例えば、ブラジルのPetrobrasはバイオ燃料を含め顧客への石油販売を行う。中国のCNPCやSinopecも国内精製や販売部門を有している。さかのぼ(2)弱体化するシステム 一貫操業システムは、欧米消費市場の石油需要の伸長とともに拡大してきた。そのなかで、スーパーメジャーの精製と販売拠点は度重なる整理・縮小・統合という合理化の結果、下流事業については経済性の高いものが欧米に主として残っている状況にある。各社からの2008年年次報告によると、ExxonMobilは670万b/dの石油その他石油化学部門精製・販売部門上流部門ExxonMobilExxonMobil上流部門BP BP 一括税引き一括税引き上流部門(税引き前)Shell Shell 上流部門ChevronChevron上流部門Total Total 上流部門ExxonMobilBP Shell ChevronTotal ConocoPhillipsConocoPhillipsConocoPhillips上流部門?30?20?100102030上流部門精製・販売部門石油化学部門その他4050(10億ドル)(億ドル)4003002001000(注)BPは石油化学部門を「その他」に含む。出所: 各社の年次報告書より作成図5分野別投資額(2008年)(注) BPは税引き前、他は税引き後。BPは石油化学部門を「その他」に含む。ConocoPhillipsの上流部門の純利益にはLukoil投資分等の減損を含む。出所: 各社の年次報告書より作成図6部門別の収益率(2008年)2010.7 Vol.44 No.444纓ャ事業のメジャー主導は続く???販売のうち300万b/dが北米内で、170万b/dが欧州内でそれぞれ販売され、全体の70%が欧米地域で販売されていることになる。同社製油所も欧米や日本に集中している。Shellは、ExxonMobilより広範に下流事業を展開しているが660万b/dの石油販売のうち欧米地域は55%である。BPは保有する製油所能力270万b/d(17カ所)のうち欧米に230万b/d(12カ所)、85%が集中している。 しかし、IEAの最新見通しではOECDの石油需要はピークを迎えつつある。スーパーメジャーが、今後、石油需要の増加が見込まれている非OECD地域(図7)に有する製油所や販売拠点は限定的である。非OECD諸国では油価高騰の恩恵によりNOC自らが中心になって下流インフラの投資を拡大しているため、欧米メジャーの下流事業への参入余地は極めて少なくなっている。 メジャー参入の成功例には、サウジのSaudi Aramcoが製油所建設にTotalやExxonMobilなど外資を参画させたケースがある。メジャー参入の失敗例には2009年12月、Shellが交渉中であった中国のSinopecとクウェー中南米諸国アフリカ諸国中東諸国非OECDアジア諸国日本、韓国、豪州、NZOECD欧州北米・メキシコ中国8.0中国8.0インド4.0インド4.0-4.00.04.08.0(百万b/d)12.016.0(注)2007年を基準とする。NZ=ニュージーランド出所:IEA World Energy Outlook2009図7IEAによる2030年までの石油需要の増減見通し中南米諸国アフリカ諸国中東諸国非OECDアジア諸国日本、韓国、豪州、NZOECD欧州北米・メキシコ中国2.8中国2.8インド1.6インド1.60.02.04.06.08.0(百万boe/d)(注)2007年を基準とする。NZ=ニュージーランド出所:IEA World Energy Outlook2009図8IEAによる2030年までのガス需要の増減見通しトKPCとの中国広東省に製油所を建設する計画において経済性を理由に離脱すると表明した例がある。メジャーにとっては、成熟市場である欧米市場の需要減少に伴い弱体化する下流市場でのプレゼンスをどのように維持・増強していくか、これも今後の大きな課題と言えそうだ。一方、上流開発ではNOCがサービス会社を自ら雇って操業している(中国は、同国NOC3社が上流(生産量:9割)、下流(精製:8割)*4ともにほぼ独占状態である)。(3)下流整理と上流事業での新たな試み 現状のスーパーメジャーの戦略的な方針は、石油下流部門の売却である。アジア・アフリカ等の需要成長エリアにおいては販売拠点の拡充に苦戦しつつも、挑戦が必要であり、欧米などの収益性の乏しい製油所や販売網の合理化には再び取り組む必要が生じているようだ。日本と欧州での製油所過剰問題は、環境規制がもたらした代替エネへの転換要請やエネルギー効率(燃費)の向上や、少子高齢化等によるデマンドピークという新たな問題も関わっている。2004~2008年に世界の石油需要量は3%伸びたものの、ExxonMobil、BPとShellの石油販売量は同時期にそれぞれ約10%減少し(図9)、2008年6月に、ExxonMobilは「米国にある1万2,000カ所のサービスステーションのうち2,200カ所を売却して下流部門の縮小化を加速化させる」と発表した。BPも欧米サービスステーションのフランチャイズ化を進めており、この4年間でサービスステーションを15%減らした。Shellは精製能力約10%を削減の方針で、ドイツのHeide製油所及びHamburg製油所、さらに英国の国内第2のStanlow製油所が売却候補として挙がっている。Chevronも同様のスリム化戦略を展開する予定である。これらメジャー等が手放す製油所に精製部門の拡充を急ぐ中国、ロシア(千b/d)8,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000世界の石油需要量(+3%)世界の石油需要量(+3%) 2004年:81.8百万b/d 2004年:81.8百万b/d 2008年:84.5百万b/d 2008年:84.5百万b/d20042008?10%?11%?10%?11%0%?3%ExxonMobilBP Shell ChevronTotal ConocoPhillips出所:BP統計、各社の年次報告書より作成図9石油販売量45石油・天然ガスレビューAナリシス易なNOCと上流事業で組むことで需要先を確実なものにしていこうとする戦略と考えられよう。 このようにスーパーメジャーは、収益性の高い石油・ガス開発事業に投資先を徐々に集約し、販売先を有する新興国の企業と組んで販売力の維持を模索している。う榜ぼ(4)ガス一貫操業体制の野望 IEAの予測では、OECD諸国を中心に石油需要が頭打ちとなる見通しのため、IOCのガス需要への期待は高まる一方である(前頁の図7、図8参照)。世界の石油需要は2030年までに年率0.9%増、世界のガス需要は同1.8%増で伸長するとの予測である。ExxonMobilの長期見通しもほぼ同様である。 1990年代末ごろから一部スーパーメジャーは、期待の高いガス発電や販売を含めたガスの一貫操業ビジネスひょうし、担当部門をの拡大を目指して「ガス&パワー」を標設立した。しかし、想定した成果は上がらず、BPは2007年に、Shellは2009年に「ガス&パワー」戦略を断念し、担当部門は上流部門に吸収された。失敗の理由としては、欧米のガス市場はほぼ自由化されており、下流部門にはガス発電事業者や競争の激しい地方の販売業者が存在するため、上流事業者の参入にはリスクが大きいと判断したものと思われる。一方でLNG等の巨額な投資を伴うガスの使用料金は高いものとなるため、新興国には、まだ時期尚早であった。しかも油・ガス価の高騰やインド、ブラジルなどの民間企業やNOCは、関心を示している。実際、前述のShell製油所の売却先にはインドの民間企業が候補に挙がっている。Petrobrasは米テキサス州や沖縄県の製油所に参画している。2009年の中国ではPetroChina(CNPCの子会社)がシンガポールにある製油所の権益を50%取得し、ロシアではLukoilが、オランダにあるTotalの製油所を取得している。 ここで注目すべきは、スーパーメジャーがこれらの国営石油会社と上流事業で提携等をしていることである。例えば、2009年、Shell、BPは中国NOCと技術的に難易度の高いシェールガス事業で提携している。また、イラク油田開発事業でもパートナーを組んだ他、2010年初めにも、Shellは豪州のCBM事業に中国のCNPCとパートナーを組んでいる。巨大な人口を抱え需要の確保が容(10億ドル)50403020100?10?20?30ExxonMobilExxonMobilShellBPTotalChevronConocoPhillipsConocoPhillips200120022003200420052006200720082009年出所:各社の年次報告書より作成図10純利益の推移(百万boe/d)5.0ExxonMobil4.03.02.01.00.0?BPChevronShellTotalConocoPhillips200420052006200720082009年それ以前E & Pガス & パワー2008年に再編E & PNGLとLNG販売NGLとLNG販売再生エネルギー再生エネルギー精製&販売精製&販売その他その他それ以前E & Pガス & パワーオイルサンド石油製品石油化学2009年に再編E & P(米州外)E & P(米州)下 流新規事業&技術出所:各社の年次報告書より作成出所:各社発表資料よりJOGMEC作成図11石油・ガス生産量の推移図12BPとShellの組織再編2010.7 Vol.44 No.446纓ャ事業のメジャー主導は続く???もあった。しかし、この間、LNGのための受入基地拡大の投資は着実に行われてきた。 Shellは米国東海岸とスペインに受入基地の使用権を以前から保有しているが、2005~2008年にメキシコ、インドにも基地を新設して自前のLNG受入先を7カ所に増やしている。BPも、スペインのほか、中国、米国東海岸(2カ所)に加えて英国に自前の受け入れ基地を確保した。ExxonMobilも2009年にイタリアと英国に受入基地を完成させ、さらに米国メキシコ湾岸にも建設中である。ConocoPhillipsやChevronも米国メキシコ湾岸に大規模なLNG受入基地を建設しそれぞれ2008年に操業を開始している。 2009年は、世界的な不況に見舞われ、LNG需要が弱含み、需要先確保に各社が苦労するなか、6月にShellはクウェートと、夏季(ガス需要)の発電向けとしてLNG3カーゴを供給する契約を締結した。自らのLNGポートフォリオである豪州NWSのLNGから1カーゴ、オマーンのLNGから1カーゴ、サハリン-2のLNGから1カーゴをすべて8月に供給して、柔軟な対応力をいかんなく発揮させた。このように、スーパーメジャーは、上流の供給元と受入基地を複数用意して、柔軟なバリューチェーンを構築し、電力会社等、需要家の信頼を高めている。(5)非在来型資源に集中する上流投資 2000年前後のメガマージャー(mega-merger:大型合併)の背景には、WTI 11ドル/バレルの記録的な低油価に加え、欧米石油の生産量がピークを迎え、減退し始めていることから早急に、欧米外に油・ガス田開発を求め、大規模投資を行い供給を増やすことがあった。既に欧米の在来型石油・ガス資源の代表である浅海域では、探鉱開発の成熟化と限界が問題とされていた。そこでメジャーはゴールデントライアングル等の大水深域への進出やLNG事業のような技術力と巨額資金、そして事業マネジメント能力が要求され、かつ大きなリスクを伴う巨大開発事業と、開放される可能性があったグリーンフィールドに集中的に投資することで成長を目指す戦略に戦略転換を図った。 ところが、その後の油価高騰でグリーンフィールドへの進出も難しくなったため、在来型油・ガス田開発と異なる開発方法を要するLNG開発や大水深開発、非在来型資源の開発(ヘビーオイル、タイトガス、シェールガス、サワーガスなど)に投資を集中・加速している。彼らの資源量リソース(図13、図14)*5を見ると、既にこの種の資源が全体の概ね6~7割を占め、在来型油・ガス田は47石油・天然ガスレビューExxonMobilACID/SOURGASCONVENTIONALDEEPWATERARCTICUNCONVENTIONALGASLNGHEAVYOIL(注)%は未公表。出所:ExxonMobilホームページより図13ExxonMobil の資源ポートフォリオ(2009年末時)ShellHEAVY OILEORCONVENTIONALDEEPWATERSOURLNGGTLTIGHT GAS(注)%は未公表。出所:Shellホームページより図14Shellの資源ポートフォリオ(2008年末時)全体でも2~3割に過ぎない状況にある。例外は、BPとConocoPhillipsで多数の在来型油・ガス田が存在するロシア権益(BPはTNK-BPの50%株主、ConocoPhillipsはLukoilの20%株主)が原因である。 著名コンサルタントのPFC Energyは、2009年から2019年までのスーパーメジャー6社の生産増加はその7割がLNG、大水深、もしくは非在来型ガス、オイルサンドであり、あとの3割が在来型油・ガス田からと予測を出している。特にLNGと大水深からの増加分は全体の約5割を超えるとしている。(6)ガスシフトの色濃く 現在、スーパーメジャーの多くは石油からガスへのシフトを戦略的に明確化している。スーパーメジャーは、石油については、高コストの非在来資源(オイルシェール、オイルサンド)開発、大水深開発など自らの強みを0%60%50%40%30%20%確認埋蔵量に占めるガス比率ShellExxonMobilBPTotalConocoPhillipsChevron200120022003200420052006200720082009年注)確認埋蔵量にオイルサンド埋蔵量分を含む注)SEC(米国証券取引委員会)基準の確認埋蔵量を採用生産量に占めるガス比率50%45%40%35%30%25%20%ShellExxonMobilBPTotalChevronConocoPhillips200120022003200420052006200720082009年出所: 各社の年次報告書等より、オイルサンドを石油生産量として計算。図15ガスシフト活かし、さらに活動範囲を広げているものの、ガスについても、LNGや非在来型ガスを拡充させており、埋蔵量や生産量に占めるガスの比率は、着実に上昇する傾向にある(図15)。 90年代初めからガスシフトの戦略を掲げてきたShellは、埋蔵量ベースでガス比率が6割を超えている。生産量でも2009~2010年に5割を超える。それに続くのがExxonMobilである。同社が前述のシェールガス企業XTO Energyを買収すると埋蔵量ベースのガス比率はほぼ5割に達することになる。(7)化石燃料 VS. 自然エネルギー 地球温暖化対策や環境ビジネスを推進したいOECD諸国政府の思いとは裏腹に、石油会社は厳しい市場環境下にもかかわらず、専門の石油・ガスビジネスに専念する傾向が強い。 2009年1月に発足した米国のオバマ政権は、前政権アナリシスと異なり、地球温暖化問題を重視し、省エネ政策のほかに、風力や太陽光などの自然エネルギー発電、バイオ燃料、あるいはCCS(二酸化炭素地下貯留)をエネルギー政策の中心にしようとしている。従来、この問題に配慮しているEU諸国や日本の政策も同様の傾向を進めているが、スーパーメジャーはこれらの動きに呼応して本格的な投資を行うまでには至っていないようだ。 ExxonMobilの経営陣は、株主が環境重視の要求を年々高めているにもかかわらず、環境ビジネスへの投資を重視しようとはしてこなかった。ChevronやConocoPhillipsも同様である。欧州系のShellは環境投資をPRし、GTL、風力発電、バイオ燃料に長年取り組んではいるが、自然エネルギーへの投資額は2004年以降で累積20億ドル以下で、同社の年間投資額350億ドルの規模からするとごくわずかにとどまっている。 同じく欧州系のBPは企業のロゴを太陽神ヘリオスになぞらえ、「Beyond Petroleum」を掲げ、2005年から環境エネルギー投資に最も積極的に取り組んできた企業である。当初は再生エネルギーを「ガス&パワー」部門に位置づけ発電部門の成長部門とするために投資してきたが、2007年に「その他」部門に格下げした。BPは、環境ビジネスとして「風力」「太陽光」「バイオ燃料」「CCS」の4分野に「ガス発電」を加えた5分野をコア事業として北米を中心に積極投資のイメージを印象づけてきたが、「自然エネルギー」への投資額は2005年以降から5年間石油・ガス開発スーパーメジャーは石油・ガス事業を本業と考えるバイオ燃料CCSCO2CO2CO2CO2SSSSSSSS販売精製出所:JOGMEC自然エネルギー図16スーパーメジャーと自然エネルギー2010.7 Vol.44 No.448纓ャ事業のメジャー主導は続く???で40億ドル、2015年までの10年間で80億ドルが目標であり、年間で平均8億ドルにとどまり、上流投資額の年間150億ドルに比べれば少額である。 1970年代の経験(原子力、サーカス等に進出。失敗)からスーパーメジャーは石油・ガス事業を収益源と考えており、他分野への進出は高リスク判断として消極的である(一部、Totalは原子力に取り組む姿勢あり)。さはさりながら、世間の環境意識が高まるなか、バイオ燃料とCCSには能動的な関与を示す動きは散見される。これらの事業は、石油産業と関係が深く、従来技術との類似性も高いとの認識を持っているように思われる。2009年7月には、最も環境事業に関心が薄いと思われていたExxonMobilも、藻を原料とした石油製品の開発(R&D)に6億ドルを投じ、長期スパンの先行投資を始めている。(8)IOC VS. サービス会社・NOC 忘れてはならないNOCとIOC、サービス会社との関係に触れる。サウジ、クウェートなどは1980年頃から国内石油・ガス操業を独占化してIOCを排除してきた。同じ頃から、IOCは経営合理化のため技術者・研究予算を削減してきた。このような状況に応えたのが、手数料ビジネスを行うSchlumberger*6等のサービス会社である。これが技術の外部調達を可能にし、「技術の商品化」と呼ばれる問題を引き起こしている。当初、サービス会社は個別作業の技術的課題の解決を仕事としたが、今ではプロジェクトを総合的に管理する統合サービスまで行うようになった。在来型の新規の油・ガス田開発事業、埋蔵量の維持管理にサウジ、クウェート、ロシア等のNOCはIOCと異なり、権益を必要としないサービス会社と取り組むことが出来るようになった。技術不足を在来型開発NOCサービス会社LNG開発、サワーガス開発、重質油開発などNOCIOCサービス会社近年出所:JOGMEC図17IOC、NOCとサービス会社49石油・天然ガスレビューサービス会社で補えるようになったため、中国NOC等は、さらに一歩踏み出し、自社の安い人件費と巨大消費市場という強力な武器をもって、中東他の産油国にIOCと競って参入するようになった。 その一方、LNG、サワーガス、重質油等の特殊な技術・プロジェクトマネージメントの経験・巨額な資金等を必要とする分野についてはIOCを入れて事業を行っている。巨大埋蔵量をもつサウジでも、近年、Chevronが重質油開発に参入しているし、クウェートでもShellが重質油開発やガス開発に参入している。 従来からメジャーなどIOCと共同で事業を進めてきたアブダビ、オマーン、カタール等でも、多様な資源開発にも興味を示し、開発に着手している。2009年にはアブダビ国営石油(ADNOC)がサワーガス開発に向けてConocoPhillipsと正式調印し(なお、2010年4月、ConocoPhillipsは採算性を理由に撤退を表明)、ヨルダン政府はオイルシェール(パイロット)の開発をShellと正式に合意し、オマーンはBPとタイトガス層を対象とする非在来型ガス開発に着手する等の実績が散見される。(9)やはり、中東の埋蔵量からの離脱は難しいのか 上記(8)で引用したプロジェクトは、図ったわけではないが、全て中東のものであった。中東の存在はやはり大きいのか、表7は、E&P社がIHS社のデータベースをもとに1999年からの巨大埋蔵油・ガス田のランキング20をまとめたものである。中東8、中南米5、CIS4、アジア2、オセアニア1となっており,他地域に比べ、行われた探鉱が少ない中、最多ということで中東のポテンシャルは依然として大きなものといえるだろう。これに加え、同社は、同期間で2Pレベルの百万boeの油田数も比べている。これによれば、CIS46%、極東8%、中南米16%、中東27%、オーストラリア3%となっている。 一方、中東側にも歓迎すべき動きは一部にある。将来の生産減少予想から、イエメン、オマーン、トルコ、シリア、ヨルダン等は、新技術による探鉱を求め、ライセンスラウンドを国際的に実施するとしている。これにより、IOC等の落札者は、非在来型資源への接近機会、増進回収事業への投資促進機会等が得られ、一方、上記各国は、将来の可能性について多様化が進むことを期待しているとのこと。また、イランでは初の大水深プロジェクトがカスピ海でPetrobrasにより計画されている。この他、黒海、紅海、アラビア湾でも海上探鉱の予定がある。やはり、中東から離れることは難しいようである。 注目されるのは前述の2009年イラク入札のように、AナリシスIOCがサービス会社化という動きまで始めたことだ。この入札は、サービス契約による在来型資源を対象としたもので落札者の多くはNOCであったが、収益性に厳しいExxonMobil、BP、Shellなどのスーパーメジャーと中東をコアエリアの一つとする中堅企業Occidentalが参画している。 この契約は20年以上にわたる長期契約で、年単位のサービス契約とは異なるが、この種の契約を敬遠してきたメジャーが参入に踏み切ったことは画期的である。この契約方式に、不満の消えないスーパーメジャーのトップもいるようだが、膨大な埋蔵量を有する産油国イラクに先陣を切って、進出することで橋頭保を築こうとの戦略が優先したようである。表71999年からの世界の巨大油ガス田発見上位20ランキング地域国名油ガス田名1234567891011121314151617181920C.I.S.C.I.S.アジア中南米中東中東C.I.S.中南米中東中東中南米オーストラリアC.I.S.中東中東中東アジア中南米中南米中東トルクメニスタンカザフスタン中国ブラジルイランイランアゼルバイジャンブラジルイランイランブラジルオーストラリアロシアサウジアラビアイランクウェート中国ブラジルボリビアイラクYoloten-OsmanKashagan蘇里格(Sulige)TupiKishAzadeganShah DenizJupiterYadavaranTabnakIaraJanszKamennomysskoye-MoreNibanSefid ZakhurUmm Niqa普光(Puguang)JubarteSabaloMiran West 1出所:E&P社資料参考にJOGMEC作成陸上/海上陸上海上陸上海上陸上陸上海上海上陸上陸上海上海上海上陸上陸上陸上陸上海上陸上陸上億BOE(2P)246181666565645743404035342928232121212020発見年月2004年7月2000年7月2000年8月2006年10月2005年9月1999年3月1999年7月2008年1月2001年9月1999年11月2008年9月2000年5月2000年7月1999年11月2007年6月2006年3月2003年7月2001年1月1999年12月2009年5月結びにかえて[石油の無い生活など考えられない] ある晩、BPの事故を報道するキャスターが、スーツを着込み、ネクタイ、ポケットチーフまでして、大変涼しそうなスタジオで、したり顔で「海洋石油開発は、自然への冒涜で、早急に自然エネルギーに転換するべきだ」といった主旨の発言をしていた。 この人は、「石油を使わない生活」がどんなものか、わかっているのだろうか。その状態の生活水準に耐えられるのだろうか。環境問題を声高に叫ぶ人たちは得てして石油エネルギーの使用を取りやめることによって、自分の生活水準が維持できなくなるとは考えていないようだ。レジ袋を節約して誇らしげにふるまう人々は、ペットに何種類もの洋服を着せ、種々のエサを用意し、ゴミを発生させているが、自分では環境派であることに疑いを持っていない。 石油が無くなると、石油エネルギーで動くもの(イン2010.7 Vol.44 No.450纓ャ事業のメジャー主導は続く???フラ)―― 飛行機、船舶、間接的には電車。そして工場。石油で作るもの ―― 医薬品、化成品、ワイシャツ等の衣類、プラスチック、ゴム、アスファルト等はどれも安定的にシステム化されていることから、これを維持することは難しいと思料される。もし、新システムに移行するとすれば、壮大なエネルギーが必要になる。そのエネルギーも十中八九、石油が担うことになるだろう。なぜなら、石油は常温常圧下で安定した液体で、揮発性も高くなく、貯蔵・輸送に問題なく、消費現場でも出力調整が容易な唯一のエネルギーだからである。米Manhattan InstituteがEIA等から作成したとされる各種エネルギーを仕事量(w/m2)で比較した報告ではバイオエタノールが0.05、風力が1.2、太陽が6.7、天然ガス井(6,000feet3)28、石油井(10b/d)27、原子力56という数字が出ている。輸送可能で密度が濃く使用が容易な唯一の資源が石油であり、この点からも上記の移行のためのエネルギーも石油を使用することが一番合理的であることがわかるだろう。これに続くのが天然ガスである。気体のため輸送に難がある分、劣後するが、そのCO2排出量が石油より3割程度少ないという強みもある。[天然ガス需要は、急増するか] 西側の在来型ガス田が激減したため、世界中の巨大ガス田からのPL、LNG化という流れが一変しそうだ。その理由が、米国の「シェールガス」を始めとする非在来型ガス資源である。非在来といいながら、メジャー保有の資源量の7割はこの種のものであり、米国の使用するガスの半分以上も既にこの種のガスで、回収率次第では100年ともいわれる埋蔵量があり、世界中でも大きな埋蔵量が期待されている。メジャー企業の全てがこの技術をもとに世界展開を志向中である。この革命が、Gazpromや、世界のLNG市場に既に影響しているのは既報のとおりである。 さらに革命は拡大する可能性を秘めている。それは、上記の巨大埋蔵量が、米国民の大半が望む、積年の悲願である「中東の石油支配からの脱却、エネルギー自立」を成就させるべく、天然ガスへのさらなるエネルギーシフトが起きれば、上流事業を再びメジャーを始めとするIOC主導の世界に回帰させるかもしれない。この他、米国メキシコ湾の浅海での大深度掘削事業にも注目したい。浅海であればパイプラインも整備されていることから、石油のみならず、ガスの活用もさらに図れると思われる。ガスは、日本では幹線パイプラインがないため、電力・石油に比べ評価は低いが、例えば、都市ガスは発生源の100%を消費者が100%使用可能な効率のいいエネルギーで、電力は発生源の100%は、発電時に33%、送電時に30%消失し、消費者は37%が使用可能となるとのことだ(ガスエネ新聞、2010/6/23より)。つまり、上記で石油の2倍の数値をもつ、原子力以外の発電では、ガスは電力に優る効率性の高いエネルギーであることは認識しておく必要があるものと思料される。[再生可能エネルギー] 米国では、過去も今現在も中東石油への依存から離脱し、エネルギー自立を望む国民が圧倒的多数となっている。このため、石油の使用量を減らすため1949年から、現在まで60年間に合計100億ドル超が再生可能エネルギー(水力、風力、バイオ燃料他)に投じられてきた。しかし、1949年のエネルギー構成比では9%が水力、91%が石炭、石油、天然ガスがあったものが、2008年は7.5%が水力、風力、バイオ燃料他、92.5%を石炭、石油、天然ガス、原子力と再生可能エネルギーの比率は減ってしまった。この間、炭化水素エネルギーのシェアを奪ったのは、唯一原子力の0~8%への上昇のみであった。このような厳しい現実が本稿のメジャーズの再生可能エネルギーへの投資行動にも反映されているものと思われる。今後の技術革新が望まれるが、この大きなギャップを埋めるのは容易ではない。[BPの事故。しかし海洋事業は続く] 事故の話に戻る。今まで米国メキシコ湾の海の関係者にとって石油会社は決して迷惑な存在ではなかった事実を忘れてはならない。Deepwater Horizonの事故が起きるまで、海底油田から40年間大きな原油漏れはなかった(ちなみに、メキシコ湾では過去10年間に1,000坑以上の井戸が掘削されている)。全米研究評議会(NRC)の調べでは、米国海域に漂流する石油のうち、海底油田によるものはわずか1%で、タンカーやパイプラインが原因となるものも4%程度。これに対してタンカー以外の船から漏れるものが33%、自然の浸出が62%と、はるかに多い(ただし、産業的な流出は濃度が高く、それだけ被害も大きくなる)とのことだ。 このような状況もあり、米国内には早期の新規海洋油ガス田開発の再開を望む声も大きい。無論、事故の原因究明と、その対策を講じることは必要だが、日本の一部でおきているような海洋掘削無用論にまで発展するのは行き過ぎと考える。油価暴落時に、日本が上流事業のモラトリアム状態になったのをしり目に、中国は世界有数の3大石油会社を築き、埋蔵量の確保に成功した。再び同じ失敗を繰り返さないようにするべきではないだろう51石油・天然ガスレビューゥ。世界の上流プレイヤーはNOCが力を得たことにより、益々競争がし烈になっているのだから。2.52.0アナリシス2009年2月?2010年1月の株価指数の推移ExxonMobilPetrobras(ADR)Mar-09Apr-09Shell(ADR)PetroChina(ADR)SchlumbergerSinopec(ADR)2009年2月初=1.0として表示May-09Jun-09Jul-09Aug-09Sep-09Oct-09Nov-09Dec-09Jan-10出所:Google financeデータよりJOGMEC作成図181.51.00.5Feb-09[NOCの隆盛とIOC] 本稿はIOC中心に業界の現況をまとめたものだが、あらためて想像を遥かに超える存在となり、隆盛を極めるNOCの実態には隔世の感を感じている。日本の石油開発の成長に比べ、なんと成長が早いことか。1999年10月レビューにあるが、当時、非効率な体制とされていたNOCは民営化のうずの中に巻き込まれ、各国は先を争うようにして民営化を目指していたのである。当時は、アジア危機を契機とする油価下落、産油国の経済、財政状況悪化もあり国家運営という非効率性体制を維持することに非難が集まっていた。Petrobras、Pertamina、中国企業等は、このただなかにあった。 現在のようなNOCの隆盛を見ることになろうとは当時は誰も夢にも思わなかったことだろう。隆盛ぶりは、NOCの過去1年の株価からも明確に見てとれる。当時、盤石と思われた欧米スーパーメジャーの株価はリーマンショックの煽りもあり、動きが鈍い。西側からの富の移転は想像以上といえよう。 Earnst & Youngは自社のHPで、この厳しい事業環境下、スーパーメジャーは、資源へのアクセスを確保するため産油国・NOCに対し、サービス会社には出来ない以下の一括サービスを提供することで対処しようとしているとの分析だ(筆者にとっては、まるでコンビニかデパートかといったワンストップサービスの提供である。しかも今後ライバルとなる相手を育てることになるという後顧のうれいまで含んでいる)。 ① 市場へのアクセスの提供   JVを組んで、精製・マーケティングの豊富な経験を活かし、NOC資源のマネタイズ(現金化)を容易にさせる ② 最新技術・移転   NOCの多くが関心を持ち、IOCメジャーが長年の経験を有する巨大R&D投資を要するGTL、重質油引き出し、バイオ燃料等の共同研究を実施する。IOC、NOC、サービス会社の株価指数の推移 ③ 下流インフラ投資   精製化学施設の開発でバリューチェーン全体からの利益を生み出すと同時に拡大する需要の中心に接近することで新たな可能性を生み出す。 ④ 教育・技術サービス   高度な訓練と教育により、NOCの人的資本を高めNOCの競争力を向上させ。雇用創造にもつなげる ⑤ 社会的・インフラ利益   IOCは戦略的にCSRを行うことが期待される。地方コミュニティにおける経済開発を達成することがホスト国の熱望する大きな価値の提供となる メジャーにのみ可能な上記の一括サービスを提供し、今後はトータル・コーディネーター的な役割をも担うことになるのかもしれない。 このような状況下、一つのヒントは上流投資に柔軟性を持つことにあると思料される。 中・韓の企業は欧米サービス会社あるいは中南米企業を買収した。そして投資銀行もシェールガスの有力企業Chesapeake社に投資している。日本の海外上流事業への資金投入は両国より早期に始まったが、その投資の柔軟性は両国に遠く及ばない。特殊技術、現地地質情報等に優位な企業・人財の獲得と日本独自の技術を広く求め、適用可能なものを探し、発展させる等の新たな施策が必要なのではないだろうか。2010.7 Vol.44 No.452Xーパーメジャーが主導するLNG事業(稼働中または建設中の案件)■ LNG事業 Shellは、第1次石油危機を予見し、自社の損失を軽減させた名高いシナリオプランニングにより、1990年代に入ってからLNGを軸にしたガス事業の拡大戦略を加速したとされる。その後2000年前後から他のスーパーメジャーもこれに追随した。この10年間でアブダビ、オマーン、カタール、ナイジェリア、ノルウェー、イエメン、ロシア、赤道ギニアが新たなLNG輸出国に加わった。赤道ギニア及びノルウェーの案件以外は、スーパーメジャーの主導によるものである。現在稼働中の全LNG事業の権益保有者を生産量比で見ると、各国の国営石油会社の合計が全体の50%を占め、ShellやExxonMobilなどスーパーメジャーは24%を占めている。民間企業全体の保有比率で見ると、スーパーメジャーは5割を占めている。 今後は、太平洋・アジア諸国(豪州や東南アジア)からのLNG開発と生産増が期待される。豪州の北西大陸棚では、Woodside(Shellが34%株主)のPluteLNG(能力2,000万トン/年)が2011年に生産開始予定で、ChevronをオペレーターとしExxonMobilとShellがパートナーとなっているGorgonLNG事業(能力1,500万トン/年)は2014年に生産開始の計画である。その他、豪州では、ChevronのWheatstone-LNG事業やConocoPhillipsのCBM-LNG事業などその他のLNG開発計画も数多く検討されている。豪州以外では、2009年にExxonMobilが主導するパプアニューギニアLNG事業が建設段階に入り2014年の生産開始を目指している。マレーシア、ブルネイ、ナイジェリア、オマーン、サハリン-2※1、カタールガスⅣ※2アルン(インドネシア)、カタールガス、カタールガスⅡ※1、ラスガス、ラスガスⅡ、ラスガスⅢ※1、パプアニューギニア※2ボンタン(インドネシア)、カタールガス、カタールガスⅡ※1、イエメン※1トリニダード、アブダビ、タングー(インドネシア)※1アンゴラ※2、ゴーゴン※2エジプト、アルジェリア、NWS(豪)*、スノービット(ノルウェー)、赤道ギニア(以上が稼働中)、ペルー※2、Pluto(豪)※2*※1:2009年に新規に稼働開始※2:現在新規建設中*: ShellはWoodsideの34%株主。したがって、Woodsideが一部権益を保有するNWSやPlutoについてもShellは主要権益保有者。(注) カタールやマレーシアのLNG事業では同国の国営石油会社(NOC)が50%以上の権益を保有して民間企業と実質的な共同事業を行っている。出所:JOGMEC天然ガス関係資料(2009)を参考に作成ConocoPhillips アラスカ、ダーウィン(豪)、カタールガスⅢ※2その他が主導するLNGLNG事業オペレーターまたは主体的な事業者ShellExxonMobilTotal BPChevron 日本のLNG輸入量日本のLNG輸入量19901992199419961998200020022004200620082010年300250200150100500LNG液化プラント容量(百万トン/年)その他企業ChevronConocoPhillipsTotalBPExxonMobilShell産ガス国政府またはNOC出所: JOGMEC天然ガス関係資料(2009)を参考に作成出所: 各種資料よりJOGMEC作成■ 大水深 大水深域の探鉱開発は、1980年代からのメキシコ湾大水深域での探鉱・開発が成功し、南米のブラジルや西アフリカのナイジュリア・アンゴラに波及した(ゴールデントライアングル)。 1993年ごろからの鉱区付与及び探鉱開始により、アンゴラではExxonMobil、BPやTotalが相次いで大規模油田を発見。開発移行期に入った2000年ごろから大水深域からの生産量は大きく伸長してきた。現在、同国では大水深域から150万boe/dを生産する。同時に、スーパーメジャーは後続の中堅企業も加えて既に大産油国であったナイ既存事業のスーパーメジャー権益分LNG比率世界のLNG液化能力の推移53石油・天然ガスレビュー上流事業のメジャー主導は続く??? 参考:原動力となるスーパーメジャーの存在Aナリシスジェリアの大水深域に投資先を広げ、関心は赤道ギニア、コンゴ、モーリタニア、コートジボワールなどの周辺諸国沿岸域に拡大している。ナイジェリア大水深ではEniとShellが生産をスタートさせていたが、近年2008~2009年にChevronやTotalもAgbani油田、Akpo油田をそれぞれ生産開始させた。これらの大水深域生産は大半がスーパーメジャーがオペレーターである。 一方、ブラジルでは1999年のPetrobrasの独占終了後、メジャーや中堅企業が沖合大水深エリアに限定的な参入が認められ、外資による探鉱開発が始まった。その成果として、2009年にShellとChevronが、大水深油田からの生産をそれぞれ開始した。一方Petrobrasは米国メキシコ湾をはじめとする大水深域でオペレーター・パートナーとして技術を磨き、世界有数の大水深技術を獲得した。近年大発見により注目が集まるプレソルトエリアでも、Petrobrasは大多数の鉱区のオペレーターである。ExxonMobilとShellがオペレーターである2鉱区では試掘作業中である。 大水深開発は経験を有するオペレーターが徐々に増えてきているが数は限られる。陸上や浅海の在来型ガス開発についてはNOCや中堅企業などが主体になるケースも多いが、北米外の大水深開発になるとその開発及び操業実績を有するのはスーパーメジャー(6社)の他ではメジャーのEni、メキシコ湾での実績を有して国際展開するMurphyやHess、インドRelianceなどの独立系企業、加えてブラジルPetrobras、ノルウェーStatoilなど一部のNOCに限られる。合計しても生産操業実績まで含めれば十数社程度に限られる。近年、メキシコ湾で培った経験を活かして、中堅企業AnadarkoやNewfieldなどの米系企業もオペレーターとして探鉱開発段階に進出し始めた。 現在、スーパーメジャー等は東南アジアや南アジアの大水深域に注目している。Chevron、ShellやExxonMobilを筆頭に欧米企業によって新たな探鉱が行われている。もともと、MurphyやHessなど欧米中堅企業が探鉱していたものだが、期待の高まりとともにスーパーメジャーも次々と参入した。マレーシアでは、Murphyが2007年にKikeh油田で同国大水深域から初の生産を開始。ShellはGumusut油田を2005年に発見し開発中である。ChevronはUnocal(2005年にChevronが買収)が1999~2003年に発見していたカリマンタン島東沖合での大水深ガス田群の開発を進めており、2015年ごろに生産開始を予定。ExxonMobilは2009年にインドネシアのマカッサル海峡大水深域とフィリピン大水深で試掘を実施している。BPやConocoPhillipsはインドやバングラデシュのインド洋大水深域で探鉱中である。 その他、ExxonMobilやChevronが近年Petrobrasとともに黒海の大水深エリアの探鉱に着手している。■ 非在来資源の開発(1)非在来型石油(新たに二つのサウジアラビア) 先に注目を浴びた非在来型石油は、カナダのオイルサンドとベネズエラのオリノコタール(超重質油)に代表される。IEAによればその埋蔵量は、合計1兆から2兆バレルに達し、少なくとも生産可能な量が それぞれ2,600~2,700億バレルはあるとされる。これは、世界最大の産油国サウジアラビアの埋蔵量2,600億バレルに匹敵する。つまり、世界は新たに二つのサウジアラビアを手にいれたことになる(この他に現時点では開発を急がないオイルシェールもある)。・カナダのオイルサンド 2002年の価格高騰期に注目されたのが、カナダのオイルサンドである。30年前から操業するExxonMobil(またはExxonMobilの子会社Imperial)や加Syncrudeが事業を拡張したほか、2003年にShell/Chevronが露天掘りによる生産を開始した。同時期に、加EnCanaやPetro-Canada(現Suncor)等のカナダ企業やConocoPhillipsが深い層からビチューメンを回収するSAGD(Steam Assisted Gravity Drainage)法による生産で成功を収めて、オイルサンド事業への投資が加速した。TotalやMarathonも本格参入し、既操業者のShellやConocoPhillipsもポジションを追加して優良なポートフォリオ資産の一つに位置づけられるようになった。 2009年、他社が金融危機の影響でオイルサンド投資を後退させる中でも、ExxonMobilは露天掘りのKearl鉱区の開発に着手する。・ベネズエラのオリノコタール同国の政治情勢もあり、事業にそれほど進捗があるわけではない。生産中のプロジェクトに、ノンオペレーターでTotal、Chevron、BPが入っている(オペレーターはPDVSA)。この他、CNPC、ロシア、日本企業などが参入している。2010.7 Vol.44 No.454纓ャ事業のメジャー主導は続く???(2)非在来型ガス(巨大産ガス国カタール級) 最近、注目されているのが、シェールガスやCBM(コールベットメタン)の非在来型ガス開発である。この非在来型ガス資源も在来型以上に膨大な埋蔵量を有すると期待されている。米国だけでもそのポテンシャルは615~800Tcfと推定されている(図)。また、砂岩層でも浸透性の悪いタイトサンンドガスを含めれば非在来型ガス全生産量は米国内生産量の50%にも達し、既にマイナーな非在来というイメージでは推し量れないレベルに達している。 米国では、CBMや、タイトサンドガスの開発には既に長期の経験があったが、2003年~2007年において、急騰するガス市場を背景に中堅企業のDevonやAnadarkoや当時中小企業であったChesapeakeやXTO Energyなどがシェール(頁岩)に貯留するガスを開発する事業に集中投資を始め、多くのスーパーメジャーもその後、続々と参入した。 BP、Totalは、地元企業Chesapeakeとの共同事業に参加し、ShellやExxonMobilは非在来型ガス開発の地元専業者XTO Energyを買収することで米国において参入の遅れをカバーするだけではなく欧州の事業にも拡充を図っている。ポーランドやドイツなどで開発評価を行っている。Shellは中国や南アフリカにも進出している。 米国において、シェールガス開発が革命的に発展した最大の要因は新しい技術適用による開発コストの低下である。水平掘り技術、割れ目を人工的に作る水圧破砕技術や割れ目のモニタリング技術などの最新の開発技術を利用して、開発経験を積み重ねることによって、低コスト開発を実現させた。シェールガスの探鉱開発コストは良好なところで百万Btuあたり1ドル台前半から2ドル台前半で、生産コストが同1~2ドル程度で、あわせても3ドル~4ドル/百万Btu台である。高くても7ドル/百万Btuで採算性が得られる米国のシェールガスが大半といわれている。 また、これらのスーパーメジャーには豪州やインドネシアのCBMの事業化計画もあり、新たな投資先を確保しつつある。米国のガスポテンシャル資源評価(Tcf)出所:American Natural Association■ その他 その他に、新規エリアとして北極域の油・ガス資源の開発にも取り組んでいる。Shellが2008年に20年ぶりに既発見エリアである米国アラスカ北部沖合のチャクチ海に再参入し現在、試掘を準備している。BPやExxonMobilはカナダ側の北極海域に参画して探鉱を行っている。【参考文献】1. アニュアルレポート2. 米国証券取引委員会(SEC)提出の10-K(年次報告書)3. 石油・天然ガス資源情報 2008年9月11日:舩木 弥和子 「コロンビア:南米の優等生」4. 石油・天然ガス資源情報 2009年5月22日:坂本 茂樹「アジア太平洋:国際石油企業の上流投資動向;深海とフロンティア」5. 石油・天然ガス資源情報 2009年9月21日:坂本 茂樹「豪州: 新規発見ガス田の開発可能性から見る、次世代LNG案件の動勢」6. 石油・天然ガス資源情報 2008年6月30日:市原 路子 「米国:非在来型を中心に好調な天然ガス探鉱・開発」7. 石油・天然ガス資源情報 2009年7月16日:伊原 賢 「石油開発サービス会社の掘削・開発・生産技術トレンド55石油・天然ガスレビューAナリシス8. 石油・天然ガス資源情報 2007年7月20日:野神 隆之 「石油・天然ガス産業:技術開発の潮流-商品化と差別化」9.石油・天然ガスレビュー 2002年3月号 池ヶ谷 清貴、佐々木 育子 「上流企業のサバイバル」10. 石油・天然ガスレビュー 2007年3月号 若生 芳明 「ペトロナス成功の秘密」11. 石油・天然ガスレビュー 2009年9月号 猪原 渉 「本格的な石油開発に向け動き出したイラク」12. 石油・天然ガスレビュー 2009年11月号 竹原 美佳 「ドルから資源へ、金融危機後の中国における石油資源確保の動き」13. 石油・天然ガスレビュー 2009年9月号 池ヶ谷 清貴 「米国の「甘い石油(Sweet)」に係る少しも甘くない話」14. 石油・天然ガスレビュー 2009年5月号 池ヶ谷 清貴 「実は安い上流コスト」 15. その他、E&P誌、Forbes誌、PIW HP(2009.4~2010.5)<注・解説>*1: 『台頭する国営石油会社(NOC)』では、NOCを ①膨大な自国資源を自主開発・生産し、輸入国の下流事業に投資。海外の上流には進出する必要のない伝統的な国営石油会社(Saudi Aramco、KPC、NIOC、PDVSA、Pemex) ②大生産国かつ大消費国。政治主導と企業利益追求の折衷型(CNPC・Sinopec、Gazprom、ONGC) ③行動様式が民間営利企業で最も上下流の国際展開に積極的(Petronas、Statoil、Petrobras)として整理している。*2: 資源情報2009年7月16日「石油開発サービス会社の掘削・開発・生産技術のトレンド」より2008年ベースで世界の原油供給量の40%の技術コストは10ドル/バレル未満、70%のそれは20ドル/バレル未満となった。技術コストが30~40ドル/バレルの範囲にある供給量は日量数百万バレル程度しかない。技術コストが40ドル/バレルを超す例外としては、開発の遅れや開発費の高騰がみられるカザフスタンのカシャガンや新規のオイルサンド開発が挙げられる。ブラジル深海の大規模発見で注目される「プレソルト」構造の技術コストも30~40ドル/バレルの範囲に収まると推定している、資機材や油田開発サービスコストのインフレも2009年に入ってからは落ち着きを取り戻している。他にレビュー2009年5月「実は安い上流コスト」参照のこと。*3: 2010年4月のBPの事故が、大水深を始めとする海洋掘削事業の規制強化に繋がり、事故発生時の賠償責任の上限額引き上げ、除去費用の事前確保等が行われれば、負担に耐えられる大企業(IOC等)と事業を断念する小企業とに分かれ、規模の二極化はさらに促進されることになる。*4:石油天然ガス資源情報 2009年5月竹原美佳「中国:メジャーズの中国国有石油企業への接近」*5: Shellは「Resources」を推定埋蔵量(2P)と条件付き資源量(2C)と定義している。ExxonMobilは明確な定義付けは示されていないものの、将来、確認埋蔵量(1P)に移行すると考える石油・ガス量と説明している。*6: Shulumbergerは、Saudi Aramcoのフセイニ元副社長に「サウジアラビア油田開発に不可欠だ」と言わしめ、同国の石油生産能力を25%引き上げる計画の中核となっている。また、メキシコ、ルーマニア、マレーシアでもNOCと契約し、油田の回収率向上等に寄与している。同社の売り上げは2006年時点でNOC分がIOC分を凌駕しているとのことである(The Stelth Oil Giant2008年1月:Business Week誌)。他にレビュー2008年5月「もっと石油を、もっとガスを、そのためにもっと熟練技術者を」参照のこと。執筆者紹介池ヶ谷 清貴 (いけがや きよたか)早大商卒。いちおうMBA。調査部の企業・市場経済ウォッチャーを自認。時にはいらないアドバイスをしている。レビューにはM&A「プーリング」、環境「CDM」等、一発屋的著作がいくつかある。他、国備売却スキーム発案、本契約文書最終調整。出向先の節税、数種の節約スキーム等、何でも屋のマーべリック。諸先輩の圧力に負け、紹介文初登場です。市原 路子 (いちはら みちこ)JOGMEC調査部、北米・企業を担当。2010.7 Vol.44 No.456
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2010/07/20 [ 2010年07月号 ] 池ヶ谷 清貴 市原 路子
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