ページ番号1006463 更新日 平成30年2月16日

南米の石油地図は塗り替わるか? ―アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3 国、フォークランド諸島沖合―

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レポートID 1006463
作成日 2012-03-19 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2012
Vol 46
No 2
ページ数
抽出データ JOGMEC石油調査部舩木 弥和子南米の石油地図は塗り替わるか?― アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合 ―はじめにつ設せ 南米の産油国というと、まず思い浮かぶのはベネズエラだろう。確かに、ベネズエラは埋蔵量については群を抜いており、生産量も南米では最大だ。しかし、近年、同国の原油生産量は減退しており、南米で生産される原油に占める同国原油の割合も低下している。この減少分を埋めているのが、カンポス盆地で探鉱・開発を進め生産量を大きく伸ばしたブラジルだ。ブラジルはサントス盆地を中心とするプレソルトでもLula(Tupi)等の大規模な油田発見に成功した。コロンビアも外資導入政策や治安の改善により重質油の開発が進み、いったん減少した生産量を回復させ、さらに増加させている。一方、エクふアドルは東部産油地域オリエントと太平洋岸のEsmeraldas港を結ぶパイプラインの敷により増加した生産量を、資源ナショナリズム政策で減少させてしまった。アルゼンチンも探鉱促進策が採られず、石油、ガスの価格が規制されていることから、生産量は減少の一途をたどっている。このように南米の石油地図はこの10年間で変化してきた。 そして、ここにきてその南米の石油地図が塗り替えられようとしている。 期待されていたブラジルでは、プレソルトについてはPetrobrasが全ての鉱区の権益の30%以上を保有し、オペレーターを務めることになった。また、プレソルト開発に関する法律の審議が進まず、プレソルトを対象とするライセンスラウンドの実施が先送りにされている。年に1度の割合で実施されていたプレソルト以外の鉱区のライセンスラウンドも、2006年の第8次ライセンスラウンドは裁判所の命令で中止、2007年の第9次ライセンスラウンドはプレソルトの鉱区を除いて実施、2008年の第10次ライセンスラウンドは沖合鉱区を除いて実施され、2009年以降は行われていない。 生産量増大の担い手であり、今後の期待も大きいブラジルではあるが、多くの企業が探鉱・開発に参入する機会を得られない状況下で、注目を集め始めているのが、アルゼンチンの非在来型資源、ベネズエラとブラジルに挟まれたギアナ3国、フォークランド諸島沖合だ。そこで、本稿では、これらの地域での探鉱・開発の経緯や状況、課題等について概説する。2000年(合計6,813千b/d)2005年(6,898千b/d)2010年(6,989千b/d)その他中南米諸国130アルゼンチン819その他中南米諸国142アルゼンチン725その他中南米諸国131アルゼンチン651ベネズエラ3,239ブラジル1,268ベネズエラ2,937ブラジル1,716ベネズエラ2,471ブラジル2,137コロンビア711エクアドル409トリニダード・トバゴ138ペルー100トリニダード・トバゴ171コロンビア554トリニダード・トバゴ146ペルー111エクアドル541ペルー157エクアドル495コロンビア801出所:BP Statistical Review of World Energy June 2011より作成図1南米諸国の原油生産量51石油・天然ガスレビューアナリシス. アルゼンチン・非在来型資源(1) YPF、Neuquen Basinでシェールオイル、シェールガス確認 2011年11月7日、YPFはNeuquen BasinのLoma de La Lata Norteエリア(Loma de La Lata鉱区とLoma Campana鉱区の428km2のエリア)の評価を行ったところ、シェールオイルとシェールガス合わせて可採埋蔵量が9.27億boeであることを確認したと発表した。YPFは同年5月にLoma de La Lata鉱区でシェールオイル1.5億bblを確認していたが、この発表はこれを大きく上方修正したものだ。9.27億boeの内訳は、API比重40~45度のシェールオイルが7.41億bbl、シェールガスが1.86億boeである。Loma de La Lata鉱区では、既に15坑から各200~600boe/d、合計で5,000boe/dを生産しているという。 YPFは2010年12月にも、Loma de La Lata鉱区でシェールガス井1坑とタイトガス井4坑を掘削し、シェールガスとタイトガス合わせて4.5Tcf(1,270億m3)を確認したと発表している。同社は、南米最大の鉱山会社、ブラジルのValeと協力してLoma de La Lata鉱区の非在来ガスを開発中で、Valeは1億5,000万ドルを投じ、2016年までにガス1.5MMm3/dを生産し、これをMendoza州のRio Colorado化学プロジェクトで利用するとしている。 YPFはまた、Loma Campana鉱区の北に位置するLa Amarga Chica鉱区(502 km2)でLa Amarga Chica-x3井を掘削しフラクチャリングを4回実施したところ、API比重35度の原油400boe/dの出油を見、La Amarga Chica鉱区もLoma de La Lataエリアと同規模のポテンシャルがあるとしている。 さらに、同社は、2011年6月にLoma de La Lata鉱区の北西に位置するBajada de Anelo鉱区で掘削したBajada de Anelo x-2号井でもAPI比重48度の原油250b/dの出油に成功した。 加えて、11月にはLoma de La Lata鉱区の東に位置するMata Mora鉱区でMMox1井を掘削し、出油、出ガスに成功した。 YPFはLoma de La Lata鉱区を含むNeuquen Basinの複数の鉱区に権益を保有しているが、これらの鉱区のうち、今回シェールオイル、シェールガスが確認されたVaca Muertaシェール層が狙える鉱区の総面積は1万02550100km出所:各種資料よりJOGMEC作成Los BastosLos Bastos図2Neuquen Basin主要鉱区図52Bajada de AneloBajada de AneloBandurriaBandurriaLa Amarga ChicaLa Amarga ChicaLoma CampanaLoma CampanaAgua AmargaAgua AmargaMata MoraMata MoraSierras BlancasSierras BlancasLindero AtravesadoLindero Atravesadooma de La Lataoma de La LataLLLoma de La LataLoma de La LataHuacaleraHuacaleraAguada PichanaAguada PichanaPampa de las YeguasⅠPampa de las YeguasⅠRincon La CenizaRincon La CenizaAguada de CastroAguada de CastroSierra ChataSierra ChataSan RoqueSan RoqueCerro PartidoCerro PartidoLa CaleraLa CaleraEl MangrulloEl MangrulloLos ToldosⅠLos ToldosⅠLoma del MolleLoma del MolleLa InvernadaLa InvernadaLos Toldos ⅢLos Toldos ⅢLos Toldos ⅣLos Toldos ⅣLos ToldosⅡLos ToldosⅡBajo del ChoiqueBajo del ChoiqueLa EscalonadaLa EscalonadaAguila MoraAguila MoraCerro de Las MinasCerro de Las MinasPampa de las YeguasⅡPampa de las YeguasⅡ南米大陸南米大陸アルゼンチンアルゼンチンNeuquen BasinNeuquen Basinガス田権益保有鉱区YPFTotalYPF & TotalExxonMobilApacheShellPan American Energy(BP)その他2012.3 Vol.46 No.2アナリシス開発が活発になった。その結果、1990年代には同国の石油、天然ガスは生産量、埋蔵量ともに急増した。また1997年にはチリに対し天然ガスの輸出を開始し、数年後には天然ガスの大輸出国になるとの楽観論もあった。 ところが、アルゼンチンでは2001年に経済状況が悪化し、政府は、天然ガス価格を低く抑えることで景気回復を図った。この政府の政策が功を奏し、2002年以降、同国の景気は回復したが、そのため天然ガスに対する需要はさらに増加することとなった。 しかし、上流部門へのインセンティブが設けられなかったため、石油・天然ガスの埋蔵量、生産量を増やすのに必要な投資が十分に行われず、そのため、石油生産量は1998年の89万bbl/dから2010年は65万bbl/dに千bbl/d1,000石油生産量石油消費量年201020082006200420022000199819961994199219909008007006005004003002001000出所:BP Statistical Review of World Energy June 2011より作成図5石油生産量、消費量10億m3ガス生産量ガス消費量50454035302520151005年20102008200620042002200019981996199419921990年201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990出所:BP Statistical Review of World Energy June 2011より作成出所:BP Statistical Review of World Energy June 2011より作成図4天然ガス確認埋蔵量図6天然ガス生産量、消費量53石油・天然ガスレビュー2,000km2となっている。YPFはこれらの鉱区でシェールオイル、シェールガスの探鉱・開発を行うには200億ドルが必要としている。そして、2011年中にLoma de La Lata Norteエリアで水平坑井の掘削を開始し、1坑あたり35万bblを生産し、2012年にはLoma de La Lata Norteエリアに4億ドルを投じ、リグ5基で36坑を掘削し、生産量を3年以内に1.2万boe/d、2015年までには5万boe/dに引き上げる計画である。 YPFは2011年5月時点では、Loma de La Lata鉱区のシェールオイル、シェールガスの開発が大規模なプロジェクトになるのであればファームアウトを検討するとしていたが、同年11月には探鉱、評価を優先し、パートナー探しを急がない、とした。(2)非在来型資源の探鉱に至った経緯 アルゼンチンでは1990年代に国営石油会社であったYPFが民営化され、民間企業にも鉱区が付与されるようになったことから、上流部門への投資が行われ、探鉱年201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990出所:BP Statistical Review of World Energy June 2011より作成図3石油確認埋蔵量10億bbl3.53.02.52.01.51.00.50兆m30.80.70.60.50.40.30.20.10南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-7%減少、天然ガス生産量も2007年以降減退することになった。埋蔵量についても石油確認埋蔵量は2006年以降ほぼ横ばいの状況だが、天然ガス確認埋蔵量は2000年の7,780億m3から2010年は3,464億m3と55%減少している。特に、2004年以降はガス不足が顕著となり、年間を通して見れば生産量が消費量を上回っているものの、需要がピークとなる6~8月には天然ガスが不足し、チリへの天然ガス輸出も大幅に削減されることになった。 ガス不足に対処するため、アルゼンチンは2004年に既存のパイプラインを使ってボリビアからの天然ガス輸入を再開した。しかし、ボリビアでは2006年にモラレス政権が誕生し、資源ナショナリズム政策が採られ、探鉱・開発が停滞したことから、天然ガス生産量が伸びず、2010年のボリビアの対アルゼンチン向けの天然ガス輸出量は5MMm3/dとなっている。 十分なガス供給が見込めないにもかかわらず、2007年、アルゼンチンでは冬の寒さが厳しく、エネルギー需要が急増し、天然ガス不足の状況は一層悪化した。同国政府は、至急、天然ガスの供給量を増やす必要があると判断し、バイアブランカにLNG受け入れ態勢を整え、2008年6月からLNGの受け入れが開始された。国営石油会社Enarsaは、ブエノスアイレス近郊のEscobarにもLNG受入基地を建設、同基地は2011年6月に操業を開始した。アルゼンチンのLNG輸入は2008年が6カーゴ(32万t)、2009年が12カーゴ(70万t)、2010年が23カーゴ(130万t)で、2011年は50~55カーゴを受け入れた模様だ。このようにLNG輸入量は増加しているが、その価格は2008年が13~17ドル/MMBtu、2009年が6~6.8ドル/MMBtu、2010年末には8.5~10ドル/MMBtuとなった。 このようにガス輸入を行ってはいるものの、ボリビアからのパイプラインガスの輸入は量的に頼りにならず、LNGは価格が高いことから、政府は国内での探鉱・開発を促進する必要を感じ、2008年に、新規発見や非在来型ガスについては政府と交渉の上、価格を4.2~5ドル/MMBtuに設定することができるとするGas Plus programを導入した。アルゼンチン政府は、それ以前に欧 州欧 州ヨーロッパその他19ノルウェー83スウェーデン41ポーランド187リトアニア4ウクライナ42トルコ15北 米南 米欧 州アフリカアジア・大洋州合 計Tcf1,9311,2256391,0421,7856,622カナダ388アメリカ合衆国862メキシコ681北 米北 米コロンビア19ボリビア48チリ64南 米南 米デンマーク23ドイツ8イギリス20オランダ17フランス180ベネズエラ11ブラジル226アフリカアフリカパキスタン51インド63中国1,275アジア・大洋州アジア・大洋州オーストラリア396西サハラ7モロッコ11アルジェリア231チュニジア18パラグアイ62ウルグアイ21アルゼンチン774リビア290南アフリカ485542008年世界の天然ガス消費量 : 106Tcf (日本:3.3Tcf)2009年世界の(在来型)確認残存埋蔵量 : 6,400Tcf資源量評価されたシェールガス盆地国別の技術的回収可能量(Tcf=兆立方フィート)名#国出所:各種資料よりJOGMEC作成図7世界のシェールガス資源量評価2012.3 Vol.46 No.2アナリシス焉A探鉱・開発を促進するために補助金を設定したり、ガス価格を引き上げたりするなどの措置を取ってきたが、あまり効果は出ていなかった。しかし、このGas Plus program導入により、2009年からはExxonMobil、Repsol YPF、Petrobras、Total、Pluspetrol等がシェールガス、タイトガスの探鉱開始へ向けて動き出した。 一方、米国EIAは2011年4月5日に「世界のシェールガス資源量評価」を発表した。EIAがAdvanced Resources International, Inc.に委託し、世界32カ国の48のシェールガス賦存堆積盆地の70層準の根源岩(シェール)の技術的回収可能資源量を評価したものだ。これによると、アルゼンチンのシェールガス資源量は2,732Tcf、技術的回収可能量は774Tcfで、中国(技術的回収可能量1,275Tcf)、米国(同862Tcf)に次いで世界第3位である。 2010年末には、Neuquen州政府が同州の非在来型ガスの埋蔵量は21Tcfであると発表。連邦政府もNeuquen Basinのシェールガスとタイトガスの埋蔵量は257Tcfであると発表していたが、EIAの発表は、これらの数字を大きく上回るもので、メジャーをはじめ多くの石油会社の関心がさらに高まることとなった。 堆積盆地ごとに見ると、La Pampa、Mendoza、Neuquen州にまたがるNeuquen Basinの技術的回収可能量は408Tcfで、アルゼンチンのシェールガス資源量の過半を占めているという(図8)。 そのNeuquen Basinには、Vaca MuertaとLos Mollesという二つのシェール層があるが、これまでNeuquen 南米リマリマペルーペルーボリビアボリビアラパスラパスチリチリパラグアイパラグアイブラジルブラジルブラジリアブラジリアNeuquen Basin1,165 Tcf408 TcfサンチャゴサンチャゴアルゼンチンアルゼンチンウルグアイウルグアイブエノスアイレスブエノスアイレスモンテビデオモンテビデオParana-Chaco Basin654 Tcf164 TcfGolfo San Jorge Basin430 Tcf95 Tcf積載盆地資源量技術的回収可能量Austral-Magallanes Basin483 Tcf108 Tcf出所:EIAよりJOGMEC作成図8シェールガス資源量55石油・天然ガスレビューBasinで確認されたシェールオイル、シェールガスは全てVaca Muertaシェール由来のものである。Vaca Muertaシェールの地質状況は北米のHorn River、Barnett、Haynesville、Bakkenシェールに近いが、層厚はEagle Ford(70m)やBakken(30m)より厚い。また、地層圧力は高く、区画あたりの埋蔵規模も大きく、北米のシェール層よりも良好な条件となる可能性もあるとされている(表1)。表1Neuquen Basinのシェール層シェール層Vaca MuertaLos Molles深度層厚面積シェールガス技術的回収可能量出所:EIAより作成1,676~3,048m1,981~4,572m200m25,000km2240Tcf150~200m18,000km2167Tcf(3)YPF以外の企業の活動状況 このような状況を背景に、アルゼンチンではNeuquen Basinを中心にYPFに加えてExxonMobil、Apache、Total等が参入し、シェールオイル、シェールガスの探鉱が進展しつつある。 ExxonMobilは2010年12月に、Repsol YPFとLoma del Molle鉱区およびPampa de las Yeguas I鉱区に参入することで合意。2011年8月には、Americas PetrogasよりLos ToldosⅠ~Ⅳ鉱区の権益の45%を7,630万ドルで取得することで合意した。Los ToldosⅠ~Ⅳ鉱区のオペレーターAmericas Petrogasは、Los ToldosⅠ、Ⅱ鉱区での探鉱を優先するとし、2011年第4四半期にはLos ToldosⅡ鉱区で最初の坑井の掘削を開始した。Los ToldosⅠ~Ⅳ鉱区の権益保有比率はAmericas Petrogasが45%、ExxonMobilが45%、Neuquen州立石油会社Gas y Petroleo (G&P)が10%となっている。また、ExxonMobilは同年9月に、1億2,000万ドルを投じてNeuquen BasinのBajo del Choique鉱区とCampo Boleadoras鉱区の探鉱を行う計画で、6カ月以内に作業を開始する予定であるとした。 2009年12月にXTO Energyを410億ドルで取得したExxonMobilは、カナダやヨーロッパの非在来型資産を買収し、南米でも非在来型ガスの探鉱・開発を進めようとしており、アルゼンチンでは今後も積極的に鉱区権益を取得するのではないかと見られている。南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-@Apacheはアルゼンチンの非在来型ガスのポテンシャルに注目し、過去数年をかけて、Neuquen BasinやGolfo San Jorge Basin等で非在来型ガスを狙える鉱区を取得してきた。Apacheは既にこれらの鉱区でタイトガスを生産し、その価格をGas Plus programに基づいて設定し、アルゼンチン最大の電力会社Pampa Energiaとアルゼンチン政府管轄の電力事業機関CAMMESAに販売している。同社は、Neuquen BasinのHuacalera鉱区で、水平坑井、多段階フラクチャリングの技術を適用した中南米で最初のシェールガスの坑井Hua.x-1号井を掘削した。 TotalもNeuquen BasinのAguada Pichana鉱区(権益保有比率27.3%)でタイトガスのパイロット生産を行い、生産されたガスをCAMMESAに販売している。Totalはまた、San Roque鉱区(同24.7%)でも非在来型ガスのスタディーを実施する計画だ。これらの鉱区に加えて、Totalは、2010年初めにLa Escalonada鉱区、Rincon La Ceniza鉱区の権益の85%を取得した。さらに、2010年11月に行われたNeuquen州の第3次ライセンスラウンドで4鉱区の権益を取得し、シェールガスの探鉱・開発を目指すと発表した。取得した鉱区はAguada de Castro鉱区(権益の42.5%)、Pampa las Yeguas II鉱区(同42.5%)、Cerro de Las Minas鉱区(同40%)、Cerro Partido鉱区(同45%)で、最初の2鉱区についてはTotalが、後の2鉱区についてはYPFがオペレーターを務める。Totalは2011年にはAguada Pichana鉱区とSan Roque鉱区でシェールガス井を掘削した。同社はこれまでの探鉱の結果から、シェールオイル、シェールガスについてアルゼンチンは最も有望な国であるとしている。 また、Petrobras ArgentinaはNeuquen BasinのEl Mangrullo鉱区で生産されるガスの価格を、Gas Plus programに基づいて設定することで政府の承認を得た。同ガス田で生産されるガスはPampa Energiaが購入し、Neuquen州Loma de La Lata発電所で利用する。Pampa Energiaはガスの供給を受ける代わりに坑井掘削費用1,600万ドルを負担している。 2011年12月には、Shellがアルゼンチン企業MedanitoよりNeuquen BasinのAguila MoraおよびSierras Blancas鉱区の権益の65%を取得し、オペレーターとなった。今後5年間に少なくとも2億ドルを投じ、シェールオイル、シェールガスの探鉱・開発にあたるとしている。 このほかにも、チリ国営石油会社Enapの子会社Sipetrolや英国のGeoPark等がアルゼンチンで非在来型ガスの探鉱・開発に関与し、OccidentalやOil India等が非在来型資源の権益取得に興味を示している。 さらに、アルゼンチンの石油会社TecpetrolがNeuquen州Los Bastos 鉱区Puesto Mirandaプロジェクトで生産したガスを、Entre LomasがRio Negro州Agua Amarga 鉱区Charco del Palenque プロジェクトで生産したガスを、それぞれGas Plus programに基づいて価格設定することでエネルギー省から承認を得ている。 石油会社だけではなく、サービス会社もアルゼンチンの非在来型ガスに注目している。Baker Hughesは、同国でのシェールガスの探鉱・開発の活発化に期待するとともに、同国の政情が南米のなかでは安定している点に着目して、2010年にサービス会社BJ Servicesを買収、同国でのプレゼンスを拡大している。Halliburtonもアルゼンチンでのシェールガス探鉱・開発を成長分野として注目しているという。 なお、BPは2010年11月28日、Pan American Energyの持ち株60%を、あとの株式(40%)を保有するBridas Corporation(CNOOCとBulgheroni familyが折半で所有するJV)に70億6,000万ドルで売却することで合意していたが、2011年11月6日、交渉が不調に終わり、売却は白紙に戻されることが明らかになった。独占禁止法に抵触したこと等が原因とされているが、Pan American EnergyはLoma de La Lata鉱区に隣接するBandurria鉱区、Lindero Atravesado鉱区等に権益を保有しており、YPFがLoma de La Lata鉱区で相次いでシェールオイル、シェールガスを確認したことも一因ではないかと見る向きもある。 このように探鉱・開発が活発に進められている結果、Neuquen Basinのシェールガスとタイトガスの生産量は、2009年の3MMm3/dから2010年には6.6MMm3/dに増加、2011年は11の非在来ガスプロジェクトから8.5MMm3/dを生産する見込みである。(4)非在来型資源探鉱・開発の課題 着実に進展し始めたように見えるアルゼンチンの非在来型資源の探鉱・開発であるが、いくつかの課題を抱えている。 非在来型ガスの探鉱・開発を進めている企業にとって最も大きな障害となっているのが、ガス価格やガスの販売先に関する問題だ。同国では連邦政府がガス価格をコントロールしており、民生用、産業用、発電用の平均で2ドル/MMBtu程度と非常に低い価格が設定されている。その後、2008年にGas Plus programが導入され、新規発見や非在来型ガスについては政府と交渉の上、価格を562012.3 Vol.46 No.2アナリシス.2~5ドル/MMBtuに設定できるようになった。ところが、これらのガスを生産する企業はGas Plus programの適用を受けるため、油田ごとあるいは坑井ごとに政府と交渉を行い、承認を得なければならない。また、政府から承認が得られても、その価格で購入してくれる売却先を探さなくてはならない。現時点では非在来型ガスの生産量が少ないこともあって、非在来型ガスを生産する企業の多くが政府系電力事業機関CAMMESAと短期の契約を結び、ガスを販売している。今後、非在来型ガスの生産量が増加することになれば、企業にとっては売却先を確保することが大きな課題となろう。 なお、石油についてもOil Plus programが導入され、ガスと同様に新規発見や非在来型については政府が設定した価格よりも高い価格で販売することが認められていた。ところが、2012年2月、政府は大企業に対するOil Plus programの適用を中止すると発表し、今後の探鉱・開発への影響が懸念される。 資機材や技術に関しても懸念する向きがある。Neuquen Basinはもともとアルゼンチンの天然ガス生産の中心地域であることから、多くのサービス会社が活動の拠点を置いており、インフラも整備されている。石油についてはNeuquen BasinとバイアブランカのDr Ricardo Elicabo製油所やMendoza州のLujan de Cuyo製油所等の間に合計で送油能力42万bbl/dのパイプラインが敷設されている。ガスについてもNeuquen Basinとブエノスアイレスを結ぶパイプラインGasoducto NeubaⅠとⅡが存在する。このような状況から、同Basinで発見された非在来型の石油やガスは早期に低コストでの開発が可能であると見る向きもある。しかし、短期的、中期的には水平坑井を掘削できるリグを確保したり、フラクチャリングの技術を適用できる環境を整えたりすることが難しくなると考えられ、開発が遅れる可能性があるとの指摘もある。なお、Neuquen Basinのシェール層は層厚が厚いことから、水平坑井よりも垂直井のほうが適しているとの見方があり、現在各社が水平坑井と垂直井を掘削し比較検討を行っている段階だ。水平坑井を掘削する必要がないということになれば、リグに関する懸念は小さくなる。 また、アルゼンチンでは労働組合の力が強い。一方、インフレ率は2009年が7.7%、2010年が10.92%、2011年11%(予測値)と上昇傾向にあり、これを背景に賃金の引き上げを求めるストライキが頻発している。上流で操業を行う企業はこのような同国事情を理解している企業が多いが、労働問題が原因でコスト上昇を招く恐れもある。 2006年には、陸上および12海里以内の沖合に存在する炭化水素資源の探鉱、生産、輸送に関する権限が連邦政府から州政府に移管された。その結果、ライセンスラウンドが頻繁に実施されるようになったり、州所有の石油会社が設立されたりするなど、探鉱・開発を促進するような展開が生じている。しかし、手続きが複雑になったり、上流部門に知識や経験のない州政府と直接に交渉を行う必要が出てくるなど、探鉱・開発を行う企業は、マイナスの影響も被るようになっている。 さらに、2011年10月23日の大統領選挙でCristina Fernandez de Kirchner大統領が再選されて、短期的にはエネルギー政策に大きな変化はないと見られていた矢先の10月26日、政府が石油、天然ガスおよび鉱物資源の輸出外貨を同国内でペソに両替することを義務付けた。外資企業にとっては外貨での配当に足かせがついたわけで、非常に厳しい。さらに今後もこのような突然の政策変更があるのではないかと懸念する見方もある。 アルゼンチンにも、米国と同じようなシェールオイル、シェールガスのブームが期待されるとの観測もあるが、これらの課題をどのように解決していくかが、今後の同国の非在来型資源の生産量増加の鍵を握ると考えられる。2. ギアナ3国(1)Tullow Oil、仏領ギアナで原油を確認 仏領ギアナの沖合に位置するGuyane Maritime鉱区の水深2,048mの海域で、2011年、Tullow OilがENSCO 8503セミサブマーシブル・リグを用いてGM-ES-1(Zaedyus)井を掘削したところ、原油を確認した。ネットペイは72mとされている。 Tullow Oilは、掘削前にこのZaedyus井の埋蔵量(P 10)を7億bblとしていたが、掘削後もこの数字について変更のコメントがなかったことから、その程度の発見ではないかとの見方が強まっている。また、同鉱区内には、57石油・天然ガスレビュー南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-aedyusと同規模、あるいは、それより大規模な六つの構造があると見られている。 Tullow Oilは、同社がJubilee油田を発見した西アフリカと、大西洋を隔てた対岸にあたる仏領ギアナ、スリナム、ガイアナは対となる構造であるとしていたが、今回の発見により、同社のこの考え方“Atlantic Twins戦略”が正しいことが示されたとの見方が強まっている。 Guyane Maritime鉱区は、仏領ギアナ唯一の鉱区で、数回にわたり鉱区返還を行った後でも面積が2万6,340km2と広大な鉱区だ。2001年6月にHardman Resources、Northern Petroleum、Wessex Explorationに同鉱区の権益が付与された。2007年1月には、Tullow OilがHardman Resourcesを買収し、同鉱区に参入した。その後、2009年にShellとTotalが相次いでファームインし、現在は、オペレーターのTullow Oilが権益の27.5%、Shellが45%、Totalが25%、Northpet (Northern Petroleumと Wessex Explorationが50%ずつ保有)が2.5%を保有している。 同鉱区内では、2002~2003年に2D地震探鉱7,700km、2009~2010年に3D地震探鉱2,500 km2と2D地震探鉱180kmが実施されており、Tullow Oilは、2012年第3四半期からBradypus井を掘削する計画としている。 Zaedyus井の開発は、水深が深く、その上、周囲に探鉱中の鉱区や開発中の油田がなくインフラが整備されていないため、時間と費用を要すると考えられる。しかし、オペレーターのTullow OilにはJubilee油田(水深約1,600m)の生産を発見後わずか3年半で開始した経験がある上、パートナーのShellとTotalから技術面等で支援を受けられるというメリットもある。また、Tullow Oilが同鉱区についてフランスの経済・金融・産業省と締結しているコンセッション契約はその条件が良好である。加えて、フランスでは、1994年以降、沖合から生産される原油、ガスについてはロイヤルティーが免除されることになっている。また、仏領ギアナについては、通常フランスでは33.3%とされる法人税の税率が23%とされている。したがって、同鉱区については、政府取り分が23%と通常のフランスの契約よりもさらに経済条件はよくなり、開発を促進する要因となると考えられる。 仏領ギアナでは、これまで1975年にElfがSinnamary-1号井(水深48m、掘削深度2,104 m)、1978年にEssoがFP-1号井(水深823m、掘削深度3,941 m)を掘削したが、いずれもドライで、今回のZaedyus井は仏領ギアナで3坑目の掘削で初の発見ということになる。トリニダード・トバゴゴバード・トトリニダガイアナBlock48Block48(Murphy Oil)(Murphy Oil)Block 47Block 47(Tullow Oil)(Tullow Oil)大西洋PomeroonPomeroon(CGX RES)(CGX RES)Stabroek Stabroek (ExxonMobil)(ExxonMobil)Block 35Block 35BlockBlock3232BlockBlock4646BlockBlock4141BlockBlock4949スリナム000m000m33,,22,,000m000m400m400m200m200mGuyane MaritimeGuyane Maritime(Tullow Oil)(Tullow Oil)Zaedyusルジラブ仏領ギアナFoz do Amazonas Foz do Amazonas BasinBasinBlockBlock4343Block 44Block 44Block3Block3(Staatsolie)(Staatsolie)Block2Block2Block1Block1Block4Block4BlockBlock1313Block5Block5BlockBlock1414Block6Block6BlockBlock1515Block7Block7BlockBlock3636CommewijneCommewijneBerbiceBerbice(ON Energy)(ON Energy)NickerieNickerieCoronieCoronieWeg Naar ZeeWeg Naar ZeeCalcuttaCalcuttaUitkijkUitkijkTambaredjoTambaredjoスリナムCorentyne AnnexCorentyne Annex(CGX RES)(CGX RES)Georgetown Georgetown (REPSOL YPF)(REPSOL YPF)CorentyneCorentyne(CGX RES)(CGX RES)ベネズエラガイアナBlockBlock3434(Kosmos Energy)(Kosmos Energy)Block 42Block 42Guyana BasinGuyana BasinBlock 30Block 30Block 45Block 45(Kosmos Energy)(Kosmos Energy)Block 38Block 38BlockBlock3333(Repsol YPF)(Repsol YPF)Block 31(INPEX)Block 31(INPEX)Block 37Block 37(Murphy Oil)(Murphy Oil)Block 40Block 40Block 39Block 39仏領ギアナ出所:各種資料よりJOGMEC作成図9仏領ギアナ、スリナム、ガイアナ鉱区図582012.3 Vol.46 No.2アナリシスi2)ギアナ3国に関心が集まった経緯 近年、ExxonMobil、Shell、Totalなどメジャーを筆頭とする石油会社のギアナ3国~ガイアナ、スリナム、仏領ギアナ~に対する関心が高まっていた。例えば、ExxonMobilはガイアナを2011年の新たな探鉱地域とし、ShellとTotalは仏領ギアナを2011年の主要な探鉱計画地域としている。メジャーはGuyana Basinを新たな探鉱プレイと位置付けており、同Basinは南米では、ブラジルに次いでメジャーの関心が高い地域の一つとなっている。 しかし、スリナムの2010年末の原油確認埋蔵量は7,890万bblで世界第77位、同年の原油生産量は1万5,700bbl/dで世界第70位。ガイアナ、仏領ギアナの場合は、これまで商業量の発見はなされていない。 このように埋蔵量も生産量も少ないギアナ3国に、メジャーをはじめとする石油会社の注目が集まる理由として考えられるのは、USGS(米国地質調査所)が2000年にギアナ3国の沖合と一部陸上を含むGuyana Basinを世界で最も有望な堆積盆地の一つとしたことだ。USGSは、Guyana Basinの埋蔵量のポテンシャルを原油150億bbl、天然ガス40Tcfとしている。 そして、ギアナ3国と大西洋を挟んで対となる西アフリカ沿岸域では、2007年6月に英米新興企業のTullow OilやKosmos Energyがガーナ深海でJubilee油田を発見する等、良好な探鉱結果が得られていることも、企業が関心を寄せるようになった理由の一つと考えられる。 さらに、2000年以降スリナムとガイアナとの排他的経済水域(EEZ)をめぐる紛争が続いていたが、2007年9月に、国際海洋法裁判所(ITLOS)の決定により、両国の中間線を境界とし、紛争海域をガイアナ65対スリナム35の割合で分割することで決着した。また、スリナムと仏領ギアナとのEEZをめぐる紛争も2009年初に解決した。このように境界問題が解決したことも、ギアナ3国での探鉱が進み始めた一因となっていよう。(3)スリナムの探鉱・開発状況 仏領ギアナの隣国スリナムでも、1960~1980年代に掘削された坑井で商業規模の発見がなかったことから探鉱は長期にわたり停滞していた。政府と国営石油会社Staatsolieは探鉱を促進しようと2001年、2003年、2006年、2008年と4回にわたりライセンスラウンドを実施したものの、2006年のライセンスラウンド以外は応札がなかった。しかし、政府が石油会社と個別に交渉を行ったこともあり、スリナムに参入する企業が現れ、探鉱が行われるようになった。 沖合鉱区では地震探鉱が実施され、2008年にはRepsol YPFがBlock 30でWest Tapir井を、2010年と2011年にはMurphy OilがBlock 37でCaracara-1井とAracari-1井を掘削したが、いずれも商業量の発見には至らなかった。2011年4月にはINPEXがBlock 31でAitkanti-1号井の掘削を開始、12月に深度5,483mまで掘削し、2012年に評価を行うとしている。また、Tullow Oilが2011年から2012年にかけてBlock 47で3D地震探鉱(2,000km2)を実施している。 陸上鉱区については、Staatsolieが単独で探鉱・開発を行うこととし、同社がNickerie、Calcutta、Tambaredjo、Weg naar Zee、Commewijne Blockの権益の100%を所有していた。しかし、Staatsolieは2005年12月に、外国企業とジョイントベンチャーを組む場合のパートナーとするために子会社Paradise Oilを設立し、2006年にParadise OilがHardman ResourcesとUitkijk、Coronie BlockのPS契約を締結した。リグ不足等から陸上での掘削は遅れがちとされているが、2008~2010年には全ての陸上鉱区で地震探鉱が行われ、Uitkijk、Weg naar Zee、Commewijne Blockで2007年以降、掘削が行われ、出油にも成功している。2011年第3四半期以降、Paradise Oil/Tullow OilがCoronie Blockで5坑、Uitkijk Blockで2坑を掘削する計画だ。 スリナムでの原油生産は現在、全てStaatsolieにより行われている。1968年に発見され、1982年に生産を開始した陸上Tambaredjo鉱区Tambaredjo油田が長い間、同国唯一の油田で、1999年以降、生産量は1万2,000bbl/d前後で推移していた。2006年3月に同油田に隣接するCalcutta鉱区Calcutta油田、2010年7月にTambaredjo 鉱区Tambaredjo Northwest油田の生産が開始され、これにより、同国の原油生産量は1万6,000bbl/d程度に増加し、これを維持している。 そして、Tullow Oilが仏領ギアナのGuyane Maritime鉱区Zaedyus井で原油を確認したことを受けて、スリナムでの探鉱・開発に興味を示す企業が増えてきた。2011年11月にはStatoilがTullow OilよりBlock47の権益の30%を取得した。さらに、12月には、Kosmos EnergyがスリナムのBlock 42および45、Murphy OilがBlock 48のPS契約をStaatsolieと締結した。Murphy Oilは既にBlock 37の権益を保有し、スリナムで探鉱中であるが、Kosmos Energyが西アフリカ以外で権益を取得するのは初めてのことだ。Kosmos Energyは両鉱区の権益の100%を保有しオペレーターを務め、3D地震探鉱を実施後、2014年初めに最初の掘削を行う計画である。59石油・天然ガスレビュー南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-\2スリナムの石油・ガス産業の状況時期状況1960~1980年代Shell、Gulf Oil、Elf等が沖合鉱区の権益を取得して22坑を掘削。18坑で出油に成功したが、商業規模の発見はなし。1990年2001年石油法制定。国営石油会社StaatsolieとPS契約を締結することが定められたが、1999年にBurlington、Shell、TotalFina、KNOCから成るSuriname Deep Water Consortium (SDWC)が現在のBlock 30の、2000年3月にKoch ExplorationがWayombo(現在のUitkijk)BlockのPS契約をそれぞれ締結したのみで、探鉱は停滞。陸上Weg naar Zee Block、沖合Block 2、5、6、10、13、14の合計7鉱区を対象にライセンスラウンドを実施、応札なし。その結果、陸上鉱区はStaatsolieが保有することになり、Nickerie、Calcutta、Tambaredjo、Weg naar Zee、Commewijne鉱区の権益の100%を取得。2003年11月沖合13鉱区(Block2、3、4、5、6、7、10、13、14、15、16、24、25)を対象にライセンスラウンドを実施、応札なし。2004年4月Repsol YPF、Occidental、Noble EnergyとBlock 30のPS契約を締結。2004年11月Maersk、Block 31のPS契約を締結。2005年11月Occidental、Block 32のPS契約を締結。2006年1月ライセンスラウンドを実施、沖合Block 15、36、37を公開。Block 37にHardman Resources、Murphy Oil、Sino Petroが応札、2007年6月にMurphy OilがPS契約締結。2006年Hardman Resourcesと Uitkijk、Coronie blockのPS契約を締結。2008年Staatsolieは浅海7鉱区の権益取得、沖合での探鉱に参入。2008年11月Block 43と44(以前のBlock 9、10、31)を対象にライセンスラウンド実施。2009年6月、関心のある企業がないとしてライセンスラウンドをキャンセル。2010年9月Tullow Oil、Block 47のPS契約締結。2011年12月Kosmos EnergyがBlock 42と45の、Murphy OilがBlock 48のPS契約締結。出所:各種資料よりJOGMEC作成表3スリナム沖合主要鉱区の権益保有、探鉱状況鉱区Block 30Block 31Block 32Block 37Block 42Block 45Block 47権益保有状況探鉱状況2004年、Repsol YPF(40%、オペレーター)、Noble Energy(30%)、Occidental(30%)がPS契約締結。2007年にOccidentalが、2008年にNoble Energyがファームアウト。現在はRepsol YPF(62.5%)とPetro-Hunt(37.5%)が権益保有。2004年にMaersk Oil and GasがPS契約締結。2007年、INPEXが権益の35%を取得、2008年第1四半期には権益を100%に増やした。2005年、OccidentalがPS契約締結。2007年10月にNoble Energyに権益売却。Noble Energyは2009年にこれを放棄。2007年6月、Murphy OilがPS契約締結。2011年12月、Kosmos EnergyがPS契約締結。2011年12月、Kosmos EnergyがPS契約締結。2010年9月、Tullow OilがPS契約締結。2011年11月にStatoilが権益の30%を取得。2D、3D地震探鉱を実施。2008年第2四半期にWest Tapir井を掘削するも失敗。2D、3D地震探鉱を実施。2011年第2四半期からAitkanti構造掘削。2D地震探鉱実施。2008年11月~2009年第1四半期、3D地震探鉱実施。2010年Caracara-1井、2011年1月Aracari-1井を掘削、いずれもドライ。3D地震探鉱を実施後、2014年初めに最初の掘削を行う計画。2011~2012年、地震探鉱実施。環境影響評価を開始。Block 482011年12月、Murphy OilがPS契約締結。出所:各種資料よりJOGMEC作成602012.3 Vol.46 No.2アナリシス@なお、Staatsolieは2013年に入札を実施する計画で、そのためにCGG VeritasのVeritas Vantageを用いて2D地震探鉱(5,000km)を開始した。加えて、StaatsolieはBlock 43、44、46については随時参入を歓迎するとし、1982年から2004年に取得したこれらの鉱区の2D地震探鉱のデータを含むデータパッケージを準備している。(4)ガイアナの探鉱状況 ガイアナ沖合での探鉱は1950年代末に始まった。Conoco、Shell、Mobil、Total、BHP等により掘削が行われたが、これまでのところ商業量の発見はない。 カナダのCGX Energyは、現在ガイアナの6鉱区中5鉱区に権益を保有している。CGX Energyは2000年にCorentyne鉱区でHorseshoe West井を掘削したが、ドライだった。同社は本来、同鉱区内のスリナム寄りの海域で掘削を行う計画だったが、スリナムとの境界問題で掘削できず、代わりにHorseshoe West井を掘削したという経緯がある。EEZをめぐる紛争が解決したことから、同社はスリナム近海での掘削を再検討していたが、2012年2月、2000年にもともと掘削を予定していたEagle1号井の掘削を開始した。 ExxonMobilは、1999年にガイアナ最大のStabroek鉱区の権益を取得したが、スリナムとの境界問題が解決するまで探鉱は棚上げとしていた。ガイアナとスリナムとの間でEEZに関して決着がついたことから、2008~2009年にStabroek鉱区で地震探鉱を行った。2009年2月にはShellが同鉱区にファームインしている。 Repsol YPFは、Georgetown鉱区で2008~2009年に3D地震探鉱を実施、複数の構造を確認し、このうちJaguar構造の掘削を2012年2月に開始した。掘削には180日かかる見通しとされている。Georgetown鉱区では、1970年代にShellがAbary-1号井を掘削し、API比重37度の原油3,360bbl/dの出油に成功している。Abary-1号井は商業規模ではなかったが、非常に有望な構造とされ、今後の探鉱に期待がかかる。 なお、2011年10月に、カナダのPacific Rubiales Energyが、CGX Energyの株式の19%にあたる5,872万株を4,040万ドルで取得した。Pacific Rubiales EnergyはPDVSA出身の技術者によって設立された会社で、コロンビアのLlanos Basinで重質油を生産、近年急成長を遂げ、グアテマラやペルーでの探鉱にも参入しており、Tullow Oilの仏領ギアナでの発見を受けて、今回のガイアナ参入を決定したと見られている。(5)ブラジル赤道付近沿岸部への影響 仏領ギアナ、Guyane Maritime鉱区のZaedyus井はUSGSが有望な堆積盆地の一つとしたGuyana Basinではなく、仏領ギアナからブラジルに広がるFoz do Amazonas Basinで掘削された。ブラジルはこのFoz do Amazonas Basinを含む沖合87鉱区、陸上87鉱区の合計174鉱区を対象とする第11次ライセンスラウンドの実施を計画している。そして、ANP(ブラジル国家石油庁)もFoz do Amazonas Basinをはじめとする赤道付近の沿岸部は、軽質油の発見が期待される非常に有望な地域としている。 しかし、2011年中に実施予定だった第11次ライセ表4ガイアナ 主要鉱区の権益保有、探鉱状況鉱区PomeroonCorentyneStabroekGeorgetown権益保有状況探鉱状況2004年、CGX EnergyがCentury Guyana Limitedより権益100%取得。地震探鉱実施。1998年、CGX Energyが権益100%取得。2000年にHorseshoe West井を掘削したが失敗。2009年に3D地震探鉱を実施。2012年2月、Eagle1号井掘削。1999年、ExxonMobil が権益100%取得。2009年、Shellに権益の25%をファームアウト。地震探鉱実施。境界問題から探鉱はほとんど行われていない。1999年、Repsol (75%、オペレーター)とEni(25%)が権益取得。2002年、CGX EnergyがEniの権益を取得。Repsol YPFは2007年末にYPFに権益の30%、2008年11月にTullow Oilに権益の30%をファームアウト。3D地震探鉱実施。2012年2月よりJaguar構造の掘削を開始。Corentyne Annex2001年、CGX Energyが権益100%取得。Berbice2003年、CGX Energy (62.5%)とON Energy(37.5%)が権益取得。2005年に3坑の試掘、ドライ。出所:各種資料よりJOGMEC作成61石油・天然ガスレビュー南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-塔Xラウンドは、ANPによるライセンスラウンドの準備は終了しているにもかかわらず、ルセフ大統領が最終的な承認を行わないために、実施が遅れており、2012年に実施される見通しとなっている。 なお、2010年にブラジルで成立したプレソルト開発に関する法律のうちLaw 12351/10は、プレソルトの新規鉱区およびNational Council for Energy Policy(CNPE)が戦略的地域と定めた地域については、契約形態を現在のコンセッション契約からPS契約に変更し、これら全ての鉱区でPetrobrasが権益の最低30%を取得し、オペレーターになると定めている。Zaedyus井で原油が確認されたことで、第11次ライセンスラウンドの対象鉱区のうち、仏領ギアナに近い鉱区が戦略的地域とされ、契約形態がPS契約となり、Petrobrasがオペレーターとなるのではないかと懸念する向きもある。ベネズエラGuyanaGuyanaBasinBasinガイアナスリナム ギアナ(仏領)コロンビアFoz do Foz do Amazonas Amazonas BasinBasinPara-Maranhao BasinPara-Maranhao BasinBarreirinhas BasinBarreirinhas BasinCearaCearaBasinBasinPotiguarPotiguarBasinBasinSolimoes BasinSolimoes BasinブラジルParnaiba BasinParnaiba BasinSergipeSergipeAlagoasAlagoasBasinBasinReconcavoReconcavoBasinBasinEspirito Santo Espirito Santo BasinBasinCampos BasinCampos BasinプレソルトエリアプレソルトエリアSantos BasinSantos Basinリオデジャネイロリオデジャネイロサンパウロサンパウロペルーボリビアチリパラグアイ鉱 区盆 地プレソルトエリアアルゼンチン出所:各種資料よりJOGMEC作成図10ブラジル第11次ライセンスラウンド対象Basin3. フォークランド諸島沖合(1)探鉱状況 フォークランド諸島政府は1995年10月に最初のライセンスラウンドを実施した。対象とされたのはNorth Falkland Basinの12鉱区、South Falkland BasinとFalkland Plateau Basinの7鉱区の合計19鉱区であった。Shell、Amerada Hess、LASMO、IPC等がNorth Falkland Basinの鉱区を取得したが、South Falkland BasinとFalkland Plateau Basinの鉱区を取得した企業はなかった。Shell等は地震探鉱実施後、Borgny Dolphinリグにより1998年4月から掘削を開始、11月までに6坑を掘削した。このうち5坑で出油、出ガスがあったが、商業量の発見はなかった。1998年11月末にはBorgny Dolphinリグがフォークランド諸島沖合から移動し、その後同海域では掘削は行われていなかった。622012.3 Vol.46 No.2アナリシス\51998年にNorth Falkland Basinで掘削された坑井坑井14/09-1結果出油権益保有企業現在の鉱区現在の鉱区の権益保有比率Amerada Hess*(25%)、Fina(25%)、Murphy(25%)、帝国石油(20%)、Argos Evergreen(5%)PL001Argos Evergreen(100%)14/13-1ドライLASMO*(42.5%)、Desire Petroleum(25%)、Svenska(20%)、ROC(12.5%)--14-05-1A出ガスShell*(70%)、Agip(30%)PL032Rockhopper Exploration(100%)14/24-114/09-214/10-1出油出油出油IPC*(37.5%)、Sands Petroleum(50%)、Desire Petroleum(12.5%)PL005Desire Petroleum(100%)Amerada Hess*(25%)、Fina(25%)、Murphy(25%)、帝国石油(20%)、Argos Evergreen(5%)PL001Argos Evergreen(100%)Shell*(70%)、Agip(30%)PL032Rockhopper Exploration(100%)*:オペレーター出所:各種資料よりJOGMEC作成表6フォークランド諸島沖合で活動中の企業企業名鉱区保有/活動状況保有鉱区(権益)Desire PetroleumRockhopper Explorationフォークランド諸島沖合でのみ探鉱を行っている英国企業。1996年のライセンスラウンドで4鉱区の権益取得。1998年に14/3-1井を掘削。現在はNorth Falkland Basinの8鉱区に権益を保有。2004年には804km2の3D地震探鉱実施。2006年に掘削を計画したが、世界的に市場がタイトで適当なリグを確保できず。Diamondのセミサブマーシブル・リグOcean Guardianをチャーター、2010年2月より合計で6坑を掘削。PL003 (92.5%)、PL003W(57.5%)、PL004(92.5%)、PL004 area1(40%)、PL004 area2(75%)、PL005(100%)、PL006M(100%)、PL006S(50%)、PL007(100%)、PL034(20%)フォークランド諸島沖合でのみ探鉱を行っている英国企業。2004年に設立された。2004~2005年に4鉱区の権益を取得、さらにDesire Petroleumが保有する鉱区にファームイン。2005年以降2Dおよび3D地震探鉱実施。2010年はパートナーとしてDesireの掘削に参加したほか、オペレーターとして掘削を行い、Sea Lion油田を発見。PL003 (7.5%)、PL003W(7.5%)、PL004(7.5%)、PL004 area1(60%)、PL004 area2(25%)、PL023(100%)、PL024(100%)、PL032(100%)、PL033(100%)Denholm Oil and Gas 2010年11月にArcadia Petroleum より鉱区権益を取得。PL003W(35%)、PL006S(50%)、PL034(80%)Argos Evergreen1996年にPL001の権益5%を取得、2002年1月にパートナーの権益を全て引き受けオペレーターとなった。PL001(100%)2007年に1,275万ドルでFalkland Oil & GasよりFalkland Plateau Basin とSouth Falkland Basinの14鉱区の権益の51% を取得。その後PL030とその他の鉱区の一部を返還、BHP Billitonが13鉱区全てのオペレーターになった。2010年、PL015でToroa井を掘削後、South Falkland Basinの鉱区から撤退。2004年に設立された英国企業。Falkland Plateau Basin とSouth Falkland Basinの13鉱区に権益を保有。BHP Billiton が撤退したSouth Falkland Basinの鉱区ではオペレーター。BHP BillitonFalkland Oil & GasBorders & Southern Petroleum2004年設立された英国企業。同年にSouth Falkland Basinの鉱区を取得。2D、3D地震探鉱を実施。DennyおよびStebbing構造で掘削を計画。PL025(51%)、PL026(51%)、PL027(51%)、PL028(51%)、PL029(51%)、PL031(51%)PL010(100%)、PL011(100%)、PL012(100%)、PL013(100%)、PL014(100%)、PL015(100%)、PL016(100%)、PL025(49%)、PL026(49%)、PL027(49%)、PL028(49%)、PL029(49%)、PL031(49%)PL018、PL019、PL020、PL021、PL022出所:各種資料よりJOGMEC作成63石油・天然ガスレビュー南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-@商業量の発見がなかったことに加え、油価が低迷していたことから、その後数年のうちに多くの企業がフォークランド諸島沖合鉱区から撤退した。フォークランド諸島政府は2001年以降、外資導入を図ろうと、個別の申請に基づき条件と作業義務を話し合い、鉱区を付与するようになった。また、法人税が25%、ロイヤルティーが9%と経済条件も魅力的であることから関心が集まり、小規模な英国企業を中心に新たに参入する企業も現れた。これらの企業により、その後もフォークランド諸島沖合で探鉱が続けられてきた。2005年ごろからは掘削が計画されていたが、油価高騰によりリグ市場がタイトになり、リグを確保することができず、掘削が先送りにされていた。2009年10月、これらの企業が共同でDiamond Offshore DrillingとOcean Guardianリグのチャーター契約を締結、2010年2月にようやく掘削が再開されることになった。1998年に掘削された14/10-1号井ではAPI 27.1度の原油の出油を見ており、North Falkland Basinには良好な根源岩があることが確認され、2010年以降の掘削は、1998年に掘削された坑井のデータを基に表6に示した企業により計画、実施されている。 これらのうち成功を収めているのが、Rockhopper Exploration(英国)である。 Rockhopper Explorationは2010年4月にNorth Falkland BasinのPL032鉱区でSea Lion 14/10-2号井を掘削し、出油に成功した。同社はその後、2011年1月から50日間にわたりPL032鉱区およびPL033鉱区で3Dの地震探鉱を行うとともに、同鉱区で8坑、2011年10月にDesire Petroleum(英国)から権益の一部を取得したPL004鉱区area1で1坑を掘削、このSea Lion油田の評価を進めてきた。2011年9月には、同油田の可採埋蔵量は3.5億bblで、20億ドルを投じて開発を行い、南大西洋48°SNorth FalklandNorth Falkland Basin BasinSea LionSea LionPL025PL025PL026PL026PL027PL027LoligoLoligoスタンリースタンリーPL031PL031PL028PL028PL029PL029フォークランド諸島フォークランド諸島以前の SPECIAL以前の SPECIALCO-OPERATIONCO-OPERATIONAREAAREAPL010PL011PL011PL010PL012PL012Falkland PlateauFalkland PlateauBasinBasinToroa F61/5-1Toroa F61/5-1Malvinas BasinMalvinas BasinPL013PL013PL014PL014PL015PL015PL016PL016PL021PL021South Falkland BasinSouth Falkland BasinPL018PL019PL019PL018PL020PL020PL022PL02254°SCAA-40CAA-40CAA-46CAA-46アルゼンチンアルゼンチン64°W60°W56°W050100200km図11フォークランド諸島沖合鉱区図64PLPL032PL033PL03303214/05-1A14/05-1APL001PL00114/09-214/09-214/09-114/09-114/13-114/13-114/10-114/10-1Sea LionSea LionSea Lion 14/10-2Sea Lion 14/10-2PL004 area1PL004 area1PL004 area2PL004 area2Rachel 14/15-1ZRachel 14/15-1ZNinky 14/15-3Ninky 14/15-3PL004PL004Liz 14/19-1Liz 14/19-1PL005PL00514/24-114/24-1Dawn/Jacinta 25/5-1Dawn/Jacinta 25/5-1PL024NPL024NErnest 26/6-1Ernest 26/6-1SPPL006MPL006MPLL006006SPL034PL034PL003WPL003WPL003PL003PL023NPL023NPL007PL007PL024SPL024SPL023SPL023Sチリチリオペレーターフォークランド諸島Argos EvergreenBHP BillitonBorders & Southern PetroleumDesire PetroleumFalkland Oil & GasRockhopper ExplorationアルゼンチンYPF1998年に掘削された主な坑井2010?2011年に掘削された主な坑井2012年に掘削が予定される鉱区出所:各種資料よりJOGMEC作成2012.3 Vol.46 No.2アナリシス\明した。これらの鉱区についてはFalkland Oil and Gasが権益の100%を保有することになった。 2012年1月にはLeiv Eirikssonリグがフォークランド諸島沖合に到着した。同リグは水深3,048mまで掘削が可能で、Borders & Southern Petroleum(英国)とFalkland Oil and Gasが同リグを用いてこれまで水深が深いために掘削できなかったフォークランド諸島南東部で掘削を行う。Borders& Southern Petroleum はDarwinおよびStebbing構造で2坑、Falkland Oil and GasはLoligo構造等で2坑を掘削する計画だ。(2)探鉱・開発の課題 Sea Lion油田の発見により、フォークランド諸島沖合は、有望な海域であるとの見方が再確認されている。また、フォークランド諸島沖合で探鉱・開発を行う企業に提示される契約条件は法人税が25%、ロイヤルティーが9%と良好なものであり、フォークランド諸島政府も外資導入に積極的である。油田が発見されたことで、North Falkland Basinでの探鉱投資は今後も続くと考えられ、Falkland Plateau BasinとSouth Falkland Basinの探鉱も時間はかかる可能性があるが進展が見込まれている。しかし、フォークランド諸島沖合の探鉱・開発は以下のような問題を抱えている。パンン文ム基ギ① 領有権をめぐる英国とアルゼンチンの争い フォークランド諸島沖合で12年ぶりに掘削が実施されることになり、英国の新聞に同諸島沖合の埋蔵量は600億bblであるとする記事が掲載されたことなどから、2009年末以降、人口わずか3,000人、二つの大きな島と776の小さな島から成る同諸島の領有権を争う英国とアルゼンチンの間に緊張が高まっている。 2010年2月、アルゼンチン外務省は、フォークランド諸島沖合で掘削が予定されている海域はアルゼンチンが主張している領海内であるとの抗議文書をブエノスアイレスの英国大使館に送った。また、アルゼンチンのホ事務総長ルへ・タイアナ外務大臣(当時)が国連の潘と会談し、英国がこれ以上一方的な行動を取ることがないよう、国連の介入を要請した。これに対し、英国側もマーク・ライアル・グラント国連大使を通じ、フォークランド諸島の領有権は「国連憲章で自決権の原理として保障されている」と主張した。 さらに、アルゼンチン政府は、同国海域を通過してフォークランド諸島に向かう全ての船舶に対し、事前にアルゼンチン政府の許可を得ることを義務付けた。また、FPSOを用い2016年初めに生産を開始、2018年までに12万bbl/dのピーク生産を達成する計画であることを明らかにした。また、2011年末にはSea Lion油田の原始埋蔵量は8億4,400万~14億3,000万bblであるとした。同社は2012年には掘削は行わず、第1四半期に開発計画の詳細を決定し、FEEDを開始、2013年初にFEEDをフォークランド諸島政府に提出する予定という。Rockhopper Explorationは、開発に必要な資金を得るため、PL032鉱区にファームインするパートナーを探しており、Anadarko Petroleum等8社の企業と協議を行っている。なお、Sea Lion油田の水深は451m、原油のAPI比重は27.8度である。 Rockhopper Explorationは、Sea Lion 油田のほかに、2010年7月にPL024 鉱区でErnest26/6-1 号井を掘削深度2,240mまで掘削したが、ドライであった。 Rockhopper Explorationに次いで、活発に探鉱を行っているのはDesire Petroleum(英国)だ。 Desire Petroleumは2010年2月にPL003鉱区でLiz 14/19-1号井、9月にPL004鉱区でRachel 14/15-1号井、10月にRachel 14/15-1Z号井、12月にRachel North 14/15-2号井、2011年1月にPL006鉱区でDawn/Jacinta 25/5-1号井、4月にNinky 14/15-3井の合計6坑を掘削した。出油、出ガスに成功した坑井もあったが、いずれも商業規模の発見には至らなかった。Desire Petroleumは2011年9月時点で、地震探鉱のデータを解析中で少なくとも2012年第2四半期までは掘削を行う計画はないと発表している。 Falkland Oil and Gas(英国)も2010年5月に、South Falkland BasinのPL015鉱区でToroa F61/5-1号井の掘削を行った。South Falkland BasinはNorth Falkland Basinに比べ水深が2,000m程度と深く、ほとんどの海域はOcean Guardianリグでは掘削できない。Toroa F61/5-1号井が掘削されたPL015鉱区は550~730mとSouth Falkland Basinのなかで最も水深が浅いため、同井がSouth Falkland Basinで最初に掘削されることになった。Toroa F61/5-1号井は掘削長さ2,476mまで掘削されたが、ドライに終わった。Falkland Oil and Gasは、掘削の結果は残念なものだったが、フォークランド諸島沖合での探鉱はまだ初期段階で、この結果が今後の探鉱リスク削減につながると考えているとした。 一方、Falkland Oil and GasのパートナーとしてFalkland Plateau BasinとSouth Falkland Basinの13鉱区に51%の権益を保有していたBHP Billitonは、2010年9月にSouth Falkland Basinの鉱区から撤退すること65石油・天然ガスレビュー南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-\7時期1833年~1982年4~7月1995年1998年2002年2007年出所:各種資料よりJOGMEC作成フォークランド諸島沖合の探鉱・開発に関与する企業がアルゼンチンの炭化水素事業に投資したり、同国で活動したりすることを禁じる法律を成立させた。加えて、BHP Billitonに対しフォークランド諸島沖合での探鉱作業の中止を要求した。 2011年12月にウルグアイで開催されたメルコスルサミットでは、アルゼンチンの働きかけによりフォークランドの船舶がメルコスル加盟国(アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ)の港湾に入ることを禁止するとの決定がなされた。合意書には、フォークランド船舶の入港を防ぐためにはどのような対策も取り得るとされている。 2012年1月には、アルゼンチンの市民が英国との外交関係断絶などを求め、ブエノスアイレスの英国大使館前で英国旗を燃やす抗議活動を行った。2012年はフォークランド紛争勃発から30年目にあたる年である上に、ウィリアム王子が軍務でフォークランド諸島に駐留するなど、両国間の緊張がさらに高まる要素があり、状況を注視していく必要がある。② 遠隔地にあること フォークランド諸島は遠隔地にあるため、インフラが整備されておらず、資機材の調達が難しい。また、資機材、人員の輸送や生産された原油の市場への輸送は高コストになる。英国・アルゼンチン間のフォークランド諸島をめぐる争い内容英国が実効支配。ただし、アルゼンチンも1816年のスペインからの独立時に領有権を継承したと主張。アルゼンチン軍がフォークランド諸島を占領したため、英国が海軍機動部隊を派遣し、政庁所在地スタンリーを攻略、アルゼンチン軍が降伏(フォークランド紛争)。両国は国交を断絶。1990年国交を回復。領有権争いは続く。沖合油田の共同開発について合意、領有権問題を棚上げにした形でSpecial Co-operation area (SCA)を設定。North Falkland BasinでShell、Amerada Hess、LASMO等が6坑を掘削、5坑で出油・ガスがあったが、商業量の発見には至らなかった。アルゼンチンのドゥアルデ大統領が平和的な解決によりフォークランド諸島を取り戻すと発言。キルチネル大統領が領有権を主張、英国と結んだ周辺海域の石油探鉱協力合意の終結を通告。 2010年にフォークランド諸島沖合で掘削を行ったOcean Guardianリグは、掘削を前に英国から移動されたが、移動期間に3カ月、移動費用に1,600万ドルを要した。今回掘削を行うにあたり、Desire PetroleumやRockhopper Exploration等の企業は共同でOcean Guardianリグのチャーター契約を締結したが、フォークランド諸島沖合で探鉱・開発を行う企業は今後も資材やリグの調達にあたっては協力することが必要となろう。 2010年末から2011年初にかけて、YPF、Petrobras、Pan American Energyがフォークランド諸島との国境付近のアルゼンチンのMalvinas Basinでセミサブマーシブル・リグStena DrillMAXを用い掘削を行った。Stena DrillMAXは水深3,000 m以深での掘削が可能で、水深2,000m以深のSouth Falkland BasinやFalkland Plateau Basinでの掘削に適していた。しかし、現在のアルゼンチンと英国の政治的な関係からフォークランド諸島沖合で同リグを使うことはできず、Borders& Southern PetroleumとFalkland Oil and Gasは深海で掘削できるLeiv Eirikssonリグを別に調達することになった。③ データや石油会社の経験不足 North Falkland Basin南部、South Falkland Basin、Falkland Plateau Basinでは、まだ十分な地震探鉱が行われていない。そのため、これらの海域についてはデータが少なく、今後の探鉱に期待がかかる。 また、Shell等のIOCが撤退してしまい、現在フォークランド諸島沖合で活動する石油会社は同海域でのみ探鉱を行っている企業や設立されて数年しかたっていない新興の企業が多く、探鉱・開発の経験に乏しい。North Falkland Basinは水深が500mより浅く、海水面の状況も北海ほど荒れないため、技術的には難しくはないとされているが、South Falkland BasinやFalkland Plateau Basinは水深が2,000m以上で、これらの企業がSouth Falkland BasinやFalkland Plateau Basinで探鉱・開発を行うことができるのか懸念されている。662012.3 Vol.46 No.2アナリシスィわりに かつては盛んに探鉱・開発が行われていたものの関心が遠ざかりつつあったアルゼンチン、これまでは注目されることが少なかったギアナ3国、そして、ブームが去り探鉱が途絶えがちとなっていたフォークランド諸島沖合が、南米で最も石油会社の関心が高い地域へと変貌しつつある。これらの地域にはさらに多くの企業の注目が集まり、探鉱が活発化することが期待され、今後の南米の石油地図の変化の担い手となる可能性がある。ただし、いずれの地域も探鉱・開発が始まったばかりで、すぐに生産量が急増することは期待できない。また、それぞれの地域が課題を抱えており、今後はこれをどのように解決していくかが、生産量増大の鍵を握ることになろう。 本稿では、南米で新たに関心を集める三つの地域についてまとめたが、2012年にはコロンビアやペルーでもライセンスラウンドが予定されており、今回紹介した地域とともにその状況を注視していく必要があろう。【参考文献】1.Tullow Oil、CGX Energy、Desire Petroleumウェブサイト2.Falkland Islands exploration - mixed results so far(Wood Mackenzie Upstream Insight November 2010)3.Argentina: Unconventional dawn on the horizon(Wood Mackenzie Upstream Insight May 2011)4. “Tullow's Zaedyus find opens South America's Equatorial Margin”(Wood Mackenzie Upstream Insight September 2011)5.Neuquen shale gains momentum in Argentina(Wood Mackenzie Upstream Insight November 2011)6.「フォークランド諸島:沖合での掘削再開」JOGMEC石油天然ガス資源情報 2011年1月7. 「アルゼンチン:同時進行する非在来型ガス探鉱・開発とLNG 受入基地建設 ~シェールガスはアルゼンチンのプレソルトになりうるのか?」JOGMEC石油天然ガス資源情報 2011年5月8.「期待高まるGuyana Basinでの探鉱」JOGMEC石油天然ガス資源情報 2011年7月9.「Tullow、仏領ギアナでの発見」JOGMEC石油天然ガス資源情報 2011年10月10. 「アルゼンチンで進むシェールオイル、シェールガスの探鉱・開発」JOGMEC石油天然ガス資源情報 2011年11月執筆者紹介舩木 弥和子(ふなき みわこ)JOGMEC 石油調査部、南米を担当。67石油・天然ガスレビュー南米の石油地図は塗り替わるか? -アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3国、フォークランド諸島沖合-
地域1 中南米
国1 アルゼンチン
地域2 中南米
国2 ギアナ(仏領)
地域3 中南米
国3 フォークランド諸島(英領)
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,アルゼンチン中南米,ギアナ(仏領)中南米,フォークランド諸島(英領)
2012/03/19 [ 2012年03月号 ] 舩木 弥和子
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