CERA Week 2012に参加して
レポートID | 1006468 |
---|---|
作成日 | 2012-05-18 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
分野 | 企業非在来型 |
著者 | |
著者直接入力 | 市川 真 橘 雅浩 |
年度 | 2012 |
Vol | 46 |
No | 3 |
ページ数 | |
抽出データ | JOGMECK YMCJOGMECヒューストン事務所市川 真JOGMECヒューストン事務所橘 雅浩CERAWeek 2012に参加してはじめに ピュリツァー賞受賞者であるDaniel Yergin氏が代表を務め、エネルギー分野における情報分析、コンサルタント機関として世界的に名が知れわたっているIHS CERA(Cambridge Energy Research Associates)が、世界中の産官学界からエネルギー分野で活躍する主要プレーヤーを招き、最近の同分野におけるホットイシューについて議論、情報発信を行う毎年恒例のイベント「CERAWeek」に参加した。 今年で31回目となるCERAWeek 2012は、3月5日(月)から9日(金)までの5日間、前年と同じヒューストン市内のホテル(Hilton Americas - Houston)で開催された。参加登録時に配布された参加者リストによれば参加者数は1,600名を超え、登壇者の数も300名を上回った。エネルギー分野における一大イベントである。 登壇者は石油メジャーをはじめ各社CEOクラス、各国のエネルギー担当閣僚、政府高官、国営石油会社のCEOクラスなどそうそうたる顔ぶれである。世界各国から集まった一般参加者も加えると、民間事業者が主催する会議でありながら、これだけの多くの関係者が一堂に会する場としては当代無比であろう。また、取り上げられるトピックはどうしても北米寄りの視点に偏る傾向も見受けられるが、各個別テーマごとに分かれて行われる分科会も含めると北米以外の地域に関するものも含めて実に多様なトピックをカバーしており、万国博覧会的な国際会議と言えよう。 5日間のうち、初日(3月5日)は会議本番前日のシンポジウムに当てられ、2日目(3月6日)は石油、3日目(3月7日)は天然ガス、4日目(3月8日)は電力と、それぞれのテーマを分野ごとに分け、最終日(3月9日)はそれらの締めくくりとして今後30年間の展望をテーマとして取り上げている。筆者はこのうち、初日のシンポジウム、石油をテーマとした2日目の石油、天然ガスをテーマとした3日目に参加。本稿では、会議本番となる2日目、3日目に絞って聴取した内容を報告したいと思う。1.石油関連(3月6日分) CERAWeek 2012を訪れる前に気になることが一つあった。それは2日目朝のオープニングの全体会合の題目がStrategy for a Growing Worldだったからだ。筆者は昨年のCERAWeek 2011には出席していないが、資料によると、昨年はこの題目はStrategy for a World of Changeだった。 初めCERAは昨年、世界を「変化」していると捉えて議論し、今年は変わるといっても「成長」することが分かった上での議論をするのかと思ったが、昨年の資料を読み返すと、それとは少し違うようだ。Strategy for a World of Changeとは、定まらない各国のエネルギー政策、変化する市場、発達を続ける技術、乱高下する油価、高まる環境意識、一方リーマンショックの影響も薄らぎ今後当分は成長圧力下にある世界の膨大なエネルギー需要を満たさなくてはならない事実、これに対応してどうするか、というのがテーマだったようだ。これが今年は幾つもの変化要素のなかで、成長する世界が要求する膨大なエネルギー需要を満たすためにどうするかに焦点を絞ってきたのだ。要するにいろいろな課題から、量を確保できるかがテーマとして絞られたのだ。 会合の題名の違いなどCERAも参加者もあまり意識していないかもしれないが、この題目を選んだ担当者は今年は議論の焦点をここに当てるのが良いと考えたのだろう。CERAWeek 2日目を通じて幾つもの題目で議論が行われるなかで、今後の世界のエネルギー需要量を満たすため、どのようなことが語られるかに注目してCERAWeekに参加した。 以下に、聴取したセッションの順に沿って内容を紹介する。(1) 開会挨拶Conference Welcome Yergin氏は、CERAWeek 2日目の開会挨拶で世界の需要に対して、安定したエネルギー供給源を見つけることが重要と述べた上で、今年のCERAWeekでは昨年に引き続いてシェールガスが話題の中心だろうし、加えて他の非在来資源やシェールの嵐-shale gale-の影響、電力問題、エネルギーの運送費用、低ガス価格および油価ガス価格差、フクシマ後の環境対策等も話題になるだろうと、この日の朝の全体会合の題目に沿って、この日の導入を行った。(2) 開会全体会合Opening Plenary 開会の全体会合では、Total E&PおよびTotal Gas & Power 社長のYves-53石油・天然ガスレビューエッセー橘.indd 532012/04/26 10:44:52 エッセーouis Darricarrere氏とPemex社長のJuan Jose Suarez Coppel氏が登壇した(写)。 Darricarrere Total社長は、今後の石油天然ガスと他のエネルギー資源の役割およびエネルギー需要の増加への対応、業界と社会の関係等について以下のように述べた。① 石油天然ガスが大きな役割を持つ状況は続き、今後20年以上は化石燃料が世界のエネルギーミックスにおいて主要な地位を占め続ける。ただし世界のエネルギー供給に占める原油の割合は下がる。天然ガス生産は現在の3,200億cf/Dが2030年には期間4,500億cf/Dに増すだろう。② 核エネルギーはフクシマ後、エネルギー供給ミックスにおける役割を維持するのは大変だろう。再生可能エネルギー源は、太陽光がリードし今後数年間で急速に成長するだろうが、エネルギーシェアは20年後でも20%以下。それでも再生可能エネルギーは、需要と供給のギャップを埋める上で重要な役割を果たす。③ 今後増加するエネルギー需要への対応は大変で、予測できる期間に世界の原油生産量を9,500万~9,700万B/D以上にするのは困難。既存の油田が減退するなかで新規油田の開発が重要。2,500万~4,500万B/Dは、現在未生産の油田から必要。エネルギー供給の将来について問題なのは、石油天然ガスがないことではなく、資源へのアクセス、十分な投資、技術革新、操業・環境の安全確保等にある。石油天然ガスの新発見、例えばフランス領ギアナのようなフロンティア、北海の成熟エリア、超深海や北極などの難地域における発見により、業界が必要な資源は満たされる。しかし深海、極地のプロジェクト実施は大変。開発や環境対策がより高価になってきている。問題はタイムリーにそれらを生産できるよう有効に投資すること。新地域の課題を克服し、コストダウンをもたらすため技術革新も非常に重要である。技術はTotalのような石油会社のコアビジネスとなっている。コン出所:筆者撮影写開会全体会合JOGMECK YMCピューターの発達で3Dイメージングでは新しい境地を開いている。重質油開発、海洋開発等でも新技術が使われている。④ フランスでのシェールガス開発反対等を考えると、透明性、環境対策が必須。われわれの業界は社会との関係を無視できなくなっている。操業と環境の安全性確保と、利害関係者の関与が、石油天然ガス事業の持続に必要。会社の社会貢献を十分に社会に知らせる必要がある。情報の不足が不信感を呼ぶ。業界の活動について国民とのコミュニケーションを改善し、社会の利益を強調すべきである。 Coppel Pemex社長は、メキシコの原油生産の現状、埋蔵量と生産量の維持について以下のように述べた。① メキシコの原油の生産は南東堆積盆からがほとんど。一時期300万B/Dになったが、カンタレル油田の生産減退でメキシコ全体の生産は減退。現在これを維持しようとしており、Ku-Maloob-Zaap油田群が生産を増している。② Pemexは年間25億~30億ドルを探鉱に使い、生産した分の埋蔵量を、新規の埋蔵量で補填している。2011年には年間生産量の101%の確認埋蔵量(1P)を発見。また確認埋蔵量に推定埋蔵量と予想埋蔵量の発見を合わせた値(3P)だと年間生産量の108%を発見した。現在メキシコのR/P(確認埋蔵量/現在の生産量)は10年、確認プラス推定埋蔵量で計算すれば20年、確認プラス推定プラス予想埋蔵量なら30年ある。③ メキシコの石油生産減退の原因は埋蔵量がないからではない。未開発の深海、成熟油田、開発中の油田、浅海の油田に可採埋蔵量は残っている。生産増には相当の技術力と投資54エッセー橘.indd 542012/04/26 10:44:552012.5 Vol.46 No.3エッセーOGMECK YMCが必要なのだ。技術に関しては、炭酸塩岩油層開発と深海開発の技術を向上させていく意向。深海に関してPemexは2003年以降18坑井を掘削し44%の成功。昨年は深海開発の坑井を5坑掘削した。問題なのは投資の欠如だ。最近幾分かは緩和されたが、Pemexの財務は国家財政と統合されたままで、開発生産からのキャッシュフローが吸い上げられて政府の歳入に回されるので、新たな生産への投資が制限されている。ここ数年は探査への投資を増やしている。外国への石油産業開放や税制の変更のような大きな改革でなく、メキシコで販売される燃料への補助をPemexに負担させない程度の改革ができればそれだけで探鉱投資資金増加には十分の効果があるはず。(3) 世界の原油全体会合Global Oil Plenary 世界の原油全体会合では、コロンビアの鉱山エネルギー大臣Mauricio Cardenas氏、Saudi Aramco上流部門の上級副社長Amin Nasser氏、Baker Hughes社社長のMartin Craighead氏が登壇した。このセッションの議論では需要への対応についてのコメントは特に求められていないが、コロンビアの鉱山エネルギー大臣とSaudi Aramco上流部門の上級副社長はいずれも自国の埋蔵量拡大について触れている。 Cardenasコロンビア鉱山エネルギー大臣は コロンビアの石油開発の現状と、今年のライセンスラウンドについて述べた。① コロンビアの原油生産量は今後数週間以内に100万B/Dになる。5年前から倍増した。国の目標は、2020年までに150万B/Dを達成すること。生産量増加のための投資は基本的には民間の投資によるもの。コロンビアの海外からの投資環境はよい。② 国営石油会社Ecopetrolは民営化に向かい変革中。現在88.5%は国家が所有しているが、民間企業同様利益を追求している。米国預託証券はニューヨーク証券取引所で取引され、株式は他の証券取引所で取引されている。Ecopetrolの自由化は国が認識して進めている。コロンビアは、石油輸入国になることを懸念している。Ecopetrolの改革は、国のエネルギー安全保障の観点から支持されている。③ 2012年は国際ライセンスラウンドとして119鉱区を入札にかける。そのうちオフショア鉱区は11鉱区、またシェールガス等の非在来型の可能性のある鉱区が30鉱区。非在来型に関してはロイヤルティーを40%削減する。④ 近年のコロンビアの石油部門の成長の要因は、Ecopetrolの改革、コーポレートガバナンスの改革。課題は採水、排水等の環境問題。また下流部門、石油化学産業の拡大も目指す。年間80億ドルを上流のプロジェクトや二つの製油所のアップグレードに投資する予定。またペルー、ブラジル、米国湾岸でも投資している。 Nasser Saudi Aramco上流部門の上級副社長は、Saudi Aramcoの今後と技術力増強について述べた。① Aramcoは石油・ガス会社から、エネルギーと石油化学の統合企業へと変革中。サウジアラビアの産業と発電業界のニーズを満たすために、在来・非在来型の天然ガスの生産を増加させる。サウジ国内のフロンティア地域である紅海の浅海、深海域で数十年以内に1,000億バレルを発見したい。また主要油田の究極回収率を約50%から70%に引き上げることも目指す。紅海の浅海では掘削を既に開始、深海は今年後半に開始予定。油田発見の可能性について非常に楽観視している。これらフロンティアエリアを開発するのには技術が必要で、Aramcoはブレークスルー的技術に研究予算の多くを使っている。油層の検知のためのナノテクノロジー、“スマート”水攻法、イメージング技術などの技術を開発中。新技術で目標を達成したい。② 天然ガスの生産は2014年には40%増大する。天然ガス開発の促進はサウジアラビアの電力需要の伸びに対応するもの。サウジアラビアは大きな非在来型ガスのポテンシャルがあるが、シェールガス革命で開発コストが下がってより魅力的になっている。③ Aramcoは今後も研究・教育活動を強める方針。既にSaudi Aramcoには世界70カ国から専門家が来ているが、今後は研究者の数を倍増させる。また教育プログラムにも力を入れる。さらに世界中に研究センターを設立し研究開発能力を向上させる。新研究センターの第1号はヒューストンに置かれる可能性が高い。 Craighead Baker Hughes社社長は石油業界の変化について述べた。① 石油開発は新しいサイクルに入った。このサイクルの特徴は、社会の影響、国営石油会社の影響が強いことにある。② 石油業界ではウィキリークスのようなWiki化、すなわち情報が素早く広く浸透し、公平性と透明性が強く求められる状況になっている。米国国内では水圧破砕や坑井掘削から、下流事業まで透明性が見直されている。昨年のタイム誌の今年の顔が“protester”であったように、今日は世論喚起者の世の中となっている。③ 国際的には石油天然ガス開発の力のバランスは資源所有者にシフトして55石油・天然ガスレビューエッセー橘.indd 552012/04/26 10:44:55CERAWeek 2012に参加してOGMECK YMCいる。国営石油会社はサプライチェーンを握ったり、サービス会社の業務領域に属する活動を行うようになり、その影響で石油天然ガス開発に係る業界間の境界がなくなりつつある。国営石油会社は、かつてのように技術をサービスカンパニーに頼り、最新技術のベストプラクティスを導入するだけでなく、自ら技術革新のパートナーになる機会を得ようとしている。巨大で収益性が増した国営石油会社は世界規模で競争できるようになった。④ 業界の基盤が完全に変化していることを受け入れて、新しい力との協力が必要。そのためには透明性が前提で、かつ先見性を持って動く必要がある。等の想定は困難。世界のガス供給に関わる米国の動きは重要だが、米国がガス輸出国になることを米国国民がどう見るか。ガス輸出がエネルギー安全保障につながるとなれば輸出賛成に回るだろう。② LNGが世界のガス需要に対し、供給を満たす鍵となり続けること、LNG貿易の拡大により世界のガス価格の再バランスが起こるであろうこと、ガス価と油価との格差が狭まっていくだろうことは確かである。 ③ Eniは最近米国のシェールガス生産会社を買収したが、目指すのは米国でのガス生産のリーダーになることではない。技術を得、ビジネスを知り、輸出することから始める。(4) 昼食、基調講演Luncheon and Keynote Address 昼食時の基調講演で、Eni社社長Paolo Scaroni氏はガス市場を話題に取り上げた。Scaroni社長はエネルギー供給については触れなかったが、講演の後のYergin氏との対話では、Eniの生産戦略におけるアフリカの重要性に触れた。① Eniは昨年モザンビークで原始埋蔵量30TCFの巨大ガス田、マンバ・ サウスガス田を発見。今後8坑井を掘削するが、開発計画策定に際してガス価格を想定するのが困難。問題の一つは単一のガス価格がないこと、MBTUあたり米国では3ドル、アジアで15ドル、ヨーロッパではスポットで9ドル、長期のオイルリンクの価格で11ドル。またガス価と原油価格の格差もそれ以上に問題があり熱量換算で6倍以上ある。これらは今後均一化に向かうと思われるが、その分析に必要な、世界の天然ガス需要予測、フクシマ後の各国の原子力発電政策、世界のガス供給(5) 行政官の対話Ministerial Dialogue 行政官の対話のセッションでは、イラク・クルド地域の天然資源大臣Ashti Hawrami氏、前カナダ・アルバータ州知事Edward Stemlach氏、ガス輸出国フォーラム事務局長Leonid Bokhanovskiy氏が登壇した。このフォーラムでもエネルギー需要への対応についての直接の議論はなかったが、Hawramiクルド天然資源大臣は対外開放による探鉱活性化について言及した。 Hawrami大臣はクルドの石油天然ガス開発の現状について以下のように述べた。 クルドは現在18カ国の会社と48の契約を結び、石油天然ガスを開発中。成功率は70%と高く、20カ所で成功。現在確認埋蔵量は原油450億バレル、天然ガス100~200TCF。探鉱は成功し大きなポテンシャルを確認できた。2011年の原油生産量は20万B/D、2012年には17万5,000B/Dを輸出する見込み。2021年には日量230万バレルを生産、うち200万バレルを輸出、30万バレルを精製したい。クルドはバグダッド政府が中央集権的な石油天然ガス政策を採用するのを待ってはいない。 Stemlach前カナダ・アルバータ州知事はアルバータ州の現状について以下のように述べた。 アルバータ州はカナダのGDPに大きく貢献している。石油だけでなく天然ガスの生産も多いが、問題は価格変動。石油天然ガス産業は社会への影響が大きく、カルガリーが州の雇用の半分を創出している。しかし一方で人口増加で教育、住宅、水等のインフラ問題を発生させている。Keystone XL パイプラインが今年初め米国で認可されなかったことについては、カナダでは米国の状況はよく理解されているが、他のパイプラインの建設にも影響することを懸念している。 Bokhanovskiyガス輸出国フォーラム事務局長はフォーラムについて以下のように紹介した。 増大する化石燃料需要に対応してガス生産を増す必要がある。フォーラムはメンバー12カ国、オブザーバー3カ国から成り、世界の天然ガス埋蔵量の64%、LNG取引の58%、パイプライン取引の42%を占める国の集まり。フォーラムは中期的には、フォーラム外の国との対話、市場分析、互いの技術協力、天然ガスからどう利益を出すのかの検討等の活動を協力して行っていく。(6) 同時全体会合Concurrent Plenaries(上流部門) 上流部門の全体会合では、Lukoilの海外部門副社長Andrey Kuzyaev氏、Statoil北米副社長Bill Maloney氏、Chevronの事業開発副社長Jay Pryor氏が登壇し、それぞれの会社の現状にエッセー橘.indd 562012/04/26 10:44:55562012.5 Vol.46 No.3エッセーOGMECK YMCついて紹介したが、いずれも技術力の重要性に言及した。なお、このセッションを司会したCERAのPeter Jackson氏は、タイトオイルの生産が2020年には300万B/Dになる、在来原油でも最近のノルウェー沖の大発見、ガーナのプレソルト、ブラジルやアンゴラの発見があった。資源のないことが業界の課題なのではない、技術が鍵ではないか、と語っている Kuzyaev Lukoil海外部門副社長はLukoilの夢について語った。① Lukoilは1990年代初頭に発足したロシア最大の石油会社。海外は中央アジア、イラク、ベネズエラ、パキスタンなどに進出、今日ロシア外で22万B/Dを生産。イラクのウェストクルナ2プロジェクトなどの開発により2015年から2017年に生産量を2.5倍以上に増加させ、ロシア外で50万~60万B/Dを生産する計画。② Lukoilは今後5年から10年で国際的競争力を持つ操業会社になるのを目標としている。そのためには新規技術が必要と認識。今後10年間で国際的プロジェクトに400億ドル以上を投資する。これによりプロジェクトの収益率を増加させ、EBITDA(利払前税引前減価償却前利益)を約80億ドル伸ばす。これらは新プロジェクトが成功して初めて実現する。 Statoil社北米副社長は、今後の埋蔵量確保について以下のように述べた。① 米国も埋蔵量の多くの部分は、見直しや追加によるもの。北海では、Statfjord油田を1974年に発見。1987年ごろ生産がピークの63万B/Dに達したがその後減退。しかし2012年現在回収量約70%でまだ生産している。昨年のStatoil社の生産量は平均190万B/Dで、うち35万B/DはEORによるもの。② 最近はタンザニア、モザンビーク、ガーナ、フランス領ギニア、イスラエルなどで大きな発見があった。また非在来型天然ガスの開発は世界のガス開発のバランスを変えた。石油天然ガス開発の地図が塗り変わりつつある。ノルウェー沖の最近の発見は1960年代から探鉱されてきた地域での発見だった。われわれの油田からは、もっと生産できるはずだ。古い場所を新鮮な目で見てうまく生かせば、新しいことが起こる。 Pryor Chevron社事業開発副社長は同社における技術の役割について述べた。 上流事業が国際石油会社の中心事業、そして技術の発達が要の役割を担う。Chevronは、カナダのボーフォート海で3D震探や、カザフスタンで腐食対策技術や高温高圧対策、重質油開発で自社の技術を生かしている。コンピューターの進化で地下のイメージングはより鮮明になってきている。これらの技術開発には大学等とのパートナーシップが生かされている。 またYergin氏からStatoilがノースダコタ州とメキシコ湾に投資した理由を問われてLund氏は以下のように答えた。 Statoilにとって北米にはノルウェー国外で最大の成長機会がある。Statoilは2011年に北米で10万B/D生産しているが、これは主に非在来型資源で、2020年までに50万B/Dにする。初めのフェーズで、バッケンで6万B/Dから10万B/D生産する。Statoilはマーセラスの資産も持っているが、今後もっと液体分が豊富なところへ転換するつもり。これらの非在来型資源は、Statoilの生産量を、今日の180万B/D から2020年に250万B/D に高めるための主軸である。(8)まとめ CERAWeek 2日目を通じて、今後の世界のエネルギー需要量を満たしていくための話のなかで、多くの発言者が「資源量に対する自信」「技術開発の役割の重視」「社会とのコミュニケーションの強調」について触れた。(7) 夕食、基調講演Dinner and Keynote Address 夕食時の基調講演で、Statoil社社長Helge Lund氏 は今後の世界の石油業界が事業を継続する資格を確保するために何が必要かについて語った。 石油業界は、社会の要求に応え、より透明性を高め信頼を獲得し、会話によって十分に説明し、環境への影響に配慮した業務の質を意識している必要がある。これらの課題は、シェールガスや深海開発などにおける操業の複雑化によって拡大されている。エネルギー産業は、社会において信頼を獲得するために、上場企業が財務報告するような透明性を持って業務を推進する必要がある。①資源量に対する自信 「資源がないのではない」という議論がどこでも聞かれた。探鉱実績がよい会社から登壇者が出ていたこともあるが、CERAも基本的には同じ考えのようであった。その資源の在り所というのは、非在来型天然ガス、重質油、極地、深海、そして既存エリアの見直し等であった。これらは何年も言われ続けてきたものと変わりない。しかしシェールガスやタイトオイルが「将来の資源」から「今の資源」に変わったという事実が大きいのだろう。漠然と存在しているだけと思っていた資源が、多くの発言者の気持ちのなかで開発可能な資源に近づいてきているようだ。57石油・天然ガスレビューエッセー橘.indd 572012/04/26 10:44:55CERAWeek 2012に参加してOGMECK YMC輸入大国としての位置が定まっていた米国が近々天然ガス純輸出国にまで転換することが見込まれるほどである。怖ふくい、畏 今回のCERAWeekでもシェールガスが主役であった。しかし、昨年までと幾分捉え方が異なっていた。昨年までのこうしたシェールガス革きょう命現象に対する驚、そして現象が起きた背景の分析といった初期的な反応から、今年はシェールガス事業の経済性、長期的事業継続性、他国への展開の可能性、シェールガスを起点としたLNG事業の展開の可能性といった、より長期的な視点で、そしてより科学的な切り口でシェールガスへの評価を試みるものが多かった。概して、本当にあるのか、掘れば当たるかといった探鉱リスクへの懸念は後退し、いかに生産を効率的に行い、いかにロジスティックスも含め工程全体でコストを下げるのかといった製造業的なアプローチにより焦点が当てられていた。事実、天然ガスの賦存、埋蔵量に対する不安を口にする登壇者はほぼ皆無であった。愕が②天然ガスの位置付けに変化 また、天然ガスそのものに対する評価にも質的変化が見られた。昨年までは、化石燃料エネルギー社会から再生可能エネルギー社会への変容に至る「つなぎのエネルギー」としての位置付けを甘受していたが、今年は、オバマ大統領の一般教書演説に見られるように、中長期的にもエネルギー供給の屋台骨を支える中心的役割を確固たるものとしたようである。石炭に比べCO2排出量が少ないという天然ガスが本来持つクリーン性に加え、シェールガスをはじめとする非在来型ガスが支える天然ガス埋蔵ポテンシャルが世界的に改めて認識されており、北米発のシェールに強い期待が寄せられて革命の伝播ぱでん②技術開発の役割の重視 技術の重要性についてもほとんどの発言者が言及していた。これもシェールガス開発が水平坑井と水圧破砕技術の発達で成立し、産業の様相をも変えようとしていることを目の当たりにしての議論だと思う。「技術は全てを変えてしまう」などの発言もあり、テクノロジー信仰に戻りつつあるような気もした。言及された技術は、精密な地下のイメージング技術、高温高圧環境対応技術、極地・深海等の難地域開発技術、環境対策技術等。 ただ本稿では紹介しなかったが、技術のセッションでメジャーの技術者が「チープな油ならチープな技術で開発できた(が今は違う)」と言っていたし、一方で産油国の国営石油会社は技術力獲得に躍起だ。投資が開発に必要という発言もあった。資源はあるといっても本当は開発が大変なものばかり。必要な技術を手に入れ、資源を獲得できるのは資金力のある会社だけになるのだろうか。③社会とのコミュニケーションの強調 シェールガスの水圧破砕やメキシコ湾の油漏れに対する社会の反応、さらには「アラブの春」で示された情報化時代の民衆の力を意識した発言が目立った。典型的なのがStatoil社長のHelge Lund氏。夕食のキーノートスピーチ20分のほとんどをこのテーマで通し、透明性、会話、社会的責任の重要性を強調した。これは当然の議論であるし、どの発言者も重要と語っている。ただ石油天然ガス開発に伴う環境問題ほかの課題は解決可能であって、社会が納得する形で十分に説明ができるという前提での話でもあるので、ある意味で楽観的とも言える。石油天然ガスが人類が手を付けるべきでない禁断のエネルギー資源であるとされてしまう、というような事態は考えていないわけである。 どうしても、人間は最近の出来事に影響されてしまう。CERAWeek 2012の2日目の議論も、シェールガス開発とそれを取り巻く状況の影響が色濃く見えていた。資源はある。それは北米など自分たちのアクセス可能なところにある。開発の課題、社会とのコンセンサス等の課題はあるが特定しやすい。同じ大変さでも、どこから手を付けてよいか分からない場合と、困難だが課題が分かっている場合を比べたら、後者の方が大分気が楽だ。今後の世界のエネルギー需要量を満たすのが大変なことは分かっている。しかしすべきことは見えてきた。そういった安心感が見られたのがCERA Weekの2日目であった。2.天然ガス関連(3月7日分) キーワード:クリーンなエネルギー、豊富な供給量、廉価、LNG輸出、水圧破砕、環境問題への対応。(1)総括①今年の主役もシェールガス 2012年1月、オバマ大統領は年頭所感と言える一般教書演説において、天然ガス、とりわけ頁岩(シェール)層に賦存する天然ガス(シェールガス)を取り上げ、エネルギー安全保障上の観点、クリーンエネルギーとしての位置付け、雇用の創出効果を念頭に、そのさらなる促進への期待を鮮明にした。2000年にはわずか1%程度を占めるに過ぎなかった米国でのシェールガスの生産量はここ数年で急激に増加し、既に米国の天然ガス国内生産量の30%に達する勢いである。シェールガス生産量の増加により、米国は世界第1位の天然ガス生産国となり、天然ガスのエッセー橘.indd 582012/04/26 10:44:55582012.5 Vol.46 No.3エッセーOGMECK YMCらのLNG輸出に関するテーマを集中的に選択し、参加した。以下、参加した各セッションの概要についてセッションの時系列順に記す。①NorthAmericaGas:TheShaleGaleatAgeFive?WhatisAhead?(北アメリカにおけるシェールガス開発に関する分科会)[議長] Robert Ineson, Senior Director, IHS CERA[登壇者] Derek Mathieson, President, Western Hemisphere Operations, Baker Hughes、Steven Mueller, President & CEO, Southwestern Energy、Andy O'Donnell, Vice President, Office of the CEO, Baker Hughes、Charles Stanley, President & CEO, QEP Resources, Inc.焉え特に、シェールガス開発に不可欠な水圧破砕技術の適用におけるさまざまな環境上の懸念は濃淡の差こそあれ全国民層に浸透しており、天然ガス産業が直面する最も重要かつ喫緊の課題である。ほぼ全ての産業界の登壇者は水圧破砕技術の安全性を強調、そして、科学的に立証された正しい事実をもって大衆レベルでの啓発、伝達、そして公衆とのコミュニケーションの必要性を訴えていた。後者については、米国政府、環境NGOからの登壇者も主張しており、総意であろう。産業界が長く主張してきた水圧破砕技術をはじめとする探鉱開発生産技術に対する安全神話への信頼性は、きちんとした対外コミュニケーションがあって初めて社会レベルで認識され、専ら業界内でしか語られることのない安全神話のしみに依拠できる時代はもはや終たということである。しゅうん(2)個別セッションの概要 会議3日目となる3月7日についても、全参加者が一堂に集う全体会合と個別テーマごとに分割された分科会とから構成される。分科会では、筆者は北米での非在来型ガスの動向および北米か QEP社の登壇者は、シェールガスプレイの初生産からの生産量の上昇速度が在来型ガス田に比して極めて高いこと(図1)、天然ガス価格の低迷に対応するため、天然ガス向け掘削リグ数およびCAPEXを縮小している傾向について説明。また、生産効率を向上さ出所:QEP Resources社プレゼンテーション資料(2012年3月7日)図1主要シェールガスプレイおよび在来型ガス田の初生産からの生産量推移いる。北米では、爆発的なシェールガス供給量の増加およびそれに伴う天然ガス価格の低迷は、天然ガスをエネルギー源、原料とするさまざまのユーザー産業にとっては好意的な市場環境を意味する。特に主要ユーザー産業である石油化学産業の国際競争力復活への寄与を引用する事例が目立った。エネルギー安全保障の向上への貢献、さらに、こうしたユーザーも含めたサプライチェーン全体ひきが雇用も含めた経済にもたへの裨らす影響についても再三強調された。益え③天然ガス産業が直面する課題 一方、独立系事業者を中心とした北米での上流事業者からは、供給過剰から長く低迷するガス価格に対して有効な対抗手段が見出せず、閉塞感、あきらめに似た声も聞かれた。乗用車での燃料転換など天然ガス需要の抜本的増加には長期的展望、集中的な政策的支援が必要であり、手っ取り早く(とはいえ米国からのLNG輸出開始は早くとも2015年であるが)、海外で高価格での買い取りが期待できるLNG輸出事業に活路を見出そうとする傾向は今後も強まりそうである。LNG輸出は、歴史的に低いガス価格にあえぐ中小の独立系天然ガス開発会社を助けるとともに、関連する雇用の創出、貿易収支バランスの改善などにも貢献することは明白である。しかし、高騰するガソリン価格による国内経済への悪影響に国民的関心が集まるなか、本来は別問題とは言いながら、国内天然ガス価格の上昇につながるLNG輸出事業を全面的に支援することには米国政府(エネルギー省)のみならず、一部の天然ガス産業界からの登壇者からも慎重な声が聞かれた。新たなジレンマである。 もう一つの天然ガス産業をめぐる課題は、環境問題への対応である。59石油・天然ガスレビューエッセー橘.indd 592012/04/26 10:44:56CERAWeek 2012に参加してOGMECK YMCせるため、掘削に要する日数を短縮させている状況(Haynesvilleシェールプレイでは2009年の平均66日から2011年には平均32日まで約半減)についても説明。天然ガス市場は供給過剰状況にあり、再び需給がバランスする時期も含めて市場の不透明性を強調した。 Southwestern社の登壇者も、天然ガス市場が供給過剰状態にあることを指摘し、生産活動を停止するには時間がかかることを理由として、市場が再び需給バランスを実現するにはなお時間を要するとの見解。生産効率性の向上はかえって天然ガスの供給過剰をもたらし、ガス価格の低迷を長引かせる原因となったと主張。低コストで大量の生産量を市場に送るという産業界が取ってきた戦略がこうした背景にあり、天然ガス産業界の対応ではガス価格を引き上げることに限界があるとした。 Baker Hughesの登壇者は、水平掘削における水平部分の長さおよび水圧破砕の1坑井あたり破砕実施回数も増加傾向にあり(図2)、それにつれて1坑井あたり生産量も年々増加傾向にあると説明(図3)。また、他の登壇者同様、天然ガスから石油など液体炭化水素への投資、操業リソース(リグ等)のシフト傾向を指摘し、これに必要な技術的課題について説明。多くは天然ガスに用いられている技術がほぼそのまま転用可能であるが、流動性が低い石油については貯留層を探し当てるより高い精度の技術が必要となり、また、水圧破砕で圧入する砂やプロパントも天然ガスと石油では若干異なるとのこと。さらに、自然に破砕が進んでいる貯留層では人口的に破砕を引き起こす水圧破砕技術の適用は不向きであるとした。 質疑応答では、天然ガス価格の低迷への対応策として、掘削が完了したにもかかわらず水圧破砕も含めた仕上げ工程を作為的に停止している天然ガス坑井の規模について問われ、(Marcellusシェールプレイを除いては)通常の操業工程において必然的に発生する仕上げ待ち坑井以外には原則ないとする、否定的な見解。また、水圧破砕を行った坑井の生産レートが初期段階から急激に減少することに関しては、低い生産レートであっても生産が長期間続くことが重要、水圧破砕を行っていない部分への追加的水圧破砕の適用の可能性、(特に石油の貯留層に対して)EOR技術の適用可能性があることなどが指摘された。②AGrowingRoleforNaturalGas(天然ガス全般に関する全体会合)[議長] Daniel Yergin, Chairman, IHS CERA[登壇者] James Hackett, Chairman & CEO, Anadarko Petroleum、Patrick Kron, Chief Executive Officer, ALSTOM、Sam Laidlaw, Chief Executive Officer, Centrica Anadarko社の登壇者は、米国エネルギー省の諮問機関である国家石油会議の報告書の内容を引用し、天然ガスは発電、運輸部門を含め増大する需要を100年間にわたって満たすことが可102030Months4,0003,5003,0002,5002,0001,5001,00050000Gas per Well,MCFPD2006 2007 2008 2009 2010 2011Avg Lateral Length (ft)5,0004,5004,0003,5003,0002,5002,0001,5001,00050002007 2008 2009 2010 2011Stages Per WellAverage Lateral LengthWAVG Stages Per Well2520151050Stages Per Well出所:Baker Hughes社プレゼンテーション資料(2012年3月7日)出所:Baker Hughes社プレゼンテーション資料(2012年3月7日)図2米国非在来型ガス田における水平掘削井の水平部分の長さおよび1坑井あたり水圧破砕実施回数の推移図3米国非在来型ガス田における水平掘削井の1坑井あたり生産量の推移およびその暦年変化60エッセー橘.indd 602012/04/26 10:44:572012.5 Vol.46 No.3エッセーOGMECK YMCえい問題に関して、多くは坑井デザイン/建設の問題であり(水圧破砕の適用そのものが問題ではない)、正しい事実を公衆に伝えていく重要性を指摘した。③ANewGeographyofSupply&Demand(天然ガス全般に関する全体会合)[議長] David Hobbs, Chief Energy Strategist, IHS[登壇者] Daniel Poneman, Deputy Secretary of Energy, US Department of Energy、Thomas Walters, President, Gas & Power Marketing, ExxonMobil、Dirk Beeuwsaert, Executive Vice President, GDF SUEZ 米国エネルギー省の登壇者は、オバマ大統領が提唱した”all of the above”エネルギー戦略について、これは化石燃料、原子力、再生可能エネルギーも含め米国が利用可能な全てのエネルギーを活用することであると説明。特に天然ガスについては、クリーン、大量に供給可能、電力コスト(電気代)の低減、雇用の創出、化学産業への寄与などの面で優れており、エネルギーミックスのなかで重要な役割を果たすと指摘。また、CNG車の普及についての重要性、経済的有用性も主張。LNGの輸出については、GDP、貿易収支、供給可能性、市場価格、雇用などそれが及ぼすさまざまな要素について現在エネルギー省で分析中(質疑に応え、分析にはあと1カ月程度要する見込みと言及*1)であり、その分析が完了するまで申請中の輸出許可についていかなる判断もしないと明言。操業の安全性、環境問題については、産業界が主体的に公衆とコミュニケーションを図り、透明性を高め、懸念を解消していくことが重要と主張。 ExxonMobil社の登壇者は、膨大な非在来型資源に支えられた天然ガスは大量かつ安価に提供可能であり、これまでエネルギー供給が届かない地域でもそれを可能にするとしてその位置付けを高く評価。また、米国が天然ガス輸出国となる可能性についても言及(自由貿易の原則を標ぼうするなど、むしろ天然ガス輸出に対して好意的な姿勢に見受けられた)。 GDF SUEZの登壇者は、発電部門における天然ガスが占める重要性とともに、運輸部門(特にバスやトラック)における天然ガスへの燃料転換の有用性についても言及。また、天然ガスを広範に活用するためには、輸送等のための膨大なインフラ整備が必要であり多大な投資が必要と主張。 質疑応答では、CNG車の普及に関して、米国エネルギー省の登壇者は、天然ガス価格をガソリン単価にすると、$1.50/ガロンで、現在のガソリン価格の半額以下であると、その経済的有用性について再度強調。カナダとも政策的協調、標準化を進めており、CNG車の国境を越えた移動には何ら問題は生じないと説明した。ExxonMobil社の登壇者は、LNG輸出も含めて天然ガスの利用の多様性を検討しているとし、LNG輸出ビジネスについてはさらなる検討が必要とし、明言を避ける一方で、CNG車の普及には、消費者の受け止め方が重要であると指摘。④TheNextLNGSupplySurge:ImplicationsfromConventionalandUnconventionalResourceDevelopment(LNG事業の現状に関する分科会)[議長] Michael Stoppard, Managing Director, IHS CERA[登壇者] Rob Bryngelson, Chief Executive 能と指摘。一方、LNG事業には長いリードタイムが必要で、シェールガスの勃興が北米以外に展開するにも長い時間を要することから、LNG事業にシェールガスがリンクするにはあと10~20年を要するとの見解。また、産業界として透明性の向上は不可欠であり、水圧破砕において圧入する化学物質を完全に公表すべきであると主張した。 Centrica社の登壇者は、欧州、とりわけ英国の発電単価および天然ガス価格が北米と比べて高く、また、ロシアからの天然ガス供給が不安定な状況にあること、気候変動問題への対応として低二酸化炭素エネルギーへのシフトが必要であること、欧州でのパイプライン等の天然ガスに関連したインフラは比較的整備されていることなどをあげ、北米からのLNG輸入のメリット、重要性について説明。また、北米からのLNG輸出によって、グローバルな天然ガス市場の創設をもたらす可能性にも言及。 ALSTOM社の登壇者は、発電部門での天然ガス利用の有用性として、大量かつ安価な供給量が見込まれること、気候変動等に関連する政策が不透明であるなか、柔軟に対応できること、コンバインドサイクルガス発電など、ガス発電関連の技術開発していること、ピーク時間にが進おけるバックアップとして柔軟かつ短時間に供給が可能であることなどの利点を指摘した。ただし、天然ガスのみに依存するのではなく、CCS技術と組み合わせた石炭火力など多様なポートフォリオを構成することが重要とも指摘。 質疑応答では、北米からのLNG輸出の可能性について、Anadarko社の登壇者は、ユーザーである石油化学産業が反対していることを理由に、LNG輸出は重要な位置付けを占めないとの見解。また、メタンガスの漏捗ちしんょく61石油・天然ガスレビューエッセー橘.indd 612012/04/26 10:44:57CERAWeek 2012に参加してOGMECK YMCOfficer, Excelerate Energy、Jay Cuclis, Partner, Vinson & Elkins、David Knox, Chief Executive Officer and Managing Director, Santos Santos社の登壇者は、豪州のLNG供給能力について、2018年には1億2,000万トン/年近くに達し、LNG輸出量は2020年には2.2兆cf(約4,620万トン)に達する見込みと説明。LNG事業の成長の背景として、アジア市場のLNG需要の増加(現状の1億5,000万トン/年から2025年には3億トン/年近くまで増加予測)、豪州の天然ガス供給能力が高いこと(713兆cfの資源賦存量、うちCBMが153兆cf、シェールガスが396兆cf)、アジア・太平洋LNG市場が依然として油価にリンクしており、大西洋間の天然ガス取引価格に対してプレミアムが付されていることを指摘。北米のLNG輸出については、提案されているベースで供給能力は、合あわせて8,500万トン/年程度であり、2025年における世界のLNG需要量4億2,700万トン/年(見込み)と比べると規模は小さく、それが世界のLNG市場に与える影響は少ないであろうとの見解。 V&E法律事務所の登壇者は、LNGの輸出基地が2012年において操業中34基、建設・提案中が56基と紹介。多くの新たなLNG供給はアジア市場を目指すとした。米国のLNG輸出許可(非FTA諸国への輸出)について、既に1件が承認済み、少なくとも8件が承認申請中であると説明。また、LNG売買契約における重要な要素として、価格設定メカニズム、期間、量、輸送手段、供給/市場先における柔軟性、買い手によるLNG基地の権益の要求などを指摘した。 Excelerate社の登壇者は、世界のLNG需給見通しについて、2015、2016年まではタイトな状況が続くが、それ以降は、豪州、北米からのLNGにより緩和される、ただし、供給の増加分は容易に需要の増加に吸収されるため、さほど緩むことはないとの見方。また、非在来型ガスの開発には長い期間を要するため、在来型ガスの競合相手としてではなく、それを補完する役割になると予想。また、FLNG再ガス化基地が2012年には11基(ガス化能力1,170万トン/年)に増加する予定と紹介。メキシコ湾で計画中のFLNG液化基地プロジェクト(液化能力300万トン/年)の有用性について、陸上での大規模なLNG基地よりもコストが安い(トン/年あたり$550~600の建設費用)、建設期間が短い(投資最終決定より出荷開始まで44カ月)、周辺環境への影響が少ない、既存のパイプライン網へのアクセスが容易、安価な天然ガス価格、既存のLNG受入施設の活用が可能、規制枠組みが好意的、既に実証済み技術であり技術的リスクが少ないなどの点を指摘。 質疑応答では、豪州のLNG輸出事業のコストについて、移民の活用も含め高い労働力単価となることに加え、ロジスティックス上の課題もあり、コストの抑制は容易ではないとの見解。このため、20年間の長期契約と油価とのリンク(15%ディスカウント)による価格設定が必要とされるとのこと。LNG売買契約に関して、アジア市場では安定供給を確保する観点で買い手側からも長期契約への要望が強いこと、また、ガス価格の変動により契約条件の再交渉条項が付されているケースの多くは単に、市場環境の変動が生じた場合、双方が交渉の席に着くとだけ規定されており、実際の条件変更は買い手と売り手の力関係に左右されると説明。東南アジア地域のLNG輸入の拡大について、例えばマレーシアでは、豪州からLNGを輸入し、それを高く買い取る日本市場に転売することも目的の一つとしているとの指摘があった。⑤LuncheonandKeynoteDialogue(昼食・全体会合)[登壇者] Peter Voser, Chief Executive Officer, Royal Dutch Shell Shell社からの登壇者は、天然ガス産業の現状への評価および対処の方向性を中心に以下の趣旨を述べた。 世界の天然ガス需要が今後2050年までに2倍、3倍に増加するなど、安価でクリーンかつ経済に好影響を与える天然ガスの役割は今後さらに重要になる。また、シェールオイルも今後重要性を増す。米国では今後10年間に原油生産量が25%増加する可能性がある。天然ガスの発電部門、石油化学産業以外の活用分野として、運輸部門、特に、トラック燃料、バンカー燃料などにおける燃料転換が重要。また、米国ではGTLプロジェクトを実施する経済的合理性がある。 天然ガス産業の操業の安全性、環境問題については、公衆への啓発、伝達をさらに進め、誤った認識を正す必要がある一方で、強い規制と強制力を持った法制度も必要である。特に、水圧破砕は米国でこれまで60年間にわたり110万回も実施されており、帯水層に圧入物質が混入したケースはほとんど皆無である。圧入物質の公表も含めた透明性向上が不可欠である。水の使用量についても、その削減に努めているが、シェールガス開発において実際に使用する水の量は他のエネルギー源と比較しても少ない。メタンガスの漏えい問題*2については、IEAのレポートでは在来型ガスと比較して3~12%程度上回ると試算されている。漏えい量の抑制は経済的メリットもあり、これが最小限となるよう努めているが、まずは漏えい量について科学的な調査が必要である。現状では、最も悪いケースが産業界の基準とされてしまっており、産業界は自らの安全、環境基準を厳しくする努力をすべきである。エッセー橘.indd 622012/04/26 10:44:57622012.5 Vol.46 No.3エッセーOGMECK YMC[議長] Daniel Yergin, Chairman, IHS CERA[登壇者] John Hickenlooper, Governor, Colorado、John Kasich, Governor, Ohio コロラド州知事(民主党)は、石油ガス産業に対する掘削許認可の手続き緩和の重要性を指摘、コロラド州での実績(掘削許認可日数が100日から20日に減少)を説明。規制緩和が政策方針であることを示唆。一方、Uticaシェールプレイが位置するオハイオ州の知事(共和党)は、石油ガス産業の歴史が浅く、パイプラインの敷設も含めて網羅的な規制を現在準備中であることに言及。石油ガス産業を重要な産業と認めつつ、発展の初期段階にあるゆえ保護していく姿勢も明らかにした。連邦政府の規制との関係ではともに、州政府が石油ガス産業を規制する立場であると主張。産油ガス州政府が連邦政府をむしろ主導していくことの必要性も強調された。また、両知事とも、石油ガス産業が直面する環境問題に対して、科学的な根拠に基づいた正しい情報を伝達していくこと、そして、正しい情報に基づき正しい意思決定を行うことの重要性を重ねて指摘した。LNG輸出にも寄与、ただし、安全で環境保全に責任ある操業が必要であり、そのために、予見可能で時宜を得た公平な政府の介入が必要であるとの見解。 Williams社の登壇者は、天然ガスが、鉄鋼、農業、石油化学、発電、熱供給などさまざまな需要に寄与すると指摘。また、パイプライン事業がこうした産業を支える重要性も指摘。課題として、一つのパイプライン事業に複数の政府機関(引用した事例では33の機ふ関)が関与しており、敷の許認可の取得に時間(事例では18カ月)を要しているため、3,000坑が現在仕上げ工程待ちの状態とされているとし、規制権限の重複がボトルネックとなっている点を指摘。このため、敷設コストが上昇し、許認可政府機関が一つであるメキシコ湾大水深域では1マイルあたり170万ドルのコストで済むが、引用した事例では480万ドルのコストになると紹介。規制権限の統合化の必要性を強調した。 質疑応答では、NGLの市況について、今後数年間はパイプライン能力の不足により不安定となること、一方で、NGLの生産量は毎年3%ずつ自然に減少しており、市況がタイトになる可能性も指摘された。設せつ⑦EnergyandEconomicRevival(産ガス州知事を招いた全体会合)⑥NaturalGasandtheReindustrializ-ationofNorthAmerica(天然ガス中下流事業に関する全体会合)[議長] Atul Arya, Senior Vice President and Head of Research, IHS[登壇者] Alan Armstrong, President and CEO, Williams、Gregory Ebel, President & CEO, Spectra Energy、Martin Houston, Chief Operating Officer, BG Group plc BG社の登壇者は、世界の天然ガス需給について、2010年から2020年までに新たに24億トン/年の天然ガス供給が必要とし、タイトになるとの見通し。一方、米国のLNG輸出については、2014年のパナマ運河の拡張による運送ルートの短縮や既存LNG受入施設の活用(50%コスト削減が可能)などメリットが大きいと指摘。2020年までに4,500万トン/年の輸出量に達すると予測。また、LNG輸出によるヘンリーハブ価格(米国の市場ガス価格)への影響は、米国の天然ガス長期供給曲線の形状から小さいと評価。 Spectra社の登壇者は、パイプライン事業も含めた天然ガス中流事業での投資額は今後20年間で2,050億ドルの見通し、毎年12万5,000人の雇用、570億ドルの税収増に貢献すると説明。天然ガス産業は石油化学産業および<注・解説>*1: 3月26日、エネルギー省の報道官は、同省による分析(正確には今年1月に公表されたエネルギー情報局による1次分析の結果に基づく第三者による2次分析・評価)の完了時期について今夏の終わりまで遅れると言及。*2: 米国環境保護庁(EPA)は、石油ガス産業、とりわけ水圧破砕工程後の地表への排水抜き取り工程において、排水に溶け込んだ大量のメタンガスがVOC(揮発性有機化合物)とともに大気に放散されることを問題視。2011年7月、EPAは、排水からメタンガスなどを分離し、回収する装置の導入などを義務付ける新たな規制を提案。地球温暖化ガスの一つであるメタンガスの大気放散量の削減につなげることも狙い。当該規制案に対して一部の産業界からは、当該装置の普及が間に合わないので、現実的でない、前提となるメタンガスの放散量が過大評価されている、といった批判的な声も上がっている。EPAは規制案の最終策定に向け現在(2012年3月26日現在)作業中。63石油・天然ガスレビューエッセー橘.indd 632012/04/26 10:44:57CERAWeek 2012に参加してOGMECK YMC執筆者紹介市川 真(いちかわ まこと) 東京都八王子市生まれ。東京大学工学系大学院資源開発専修(修士課程)修了後、1984年より石油公団(2004年よりJOGMEC)勤務。現在JOGMECヒューストン事務所長。アマゾンのヘビーユーザーではあるが、北米からどんどん書店が消えていくのには心を痛めている。電子書籍に転向する潮時か。橘 雅浩(たちばな まさひろ)早稲田大学卒業後、1996年、通商産業省(現・経済産業省)入省。通商政策局、産業技術環境局等を経て、2009年6月よりJOGMECヒューストン事務所副所長。クルマ社会の当地でなまりきった体を元に戻すべく愛猫とのエクササイズにいそしむ。エッセー橘.indd 642012/04/26 10:44:58642012.5 Vol.46 No.3エッセー |
地域1 | グローバル |
国1 | |
地域2 | |
国2 | |
地域3 | |
国3 | |
地域4 | |
国4 | |
地域5 | |
国5 | |
地域6 | |
国6 | |
地域7 | |
国7 | |
地域8 | |
国8 | |
地域9 | |
国9 | |
地域10 | |
国10 | 国・地域 | グローバル |
Global Disclaimer(免責事項)
このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
PDFダウンロード1.7MB
本レポートはPDFファイルでのご提供となります。
上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。
アンケートの送信
送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。