ページ番号1006476 更新日 平成30年2月16日

中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図

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レポートID 1006476
作成日 2012-07-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 企業探鉱開発
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2012
Vol 46
No 4
ページ数
抽出データ JOGMEC石油調査部竹原 美佳中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図はじめに 近年、東アフリカ深海や内陸部など、これまでほとんど生産が行われていない地域で大型の油ガス田や有望構造が発見されており、今後サブサハラの産油ガス地域は大きく塗り替わる可能性がある。 東アフリカではモザンビーク深海2鉱区で巨大ガス田が発見された。推定埋蔵量は2鉱区を合わせて100兆立方フィート(Tcf)超と見られている。また東アフリカの陸域では英中小独立系石油企業のTullow Oilが東アフリカ大地溝帯のウガンダとケニアで油田を発見した。一方、西アフリカでは高油価の追い風もあり深海の探鉱が活発化している。ガーナ深海油田の発見を受け、近隣のリベリアやシエラレオネ、さらに対岸の仏領ギアナなど南米深海域において有望構造が発見されている。 また、ブラジル深海プレソルトの巨大油田発見を受け、対岸のアンゴラ南部深海においてもプレソルトへの期待が高まっている。2010年の入札には大手IOC(International Oil Company)が軒並み参加した。探鉱は始まったばかりだが、米中小独立系のCobaltが有望構造を発見した。 南アフリカにはシェールガスのポテンシャルがある。2011年4月、米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は同国におけるシェールガスの技術的回収可能量を世界第5位の485Tcfと評価した。既にカルー堆積盆でShellなどが技術協力ライセンス(TCP)を結んでいるが、現在同国は環境への影響を評価する間、シェールガスの探鉱を禁じている。ただ、経済成長や雇用促進への期待から探鉱解禁への動きがある模様である。 東アフリカ深海で発見されたガス田はLNG液化事業化が計画されており、日本にとり調達多様化、リスク分散につながる新たな供給候補が出現した。 サブサハラフロンティアでは中小独立系企業が100社以上活動している。本稿で紹介するサブサハラフロンティアの多くはいわゆるメジャーズではなく、これらの中小独立系石油企業が開拓した。ナイジェリアやアンゴラなどの老舗産油ガス国はお得意様(メジャーズ)によい席(鉱区)を押さえられている上、入場料が相対的に高く、新規参入は容易ではないが、フロンティアではこれら中小独立系企業の資産あるいは企業の買収により、探鉱から開発に至るさまざまなステージで参入する機会がある。 本稿では、サブサハラフロンティアで最近発見のあったホットエリアの状況(図1)ならびに同地域で活躍する中小独立系をめぐる買収の動きについて概観する。1. 膨張する東アフリカ深海の巨大ガス田 東アフリカのモザンビーク深海でガス田の発見が続いている。現在評価中で埋蔵量が確定したわけではないが、モザンビーク北部深海Rovuma堆積盆では米Anadarko Petroleum(以下、Anadarko)がオペレーターを務めるArea1鉱区で複数のガス構造が発見されており、Anadarkoは推定埋蔵量を50~60Tcfと表明した。Area1に隣接するArea4鉱区(伊Eniがオペレーター)においても複数のガス構造が発見されており、推定埋蔵量は47~52Tcfとされている。 また、隣国タンザニア深海タンザニア堆積盆地におい31石油・天然ガスレビューアナリシスツいに掘り起こされたエジプト東アフリカ大地溝帯 アルジェリアリビアガーナ深海Jubilee発見からシエラレオネ、リベ西サハラリア深海、さらに南米へモーリタニアガボンガボンコンゴコンゴ ルワンダルワンダコンゴ(民)コンゴ(民)ケニアケニアブルンジブルンジタンザニアタンザニアアンゴラアンゴラナミビアナミビアザンビアザンビアマラウイマラウイジンバブエジンバブエモザンビークモザンビークボツワナボツワナコモロコモロマダガスカルマダガスカルスワジランドスワジランド南アフリカ南アフリカレソトレソトスーダンスーダンエリトリアエリトリアジブチジブチエチオピアエチオピアウガンダウガンダソマリアソマリアナイジェリアナイジェリアカメルーンカメルーン中央アフリカ中央アフリカベナンベナントーゴトーゴマリマリニジェールニジェールチャドチャドブルキナファソブルキナファソカーボベルデカーボベルデガンビアガンビアセネガルセネガルギニアビサウギニアビサウギニアギニアシエラレオネシエラレオネガーナガーナコートコートジボワールジボワール赤道ギニア赤道ギニアサントメプリンシペサントメプリンシペリベリアリベリアスリナムスリナムギアナギアナガイアナガイアナブラジルブラジルブラジルの次はアンゴラ深海プレソルト?南アフリカシェールガスへの期待膨張する東アフリカ深海の巨大ガス田出所:JOGMEC作成(編集の都合上、アフリカと南米を寄せています)図1本稿で紹介する主なサブサハラフロンティア地域 50 - 60+Tcf50 - 60+Tcf出所:Anadarko(2012年3月、Golfinho構造の発表前)に加筆図2Area1の推定埋蔵量推移て英British Gas(以下、BG)がオペレーターを務めるBlock1・4で推定埋蔵量5Tcf規模のガス田が発見された。また、ノルウェーStatoilがオペレーターを務めるBlock2で推定埋蔵量9Tcf規模のガス田が発見された(図3、表1)。(1)モザンビーク深海2鉱区における巨大ガス田発見【モザンビークRovuma offshore Area1】 Rovuma offshore Area1はモザンビーク北東沖合、タンザニアとの国境にあるRovuma堆積盆地に位置し、最大水深2,500mの大水深鉱区である。 オペレーターはAnadarkoで2006年12月、モザンビーク鉱物資源省と利権契約を締結した。現在Anadarkoは36.5%の権益を保有している。パートナーは三井物産が20%(2008年2月、Anadarkoから20%権益を取得)、インドのVideoconとBharat Petroleumがそれぞれ10%(2008年10月権益を取得)、米Cove Energyが2009年9月、権益8.5%を取得した(後述するがCove Energyは自社を売却、英蘭Shellとタイ国営PTTによる買収合戦が展開されている)。またモザンビーク国営ENH(Empresa Nacional de Hidrocarbonetos de Mozambique)が権益15%を保有している。 Anadarkoは2009年12月から掘削を開始し、これまでにWindjammer、Barquentine、Lagosta、Tubarao、322012.7 Vol.46 No.4アナリシスamarao、Golfinho構造でガスを確認している(貯留層はいずれも第三系砂岩層)。発見井のBarquentine-1ではネットペイ127mのガス層が確認されている。Area1の推定埋蔵量は当初5Tcf程度とされたが、その後の追加発見により、現在は50~60Tcfに上方修正されている(図2)。【モザンビークRovuma offshore Area4】 AnadarkoのArea1鉱区の東側でArea1同様、Rovuma堆積盆地に位置しており、最大水深2,500mの大水深鉱区である。 オペレーターはEniでAnadarkoと同じ2006年12月、モザンビーク鉱物資源省と利権契約を締結した。現在Eniは70%の権益を保有している。パートナーはポルトガルGalp、韓国Kogas、ENHである。これまでにMamba South、Mamba North、Coral構造でガスが確認されている(貯留層はいずれも第三系砂岩層)。発見井のMamba South1(水深1,585 m)では第三系(漸新世)で212mのガス層が確認されている。Area4の推定埋蔵量は当初15Tcfとされたが、その後の発見を受け現在は47~52Tcfに上方修正されている。【モザンビーク深海ガス田発見鉱区周辺の状況】 モザンビークにおけるガス発見鉱区南方にはArea2~6鉱区が設定されており、Area2および5はStatoilがオペレーターを務め、Area3と6はマレーシア国営Petronasがオペレーターを務めている(表2)。パートナーはいずれもENHで10%の権益を保有している。これらの鉱区では商業量の発見はまだない。(2)タンザニア深海におけるガス田発見【タンザニアBlock1、4】 タンザニア南部沖合Mafia堆積盆地ならびにモザンビークで発見のあったRovuma堆積盆地に位置しており、最大水深3,000mの大水深鉱区である。英中小独立系のOphir Energy(以下、Ophir)が2005年10月、PS契約を締結ShellShellBlock 12Block 12ShellShellBlock 11Block 11ShellShellBlock 10Block 10ShellShellBlock 9Block 9PetrobrasPetrobrasBlock 8Block 8Ophir EnergyOphir EnergyBlock 7Block 7PetrobrasPetrobrasBlock 6Block 6ZafaraniZafaraniStatoilStatoilBlock 2Block 2BGBGBlock 1Block 1BarquentineBarquentineWindjammerWindjammerMamba NorthMamba NorthCamaraoCamaraoMamba SouthMamba SouthLagostaLagostaTubaraoTubaraoIndian OceanPetrobrasPetrobrasBlock 5Block 5BGBGBlock 4Block 4PwezaPwezaChewaChewaBGBGBlock 3Block 322,,000000mm11,,000m000m500m500mTANZANIASONGO SONGOSONGO SONGOMOZAMBIQUE25050100kmAnadarkoAnadarkoAREA 1AREA 1EniEniAREA 4AREA 4StatoilStatoilAREA 2AREA 2StatoilStatoilAREA 5AREA 5PetronasPetronasAREA 3AREA 3PetronasPetronasAREA 6AREA 6出所:JOGMEC作成図3東アフリカ深海のガス田発見鉱区と周辺鉱区33石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図\1モザンビーク、タンザニアでガス田が発見された主な深海鉱区モザンビーク沖合深海沖合深海Rovuma Offshore Area1Rovuma Offshore Area4鉱区事業者米Anadarko*三井物産国営ENH *オペレーターインドBharat PetroleumインドVideocon英Cove Energy2,500m2010年第三系砂岩層24~50Tcf最大水深ガス田発見貯留層推定埋蔵量出所:各種情報に基づきJOGMEC作成36.5%20.0%15.0%10.0%10.0%8.5%伊Eni*ポルトガルGalpENH韓国Kogas2,500m2011年第三系砂岩層47~52Tcfタンザニア沖合深海Block2Statoil*ExxonMobil60%40%65%35%沖合深海Block1、4英BG*70.0%10.0% 米Ophir Energy10.0%10.0%3,000m2011年3,000m2012年第三系砂岩層下部白亜系砂岩層5Tcf9Tcf表2モザンビーク深海ガス田発見周辺鉱区鉱区名オペレーターパートナーRovuma Offshore Area 2ノルウェーStatoilRovuma Offshore Area 5StatoilRovuma Offshore Area 3マレーシアPetronasRovuma Offshore Area 6Petronas90%90%90%90%ENHENHENHENH10%10%10%10%契約時期2006年6月2006年6月2009年4月2009年4月出所:各種情報に基づきJOGMEC作成した。BGが2010年5月に60%参加、オペレーターを務めている。2011年にBlock1のChewa構造ならびにBlock4のChewa、Pweza構造(貯留層は第三系砂岩層)でガスを確認した。発見井のChewa1井は中新世砂岩層で27mのガス層が確認されている。推定埋蔵量は5Tcf程度と見込まれている。【タンザニアBlock2】  タンザニア南部沖合タンザニア堆積盆地にあり、水深は1,000~3,000mの大水深鉱区である。オペレーターのStatoilが2007年4月、PS契約を締結した。現在Statoilは65%の権益を保有している。パートナーは米ExxonMobilで2010年3月に35%参加した。タンザニア国営TPDC(Tanzania Petroleum Development Corp.)は商業開発の段階で10%権益を取得する権利を有している。本鉱区では下部白亜系Neocomianで複数の有望構造が確認されている。2012年2月、Statoilは探鉱井Zafarani-1(水深約2,500m)でガス層を発見、さらに6月にはZafarani南方16kmに位置するLavani構造でガス層を確認した。本鉱区の推定埋蔵量は現在9Tcf程度と見込まれている。【タンザニア深海ガス田発見鉱区周辺の状況】 発見鉱区周辺ではBlock3およびBlock5~12鉱区が設定されている。Block3はBGがオペレーターを務め 、Block5、6、8はブラジル国営Petrobrasが、Block7はOphir が、Block9~12はShellがオペレーターを務めている(表3)。これらの鉱区では商業量の発見はまだない。Shellが2003年に取得したBlock9~12は探鉱が進んでいない。商業量の発見が得られた場合ザンジバル自治政府とタンザニア政府との間で配分をめぐり係争となる可能性がある。342012.7 Vol.46 No.4アナリシス\3タンザニア深海ガス田発見周辺鉱区Block 3Block 5Block 6Block 7Block 8Block 9Block 10Block 11Block 12オペレーターBGブラジルPetrobrasPetrobras英Dominion(米Ophir Energy子会社)Petrobras英蘭ShellShellShellShell60%50%50%80%100%100%100%100%100%出所:各種情報に基づきJOGMEC作成パートナーOphir Energy ShellShellUAE Mubadarea40%50%50%20%契約時期2006年11月2004年16月2006年12月2007年15月2012年11月2003年16月2003年16月2003年16月2003年16月2. ついに掘り起こされた東アフリカ大地溝帯 東アフリカ陸域では英中小石油独立系石油企業のTullow Oil(以下、Tullow)が東アフリカ大地溝帯の東側と西側に広がるリフト堆積盆に着目し、これまで商業量の発見がなかったウガンダとケニア陸上でそれぞれ商業規模の油田を発見した(表4)。ウガンダの油田は既に開発段階に入っている。これまで原油生産がなかったウガンダは15万~20万バレル/日程度の産油国となる見通しである。20万バレル/日という量は日本の石油消費量445万バレル/日(2010年、BP統計)の4%に過ぎないが、ウガンダにとっては政府収入が大幅に増加する転機となる。ウガンダは農産物等の輸出を行っており、2011年の輸出収入は推計で約26億ドル、政府支出は約34億ドルである。契約条件や油価変動リスクを精査したわけではないが、開発が順調に進めばウガンダ政府の収入は大幅に増加する。またケニアで発見された油層はウガンダの規模を上回っていると期待が高まっている。(1) Tullow他、ウガンダのアルバートリフト堆積盆で油田開発へ ウガンダで油田が発見されたのは東アフリカ大地溝帯(Great Rift Valley)の西側に広がるアルバートリフト堆積盆である。アルバートリフト堆積盆はウガンダとコンゴ民主共和国の両国(スーダンとウガンダの国境付近からアルバート湖を経てエドワード湖まで南北約500km、東西は最大約45km)にまたがっており(図4)、第三紀以降形成(リフティング)された厚さ5kmに及ぶ湖沼性堆積物が存在し、良好な根源岩と砂岩の貯留層が確認されている。同堆積盆では1998年ごろから中小独立系の加Heritage Oil(以下、Heritage)や豪Hardmanが地震探鉱を実施しており、2005年以降3鉱区(Block EA1、EA2、EA3A)においてJobi、Mputa、Kingfisherなど商業規模の油田が多数発見された。Tullowによると3鉱区合計の推定埋蔵量(p50)は25億バレルで、このうち11億バレルが確認されている。 現在これらの3鉱区はTotal、Tullow、CNOOCの3社で探鉱、評価を進めている。TotalがBlock EA-1、TullowがBlock EA-2、CNOOCがBlock EA-3Aのオペレーターを務め、各社が33.3%の権益を持ち、探鉱・評価を進めている(図4)。 Totalは EA-1においてJobi-RiiとNgiri1油田(2008年発見)の評価を進めている。Heritageが2008~2009年にかけて掘削したJobi-1、Rii-1、Ngiri-1では第三系砂岩層においてネットペイ40m前後の油ガス層が確認されている。Jobi Rii構造は推定埋蔵量が3億バレルと見込まれている。またTotalは2012年に同鉱区で空中重力・調査(Airborne Gravity Gradiometer)を実施、5,800kmのデータを取得するなど探鉱、評価を進める計画である。TullowはBlock EA-2においてWaraga油田35石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図\4東アフリカリフト堆積盆の主な発見鉱区(ウガンダ、ケニア)鉱区事業者*オペレーター油ガス田発見貯留層推定埋蔵量備考陸上EA1TotalTullowCNOOC2008年第三系砂岩層11~25TcfTullow、Total、CNOOCは3鉱区を統合開発し、2015~16年の商業生産開始を目指している。安定生産期の生産量は15万~20万バレル/日の見通し出所:各種情報に基づきJOGMEC作成ウガンダEA2TullowTotalCNOOC2005年33.3%33.3%33.3%陸上EA3ACNOOCTotalTullow2006年33.3%33.3%33.3%第三系砂岩層第三系砂岩層ケニア陸上Block10BBTullowAfrica Oil50%50%33.3%33.3%33.3%2011年第三系砂岩層評価中2012年5月、TullowはNgamia-1井においてネットペイ100mの油層を確認と発表堆積物ウガンダ国鉱区コンゴ民主共和国鉱区スーダンコンゴ民主共和国BlockⅠBlockⅠCaprikat / Foxwhelp(南アフリカ)Caprikat / Foxwhelp(南アフリカ)BlockⅡBlockⅡCaprikat / Foxwhelp(南アフリカ)Caprikat / Foxwhelp(南アフリカ)アルバートアルバート湖湖EA5EA5EA1EA1Total(仏)Total(仏)ウガンダBlockⅢBlockⅢTotal(仏)Total(仏)BlockⅣBlockⅣBlockⅤBlockⅤSoco(英)Soco(英)エドワードエドワード湖湖EA2EA2Tullow(英)Tullow(英)EA3AEA3ACNOOC(中)CNOOC(中)075Km150EA3BEA3BEA3CEA3CEA3DEA3DEA4AEA4AEA4BEA4BOphir(米)Ophir(米)ルワンダタンザニア大西洋 Tullow、Total、CNOOCは3鉱区を統合開発し、2015~16年の商業生産開始を目指している。安定生産期の生産量は15万~20万バレル/日の見通しである。【その他のアルバートリフト堆積盆における鉱区】 ウガンダでは、Ophirが2011年9月に英Dominionを買収し、Block EA 4Bのオペレーターとなった(表5)。中小独立系のTower Resourcesは義務井3坑の不成功を受け、ウガンダEA5を放棄、2012年2月、同国から撤退した。コンゴ民主共和国はアルバートリフト堆積盆に5鉱区(BlockⅠ~Ⅴ)を設定しており、Total、英Soco、南アフリカ企業などが参加しているが、実質的な探鉱はほとんど行われておらず、探鉱井も掘削されていない。Totalは2012年1月、BlockⅢに67%参加することについて政府承認を得た。(2) Tullow、ケニアでウガンダを上回る規模の油層を出所:JOGMEC作成(参考文献7の図2に加筆修正)発見?!図4アルバートリフト堆積盆の主な鉱区(2006年発見)、Ngege油田(2008年発見)の評価を進めている。CNOOCはKanywataba油田の評価を進めている。 Tullowはウガンダに続き、これまで商業量の発見が無かったケニア陸上で商業規模の油田を発見した。 発見井はLokichar堆積盆Block10BBのNgamia-1である(図5)。Ngamia-1の層厚はネットで100mを超えており、ウガンダの発見井(層厚40m前後)を大きく上回る規模であり、ケニアの油田はウガンダを上回ると期待が高まっている。この発見は東アフリカ大地溝帯の東側、362012.7 Vol.46 No.4アナリシス\5アルバートリフト堆積盆のその他の鉱区(ウガンダ、コンゴ民主共和国)ウガンダコンゴ民主共和国EA4BBlock IBlock IIBlock IIIBlock ⅣBlock V出所:各種情報に基づきJOGMEC作成オペレーター米Ophir南アフリカCaprikat /FoxwhelpCaprikat/FoxwhelpTotal100%85%85%67%英SOCO38%パートナー国営CohydroCohydroCohydro南アフリカSacoilCohydroDominion15%15%15%18%15%47%契約時期2007年7月2010年6月2010年6月2011年7月申請中2010年6月表6その他の東アフリカリフト堆積盆の鉱区オペレーター英TullowTullow米Camac50%50%100%英Adamantine Energy100%パートナーAfrica OilAfrenAfrica Oil契約時期2008年11月2010年11月30%20%50%TullowTullowTullow国営NOCK50%Africa Oil50%2008年12月50%ケニアSwala Energy50%2012年11月50%100%Africa Oil50%2008年12月2010年11月Tullow50%Africa Oil30%2008年11月Agriterra20%ケニアBlock 10ABlock 10BABlock 11ABlock 11BBlock 12ABlock 12BBlock 13TBlock 14TエチオピアSouth Omo Block出所:各種情報に基づきJOGMEC作成エチオピアからケニアにかけて南北方向に伸びる東アフリカリフト堆積盆上における画期的な発見でもある。 Ngamiaの発見には同じBlock10BBの南西部でShellが1992年に掘削したLoperot-1(第三系(Miocene)砂岩層、Total Depth2,950m 、テスト(DST)で約10リットルの油を回収)が貢献していると思われる(参考文献7参照)。Shellの撤退後、Block10BBには英中小独立系のAfrica Oilが参入、Tullowが2010年1月に同鉱区に参入しオペレーターとなった。Tullowとパートナーは2010年10月に2D地震探鉱を実施し、2011年に空中重力調査(Full tensor gravity:FTG)を実施した。そして2012年1月にNgamia-1の掘削を開始、3月にLoperot-1と同じ第三系Miocene砂岩(ただしTDは1,500mと浅い)で層厚20m超の油層を発見した。テストではウガンダで発見されたものと類似性状の油(API30°超の中軽質でワックス分が高い)を得た。37石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図gamia構造は評価中だが、Tullowは層厚をネットで100m超、グロスで650m超に上方修正した。ただし深度1,041~1,515m地点でサイドトラックを実施したが、ホールコンディションを維持することが困難な層という情報もある。【その他の東アフリカリフト堆積盆における鉱区】 Tullowはエチオピアからケニアにかけて南北方向に伸びるリフト堆積盆上に複数の鉱区を保有している(図5)。Wetherfordのリグをリースしており、Ngamia-1の次にBlock13TでTwiga-1を、さらに10AのPaipai構造で探鉱井を掘削する予定である(表6)。今年エチオピアのSouth Omo BlockでFTGを実施しており、2013年にはエチオピアで探鉱井を掘削するものと思われる。 ちなみに2012年4月、JOGMECはケニア国営石油公社(NOCK)とケニア陸上における油ガス胚胎の可能性を評価するための共同調査契約を締結した。今夏FTGを実施予定である。 JOGMECプレスリリース:http://www.jogmec.go.jp/news/release/docs/2012/newsrelease_120507.pdf2A2ASOMALIA2B2B3A3A3B3BL1AL1AL1BL1BL5L5L13L13L7L7L12L12L11AL11AL11BL11BL2L2L3L3L4L455L1L1L6L644L1L1L20L20LL1616L19L19L8L8L9L9L10AL10AL10BL10BL17/18L17/18INDIAN OCEANINDIAN OCEAN13T13T10BB10BBNgamia-1Ngamia-199UGANDA12A12A12B12BKENYA14T14TNairobi0100TANZANIA200KmTullow Oilオペレーター鉱区東アフリカリフト堆積盆出所:JOGMEC作成SUDANSouth OmoSouth OmoBlockBlock11A11A11B11B10BA10BAETHIOPIA10A10A11図5東アフリカ堆積盆の主な鉱区3. ガーナ深海油田発見からシエラレオネ、リベリア深海、さらに南米へ  2007年にTullowや米中小独立系のKosmos Energyはガーナ深海 (水深約1,600m)でJubilee油田(主な貯留層は上部白亜系砂岩)を発見した。Tullowによると、Jubilee油田の確認埋蔵量は原油12億バレル、天然ガス1.2Tcfであり、同油田は、1996年にShellがナイジェリアで発見したBonga油田以来西アフリカで発見された最大級の油田として注目を集めた。また、Jubilee油田は発見からわずか3年半という驚異的なスピードで2010年12月、商業生産を開始した。Jubilee油田の原油生産量はプラトーの12万バレル/日には達していないが、2011年には7万バレル/日前後で推移している。また、Jubilee油田周辺で追加発見があり評価が進められている(図6)。 Jubilee油田の発見を受け、企業の関心はさらにガーナの西のシエラレオネやリベリア深海域に広がっている。またTullowは2011年9月、シエラレオネやリベリアの対岸の仏領ギアナ深海Amazonas堆積盆に位置する出所:Anadarko図6ガーナ深海Jubilee油田と周辺の油ガス構造382012.7 Vol.46 No.4アナリシスuyane Maritime鉱区のGMES 1X(Zaedyus)井(水深2,048m)においてネットペイ72mの油層(Zaedyus構造)を発見した(図8)。貯留層は白亜系砂岩(Cenomanian Turonian)で、Tullowは本構造の発見はガーナにおける発見が大西洋の対岸においても成立するという“Atlantic twin Basin theory”を裏付けるものであるとしている。Guyane Maritime鉱区には2012年1月、Shellが45%参加した。SIERRALEONESL-SL-8A-108A-10SL-SL-8B-108B-10SL-1SL-1SL-2SL-2SL-SL-4B-104B-10TalismanTalismanSL-SL-5-115-11LukoilLukoilSL-SL-7C-107C-10SL-SL-7B-117B-11AnadarkoAnadarkoAfricanAfricanSL-3SL-3PetroleumPetroleumSL-SL-4A-104A-10SL-SL-9A-10SL-9A-10SL-9B-109B-10SL-SL-10A-1010A-10SL-SL-7A-107A-10SL-SL-10B-1010B-10LB-17LB-17AnadarkoAnadarkoLB-16LB-16AnadarkoAnadarkoLB-18LB-18LB-19LB-19LB-20LB-20LB-15LB-15AnadarkoAnadarkoLB-14LB-14ChevronChevronLB-13LB-13PeppercoastPeppercoastPetroleumPetroleumVenusVenusJupiterJupiterMercuryMercuryLIBERIALB-21LB-21LB-22LB-22LB-23LB-23LB-24LB-24LB-12LB-12ChevronChevronLB-11LB-11ChevronChevronLB-10LB-10AnadarkoAnadarkoLB-9LB-9AfricanAfricanPetroleumPetroleumLB-8LB-8AfricanAfricanPetroleumPetroleumLB-25LB-25LB-26LB-26LB-27LB-27LB-7LB-7Tong TaiTong TaiLB-6LB-6Tong TaiTong TaiLB-28LB-28NarinaNarinaLB-5LB-5LB-4LB-4LB-2LB-3LB-2LB-3AfricanAfricanPetroleumPetroleumLB-29LB-29LB-30LB-30図7シエラレオネ~リベリア深海鉱区COTED’IVOIRELB-1LB-1ATLANTICOCEAN出所:JOGMEC作成 EQUATORIAL ATLANTIC        PLAY FAIRWAYシエラレオネSL-07B-11Venus B, Mercury & JupiterDiscovered 2009, 2010 & 2012LB 17.16 & 15アフリカアフリカGEORGETOWNBLOCKガイアナBLOCK 47GUYANEMARITIMEリベリアCurrent & Upcoming WellsPaon - 1Jaguar - 1Teak - 4Enyenra - 4, Wawa - 1,Okure - 1 & Sepele - 1Zaedyus - 2Mahogany/Akasa/TeakDiscovered 2009 & 2011スリナムCORONIE南米南米ZaedyusDiscovered 2011Cl-26 EspoirCl-105コートジボワールCl-103仏領ギアナJubilee/T.E.NDiscovered 2007, 2009, 2010 & 2011ガーナ出所:Tullow Investor Forum May 2012 資料に加筆(両大陸の水平距離は誇張されている)図8ガーナ以西~対岸の南米にわたる探鉱の広がり南米南米アフリカアフリカ※等縮尺地図※等縮尺地図39石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図アフリカ南米南米アフリカ南米i1) Anadarkoがシエラレオネ深海で掘削キャンペーンを展開 シエラレオネは深海15鉱区(SL1~SL10B-10)が設定されており、そのうち4鉱区でAnadarkoならびにAfrican Petroleum、Lukoil、Talismanなどの中小企業が鉱区を保有している(図7、表7)。Anadarkoは2009 年以降Block SL-07でVenus、Mercury、Jupiter構造(いずれも白亜系砂岩)を発見した。2010年11月のMercury-1は白亜系でネットペイ41mの軽質油(34~42°API)が確認された。2011年4月に掘削を開始した評価井Mercury-2(水深1,815m、TD5,142m、対象層は白亜系砂岩)はテストの結果残念ながら水層であった(図9)。 VenusVenus(WI 55%)(WI 55%)Mercury-2Mercury-2DrillingDrillingMercuryMercury(WI 55%)(WI 55%)JupiterJupiter(WI 55%)(WI 55%)2,400 km22,400 km2New 3DNew 3DAnadarko Wl BlockAnadarko Wl BlockAPC DiscoveryAPC DiscoveryProspectProspectDrillingDrillingIndustry DiscoveryIndustry DiscoveryMontserradoMontserrado出所:Anadarko図9Anadarkoのシエラレオネでの発見鉱区表7シエラレオネの探鉱鉱区オペレーターパートナー契約時期備考SL-03豪African Petroleum100%2010年4月SL-04B-10Talisman Energy80%英Prontinal20%2003年8月シエラレオネSL-05/11Oranto Petroleum 30%2003年8月露Lukoil49%SL-07B-11Anadarko55%米Vanco Energy21%Tullow20%スペインRepsol YPF25%2003年8月Venus、 Mercury、Jupiter構造出所:各種情報に基づきJOGMEC作成402012.7 Vol.46 No.4アナリシスlNarina構造表8リベリアの探鉱鉱区オペレーター香港TongTaiTongTai 豪African PetroleumAfrican Petroleum米Anadarko米ChevronChevron加Canadian Overseas PetroleumChevronAnadarkoAnadarkoAnadarko100%100%80%70%70%100%70%47.5%47.5%47.5%LB-06LB-07LB-08LB-09LB-10LB-11LB-12LB-13LB-14LB-15LB-16LB-17パートナー中国企業中国企業スペイン Repsol YPF日 三菱商事ナイジェリアOrantoOrantoOrantoRepsol YPFTullowRepsol YPFTullowRepsol YPFTullow契約時期申請中申請中2008年19月2008年19月2008年12月2007年15月2007年15月2007年15月2009年16月2008年19月2008年19月2008年19月 10%10%30%30%30%28%25%28%25%28%25%リベリア出所:各種情報に基づきJOGMEC作成 Narina-1Barbet FanBee-Eater FanApalis-1Area of Turonian Prospects300+ sq km出所:African Petroleum図10African Petroleumが発見したシエラレオネ深海Narina構造(2) 中小独立系のAfrican Petroleum、リベリア深海で有望構造発見 リベリアは深海30 鉱区(LB-1~30)が設定されており、そのうち10鉱区(LB8~17)においてAnadarkoに加え、米ChevronやAfrican Petroleumなどが探鉱を行っている(図7、表8)。AnadarkoはBlockLB-10、LB15~17の4鉱区でオペレーターを務めている。BlockLB-10にはRepsol YPFと三菱商事がパートナーとして参加している。LB15~17はシエラレオネ同様Repsol YPFとTullowがパートナーとして参加している。 2012年2月、African Petroleumはシエラレオネ堆積盆LB-09鉱区の探鉱井Narina-1井(水深1,143m、TD4,850m)の白亜系砂岩層(Cenomanian~Albian)でネットペイ32m の油層を確認した。API37~44°の軽質油である(図10)。4. ブラジルの次はアンゴラ深海プレソルト? ブラジルでは2007年以降南部サントス盆地、カンポス盆地大水深(水深300~1,500m)の下部白亜系プレソルトにおいて油田発見が相次いでいる。Petrobrasは2020年までにプレソルトの生産量を約200万バレル/41石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図冝i同社生産量の4割)とする目標を設定している。ブラジルにおける発見を受け、カンポス盆地対岸のアンゴラ南部深海のプレソルトにも期待が高まっている。 アンゴラでプレソルトの発見が期待されているのは、これまでの主力生産地域である北部Lower Congo盆地ではなく南部のKwanza・Benguela盆地である。ブラジルとアンゴラはジュラ紀後期から白亜紀初期にかけてアフリカ大陸と南米大陸の分裂によって分かれており、ブラジルのCampos盆地とアンゴラ南部Kwanza盆地の石油システム(根根岩や貯留岩の堆積環境や年代)には相関性がある(図11)。 アンゴラ深海ではBPアンゴラの元社長などベテランオイルマンが設立した米中小独立系Cobaltが先行的にプレソルトの探鉱を行っている。(1)Cobaltはプレソルト鉱区で有望構造を発見 2009年4月、Cobaltはアンゴラ国営Sonangolとの資産スワップにより、他社に先駆けてプレソルト鉱区(Kwanza盆地Block21)権益40%とオペレーターシップを取得した(SonangolはCobaltが保有する米メキシコ湾大水深鉱区権益の25%を取得した)(図13)。 2012年2月、CobaltはBlock21のCameia-1(水深1,680m)においてネットペイ274mの油層を発見した(図12)。テストでは原油5,010バレル/日(API44°)、ガス1万4,300Mcfdを得た。Cobaltは坑井の生産能力が2万バレル/日を超えると見ている。2012年にはBlock21でCameia-2、Bicuar-1の掘削を行い、2013年にはBlock21のNorth Cameia、Block20のLontra構造を対象に掘削を行う予定である。 出所:Geology and Total Petroleum Systems of the West ?Central Coastal (7203),West Africa (USGS,2006)図11南米と西アフリカとの石油システムの相関性(USGS)422012.7 Vol.46 No.4アナリシス50100200km入札鉱区探鉱中鉱区ルアンダ0m1,00Block190m02,0Block 35000m3, Cobalt LicensePre-salt DiscoveriesCobalt ProspectsCobalt Pre-salt DscoveryPre-salt DscoveryCobalt Upcoming Well大西洋Block 36Block 20Block 37Block 21CabaltBlock 38Block 22アンゴラBlock 39Block 40Block 24Block 25アフリカ大陸アフリカ大陸出所:JOGMEC作成出所:Cobalt図12Cobaltのアンゴラプレソルト発見鉱区図13アンゴラの主なプレソルト鉱区(2)アンゴラ深海プレソルトに突進するIOC 2010年に南部Kwanza盆地プレソルト11鉱区の入札が行われ、深海開発に定評のあるIOC13社(Cobaltを除く大手)が入札に参加した。アンゴラ深海でオペレーターを務めるBP、Totalの他、Statoilが初めてオペレーターを取り、Repsol YPFとConocoPhillipsが初めてアンゴラ深海に参入した(表9、図13)。ExxonMobilはパートナーとして超大水深3鉱区に参加した。Sonangolは、オペレーターこそ取らなかったが、いずれの鉱区においても30%以上の権益を取得した。表9アンゴラのプレソルト入札結果(2010年)オペレーターパートナーBlock19BP(50%)Sonangol(40%)、ChinaSonangol(10%)Block20Cobalt(40%)BP(20%)、Sonangol(30%)、ChinaSonangol(10%)Block22Repsol YPF(30%)Statoil(20%)、Sonangol(50%)Block24BP(50%)Sonangol(50%)Block25Total(35%)Statoil(20%)、Sonangol(30%)、BP(15%)Block35Eni(30%)Sonangol(45%)、Repsol YPF(25%)Block36ConocoPhillips(30%)Sonangol(50%)、ChinaSonangol(20%)Block37ConocoPhillips(30%)Sonangol(50%)、ChinaSonangol(20%)Block38Statoil(40%)Block39Statoil(40%)ExxonMobil(30%)、Sonangol(30%)ExxonMobil(30%)、Sonangol(30%)Block40Total(35%)Statoil(20%)、ExxonMobil(15%)、Sonangol(30%)出所:各種情報に基づきJOGMEC作成43石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図T. 南アフリカにおけるシェールガスのポテンシャル(1)世界5位の資源ポテンシャル 南アフリカにはシェールガスへの期待がある。2011年4月、EIAは南アフリカにおけるシェールガスの技術的回収可能量を世界5位の485Tcfと評価した(図14)。(2)モラトリアム解禁への動き ポテンシャルが高いとされるカルー堆積盆(23万6,000km2)では現在、Shellや南アフリカSasol/米Chesapeake/Statoil連合などがPetroleum Agency SAからシェールガスの技術協力ライセンス“Technical Corporation Permit”(TCP)を取得している(図15)。 しかし南アフリカはシェールガス開発の環境への影響を評価するため、2011年2月以降フラクチャリングを禁止(モラトリアム)しており、探鉱は進んでいない。2012年3月末に南アフリカ鉱物資源省(Department of Mineral Resources;DMR)はタスクフォースの結果を受け、政府に提言を行った。カルー堆積盆におけるシェールガス探鉱について環境団体の批判は根強いが、政府内では低経済成長と高失業率の下、経済浮揚と雇用創出に貢献するシェールガス開発について関心が高まっている模様である。 Econometrix社が2012年1月に発表した南アフリカにおけるシェールガスの経済性を評価した報告書(“KAROO SHALE GAS REPORT”)もモラトリアム解禁の追い風となるかもしれない。同報告書はシェールガス20Tcfを開発し、25年間にわたって生産するAシナリオと、50Tcfを開発し、同じく25年間にわたって生産するBシナリオを提示している。Aシナリオは上流と下流を合わせたプロジェクトの価値は2兆ランド(1ドル約8ランドとして約2,500億ドル)あり、2000年の同国GDPの83%に相当する。また、南アフリカのGDP年平均成長率を4.5%として計算すると、プロジェクトの北 米南 米欧 州アフリカアジア・大洋州合 計Tcf1,9311,2256391,0421,7856,622北 米北 米カナダ388アメリカ合衆国862メキシコ681コロンビア19ボリビア48チリ64南 米南 米欧 州欧 州ヨーロッパその他19ノルウェー83スウェーデン41ポーランド187リトアニア4ウクライナ42トルコ15デンマーク23ドイツ8イギリス20オランダ17フランス180ベネズエラ11ブラジル226西サハラ7モロッコ11アルジェリア231チュニジア18パラグアイ62ウルグアイ21アルゼンチン774中国1,275アジア・大洋州アジア・大洋州パキスタン51インド63オーストラリア396アフリカアフリカリビア290南アフリカ48544図14世界のシェールガス資源量評価(技術的回収可能量*)*市場に出回る経済合理的な回収量は、市場ガス価によるため、技術的回収可能量より少ない。2008年世界の天然ガス消費量:106Tcf (日本:3.3Tcf)2009年世界の(在来型)確認残存埋蔵量:6,400Tcf資源量評価されたシェールガス盆地国別の技術的回収可能量(Tcf=兆立方フィート)名#国出所:EIAよりJOGMEC作成2012.7 Vol.46 No.4アナリシス価値は2035年のGDPの28%に相当するとしている。また雇用については最大で35万6,000人の創出が期待できると指摘している。 ただし、モラトリアムが解禁されたとしてもシェールガスの探鉱開発は厳しい環境規制や民間団体の批判にさらされ、開発は容易ではなく、石炭主体の同国のエネルギー構造は当面変わらないという見方もある。出所:EIA図15カルー堆積盆の探鉱ライセンス(TCP)保有企業6. サブサハラフロンティアにおける可能性(1) 東アフリカはカタール、豪州、北米と並ぶ一大LNG液化輸出地域となるか?!①東アフリカLNGのポテンシャル モザンビークのArea1とArea4鉱区の推定埋蔵量を合計すると100Tcfを上回る。一般的に埋蔵量10Tcfで1,000万トン/年のLNGを20年生産できる規模である。2011年の日本のLNG消費量は約7,800万トン(3.7Tcf)であるから、東アフリカの天然ガスのポテンシャルは日本のLNG年間消費量の30年分に相当する。今般モザンビークおよびタンザニア深海で発見された天然ガスの一部は、国内あるいは域内(南アフリカなど周辺諸国が調達を志向)で消費するが、企業と政府は発見したガスの大部分を液化して日本を含む東アジア市場に輸出するLNG液化事業を検討している。 モザンビークArea1ではAnadarkoならびにパートナーは1期として500万トン/年2トレイン計1,000万トン/年を計画しており、KBRとTechnip が液化事業のプレFEEDを実施した。2013年に埋蔵量を確定し、同年末までに投資決定を行い、2018年にLNGの商業生産開始を目指している。Eniがオペレーターを務めるArea4もArea1同様、LNG液化事業を検討しており、2018年ごろのLNG商業生産開始を目指している。タンザニアで発見されたガスの規模はモザンビークの10分の1程度だが、やはり域内消費は限定的で、大部分は液化して輸出することを検討している。②東アフリカLNGと日本 -調達多様化、柔軟性、価格低廉化に向けて- 現在モザンビークとタンザニアを合わせ2,500万~5,000万トン/年(500万トン/年×5~10トレイン)のLNG液化事業が計画されている。ただし、これらの液化プラントが一斉に立ち上がるわけではない。深海のガス田開発やLNG液化事業は巨額の投資が必要(Area1の2トレイン1,000万トン/年のガス田開発から液化プラント建設までを含めた総事業費は250億ドル〈約2兆円〉とされている)であり、一般的に資金調達・投資決定を行うには販売先を8割程度確保する必要がある。Area1にはインド・日本企業が、Area4には韓国企業が参加しており、 “LNGが高く売れるアジアプレミアム市場”向けの販売を検討していると伝えられる。タンザニアのガ45石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図6表10価格低廉化、柔軟な契約条件を求めるアジアの事業者たち豪州米国Australia Pacific LNG (AP LNG)米メキシコ湾岸 Sabine PassOrigin、ConocophillipsCheniere米国米メキシコ湾岸 CameronSempra Energy米国米東岸 Cove PointDominion基地名事業者購入(合意)企業中国Sinopec韓国Kogas日本(三菱/三井)日本(東京ガス/住友商事)LNG購入量 (合意時期)760万トン/年 (2011年)供給開始2015年以降350万トン/年 (2012年1月)2017年以降800万トン/年 (2012年)320万トン/年 (2012年)2016年以降2016年以降備考・上流への参画 ・価格低廉化・価格低廉化(HH準拠) ・柔軟な条件・非FTA締結国への  輸出許可申請中・非FTA締結国への  輸出許可申請中りについて交渉を行っている。米国と日本のFTA交渉やガス輸出政策の行方など不確定要素があるとはいえ、実現すれば米国産LNGの輸入は“プレミアムLNG市場”される東アジアLNG市場の価格体系に一石を投と揶じるものと期待されている。 東アフリカLNGを含め2020年前後にアジア市場にLNGを販売する事業者は、アジア市場におけるこのトレンドを理解することがマーケティングの早道である。 東アフリカのLNGはLNGの新興輸出国ということもあり、深海で開発したガスを利用し、インフラも一から立ち上げなければならず、ヘンリーハブ価格準拠の米国のLNGに比べ競争力で劣るかもしれない半面、輸送距離が短く、カタール同様欧州、インド、東アジア市場を狙える好位置にある。 Anadarkoは最大のライバルは地理的に欧州とアジアの両地域を狙える好位置につけている隣国タンザニアのLNG事業と目し、タンザニアより先に投資決定を行い2018年に出荷を開始することを目指すとしている。 調達側は上流参画や“ファウンデーションバイヤー”として供給者(特に新興のLNG事業者)と協調することにより、価格低廉化や調達条件の柔軟性を追求できるかもしれない。 日本のLNGは既に長期売買契約が結ばれているので、一気に多様化を進めることは難しいが、2020年ごろの調達について、北米や東アフリカなどの新たな地域から供給者との協調を前提とした戦略的な調達を段階的に増やすことで、価格の低廉化や供給の多様化、調達の柔軟性が得られるだけでなく、既存の契約交渉にも影響を与える可能性がある(図16)。揄ゆや出所:JOGMEC作成ス田発見鉱区はBGがオペレーターを務めており、恐らく同社のポートフォリオLNGとして販売する戦略であると思われる。 モザンビークのLNGは同時期(2020年前後)に立ち上がる予定の豪州新規、米国やカナダのLNGというライバルがあり、マーケティングは容易ではない。アジアの事業者たちは“アジアプレミアム市場”に決して甘んじているわけではなく、価格低廉化や柔軟な契約条件を求め積極的に動いている(表10)。例えば中国Sinopecは2011年に豪州Australia Pacific LNG(ConocoPhillips・Originによる豪州の後発のCBM LNG液化事業)について450万トン/年2トレインのうち、8割強の760万トン/年を購入する“ファウンデーションバイヤー”(LNG液化事業の投資決定につながるような初期的かつ大口の買い手)となり、上流参画や他の案件に比べ大幅に価格低廉化を実現したとされる。 また、韓国Kogasは2012年に米Cheniereの米メキシコ湾岸Sabine Passといち早くLNG売買契約(350万トン/年)を締結した。液化や輸送コストを含めても韓国着10ドル/MMBtu以下(日本着のLNG平均価格は約16ドル/MMBtu)という割安なLNGの購入を実現したのみならず、米政府が輸出抑制に動いた場合のリスクに備えた柔軟な契約条件を実現した模様である。 日本においても商社やユーティリティー企業が調達の多様化に向けて動き出している。三菱商事と三井物産は米Sempraとメキシコ湾岸のCameron LNGについてそれぞれ400万トンのLNGを20年間引き取ることで合意した。また東京ガス/住友商事はDominionとメキシコ湾岸のCove Point LNG基地と230万トン/年の引き取2012.7 Vol.46 No.4アナリシス鴻Vアロシア2011年2011年ロシアロシア調達調達多様化多様化イメージイメージ北米北米2011年2011年北米北米調達調達多様化多様化イメージイメージ2011年2011年中東中東調達調達多様化多様化イメージイメージ中東中東東アフリカ東アフリカ2011年2011年東アフリカ東アフリカ調達調達多様化多様化イメージイメージ東南アジア東南アジア大西洋大西洋LNGLNG2011年2011年大西洋大西洋LNGLNG調達調達多様化多様化イメージイメージ出所:JOGMEC2011年2011年東南アジア東南アジア調達調達多様化多様化イメージイメージ豪州豪州2011年2011年豪州豪州調達調達多様化多様化イメージイメージ2011年輸入調達多様化(イメージ)図162011年の輸入と2020年の調達多様化のイメージ(2) サブサハラフロンティアの石油ガス探鉱開発における多彩な顔ぶれと参入機会 本稿で紹介したサブサハラフロンティアの多くはいわゆるメジャーズではなく、主に英米豪の中小独立系石油企業が開拓した。中小独立系といっても、探鉱を専門とするOphirと、探鉱から開発まで手掛ける中堅のTullowやAnadarkoなどでは企業規模、活動範囲ともに異なり、実に多彩である(図17、表11)。 現在、モザンビーク深海鉱区権益をめぐりShellとタイPTTが激しい買収合戦を展開しているが本地域において資産・企業買収は頻繁に見られる現象である。サブサハラフロンティアではアフリカに特化して探鉱を行う独立系企業(探鉱成功後資産を売却しキャピタルゲインを得る)100社以上が活動しており、過去5年の間に同様の資産・企業買収が30件以上行われたという集計がある。① Shellとタイ国営PTTEPのモザンビークArea1上流権益をめぐる買収合戦 ShellとタイPTTEPはCove Energyをめぐり激しい買収合戦を展開している。Cove Energyは2003年の設立。2009年に資産買収によって東アフリカ探鉱に乗り出した探鉱特化型の新興中小石油企業で、モザンビーク、タンザニア、ケニアで活動している。生産中資産はないが、前述の巨大ガス田が発見されたモザンビーク深海Area1の上流権益8.5%を保有しており、実質的に本資産をめぐる買収合戦が展開された。Cove Energyは2012年1月に企業売却の意向を示し、同年2月、Shellが16億ドル、PTTが17億8,000万ドルを提示した。その後Shellは18億ドルを提示し、合意に至ると思われたが、期限の1時間前にPTTEPが19億ドルを提示、決着は本稿発行の頃にはついていると思われる(現状は7月11日に期限延長)。 Cove Energyはモザンビーク深海のガス田開発ならびにLNG液化事業(500万トン×2トレイン)など今後発生する巨額の拠出負担に耐えられる企業規模ではなく、売却は創業者と株主を利する選択であると評価されている。 ShellにとってCove Energyの買収は、リーディングLNGプレイヤーとして新興産油ガス地域LNG案件への参画によるLNG事業の拡大と東アフリカ上流への進出を図ることが主な目的であると思われる(表12)。また、東アフリカLNGはLNGポートフォリオ上も有効な資産である。 PTTにとりCove Energyの買収提案は2度目の大型国外資産買収(2010年加オイルサンド資産23億ドル)かつ初のLNG関連上流資産買収である。さらに、自国への供給源確保が主な目的であったと思われる。タイは東南アジア最大のガス市場で2011年にLNG輸入国に転落47石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図\11サブサハラフロンティアで活躍する中小独立系企業企業名時価総額2012/6/13(億ドル)従業員数生産量 千boed本稿で紹介したでの主な活動地域(2011年) サブサハラホットエリア備考Africa Oil加20.7African Petroleum豪州0.2N.AN.A--ケニア他Tullowのケニアリフト発見鉱区のパートナー--リベリア、シエラレオネリベリアで有望構造発見米国317.74,800680モザンビーク、ケニア他--アンゴラ他90.0N.A5.060N.AN.A--0.673モザンビーク、タンザニア、ケニア2012年1月、企業売却 Shell・PTTが買収合戦モザンビーク深海で巨大ガス田発見アンゴラプレソルトで有望構造発見ウガンダ陸上で油田を発見後撤退ガーナ深海でJubilee油田発見タンザニア深海BG発見鉱区のパートナーガーナ深海、ウガンダ・ケニアリフト堆積盆で油田発見AnadarkoCobaltCove EnergyHeritageKosmos EnergyOphir Energy米国英国加米国英国40.8約20026ガーナ他N.A42374--タンザニア他57.4ケニア、ウガンダ他Tullow Oil英国204.4出所:Yahooファイナンス、企業ウェブサイト等に基づきJOGMEC作成した。PTTはタイでLNG受け入れターミナル500万トン/年を操業中(2011年9月稼働)である。ONGCやGAILもPTTと同様、自国への供給源確保が主な目的であると思われる。インドの天然ガス生産は低迷しており、LNG輸入量が増加傾向にある。なお、モザンビークArea1にはインド企業VideoconとBharat Petroleumが参加しており、同LNG事業はインドを含むアジアを売り先として想定している。 今後ShellはCove Energyの買収を足がかりにArea1の権益買い増しを図る可能性がある。AnadarkoがArea1権益全てを売却しShellがArea1のLNG液化事業のメインプレーヤーとなる可能性も否定できない。 Anadarko(Area1権益36.5%を保有)はLNG液化事業の経験に乏しく、中核事業は北米(北米外事業の2011年売り上げは13%)であり、開発投資案件を数多く抱えている。Anadarkoの2011年の投資額は65億5,000万ドル(約5,200億円)であり、2012年の北米外事業への投資配分は14%と1,000億円に満たない額である。Anadarkoの出資比率の場合、Area1の投資決定(2013年見込み)から液化プラント500万トン2トレインの稼働(2018年見込み)まで上流・LNG液化事業への拠出負担額が年1,000億~2,000億円に達すると思われる。Anadarkoはそこでモザンビークの一部権益を売却するのではないかという見方がある。隣の鉱区のEni(Area4、権益70%を保有)についても資産の評価後に権益を一部売却するのではないかと見られている。②Cove Energyの次はどこが標的に?  中国企業は西アフリカの複数の地域で探鉱を行っている豪中小企業African Petroleum(時価総額24億豪ドル≒24億ドル)の買収を検討、初歩的な交渉を行っている模様である。同社は2月にリベリア深海BlockLB-09の Narina-1 井で油層を発見している。 また、タンザニア深海ガス田発見鉱区の権益を保有するOphirは、ガス田発見後株価が大幅に上昇した。同社は2011年に英中小独立系のDominion Petroleumを買収することで東アフリカにおける探鉱を拡大したが、同社が買収の標的となる可能性も否定できない。 また本稿では紹介しなかったが、ナミビア深海で探鉱を行っているTower Resourcesなども有望構造が発見されれば買収の標的となるかもしれない。Cove Energyのように“身売り”をし、経営陣が新たに企業をつくると482012.7 Vol.46 No.4アナリシスT鉱開発LNG液化表12各社のCove Energy買収の主な目的探鉱専門・アフリカフォーカス独立系Ophir,Ophir,Tower Resources, PanTower Resources, Pancontinental, Aminex,continental, Aminex,Heritage…Heritage…探鉱?開発/独立系/NOC中小: Tullow,Maurel & prom…中小: Tullow,Maurel & prom…中堅: BG, Anadarko,…中堅: BG, Anadarko,…NOCs: Statoil,Petrobras…NOCs: Statoil,Petrobras…メジャーズExxonMobil,ExxonMobil,Total, ShellTotal, ShellBP, Eni, Chevron,BP, Eni, Chevron,ConocoPhillipsConocoPhillips出所:JOGMEC図17アフリカの石油ガス探鉱開発に関わる多彩な顔ぶれShellPTT提示額16億→18億ドル17億8,000万ドル→19億ドル買収の主な目的フロンティアLNG案件への参画によるLNG事業の拡大と東アフリカ上流への進出自国への供給源確保出所:JOGMEC作成いう繰り返しが形成される可能性もある。 ちなみに、東アフリカの石油ガス探鉱開発に関し、中国大手国有石油企業の買収意欲はそれほど活発ではない。CNOOCのウガンダ参加以外、CNPCやSinopec等に目立った動きはない。現在彼らの関心は北米非在来型や南米深海に向いているのかもしれない。7. サブサハラフロンティア石油ガス事業における参入機会と投資リスク(1)サブサハラフロンティア石油ガス事業への投資機会 本稿では詳述しないが、上流事業の参入機会は限られている(図18)。アフリカにおいてもそれは同様で、例えばナイジェリア、アンゴラなどの老舗産油ガス国はお得意様(メジャーズ)によい席(鉱区)を押さえられている上、入場料が相対的に高く、新規参入は容易ではない。とはいえ、フロンティアでは中小独立系企業の資産(企業)の買収あるいは提携といった手段を利用することにより、探鉱から開発に至るさまざまなステージで参入する機会があることは既に見たとおりである。 また一般的に深海開発は1日数十万ドルという高額な掘削装置のリース料を含む資機材の調達や、生産設備建設などの費用がかさみ、通常の油田開発よりも割高になる。しかし巨額の投資と高度な技術力が要求されることから、自国のみで開発できない政府は外資に頼らざるを得ず、優遇策をある程度保持する可能性がある(ナイジェリアでは例外的事例もあったが、深海油ガス田は反政府勢力や海賊の襲撃に遭うリスクが低く、陸上に比べ治安リスクが相対的に低い)。49石油・天然ガスレビュー国際石油会社が国際石油会社が完全にアクセス可能な完全にアクセス可能な7%7%埋蔵量埋蔵量国営石油会社の国営石油会社の埋蔵量埋蔵量65%65%ロシア系企業のロシア系企業の埋蔵量埋蔵量16%16%12%12%国営石油会社の国営石油会社の権益持ち分権益持ち分(埋蔵量)(埋蔵量)出所: 2008 PFC Upstream Competition Service資料を基に JOGMEC石油調査部作成図18世界全体の原油の残存確認可採埋蔵量の支配状況【サブサハラのガス火力事業への投資】 石油ガス上流事業への投資ではないが、興味深い事例なのでご紹介する。 2012年6月に住友商事は、タンザニア初となるガス中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図。合火力発電所(キネレジ発電所、出力24万kW)の建設を受注した。タンザニアの発電設備容量120万kWであり、キネレジ発電所は同国発電能力の約20%に相当する。前述の通りタンザニアでは現在15Tcf程度のガス田が発見されており、同発電所は国産ガスを利用するものである。15TcfのガスはLNG1,500万トンを20年生産できる規模である。25万kWのガス複合火力はLNG約15万トン/年(天然ガス約2億m3/年)を消費する計算となり、企業が進めているLNG輸出計画を阻害するものではない。住友商事は発電所建設に加え、完工後2年の保守運転業務を提供し、管理技術の現地化や人材育成も行うとしている。またこのビジネスモデルをサブサハラ諸国で展開するとしている。 タンザニアの発電構成は水力が55%、火力が45%だが、2011年は降水量の不足で水力の稼働率が低下し深刻な電力不足に陥った。サブサハラの多くの国では電力の不足が恒常的な問題であり、現地化や人材育成についても現地政府が熱烈に求めていることである。住友商事のアプローチは相手国のニーズに合致し、日本の特性を活かした魅力的なアプローチであると思われる。サブサハラに限ったことではないが上流権益にこのようなパッケージ提案を絡めた事業展開ができればおもしろいと思う。 住友商事ニュースリリース:http://www.sumitomocorp.co.jp/news/2012/20120607_110001.html?style=print(2) サブサハラフロンティア石油ガス事業における投資リスク 本稿で紹介した地域は比較的安定しているところが多かった。これらは例外的事例とも言え、おしなべてサブサハラフロンティアでは治安や政府の透明性(腐敗・汚職に問題があったり)、法律や税制が未整備であるなどさまざまな政治経済的リスクに直面することが懸念される。 おおむね日本企業は、欧米企業に比してサブサハラに関する知見が不足していると思われるので、事前に入念な情報収集を行うことが不可欠であり、また、事業着手前に、現地事情に精通した法務コンサルタント等の専門家と契約することをお勧めしたい。その上でコンサルタントを通じて、リスクの所在を把握し、万全の対策を立てることが必要である(ただし投資判断は迅速に行うことが肝要)。また、同地域での操業経験が豊富で、資源国政府と渡りあえる一定規模以上の企業と組むことがリスク回避につながるだろう。 以下に、係る案件を含む三つの“トラブル”のケースをご紹介しておきたい。 ケース① 資産売却時のキャピタルゲイン税見直し   ウガンダでTullowとともに3鉱区の権益を保有していたHeritageは、発見後権益の売却を表明した。当初Eniと合意したが同鉱区のパートナーのTullowが先買い権を行使し、2010年1月にHeritageの権益50%を約15億ドルで買収することで合意した。その後Tullowは3鉱区の権益をTotalとCNOOCに対し33.3%ずつ売却することで合意した。  しかしHeritageの資産売却に伴う譲渡益への課税(キャピタルゲイン税、税率30%)をめぐり、ウガンダ政府とHeritageの間で係争となり、ウガンダ政府はTotalとCNOOCの鉱区参入承認を2011年3月まで認めなかった。また、ウガンダ政府とTullow他パートナーは3鉱区のPS契約交渉においても“Stabilization Clause”(ウガンダの税金上昇時などに収入を安定させる安定条項)や製油所投資の件で難航し、Heritageの資産売却から2年後の2012年2月にようやくPS契約締結にこぎつけた経緯がある。   また、モザンビークのCove EnergyはArea1資産譲渡についてモザンビーク政府はいかなる資産譲渡についても32%のキャピタルゲイン税をかける方針と報じられた。しかし実際は12.8%程度におさまりそうである。 ケース② 収賄疑惑   2012年4月アンゴラプレソルトで発見のあったCobaltに冷や水が浴びせられた。英フィナンシャルタイムズ紙がアンゴラでの、Cobaltのこの事業に同国有力者の利権が絡んでいると報じたため、同社の株価は急落した。これに対しCobaltは即座にプレスリリースにおいて疑惑を否定した。   このような収賄・汚職への対策(疑惑報道への対応も含む)は法務コンサルタント等の専門家を通じ、事前に社内体制を整えておくことが肝要である。さらに、資源開発事業に伴う資金の流れの透明化を求めるEITI(Extractive Industries Transparency Initiative)等既存の枠組みの活用による透明性の追及を徹底して、投資企業自体のリスク対策を強化しておくとよい。 ケース③ インフラ整備   新興産油ガス国ではパイプラインはもとより、道路や港湾インフラが一般的に未整備である。このため、生産・輸送設備建設にあたり資機材の調達や輸送で困502012.7 Vol.46 No.4アナリシス?ェ生じる可能性が常にある。一例を挙げると、ウガンダ鉱区の開発についてTullowはTotalとCNOOCという経営ノウハウや資金力のあるIOC、NOCを呼び込むことに成功した。しかし企業はウガンダ政府とのハードな交渉が必要になると思われる製油所やパイプライン建設をめぐりこれより先、ウガンダで生産した原油はウガンダ国内に製油所を建設し一部は国内あるいは域内で処理する計画である。ウガンダ政府は処理能力15万バレル/日規模の製油所を建設することを求めているが、企業は輸出計画との兼ね合いで製油所建設に前向きではないとされている。輸出パイプラインはウガンダのホイマを起点にその首都カンパラあるいはケニアの首都ナイロビを経由しケニアのモンバサう回(南下)し、港に向かうルートと、ビクトリア湖を迂タンザニアの首都ダルエスサラームに向かうものが計画されている(図19)。   ウガンダで発見された原油はAPI30.4°と中質だが流動点が42.2℃、ワックス分が30%と流れにくい油であり、輸送前に改質するかパイプラインを温める必要がある。パイプラインをヒーターで温めるのではなく、輸送原油を直接温めるバルクヒーティングについても検討が行われているが、経済性を考えると生産量全量(20万バレル/日)の輸送が必要となり、生産原油の取り扱いをめぐりウガンダ政府との交渉が必要になると思われる。おわりに これまで日本(人)にとってアフリカの原油は主に欧米向け、天然ガスは欧州向けで身近な存在ではなかった。しかし日本企業の進出した東アフリカ深海での巨大ガス田発見を機に、日本でもサブサハラの油ガス資源への関心がこれまでになく高まっているように感じる。本稿ではサブサハラフロンティアの、これまでほとんど油ガスを生産していないか、ポテンシャルが低いと考えられていた地域で中小独立系石油企業が相次いで大型の油ガス田を発見している様子をご紹介した。 現在、同地域では内外の100社を超える企業が処女地エジプトスーダンポートスーダンポートスーダンオイルパイプライン迂回パイプライン(構想)サウジアラビア紅海ハルツームハルツームエリトリアイエメン南スーダンマラカルマラカルエチオピアジュバジュバアルバート湖ウガンダケニアソマリアホイマホイマコンゴ民主共和国カンパラカンパラビクトリア湖タンザニア出所:JOGMEC作成ナイロビナイロビラムラムモンバサモンバサインド洋ダルエスサラームダルエスサラーム図19南スーダン・ウガンダ原油出荷ルート案(報道ベース)開拓に鎬を削り、有望鉱区発見も夢ではなくなってきた。とはいえ、サブサハラへの投資には歴史的経緯にもとづくものを含む多くの課題が山積しているのも事実で、それらの課題克服には多くの時間を要しよう。本稿において同地域の石油天然ガス分野における熱気と投資ポテンシャルを僅かでもお伝えすることができたのであれば幸いである。51石油・天然ガスレビュー中小独立系が塗り替えるサブサハラの産油ガス地図nadarko、西アフリカフロンティアで第2のJubilee探し【参考文献】1. 西アフリカ深海の雄、アンゴラ ―深海油田開発ラッシュと緒についたプレソルト探鉱―2. 東アフリカLNGを巡る動き ―カタールに次ぐLNG輸出地域出現か?―3. 4. プレソルトの探鉱・開発に賭けるPetrobras:新5カ年計画(2011~2015年)5. 南米の石油地図は塗り替わるか? ―アルゼンチン・非在来型資源、ギアナ3 国、フォークランド諸島沖合―6. 最後?の処女地:東アフリカの石油・天然ガス7. 活発化する東アフリカ・リフト堆積盆の探鉱 ―2匹目のドジョウは捕れるのか?:ウガンダ、ケニアの現況―8. アフリカで活躍するインディペンデント系石油会社の投資戦略9. 活発さを増す東アフリカの石油・天然ガス探鉱活動と独立系石油会社の戦略 ―第2回東アフリカ石油・天然ガス・エネルギー会議に出席して―10. KAROO SHALE GAS REPORT Econometrics(Pty)LtdJanuary201211. EIA12. IHS Energy、Tullow、Anadarko、Eni、Cobalt、African Petroleum他ウェブサイト7月20日に発行されました「石油・天然ガスレビュー 2012年7月号」の本稿内に誤りがございました。訂正箇所は下表の通りとなります(なお、こちらのPDFは訂正されたものです)。関係者ならびに読者の皆さまには大変ご迷惑をおかけしました。訂正してお詫び申し上げます。─ お詫びと訂正 ─誤りのあった箇所(誤)(正)44ページ左段下から9行目国営SasolSasol執筆者紹介竹原 美佳(たけはら みか)神奈川県川崎市在住平成5年4月:石油公団(当時)入団  9年4月~13年1月:石油公団中国室  13~16年2月:石油公団企画調査部(中国担当)  16年3月~現在:現職(中国およびサブサハラ・アフリカ担当)いま、一番の楽しみは8月の八ヶ岳登山です。情報分析は地道な作業の繰り返しですが、時に山頂に到達する達成感を味わうことができます。分かりやすい情報発信を心がけたいと思います。522012.7 Vol.46 No.4アナリシス
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2012/07/20 [ 2012年07月号 ] 竹原 美佳
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