日本上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言
レポートID | 1006412 |
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作成日 | 2010-07-20 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
分野 | 技術探鉱開発 |
著者 | |
著者直接入力 | 角和 昌浩 |
年度 | 2010 |
Vol | 44 |
No | 4 |
ページ数 | |
抽出データ | アナリシス昭和シェル石油㈱ チーフエコノミスト名古屋大学エコトピア科学研究所 客員教授角和 昌浩日本上流産業の大水深チャレンジ!アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言はじめに BPによるメキシコ湾水深域での大爆噴事故の影響で、近い将来、世界的に大水深域での安全・環境規制の強化も想定されるが、それでも極地と並んで大水深域は、将来の在来型石油・天然ガス資源の探鉱対象として最も有望視されている。残念ながら日本の上流業界は、これまでのところ大水深域探鉱に大きく出遅れた感は否めず、将来のビジネス・ニッチが制約されかねない。そこで、「日本の上流企業が大水深域にオペレーターとして本格参入するためにはどうしたらよいか」、幅広い日本の上流関係者の知恵と情報をボランタリー・ベースで集約するブレーンストーミング・ワークショップを、JOGMEC調査部が昨年末から今年春にかけて3回主催した。その議論の展開と結論を、このシリーズのファシリテーターを務めた、昭和シェル石油の角和昌浩氏が紹介する。1. なぜ今、大水深なのか? 現在、世界の民間上流業界は大きな壁に直面している。それは、優良資源に対するアクセスが主として資源国側の政治的な理由(環境保護的なものも含まれる)から、近年、大きく制限されてきたからである。いわゆるメジャーズのトップからも、しばしば「イージーオイルの払底」という表現で、この問題の困難性が語られる。メジャーズにとってのイージーオイル、すなわち資源量が豊富、技術的に開発が容易で、かつ地理的条件も優良で、契約条件・政治環境も問題が少ない資源に、民間上流企業が事業参入できなくなってきた背景にはいくつかの理由がある。 一つには資源国が設立した国営石油会社が、近年技術力とサービス範囲を画期的に向上させた上流技術サービス会社を利用しつつ、自ら資源開発を行えるようになってきたからである。また、探鉱開発しやすい資源は既にかなりの程度開発済みだ、という事情もある。1991年の東西冷戦の終結と資源価格の低迷によって90年代半ば以降に到来した「純粋探鉱から大型グリーン・フィールド開発への転換」という世界の上流産業のビジネストレンドは、もはや終わってしまったようである。最近のイラクにおける地質的・技術的に極めて優良な多数の既発見・未開発巨大油田の権益開放は、“遅れてやってきたグリーン・フィールド開発”で、まさに例外的な現象である。契約条件や治安状況も勘案した政治的な条件を考えると、イラク案件もイージーオイルとは言えないだろう。 そこで、国際的に事業展開するメジャーズは、近年、上流投資の戦略分野を、非在来型石油資源開発、LNG開発、および深海探鉱開発に絞ってきている。直近の動向を見ると、非在来型石油案件が非在来型天然ガス開発に取って代わる傾向が顕著であるものの、メジャーズの深海域の資源探鉱開発に対する関心はますます強まっている。 日本の上流業界もこのような世界的な事業環境や競争環境の変化に沿って、非在来型石油開発やLNG開発について、比較的積極的に検討している。が、こと深海/大水深の探鉱開発に関してはいまだ本格的にかかわるところは少ない。振り返って、図1に示すように、IHSが昨年秋にまとめた世界の上流ビジネスの今後の有望地域と分野の大半は、深海=大水深域の探鉱開発(Deepwater)であり、今後ますます、深海=大水深海域の探鉱開発は重要になってくると考えられる。日本の上流産業としても、遅まきながら、このような案件に本格的に取り組み始め、ノウハウを蓄積していかないと、将1石油・天然ガスレビューAナリシス来の発展に支障をきたすやもしれない。 以上の情勢分析が、大水深域における探鉱開発というテーマで勉強を始めたきっかけである。以下の記述では、水深1,000m以深を「大水深」と呼ぶ。 なお、BPが、本稿執筆現在、苦闘している米国メキシコ湾沖「大水深」油田爆発事故および原油流出への対応については論評をしない。この重大事故が、世界の大水深探鉱開発に、どのような影響をどの程度与えるかについて考えるのには、時期尚早である。できる限りの努力を、全力で行っているであろう同社および同社関連オイルメンの安全を心より祈念する。DeepwaterShelfOnshoreUnconventional出所:IHS図1上流ビジネス:今後の有望地域極めて高額で、日本企業には全く手が出ない。ブラジル沖では、ほとんどの有望海域を国有企業のペトロブラスが押さえており、しかも更に外資を排除する法制が強化されようとしている。またメキシコ湾では、地場の米系石油企業群やメジャーズの金城湯池で競争環境は激烈である。このようなありさまで、日本企業の本格的な参入には非常にハードルが高かった。 しかしながらここ1,2年、大水深の探鉱開発は、先行したこれら3海域から次第に世界の他の海域、特に日本の上流業界のおひざ元であるアジア太平洋海域に展開されるようになってきている。また、アフリカでもモザンビーク沖等の東アフリカ海域や、ギニア湾北西部海域でも試掘キャンペーンが開始され、既に幾つかの有望鉱床の存在が確認され始めた。これらの新規海域の競争環境は先進3海域よりも緩く、日本企業の参入余地は大きいと考えられる。また、これら新海域では、メジャーズのみならず、欧米中堅企業や中国CNOOCなどの参入が目立ち、大水深の探鉱開発がメジャーズの独壇場でなくなってきていることも注目される。 更に、将来的にはメキシコ側のメキシコ湾や南米ギアナ沖でも、諸条件が整い、大水深探鉱開発が始まるのではないか、という期待もある。日本の上流企業については、最近、試掘キャンペーンが始められてきたアジア太平洋の大水深海域で経験を積むチャンスをとらえることができれば、将来、この地域での枢要なプレーヤーとなることもできよう。2010.7 Vol.44 No.422. 日本上流業界にとっての大水深 現在世界の上流産業が手がけている大水深探鉱開発は、日本の上流企業にとっては地理的に遠く離れ、元来プレゼンスが低いメキシコ湾、西アフリカおよびブラジル沖での活動が中心である。図2に示すように、この3海域での掘削活動が圧倒的に多く、大水深用のリグは主に、上流業界でGolden Triangleと呼ぶ、この海域のなかを頻繁に移動している。 Golden Triangle海域への参入は難しい。まず、西アフリカ、特にアンゴラの大水深では未試掘の1鉱区の参入コスト(サインボーナス)が最大で1,000億円程度、とGolden Triangleリグ数(隻)40353025201510Semisubmersible Drillship AmericaFar Eastndian OceanMexicoNW EuropeMiddle EastMed/Black SeaISSE AsiaUS GOMW AfricaCaspianAus/NZCanada East5 0出所:日本海洋掘削(株)図2稼働水深1,000m以上の大水深リグの稼働海域坙{上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言3. アジア太平洋海域「大水深」に関するワークショップの開催3.1 ワークショップの形式と討議ルール JOGMECは、日本の上流産業の大水深探鉱開発活動を促進したいと考え、上記の理由から対象地域をアジア太平洋に絞ったワークショップ・シリーズを企画した。日本の上流事業関係者をボランタリー・ベースで広く募り、昨年11月末より本年3月まで3回、各回半日のワークショップを開催し、立場を超えた自由なディスカッションを積み重ねた。参加者は日本の代表的上流企業(商社、精製元売り系も含む)、代表的技術サービス企業およびJOGMECの調査部と技術部門。各回20名前後が参加した。毎回最初に、情報および問題意識の共通化のため、JOGMECならびに各社の参加者からプレゼンテーションを行い、引き続いて全体討議およびグループ討議を行った。 このようなワークショップの進行は、参加者が学習プロセスを共有するための工夫である。すなわち、ワークショップごとに気づきや重要課題を特定して、次回、それに答えていく、という作業が繰り返された。またワークショップ・シリーズ全体が、厳格な「チャタムハウス・ルール」すなわち、企業代表としてではなくプロとしての個人の見識と問題意識に基づいて議論を行い、そこで得られた情報・知見・洞察の事後的な利用は参加者の自由に任されるが、誰が何を発言したのかは一切外部には明らかにしない、というルールの下で行われた。【チャタムハウス・ルール 2002年】"When a meeting, or part thereof, is held under the Chatham House Rule, participants are free to use the information received, but neither the identity nor the affiliation of the speaker(s), nor that of any other participant, may be revealed".「会議の全体あるいはその一部が、チャタムハウス・ルールで行われる場合には、参加者は、そこで得た情報を自由に使用してもよいが、発言者およびそれ以外の参加者の、身元や所属団体は、一切明かしてはならない」3.2 本稿の趣旨 本稿の筆者は、「チャタムハウス・ルール」の下で行われるディスカッションの運営に実践的なノウハウを持つ、また、石油産業のビジネスマインドも備えている、ということでJOGMECからこのワークショップ・シリーズの設計と司会を求められた(もちろん参加者の1人であるからボランタリー・ベース)。この経緯から本稿の書き手を務めている。ところでJOGMECは、同種のワークショップ・シリーズを過去、何回か企画している。とりわけ2008年秋から2009年春にかけて行われた「FLNGビジネス開発」をテーマとしたシリーズは、我が国上流産業出身の参加者が、造船、エンジニアリング、金融など関連産業出身の参加者とともに、数カ月間のディスカッションを行っている。われわれは、その後さまざまにビジネス実現の兆しを見ることができている。 さて今回のテーマ「大水深探鉱開発」についてであるが、既述のように我が国上流産業には、現状、必ずしも優先順位を上げて取り組むべき手持ち案件が、多くはない。いや、あることはあるのだが、日本企業がオペレーターシップを取って手がけるとなると、技術的・資金的なハードルが高そうで、優先順位が落ちてしまう、という事情のようである。まず我が国上流産業の“力”をつけなければ「大水深」に取り掛かりにくい、このような認識が参加者の間で、次第に共有されていき、我が国上流産業への支援を具体的に立案・実施すべきJOGMECが喫緊に取り掛かるべき課題も見えてきた。 以下は、3回のワークショップで参加者が共有していった「大水深」関連情報、討議と気づきと学び、そして結論に至る経過を要約して、報告するものである。4. アジア太平洋海域の「大水深」の現状と地質評価4.1 「大水深」プロジェクトの活況 まず、この海域の「大水深」プロジェクトの活況を概観したい。 近年続々と大型ガス田の発見が続いている豪州北西大陸棚(昨年1年間だけでも10個以上の有望ガス田を発見)のみならず、マレーシアのサバ沖、フィリピンのスール海等で既に有望鉱床発見の成果が出始めており、またインドネシアのマカッサル海峡でメジャーズを中心とした試掘キャンペーンが開始され、近々パプア州でも試掘キャンペーンが開始される。 一方、プレーヤーに着目すると、中国では、南シナ海でも既に大型ガス田が発見されていて、中国CNOOCは3石油・天然ガスレビューAナリシス 図4は、インドネシアのイリアンジャヤ沖合の大水深域での現鉱区設定図である。既にHess、Marathonといった中堅企業が鉱区取得しており、これから試掘が始まる。Gas FieldPlantINDONESIAINDONESIABRUNEIBRUNEIMALAYSIAMALAYSIAPHILIPPINESPHILIPPINESPacificOceanINDONESIAINDONESIAJakartaJakartaRoabibaRoabibaIndian OceanAUSTRALIAAUSTRALIA1,2,000m000mWiriagar DeepWiriagar DeepVorwataVorwataUbadariUbadariTangguhTangguhLNG PlantLNG PlantWest PapuaⅠWest PapuaⅠChevronChevronWestPapuaⅢWestPapuaⅢChevronChevronSemai ll PSCSemai ll PSCMurphyMurphyOffshore Offshore SemaiⅤSemaiⅤHessHessWest PapuaⅡWest PapuaⅡKumawaKumawaMarathonMarathon1,000m000mm01,02,0020608040Km出所:JOGMEC図4インドネシアのイリアンジャヤ沖合の大水深域での現鉱区設定図大水深リグを保有する欧州の技術サービス会社を買収して傘下に収め、同海域を中心に大水深域に本格参入しようとしている。少し地理的には離れるが、インドでは、数年前から、東海岸のアンダマン海大水深域でリライアンス社とONGC等によって大規模ガス田群の発見が続き、最近生産を開始した。これがインドのエネルギー事情を大きく変えようとしている。加えてアジア太平洋大水深海域では、ExxonMobilやChevron、Shellのようなごして、Marathon、Murphy、スーパーメジャーに伍Hess、Woodside(ただし豪州のみ)といった中堅企業や、中国、インドの企業が活躍して、成果を上げつつあるのが大きな特徴である。すなわちこの海域では、企業規模は必ずしも「大水深」プロジェクトへの参入障害になってはいない。 以下では、図を用いて、鉱区とプレーヤーを中心に各地域での上流産業の活動状況を簡単に記す。 図3は、インドネシアのカリマンタン島とスラウェシ島の間の大水深域に関する現在の鉱区設定と試掘実績である。既にExxonMobilをはじめメジャーズが鉱区を取得し、試掘キャンペーンを開始していることが分かる。残念ながら、本稿執筆時点ではいまだ有望な発見の報告はない。Gas FieldOil FieldPlantWell 図5は、マレーシアのカリマンタン島沖合の大水深域の鉱区設定図である。Kikeh、Gumusut等、既にサバ沖を中心に幾つか有力な油・ガス田を発見済みであり、今後も試掘キャンペーンが続く。KalimantanKalimantanBontangBontang LNG Plant LNG PlantSangaSangaSangaSangaBangkaBangkaWest SenoWest SenoRanggasRanggasGehemGehemOffshoreOffshoreMahakamMahakamTotalTotalGendangGendangGendaloGendaloSurumana PSCSurumana PSCExxonMobilExxonMobilRangkong 1Rangkong 1Pasangkayu PSCPasangkayu PSCMarathonMarathonMALAYSIAMALAYSIAGas FieldOil FieldBLOCK QBHPBLOCK HMURPHYBLOCK PMURPHYBLOCK KMURPHYBLOCK NBHPKEBABANGANKEBABANGANCLUSTER CLUSTER PSCPSCSt.JosephSt.JosephErb WestErb WestBLOCK 2DKikehKikehBLOCK LMURPHYBLOCK MMURPHY2,000m2,000mGumusutGumusutBLOCK GKinarutKinarutBLOCK JSHELLSamarangSamarangKotaKinabaluINDONESIAINDONESIABLOCK 2CNEWFIELDPausPausTalangTalangM1M1KinabaluKinabalu1,000m1,000m200m200mLabuanLabuanMethanol PlantMethanol PlantSabahSK-315MLNGⅠMLNGⅠKumangKumangMLNGⅡMLNGⅡBRUNEIBRUNEIMiriSarawakINDONESIAINDONESIAMALAYSIAMALAYSIABintuluKuma PSCKuma PSCConocophillipsConocophillipsKARAMA PSCKARAMA PSCStatoilStatoilBudongBudongBudong PSCBudong PSCTatelyTatelymm000000,,22MahaMaha000m000m,,11200m200mTANJUNG TANJUNG ARU PSCARU PSCSOUTH SESULUSOUTH SESULUHessHessKalimantanKalimantanINDONESIAINDONESIAKarana PSCKarana PSCPearlPearlSulawesiSulawesiMandarMandarPSCPSCEssoEssoSultan 1Sultan 1出所:JOGMEC出所:JOGMEC図3インドネシアのカリマンタン島とスラウェシ島間の大水深域での現鉱区設定と試掘実績図5マレーシアのカリマンタン島沖合の大水深域の鉱区設定図2010.7 Vol.44 No.44坙{上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言 図6は、カリマンタン島とフィリピン諸島の間のスールー海の鉱区設定状況と試掘状況である。ExxonMobil、Shellが鉱区獲得済みであり、前者は既に試掘第1号井で炭化水素資源を発見済みである(詳細は、本稿執筆時点で未発表)。 図8は同様に、豪州北西大陸棚ブラウズ堆積盆大水深域での2009年の発見状況(黄抜きの個所)でSantosが発見をしている。ArgusArgusCruxCruxDarwinDarwin0200KmSouth China SeaSC38SC38ShellShell3,000mMALAMPAYACAMAGOManilaManilaPacific OceanWA-314-PWA-314-P(Conoco Phillips)(Conoco Phillips)Kontiki1Poseidon1WA-315-PWA-315-PTorosaTorosa(Woodside)(Woodside)WA-398-PWA-398-PSC60SC60ShellShellPHILIPPINESPHILIPPINESCallianceCalliance(Woodside)(Woodside)WA-281-PWA-281-P(SANTOS)(SANTOS)BrecknockBrecknock(Woodside)(Woodside)WA-371-PWA-371-PPrelude1Prelude(SHELL)Prelude(SHELL)FLNGFLNGEchuca ShoalsEchuca ShoalsConcerto1Ichthys(INPEX)Ichthys(INPEX)Burnside100,20m1,000mPalawanPalawanSC61SC61BurgundyBurgundySC56SC56ExxonMobilExxonMobilBanduria 1Banduria 1MALAYSIAMALAYSIASulu Seam00m300,0Dabakan 1Dabakan 12,0m001,0SC41SC41tap Oiltap OilBRUNEIBRUNEI出所:JOGMECPHILIPPINESINDONESIA図6カリマンタン島とフィリピン諸島の間のスールー海の鉱区設定状況と試掘状況 図7は、豪州北西大陸棚カーナボン堆積盆の深海域での試掘状況で、黄抜きの個所が、2009年にガス発見があった鉱区であり、Woodside、Hess、Apache等の中堅も実績を上げている。WA-404-PWA-404-P(Woodside)(Woodside)JanszJanszKentish Knock1Martell1ScarboroughScarborough(ExxonMobil)(ExxonMobil)WA-365-PWA-365-P(Chevron)(Chevron)WA-390-PWA-390-P(Hess)(Hess)mm1,0001,000Indian OceanClio1Clio2WA-205-PWA-205-P(Chevron)(Chevron)1,000m1,000mAUSTRALIAAUSTRALIANorth West ShelfNorth West Shelf(Woodside)(Woodside)WA-370-PWA-370-PWA-350-PWA-350-P(Woodside)(Woodside)(Woodside)(Woodside)PlutoPluto(Woodside)(Woodside)WheatstoneWheatstone(Chevron)(Chevron)WA-356-PWA-356-P(APACHE)(APACHE)Gorgon North2GorgonGorgon(Chevron)(Chevron)NWS NWS LNG PlantLNG PlantGorgon LNG Plant Gorgon LNG Plant (planned)(planned)PlutoPlutoLNG PlantLNG Plant(planned)(planned)BARROWBARROWISLANDISLANDGas FieldOil FieldLNG PlantLicense Area Well 出所:JOGMECmm200200mm000011Wheatstone Wheatstone LNG Plant LNG Plant (planned)(planned)OnslowOnslowPilbaraPilbaraAUSTRALIAAUSTRALIA図7豪州北西大陸棚カーナボン堆積盆の深海域での試掘状況5石油・天然ガスレビューCapeCapeLondonderryLondonderryAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAAUSTRALIAGas FieldOil FieldLNG PlantLicense Area Well KimberleyKimberleyJames Price PointJames Price Point出所:JOGMEC図8豪州北西大陸棚ブラウズ堆積盆大水深域での09年の発見状況4.2 地質的な残存資源ポテンシャル 次に、アジア太平洋海域の地質的な残存資源ポテンシャルについて概説する。 今回のワークショップ・シリーズに活用するため、JOGMEC調査部は企画競争による入札を行い(株)地球科学研究所に評価スタディーを依頼している。 図9で、東南アジア・太平洋海域に存在する堆積盆地の地理的広がりを概観している。 次に有望海域の絞り込み検討作業について述べる。 使用したデータ・情報は、JOGMECと地球科学研究所が保有している既存のもの、および公開されている学術論文、ないし資源国政府の資料等である。評価範囲は、東南アジア海域と豪州北半分海域、パプアニューギニアの大水深域のうち、一定規模以上の既探鉱と未探鉱の40堆積盆である。 絞り込みの評価手法は以下のとおりである。最初にそれぞれの堆積盆について、探鉱余地を評価するために、面積、層厚、石油システム形成等の定量的および定性的評価を行った。その評価結果を用いて、①既探鉱盆地(既発見か未発見か)か未探鉱盆地か、②大規模盆地か中小規模盆地かの組み合わせ、最終的に堆積盆地別の探鉱有望性ランキングを作成している。結果を、図10に示す。Aナリシス堆積物層厚分布(第三系以降)堆積物層厚分布(第三系以降)既探鉱発見・商業ベースKutei、Sabah-Baram、North Carnarvon(Exmouth plateau)(特A)G.B. Udintsev et al., 2003発見・少量未発見未探鉱大規模堆積盆①Sarawak ②NW Palawan ③Tarakan、Browse(Scott plateau)Group A①Savu ②Gorontalo ③Papuan(Coral Sea)、Sunda fore-arc basin(Sibolga、Bengkulu)大水深海域探鉱実績あり大水深海域探鉱実績なしTellusによる堆積盆区分小規模堆積盆Group B(先第三系根源岩)Seram、Timor(viqueque)、Kai-Aru Trough、Halmahera、Taning bar、Sengkang Bone、Tomori4出所:JOGMEC出所:JOGMEC図9アジア太平洋の大水深海域(1,000m以深)を有する堆積盆図10堆積盆のランキング4.3 ワークショップに臨む ワークショップ参加者は、「大水深」プロジェクトの活況および地質的ポテンシャルについておおむね以下のような共通理解を得た。 ? 大規模な油・ガス田群の存在については大いに有望であるとは言えない。が、ガス資源も含めた中規模以上の炭化水素鉱床の成立は、海域によっては期待できる。 ? 既に浅海域で探鉱が行われている堆積盆のうち、Sarawak、北西 Palawan、Tarakan、Browseの各堆積盆については、今後大水深海域においても油ガス田の発見が期待できる。 ? 東南アジア地域において、地質学的観点から探鉱の余地が大きいと考えられる海域は、オーストラリア由来の先第三系の上位に新生界が累重し、探鉱ポテンシャルが高いと考えられるものの、地理的な要因で未探鉱エリアが多く残されているボルネオ(カリマンタン)島以東の大水深海域である。 ? これまで探鉱のターゲットとなっていなかったスンダ弧の前弧域(スマトラ島南西側からジャワ島南側方向に延びる)には、大規模な堆積盆が存在するが、これらも今後の探鉱対象となり得る。5. 第1回ワークショップ:アジア太平洋大水深域探鉱開発の問題点と魅力 さて、第1回ワークショップでは、この海域で日本の上流企業がオペレーターとなって探鉱開発をやるのだ、やらなければならない、と仮定した場合に、直ちに思い浮かぶ問題点と解決のヒント、というテーマで自由討議が行われた。5.1「問題点」として現れた議論をいくつか示す ? そもそもなぜ、他分野、他地域に比してアジア太平洋の大水深海域の純粋探鉱にプライオリティーがあるのか。企業戦略のなかで明確に説明できない。 ? この海域は明らかにガス・リッチであり、当分の間は世界のLNG需給が緩む見通しの下では、ガス田が見つかる可能性の高い処女地探鉱の決断が、なかなか困難である。ただし、一定以上の確度で石油かガスかを試掘前に判別できれば、探鉱は「石油狙い」になって、探鉱投資の決定が容易になる。 ? 大水深用の掘削リグの傭船レートは高い。2010年年初のマーケットを図11で読み取ると、大きなバラツよう2010.7 Vol.44 No.46.2 他方で、大水深プロジェクトへの「期待」として現れた論点は次のとおり ? アジア太平洋海域は日本からの距離、土地勘、資源国政府へのプレゼンス、生産物の日本への持ち込み可能性等で、日本企業が比較優位を持ち得る海域である。 ? いまだ競争圧力が高くなく、権益へのアクセスも容易な処女地であり、未探鉱海域が多いので“大化け”する可能性もある。 ? 日本の上流産業が土地勘のある海域で大水深プロジェクトを手がけることができれば、ここでの経験知と実績が、将来グローバルに応用できる可能性がある。将来、鉱区開放が予想される有望大水深海域としては、例えば、メキシコ湾のメキシコEEZ海域、東アフリカ、ベンガル湾深海、ギニア湾北西部 、東アフリカ沖深海、更にギアナ沖も考えられる。日本勢はどこかで経験・実績を上げない限り、これらのチャンスをとらえることは困難と言えるだろう。5.3 第1回ワークショップで見出された課題 重要な気づきと課題が、3点見出された。① 埋蔵資源が、石油かガスか、試掘前にどの程度判別できるのか。最新の技術・情報を動員した場合、事前判別がどこまで判別可能なのか。最新の科学技術を学びたい。② 結果的にガス資源が発見された際に、どのようにして早期にマネタイズを図れるのか、最新動向をレビューする。③ 掘削コストを中心として、大幅な探鉱開発コスト削減を柔軟な発想で考えてみたい。キがあるものの、水深1,500mでは1日30万~40万ドル、3,000mでは50万ドルである。他方で、浅海用のリグレートは10万~20万ドルであり、大水深海域での作業は浅海の数倍、コストがかかることが分かる。 ? 加えて、アジア太平洋海域では、メキシコ湾のようにリグ調達が容易な地域ではなく、リグの動復員コストが著しく高い。掘削コストの有意な低減化が必須条件。 ? 大水深探鉱開発は、そもそも掘削技術も含めて日本企業の未経験分野であり、ノウハウが十分ではない。また、一般論として探鉱・開発・生産に至るコストが巨額すぎて、日本の上流企業の手に余る。DrillshipSemisubmersibleOld Generation Deepwater Rigs2,0004,0006,0008,000稼働水深(ft)10,00012,00014,000700,000600,000500,000400,000300,000200,000100,000リグレート(US$/Day)不明 00出所:日本海洋掘削(株)図11稼働水深VSリグレート6. 「資源」と「ちきゅう」日本上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言 第2回ワークショップの報告に進む前に、少し寄り道をする。 日本政府、ないしJOGMECは、「大水深」に使えそうな“道具”を既に持っている。3D物理探査船「資源」と大深度掘削リグ「ちきゅう」である。6.1 「資源」 「資源」とは、深海仕様の3D物理探査船である。以下のような性能を持っている。・最大適用水深 3,000m(海底面下深度5,000m)・最大ストリーマー・ケーブル幅 900m・最大ストリーマー・ケーブル長 6,000m・船幅 40m、船長 86m、総トン数 10,395t・最大速度 13.5ノット・航続期間 106日・完工 1999年・所有者 資源エネルギー庁・運航管理 JOGMEC7石油・天然ガスレビューAナリシス(JAMSTEC)が、政府に対して資源掘削転用の承認をもらう手続きが必要であるものの、資源掘削の実施はJAMSTECの中期計画のなかでの位置づけに従えば、目的外使用には当たらない。 深海仕様の物理探査船「資源」は、我が国経済水域内の資源調査を目的として建造され、現状、現在は内航船として登録されている。運航管理および調査実施については、船を所有する資源エネルギー庁よりJOGMECが受託している。 また、「ちきゅう」は傭船レートについて、日本上流企業の大水深案件に対して市況水準から割引く可能性については、今後の政策次第であろう、と認識された。出所:JAMSTEC写2大深度掘削リグ「ちきゅう」出所:JOGMEC写13D物理探査船「資源」6.2 「ちきゅう」 「ちきゅう」とは大水深仕様の大深度掘削リグである。 以下のような性能を持っている。・最大掘削可能水深 2,500m・最大ドリルストリング長 10,000m・ 最大速度 12ノット、航続距離約 15,000km・総トン数 57,000t・完工 2005年・ 所有者 (独)海洋研究開発機構・商用マーケティング請負 日本海洋掘削㈱ 第2回ワークショップでは、「資源」と「ちきゅう」の性能と運用実態について集中的に学ぶことができた。その結果、これらの“道具”は、日本企業が国外の大水深域で商業目的に使用したい場合、現状では運用上や装備の面で幾つかの障害がないわけではないが、それらは将来的に改善できる可能性があることが判明した。 すなわち、文部科学省の学術調査用に建造された掘削船「ちきゅう」は、運用主体の海洋研究開発機構7. 第2回目ワークショップ:課題の現状について正確につかむ7.1試掘前に石油/ガス判別はどこまで可能か? アジア太平洋海域は経験的にガス・リッチである。ところが国際天然ガス市場は、当面の間、需給が緩い。LNGが供給過多であり、また既に発見済みでLNG開発へ向けてFIDを待っている大型ガス田が目白押しだからだ。更に資源国の地場のガス市場に生産ガスを供給しようとすれば、著しく安い価格で販売しなければならない。したがって、石油発見の可能性を追求したい。そこで、特定の鉱区ないしプロスペクトに関して、試掘作業前に、ガスよりも石油発見の可能性が高い、と判定できれば心強い。どうすればよいのか? 従来の探鉱方法の他に何ができるのか?・・・・・・いずれにしても100%の2010.7 Vol.44 No.48坙{上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言判定を期するのは無理な注文だ。 まずは、地質構造発達史を再構築し、その上で根源岩分布を作成する。更にケロジェンタイプの分析をやって油系の堆積盆に当たりをつける。王道である。 だが、物理探査や試掘がなされていないエリアについては、その周辺の坑井情報をいかに得るか、が重要だ。とにかく情報が欲しい。新規の地質構造調査の実施や既存データの購入、衛星写真による広域のオイル・スリック調査・分析、あるいは特定海域での海底面のピストンコアの大量取得による地化学分析。各種情報を総合したベースンモデリング等、さまざまなアイデアが出た。 また、対象海域についての特別な地質的・技術的知見を有する企業との戦略的提携も効果的。最近の実例として、メキシコ湾大水深探鉱におけるコバルト社(当該海域に豊富な経験を有する旧ユノカルや米系メジャー出身の技術者が設立したベンチャー企業)と、同海域に新たに進出するTotalとの間で成立している戦略提携がある。あるいはインドネシア海域での日本企業とブラック・ゴールド社との提携可能性、というアイデアが紹介された。 また一般論としてアジア太平洋海域のシール構造には次のような特色がある。すなわち、シール構造が大きく、高低差のある場合は石油の可能性が大、小さくて高低差が小さい場合はガス。この理論に従えば、大型で高低差のあるシール構造が探鉱の対象となる*1。 ワークショップ参加者は、いろいろのアプローチを試みることによって、ある程度、ガスと石油の見極めが可能であろう、と見当をつけた。7.2 ガス発見の際の早期マネタイズ? ガス田発見の可能性は、依然として高い。が、この海域は外資系石油会社が比較的自由に探鉱活動を行える地域として貴重である。日本勢が国内のガス購買力をテコにして権益を獲得できる可能性の高い地域でもある。だからガス田、特にLNGプロジェクトにすることが困難な中規模以下のガス田が見つかった場合に、どのようにマネタイズするか、探鉱の前に考えておく必要がある。 マネタイズの手法としては、フローティングLNG、フローティングGTL、CNGタンカー等の新技術や、海上/陸上GTW(発電・送電事業)が、一般論として思いつかれたが、いずれも商業化実績が乏しいという現状で、参加者は自信を持って採用できる手法を提案しあぐねた。 むしろ、LNGを狙えるような大規模構造のみを探鉱対象とすべき、あるいは、国際LNG市場ではなく、地場の国内ガス市場でもマネタイズ可能な海域に探鉱対象を限定すべき(例えば、シンガポール、タイ等に供給可能な海域)、あるいはマネタイズできるノウハウを持っている企業とあらかじめパートナーシップを組むべき、という実践的な見解もあった。 更にビジネスに近いところで考えると、既に液化基地が稼働済み、ないし建設途上の海域で、将来において追加トレーン用に生産ガスや埋蔵量自体をも販売可能と思われるオーストラリア海域で権益を取得するのが賢明、という見解(既にオーストラリア北西部沖で、HessやApache等による実例が存在する)もあった。また、コンデンセートとLPG溜分がある程度期待できる堆積盆では、これら液体成分のみを先取りするビジネスモデルが成り立たないか。すなわち天然ガス成分は当分の間、ガス層にリサイクリングする、というアイデアも現れた。この方式は実例があるが、一般論として資源国の理解を得ることの困難な場合も多いと考えられる。・・・・・・7.3 大水深掘削・開発のコスト削減はどこまで可能か? 大水深探鉱開発と通常の探鉱開発との最大の違いは、浅海に比べて数倍にもなるリグ傭船レートを中心とする高コスト構造である。掘削コストの削減には、複数坑井掘削をコミットする長期リグ・リース契約や、周辺海域での大水深掘削を計画している複数の同業他社と組んだ「リグ・クラブ」の結成が、リグの動復員費の節減やリース料率引き下げのチャンスが生まれて、有効である。だが、経営規模が大きくない日本企業が、散発的な試掘しか予定できないアジア太平洋海域で、この仕組みを作り上げるのはなかなか大変、との指摘は多かった。 このようないわばスケール・メリットを狙った方法以外にも、ケーシング・ドリリング、ライーザーレス掘削やモノボア掘削、改造専用リグによるスリムホール掘削、サブシー・リグ等の新しい掘削方法があり、またケーシング計画や坑径の最適化、スペアパーツ・プロキュアメントの一括化、あるいは資機材スペックの統一化、試掘対象に最適な低スペック・リグの調達等、従来型のコスト削減手段が徹底されるべきである。けれども、従来型の手段は目覚ましいコスト削減の切り札にはならない、という感想が共感を呼んだ。 開発段階における掘削コスト削減手法としては、Dual Derrickリグの調達、FPSOや海底生産システム等、既に確立された新技術があり、ノウハウを有する海外上流企業をパートナーとするべきか、とも。 更に具体的な知恵がないだろうか?9石油・天然ガスレビューAナリシス 中古リグの改造はどうだろう? 水深500mが作業対象の中古リグを水深1,500m対象の大水深リグに改造すると、建造コストが節約できる。大水深用の新規リグの建造コストが600億~700億円であるのに対し、中古の改造コストは300億円程度で、非常に安い。 「ちきゅう」という政府保有の“道具”を、日本企業案件に対して優先的に、好条件で利用できるようにする。つまり、政府が大水深開発を新たな日本の“戦略産業”として位置づけ、積極的に予算を付けることができれば、大きな促進策になるだろう。この見解には大きな賛同と期待が寄せられた。8. 第3回ワークショップ:共感と協働。具体的な提言報がTRCに集積し、解析され、使いやすい形に整理されている、そのようなナレッジマネジメント・システムが、今、必要なのではないか。 JOGMECは、探鉱段階で別の形で日本の上流企業を支援できる。 民間企業側から、「資源」、「第2白嶺丸」および「ちきゅう」の優遇条件での提供、あるいは「大水深」プロジェクトへのJOGMECの思いきった支援策(出資比率、出資額の向上のみならず、鉱区取得前からのコミットメントや、リスク・経済評価手法の改善を含む)についても、JOGMECに要望したい、との見解がたびたび表明された。 更に、「アジア太平洋海域大水深での実績づくりで将来のグローバルな大水深展開を図る」と言っても、日本 前回までの議論を振り返りながら、改めて、アジア太平洋大水深海域で日本の上流企業の探鉱開発活動が促進されるためには、どうしたらよいのか。参加者は深いところに入っていった。同じ課題を何度も繰り返して考える。と、飛躍が起こる。必要な情報が十分に共有され、ディスカッションの磁場に共感が流れると、課題の本質が顕現し、アイデアの飛躍が起こる。8.1 探鉱作業に関連して 1日あたりのコストが非常に高額であることから、通常の探鉱開発の場合以上に、操業上のさまざまなトラブル・シューティングをできるだけ短時間で行わなければならない。この解決が肝。トラブル・シューティングの実例、なかでもベスト・プラクティス事例の収集と集積、そして集積されたノウハウを他の事業者が活用できる仕組みが効果的、との意見が出た。 更に、油・ガスの判定のためのノウハウやデータの集積と公開も効果的。いうなれば大水深探鉱開発に係る全般的なナレッジマネジメント・システムの構築が重要、ということである。 具体的には、JOGMEC/TRCがシステム構築と保持のフォーカルになることができる。「ちきゅう」や「第2白嶺丸」等を活用して、戦略海域と目した海域で集中的に採取したピストンコアの分析、衛星利用のオイル・スリック調査・分析、更には既存地質資料の購入収集、資源国との政府間合意に基づく既存データ・知見獲得と堆積盆評価等、多面的な情出所:筆者作成TRC自ら発信して、ニーズをつかむ。発信方法をもっと工夫しては?高度な専門データの集積と加工JOGMECの現状TRCでは現場のニーズが把握しにくいJOGMECを核とした日本の上流産業の知見・ノウハウの集積、調査、加工、提供後発の日本上流産業が強みをつくるには、データの集積と解析が有望要素技術を集め、モデル化してみるトラブルシューティングの事例集も、実務にとっては有用JOGMECの開発したノウハウは、産業に還元すべき散乱した情報を集積し、解析しモデル化するところに、TRCの働き場所があるJOGMECが購入した情報やソフトウェアを共用に出すCon?dentialityに抵触しない範囲でJOGMECは、データを共用化すべき民間には「探鉱連絡会」JOGMEC/TRC内部でナレッジマネジメントが必要ではないか?情報交換の場の提供JOGMECが情報交換の「場」を提供すべき上流産業のみならず関連産業の参加が望ましい情報共有・公開のルールについて合意する図12JOGMECを核とした日本の上流産業の知見・ノウハウの集積、調査、加工、提供2010.7 Vol.44 No.410坙{上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言日本のEEZの大水深地質構造を探掘するの経済水域内の大水深探査が十分に行われていない現状を考えれば、むしろ「資源」、「第2白嶺丸」および「ちきゅう」を優先使用して、国策として、日本のEEZの探査を重点的に行うのが先であろう。この海域で有望資源が発見できる可能性もあり、かつ、日本の上流企業が「大水深」プロジェクトを手がけるための“修業”の場として最適ではないか、という呼びかけも共感を呼んだ。日本海域内には炭化水素資源は本当に、ないのだろうか?可能性に対する議論日本海域の地質構造はコマギレで、有望性低いか?発見確率の高くない高リスク案件を国が手がける政治・政府のサポートを得る漁業権問題解決に国の関与が有用日本海域大水深で油・ガス発見情報あり、規模はともかくHCがありそう日本海域大水深では探掘作業の密度はまだ著しく薄い①エネルギー供給確保政策②技術や人材の育成中国は科学調査の名目で、日本領海の近傍を試掘。日本はやっていない「アカデミックな調査」という位置付けでまったく構わない方法論「資源」の有効活用網羅的な物理探査探鉱エリアの優先順位付けのための有識者会議ピストンコアと組み合わせ、試錐まで進む経験の蓄積フィードバックJOGMECにて総合評価出所:筆者作成8.2 開発・生産に関連して 開発/生産作業に関しては、国の積極的な関与を求めて、日本上流企業の大水深プロジェクトを国策として推進するための事業体制についても話し合われた。 日本のエンジニアリング企業や造船・重工メーカーと日本の上流企業がタイアップした、大水深の探鉱開発に係る「日本ブランド」の構築も有力ではないか、という見解があった。これは前例として、イタリアのSAIPEMとEniのコラボレーションや、フランスのTechnipとTotalの提携、あるいはノルウェーのエサジーとStatoilの一体化等で成功例があり、国策として日本勢のタイアップ体制をつくり、資源国から有望鉱区権益獲得、操業能力の向上およびコスト削減につなげるというアイデアである。 更に、投資額が巨額にのぼる「大水深」は、元来、経営規模が小さく経験のない日本の上流企業が取り組むのは困難なので、重点的な国策として、経験を有する外国上流企業の買収を支援したり(最近、韓国で実施例がある)、あるいは数隻の大水深リグを国費で建造して、優遇レー図13日本のEEZの大水深地質構造を探掘するトで日本企業に貸し付けたりするなど、思い切った政策支援を考えない限り日本企業の活動は活発にならない、との意見。あるいは、FLNG船やFGTL船など、新技術の中小ガス田向けガス・マネタイゼーション設備を国が建造・所有し、日本の上流企業に優遇条件で長期リースすることができないか。国の仲介によるリグ・クラブ結成、日本の上流企業と海外上流企業や産油国国営企業との提携推進。・・・・・・ 以上の幾つかのアイデアは、自由討論のなかでの“思いつき”にとどまっている、と、本稿の筆者は申し添えておく。9. 結論と今後の課題 「大水深」ワークショップ・シリーズの概要報告はここまでである。運営を支援した筆者の任務もこの時点で終了した。 以下に書き継ぐのは、日本の上流産業として、大水深開発参入を本格化させるためにどうするべきか、という今次ワークショップ・シリーズの課題に対する結論と今後の課題についてである。 半年間にわたる参加者の議論をもとに「我が国上流企業の大水深プロジェクトを支援するため、現状の制度設計を踏まえた上で、なすべきこと」について、今回のワークショップ・シリーズに参加していただいた諸氏に諮り、フィードバックをいただき、最終的に合意のとれた書き物ができた。11石油・天然ガスレビュー@二つの提言にまとめられている。 一つ目にJOGMEC TRCを情報センターとした、アジア太平洋大水深海域に係る日本の関連する産業界全体のナレッジマネジメント・システム、ないしナレッジバンクの創設。当然のことながら、JOGMECおよび日本の私企業等が保有している既存情報・ノウハウの蓄積だけではなく、今後JOGMECが遂行する「地質構造調査事業」や、今後の日本の私企業の成果も蓄積されていくことになる。 二つ目に「資源」、「ちきゅう」および「第2白嶺丸」を統合的・有機的に活用する。日本のエンジニアリング・造船・重工メーカーと日本上流業界がアライアンスを組んで、5年ないし10年程度の新たな国家プロジェクトとして、日本のEEZ大水深探査計画を策定し、資源発見のみならず、日本の戦略産業と位置付けて、日本ブランドの大水深探鉱開発産業の創成を図る。 ただし、以下に詳しく述べる、これらの提言は、あくまでワークショップ参加者の自由な意見のまとめであり、何らJOGMEC全体、ないしTRCの公式見解でも意思決定でもないし、業界全体の公式の意見表明でもない。この点は、明確にご留意いただきたい。この提言が実現化されるには、まず何よりも、これらが上流業界の総意となる必要があるし、それに基づいて関係当局の理解が得られることと、財政がこれを許す状況であることが前提となろう。9.1 大水深ナレッジバンクの創設 第3回大水深域探鉱開発戦略ワークショップにおいて提起された、TRCにおいて大水深技術開発に関するナレッジマネジメントを行う具体案として、官民それぞれが新規に地質情報/技術・ノウハウを取得し、官民が保有する既存の地質情報/技術・ノウハウを含め、日本企業*2への利用に供する以下のようなナレッジバンク構想を提案する。1.TRCの大水深関連地質情報/技術・ノウハウの取得・集積・公開(1)概要 TRCは、今後、独自にないし民間企業と連携して開発した大水深関連地質情報/技術・ノウハウをTRC大水深探鉱開発技術ナレッジバンク(以下「大水深技術ナレッジバンク」)に登録し、その内容は、原則アクセスを希望する日本法人には無償で公開する。アナリシス(2)新たな地質情報/技術・ノウハウの取得① 取得対象地域: 主としてアジア太平洋地域(本邦排他的経済水域<EEZ>を含む)の大水深域において石油ガスの探鉱ポテンシャルが高いと見込まれる海域。ただし、その他の大水深域を排除するものではない。② 対象作業: 衛星を使用してオイル・スリック調査、コア・サンプリングによる地質調査、3次元地震探鉱、電磁探査、ガスクロマトグラフによる炭化水素性状分析、探鉱井(試掘・評価井を含む)、取得データと既存データを使用してのベースンモデリング作業、探鉱井掘削結果を踏まえたFS作業等。なお、すべての作業および既存データの利用の実施は、ホストカントリーとの政府間合意などが前提となる。③ 作業実施のため使用可能なデータ・ツール(JOGMEC管理外を含む): ? JOGMEC所有地質調査船「第2白嶺丸」:ピストンコアによる海底下数メートルのサンプリング採取と地化学分析を行う。 ? JOGMECが運用を委託されている政府所有3次元物理探査船「資源」:現行の運用制約を撤廃して海外で大水深域でのマルチアジムス3次元地震探鉱*3を実施。 ? 文部科学省学術調査用掘削船「ちきゅう」:現行でも可能であるが、より運用制約の縮小や設備機能の追加を図り、市場コストに沿った合理的コストで試掘が可能。 ? JOGMECの地質・技術情報データ:過去の海外地質構造調査他により、JNOCおよびJOGMECが集積してきた各種データを知的所有権・財産権問題を精査・整理したうえで、可能な範囲で活用。また、ガスクロマトグラフ分析器による油ガス性状分析を通じて根源岩の位置の推定などを行う。 ? JOGMECモデリング&解析能力:JOGMECが有するベースンモデリングと解析サービスを、本技術ノウハウ取得作業に活用。④ 推進主体・連携先: TRC自身単独、ないし特定または複数の石油開発会社、またはエンジニアリング企業・地質コンサルタント企業・掘削コントラクター・海洋開発コントラクターその他の石油ガス開発関連企業と連携して遂行。2010.7 Vol.44 No.412坙{上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言⑤ 制度的枠組み: 現行海外地質構造調査事業(以下「海外地質構造調査」)の制度的枠組みをベースと考えるが、新たに大水深開発を我が国の戦略産業として育成することを海外地質構造調査の目標に掲げ、具体的には海外地質構造調査の適用対象に大水深探鉱開発事業のうちの探鉱段階すべて(開発段階移行まで)を対象事業とする。なお、我が国の大水深探鉱開発事業の戦略産業化が目的であることから、ノンオペでの大水深探鉱開発事業は、当該海外地質構造調査の対象とはしない。また、ホストカントリーが海外地質構造調査による探鉱に制約を加える場合は、海外地質構造調査対象事業はその制約の範囲内となる。(3)地質情報/技術・ノウハウの登録と公開① 上記のTRC独自にないし民間企業と連携して開発した大水深関連技術・ノウハウは、大水深技術ナレッジバンクに登録し、その内容は、アクセスを希望する日本企業*4には原則無償で公開する。② 過去、TRCが独自ないし民間企業と連携して開発取得した大水深関連地質情報/技術・ノウハウを同様に大水深技術ナレッジバンクに登録し、TRCが独自に開発取得した内容は、1.(2)①項記載同様、原則アクセスを希望する日本企業に無償で公開する。民間企業と連携して開発取得した大水深関連地質情報/技術・ノウハウは、極力無償公開を求めていくものとするが、相手方民間企業が同意しない場合には、有償公開額について双方協議の上、あらかじめ決定するものとする。2.民間企業が独自に取得した既存の地質情報/技術・ノウハウ、ないし今後新たに取得する地質情報/技術・ノウハウの活用(1) 概要 日系石油開発各社がさまざまな経験を踏まえ習得した大水深地質情報/技術・ノウハウを大水深技術ナレッジバンクに集積する。① 公開可能なナレッジについては、ベスト・プラクティスとして詳細内容を含めすべて登録し、原則アクセスを希望する日本企業には無償で公開する。② Confidentialなナレッジについては、地質情報/技術・ノウハウのタイトルのみを登録し、当該タイトル技術に関心を有する企業が、そのナレッジを保有する企業にコンタクトして、有償でそのナレッジを購入できるようにする。(2) 考え方① ナレッジマネジメントは、関係者が個別に保有する地質情報/技術・ノウハウを必要なときに必要な人に提供させる仕組みであるが、プロフェッショナルとしての個人の価値の一部であるノウハウを他人に共有させることは非常に困難で、同一社内においても種々のインセンティブが必要となる。多数の中小規模の石油・ガス開発企業が分立する日本では、この問題がより深刻である。このような状況下で、JOGMEC/TRCは従来政府系機関として、各民間企業に対し公正中立な立場を取るものとして、これに関連する機能を有するにふさわしい存在と認識されてきた。② その良い実例が、地震探鉱技術のなかでも不確実性が大きい深度変換技術において「地下の速度場を推定するにあたり誤差を与える事象の解析」技術研究である。この技術研究は、石油開発5~6社の専門技術者を対象に守秘義務厳守のClosed Work Shopを行うもので、参加者が自社で直面した具体的課題を開示し、参加者全員が共に学習しベストソリューションを得ていくものであるが、更にこの成果をWS参加者個人の知識にとどめず、日本の石油開発業界共有の知識とするため、Work-Flowを構築し、個別のケースの解決に必要なアルゴリズムを開発しつつ、プログラム化を実施している(完成まで2~3年を要する)ところにナレッジマネジメント的要素がある。③ ただし、上記の例は、従来TRCで行っている各種セミナーの応用編であり、かつ一つの技術のナレッジ共有化に多大な労力を要する。我々としては、より広範囲に適用されるナレッジマネジメント・システムを導入し、いわゆるフリーライダーを排除しつつ多くのナレッジを一般的、かつ効率的に共有化することが可能となるシステムとしてのナレッジマネジメントによって、広く日本の探鉱開発技術の底上げを図り、石油ガス上流産業を我が国の戦略産業に発展させる基盤づくりとすることが求められる。そこで今般、有償によるナレッジ提供サービスを含むTRC大水深探鉱開発技術ナレッジバンク設立を提案するものである。13石油・天然ガスレビューAナリシス重工メーカー等も含めた日本の石油ガス上流産業を計画的に戦略産業とするため、最もふさわしい現場である。なぜなら、大水深域の探鉱開発を推進するためには、困難かつ多様な技術課題を克服しなければならず、これらの技術課題の克服によって、大水深探鉱開発を日本の戦略産業に発展させることが期待されるからである。3.具体的手法(1) 地質調査段階 ? 衛星を使ったOil Slick調査 ? JOGMEC所有地質調査船「第2白嶺丸」を使い、ピストンコアによる海底下数メートルのサンプリング採取と地化学分析を行う。(2) 物理探鉱段階 ? JOGMECが運用を委託されている政府所有3次元物理探査船「資源」を活用して、ポテンシャルを調査(今すぐ可能)。(3) 試掘段階 ? 文部科学省学術調査用掘削船「ちきゅう」の活用により、市場コストに準じた合理的コストで試掘が可能。(4) 各種評価 ? JOGMEC/TRCが石油・天然ガス基礎調査事業(いわ」)により集積してきた、ゆる「基礎物探」、「基礎試錐さまざまな地質情報および(株)地球科学総合研究所、日本の上流各企業の知見を活用。すい ? 評価作業の一部としてJOGMEC/TRCが主導して、他の日本の技術サービス企業と上流各企業の協力を得て、ベースンモデリング&解析作業を行う。 ? FS作業においては、日本の技術サービス各企業、重工メーカー、MPSO技術に関するJOGMEC/TRC等の知見も適用可能な場合は活用する。(5) 大水深関連開発技術の開発 ? プロジェクトチームに参加する重工メーカーや技術サービス各企業は、大水深開発技術に関する先端的情報や別途立ち上げるTRC大水深技術ナレッジバンクを通じて入手する新たな開発関連技術課題について、JOGMEC/TRCに研究提案を行い、人員・予算の余裕や必要度に応じ、適宜、JOGMEC/TRCの研究テーマに採用し、その成果をプロジェクトチームに提供する。2010.7 Vol.44 No.414④ TRC大水深ナレッジバンクが設立されれば、例えば探鉱分野において、日本の上流産業関連企業は、ナレッジバンクからのナレッジを活用することにより、マルチアジムス3次元震探、電磁探査と、ピストンコアリングにより採取した資料のガスクロマトグラえいフ分析による海底面での油ガス漏洩状況の把握といった複数情報を用いて、高精度の地下状況の把握と有効なトラップの摘出を円滑に可能とする評価フローを確立する作業が容易となると見込まれる。⑤ 提案における対象は、大水深探鉱開発技術に限定しているが、ノウハウの有償化を含むナレッジバンクシステムがTRCにおいて機能すれば、他の探鉱開発技術分野にも同様のシステムを拡大適用できるものと期待できる。9.2 日本国内大水深探査プロジェクト(大水深国家プログラム) 第3回大水深域探鉱開発戦略ワークショップにおいて提起された「日本国内に本当に資源はないのか?」という質問をきっかけとして、本邦排他的経済水域(Exclusive Economic Zone、以下「EEZ」)内大水深域地質構造の官民合同のナショナル探鉱開発プログラム(以下「大水深国家プログラム」)を以下のとおり提案する。1.目標 大水深国家プログラムの推進を通じて、国内資源ポテンシャルの最大限の発掘のみならず、大水深探鉱開発を計画的(5カ年計画)に日本の戦略産業として育てることを目標とする。2.地質ポテンシャルと本邦EEZ内大水深域探鉱開発支援の理由はいい胎た 本邦EEZ内大水深域には堆積物が数千メートルに達する地質構造が存在(十勝、常磐、対馬、沖縄トラフなど)する可能性は否定でしており、相当量の炭化水素が胚きない*5。しかし、探鉱実績が少ないことから、炭化水素ポテンシャルについては何とも言えないのが現状であり、このため本邦EEZ内大水深域には大きな探鉱余地が見込まれるものの、大水深探鉱に必要な巨額のコスト負担や日本企業に本格的な大水深域探鉱活動の経験がないことを考慮すると、日本企業が単独で探鉱事業を推進するのはリスクと負担が大きすぎる。一方で本邦EEZ内大水深域は、日本企業が最も豊富な知見を有する大水深域であることから、技術サービス、エンジニアリング、坙{上流産業の大水深チャレンジ! アジア太平洋大水深ワークショップ・シリーズの要約と提言4.推進体制(1) 石油ガス開発企業のみならず、JOGMEC、エンジニアリング企業、重工メーカー、掘削企業等の石油開発関連企業も加えたプロジェクトチームによって「ちきゅう」、「資源」および「第2白嶺丸」を有機的統合的に運用し、大水深EEZナショナルプログラムを推進することにより大水探鉱開発を国家的戦略産業に進化させる。(2) 試掘により有望油ガス田を発見するまでの探鉱段階においては、開発段階にかかわるエンジニアリング企業や重工メーカー等は直接の作業にかかわるものではないが、有望油ガス田が発見される場合に速やかに評価作業に入ることが可能なように、当初よりプロジェクトチームに入り、あり得る構造を想定した開発アイデアを策定する。(3) 大水深探鉱開発を戦略産業に進化させる目的のため、EEZ大水深域の探鉱ポテンシャルに関心を有する外国石油ガス企業にも参加機会を広く与え、これにより海外企業が有する先進的技術・ノウハウや、海外で得られた経験の吸収を図り、石油ガス上流産業の最先端技術・ノウハウおよびマネジメント手法のレベルにおいてグローバル基準で一流の存在に進化させる。(4) 関連外国コントラクターは、原則として参加させない。ただし大水深探鉱開発技術・ノウハウに関し、本邦企業が保有しない特殊な技術を取得するため等の場合は、必要に応じて参加を認めることもある。5.制度の活用と今後の課題(1) 経済産業省がJOGMECに委託して実施している、石油天然ガス基礎調査制度(いわゆる基礎物探、基礎試錐)をベースとして活用。(2) 基礎調査による商業的油ガス田発見の場合の制度的枠組みを整備。先願権の扱いについては別途解決する。 本稿の最後に謝辞を述べる。 このワークショップ・シリーズは、かかわった人々全員が“手弁当”で参加し、上記の成果を得たものである。「チャタムハウス・ルール」の下では参加者のお名前を記すことができない。諸氏からいただいた労を惜しまぬご協力と共感のスピリットに、心からお礼を申し上げたい。<注・解説>*1: Spill Pointの高低いかんによる構造の高さとシール能力の強弱の相対的関係が、石油・ガスの貯留量に影響を与える。構造が厚い(構造の比高が大きい)と、貯留量は大きくなるが、圧力も高くなるのでシールしきれずに構造上部からガスが漏れ出し、構造には油が残る場合が多くなる。一方、構造が薄い(構造の比高が小さい)と、貯留量が小さくなり、Spill Pointの下方より重い成分(つまり油)が抜け出て、構造にはガスが残ることが多くなる、という理論。*2: 日本企業の定義:外国企業が株式数ないし役員数を通じ実質的に支配している日本企業は含まない。*3: マルチアジムス(multiazimuth)3次元地震探鉱:通常型の3D震探作業では不明瞭な結果に終わってしまっている探鉱作業に適用されるもの。 複数方向に3D震探データを取り、それを統合することにより、明瞭なデータを取得も解釈も容易になり掘削の成功度を上げることができる。*4: なぜ無償公開先を原則日本企業に限定するか? 外国企業に公開するケースはどのような場合か? 海外での日本石油ガス上流産業の戦略産業化が目的であることから競争関係にある海外企業には原則公開しない。ただし、産油国国営企業(NOC)または外国企業(IOC)等との連携による外国上流資産へのアクセスの容易化またはNOC・IOCおよびその他の石油開発関連企業との共同による先端的技術開発等のため公開することを妨げない。形態としては当初より外国企業との共同研究を行うため当初より共同研究先への公開を定めるケース。新たな権益を取得するための交渉材料として技術・ノウハウの提供公開を決定するなどのケースが想定される。15石油・天然ガスレビューAナリシスき屓い*5: 本邦EEZ内大水深域の炭化水素ポテンシャルの有無については、証拠が少ないことから明確なことが言えない現状だが、最近でも国際的に活発な探鉱開発活動を行っている有力外国企業より、ある日本企業に本邦EEZ内ひ目とは言えない。大水深域への参加可能性の打診があったことから、必ずしも本邦海域周辺であることによる贔執筆者紹介角和 昌浩(かくわ まさひろ)1977年、東京大学卒業。同年、昭和シェル石油入社。製油所、販売、原油、製品貿易などの実務に従事。R.D.Shellグループ本社でシナリオプランニングの奥義を極める。現在、昭和シェル石油チーフエコノミスト。名古屋大学エコトピア科学研究所で客員教授を務めている。趣味は、やきものとイギリス。最近思うことは、自分は石油が本当に好きなのだなぁということ。2010.7 Vol.44 No.416 |
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