ページ番号1006459 更新日 平成30年3月5日

LNG、グローバルな視点からの考察~事業環境の変化と東アジア市場への影響が大きい新旧LNG供給国の動向~

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レポートID 1006459
作成日 2012-01-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 天然ガス・LNG基礎情報
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2012
Vol 46
No 1
ページ数
抽出データ JOGMEC石油調査部坂本 茂樹LNG、グローバルな視点からの考察~事業環境の変化と東アジア市場への影響が大きい新旧LNG供給国の動向~はじめに 日本では停止が続く原発の代替エネルギー供給手段として石油系、LNGの追加購入量が増加している。福島原発事故を受けて、ドイツなど欧州中部では原発の段階的廃止へと向かうエネルギー政策転換の動きがある。2011年1~9月期の世界LNG輸入量は、アジア市場の強い需要を背景に、前年比12%の高い伸び率だった。 LNG追加需要発生とエネルギー政策転換は、中長期のガス需要想定量を上方修正させ、世界のLNG事業環境に変化をもたらしつつある。この変化は、① 新規LNG案件の最終投資決定(FID)加速化、および、② 新たにLNG輸出地域として登場する可能性のある地域と案件の増加に表れている。 本稿では、LNG需給の現況を概観した後、上記2点の事業環境変化に関して概説する。1.2011年の日本のLNG調達、世界のLNG需給(1)日本の2011年LNG調達状況 2011年3月の東電福島原発事故に端を発し、他社原発も定検終了後に操業再開できない状況が続いており、石油系、LNGなどの代替燃料調達量が増加している。 電力事業者は、 ① 長期契約に規定される引き取り量増オプション行使 ② 短期・スポット取引増量(大西洋圏、南米など)によって追加調達を行っている。 東京電力の電力供給可否に焦点が当てられた2011年夏季は、産業界・家庭部門ともに総力を挙げて取り組んだ節電努力が奏功して、2011年度上期の東京電力・東北電力管区内の電力販売量は前年同期比で86%であった。全国の同時期の電力販売量は前年同期比92%だった。 日本の2011年1~10月LNG輸入数量の輸入相手国別増減を見る(図1、表1)。輸入量が大きく増加した国(地域)はカタールおよび大西洋圏(北・西アフリカ、カリブ海)であった。2011年3月の東日本大震災・福島原発事故直後の同年4~6月期では、マレーシア、豪州など長期契約先からの増量オプション行使と見られる供給23石油・天然ガスレビュー国からの輸入増加量が多かった。しかし東南アジア・豪州など東アジア市場にLNGを供給する生産国は長期契約比率が高く、スポット供給には限界がある。2011年夏季以降、関西電力・九州電力などの原発の定検終了後、2010年1?10月2011年1?10月万トン/年1,4001,2001,0008006004002000レマアシネシーアインド州豪イネルブアシロルータカマオンービダブアンメエイ出所:財務省・通関統計ールカ・ペ大圏ス洋ラ西ア図1日本の2011年1~10月LNG購入量と前年比較アナリシス^転再開するめどが立たないため、代替エネルギー需要が増加する傾向にある。世界のLNG供給のなかで、非長期契約供給量(flexible LNG)が多いのはカタールと大西洋圏LNGである。カタールの非長期契約供給力は約3,000万トン/年、BG、GDF Suez等が販売する大西洋圏全体の非長期契約供給力は約1,500万トン/年と言われる。 2011年度冬季を前にして、日本のカタール、大西洋圏からの短期・スポット購入が増えている。同期間にインドネシアからの輸入量は大きく減少した。インドネシアの日本向けLNG長期契約数量自体が2010~2011年にかけて、以前の1,200万トン強から300万トンへと激減した。しかしインドネシアが計画していたジャカルタ近郊のLNG受入基地操業と国内LNG消費開始が2012年以降へと先送りされているため、長期輸出契約量減少に伴って増えたLNG供給可能量の一部が短期契約による対日輸出に振り替わったと見られる。表1日本の2011年1~10月LNG輸入先別数量増減カタールマレーシア豪州大西洋・ペルーインドネシアその他合計出所:各種情報より筆者作成増減(万トン)+286+ 93+ 84+246▲237+173+645 日本の2011年1~10月のLNG輸入量は6,438万トンであった(前年同期比11%増)。秋季以降LNG輸入の前年比が伸びているため、2011年11~12月のLNG輸入前年同期比を10月並みの18%増と仮定すると、2011年のLNG輸入量は次のようになる:2011年1~10月 6,438万トン(全年同期比11%増)   11~12月 1,424万トン(全年同期比18%増)2011年1~12月 7,862万トン(前年比12%増) 2011年の日本のLNG輸入増加量は、年央では1,000万~1,500万トンと想定されていたが、1,000万トン以下に収まる可能性が高い。これは全国の電力需要の1/3を占める東京電力の2011年上期電力販売量が前年比14%減であったように、夏季節電に伴うエネルギー消費抑制効果が大きかったからと考えられる。(2)世界の2011年LNG需給a.東アジアのLNG需給 2011年1~9月期、東アジアのLNG輸入量は堅調に推移した(前年同期比13%増)。国別LNG輸入量の前年比は、日本が11%、韓国16%、台湾は10%、中国は27%の増加だった。中国のLNG輸入数量は台湾並みでまだ規模は小さいが、PetroChinaの如東(江蘇省)、大連受入基地などの操業開始を受けて、カタール、イエメン等との中長期契約先と大西洋圏からの短期購入量が増加している。大西洋LNG6%イエメン0%アブダビ7%アラスカ・ペルー1%マレーシア19%オマーン5%カタール14%ロシア9%総量5,810万トン総量5,810万トンインドネシア13%ブルネイ8%豪州18%7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000万トン/年2010年1?9月2011年1?9月日本韓国台湾中国出所:財務省・通関統計出所:各種情報より筆者作成図2日本の2011年1~10月LNG輸入先比率図3東アジアの2011年1~9月LNG需要と前年比較242012.1 Vol.46 No.1アナリシス2,00010,0008,0006,0004,0002,0000万トン/年2010年1?9月2011年1?9月アジア中東欧州北米/南米出所:各種情報より筆者作成図4世界の2011年1~9月LNG需要と前年比較3,5003,0002,5002,0001,5001,0005000億m3中南米中南米北米北米欧州欧州中東中東アジアアジア200520062007200820092010年出所:BP統計図5世界LNG輸入量推移$/MMBtu東アジアLNG欧州LNG英国NBP米国H.H10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月10月11月12月2010年2011年20181614121002468出所:各種情報より筆者作成図6英米のガス市場価格、欧州・アジアのLNGスポット指標価格推移い勢せb.世界のLNG需給 世界全体の2011年1~9月のLNG輸入量を見ると、アジアの前年比伸び率16%、欧州の伸び率7%と堅調すうは、な増加傾向が継続している。世界LNG市場の趨東アジアの高い輸入数量伸び率を受けて、なお2009年から拡大の途上にある。しかし欧州市場は、四半期ごとの輸入量前年比伸び率が下がっており、2011年第3四半期でマイナスに転じて8%減となった。国内生産の減少幅が大きい英国のLNG輸入量は大きく増加している。年初から一貫してスペインを上回る欧州最大のLNG輸入国の位置にあり、2011年1~9月期の伸び率は前年比55%増だった。しかし同時期のフランス、ベルギー以外の主要輸入国(スペイン、イタリア、トルコ)の伸び率はマイナスだった。欧州南部はギリシャに発した経済不安がイタリア、スペイン、フランスまで及ぶ様相を呈しており、欧州全体が不況入りすればエネルギー需要も減少する可能性が高い。(3)LNG価格動向 LNG価格動向を見ると、2010年夏季から2011年夏季にかけて原油価格が一貫して上昇し、その後高止まりしていることを受けて、原油価格を指標とする東アジアのLNG長期契約価格は2011年を通じて上昇している。東アジア向けスポットLNGの指標価格は2011年4月以降上昇している。2011年3月までLNG需給見通しが供給過剰と見られていたため、東アジアのスポット指標価格と英国市場価格NBPの価格差は$2/MMBtu程度だった。しかし3月の原発事故以降、東アジア市場のLNG追加需要発生想定の下、両指標の価格差が拡大し、2011年12月上旬時点で価格差は約$8/MMBtuとなった。表22011年1~9月、世界のLNG輸入量前年同期比伸び率アジア中東欧州北米/南米合計伸び率(%)1673 7-512出所:各種情報より筆者作成25石油・天然ガスレビューLNG、グローバルな視点からの考察Q.LNG事業環境の変化(1)日本の原発事故に伴う世界の原発政策への影響 福島原発事故の影響は、旧ソ連時代チェルノブイリ原発事故の影響を直接被った欧州中部で表れた。ドイツ、オーストリア、スイスが段階的原発廃止を表明した。イタリアでは原子力発電は行われていないが、国民投票で再度原発不使用が決議された。一方、フランス、英国を含む他の欧州諸国、北米の姿勢には大きな変化はない。アジアでは日本同様に地震の多い台湾が段階的な原発廃止を模索している。今後大幅な電力需要の増加が想定される発展途上アジアの大規模市場(中国、インド)では、エネルギー需要拡大への対処策として原発の貢献が必要と考えられており、中東を含めて、原発維持・推進策に大きな変化はない。 したがって、原発政策転換により中長期的にエネルギー代替需要が発生する地域は、日本(2011年末段階で将来のエネルギー政策を策定中)および欧州中部と考えられる。欧州中部は現在LNG輸入がないためその需給に直接影響を及ぼすものではないが、中長期的にはガスの追加需要が発生すると考えられる。(2)世界のLNG事業環境への影響 後述するように、世界のLNG需要は増加トレンドにある。加えて、福島原発事故を受けた代替エネルギー需要発生、および一部地域のエネルギー政策転換(原発の段階的廃止)によりガス、LNGをめぐる事業環境に以下の変化が生じている。 ・ 第1点は、新規LNG案件の最終投資決定(FID)の動きが加速化している。 ・ 2点目は、新たな地域でLNG輸出事業の可能性が高まっていることである。(3)豪州を中心に相次ぐ新規LNG案件の最終投資決定 LNG事業環境の変化を受けて、2011年に最終投資決定を計画するLNG新規案件の総設備能力は約3,460万トン/年と見込まれ、2005年以来のFIDラッシュとなる見通しである。 2005年にはカタール大型案件(Qatargas-3、4、Ras Laffan-3)を中心に4,500万トンもの投資決定が行われた。それ以降、LNG需給見通しが緩和傾向に向かったこともあって、新規FIDは総じて低調であった。一方、2009~2010年にかけて、豪州のGorgon(Chevron)・5,0004,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005000万トン/年2005200620072008200920102011年出所:各種情報・報道より筆者作成図72005~2011年のLNGFID済みの液化設備能力推移表32005~2010年にFIDを実施したLNG案件実施年2010年2009年2008年2007年2006年2005年能力合計(万トン/年)プロジェクト名該当地域オペレーター8502,1704509504504,500QCLNGGorgon(1,500)PNG LNG(670)AlgewPluto(430)アンゴラLNG(520)ペルーLNGカタール・メガ事業他豪州GLD州西豪州沖合PNGアルジェリア西豪州沖合アンゴラペルーカタールBGグループChevronExxonMobilSonatrachWoodsideChevronPluspetrolカタール石油他出所:各種情報・報道より筆者作成262012.1 Vol.46 No.1アナリシス裼Oち 2010~2011年末までにFIDを実施する(計画分を含む)新規LNG案件の特徴は、CBMを原料ガスとするCBM-LNG、洋上液化案件など、非在来型LNGの比率が高いことである(対象案件全液化能力の60%)。2011年初時点ではLNG供給過剰が想定され、実績のない非在ちゅう感が強くマーケ来型LNGに対するユーザー側の躊ティングが進展しづらい状況にあった。これに対して、福島原発事故以降ガス、石油系燃料への代替需要発生後の事業環境変化は大きなインパクトとなった。マーケティングになお時間がかかると見られていた非在来型LNG案件の多くが、FIDを決める段階に至っている。 いったんプロジェクトのFIDを実施すると事業推進のスピードは速くなる。豪州クイーンズランド州でCBM-LNGを推進する3プロジェクトは(QCLNG、GLNG、APLNG)、いずれもクイーンズランドの州都ブリスベン北方のグラッドストーン港に液化設備を建設すQCLNG(BGグループ)、PNG LNG(ExxonMobil)などアジア太平洋の新規LNG案件のFIDが増えていく。2011年1月のGLNG(Santos他)のFIDに至るまでこの流れが続いた。 福島原発事故の後、豪州の新規LNG案件のFIDに拍車がかかった。5月にShellのPrelude LNG、7月にConocoPhillips/OriginのAustralia Pacific LNG(APLNG)第1トレイン、9月にChevronのWheatstone LNGのFIDが続いた。さらに、INPEXは2011年末までIchthys LNGのFIDを計画している(表4)。これらの新規LNGプロジェクトは長期契約がほぼ定まり、順次売買契約締結がなされつつある。ConocoPhillipsはAPLNG第2トレインの販売先候補と鋭意交渉中である。同社は2011年11月、関西電力とLNG100万トン/年の売買契約覚書を締結した(20年間)。関西電力にとっては初めてのCBM-LNGの購入となる。表42011年にFIDを実施・予定する液化案件時期プロジェクト名該当地域オペレーター液化能力(万トン/年)事業タイプ2011年1月2011年1月2011年5月2011年7月2011年9月2011年(予定)GLNGスノロLNGPrelude LNGAPLNG 第1トレインWheatstoneIchthys豪州GLD州インドネシア西豪州沖合豪州GLD州西豪州沖合西豪州沖合Santos三菱商事ShellConocoPhillipsChevronINPEX合計7802003604508608103,460CBM-LNG*陸域ガス田FLNG*CBM-LNG*沖合ガス田沖合ガス田*:非在来型LNG出所:各種情報・報道より筆者作成Shell Curtis LNG400万t × 4(最大)Shell, PetroChina(Arrow)GladstoneGladstoneFAIRVIEWSPRINGGULLYUNDULLANOSEG LNG780万t( 2トレイン)Santos,PETRONAS,Total,KogasAustralia Paci?c LNG450万t (+450万t)Origin,ConocoPhillipsQueensland Curtis LNG850万t (2トレイン)   (+400万t)BGShell(Arrow)BGBGOrigin EnergyOrigin EnergySantosSantosAUSTRALIAAUSTRALIALNG IndustryLNG IndustryAPLNGAPLNGQCLNGQCLNGArrowGLNGArrowGLNG出所:JOGMEC出所:グラッドストーン港湾当局(GPC)図8豪州クイーンズランド州のCBM-LNG事業図9グラッドストーン市北方対岸のカーティス島南端に位置する液化サイト27石油・天然ガスレビューLNG、グローバルな視点からの考察驕B2011年7月までにFIDを実施した3プロジェクトは、既にグラッドストーン港北方に位置するカーティス島南端に隣接している液化基地サイトの整地・設備建設に着手した。グラッドストーン市は既にLNG事業関係者で人口が急増して活況を呈している。 CBM-LNGの大手4案件のうち、Shell/PetroChina(CBM生産者=Arrow Energy)は、FID実施済の3案件と異なる立場を取る。ConocoPhillipsがAPLNG第1トレインのFIDを公表した2011年7月時点において、Shellは先にFIDを実施した同業者との競合から発生するコストアップを避けるために、FIDを急がない旨を表明した。Arrow Energy(Shell/PetroChina傘下)は2011年8月中旬、CBI/千代田加工/Saipemから成るコンソーシアムにLNGのFEED作業を発注した。第1段階で液化能力800万トン(400万トン*2トレイン)を建設し、後に能力を1,600万トンに拡大する計画を持つ。なおArrow Energyのガス田評価作業が遅れ気味であり、FIDに先立って十分な評価作業期間が必要との見方もある。PetroChinaを通じて早晩ポテンシャルの大きい中国市場進出を狙える同案件は、マーケティングに関しては有利な立場にある。(4)豪州の新規LNG案件の状況a.豪州LNG 2009年に最終投資決定したGorgon LNGに始まり、2011年末までに同決定を行った豪州の新LNG案件の操業開始時期は、2014~2017年である。特に2014~2016年にかけて大規模案件の生産開始が集中する。計画が順調に進展すれば、豪州LNG案件の液化設備能力は2017年に8,000万トン/年を超え、カタールに代わって世界最大のLNG供給国になると見られる。 ただし、豪州新規LNG案件が順調に進展するにはなお課題も多い。新規案件の先駆けとなるWoodsideのPluto第1トレインは、数回の計画遅延を経て2012年1~3月期に操業開始を計画している。過去に発生した建設労働者によるストライキの争点は労働者宿舎の条件改善など労働環境に関わるものであり、労働者移入を厳しく制限する豪州の硬直的な労働者需給を表している。Woodsideに続くChevronはGorgon、Wheatstone LNGを擁し(ともに西豪州沖合)、労働者の雇用と配置を計画的に行っていることを表明している。総じて、Chevronの2LNG案件、既述のクイーンズランド州の3LNG案件のように、FIDで先行したプロジェクトは労働力・資機材確保でも先行しており、優位にある。しかし、FIDが30,00025,00020,00015,00010,0005,0000万トン/年オマーンオマーンイエメンイエメンUAEUAEカタールカタールロシアロシアPNGPNG豪州豪州ブルネイブルネイマレーシアマレーシアインドネシアインドネシア201020112012201320142015201620172018年出所:各種情報・報道より筆者作成図11アジア太平洋・中東の液化設備能力推移万トン/年14,00012,00010,0008,0006,0004,0002,0000出所:Santos提供2007200920112013201520172019202120232025年出所:各種情報・報道より筆者作成図10グラッドストーン港カーティス島GLNG液化サイト作業現場(2011年8月)図12カタールと豪州の液化能力推移推定282012.1 Vol.46 No.1アナリシスest of WorldMexicoCanadaUnited StatesSouth KoreaJapanIndiaChinaEuropeSouth America年図13地域別LNG需要想定・域内ガス生産量が減退する欧州:ガス輸入増加→ LNG輸入も増加・中東、ラテンアメリカ:ある程度のLNG需要増加 このLNG需要の基礎構造に加えて、需給に変化をもたらす要因は、次の2点と考えられる。 ① アジアの発展途上経済(中国、インド)のLNG需要拡大の規模をどの程度に見るか(ガスは石炭など他燃料と競合する) ② 原発政策に伴うガスの追加需要発生: 日本、中欧(ドイツ、スイス、オーストリア、イタリア);代替エネルギーの選択には、価格など経済条件、環境問題など多様な要素が絡む 長期的なLNG需要のトレンドは、 ① アジア発展途上国の大規模市場のガス需要拡大幅と欧州のガス輸入量を基本構造と見つつ ② 日本、欧州中部の原発代替ガス需要の規模を見極める、ことになると考えられる 地域市場間のLNG需要成長性に注目すると、北米のガス自給体制がシェールガス等非在来型ガスの堅調な供給によって長期に維持されると見られることから、大西洋LNG市場は欧州需要が中心になると考えられる。ただし、アジア発展途上大規模市場の成長性が欧州市場に比べてはるかに大きいため、LNG取引はアジア市場を軸に展開する可能性が高い。2040203920382037203620352034203320322031203020292028202720262025202420232022202120202019201820172016201520142013201220112010出所:ライス大学 2010年12月 豪州連邦政府は2012年7月(豪州の年度初め)に炭素税を導入するが、LNG産業への影響は限定的と考えられる。炭素税スキームは、2012~2015年度までの3年間はA$23/炭素1トンが適用され、2015年度7月からEmission Trade Schemeに移行する。課税対象は大規模企業500社に限定される。ただし、LNG産業、石油精製業は対象税額の50%の優遇措置が適用される。ガス産業専門家は、炭素税がLNG産業に及ぼす影響はUS$0.10~0.20/MMBtu程度のコストアップで、影響は限定的と見なしている。しかしCO2含有率の高いガス田プロジェクトは、影響度がより大きくなる。また豪州LNGは一般に高コスト体質であるため、後続の豪州案件が、新たにLNG市場に参入する北米、東アフリカ等の新規LNG案件との競合が厳しくなる可能性がある。(5)中長期のLNG需給 東アジアでは日本の原発代替需要として、1,000万~1,500万トン/年程度のLNG追加需要が発生すると考えられる。アジア太平洋のLNG需給に着目すると(主要な供給地はアジア太平洋と中東)、豪州新規案件の操業が本格化するまでの期間(2012~2016年)は、需給がタイト気味に推移する可能性が高い。アジア太平洋市場のLNG調達不足分は、相対的に供給量に余裕がある大西洋市場(供給地は大西洋圏と中東)の非長期契約供給量から調達することになる。 中長期的に見たLNGの需要構造は、基本的に次のように考えられる。・これまでLNG主要市場だった東アジア伝統市場(成熟経済圏):横ばい~微増(韓国は発電エネルギーに占める原発比率を高める計画)・アジアの発展途上大規模経済圏(中国、インド):大幅な需要増加の可能性29石油・天然ガスレビュー50454035302520151050Tcf遅れるとそれだけ労働力確保等で後手後手に回り、計画どおりの事業推進が難しくなる懸念が残る。b.炭素税導入(2012年7月)とLNG事業への影響LNG、グローバルな視点からの考察R.シェールガス開発とLNG需給への影響(1)米国でのシェールガス開発の成功とその要因 シェールガス開発は米国で大きな成果を収め、しばしばガス産業の“game changer“と呼ばれている。米国のシェールガス生産の拡大は米国ガス需給を劇的に変えた。長期にわたってシェールガスをはじめとする非在来型ガス生産が国内ガス供給を賄う見通しになったことから、米国のガス輸入見通しは大きく修正された。わずかしの数年前まで、米国が将来日本を凌ぐ世界最大のLNG市場に成長すると考えられていたことを思い起こすと、隔世の感がある。History2009Projections 米国のシェールガス開発の成功には、次のような要因が考えられる。 ① 米国は世界最大のガス市場であり、在来型ガス生産が減少するなか、新規ガス供給が求められていた(LNG輸入、または生産増加) ② 米国陸域は大きな市場であるとともに、古くからの主要な石油ガス生産地域でもあるa.米国の地質は世界で最も密に探査が実施され、地質構造が把握されているb.米国陸域では活発な探査・生産活動が実施され、稼働中のリグが多い(4,000基以上)c.石油ガス生産地域である米国陸域では、生産者と掘削サービス企業の普段の協力関係にあり、技術開発・コストダウン効果が大きいd.輸送設備(ガス・パイプライン網)が発達しており、ガス発見の場合に商業化が容易 ③ 米国の地下資源権利は土地保有者に帰属→土地保有者はロイヤルティー収入取得可能→土地保有者が資源開発に協力する大きなインセンティブ ④ 生産初期における米国政府の税制面の支援、インセンティブとなる価格設定 ⑤ 当初のシェールガス開発地域が、人口の少ないテtcf302520151050199020002009201520252035年キサス州、ロッキー山脈地域だった出所:米国EIA、Annual Energy Outlook 2011図14米国のガス生産見通しHistory2009Projectionstcf43210-1-2199020002009201520252035年出所:米国EIA、Annual Energy Outlook 2011図15米国のガス輸入見通しちゅう 北米のシェールガス開発は順調に進展してきたが、開発の注目地域が人口の少ないテキサス、ロッキー山脈地密地を含む北東部Marcellus shaleへ広域から、人口稠がるとともに、掘削作業が住環境に及ぼす影響への懸念が論議されるようになった。中心的関心はシェールガス開発に際して使用される「水圧破砕法」によって地下帯水層が汚染される懸念である。Marcellus shaleの面積の20%を占めるニューヨーク州では環境への影響調査が実施され、2011年7月に「州面積の20%を占める人口稠密地」において「水圧破砕法」を禁じる方針が表明された。言い換えれば、同州は州面積の80%ではシェールガス開発を許可することによって、資源開発と環境保護の共存を求める選択を行った。(2)他地域でのシェールガス開発の見通し 有力なIOCは北米の独立系既存シェールガス生産者との共同事業の設立、または既存生産者を買収することによって、自ら北米のシェールガス生産者としての地位302012.1 Vol.46 No.1アナリシスノ備えて石炭依存度を下げる必要がある。具体的な対策はガス火力と原子力発電である。第2に、ガス輸入の90%をロシアに依存していること。政府はエネルギー安全保障の観点からガス輸入のロシア依存の引き下げを図っている。国産のシェールガスがガス供給に貢献するならそれに勝ることはない。現在ポーランドでは外国企業を含めてシェールガス探査活動が行われているが、採算ベースでの生産が可能かどうかまだ分かっていない。一般に、欧州でシェールガス開発が成功した場合でも、生産コストは米国の1.5倍以上と見られている。ウクライナもポーランドと似た状況にあり、特にガス輸入のロシア依存度削減の観点からシェールガス開発に取り組もうとしている。 先に挙げた米国のシェールガス開発成功の要因のうち、欧州に当てはまるのは市場の存在である。欧州ガス市場は米国に次ぐ世界第2位の規模がある。しかしその他の要因はすべて欧州に当てはまらない。炭化水素の生産実績に乏しい欧州大陸では、地質探査実績も少なく地質構造もあまり把握されていない。掘削リグは欧州大陸にわずか40基しかない。陸域のガス生産地域が少ないために輸送インフラも整備されていない。地下資源は国家に帰属し、土地保有者には権利がないため協力を期待し難い。また欧州大陸は人口稠密であって、社会の環境保護意識が強い。シェールガス開発環境に係る米国との差異は大きい。b.中国のシェールガス開発 エネルギー供給の70%を石炭に依存する中国は、国際的なCO2削減目標に対処するためにガス比率(4%、2010年)を高める政策を掲げている。2015年までにガス比率の8%への引き上げを目標にしている。 ガス供給の主体は国産ガスであり、中国政府は米国EIAの調査報告が可能性の高さを示したシェールガスへの期待を表明している。しかし中国の広域輸送によるガス消費は十数年の経験しかなく、非在来型ガスの開発環境は欧州に比べても大きく劣る。中国政府は2011年4月に初めてのシェールガス鉱区の公開を実施し、7月に2鉱区の開発権が国営Sinopecおよび地方政府系企業に商業生産・開発開発検討中ポテンシャルに期待・問題あり出所:各種情報より筆者作成図16世界のシェールガス開発状況を固めると、次に北米以外の地域でのシェールガス開発作業に乗り出した。米国EIAが2011年4月に発表したシェールガス報告書“World Shale Gas Resources”が示すように、中国、南米(アルゼンチン) 、欧州の一部(ポーランド)等が注目されている。しかし、他地域のシェールガス開発には課題が多いと考えられている。一定期間内での資源開発の可否は、長期的な資源論の問題ではなく、人間社会が設定する経済環境の良否によって決まる問題である。a.欧州のシェールガス開発 2009~2010年にかけてExxonMobilなど主要IOCは、欧州政府系研究機関と協働して欧州でのシェールガス資源の探査活動を開始した。しかしExxonMobilの参入で有望と見られていたハンガリーでは探査成果が芳しくなく、同社は程なく同国の探査活動から撤退した。フランスもパリ盆地等を対象としてシェールガス開発が着目された国である。Totalなど同国石油企業も欧州でのシェールガス開発に強い意欲を表明していた。しかし再生可能する欧州は、環境保護への関心もエネルギー開発を標高い。フランス議会(上院・下院)は2011年7月、環境への悪影響の懸念を理由として国内で「水圧破砕法」を禁じる決議を行った。チェコなど中欧諸国の一部も同決定に同調する動きを見せた。 欧州で唯一積極的にシェールガス開発を表明しているのは、ポーランド政府である。ポーランドにはその十分な理由がある。第1に、ポーランドは発電のほとんどを石炭火力に依存しており、今後EUが課すCO2削減政策榜ぼひょうう31石油・天然ガスレビューLNG、グローバルな視点からの考察onventionalUnconventional02004006008001,000bcm再生可能再生可能水力水力原子力原子力石炭石炭ガスガス石油石油RussiaUnited StatesChinaIranQatarCanadaAlgeriaAustraliaSaudi ArabiaTurkmenistan国米国英アシネンドイ イタアシー国中レマ本日国韓%1009080706050403020100出所:BP統計出所:IEA“Gas Golden Scenario” 2011年6月図17アジア各国の1次エネルギー消費比率図182035年の主要な天然ガス生産国(3)シェールガスが世界のガス・LNG市場に及ぼす影響 シェールガス生産は2020年ごろまでは北米を中心に展開されると考えられる。したがって、シェールガスのガス需給への影響は、まず北米需給に表れる。世界ガス需給への直接の影響は、次のシナリオとなる。けんん引い①米国のガス輸入大幅削減に伴う影響 既述のように、米国では堅調なシェールガス生産が今後も続くため、ガス輸入がほぼ不要となる見通しである。2000年代半ばに想定されていた米国LNG市場の拡大シナリオは消滅し、主要なLNG市場は引き続きアジア市場、次いで欧州市場となる可能性が高い。ただしアジア市場の構成変化が進展し、長期的なLNG需要は低成長の伝統市場(日本、韓国、台湾)に代わって、新興国市場されると考え(中国、インド、東南アジア)によって牽られる。②北米からのLNG輸出(後述) 北米(米国、カナダ)で輸出用LNGが検討されている。両国の輸出案件ともにシェールガスをフィードガスに使用する。先行する米国案件はメキシコ湾岸にある既存のLNG受入基地設備を利用するために、相対的にコストが安く事業展開が早いと見られる。輸出先は、欧州、アジア市場である。カナダ案件は西岸のブリティッシュ・コロンビア州に建設され、アジア市場に輸出される。カナダでは、ガス田開発・液化設備建設ともにこれから実施するために、米国と比べてコストが高く、操業開始時期が遅れる。いずれも、シェールガスを原料とするLNGが全LNG供給中に一定の比率を占めることになる。32付与された。現在の中国にはシェールガス掘削技術もなく、探査の初期段階にあるに過ぎない。シェールガス開発が本格化するのは2020年以降と見られている。政府内にも果たしてシェールガスが商業採算レベルで生産できるかどうか見通しが立っていない。政府はシェールガス・CBMの非在来型ガス開発が成功すれば2020~2030年の国内ガス需要の90%を国産ガスで賄えると見ている。しかし、非在来型ガスの商業生産が順調に進展しない場合には2020~2030年のガス供給の50~70%を輸入で賄わざるを得ないとの見解を表明している(Gas Australia、2011年11月)。 このように、北米以外にも地質的にシェールガスのポテンシャルの高い地域はあるものの、商業ベースで生産可能な事業環境を整えるのにはある程度の時間が必要となる。多くのエネルギー専門機関は、米国以外の地域のシェールガス開発の本格化時期を2020年以降と見ている。c.主要な既存ガス生産国における非在来型ガス開発の見通し ロシア、中東産油国など豊富な炭化水素資源を持つガス生産国は地質データを公開していないため、非在来型ガスのポテンシャルを評価できない。これらの地域は在来型ガスのポテンシャルが豊富なため、ガス開発の優先順位は在来型のガス開発に置かれると考えられる。一つの見解として、IEAが2011年6月に発表したガスシナリオでの見方を参照する。 このシナリオは2035年時点のガス生産において、ロシアは部分的に非在来型ガスを含むものの、イラン、カタール、サウジアラビアなど中東のガス生産は全て在来型ガスと見ている。2012.1 Vol.46 No.1アナリシスS.東アジア市場への新規LNG供給 炭化水素資源量の観点からは究極埋蔵量に占めるガス比率が高く、また開発技術の進歩にも助けられて、ガス供給は基本的に需要を満たしていくと考えられる。しかし、各地域のガス資源がどのような過程を通じて商業化されるのか、さまざまなシナリオが考えられる。北米で商業開発に成功したシェールガスは、中国、欧州など他中国21%台湾4%韓国5%クウェート0%総量1,899万トン総量1,899万トン日本70%出所:各種情報・報道より筆者作成図19豪州の国別LNG輸出比率(2010年)地域でもやがては商業開発されると考えられるが、非在来型ガス開発に際してはそれぞれの地域が課題を抱えてはいる。開発シナリオには跛行性があり、長期の準備期間を要する。 一般に、ガスの供給は、適切な需要想定に基づく準備期間があれば需要を満たしていく(実際には需要を正確に想定するのは至難の業)。福島原発事故以降世界のLNG需要が上方修正されるとの見方から、東アジア市場向けに新たなLNG供給地域が登場する可能性が高くなった。(1)中長期的なLNG追加供給能力、豪州(2015~2025年):計画中の案件(豪州LNG)が担う ガス供給には一定の事前開発期間と多額の投資を要する。東アジアLNG市場へのLNG供給は基本的に「注文生産」に準じる長期契約に基づいて実施される。追加需要に対して臨機応変には対応し難い。中期的な追加供給源は、現時点で既に投資決定され、あるいは開発計画が進展している案件が中心となる。東アジア向けに最も高表5豪州の新規LNG案件地域事業名オペレーターGorgonWheatstonePlutoShell IchthysBrowseSunrise西豪州合計Gladstone LNGQueensland Curtis LNGAustralia Pacific LNGShell QueenslandQLD州(CBM-LNG)合計ChevronChevronWoodsidePreludeINPEXWoodsideWoodsideSantos/PetronasBGOrigin/ConocoPhillipsShell/PetroChina北西大陸棚(NWS)DarwinWoodsideConocoPhillips西豪州QLD州新規合計西豪州北部準州新規案件既存事業総計カタール液化能力(2010年完成、比較)出所:各種情報・報道より筆者作成33石油・天然ガスレビュー当初FID2009年2011年2007年2011年2011年?2012年??2011年2010年2011年2012~2013年最大液化能力(万トン/年)2,0002,5002,0003608601,2004009,3207801,2001,4008004,18013,5001,63032015,4507,700LNG、グローバルな視点からの考察0,0009,0008,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000万トン/年その他  豪州43%19%2010年(実績)2020年(見通し)4,0003,5003,0002,5002,0001,5001,0005000万トン/年その他  豪州42%3%2010年(実績)2020年(見通し)出所:各種情報・報道より筆者作成出所:各種情報・報道より筆者作成図20日本のLNG輸入先の変化(新規契約動向から推定)図21韓国のLNG輸入先の変化(新規契約動向から推定)いLNG供給力を持つのは豪州を中心とするオセアニアLNG案件であり、計画されている主要案件の最大液化能力は1億3,000万トン/年を超過する(日本の2010年輸入量7,000万トンの約2倍)。 豪州は既存LNGプロジェクトの対日供給比率が高い(2010年、70%)が、新規案件でも、特に西豪州沖合LNG案件に日本企業が締結した長期契約数量が多い。2010~2011年にかけてわずか300万トンにまで削減されたインドネシアとの長期契約の代替契約先は、ほとんどが豪州・PNGのオセアニア案件によって担われていく。また韓国政府は2011年8月半ば、Kogasが既存の東南アジアLNG(インドネシア、マレーシア、ブルネイ)との長期契約に代えて、新たに豪州Prelude、Ichthys LNGと合計500万トン/年超の長期契約を締結する旨を表明した。Kogasは続いてChevronの豪州LNGプロジェクト、Gorgon、Wheatstoneと長期契約を締結すると見られる。東アジアの主要LNG市場の日本、韓国両国で、中張期的に豪州からのLNG輸入比率が高まっていく。(2)東アジア向けLNG輸出が期待される新規供給地域①北米LNG(米国、カナダ) 北米で輸出向けLNG案件の検討が進展している。原料ガスはシェールガスである。 米国メキシコ湾岸のLNG輸出案件は、既存のLNG受入基地が低操業に陥っていることから、既存設備を有効利用する事業多角化の観点から考案された。桟橋など港湾設備、LNGタンクは既存の施設を使い、液化設備等のみを新設することで投資額を抑えることができる。またテキサス州南部で産するシェールガスを原料に使うことが可能である。米国メキシコ湾岸にLNG受入基地を持つLNGトレーダー4グループが積極的な事業展開とマーケティングを進めようとしている。 なかでもSabine Pass 基地を擁するCheniere Energyは、Bechtelに液化設備建設を発注し、BGグループ・スペインGas Natural FenosaとLNG売買契約を締結するなど、先行している。 カナダでも複数のシェールガス開発事業と併せて、東アジアへの販売を目的とするLNG案件が検討されている。カナダ案件には、韓国、中国、日本企業も参加しており、自国市場向けLNG事業開発を展開しようとしている。 北米のLNG輸出事業は、その輸入先多様化を図る東アジア市場の意向に沿い、供給多様化に貢献すると期待される。北米のLNG輸出が実現する際には、価格フォーミュラに市場価格要素が用いられると見られ、アジア向け価格フォーミュラに変化が生じるきっかけになる可能性がある。 両国の案件にはそれぞれ特徴がある。米国はエネルギーを戦略的物資と位置づけ一義的にはエネルギー輸出を禁じており、LNG輸出認可は特殊な事例と考えられる。米国政府は2011年11月初旬、「LNG輸出の国内ガス需給への影響」に係る調査を実施することを決め、2012年第1四半期に完了させる予定である。仮に将来、米国ガス需給がタイト化した場合に輸出許可が取り消される可能性がある。または東アジア向けLNGの高価格342012.1 Vol.46 No.1アナリシスpache Consortium/Apache Consortium/Kitimat LNGKitimat LNGDouglas ChannelDouglas ChannelShell,Mitsubishi ,PetroChina,Kogas /Shell,Mitsubishi ,PetroChina,Kogas /Prince RupertPrince RupertCANADAPetronas,Progress EnergyPetronas,Progress EnergyU.S.ACanaportCanaportNortheast GatewayNortheast GatewayEverettEverettNeptune LNGNeptune LNGDominion/Dominion/Cove PointCove PointCosta Azul LNGCosta Azul LNGGolden PassGolden PassCameron Cameron LNGLNGElba IslandElba IslandMacquarie/Macquarie/Freeport LNGFreeport LNGLiquefaction plant (Planned)Regasification TerminalMEXICOAltamiraAltamiraBG, Southern Union/BG, Southern Union/Lake CharlesLake CharlesCheniere/Cheniere/Sabine Pass Cheniere LNGSabine Pass Cheniere LNG出所:各種情報・報道より筆者作成図22北米のLNG輸出計画 北米LNG輸出コストの相対的な位置づけを、豪州の新規LNG案件と比較する。一般に豪州新規案件は高コストであるが、プロジェクトによって採算性に幅がある。メキシコ湾岸の米国LNGコストは豪州新規LNG案件の幅のなかで、中位から低いコストに位置づけられる。カナダLNG案件は豪州案件の幅のなかで、中位から高い位置にあると見られる。したがって、これから、マーケティング活動を行う豪州新規LNG案件は、北米のそれとの競争が厳しくなる可能性が高い。 いずれにしても、北米のLNG輸出事業は実現する可能性が高く、東アジア向けLNG供給に一定の比率を占めると期待される。3)東アジア向けLNG輸出が期待される新規供給地域② (東アフリカ 東アフリカは近年油ガス田の発見が続き、新たな探鉱注目地域と認識されている。タンザニア、モザンビークでは沖合深海で相当量のガス発見が報告され、埋蔵量が国内需要規模、近隣への既存のパイプライン輸出契約量を大きく上回ることからLNG事業化が検討されている(タンザニアのBG/Ophir Energy、モザンビークのしゅうん斂れに影響されて国内ガス価格が上昇した場合、ガス消費者の反対にあって、LNG輸出が影響を受けることも考えられる。米国のLNG輸出事業が開始されるのはほぼ確実だが、将来にわたって安定的な輸出が可能かどうかは定かではない。ちなみにIEAは2011年11月に発表したWEO2011において、次のような認識を表明している。「米国のシェールガス生産は国内需要変化を柔軟に反映し、長期的なガス需給は生産=消費に収すると考えられる。LNG輸出は部分的に実施されるにとどまる」。 一方、カナダのLNG事業計画は、ガス田開発、液化設備・港湾等出荷設備新設を含め、全てこれから開始される。したがって米国案件に比べてコストが高くなる。しかし国内市場規模が小さく、西海岸のブリティッシュ・コロンビア州に建設される液化基地の仕向け地はほぼ東アジア市場に限定される。したがって、いったん液化設備が完成すると、東アジア市場向けに安定した供給が期待できる。カナダLNG案件は、豪州クイーンズランド州のCBM-LNG案件に類似する点が多い。ともにエネルギー埋蔵量は豊富だが国内市場規模が小さく、エネルギー開発の前提となるのは輸出である。また東アジア市場への輸送距離もほぼ等しい。35石油・天然ガスレビューLNG、グローバルな視点からの考察nadarko、Eniグループ)。 各コンソーシアムは現在埋蔵量評価作業を実施している。とりわけモザンビークでは2011年10~11月にかけてEniによる新規ガス田発見、Anadarkoのガス田評価作業に伴う埋蔵量の上方修正などが公表され、進展が著しい。モザンビークのAnadarkoグループ(Area 1)は2011年11月、ガス田評価作業の結果、可採埋蔵量を15~30Tcfへと上方修正し、さらにアップサイドポテンシャルの可能性が高いとされる。同グループは既にLNGのプレFEED作業を開始しており、2013年にFID、2018年に操業開始の計画を表明している。当初生産規模は2トレイン1,000万トン/年で、後に増設を検討する。グループ内に日本、インド企業を含み、それぞれが日本、インドへのLNG輸出を計画している。 Eniは2011年10月にAnadarkoのArea 1の沖合に隣接するArea 4でのガス発見を発表し、推定埋蔵量を22.5 Tcfと発表した。東アジア市場向けにLNG事業を計画する。Area 1、Artea 4の発見ガス田は隣接しており、ユニタイズして一体運営するシナリオも考えられるが、両グループともにそれには言及していない。 東アフリカLNG案件の特徴は、アジア・欧州市場の双方に輸出可能な地理的位置にあること(中東に準じる)、アフリカのなかでは相対的にカントリーリスクが低いことである。東アフリカのLNG輸出開始は画期的であり、調達先の多様化を図る東アジアLNG買い主の購入政策にも沿うものと考えられる。(4)その他の東アジア向け新規LNG輸出構想 これ以外にも、契約価格の高い東アジア向けLNG輸出構想は多い。商業化の時期は未定だが、将来の東アジアガス市場に対する供給が期待できる。図23東アフリカ(タンザニア、モザンビーク)のLNG輸出構想36Block 4Block 4Ophir Energy : 40%Ophir Energy : 40%BG : 60%BG : 60%PwezaPwezaIndian OceanAREA 1AREA 1Anadarko : 36.5%Anadarko : 36.5%Mitsui : 20%Mitsui : 20%ENH : 15%ENH : 15%Bharat Petroleum : 10%Bharat Petroleum : 10%Videocon : 10%Videocon : 10%Cove Energy : 8.5%Cove Energy : 8.5%Block 1Block 1Ophir Energy : 40%Ophir Energy : 40%BG : 60%BG : 60%ChazaChazaBarquentineBarquentineWindjammerWindjammerMamba SouthMamba SouthLagostaLagostaTubaraoTubaraoMOZAMBIQUEIroncladIroncladAREA 4AREA 4Eni : 70%Eni : 70%Galp : 10%Galp : 10%ENH : 10%ENH : 10%Kogas : 10%Kogas : 10%ChewaChewa22,,000000mm11,,000m000m500m500mSONGO SONGOSONGO SONGOTANZANIA25050100kmPossible LNGGas Processing PlantPower StationGas Pipeline Gas Pipeline (Possible)出所:各種情報・報道より筆者作成2012.1 Vol.46 No.1アナリシス\6東アフリカ(タンザニア、モザンビーク)のLNG事業構想事業名タンザニアRovuma Offshore Area 1Rovuma Offshore Area 4モザンビークOphir Energy 40.0%Anadarko* 36.5%BG* 60.0%事業者三井物産 20.0%ENH 15.0%Bharat Petroleum 10.0%Videocon 10%Cove Energy 8.5%Eni* 70.0%Galp 10.0%ENH 10.0%Kogas 10.0%鉱区沖合深海、Block 1, 4沖合深海、Rovuma Offshore Area 1沖合深海、Rovuma Offshore Area 4事業タイミング ・ガス田発見時期 ・FID2010~2011年 ・LNG操業開始2020~2021年2010年2013年2018年2011年ガス埋蔵量(推定)7.7 Tcf15~30 Tcf (Anadarko)22.5 Tcf (Eni)(想定)液化設備能力(1~2トレイン)400万~800万トン/年当初 1,000万トン/年(2トレイン)増設 最大3,000万トン/年備考*:オペレーター出所:各種情報・報道より筆者作成・ドライガス、液分なし・日本向け500万トン輸出構想(三井物産)・Area 4とユニタイズ構想あり・Area 1とユニタイズ構想ありa.アラスカの新LNG計画 長く日本にLNGを供給してきたConocoPhillipsのアラスカKenai LNGは操業終了を迎えようとしている。一方アラスカ北部North Slope州には35Tcfとも言われる膨大なガス埋蔵量がある。同地からガス消費地域・出荷地へのガスパイプラインがないため、随伴ガスは商業化できずに再圧入されている。これまでBP, ExxonMobil, ConocoPhillipsなど主要なガス資源保有者間で南方へのパイプライン建設条件が合意されなかったため、ガス商業化が実現しなかった。 アラスカ・ガスパイプライン港湾局(The Alaska Gasline Port Authority)は、ガスパイプライン建設・LNG事業化調査を行い、2011年7月末に調査結果を公表した。パイプライン到達地Valdezに液化設備を新設する計画である。再圧入されている豊富なガスを用いるLNG事業はパイプライン新設コストの発生にもかかわらず良好な経済性が期待できる。LNG事業コストは$8.5/MMBtuと推定され(2011年価格)、北米(カナダ、米国テキサス州)、豪州の新規LNG案件(西豪州、QLD州)の想定コストを下回り、十分な競合が可能だとされる。 アラスカ・ガスパイプライン港湾局がLNG事業化調37石油・天然ガスレビューChukchi SeaChukchi Sea(連邦)(連邦)Beaufort SeaBeaufort Sea(連邦)(連邦)Beaufort Sea(州)Beaufort Sea(州)【3マイル以内】【3マイル以内】NPRANPRA(連邦)(連邦)(National Petroleum(National PetroleumReserve Alaska)Reserve Alaska)NorthNorthSlopeSlope(州)(州)PrudhoePrudhoeBayBayArctic NationalArctic NationalWildlife RefugeWildlife RefugeCANADADelta Delta JunctionJunctionALASKAAlbartaおよびアメリカ本土Cook InletCook Inlet(州・連邦)(州・連邦)AnchorageAnchorageValdezKenai Kenai LNG基地LNG基地AlaskaAlaskaPeninsulaPeninsula(州)(州)North North AleutianAleutian(連邦)(連邦)石油パイプライン構想中ガスパイプライン出所:各種情報・報道より筆者作成図24アラスカの油田地域、パイプラインLNG、グローバルな視点からの考察ク実施後、アラスカ州政府が公式にLNG輸出支持を表明、関係企業に事業化検討要請を行ったことから、BP、ExxonMobil、TransCanada等企業側にもパイプライン建設・LNG輸出検討を開始する機運が見えてきた。ロシアYamal LNGが用いる砕氷技術がアラスカLNG実現に貢献するとの期待もある。 東アジア市場向けに2015~2020年ごろに投入される新規LNGは、オセアニア、カタールからの供給が多い。2025年ごろまでに供給開始される契約についても、既に事業化が表明されている豪州LNG案件を軸に供給が実行される。同時期の豪州LNG供給が全体に占める割合は1/3以上になる可能性がある。しかし豪州新規案件をめぐる事業環境は厳しく、常にコストアップ圧力と遅延懸念にさらされている。北米、東アフリカ、アラスカを含む他地域のLNG案件が入り込む余地は十分にあると考えられる。b.その他の構想:ロシア、イラン ガス埋蔵量に富むロシア、イランは、LNGによるガス輸出増加を図ろうとしている。サハリン2事業は、既に東アジア市場向けLNG供給基地として定着した。同地の液化設備が増強されるのであれば有力な候補となる。また極地のYamal LNG案件においては、北極海の解氷期に北極海~ベーリング海を経由して東アジア市場にLNGを販売する構想がある。 一方のイランは、ロシアに次ぐ豊富なガス埋蔵量を持ち、やがては有力なガス輸出国となる可能性が高い。しかし経済制裁下という地政学的リスクを抱えており、現体制が経済的に国際社会に復帰して開発投資受け入れが可能になる時期の予測がつかない。現時点では、中長期的に見てLNG供給国になる可能性があると言うにとどまる。おわりに 原発事故後、関連国(地域)のエネルギー供給政策の変化に伴い、代替需要が発生するLNG産業にも変化が生じる。新たなLNG輸出国(地域)の登場に伴って、長期的にはLNG産業に次のような変化の発生が想定される。① 新規輸出地域全般(北米、東アフリカ) →大規模石油企業以外のオペレーター登場② 北米の東アジア向けLNG供給開始 →価格フォーミュラに市場価格要素使用 こうした要因に伴う東アジアLNG市場の将来の動きが注目される。執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油(株)(現JX日鉱日石エネルギー(株))入社。1991年から日本石油開発(株)で海外の石油ガス上流資産管理・新規案件発掘業務に従事。2004年10月から現職(JOGMEC 石油企画調査部 上席研究員)。主要担務は、アジア太平洋地域の石油ガス開発状況・プロジェクト調査、世界ガス・LNG事業状況調査。エリア・スタディーに興味を持っている(主に旧大陸)。2010年2月から、2012年世界ガス会議(マレーシア・クアラルンプール開催)の準備を行う世界ガス協会ガス市場委員会の東アジア・グループリーダーとしての任務を開始した。余暇は、週末の競技ボート練習、読書(歴史物・中国武侠小説)。382012.1 Vol.46 No.1アナリシス
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2012/01/20 [ 2012年01月号 ] 坂本 茂樹
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