ページ番号1006474 更新日 平成30年2月16日

石炭やシェールから天然ガスをどうやって取り出すの?― シェールガス生産のガスリークは事実上ゼロ ―

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レポートID 1006474
作成日 2012-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 技術非在来型
著者 伊原 賢
著者直接入力
年度 2012
Vol 46
No 4
ページ数
抽出データ 石炭やシェールから天然ガスをどうやって取り出すの?―シェールガス生産のガスリークは事実上ゼロ―石炭やシェールからの天然ガスの排出メカニズムを平易に解説します。1.ピークオイル論を打ち破る非在来型の油とガスの存在 1950年代にM. King Hubbertが唱えたピークオイル論は「原油の生産は資源量に制限される」ということでしたが、正しくなかったことが判明しました。長期的には資源は有限ですが、短中期的にはそうとも言えなくなったのです。 生産能力の限界に、筆者を含む技術者は挑戦しているところです。Hubbertが唱えたピークオイル論は米国陸上48州では適応していましたが、超大水深(例えば、ブラジルのサブソルト)での近年になってからの探鉱の大成功などが生産能力拡大に寄与している状況を見ると、ピークオイル論では説明に無理が生じます。テキサスA&M大のStephen Holditch教授が提唱した「資源量のトライアングル」は、地下から取り出しにくい「非在来型のガス」の資源量が豊富にあることを示しています(図1)。しかし、非在来型の油やガスは、その生産予測も難しいと技術の進歩世界全体の原油の残存確認可採埋蔵量の支配埋蔵量へのアクセスが縮小する投資機会に対応した石油開発の対象は、在来型から非在来型資源へシフトその開発はどのような技術トレンド?資源量に限界地下から取り出しやすい1,000md在来型ガス10md資源量が豊富地下から取り出しにくいタイトガスコールベッドメタン0.1mdシェールガス非在来型ガス0.001mdメタンハイドレート国際石油会社が完全にアク国際石油会社が完全にアクセス可能な埋蔵量セス可能な埋蔵量7%7%ロシア系企業の埋蔵量ロシア系企業の埋蔵量16%16%国営石油会社の埋蔵量国営石油会社の埋蔵量65%65%国営石油会社の権益持ち分(埋蔵量)国営石油会社の権益持ち分(埋蔵量)12%12%出所:2008 PEC Upstream Competition Service 資料を基にJOGMEC 石油調査部作成採算コスト(ドル/バレル)超大水深超大水深(1,500m?)(1,500m?)氷海氷海大水深大水深(300?1,500m)(300?1,500m)オイルシェール採油増進法重質油生産済み中東・OPECの原油中東外の在来型原油8070605040302010001,0002,0003,0004,000可採埋蔵量(10億バレル)5,0006,0001md=9.87×10-16m2 ※md (ミリダルシー)=「浸透率」 の単位 (岩石中のガスの流れやすさを表す)出所:IEA, SPE資料よりJOGMEC 石油調査部作成出所:SPE 103356論文を基に作成図1在来型の油やガスの支配状況がもたらす非在来型資源へのシフト59石油・天然ガスレビューセわれています。よって、米国発のシェールガス革命も10年前にそのことを予測する者はほとんどいませんでした。 近年、石油開発をめぐる環境の変化には、油価の高値変動、イージーオイル(在来型油田)の減退、インド・中国等の新規需要市場の登場、技術者の人材入れ替え、低炭素化志向、資源ナショナリズムの台頭などが挙げられます。このような環境変化の下では、国営石油会社(NOC)の支配力と、国際石油会社(IOC)の力と技術トレンドとの関係は、図1のようにまとめられると筆者は考えています。 2010年の世界の石油需要は、日量8,700万バレルでした。2019年の需要は日量9,900万バレルと予想されています。既存の在来型油田の減退を考えれば、単に日量1,200万バレルを積み増せばよいというわけではなく、日量4,700万バレルの新規生産が必要になると見られています(IEAシナリオに基づく2011年SPE会長Alain Labastie氏談)。この生産能力拡大へのチャレンジの努力は大変なものです。 生産能力を新規で日量4,700万バレル断層在来型ガス長い時間をかけてガスが移動水石油系炭化水素の熟成度の上限石油系炭化水素の熟成度の上限シェールガス(残留したガス)出所:JOGMEC作成シール(帽岩)貯留岩石油根源岩図2在来型ガスとシェールガスの生成イメージ 出所:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より写左が石炭(瀝青炭)、右がシェール(頁岩)積み増すためには、氷海や大水深での石油開発に加え、非在来型の油やガスの起源と生産技術をしっかり理解した上で、技術力・投資・人的資源の投入が必須となるはずです。 非在来型の石油やガスは、経済的な炭化水素量を発生し得る岩石である「石油根源岩」がその起源です。「石油根源岩」は藻やプランクトンなどの泥質物質からできています。有機物が量的に富むと、石すき間の多油系炭化水素が生成されます。隙い岩石の中の貯留層に集積され取り出しやすい「在来型」に比べ、「非在来型」は、ガスの流れやすさが劣る岩石に残留または吸着した状態にあるため、地下に穴を開けた状態で自然に地上に噴き出てくる「在来型」と違って、地下から取り出しにくいのです。 岩石内の流れやすさを改善するため、岩石中に沿って穴を通したり(「水平坑井」という技術)、人工的に割れ目をつくったり(「水圧破砕」という技術)しなければなりません(図2)。 図1に示すような石油開発をめぐる環境の変化が、石油根源岩の有機物から生成された油やガスを地上に取り出せるように、水平坑井や水圧破砕といった技術の進歩をもたらし、非在来型資源の埋蔵量の増加につながっているのです。 本稿では、貯留層の孔隙にガスが圧縮されて貯留されている「在来型ガス田」に比べ、複雑なガスの排出メカニズムを持つコールベッドメタン(CBM)とシェールガスについて、図を使って平易に解説したいと思います。2.コールベッドメタン(CBM)/炭層メタンガスの排出メカニズム メタンは石炭に包摂される形で存在します。なかでも瀝青炭は表面積が大きくメタン吸着能力に優れると言われます。メタンの石炭からの脱着挙動はガス脱着602012.7 Vol.46 No.4ネ線によって説明できます(図3)。石炭層を飽和している水をくみ上げることにより、石炭層の圧力が減じ、ガスの脱着が始まる圧力に達した時、メタンガスが遊離し始めるのです。 減圧を続けると経済限界に達するまで圧力差に応じたメタンを遊離し続けます。遊離したメタンガスは石炭マトリクス内を拡散し、クリートに達するとクリート内を流動して生産井に移動します。クリートは、石炭化の過程における脱水と脱ガス作用により石炭が収縮することによって形成されるのです(図4)。クリートとは、「石炭層固有の自然亀裂システム」のことです。その幅は2~25mm程度です。石炭内に吸着しているメタンガスは90%、クリートに吸着しているガスは8%程度です。クリート内にも吸着せずに遊離しているメタンガスが存在することもありますが、せいぜい全体の数パーセントとごく僅かです。埋蔵量評価においては、通常は吸着ガスを中心に扱い、遊離ガスは無視されることもあります。と生産井の中のガスと水の流れのイメージを図5と図6に示します。 クリートと井戸をつなぎ井戸の流体排出領域を広げる目的で、水圧破砕が実施されることもあります。石炭層はもろく壊れやすいために生産に伴って石炭の微粉が産出されることも多いです。石炭の微粉は坑底のポンプや地上設備の磨耗、閉塞の原因にもなり得るため、坑底圧と石炭層の圧力差はあまり大きくせず、設備にはフィルターを設置する等の対策が採られます。石炭層のガス吸着能力と圧力との関係曲線初期の石炭層の圧力水抜きガスの脱着が始まる圧力出所:JOGMEC作成図3コールベッドメタンの排出メカニズム クリートでは、メタンガスが不動ガス飽和率を超えるまでは水だけが移動し、その後は、メタンと水の二相流動となります。石炭層のガスの流れやすさは圧力により変化します。減圧によりクリートが閉じ合わさると「ガスの流れやすさ」は低下すると考えられ、一方メタンの遊離により石炭は収縮するため、クリートは広がると考えられています。水が石炭層を飽和しているCBMの生産プロファイル 掘削流体のダメージを受けやすく、かつ壊れやすい石炭の特性と、CBM開発対象層の深度が比較的浅く圧力が低いことを考慮した、アンダーバランス掘削*も適用されています。掘削流体としては、泥水の他に地層水や空気も使われます。深度が浅く掘削期間が短いために、移動が容易なトラック搭載式の掘削リグも採用されています。 CBM生産井のガスの生産能力について色のないは、在来型ガス田の生産井と遜坑井(生産レート:日量1,000万ft3以上)も時にはありますが、在来型ガス井の1/10そんGasWaterTime石炭の割れ目(クリート/cleat: 炭理)最初は水で飽和されている① 石炭層の圧力低下に伴いメタンが石炭層表面から脱着② 脱着したメタンが石炭の孔(cid:20273)内を拡散しクリートへと移動③ クリート内を圧力差により移動し、坑井内に流入Peak RateFlow Rateクリート内の圧力差に伴うガス流動は在来型ガス田と同様ですが、「石炭層からのガスの脱着」および「脱着したガスの拡散」は在来型ガス田では見られない現象です。ガスがガスが石炭から脱着石炭から脱着石炭出所:JOGMEC作成Dewatering出所:JOGMEC作成図4石炭層から脱着し、流れるガスのイメージ図5典型的なCBMの生産プロファイル61石油・天然ガスレビューE 坑井間隔が2倍に広がると、フィールド全体の回収率は低下する(63%→49%)。・ 吸着ガス量や層厚は大きいほど生産性はよい。水の産出レートはあまり変わらない。3.シェールガスの排出メカニズム貯留層特性:泥岩の一種で薄片状にはがれやすい(粘板岩、黒板のよう)。数百フィートの層厚や数百万エーカーの広範囲な頁岩が天然ガスの貯留層になるケースがひと握りの堆積盆地で見られる。地温上昇によって頁岩中の有機物からガスが発生する(水の流入やバクテリアの存在も生物起源のガス発生に関与)。貯留層に十分な熱供給があったため乾ガス主体で不純物も少ない(液体分は分解済み)。すなわち、「石油根源岩中の有機物中に残留/吸収されたガス」と定義できよう。生産技術:水圧破砕と水平坑井(1990年代半ばより世界中に広がり、在来型貯留層・石炭層・タイトガスサンド・シェールガスに適用)。例えば1999年、米国テキサス州のBarnettシェールにおいて4坑だった水平坑井は、2004年末までに744坑に激増した(水平坑井の掘削仕上げコストは垂直井の2倍であったが、1坑あたりの生産量と可採埋蔵量は3倍と報告)。これは、特に水平坑井の仕上げ技術(多段階フラクチャリング:Multistage Stimulation)の進歩によるところが大きい(図7)。水圧破砕の技:水圧破砕で形成されたフラクチャーを半永久的に支持するため、プロパントと呼ばれる砂粒状の物質を徐々に高粘性のジェルに混ぜて圧入します。フラクチャー内にとどまったプロパント(砂)がフラクチャーを支持し完全に閉じるのを防ぎます(図8、図9)。フラクチャーの長さや幅をある程度維持し、62~1/1,000程度と低いのが一般的で、経済性を確保するためには数多くの生産井が必要になります。CBMの開発対象となっている石炭層の深度はせいぜい1,000m程度までであり、それ以深の石炭層では低浸透率であることが開発のハードルの一つになっていると考えられます。<CBMの生産挙動シミュレーター(カナダCMG社のGems)による試算傾向>・ クリートの浸透率が高いほど、ガスの生産性はよい。・ クリートの孔隙率が高いほど、水の産出レートが上昇し、ガスの生産性は低下する。・ 坑井間隔は狭いほど採取されるガスの量は少ないが、ガスのピークレートは早く現れる。水ケーシングケーシングチュービングチュービングセメントセメントメタンガス粘土岩粘土岩帯水砂岩帯水砂岩粘土岩粘土岩帯水砂岩帯水砂岩粘土岩粘土岩シェールシェール石 炭石 炭ポンプポンプシェールシェール出所:JOGMEC作成図6CBM生産井の中のガスと水の流れのイメージ水圧破砕水圧破砕(5段階)(5段階)水平水平坑井坑井出所:SPE 107053を基に作成図7水平坑井と多段階の水圧破砕のイメージ2012.7 Vol.46 No.4?200台のトラックがフラクチャリング流体用の水を運ぶトラック上のポンプでフラクチャリング流体(水、砂、化学物質)をガス井に圧入ガス井から天然ガスを生産ガス井から回収された水は、地表のピットにためられ、水処理プラントへトラックで搬送ピットガスの貯蔵タンク天然ガスはパイプラインで市場へ帯水層ガス井0 フィート1,0002,0003,0007,000シェールからのガスが割れ目を通ってガス井へ流れる砂は人工的につくられた割れ目が閉じないように支える割れ目水、砂、化学物質の混相流割れ目マーセラス・シェールガス井はシェール層に沿って水平に掘られるシェールはガス井へ圧入されたフラクチャリング流体によって段階的に破砕される出所:米国環境保護局(EPA)資料を基に作成図8水圧破砕におけるガスとフラクチャリング流体の動き層圧力の低下よりもフラクチャーの閉塞によるところが大きいのです。 フラクチャリング流体の水は、ガスの本格生産開始前の数日間だけ、10~30%が地表のピットに戻ります。水にはガスも含まれています(図8)。しかし、ガスの生産開始後はガス井がその役目を終える十数年間はガスが大気にリークすることはありません。ピット中のガスの回収自体も極めて簡単であり、ガス井からのガスの生産総量に占めるガスリークの量は事実上ゼロです。シェールガスについては、「ライフサイクルでは石炭並みにか、それ以上に温室効果ガスが出る」としたレポートや考え(例えば、英科学誌NATURE Vol. 482, 2012年2月9日)も出ているようですが、石油や天然ガスを地上に出す技術(石油工学)を理解しているとは言い難く、石油工学を専門とする筆者としては、理解し難い主張に思えます。実用化後60年以上の歴史を持つ水圧破砕技術で目立った環境問題の報告がなかった歴史がそれを証明しています。 フラクチャリング流体用の水を運搬するトラック代も無視できません。その意味でも、リサイクルは水圧破砕のコスト削減につながります。本格生産開始前のガス井から回収された水は、地表のピットにためられますが(図8)、坑井元の簡易的な水処理装置で水をある程度浄化し、再利用する技術も実用化されています(Halliburton社の水処理技術Clean Wave)。<生産量と可採埋蔵量増に必要な技術サイクル>出所:JOGMEC作成図9多段階水圧破砕(図では3段階)によるガスや油の排出イメージガスの流路を確保するには、プロパントの分布と圧入流体に工夫が必要です。巨大なシェールガス層は10年以上生産しても貯留層圧力の低下は小さいとされます。個々の坑井における圧力損失は貯留63石油・天然ガスレビュー@水圧破砕の理論的根拠については、水圧破砕を施すことによって、どの程度SRV(Stimulated Reservoir Volume:図11)を拡大できるかにかかってくるでしょう。 シェールガスを開発するオペレーターには、以上の技術サイクルの理解と適切な実践が求められます。付録:CBMとシェールガスの開発技術の比較<SPE 103514 Coalbed- and Shale-Gas Reservoirs: JPT February 2008> 米国におけるCBMやシェールガスからの天然ガス生産は年2.7Tcf(全体年生産量18Tcfの15%)。CBM 1.7Tcf(4万坑、 20堆積盆地)、シェールガス1.0Tcf(4万坑、 5堆積盆地Barnettシェール、Appalachian盆地ほか)。 米国以外のCBM(オーストラリア、 カナダ、中国、 インド)、米国以外のシェールガス(なし) 世界全体の資源量(CBM 9,000Tcf、 シェールガス1万6,000Tcf) Kawata & Fujita 2001による【貯留層特性】 石炭層は有機物が50%を超える堆積岩。一方、シェールガスは有機物が50%未満、堆積環境において有機物が地化学的ないしバクテリアによりメタンガスに変成、ガスは孔隙中のガスと頁岩に吸着しているガスの2種類。・ CBMは炭層に吸着しているガスであり炭層に垂直に交わったフラクチャー/クリート(cleat:炭理)がガスの流路となる。シェールガスは浸透性のよい砂・シルト・人工的なフラクチャーを通って生産される。・ シェールガスのガスはCBMより層厚が厚く(30~300ft)、吸着しているガス密度は10m3/トン未満とCBMより低く、孔隙中に多くのガスを含む。浸透率はCBMよりかなり低いため、商業生産には長い仕上げ区間に多段階のフラクチャリングを施す必要がある。【絶対浸透率】 シェールガス 0.001~0.05md、CBM1md以上(1md=9.87 × 10-16m2)。・ CBM・シェールガス両方とも連続したガスの集積体(ガス水界面が存在しない)である。ガスの集積体を見つけるのはさほど難しくないが、商業生産に見合う個所を特定するのは難しい。水圧破砕水圧破砕水平坑井水平坑井在来型Stimulated Reservoir Volume(SRV)Stimulated Reservoir Volume(SRV)非在来型(シェール) まず地化学検層データからシェールの鉱物組成(炭酸塩、黄鉄鉱<Pyrite>、粘土、石英、Total Organic Carbon/TOC)を分析します。岩石中のTOCを知ることで、シェールの孔隙率と水飽和率が分かり、シェールの浸透率とシェール中のガス量(孔隙内とシェールの有機物に吸着の2種類)の推定につながります。 図10に示すように、孔隙内のガスと吸着したガスは、ほぼ同程度存在します。ただし、シェール中の有機物はガス源のみならずガスの吸収媒体でもあることに留意しなければなりません。せん 地化学検層データからは粘土分のタイプも分かり、それが圧入流体の仕様を決めるのに役立ちます。次にElectrical ImagingとSonicデータからフラクチャーを貯留岩元来のものと掘削上できたものに分類し、シェール中で最も浸透率の高い個所を探し当てます。そこに穿とフラクチャリングを施し高生産レートを目指します。地層圧力の計測も必要です。水平掘りや傾斜掘り、MWD(Measurement While Drilling)、ガンマ線検層、Rotary Steerable System他の掘削・検層技術を適用し、貯留岩特性を把握し、貯留岩内の流体挙動シミュレーションを実施し、その結果を坑井刺激法に的確に反映させ、ガスの生産量および可採埋蔵量増に結びつけます。孔こう孔隙内のガスシェール体ガス中の全シェールの有機物に吸着したガスシェールの圧力%100ガスの回収率0出所:JOGMEC作成出所:JOGMEC作成図10孔隙内のガスと吸着したガス:圧力と回収率の関係図11SRVのイメージ642012.7 Vol.46 No.4X生産と同じ挙動を示す。ガスはフラクチャーを通って生産されるため、時間経過の生産減退率はさほど大きくない。・ CBMやシェールガスの生産挙動の特徴は、同じ地域であっても生産性に幅がある。この要因は同じように仕上げられた坑井でも、フラクチャーの長さや幅に違いがあるためと解釈されている。坑井によって生産性に大きなばらつきがあるのがCBMの特徴であるが(図12)、これはクリートの発達度合いや、その幅の違いに起因する浸透率の局所的な変化がばらつきの主因であると考えられる。【埋蔵量と資源量の分布】 不均質貯留層であり、データ収集・分析に不確実性があるため埋蔵量評価は難しい。・ CBMの埋蔵量は、石炭層の層厚、面積、嵩密度(低い)、炭層中のガス吸着量を乗じたもの。CBMの場合、貯留層圧が低くなるほど脱着するガスの量は増える。・ シェールガスの場合、吸着しているガスと孔隙中に含まれるガスである。【評価戦略と商業性】 商業プロジェクトの生産データ(CBM7件、シェールガス5件)。周辺鉱山データの分析が大事。十分に間隔を開けた垂直評価井から得られた貯留層データの分析(特に浸透率の変化)。層が複数ある場合、まず複数坑井パイロットテストによる水抜きを十分に行い、その後水平坑井を適用するのが有効。CBMパイロットテストの坑井間隔は80エーカー(324km2)内で、テスト期間は半年から1年と言われる。カナダアルバータ州Horseshoe Canyon石炭層のように最初から水の産出がない場合は、評価井の生産レートで開発できる(水の産出のないBarnett、Ohio、Lewisシェールでも同様)。【技術トレンド】 水平掘り、坑井刺激、水処理、貯留層特性(フラクチャーの定量化、浸透率や吸着ガス量の把握)、掘削(コスト削減、1020304050607080Time,monthsMscf175,000150,000125,000100,00075,00050,00025,000Cumulative gas production00出所:JOGMEC作成図12アラバマ州BlackWarrior盆地のCBM1平方マイルに掘られた23坑井の累計生産量の幅 【有機物】 シェールガス数パーセント~50%、CBM50%以上。・ シェールガスはCBMに比べ、エタン・LPG・NGL(天然ガス液)成分を含むことがあり、発熱量は若干高め。【CBMやシェールガスの評価に使われるデータ】 ガス量、岩石中の有機物の熱熟成度、有機物起源の炭素量、ガス組成、コア分析、岩石中のガス吸着量、鉱物分析、ビトリナイト反射率(石炭層の成熟度)、熱量、石炭を構成する顕微鏡スケールの有機物質マセラル(有機物の熟成度の指標として広く用いられ、一般に、埋没深度が深くなって地温が上昇するのに伴い、あるいは地質時代が古くなるほど増加す密度、検層、坑井の圧力る)の分析、嵩解析、3次元震探。 例えば、ガンマ線検層の反応が通常の(ガスを残留しない)シェールに比べ、高い(粘土分の多寡に依存しない)。かさ【掘削、仕上げ、生産法】 最初は垂直井、深度150~1,000mではUnderbalanced rotary-percussion(15m/時と高い掘進率)、1,000m以深では低比重泥水を用いた通常のロータリー掘削、坑底機器の進歩や掘削コストの低減から水平掘りに注目が集まる。・ 多くのCBMや幾つかのシェールガス(ミシガン盆地のAntrimシェール)は当初、水飽和状態にあるため、生産当初に多くの水と少量のガスを産出。その後、貯留層圧が低下し、ガスがマトリクスから脱着しガスの生産量が増える。ガス生産は一定期間ピークを維持し、その後、近隣坑井からの干渉や浸透率を加味しながらガス生産量は減退していく。・ 逆に水飽和状態にない、ドライタイプのCBMやシェールガスは在来型のガ65石油・天然ガスレビュー?ス掘り)、仕上げ(低比重セメンチング、貯留層へのアクセス、多段階フラクチャリングの効果診断)、生産(人工採油法/水処理、採油増進法)・ 米国以外のCBM開発、米国外のシェールガス開発なし(西カナダ有望:資源量1,000Tcf ?)・ CBM・シェールガス開発とCCSとの組み合わせ(CO2を吸収すると同時にメタンガスを脱着させるアイデア:ただし、石炭層がCO2を吸収すると膨潤し浸透率は下がるという技術課題あり)。このように石炭層に種々のガスを圧入し、圧入するガスとメタンガスとの石炭への吸着特性の違いを利用してCBMの増産を行う技術開発も試みられている。(伊原 賢) <注・解説>* : 掘管と地層の間(アニュラス)の圧力を地層の圧力よりも低くする掘削方法【参考資料】1. JOGMEC石油・天然ガス資源情報「非在来型天然ガス(タイトガスサンド、コールベッドメタン、シェールガス)開発技術の現状」、2009年4月15日NHKテレビ 視点・論点「天然ガス埋蔵量の急増」、2011年9月20日、伊原賢 出演2. 3. 日刊工業新聞書籍「シェールガス争奪戦」、2011年9月30日、伊原賢 著4. 月刊科学誌「Newton」2012年1月号、大特集 電力とエネルギー、伊原賢 協力5. JOGMEC石油・天然ガス資源情報「シェールからのガスや油の生産技術を掘り下げる」、2012年2月17日662012.7 Vol.46 No.4
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2012/07/20 [ 2012年07月号 ] 伊原 賢
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