ページ番号1006462 更新日 平成30年2月16日

第20回世界石油会議ドーハ大会に参加して

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レポートID 1006462
作成日 2012-03-19 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般基礎情報
著者
著者直接入力 大貫 憲二
年度 2012
Vol 46
No 2
ページ数
抽出データ JOGMEC石油調査部大貫 憲二第20回世界石油会議ドーハ大会に参加してはじめに1.世界石油会議の概要国内委員会」を組織し、関与している。 2011年12月にカタールのドーハで開催された「第20回世界石油会議」に初めて参加した。世界石油会議(World Petroleum Congress)は、世界石油評議会(World Petroleum Council)が、3年に1度開催する国際会議であり、評議会に加盟する国々や企業が一堂に会し、石油業界が直面する課題とその解決法について、ハイレベルな議論を展開する場である。 今回の会議のテーマは「Energy Solutions for All:Promoting Cooperation、Innovation and Investment」であり、現在だけでなく今後長期間にわたり、信頼性が高く、購入しやすく、持続可能なエネルギーを入手し続けるための解決策として、生産者、消費者、政府その他が、協力・革新・投資を促進する必要がある、とし、テーマ設定や議論が行われた。セッションに出席した各国のエネルギー関係閣僚やエネルギー企業の経営幹部からも、現状に対する危機感や、将来に向けた投資・開発・人材育成の必要性などが語られており、新鮮な印象を受けた。 なお、会議開催期間中、展示会場では、各社が展示を通じて事業や技術をアピールし、ビジネスの機会を得る場としても活用されていた。 本稿は、その概要をまとめたものである。69石油・天然ガスレビュー(1)世界石油評議会 世界石油評議会は、人類の利益のために世界の石油資源の管理を促進する目的で、1933年に設立された。最も重要な機能は、さまざまな課題に対する解決法を見出すことに貢献するため、石油産業に関する内外の利害関係者の間に立ち、対話を促し、解決を容易にすることである。 世界石油評議会は、石油業界全体を代表する世界的な機関であり、本部はロンドンにある。現在、65のメンバー国から成り、世界の石油・ガスの生産・消費の95%以上を占めている。各国は、政府のバックアップの下、石油・ガス産業、学術・調査機関の代表から成る国内委員会を組織している。日本では、石油連盟を中心に「世界石油会議日本(2)世界石油会議 世界石油会議は、世界石油評議会のメンバー国が主催し、業界を代表する専門家や世界的な石油・ガス分野の政策決定者が、業界や将来のトレンドを深掘りするために参集するもので、今回で20回を数える。各国(主に産油国)の閣僚や石油・天然ガス関係企業のCEO等経営幹部が出席するなど、業界のメインキャストが多数参加している。 また、各国の石油企業などがコンベンションセンター内に展示ブースを設置し、内外に事業内容や技術をアピールする場でもあった。 今回のカタール大会は、中東で初めての開催であり、ドーハの街中には世界石油会議のペナントが至る所に掲示Council(National Committees)ExecutiveCommitteeWPCSecretariatCongressProgrammeCommittee(CPC)CommitteeYouth(YC)NominationsCommittee(NC)出所:World Petroleum Council パンフレットより図1 世界石油評議会の組織図 エッセーヘ滞在中全くなく、毎日雲一つない快晴であった。今回滞在した12月は、1年のうちで最も過ごしやすい時期、とのことである。実際、暑さは感じず快適であり、夜は少し寒いほどで、上着が必要であった。ただし、「この時期は本当によい時期だが、それ以外の時期は厳しい気候であり、侮ってはいけない。真夏は気温が45度に達し、昼は街を歩けない」と言われたのがとても印象的であった。IRANSOUTH PARSSOUTH PARSNORTH FIELDNORTH FIELDBAHRAINRas La?anRas La?an(LNG液化基地)(LNG液化基地)QATARDOHADOHASAUDI ARABIA出所:JOGMECU.A.Eガス田油田図2 カタールおよびノースフィールドガス田 会議が開催されたドーハは、カタールの首都であり、日本人にとっては、サッカーワールドカップ最終予選での「ドーハの悲劇」(1993年)の地として知られている。 ドーハに到着してまず驚いたことは、街に非常に活気があることであった。私たちの搭乗した飛行機がドーハに到着したのは、日曜日の早朝であったが、日曜日はカタールにとって、週明けの平日ということもあり、朝7時の市街地は、通勤用自動車であふれ返っていた。本来、30分程度で到着する空港から滞在ホテルまでの移動に、1時間程度を要したほどであった(後ほど分かるのだが、夕方のラッシュもかなり激しいものであった)。また、街中が建設ラッシュであり、私たちが宿泊したホテルの周辺はいくつもの高層ビルが建設中で、建設用クレーンも乱立していた。天然資源を豊富に持ち、している豊かな国であるこ発展に邁との象徴のように思えた。 ドーハを訪れるまでは、砂漠の乾燥した空気の質感を想像していたが、到着してみて、湿度を感じたことがとても意外に思えた。これは、首都ドーハが海に面していることと関連しているのだろう。それなのに、雨の降る気配進しまいんされていた。各公式イベントは円滑に運営されており、開催国カタールのホストとしての強い意気込みを感じた。2.開催地(カタール・ドーハ)について(1)カタールの概要とドーハの印象  第20回世界石油会議の開催地であるカタールは、中東、ペルシャ湾岸に位置する国家である。人口は173万人(2010年現在)で、面積は秋田県ほど。しかし、沖合に巨大なガス田(ノースフィールドガス田)が発見されて以降、ガス田開発が開始され、1997年にLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)として初出荷された。以降、巨大なLNG液化プロジェクトが相次いで立ち上がり、2012年1月現在、LNGの年間生産能力は7,700万tになっており、世界最大のLNG生産・輸出国となっている。 日本は、長期契約分としてカタールより、年間600万t余りを輸入している。特に2011年は、東日本大震災および福島第一原発事故の影響で、カタールからのLNG輸入量が急増し、最終的に1,186万tを輸入した。 出所:筆者撮影写1 ドーハ市街702012.3 Vol.46 No.2エッセーi2)会場について 会場となったのは、ドーハ市街地の西側にある学園都市(Education City)のなかに造られた、カタール・ナショナル・コンベンション・センター(Qatar National Convention Centre:QNCC)であった。世界石油会議開催に合わせて建設され、本会議が初の催事であった。国家の威信を感じさせる巨大な建物で、他の展示会場に勝るとも劣らない、壮大なものであった(写2)。3.第20回世界石油会議について(1)開催日時および参加者 世界石油会議は、2011年12月4日(日)から8日(木)の5日間にわたって開催された。公式発表では5,000人以上の代表団が登録・出席し、展示対応者や展示会参加者を含めると、全体で7,000人以上が参加したことになる。(2)開場前日の会場の印象 12月4日は、最初の公式行事となるオープニングディナーが開催され、会議および展示会は翌5日からとなっていたことから、JOGMECの展示ブースの設置状況や、会議会場内の配置等を確認するため、周回した。 会場に到着して驚いたのは、(さまざまな方から、各国の展示会ではよくあることと話には聞いていたが)前日にもかかわらず、完成していない展示ブースが多く見られたことである。会つち場中に槌音が響き、資機材の搬入も頻繁に行われていた。「明日の開催に間に合うのだろうか」と本気で心配してしまったが、ご多分に漏れず、翌日の開場時には、全て準備万端整っていたから不思議である。その最後の追い込み力には脱帽した。 ちなみに、JOGMECのブースは、前日時点で既に完成しており、展示ブースを案内してくださる現地の方との打ち合わせやリハーサルが、念入りに行われていた。(3)世界石油会議のテーマ 今回の世界石油会議のテーマは、「Energy Solutions for All:Promoting Cooperation、Innovation and Investment」である。現在のみならず今後長期間にわたり、信頼性が高く、購入しやすく、持続可能なエネルギーにアクセスし続けるための解決策として、生産者、消費者、政府その他が、協力・革新・投資を促進する必要がある、とし、これをベースとした議題が多数取り上げられた。また、持続可能な社会のため、より賢く、より効率的で、よりクリーンなエネルギー消費の必要性等についても議論された。(4)プログラム構成 大会プログラムの構成は、以下のように六つのセッションから成る。①全体講演(Plenary Session) 社会的責任を満足しつつ、世界の持続可能な成長のために必要なエネルギーを継続的に供給していく上で直面する主要な課題について、石油企業・政府機関等の専門家・高官が講演するプログラムである。合計11の課題について、総論的に議論が展開され、各国のエネルギー大臣や、CEO等企業の経営幹部が議論を行い、示唆に富んだ議論が展開された。②閣僚セッション(Ministerial Session) 世界石油評議会のメンバー国に対出所:筆者撮影出所:筆者撮影写2 世界石油会議会場(QNCC)写3 展示会場内の様子71石油・天然ガスレビュー第20回世界石油会議ドーハ大会に参加してオ、自国の石油・ガス部門について特別プレゼンテーションを行う機会が与えられる。希望する国々は、定められた日時に国別に、プレゼンテーションを実施する。その国のエネルギー関係閣僚が議題をリードし、代表団は、最新の開発・投資機会と潜在的な協力範囲について詳細な情報を提供する。19カ国がセッションに参加した。③特別セッション(Special Session) 地球規模の広がりと関連性を持つ特定の課題について、関係者・専門家が参加するセッションである。17のトピックスが紹介された。④ ベストプラクティスに関する基調講演(Best Practice Keynote) 石油業界を取り巻く課題に対する最先端のBest Practiceの紹介と議論がなされた。11のセッションが開催された。⑤ラウンドテーブル(Round Table) 各国のエネルギー関係官僚やエネルギー企業の経営幹部、大学教授レベルの出席者により議論される。業界に関連するトピックスに対し、司会者(出席者代表)が対談と議論を促す形式で議論が進行し、14のテーマで開催された。⑥フォーラム(Forum) 議題に基づき、資料作成者自らが発表するが、発表終了時に副議長が簡潔にその取りまとめをする形式で進行し、24のセッションが開催された。発表者は翌日、ポスタープラザにてポスターを発表、関心のある訪問者と直接議論をしていた。 これら六つのセッションを体系的に行うため、主要テーマ別に五つのブロックに分割され、実施された。出席者は自らの関心の高いテーマに対し、自由に参加する形式となっている。主要テーマは、表のとおりであった。 全体講演11件、行政・政府セッション19件、特別セッション17件、基調講演11件、ラウンドテーブル14件、フォーラム24件、合計96件の講演・議論が実施された。なお、日本からも、12テーマに対し、16名がセッションにおいて発表し、1名がセッションの副議長を務める等、積極的な参加が印象的であった。(5)展示ホールでの展示について 各種セッションと並行して、展示ホールでは、展示会が開催された。会場内には約350の展示ブースが設営され、各企業が来場者にアピールに努めていた。日本からも、JOGMECをはじめ七つの企業、九つのブースが設営された。 JOGMECは、業務や現在の取り組みを世界各国の方々(特に政府関係者や石油企業関係者)にご理解いただき、各国との関係強化を促進するため、今回も展示ブースを設置した。世界の石油開発に参入していくためには、私たちの保有する技術を紹介することが重表主要テーマブロック1:天然ガス天然ガス(新たな供給源、輸送・地域的需給バランス)、GTLについて討議主なテーマ:「LNGの液化・出荷の最新技術(F1)」「GTLの効率・安全性および経済性の改善(F3)」「Strandedガス田についてのソリューション(F4)」「非在来型ガス資源(F5)」「国境をまたぐパイプライン(RT1)」「CNGや石油化学用など天然ガスの活用拡大(RT3)」ブロック2:新たな探鉱・生産の最前線、技術成熟油ガス田からの石油・ガス回収、開発の最前線、非在来型石油資源、超深度貯留層のモニタリング等、最新の探鉱開発状況について討議主なテーマ:「大水深および大深度地下貯留層の開発(BP3)」「ニューフロンティア探鉱:技術革新と将来の見込み(F6)」「超重質油開発技術の進歩(BP4)」「増進回収:新たな挑戦と技術(F8)」「上流部門に適用される非在来型先端技術(F11)」ブロック3:井戸元から顧客まで;精製・輸送・燃料技術および石油化学における革新エネルギー効率、デジタル化時代の製油所最適化、残油転換プロセス、製油所におけるディーゼル/ガソリンのリバランス等について討議主なテーマ:「石油化学工業の原材料変更と技術(F14))「重質油と残渣(さ)のアップグレーディング(F15)」「エネルギー効率と排ガス量削減(RT7)」ブロック4:補完的なエネルギー源補完エネルギー(風力・太陽光・地熱等)について討議主なテーマ:「エネルギー源としての水素の可能性(BP7)」「風力と太陽エネルギー:短期と長期の見通し(F17)」「クリーンコール技術(F18)」「地熱と水力発電の選択(F19)」「変化する国営石油会社の役割(RT13)」ブロック5:持続可能性への貢献;環境・社会・経済・教育と統治持続可能性報告、排出権取引市場、石油ガス産業の健康と安全管理、二酸化炭素(CO2)固定化と排出権取引、次世代労働力の確保等について討議主なテーマ:「操業への社会的な認可:HSEとコミュニティーの関わり(F21)」「CCS(二酸化炭素の捕捉および貯蔵)の最新状況(BP10)」「エネルギープロジェクト投融資に求められる社会的責任(F23)」「気候変動の地政学と規制(RT14)」※ 主なテーマの( )内は、それぞれF:FORUM、RT:ROUND TABLE、BP:BEST PRACTICE KEYNOTEを示す。出所:各種資料より筆者作成722012.3 Vol.46 No.2エッセー8:0008:3009:0009:3010:0010:3011:0011:3012:0012:3013:0013:3014:0014:3015:0015:3016:0016:3017:0017:3018:0018:30F1F6F12F16F20SPF3F8F14SPF22SPF5F10SPSPF24SPRT3RT6SPRT13RT14BreakBreakBreakF2F7F13F17F21SPF4F9F15F18F23SPSPF11SPF19RT12SPBreakDewhurst LectureClosing CeremonyBlock 5Block 4Block 3Block 2Block 1Special SessionsBlock 5Block 4Block 3Block 2Block 1Special SessionsBlock 5Block 4Block 3Block 2Block 1Special SessionsBlock 5Block 4Block 3Block 2Block 1SundayDecember 4, 2011MondayDecember 5, 2011TuesdayDecember 6, 2011WednesdayDecember 7, 2011ThursdayDecember 8, 2011Plenary 2Plenary 3BreakMSMSBreakMSMSPlenary 5Plenary 6 BreakMSMSBreakPlenary 8Plenary 9MSMSMSSPBreakMSBreakMSMSMSMSMSSPBPK2BPK4BPK6BPK8BPK10RT1RT4RT7RT9RT11RT2RT5RT8RT10BPK11Plenary 10MSMSMSMSMSBreakDigital Poster PlazaPlenary 7MSMSMSMSBreakMSDigital Poster PlazaPlenary 4MSMSMSMSBreakMSDigital Poster PlazaOpeningExhibitionPlenary 1BreakBPK1BPK3BPK5BPK7BPK9WPC Excellence AwardsMSMSMSMSBreakMSDigital Poster PlazaChair Brie?ngWPC Council MeetingWomen in Industry BreakfastInaugural Session08:0008:3009:0009:3010:0010:3011:0011:3012:0012:3013:0013:3014:0014:3015:0015:3016:0016:3017:0017:3018:0018:30Opening CeremonyArabian NightYouth EveningLunch is Served daily from 11:45-14:15 Exhibition TimingSP Special SessionMS Ministerial SessionBPK Best Practice KeynoteRT Round TableF Forum出所:筆者撮影出所:第20回世界石油会議ホームページより写4 第20回世界石油会議 開会式図3 第20回世界石油会議:セッションスケジュール要であり、JOGMECの研究・開発部門であるTRC(Technology Research & Development Center)が主体となって、ブースの運営を行った。 来場されたお客さま方に日本の雰囲気を感じていただくため、ブースの装飾は意匠を凝らしたものであった。希望される方にお茶(抹茶)と和菓子を振る舞うなど、来場者からは大変好評であった。展示については、油ガスの生産時に発生する随伴水の処理に関するプレゼンテーションを中心に、JAPAN-GTLの紹介、JOGMECの事業領域等を幅広く紹介し、数多くの来訪者の関心を惹きつけていた。ひ(6)トピックス 筆者が参加したセッションにおいて議論されたトピックスを、いくつか紹介する。① 将来への責任ある、持続可能な投資(12/6:Plenary Session 4) Standard Chartered PLC(英国)とChevron(米国)の経営幹部が、石油・天然ガス産業における持続可能な投資について発表し、その後さらに議論を深めていた。 現在、エネルギー産業は、急増す73石油・天然ガスレビューるエネルギー需要やプロジェクトによって、人材不足に直面している。また、環境問題や技術開発に対するチャレンジを将来まで続ける必要がある。石油・ガス産業のゴールは持続可能な開発であり、今後増加していくエネルギー需要に対応するために、資源の開発・技術の革新・人材育成を目的とした投資が必要である。一方で、銀行には投資をするだけでなく、社会的責任が求められる、と両氏は発表した。 最終的に、前者は投資が持続可能性に貢献、後者はイノベーションが持続可能性に貢献する、と結論づけた。② Strandedガス田についてのソリューション(12/6:Forum 4) Eni(イタリアの大手石油・ガス会社)、Linde(ドイツのLNG液化設備等超低温設備企業)、Royal Dutch Shell(オランダ)、Indian Oil Corporation(インド)、三井造船の担当者より、Strandedガス田の開発に対するソリューションについて、発表がなされた。 Eniは、研究・開発中のGTL(Gas-to-Liquid)技術について、実用化に向けた歴史およびスケジュールを示し、GTL技術が有効であるとした。Lindeは、低温技術の優位性を強調し、小・中規模LNGの導入が有効である、とした。Royal Dutch Shellは、2011年5月にPrelude LNGの開発に世界初のLNG-FPSO(Floating Production & Storage Offloading)システムを導入することで最終投資決定(FID)を実施しており、開発のソリューションとしてLNG-FPSOを推奨した。 Indian Oilは、商業的なソリューションとして、LNGよりも早く立ち上げることができ、潜在的なリスクも低いことから、CNG(圧縮天然ガス)の海上輸送が優位である、とした。三井造船は、NGH(天然ガスハイドレート)技術の開発状況を説明し、NGHによる小~中規模のガス田の商業化について説明を行った。 まださまざまな解決策が検討されている段階であり、最適な解決策について結論は出してはいないが、各社それぞれの得意分野で解決策をアピールするという、非常に興味深いプレゼンテーションであった。③ 国境をまたぐパイプライン:利害関係者の調整をいかに図るか(12/7:Round Table 1) Gazprombank(ロシア)、Det Norske 第20回世界石油会議ドーハ大会に参加してo所:筆者撮影Veritas(ノルウェー)、South Asia Gas Enterprise PVT(インド)、GAIL(同)の担当者により、プレゼンテーションが行われた。 カタールのDolphine Gas Project(カタール産天然ガスをパイプラインで近隣国に輸出するプロジェクト)、ノルウェー洋上のガス田からの天然ガス輸出パイプライン、ロシアからヨーロッパ向けの天然ガスパイプラインについて、紹介された。 ロシアからヨーロッパへの天然ガスパイプラインについては、1968年以降、ヨーロッパ向けに、ロシア→CIS諸国→EUのバリューチェーンで輸出を行ってきた。しかし、近年では、ウクライナやベラルーシ等、中間国の通過をリスクとして捉えているようである。ロシアにとって、2009年以降のガス市場は、リスキーで不確実である、と見ており、需要面では欧州の経済危機、供給面ではLNG・シェールガスとの競争、国際的にはEUエネルギー指令第3パッケージによる規制、政治的にはウクライナ・ベラルーシ・CIS諸国とのガス供給価格の問題がある。この結果、国境を越えた供給がリスキーになっていると捉えているようである。写5JOGMEC展示ブースの様子④非在来型ガス資源(12/7:Forum 5) Halliburton(米国)のGlobal Director of Technologyの司会の下、AGH科学技術大学教授(ポーランド)、PetroChina(中国)、XTO Energy(アメリカ)、Hindustan Petroleum(インド)の担当者により、ポーランドや中国、インドにおけるシェールガスの開発状況や、非在来型資源で成功するための技術的、操業的効率性について、発表が行われた。 北米には多くのシェール鉱床があり、ガス生産量は30%、消費量は16%増加し、この影響で輸入量も減少している。効率的なシェールガス開発が課題であり、貯留層から最大限生産するためには、Sweet Spotの掘削、水平井の掘削、水圧破砕が重要である(Halliburton)。 非在来型ガスの開発要件は、堆積盆の状態が良好であること、消費者市場が近くにあること、であるが、国や住民は、環境への影響を気にするようになってきている(同)。⑤ 変化する国営石油会社の役割(12/8:Round Table 6)Halliburton(米国)、TPAO(トルコ)の経営幹部により議論が展開された。 TPAOは、ある時はNOC(National Oil Company)、ある時はIOC(International Oil Company)として活動しており、業態がハイブリッド化している、と考えており、両者を兼ね備えることから、自らを“INOC(アイノック)”と呼んでいた。NOCは国により設立され、政府のコントロール下にあり、オペレーションは国内向けであったが、近年は海外でも直接的にオペレーションを行うようになってきている。TPAOは、1993年以降、カザフスタン、リビア、イラクでオペレーションを行ってきている。他国のIOCと多くのJoint Ventureも組んでおり、伝統的な役割から変化してきた、と説明。 伝統的なNOCの役割は、以前は政策立案者であり、規制者であったが、その役割が変わったというのだ。NOCのポートフォリオは豊かになっており、エネルギー企業となってきている。TPAOは「リッチなNOCは余裕があるが、それ以外のNOCはIOCになる必要がある」と強調していた。 Petrobras(ブラジル)、Ecopetrol(コロンビア)、Valeura Energy(カナダ)、(7)まとめ さまざまなセッションへの参加を通742012.3 Vol.46 No.2エッセーカ、驚いたことは、昨今の原油価格の高騰や、原発事故に伴う天然ガスへのシフトといった、特に産油・産ガス国や、上流事業に関わるエネルギー企業に優位な状況となっているにもかかわらず、各国のエネルギー関係閣僚や企業の経営陣が、現状に危機感を持って語っていたことである。欧州の経済危機等で需要が鈍化している一方には、引き続き目覚ましい発展を遂げている新興国のエネルギー需要の増加があり、これらを補完し、持続的な発展に結び付けていくために、探鉱・開発を続けていく必要があり、そのための投資や技術革新、さらには人材育成が欠かせないことを、多くの出席者が語っていたのが印象的であった。 一方で、エネルギー利用や発展を持続可能とするために生産者と消費者の協力が不可欠、という議論であれば、消費国側からの提言、というセッションがあってもよかったのではないか、と思う。持続可能なエネルギー利用については、供給側が技術的革新(大水深開発やシェールガス掘削技術ほか)等をもってフロンティアに挑み、エネルギーを供給し続けることと同様に、消費側は省エネ等の技術的革新やポリシーを持って効率化し最低限の消費量とするよう、努めていくことが必要である。 今回の会議のなかでは、風力や地熱発電等、再生可能エネルギーの議論はあったが、会議の目的から言えば、「エネルギーの効率的な利用」について具体的に語られてもよかったのではないか、と感じた。4.その他(1)世界石油会議の公式イベント 世界石油会議開催期間中、世界石油評議会主催で以下の公式イベントが行われた。①オープニングディナー(12/4:初日)②アラビアンナイト(12/6:3日目)③ユースパーティー(12/7:4日目)左から3人目がJOGMECの河野理事長、4人目がアル・サダ エネルギー工業大臣出所:JOGMEC撮影写7 河野理事長-アル・サダエネルギー工業大臣会談の様子出所:筆者撮影出所:筆者撮影写6 フォーラムの様子写8 オープニングディナーの様子75石油・天然ガスレビュー第20回世界石油会議ドーハ大会に参加して@これらのうち、オープニングディナーについて、紹介する。 オープニングディナーは、開催国が主催する公式行事であり、海岸沿いにあるドーハ・エキシビジョン・センターで行われた。今回の会場(QNCC)ができるまでの国際展示場であり、ディナー会場としては巨大であった。会場内には至る所に装飾が施され、また、数えきれないほどの円形テーブルが並べられており、多くの給仕の人々が足繁く行き交う、非常に華やかな雰囲気であった。 会場周辺の渋滞のため30分遅れで開始されたオープニングディナーは、主催国カタールのアル・サダ エネルギー工業大臣をはじめ閣僚や世界石油評議会幹部のスピーチの後、オーケストラによる演奏が突然開始された(招待状には“スペシャルイベント”と書かれていただけであった)。突然の演奏に驚いたが、中東で初めて編成された交響楽団とのことで、会場のスクリーンを駆使して演奏の様子を伝えていた。今会議でのお披露目を通じ、文化活動にも力を入れていることを内外に強く印象付けるものとなった。 ディナーのメニューは、3種の野菜のミルフィーユ、羊と鳥肉のソテー、ババロアと、素晴らしいものであった。ただし、お国柄上やむを得ないことではあるが、アルコールが供されなかったことが、酒好きの筆者にとっては個人的につらい出来事であった。(2)ドーハの伝統的な市場(スーク)を訪問 世界石油会議の期間中は、公式行事が多かったため、滞在ホテルと会場および会場周辺との往復になってしまったが、帰国する最終日の夜にドーハの伝統的な市場(スーク)を訪れることができた。 夜のスークは活気に満ちており、昼間の市内とは打って変わって、数多くの人々が繰り出していた。スークのなかは迷路のように入り組んでおり、生地等多くのものが売られていた。当然であるが皆、お酒を飲んでおらず、親子連れも多いため、大らかな雰囲気であった。また、カフェの店先では、水くつろぐ人々もおり、タバコを吸いながら寛さながらお祭りのような雰囲気であった。最終日にして、ようやく中東の街の一端を肌で感じることができ、とても感動したのを、今でも覚えている。会議場やホテルの雰囲気は、世界中のどこでも大きく変わることはないので、スークを通してドーハを感じることができたのは、とても幸せであった。出所:筆者撮影執筆者紹介写9 スーク(SOUQWAQIF)の様子大貫 憲二(おおぬき けんじ)早稲田大学大学院修了。東京ガス株式会社入社後、主にLNG受入基地の操業技術、操業管理等に従事。2011年7月より現職。趣味は温泉巡り。かつて1日に6湯巡ったこともあったが、温泉巡りが思った以上にハードであることを知り、現在は一つの温泉をゆっくり楽しむことにしている。762012.3 Vol.46 No.2エッセー
地域1 グローバル
国1
地域2 中東
国2 カタール
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル中東,カタール
2012/03/19 [ 2012年03月号 ] 大貫 憲二
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