ページ番号1006422 更新日 平成30年2月16日

深海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~

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レポートID 1006422
作成日 2010-11-19 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術探鉱開発
著者
著者直接入力 北村 龍太 稲田 徳弘
年度 2010
Vol 44
No 6
ページ数
抽出データ アナリシスJOGMEC 技術調査部開発技術課北村 龍太JOGMEC R&D推進部石油工学研究課稲田 徳弘深海掘削概論~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~はじめに 2010年4月にメキシコ湾のBP社の操業する鉱区で発生したセミサブリグ「Deepwater Horizon」(Transocean社所有)の爆発炎上・沈没事故により、仮廃坑作業中であった坑井から多量の原油の流出が3カ月弱(4/20~7/12)続き、大きなニュースとなったことは記憶に新しいところである。 本原稿を執筆した10月現在も、米国議会を中心に事故の原因究明についての証人喚問が引き続き行われているが、数兆円規模とも言われる補償問題とも絡み、一筋縄ではいかない印象である。今回のような浮遊式掘削装置を使用した海洋掘削においては陸上掘削と比較して、特有のさまざまな問題が生じるのは事実であるが、それらの課題はさまざまな技術進歩によってすべて克服されており、安全な操業体制が確立されている。そういった意味では今回のBP社の事故は、複数の人為的なミスと機器の不具合が重なり、重大事故に至った特殊な例とも言える。 本稿では「Deepwater Horizon」の事故の概要について簡単に紹介した後、陸上掘削との比較を基に、海洋掘削作業の特徴、特有の問題点に加え、最新技術動向を、図面によりできるだけ平易に解説する。1. 「Deepwater Horizon」爆発炎上事故の概要(1)爆発事故の経緯、およびその後の対応[ 2009年10月6日 ]Mississippi Canyon 252鉱区において、「坑井32306-1」として掘削リグ「Transocean Marinas」により水深4,992ft(1,522m)の地点において掘削開始。[ 2009年11月26日 ]「Transocean Marinas」はハリケーンIdaにより損傷を受けたため、掘削作業を中断し、補修のためにミシシッピ州のPascagoula港に移動。[ 2010年2月9日 ]掘削リグ「Deepwater Horizon」を新たに動員、坑井トラブルのためサイドトラック(枝掘り)を行い、坑井名を「32306-1+」として掘削を再開。[ 2010年4月15日 ]掘削深度1万8,360 ft(5,596m)で掘り止め。物理検層実施。良好な貯留層性状を確認したため、将来的に生産井として活用するために仮廃坑作業への移行を決定。[ 2010年4月20日 ]仕上げケーシング降下、セメンチング作業実施後、仮廃坑作業を行う前に坑井内の一部を泥水から海水に入れ替える作業中に、火災が発生。報道によると、坑井内より噴出したガスが発電用ディーゼルエンジンの燃料系に引火・爆発した、とされている。 4月20日に火災発生後炎上を続け、2日後の22日に沈没した。この事故では11名が犠牲となっている。 「Deepwater Horizon」は坑井から北西に1,300 ft(396m)離れた海底に沈没したとされているが、沈没当初は海面に流出した油類は、リグに搭載されてあった燃料類であろうと考えられていた。しかし、その後の海面上からの観察の結果、坑井から噴出しているものではないかと疑われ、水中ビデオなどによりライザーパイプ(掘削時に海底面と掘削リグをつなぐパイプ)の破損個所から油ガスの噴出が認められ、坑井内よりフローしていることが確認された。 その後の油ガス流出対策については各メディアにおいて報道されているとおりであるが、さまざまな試行がなされた後、最終的にシーリングキャップと呼ばれる坑井上部を密閉できる装置の接続に成功し、坑井からの油ガスの噴出を止めることができた(7月12日)。その後同装11石油・天然ガスレビューuを介して坑井内に泥水を注入し、泥水自体の重さによって完全に坑井を抑圧することに成功した。 また、この対策と並行して、坑井の抑圧を目的に5月初旬から2坑のリリーフウェル(元の坑井の近傍から本坑井に向けて傾斜掘りによって掘削される坑井)の掘削が進められていた。作業は順調に進み、9月18日にはリリーフウェルからも貯留層に対してセメントを注入することで、地層からの油ガスの流出を完全に止めることに成功したことが確認されたため、BP社は9月19日にホームページ上で「坑井抑圧作業を完全に終了した」との発表を行っている。(2)爆発事故の原因 事故発生後、米国議会公聴会においては、今回の油ガス噴出事故に関して、原因究明が進められている。 またBP社は9月8日、事故原因の考察を記した内部レポートを公表している。このレポートでは、今回の油ガスの噴出から火災に至るまでの一連の出来事について、その原因として以下の八つの事項を挙げている。① ケーシングと地層の間に注入されたセメントが、地層流体の噴出を止める役割を完全に果たすことができなかった② ケーシング底部の逆流防止機構とセメントが、地層流体の噴出を止める役割を完全に果たすことができなかった③ 坑井の健全性を完全に確立できていなかった状態であったにも関わらず、ネガティブプレッシャーテストの結果を容認した④ 地層流体が長い時間をかけて坑底からライザーパイプ内に上昇してくるまでその存在を認識できなかった⑤ ウェルコントロール(坑井抑圧のための作業)により坑井を抑圧することができなかった⑥ 浸入流体をリグに備え付けのマッドガスセパレーターに通して処理しようとした結果、リグ上にガスが蔓延する結果となった⑦ 消火システムとガス検知システムによってガスの引火を防ぐことができなかった⑧ BOP(暴噴防止装置)の緊急システムをもってしても坑井を密閉することができなかった これらのうち、⑤以降は坑井から噴出したガスの取り扱いに関することであることから、ここでは掘削・仕上げ作業に関連する①~④について言及することにする。アナリシス ①から④のうち、今回のガス噴出の根本的な原因と考えられるのは①および②である。①においては、最終ケーシングの固定と遮水のために使用したセメントが、今回のような深い深度において使用される例が多くはない「窒素を泡状にして混入させたセメント」であったことに着目し、セメントデザインそのものに問題があった可能性を指摘している。つまり、セメントデザインの選定プロセスにおいて問題があり、セメントが十分にその機能を果たさなかった可能性を示している。セメントの一般的な役割としては、ケーシング設置後ケーシングの外側に注入され、一定時間を経て必要な強度を発生させ、圧力の異なる地層間の遮断、さらには意図しない地層流体の浸入を防止するといったことである。今回はセメント注入後、必要な強度を発生させるための十分な時間が経過する前に、坑井内の泥水の一部を海水に置換してしまい、その結果貯留層の圧力を抑えきれなくなってしまった可能性が考えられる。 ②においては、セメントを通り抜けた地層流体がどのようにして第2 のバリアをくぐり抜けたか、ということに関してであり、ケーシング最下部からの浸入の可能性を指摘しているものである(図1参照)。通常は、何らかの要因によりセメントが不十分な強度しか持たない場合であっても、そのバックアップ対策が講じられているものであり、本坑井もその例に漏れるものではない。具体的には、ケーシング最上部のケーシングハンガーにはケーシング外側からの地層流体のフローを防ぐためのシールがセットされている他、ケーシング最下部にも地層流体のケーシング内への浸入を防ぐための逆流防止機構(フロート)が備えられていた。今回の坑井においては、ケーシング最下部のフロートが正常に機能していなかった可能性が指摘され、その結果、油ガスの噴出が起こったものと推測されている。(3)安全な掘削作業のために 坑井掘削の一般的な話として、坑井を安全に掘削していく上で最も重要な要素としては「掘削泥水」と「ケーシング&セメンチング」が挙げられる。この二つを的確に組み合わせることによって、地層流体の坑井内への浸入を防ぎつつ、より深部へ掘進することが可能になるのであるが、裏を返すとこれらが的確にコントロールされていなければ、掘削作業中に危険な状態に陥りかねないということである。実際には、周辺に既に掘削された坑井がないような地域で初めて掘削を行う場合においては、的確にコントロールするだけの情報が乏しいことも多く、どれほど注意を払っていても地層流体の坑井内への2010.11 Vol.44 No.612[海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~BOPBOP下部のアニュラスBOP下部のアニュラスBOP青色のコントロールポッド青色のコントロールポッド:バッテリー不足:バッテリー不足上部部分の上部部分のアニュラスBOPアニュラスBOP黄色のコントロールポッド黄色のコントロールポッド:ソレノイドバルブの故障:ソレノイドバルブの故障シアラム:作動せずシアラム:作動せずガスがケーシングハンガーのシールより侵入したとは解析せずガスは、坑底より97/8インチ、7インチガスは、坑底より97/8インチ、7インチのケーシングの外側であるアニュラスのケーシングの外側であるアニュラスに侵入したとは解析せずに侵入したとは解析せず油層油層坑口からの97/8インチ、7インチの坑口からの97/8インチ、7インチのケーシング編成を事故原因から除外ケーシング編成を事故原因から除外坑底の坑内図坑底の坑内図2つの2つの逆止弁逆止弁ガスガス97/8インチ97/8インチケーシングケーシングアニュラスに回ったセメントスラリーの中であらかじめ混入していた窒素ガスが広がり、過度の流動性が生じた7インチ7インチケーシングケーシング坑底の坑底のシュー部分シュー部分坑底のシュー部分のセメントと2つの逆止弁がともに機能せず、ガスが坑底より、ケーシングの中に流入坑底のシュー部分からのガス流入出所:BP資料を基にJOGMEC石油企画調査部作成図1「Deepwater Horizon」爆発炎上事故における坑内図浸入を防ぎきれないことも多い。しかし、そのような場合でも、通常、そうした場面を想定した準備がされているのが一般的である。具体的には浸入した地層流体を安全に坑井外に排出するとともに、地層流体の坑井内へのさらなる浸入を防ぐために、坑井を安定化させるための「ウェルコントロール」と呼ばれる作業を行うために必要なシステムを装備している。ウェルコントロールシステムは、さまざまな機器が組み合わさって成立しているが、そのなかで代表的なものとしては、今回の事故で各メディアが取り上げる機会の多かったBOP(Blow-Out Preventer、暴噴防止装置)がある。 さらに、通常、油ガス坑井の掘削作業に従事する者に対しては、「ウェルコントロール」についての基礎知識を持つことが求められるケースが多い。その場合、国際的な認証団体によって認証を受けた「ウェルコントロール」コースにおいて、筆記試験などに合格して認定書を得ることが求められる。なお「ウェルコントロール」コースの代表的なものであるIADC(International Association of Drilling Contractors)が提供するWellCAPは、全世界で講習会を開催しており、その受講者は年間5万人を超えると報告されている(日本国内においても弊機構が主催して定期的に開催している)。 以上のことから、安全に坑井掘削を行うには「掘削泥水」と「ケーシング&セメンチング」が重要であり、仮に問題が起こった場合でも適切な「ウェルコントロールシステム」と「ウェルコントロール技術」を適用することによって対応できるという点では、海洋掘削でも陸上掘削でも基本的には同じである。一方、海洋掘削特有の課題も現実には存在することから、次章以降「浮遊式掘削機器を使用した海洋掘削」に焦点を当てて、話を進めていきたい。13石油・天然ガスレビュー. 海洋掘削の特徴 (陸上掘削との相違点)アナリシス 海洋掘削に使われる掘削リグは、固定式/着底式のリグと浮遊式のリグに大別できる。 固定式/着定式リグには、プラットフォームリグやジャッキアップリグ(写1)といったものがあり、これらのリグを使った掘削作業では、坑井のある海底面と掘削作業を行うリグの間は、ジャケット(プラットフォームの土台となる構造物)/レグ(ジャッキアップリグの足)や、ライザーパイプ(海底の坑井と海上にあるリグの坑口装置をつなぐパイプ。コンダクターパイプ)によって繋がっている。このため、これらのリグを使った掘削作業では、泥水循環を用いたロータリー掘削という点においては、陸上掘削作業とほぼ変わらない。 一方で、セミサブマーシブルリグ(写2)やドリルシップ(写3)といった浮遊式掘削リグを使った掘削作業では、海象の変化に伴う船体の動揺を考慮して坑井のある海底面と掘削作業を行うリグの間を繋げており、また、海象の悪化に対する緊急避難を考慮する必要もある。海洋掘削における主な特徴は、海象による船体の動揺を吸収していかに安全に海底からの掘削作業を行うか、海象条件の悪化に伴う緊急避難をいかに安全に行うか、ということへの対策にある。ここでは浮遊式掘削リグを使った海洋掘削作業に限定して、その概要を述べることにしたい。(1)使用機器/設備 浮遊式掘削リグを使った海洋掘削の模式図を図2に示す。海洋掘削特有の機器について、以下に簡単にまとめる。① 浮遊式掘削リグ 浮遊式掘削リグの主要なものに、セミサブマーシブルリグ(半潜水式リグ)とドリルシップがある。セミサブマーシブルリグは、ロアハルと呼ばれる浮体の上に8~10本程度のコラムに支えられた船体が載っている構造である。掘削作業中は、海象が与える船体の動揺を小さくするためロアハルとコラムの一部を海面下に潜水させ、移動中は、移動時の抵抗を軽減させるためにロアハルまで浮上させる。このリグの特徴は、動揺特性に優れており、気象・海象の厳しい海域でも高い稼働率を保つことである。 一方のドリルシップはそれに比べ、船型であるため移動時の抵抗が少なく移動性に優れており、バリアブルロード提供:日本海洋掘削株式会社写1ジャッキアップ・リグコンペンセーターコンペンセータードリルパイプドリルパイプライザーテンショナーライザーテンショナー泥水泥水ライザーパイプライザーパイプ噴出防止装置噴出防止装置(BOP)(BOP)ROVROV海底面海底面ドリルパイプドリルパイプドリルビットドリルビット出所:各種資料を基にJOGMEC作成図2海洋掘削の模式図2010.11 Vol.44 No.614[海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~パーマネントガイドベースウェルヘッドハウジング提供:日本海洋掘削株式会社写2セミサブマーシブルリグ30” コンダクターハウジングケーシングハンガーパックオフシール出所:JOGMEC図3海底坑口装置削関連装置を設置するベース)の上に設置され、各掘削ステージのケーシングは、ケーシングハンガーによって吊り下げられ、ケーシングハンガーはウェルヘッドハウジングの中に積み重なる構造となっている(図3)。③ BOP&マリンライザー BOPは、坑内から地層流体が浸入した場合に坑内をすることを目的とする暴噴防止装置である。坑内を遮蔽するには、坑内に入っているパイプの周りを完全に取り囲む必要がある。パイプの有無やその外径によって、また、非常時にはパイプの切断もできるようにするため、異なった形式のBOPが必要となる。また、安全装置として不慮の不具合に備えるため、バックアップとして複数のBOPを備えていることも必要で、通常、4 段から6 段程度の複数の形式のBOPを備えた、BOPスタックと呼ばれる一つの装置として取り扱われる。なお、BOPは、坑内での圧力試験等にも使われる。 海洋掘削のBOPスタック(以下、単にBOPと呼ぶ)は、蔽へ遮しゃい提供:海洋研究開発機構(JAMSTEC)写3ドリルシップがより大きいという特徴を持つ。写2にセミサブマーシブルリグの写真を、写3にドリルシップを示す。② 坑口装置 坑口装置はウェルヘッドとも呼ばれ、坑井の頂部(坑口)に設置される。陸上掘削においては、サーフェスケーシングの上に各サイズのケーシングスプールが積み重なる構造となっている。ケーシングスプールの上にはBOP(後述)が設置される。 一方、浮遊式掘削リグを使った海洋掘削においては、坑井の頂部は海底にあり、海底ではケーシングスプールを積み上げる作業ができないので、ウェルヘッドハウジングと呼ばれる坑口装置が、コンダクターパイプの上に接続されたパーマネントガイドベース(BOP等の海底掘15石油・天然ガスレビューAナリシス海底坑口装置(ウェルヘッドハウジング)と、油圧で海上のリグから操作できるBOPコネクターで接続され、海底に設置される。さらに、BOPの上にはコネクターを介してLMRP(Lower Marin Riser Package の略。LMRPの役割については、荒天待機の項で後述する)がつながり、その上にマリンライザーがつながってリグと海底坑口装置までの泥水循環が可能になる。 ここで、船体の動揺がある浮遊式掘削リグと、動かない海底坑口装置をつなげるための特別な機器について少し触れる。船体の水平方向への動揺に対しては、マリンライザーの上端/下端での曲げ応力を逃がすフレックスジョイントが接続される。また、船体の上下動に対しては、マリンライザーの上端にスリップジョイント(テレスコーピックジョイント、ストロークジョイントとも呼ばれる)が接続される。 BOPは、基本的に油圧で作動する。その作動には蓄圧された油圧動力ラインと、特定の機能を作動させるコントロール装置が必要である。BOPは安全装置であるため、海上からの動力供給がなくても必要最低限の作動が可能になるよう、適量の蓄圧ボトルがBOPスタックにも搭載されている。また、そのコントロール装置も不具合の発生に備え、複数設置されている。通常時は、マリンライザーに沿って動力ラインとコントロールラインがBOPスタックにつながっており、これによって海上のリグから操作される。特に大水深掘削に使われるBOPでは、油圧での海上からのコントロールは作動時間の遅れが発生するので、電気信号でコントロール装置を作動させる仕組みになっている。 なお、ここで説明したBOPとマリンライザーは、ライザー掘削と呼ばれる泥水循環を可能にする掘削手法のための装置でもあり、後述する海洋掘削の問題点で触れるライザーレス掘削では泥水循環ができない。④ ライザーテンショナー、モーションコンペンセーター 前項で、船体動揺を吸収する装置の一部(フレックスジョイント/スリップジョイント)について触れたが、動揺しているリグと動かない海底(或いは坑井の底)と繋がっているマリンライザーの上端或いはドリルストリングスの上端を繋ぐ必要がある。マリンライザーを一定の力で引っ張りながらリグから吊り下げる機構として、ラ伸びている縮んでいる縮んでいる伸びているコンペンセーターライザーテンショナードリルパイプライザーパイプBOP高潮時低潮時出所:JOGMEC図4リグの動揺とコンペンセーター/ライザーテンショナー2010.11 Vol.44 No.616[海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~イザーテンショナーがあり、ドリルストリングスを一定の荷重で引っ張りながら坑底(坑井の底)に接触させ続ける機構として、モーションコンペンセーターがある。 モーションコンペンセーターは、トップドライブ(ドリルストリングスの最上部にある、ストリングスを吊り下げ、且つ回転力と泥水の循環を可能にする装置)の直上、あるいはクラウンブロック(ストリングスを上下すやぐらるための、櫓の頂部に設置された定滑車)に設置されている。 一方、ライザーテンショナーは、マリンライザーの上端にあるスリップジョイントを一定の力で吊り下げるものである。スリップジョイントは、アウターバーレルとインナーバーレルに分かれるが、アウターバーレルはマリンライザーに接続され、インナーバーレルはリグ(正確にはベルニップル)に接続される。つまり、アウターバーレルが動かない海底と繋がっているため、これをライザーテンショナーが一定の力で吊り下げることになる。 なお、海洋掘削リグに乗ってみると、リグがヒービング(潮ちょう汐せき/波浪による上下動)を受けてコンペンセーターを使用している時、ライザーやドリルパイプといった海底とつながっているものが、上下動しているように見える。しかし、実際は自分がリグと一緒に動いているのであって、止まっているのはライザーやドリルパイプの方である(図4)。⑤ 定点維持装置 (係留、DPS) 海洋掘削リグは、海底と繋がっているために一点に留まっている必要がある。海象によって水平方向の動揺も受けるため、アンカーと係留索による係留あるいはDPS(Dynamic Positioning Systemの略)によって、リグを定点維持させるシステムを備えている。DPSは、スラスターによって、船体の水平の動きに対抗する方向に、船体を移動させる仕組みである。位置および船体の動揺方向の観測、必要な推進力の計算、推進力の制御、の三つのシステムによって構成される。その構造上、係留システムの方が定点維持能力は高いが、水深が深くなると、係留システムに掛かる負荷が大きくなり係留システムは適用できない。一方で、DPSを備えたリグは大水深でも定点維持が可能であるが、複雑な観測/計算/制御が必要なシステムであり、不慮の不具合によって機能しなくなると、直ちに流されてしまうリスクを伴う。このため、DPSには2重、3重のバックアップ機構が組まれるべきであり、そのバックアップ機構の重複の程度により、クラス分けされている。(2)陸上と異なる特別な作業と対策① ウェルコントロール 海洋掘削リグでの掘削作業においても、ウェルコントロールは陸上掘削と同様に必要である。その手法は基本的には変わらないが、以下の点には注意を要する。 海洋掘削ではBOPを閉める際、ラムBOPのシールを船体の動揺によるドリルパイプの上下動で傷めないようにするため、ドリルパイプをラムBOPに吊り下げる必要がある。このため、最初にアニュラーBOPが用いられることが多い。アニュラーBOPを閉じてから圧力を計測し、ドリルパイプの位置を確認してラムBOPを閉め、ドリルパイプのツールジョイント(ドリルパイプの接続部。ネジがあるので太くなっている)をラムBOPにかけて吊り下げる。 ウェルコントロール中は、チョーク/キルラインを通して泥水循環をするが、陸上掘削リグと異なり、水深が深くなるに伴いチョーク/キルラインの圧力損失(管壁との摩擦抵抗)も無視できなくなる程度に大きくなる。このため、ウェルコントロール中のポンプ圧にはこの圧力損失を考慮しなければならない。 また、ウェルコントロール作業終了後も、ラムBOP直下には、排出しきれなかったガスが溜まっている可能性が高い。BOP下の坑内を抑圧泥水(地層流体の坑内への更なる浸入を防ぐことが出来る比重を持つ泥水)で置換し、坑内の圧力がバランスした後、BOPを開ける前には、前述の溜まっているガスを安全に排出し、且つマリンライザー内も抑圧泥水で置換することを忘れてはならない。② DST(Drill Stem Test) 海洋掘削リグでのDST(Drill Stem Testの略。貯留層を掘削後、貯留層の生産能力を測るために行う、ドリルストリングスを使った生産試験のこと)では、定点維持システムの事故に備えて、特別な配慮が必要である。DST作業中は、ドリルストリングスを介して、地層流体がリグ上へ生産されている状況にある。したがって、緊急時には安全にストリングス内を遮蔽し、かつストリングスを分離させてマリンライザーとともに坑口装置から切り離すことが必要である。 海洋掘削でのDSTでは、その編成にSSTT(Sub SeaTest Treeの略)を組み込む。緊急時にはSSTTでストリングスを遮蔽して切り離し、ブラインドラムBOPで坑内を遮蔽し、BOPとLMRP間のコネクターからライザーを切り離して、坑口装置とリグの接続を解消する(図5)。17石油・天然ガスレビューAナリシスの積載可能荷重や、資機材を保管することができるデッキスペースが決まっていて、積みきれない資機材は、適宜、リグまで運搬する。資機材は通常、サプライボートによって供給されるが、海象条件によってはサプライボートのリグへの接舷ができない場合もあり、また人員の移動も、通常はヘリコプターで行われるが、気象条件によっては離着陸できない場合もある。したがって、海洋掘削では資機材輸送等のロジスティクス計画にも十分に配慮すべきである。なお、掘削位置がサプライベースから離れていれば、サプライバージを近隣に設置するなどで対処するが、これはジャングルなどリモートエリアで掘削作業を操業するのと同様である。 また、近年は海洋汚染、海洋環境保全への関心が高まり、廃泥やカッティングス(掘り屑)の海洋投棄が規制される傾向にあるので、その運搬、処理の対策を講じることも重要である。(3)作業手順 海洋掘削作業においては、陸上掘削とは異なる手順がある。以下、海洋掘削特有の作業手順について簡単にまとめる。① BOP&ライザーセットまで 海洋掘削リグを掘削予定位置まで移動し、位置が定まったら、まず、水深を測定する。 次にコンダクターパイプを設置するため、必要な坑径のビットで掘削を開始する(スパッドインと呼ぶ)。予定深度まで掘削したら、コンダクターパイプが前述のパーマネントガイドベースとともに下げられ、セメンチングされる。なお、あらかじめ測定しておいた海底地盤の強度によっては、ビットによる掘削ではなく、ビットからの海水のジェット噴射によって予定深度までコンダクターパイプを下げていくジェッティングという手法も用いられる。 コンダクターパイプがセットされたら、サーフェスケーシングを設置するため、必要な坑径のビットでケーシング設置予定深度まで掘削する。次に、サーフェスケーシングの頂部に溶接したウェルヘッドハウジングをパーマネントガイドベースに接続して下げ、セメンチングする。 なお、ここまでは、BOPおよびマリンライザーがない状態での掘削作業となるため、必然的にライザーレス掘削作業である。泥水循環ができないため、海水あるいは安価な泥水による掘削であり、掘り屑は海水とともに坑内から排出され、海底に溜まることになる。2010.11 Vol.44 No.618ブラインドラムBOPSSTTSSTT:ブラインドラムBOP の下の位置にあるバルブ(図中の赤いバルブ)により、ドリルストリングス内を遮蔽し、切り離すことができる装置出所:JOGMEC図5SSTTとLMRPの切り離し③ 廃坑/仮廃坑作業 掘削作業が終了し、将来的に坑井を再利用する計画のない場合は本廃坑(一般的に「廃坑」と呼ばれる)、将来的な再利用の可能性がある場合は仮廃坑という作業が行われる。「廃坑/仮廃坑」作業においては、海洋でも陸上での作業と同様に、坑内にセメントもしくはブリッジプラグなどの機械的なプラグを設置することにより、坑井を完全に密閉する作業が必要であることに変わりはない。 坑口の処理に関しても陸上同様原状回復の原則にのっとり、全撤去作業を課されるのが一般的と考えられるが、大水深海域での操業においては漁業、および周辺環境への影響がないと考えられる場合もある。例えば、海底での機器類の放置が認められるケースもまれにあるので、作業前に各国の法規制を確認しておく必要がある。④ その他(資機材輸送、環境対策) 海洋掘削リグは、バリアブルロードと呼ばれる資機材ウせるライザー掘削作業となる。基本的な掘削手法は陸上掘削と変わらない。 ただし、坑底にビットを着かせる際は、ヒービングによってビットを傷めないように、前述のコンペンセーターを作動させることや、揚降管時には、ヒービングによるスワブ/サージ圧が坑内に掛かるので、坑内状況の監視に留意することも必要である。また、坑内からマリンライザーへカッティングスが上がる際には、坑径が大きくなる(例えば、8-1/2”坑を掘削中では、直前のケーシングサイズが9-5/8”の場合、BOPの内径は18-5/8”であるため、4倍近く、流路の断面積が大きくなる)ために流速が落ち、カッティングスの滞留が起こりやすいので、適宜ライザーフラッシュ(キルライン/チョークライン/ブースターライン等を用いて泥水を送り、ライザー下部からリグ上へカッティングスを押し上げる作業)を行うことも考慮しなければならない。YYYYAAAAddddvvvviiiissssoooorrrryyyyNomalNomalNomalNomalrtrtrtrtw Alew Alew Alew AleelloelloelloelloRed AlertRed AlertRed AlertRed Alert警告のレベルにより、求められる対応が異なる。出所:JOGMEC図6リグの水平移動と作業限界警告深海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~い錐す ウェルヘッドハウジングとサーフェスケーシングが設置されれば、BOPとマリンライザーを降下する。その際は、数ジョイントごとにマリンライザーの脇に設置されたキル・チョークラインの加圧テストを実施しなくてはならない。 BOPをウェルヘッドハウジングにランディングさせる時には、ROVや海中TVで坑口を監視しながら、船体の動揺に合わせて重いBOPを降ろすが、ここは、ドリラーの腕の見せどころである。 BOPが無事にランディングしたら、BOPのテストを行う。これらの一連の作業は、時間の掛かる作業となるし佐渡南西沖(例えば、平成16年の水深971mの基礎試では、BOP降下とBOP テストは、計画3日、実績4日の作業であった)。② BOP&ライザーセット後 BOPとマリンライザーが設置されたら、泥水を循環3. 海洋掘削特有の問題点(1)強潮流/荒天対策 特に潮流が激しいロケーションでの掘削作業においては、気象・海象条件が定点維持システムの限界に近づくと、いつでも逃げられる体勢を取っておく必要がある(図6)。係留システムでは、係留索の破断やアンカーの滑り等が発生しても、緊急離脱が必要になる距離に移動してしまうまで、ある程度の時間を稼ぐことができるため、ライザー切り離しやSSTTに求められる動作時間に余裕はある。しかし、DPSシステムの場合は、ごく短時間(数十秒)に動作する能力が求められる。こうしたことから、DPSリグのBOPコントロールシステムやSSTTのコントロールシステムには、油圧ではなく電気式が求められる。また、DPSリグには、緊急時にいつでも逃げられる簡単な操作で切り離し作業ができるような作業シーケンスがプログラムされ、自動的に作動するEDS(Emergency Disconnect Systemの略)システムがBOPコントロールシステムに搭載されている。 荒天時にも、やはり作業を中断して、いつでも逃げられる体勢を取る必要があるが、強潮流下の稼働と異なり、天気予報などで予め情報が得られるため、ある程度の準備期間がとれる。荒天が予想される場合には、基本的には、掘削作業を中断し、掘削編成をすべて回収して19石油・天然ガスレビューMRPとBOPの間のコネクターからマリンライザーを切り離す。また、ハングオフツールをブラインドラムBOP下のラムBOPに吊り下げることで、掘削編成を坑内(ケーシング管内)に置いたまま、BOPで坑内を安全に遮蔽して、マリンライザーを切り離すこともできる。 LMRPは、マリンライザーとBOPを切り離すコネクター、アニュラーBOP、BOPコントロールポッドで構成されている。LMRPにアニュラーBOPが組み込まれている理由としては、すべてのBOPを回収することなく(坑井をBOPによって密閉した状態で)その補修を行うことができるようにするためである。そのため、アニュラーBOPのラバー(坑内にあるストリングスを密閉するためのゴム製部品)に極度の損傷が予想される、非常時のストリッピング作業(BOP を閉じてドリルストリングを揚降管する作業)などでは、LMRPに組み込まれているアニュラーBOP を使用して実施することが多い。4. 海洋掘削の最新動向(1)超大水深掘削 大水深海域において稼働可能な掘削リグは増加の一途をたどっている。 一般的に第1世代と定義づけられる1970年央までに建造された浮遊式掘削リグ(セミサブマーシブル<セミサブリグ>、ドリルシップ)の最大稼働水深は、1,000 ft(305m)程度であった。その後石油開発業界のニーズに応じて最大稼働水深は深くなり、1980年代後半より登場した第4世代と定義されるセミサブリグでは、最大稼働水深6,000 ft(1,829m)が一つの指標とされている。また定点維持機能としてDPSが搭載されたリグが増え始めたのもこの時期である。 第5、第6世代と定義される1990年代後半以降に建造されたセミサブリグのなかには、水深1万ft(3,048m)を超えるものも多くなっている。ODS-Petrodata社が提供する海洋掘削リグに関するデータベース「RigBase」によると、最大稼働水深が1万ft(3,048m)を超えるセミサブリグは、2010年9月現在、建造中のものも含めて32基となっている(表1)。なお、その大部分に当たる30基についてはDPS搭載リグであるが、例外的にDPSを搭載しないリグも2基存在する。 ドリルシップに関して言えば、セミサブリグよりもさらに大水深化は顕著である。同じく「Rigbase」によるとアナリシス(2)シャローガス 海洋掘削では、比較的浅い深度にあるシャローガスに遭遇してしまうことがある。シャローガスは、圧密が進んでいない地層にあり、通常のウェルコントロール手法では地層を破壊してしまう可能性が高いためにBOPによるウェルコントロールは難しい。このため、シャローガスのリスクがある場合には、一般的にはライザーレスで掘削することが多い。ライザーレスでは、たとえシャローガスに遭遇しても、浮上するガスは海流に流されるので、少なくともリグを直撃することは避けられる。一方で、ライザー掘削中にシャローガスに遭遇してしまった場合でも、マリンライザーの最上部にダイバーターを設けておくことで、ダイバーターラインによって安全に船外へガスを放出することはできる。表1最大稼働水深が10,000ft以上のセミサブリグ掘削リグリグ保有会社#IPC1Aker Drilling2Ocean Rig3Diamond Offshore4Seadrill5Seadrill6Seadrill7Seadrill8Aker Drilling9IPC10Noble11Noble12Diamond Offshore13Vantage Drilling14Vantage Drilling15IPC16Odfjell Drilling17Odfjell Drilling18Seadrill19Seadrill20Seadrill21Seadrill22Atwood23Maersk Drilling24Maersk Drilling25Maersk Drilling26Diamond Offshore27Sevan Drilling28Saipem29Petroserv30Noble3132Noble出所:各種資料を基に筆者作成La Muralla IVAker SpitsbergenEirik RaudeOcean MonarchWest EminenceWest PhoenixWest AquariusWest HerculesAker BarentsBicentenarioNoble Clyde BoudreauxNoble Dave BeardOcean ConfidenceSeaDragon ISeaDragon IICentenario GRDeepsea AtlanticDeepsea StavangerWest CapricornWest OrionWest SiriusWest TaurusAtwood CondorMaersk DelivererMaersk DeveloperMaersk DiscovererOcean CourageSevan ONGCScarabeo 9Petroserv Semi Tbn1Noble Jim DayNoble Danny Adkins最大稼働水深(ft)10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 12,000 12,000 掘削可能深度(ft) DP25,000 YY30,000 Y30,000 N30,000 Y30,000 30,000 YY32,800 Y32,800 Y32,808 Y35,000 N35,000 35,000 YY35,000 Y35,000 Y35,000 Y37,500 Y37,500 37,500 YY37,500 Y37,500 Y37,500 Y37,500 Y40,000 40,000 YY40,000 Y40,000 Y40,000 Y40,000 Y50,000 YYY35,000 37,000 NA2010.11 Vol.44 No.620[海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~現在稼働中のドリルシップは世界に86基あるが、そのうちの6割を超える53基については最大稼働水深が1万ft(3,048m)を超える(表2)。なお、その53基はすべてDPSを搭載している。 セミサブリグ、ドリルシップとも建造中のものも含めた現在市場に出ているもののうち、最も大きい最大稼働水深は1万2,000 ft(3,658m)であり、セミサブではNoble社所有の「Danny Adkins」と「Jim Day」の2基、ドリルシップでは同じくNoble社所有の「Bully I」「Bully II」とVantage Drilling社所有の「Cobalt Explorer」、Saipem社所有の「Saipem 12000」の計4基となっている。 参考までに、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が所有する地球深部探査船「ちきゅう」(写3)の最大稼働水深は、現時点では2,500m(約8,200ft)であるが、今後新たなライザーシステムを導入することにより水深4,000m(約1万3,100ft)まで対応可能とする計画もあるようである。(2)大深度掘削 近年の掘削リグは大水深化同様、より深い深度までの掘削を目指す「大深度化」も進んでいる。掘削リグの性能を表す指標としては一般的に、各リグごとに公表されている「掘削可能深度」が用いられる。「掘削可能深度」は掘進編成を昇降させる巻き上げ装置(ドローワークス)をはじめとする各種搭載機器の性能によって決まるものであるが、坑井条件(垂直井あるいは傾斜井、使用ドリルパイプ/ケーシング種別、使用泥水比重など)が異なれば変わってくるものであるので、実際のリグ選定時には注意が必要である。一般的ではないが、坑井条件によっては公表されている「掘削可能深度」を超える掘削が可能であるケースも存在する。 掘削可能深度に関して、セミサブリグについては「Rigbase」によると、現在稼働中のリグの6割に当たる136基が掘削可能深度は2万5,000 ft(7,620m)以下となっている。それらの大部分は第4世代以前に分類されるものであるが、近年建造されたリグにおいても2万5,000ft(7,620m)級のリグが散見されることから考えても、一般的にはこのレベルのリグ性能で十分である場合も多いと思われる。 大深度化の観点では、掘削可能深度が4万ft(1万2,192m)を超える浮遊式リグは現在31基(うちセミサブリグ:11基、ドリルシップ:20基)あり(表3、なお表3にはジャッキアップリグ1基が含まれる)、うち1基(Saipem社所有「Scarabeo 9」)は5万ft(1万5,240m)の表記となっている。近年メキシコ湾のプレソルト(古第三系プレイ)において21石油・天然ガスレビュー表2最大稼働水深が10,000ft以上のドリルシップ#1234567891011121314151617181920212223242526272829303132333435363738394041424344454647484950515253掘削リグDalian DeveloperDeepwater DiscoveryDeepwater ExpeditionDeepwater FrontierDeepwater PathfinderSaipem 10000Dhirubhai Deepwater KG1Dhirubhai Deepwater KG2Discoverer Deep SeasDiscoverer IndiaDiscoverer SpiritGSF C.R. LuigsGSF Jack RyanOcean Rig CorcovadoOcean Rig MykonosOcean Rig OlympiaOcean Rig PoseidonPacific BoraPacific MistralPacific Santa AnaPacific SciroccoET-VIIIPetrobras 10000Schahin Drsh Tbn1Schahin Drsh Tbn2Vitoria 10000West CapellaWest GeminiWest PolarisBelford DolphinDeep Ocean AscensionDeep Ocean ClarionDeep Ocean MendocinoDeep Ocean MolokaiDeepsea Metro IDeepsea Metro IIDeepwater ChampionDiscoverer AmericasDiscoverer Clear LeaderDiscoverer InspirationDragonQuestNoble Globetrotter INoble Globetrotter IINorbe VIIINorbe IXPlatinum ExplorerCarolinaODN-1ODN-2Saipem 12000Bully IBully IICobalt Explorerリグ保有会社Vantage DrillingTransoceanTransoceanTransoceanTransoceanSaipemTransoceanTransoceanTransoceanTransoceanTransoceanTransoceanTransoceanOcean RigOcean RigOcean RigOcean RigPacific Drilling ServicesPacific Drilling ServicesPacific Drilling ServicesPacific Drilling ServicesEtescoTransoceanSchahinSchahinSchahinSeadrillSeadrillSeadrillDolphinPridePridePridePrideOdfjell DrillingOdfjell DrillingTransoceanTransoceanTransoceanTransoceanVantage DrillingNobleNobleOdebrechtOdebrechtVantage DrillingPetroservOdebrechtOdebrechtSaipemNobleNobleVantage Drilling出所:各種資料を基に筆者作成最大稼働水深(ft)10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 掘削可能深度(ft)30,000 30,000 30,000 30,000 30,000 30,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 35,000 10,000 35,000 10,000 35,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 12,000 12,000 12,000 12,000 35,000 37,500 37,500 37,500 37,500 37,500 37,500 37,500 37,500 39,370 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 NANANA35,000 40,000 40,000 40,000 DPYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY掘削深度3万5,000 ft(1万668m)を超える油ガス田の発見が相次いでいる。これは、当該海域が5,000ft(1,524m)を超える超大水深海域であることと、ソルト層下部はその性状から地層温度がそれほど上昇しないという特徴があるため、貯留層における地層温度が現状の技術において対応可能である250 deg F(121℃)程度であるという特殊性によるものである。このような環境下においては今後も、大水深海域における大深度掘削の可能性は増す\3掘削可能深度が40,000ft以上の海洋掘削リグ(ジャッキアップリグも含む)#S-1S-2S-3S-4S-5S-6S-7S-8S-9S-10S-11D-1D-2D-3D-4D-5D-6D-7D-8D-9D-10D-11D-12D-13D-14D-15D-16D-17D-18D-19D-20J-1掘削リグDiamond OffshoreSevan DrillingSaipemTransoceanPrideリグ保有会社Diamond Ocean ValorOffshoreSonga EclipseSonga OffshoreSevan BrasilSevan DrillingSevan DrillerSevan DrillingAtwood CondorAtwoodMaersk DelivererMaersk DrillingMaersk DeveloperMaersk DrillingMaersk Discoverer Maersk DrillingOcean CourageSevan ONGCScarabeo 9Discoverer LuandaDeep Ocean AscensionDeep Ocean ClarionDeep Ocean MendocinoDeep Ocean MolokaiDeepsea Metro IDeepsea Metro IIDeepwater ChampionDiscoverer AmericasDiscoverer Clear LeaderDiscoverer InspirationDragonQuestNoble Globetrotter INoble Globetrotter IINorbe VIIINorbe IXPlatinum ExplorerBully IBully IICobalt ExplorerWest ElaraTransoceanVantage DrillingNobleNobleOdebrechtOdebrechtVantage DrillingNobleNobleVantage DrillingSeadrillPrideOdfjell DrillingOdfjell DrillingTransoceanPridePrideTransoceanTransoceanRig TypeSemi最大稼働水深(ft)7,500 7,500 7,874 7,874 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 7,500 10,000 掘削可能深度(ft)DP40,000 YY40,000 Y40,000 Y40,000 Y40,000 Y40,000 40,000 YY40,000 Y40,000 Y40,000 Y50,000 40,000 YY40,000 10,000 40,000 10,000 40,000 10,000 10,000 10,000 10,000 40,000 40,000 40,000 40,000 Drillship10,000 40,000 10,000 40,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 10,000 12,000 12,000 12,000 492 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000 JUYYYYYYYYYYYYYYYYYYNアナリシス(3)Managed Pressure Drilling (MPD) MPDは、近年広く注目を集めている掘削技術である。 一言にMPDといっても実際にはいくつかの手法に分類されるが、一言で言うと従来の掘削においては掘削泥水の比重(重さ)によって坑内の圧力をコントロールしていたのに対し、何らかの方法によって泥水比重以外の要素で坑内圧力をコントロールする手法がMPDである。そのために使用される機器もいくつかあるが、その中で代表的なものとしてRotating Control Device(RCD)と呼ばれる機器がある。RCDはRotating BOPと表現されることもあるように、坑井を密閉した状態で坑井内に圧力をかけながら、ドリルストリングを回転させることを可能にする機器である。これは、陸上およびジャッキアップリグでの作業においてBOPの直上に設置されるのが一般的である。それに対し、浮遊式掘削リグのようにBOPが海底面直上に位置する場合にはその設置位置が問題となる。 具体的には、RCDは上述のとおり、坑井を密閉した状態でドリルストリングを回転させつつ上下動も行うため、その損傷も少なくない。そこで、定期的な整備・補修作業が発生することが想定されており、直接アクセスすることのできない海底面直上に設置することは現実的ではないということである。 したがって現状では、RCDをライザー上部に設置することで対応している(図7)が、ライザーを含めて加圧出所:各種資料を基に筆者作成ことも考えられる。実際に掘削可能深度と最大稼働水深の関係について見てみると、掘削可能深度が2万5,000ft(7,620m)を超えるリグの8割以上が、最大稼働水深が6,000ft(1,829m)を超えるものとなっていることから、大水深化と大深度化は切り離せない要素であるとも言える。 一方、同じ海洋でも浅海域に目を向けると、上記のような特殊性が得られない場合においては、掘削深度が3万 ft(9,144m)未満であっても地層温度が500 deg F(260℃)に達するケースも多く存在する。その場合は、掘削リグの能力といった観点よりも坑内機器の高温高圧耐性において限界値に達して作業続行不能となるケースも多いため、ジャッキアップリグでは掘削可能深度4万 ft(1万2,192m)であるリグは1基(Seadrill社所有「West Elara」、表3)しか存在しないといった違いがある。ムーンプールテンションケーブル出所:著者作成ドリルフロアスリップジョイントRCDテンションケーブル海面図7海洋におけるRCDの設置イメージ2010.11 Vol.44 No.622[海掘削概論 ~BP社メキシコ湾原油流出事故を受けて~することになるため、ライザー自体の耐圧に制限されることなどから、陸上と同じレベルでの操業に達するまでには、まだ時間を要すると思われる。(4)サーフェスBOP掘削 (SXドリリング) 浮遊式リグからサーフェス坑口装置を適用して操業するシステムをSX(Saturation Exploration)ドリリングという(図8)。このシステムは1990年代半ばに、Unocal社(現Chevron社)がTransocean社と共同で、開発・導入したシステムである。 従来、開発段階においてはSPAR、TLP(Tension Leg ダイバーター&テレスコーピックジョイント坑井密閉装置コントロールシステムBOPコントロールシステムライザーテンショナーサーフェスBOPケーシングライザーシステム坑井密閉装置坑口装置出所:JOGMEC図8サーフェスBOP掘削デザインコンセプト23石油・天然ガスレビューPlatform)といった船体動揺を大幅に軽減するシステムの適用により、大水深海域においてもサーフェス坑口装置を使用したシステムは存在した。 一方、探鉱段階において浮遊式リグを使用する場合には、海底坑口装置を使用するのが一般的であった。しかし、海底坑口装置を使用することにより、作業の煩雑化、作業上の制約、およびコストの増加が顕著であることから、サーフェス坑口装置を使用したシステムの適用についての検討がなされた。その結果、海象条件が比較的穏やかな東南アジアの海域におけるUnocal社のオペレーションにおいて1996年以降段階的にSXドリリングの適用が始まり、最大6,700ft(2,042m)の水深での適用も記録されている。その後2000年代前半にはTotal社、Shell社によってもTransocean社のリグを用いてSXドリリングが適用されており、特に2004年には東南アジア以外で初めてとなるエジプトとブラジルの沖合の水深8,000ft(2,438m)を超える大水深海域での作業が報告されている。 この背景には、海底面における緊急時切り離し装置(Subsea Disconnect Device)と坑井密閉装置(Seabed Isolation Device)が開発されたことも大きく影響していると考えられ、今年のOffshore Technology Conference (OTC)においてもサーフェスBOPが適用可能なドリルシップのデザインコンセプトが紹介されている(OTC-20635)。(5)海底設置リグ 最後に夢のような話題を一つ。 現状では、大水深海域での掘削作業は、海面上に浮遊式掘削リグを浮かべて行っている。しかし、そうではなく海底面にリグを設置すれば作業は簡略化されるはず、というコンセプトの下、海底にリグを設置してその操業はすべてリモートで行う、ということを本気で研究している人々が世の中にはいるようである。「Seabed Rig」(http://www.seabedrig.com/)という北欧の会社もその一つだ。 実際に克服すべき課題は非常に多いと思われるが、実現されれば、これまで記した技術課題などはすべて克服される可能性を秘めた計画である。Aナリシスたん事故やトラブルが起こってしまうとそれを克服するために膨大な労力、費用を費やすこととなってしまうこともあり、安全面に細心の注意を払って作業を進める必要があることは、言うまでもないところである。よう 一方、浮遊式リグの傭費用(リグデイレート)は一時期と比較すると落ち着いたものの、陸上リグ、ジャッキアップリグと比較して高価(場合によっては10倍以上)であることに変わりはなく、経済性の観点より作業の効率化がより一層求められることも事実である。 したがって、特に海洋掘削においては、安全面と作業効率のどちらも犠牲にすることなく、オペレーションを遂行する経験と知識が必要とされると言える。本稿が海洋掘削作業の特殊性、およびリスクの所在とその対応策等に関して、ご理解の一助になれば幸いである。船せんまとめ これまで浮遊式掘削リグによる海洋掘削の特殊性について、陸上掘削との比較を基に説明してきた。浮遊式リグでの作業においては、作業足場自体が動揺するのに対して相手となる地中は動かないこと、海底面にBOPなどの重要な機器を設置する必要があるが、それらには容易にはアクセスできないこと、といった理由により、さまざまな問題が生じるのは事実であるが、冒頭でも述べたとおり、それらの課題は技術進歩によりすべて克服されている。そう言った意味では今回のBP社の事故は、複数の人為的なミスと機器の不具合が重なり、重大事故に至った特殊な例とも言える。 しかし、海洋掘削に限らず掘削作業においては、目に見えない地中を相手にすることから予想外の出来事に遭遇することも多く、その都度適切な処置を行いながら作業を進めていかなければならない。今回のような世界中の注目を集めた事故を引き合いに出すまでもなく、いっ執筆者紹介北村 龍太(きたむら りゅうた)愛媛県松山市出身。東京大学工学部地球システム工学科卒業。1995年石油資源開発株式会社に入社。一貫して掘削・仕上げ作業に従事。2007 年11 月より現職。大学時代に始めたアメリカンフットボールもようやく現役を引退し、近所の大学でコーチとして活動中。家族は妻の他、わんぱく坊主が2人。2歳の次男の旺盛な食欲に若干の恐怖を感じる今日このごろ。稲田 徳弘(いなだ のりひと)大阪府出身。1997年、秋田大学鉱山学部卒業、日本海洋掘削(株)に入社。2008年、1月より現職。2010.11 Vol.44 No.624
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2010/11/19 [ 2010年11月号 ] 北村 龍太 稲田 徳弘
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