東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化
レポートID | 1006477 |
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作成日 | 2012-07-20 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-03-05 19:32:42 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガスレビュー 2 |
分野 | 天然ガス・LNG市場 |
著者 | |
著者直接入力 | 坂本 茂樹 |
年度 | 2012 |
Vol | 46 |
No | 4 |
ページ数 | |
抽出データ | JOGMEC石油調査部坂本 茂樹東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化はじめに 東南アジア・ガス消費国で数年来計画されてきたLNG輸入が実現に向かいつつある。2011年5月、タイ国営石油会社(PTT)がMap Ta Phut LNG受入基地の商業操業を開始し、タイは東南アジアで最初のLNG輸入国となった。2012年にはインドネシア西部ジャワおよびマレーシア半島部Port DicksonのLNG受入基地が操業開始を準備中である。続いてシンガポールが2014年ごろからLNG輸入を開始する。東南アジアは長期間、日本など東アジア市場向けの主要なLNG供給地だったが、このようにこの地域のガス需給は大きく変わりつつある。 本稿では、こうした東南アジアのLNG輸入とLNG需給とその背景を概観する。併せて、それに伴う東アジア市場へのLNGフローの変化に触れる。1. 東南アジアのLNG輸入開始(1)概況 東南アジアのLNG受入基地計画(一部は既に操業開始)、および液化基地の位置を図1に記す。ガスの供給地域だった東南アジアでは、経済発展とともにガス需要が増加して、域内生産では賄えない状況が想定され、複数のLNG輸入基地建設が計画された。(2)インドネシア・ジャワ島のLNG受入基地 2012年4月、インドネシアで初めての浮体式LNG受入基地“Nusantara Regas Satu”がシンガポールの造船所を出航してジャワ島西部のジャカルタ外港に入った(受け入れ能力=300万トン/年)。インドネシア政府は「ガス政策」のなかで、LNG輸出量を大幅に削減してガスを国内市場向けに優先配分することを明確にし、LNG受入基地建設計画を進めてきた。LNG受入基地第1号となる西ジャワ基地の完成は数度にわたって延期されてきたが、このたび、実現の運びとなった。 西ジャワLNG受入基地は、国内カリマンタン島のボンタンLNGと締結した10年間の契約に基づき、2012年4月下旬に初カーゴを受け入れた。同受入基地は試運転を開始し、6月に商業運転を開始する。同LNG受入基地へのLNG国内輸送業務は、商船三井と現地企業Trada maritimeが受注している。 ジャワ島など主要エネルギー消費地でのLNG気化ガス用途は、産業用と発電用燃料である。インドネシアでは都市近郊でも石油系燃料を使用する発電所、工場(産業需要家)が多い。昨今の原油価格高騰によって石油系燃料コストが大幅に上昇しているので、相対的に安価な国産ガス使用は経済合理的な判断ではある。石油系燃料には政府予算からの補助金が使われて財政悪化の要因になっているため、政府には石油系燃料消費を抑えようとする意図が強い。 インドネシア国内市場で供給されるガスには$2~6/MMBtuの極めて安い価格が適用されている(用途によって幅があり、肥料・発電用は安く、一般産業用は高い)。国内市場での供給価格はLNG輸出価格(2011年の東アジア伝統市場の購入価格$13~18/MMBtu)に比べて大幅に安いため、国内供給価格がどのように設定されるか注目され、また同時に懸念されてもいた。同国業界筋によると、ボンタンLNGの供給価格は英国ブレント原油価格を指標として11%の係数が適用される模様である。この価格フォーミュラは、欧州のガス長期契約価格フォーミュラに近い方式であり、良好な価格水準で合意されたと考えられる。15石油・天然ガスレビューアナリシスYANMARMYANMARLAOSLAOSTHAILANDTHAILANDLNG受入基地(稼働中)LNG受入基地(計画中)LNG液化基地(稼働中)LNG液化基地(計画中)PhillippinPhillippinSeaSeaMap ta PhunMap ta PhunCAMBODIACAMBODIAVIETNAMVIETNAMPHILIPPINESPHILIPPINESArunArunNorth SumateraNorth SumateraMALAYSIAMALAYSIABRUNEIBRUNEISabahSabahBruneiBruneiMalaccaMalaccaJohorJohorSINGAPORESINGAPORESummateraSummateraMLNGMLNGSingaporeSingaporeBontangBontangKalimantanKalimantanIndian OceanIndian Ocean出所:JOGMEC作成INDONESIAINDONESIASenoroSenoroTangguhTangguhNew GuineaNew GuineaWest JavaWest JavaJavaJavaEast JavaEast JavaAbadiAbadi図1東南アジアのLNG受入基地、液化設備の計画 インドネシア政府はLNG調達に際して輸入と国産LNGの双方を検討してきたが、輸入LNG価格は高額であるため、当面は国産LNGを国内市場向けに振り向ける。ボンタンに次ぐ主力のパプア州タングーLNG(760万トン/年)も発電公社PLN向けガス供給契約が調印され、2013年にLNG供給を開始する。タングーには第3トレイン(380万トン/年)の建設計画があり、完成後は国内市場向け供給力が増強される。同国では新規ガス田は25%以上の国内市場向け供給義務があり、同条項は新規LNG案件にも適用される。 インドネシアでは、更に中部ジャワ、北スマトラ、南スマトラにLNG受入基地を建設する計画があるが、詳細はまだ定まっていない。(3) マレーシア:マレー半島部マラッカでLNG輸入を開始出所:WGC新聞 マレーシアも2012年にLNG輸入と国内市場でのLNG消費を開始する。マレーシア政府は2012年6月4日、写1WGC2012開会式におけるマラッカLNG再気化施設模型の被露162012.7 Vol.46 No.4アナリシスHAILANDTHAILANDJDAJDAPM-301・302PM-301・302010050kmPM-3PM-3ADJMTJernehJernehLawitLawitMalaysia-Vietnam CAALarutLarutGuntongGuntongKertehKertehGas Processing PlantGas Processing PlantMALAYSIAMALAYSIAKUALA LUMPURDuyongDuyongWest Natuna‘B’West Natuna‘B’Natuna SeaPanglimaPanglimaPahlawanPahlawanMALAYSIAMALAYSIAINDONESIAINDONESIAJohorJohorSINGAPORESINGAPOREマレー半島部のLNG受入基地計画(マラッカ、ジョホール)とガスパイプライン網KaparKaparConnaught BridgeConnaught BridgeGenting SanyenGenting SanyenMalaccaMalaccaSONGKHLA出所:JOGMEC作成Gas Field Oil FieldGas PipelineImport linePGU LoopGas Processing PlantIndustrial Gas-UserGas-fired Power StationRegasification Terminal (Planning)クアラルンプールで開幕した第25回世界ガス会議開会式において、同国初のマラッカLNG受入基地の建設作業がほぼ完了したと華々しく発表した。併せて、サラワク州沖合の洋上液化事業(FLNG、液化能力120万トン/年)のFIDが2012年3月に既に実施され、2015年の操業開始を目指して準備中であることを公表した。 同国のLNG輸入は、人口と経済活動が集中するマレー半島部において、増加する電力需要に対して、頭打ち状態にあるマレー半島部東岸沖合のガス供給力(主要な発電燃料)を補うことを目的にしている。 国営石油企業Petronasの子会社Petronas Gasはマレー半島マラッカLNG受入基地(350万トン/年、浮揚式)の設備建設を2012年6月にほぼ完了させ、7月から操業を開始する。マラッカ沖合(Port Dickson)に受け入れバースが設置され、浮揚式LNG受入設備によってLNGを受け入れ、再気化が行われる。 Petronasは2011年5月、GDF SuezからLNG250万トンを購入する契約を締結し、2012年半ばからマラッカLNG受入基地への受け入れを開始する。Petronasは更に2012年6月、StatoilとLNG中期売買契約に調印して、72万5,000トン(1Bcm)を3年半の期間内にマラッカLNG受入基地に投入する計画を公表した。 長期契約に基づくLNG調達は、Petronasが2008年に事業参加した豪州クイーンズランド州CBM液化事業GLNGから購入する。GLNGは2014年末~2015年の出所:Petronas図2図317石油・天然ガスレビューマラッカ沖合(Port Dickson)の受け入れバースLNG生産開始を予定している。Petronas はGDF Suez、Statoilから短中期契約に基づいてLNGを輸入することにより、2014~2015年のGLNG操業開始までの期間、LNG調達をつなぐことが可能となる。 Petronasは、マラッカに続いて、半島部南端のジョホールに第2のLNG受入基地を建設する。またサバ州に発東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化GSPSukhumvit Rd.4th PipelineRoad l-1Road No.36Inter connecting pipeline4th PipelineTa Guan BayLNG TerminalOff-shore Pipeline no 1-3出所:PTTアナリスト会議資料 “LNG Business opportunities in Thailand” 2012年1月図4PTTのMap Ta Phut LNG受入基地の諸設備①出所:PTTアナリスト会議資料 “LNG Business opportunities in Thailand” 2012年1月写2PTTのMap Ta Phut LNG受入基地の諸設備②電所向けガス供給を目的にして、小規模なLNG受入基地設置を計画している。(4) タイ:2011年に東南アジアで初めてLNG受け入れを開始 PTTは2011年5月末に東南アジアで初めてとなるMap Ta Phut LNG受入基地に試運転カーゴを受け入れ、同年9月上旬に商業操業を開始した。以降2012年1月までに11カーゴを受け入れている。 PTTは2014年まで、基本的に短期およびスポットに182012.7 Vol.46 No.4アナリシスo所:PTTアナリスト会議資料 “LNG Business opportunities in Thailand” 2012年1月写3PTTのMap Ta Phut LNG受入基地の諸設備③よるLNG調達を行う。2015年以降は、長期契約に基づいて安定的なLNG調達を行う。PTTはまた2012年5月中旬、カタールから200万トン/年のLNGを長期契約で購入することで基本合意した(2013年から開始)。リスク軽減のため、複数のLNG供給者から調達する意向である。LNGプロジェクトに参加してバリューチェーンを通じて調達を図るなどの、積極的な手法を取ろうとしている。更に同社は長期的なLNG調達を視野に置き、海外のLNG事業への参入機会を探っている。 PTTは2012年6月現在、大型ガス田発見に沸くモザンビークArea 1(オペレーターはAnadarko)に権益を保有する英国独立系石油会社Cove Energy買収の入札に応じ、Shellと提示額を競っている。また、可能であれば、在来型LNG、非在来型LNGの双方に参加したいとの意向を表明している。長期的には2020年までに国際エネルギー企業になることを企業目的に置いており、国内市場向けエネルギー調達とともに、国際市場での取引においてもLNG部門を育成しようとしている。(5)シンガポール等のLNG輸入計画 シンガポールはマレーシアとインドネシアから長期契かんが約でパイプライン・ガスを購入している。しかしこれらのガス生産国が自国市場向けガス供給を重視する政策に転じていることに鑑みて、将来の安定的なガス調達のためにLNG輸入を決めている。同国エネルギー市場局は2008年の入札を経て、BGグループに300万トン/年の独占的LNG納入権(20年間)を与えた。2010年に南西部ジュロン地区に受け入れ能力350万トン/年のLNG受入基地建設を開始している。 シンガポール当局は、中長期的なガス需要増加を想定して、LNG受入設備能力の増強を計画している。またBGグループが独占的納入権を持つ300万トン/年を超える数量に対しては、再度入札を実施すると見られる。 シンガポールのLNGハブとしての機能(LNGトレーディング)を期待する見方がある。しかしLNGは、①ボイルオフ・ガスが発生するため2~3カ月以上の貯蔵が不適切であり、②東南アジアの他の受入基地はLNG生産国(生産地)から直接LNGタンカーを受け入れるので、シンガポールのLNGハブとしての機能がどの程度必要とされるか未詳である。 なお、ベトナム、フィリピンでもLNG輸入計画があるが、まだ検討段階にある。19石油・天然ガスレビュー東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化Q. 東南アジアがLNG輸入に至った要因:域内ガス需給の変化 かつては豊富な石油ガス資源を持つと見られていた東南アジアであるが、域内エネルギー需給には徐々に変化が見られ、エネルギー消費地域としての特徴を強めつつある。その要因は、①電力需要増加に伴うガス消費量の増加、②ガス生産量の伸び悩みであり、補助金を使う安価なエネルギー価格設定もその一つになっている。(1)ガス需要増加と補助金問題 発展途上にある東南アジア経済は、電力需要の増加率が大きい。国によって発電用燃料に特徴はあるものの、再生可能水力ガス石油石炭域内で最も広く使用される発電用燃料はガスである。 主要ガス生産国のなかでは、政策的に国産ガス利用を推進してきたマレーシアとタイのガス発電比率が高い。電力需要増加に伴って、ガス消費量も増加している。 ガスは世界の各地域市場で需給が完結する比率が高い地域商品である。輸送方法が広域パイプラインかLNGに限定されるため、地球規模での国際取引には制約が多い。 また、国内市場向けガス供給に統制価格を採る生産国が多い。ロシアおよびイランをはじめとする中東の有力産ガス国では、ガスは極めて安価な価格で国内市場に供給される。アジアでも統制価格を採る国が多い。シンガポールを除く多くの東南アジア緒国や中国はエネルギー価格を統制している。東南アジアでは補助金を使ってエネルギー価格を安く設定する国が多い。原油価格の高騰に伴ってエネルギー補助金額が大きく膨れ上がり、国家財政を圧迫して深刻な問題になっている。市場価格が適用されるのはシンガポール、フィリピンなど一部の国にとどまっている。 東南アジアのガス需給の大きな課題は、域内ガス需要が増加傾向にある一方で、主要ガス生産国の供給力が低迷していることである(タイ、マレーシア等)。東南アジアのガス生産国では、輸出資源としての石油資源の温存、または石油輸入額を抑えるために、国産ガスを積極的に国内消費向けに振り向ける政策が採られてきた。マレーシア、タイは国産ガス利用推進策の成功事例であり、1次エネルギー消費に占めるガス比率が特に高い(マレーシア=37%、タイ=40%、2011年、BP統計)。しかし両国の国内市場向けガス供給量はともに横ばい状態にあり、2010年代後半には減少が進む見通しである(近隣からのパイプライン・ガス輸入を含む)。 インドネシアは国内市場向けを優先するガス供給政策を強化し、2010~2011年にLNG輸出契約数量を大幅に削減した。 東南アジアでは、国内市場向けガス供給を促進させる目的で補助金付きの安価なガス価格が設定されてきた(同様に石油製品にも補助金が適用される)。その結果として国内のガス利用は促進されたが、安価に供給されるガスの浪費も指摘されるようになった。特に域内ガス供給に陰りが見えてきた昨今、このガス価格統制政策の矛盾が20102011年20図5東南アジア主要国の発電用燃料比率Bcfdインドネシアマレーシアタイシンガポールイタムナトベルーポガンン シピリィフーマンャアシネドアシーレンミ出所:WGC2012レポートマイ イネルブ1994199519961997199819992000200120022003200420052006200720082009出所:BP統計図6東南アジア主要国のガス消費量推移%10090807060504030201005.04.03.02.01.00.02012.7 Vol.46 No.4アナリシスMー価格の値上げが国民の反発を招き、政権崩壊に至った事例もある。しかし域内ガス供給力に限界が見える今、関係国政府は適正な水準のガス価格引き上げに取り組まざるを得ない。現に、インドネシア、マレーシアは、2007~2008年以降、徐々にガス価格を引き上げつつある。とりわけインドネシアでは、以前より社会が安定してきたことから、エネルギー価格値上げは大きな混乱を招かずに受容されつつある。しかし政府が計画する期間内にガス価を市場価格に移行させることはなお難しいのが現状だ。 関係国政府にとって、補助金を削減しつつガス価格を市場価格に近づけ、適正なガス需給を維持することは大きな課題である。当然ながら、一般国民はこれまで慣れ親しんできた安価なエネルギー価格政策の変更に反対する。将来、東南アジア市場へのガス供給が順調に進展するかどうか、なお疑問視されている。これは長期的にはエネルギー源選択の問題につながる問題である。東南アジア全域で、将来の発電用エネルギーに占める石炭比率が拡大するとの見通しが有力であり、国内でのガス利用促進策が大きな転換点を迎える可能性が高い。石油ん填て(2)東南アジアのLNG輸入をめぐる背景 以下に、マレーシア、タイの事例を取り上げる。a.マレーシア マレーシアはインドネシアと並ぶ東南アジアの伝統的な石油ガス生産国・LNG輸出国であが不十分でガス生るが、近年ガス埋蔵量の補産量は横ばい状態にある。 サラワク州ビンツルのマレーシアLNGに原料ガスを供給するサラワク・サバ両州のガス供給力は、サラワク州沖合で新規ガス田発見があり(Kasawari、2012年2月発見)、サバ州沖合深海油田(Kikeh, Gumusut油田、2002~2003年発見)で随伴ガスを期待できるなど、ある程度の余裕がある。しかし主要国内市場のマレー半島部にガスを供給する沖合ガス田群は既に生産減退にある。マレー半島市場向けパイプライン・ガス供給地域は、半島沖合油ガス田と隣接するマレーシア/タイ共同開発地域(MT-JDA)に限定されており、これらの地域では近年大規模ガス田の発見が見られない。中長期的には更に生産減退の進展が懸念される。将来の国内市場向けガス田開発は、中小規模で高コストの条ほ本日国韓国中アシーレマアシネイタイドン国米国英出所:BP統計図7アジア主要国の1次エネルギー消費比率Bcfdガス生産ガス消費199419951996199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011年出所:BP統計図8マレーシアのガス生産・消費の推移21石油・天然ガスレビュー拡大してきた。 東南アジアのガス政策は、健全なエネルギー市場育成・ひょううガス市場拡大を標する国際機関(エネルギー機関・ガス関連機関)からしばしばその非効率性を批判されてきた。その趣旨は、「補助金付きの安価なガス供給は、①ガス生産者の投資意欲を損ね、その供給を阻害する、②安価なガス供給は消費者の浪費を招いて供給力以上に需要を増加させ、健全な市場育成を妨げる」というものである。 経済の発展途上にある東南アジア各国政府当局にとっては、エネルギー価格決定を市場に委ねることは政治リスクを生む懸念があった。特にインドネシアでは1990ちゅう用に使われる灯油を含むエネル年代後半に、広く厨房ぼ榜ぼう再生可能水力原子力石炭ガス%100908070605040302010001234567東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化ALAYSIAMALAYSIAGas FieldOil FieldINDONESIAINDONESIABLOCK KMURPHYBLOCK HMURPHYFLNGFLNGBuluhBuluhRotanRotanDol?nDol?nBLOCK GBLOCK JSamarangSt.JosephErb WestKotaKinabaruLabuanLabuanMathanol PlantMathanol PlantSabahBLOCK 2CBLOCK 2DMⅡMⅡ2,000m2,000mBLOCK CA1TOTAL DEEPKikehKikehBLOCK CA2PETROLEUMBRUNEIGumusutGumusutKinabalu1,000m1,000mKasawariKasawari200m200mSK-316KumangKumangMLNGⅠMLNGⅠFLNGFLNGKanawitKanawitMLNGⅠ,ⅡMLNGⅠ,ⅡSK-306BRUNEIMiriSarawakMALAYSIAMALAYSIABintuluINDONESIA出所:JOGMEC作成図9サラワク州ビンツルのマレーシアLNGとサラワク州・サバ州ガス田、パイプラインPiped Gas SupplyLNG Import Capacity2015201620172018201920202021202220232024202520262027202820292030年マレー半島市場へのPLガス供給とLNG受け入れ能力(見通し)MMscfd4,0003,5003,0002,5002,0001,5001,00050002012件の悪い案件が中心になってくる(高温高圧、高CO2)。 Petronasは、マラッカおよびジョホールにマレー半島市場向けLNG受入基地建設を進めている。一方、マレーシアはサラワク州のLNG輸出量を維持する方針である。2012年2月、サラワク州沖合新規発見ガス田(Kasawari)開発、マレーシアLNG増強を相次いで表明した(第9トレイン建設、液化能力合計2,400万→2,760万トン)。 マレーシアはガス利用先進国の印象が強いが、エネルギーはなお統制価格で安価に設定されている。1997~1998年のアジア財政危機に際して、政府がそれまでの石油製品価格リンクで市場に委ねていたガス価を公定価格に移行させた経緯がある。ガス価格の補助金相当額は図1020142013出所:Petronasガス事業を独占するPetronasが負担している。 しかし、2000年代後半、原油価格高騰によってエネルギーコストが上昇して補助金額が増加したことから、222012.7 Vol.46 No.4アナリシスKinarutKinarutュ府はエネルギー部門の補助金負担削減のためにエネルギー価格を引き上げ、市場価格に近づけようとしている。政府は、第10次計画・エネルギー政策のなかで、エネルギーへの補助金を徐々に削減して、ガス価格を2015年までに市場価格とする目標を掲げている。徐々に補助金を削減して撤廃するまで、6カ月ごとにMR3(=US$0.91)/MMBtuのガス価格値上げを行う計画である。 これに先立ち、2009年3月には35~80%の大幅なガス価格値上げが実施された。その後も段階的にガス価格引き上げを実施している。マレーシア政府にとって、計画に沿って今後のガス価格引き上げを実施できるかどうかによって、高額の輸入LNGを国内市場向けに導入する政策の可否が決定される。 域内のエネルギー供給状況と輸入LNGの高価格から判断して、増加する電力需要をガス火力で賄うのは現実的ではない。マレーシアのLNG輸入は既存のガス火力発電所操業を賄う範囲にとどまり、増加する電力需要に対する新設発電所建設は主に石炭火力で対処すると見られる。燃料炭調達は、世界最大の一般炭輸出国となった隣国インドネシアからの輸入が可能である。b.タイ タイの天然ガス生産量は、Arthit、Bongkotなどシャム湾での主要ガス田増産によって2010代半ばまで増加するが、確認埋蔵量に基づく生産量はそれ以降漸減する。タイは更に、隣国ミャンマーのYadana、Yetagunガス田(2014年にM9鉱区ガス田からの輸入開始を計画)、マレーシア・タイ共同開発地域(MT-JDA)からガスを輸入している。両国(地域)からのガス購入量も2020年以降は漸減する。国産ガス・パイプラインガス輸入から構成される既存供給源からの供給量は2015年ごろから減少に向かうと予想される。 タイ政府・PTTはこうした前提の下に、不足するガス供給量を補うためにLNG輸入を決め、2011年5月にLNG輸入を開始した。現在、PTT子会社PTT-LNGがRayong県Map Ta Phut 産業港のLNG受入基地(能力500万トン/年)でLNG輸入を実施している。 タイは2020年ごろを目途に原子力発電開始を計画していたが、2011年3月の東電・福島原発事故で、原発建設計画は3年程度の遅延を生じる見通しである。需給見通し変更に伴うエネルギー不足は発生しないと見られている。こうした状況下で、LNG受入基地能力拡張(500万→1,000万トン/年)、第2 LNG受入基地建設の可能性も議論されている。 タイ発電公社EGATは2010年発電設備計画(PDP 2010)において、燃料別の発電量を想定している。 タイの発電用燃料はガス中心であり、2010年発電実績のガス比率が68%の高率であった。将来の計画では、ガスによる発電量は2019年をピークに漸減を見込んでいる。代わって、輸入炭による石炭火力比率およびラオス等近隣諸国からの水力発電による買電量増加を計画している。MMcfd6,0005,0004,0003,0002,0001,0000CAGR 5%5,14320%20%7%7%14%14%GSPGSPNGVNGVIndustryIndustryPowerPower59%59%4,06417%17%4%4%11%11%68%68%LNGLNGImportImportM9M9CAGR 5%4,06421%21%2%2%20%20%79%79%78%78%MMcfd6,0005,0004,0003,0002,0001,00005,1439%9%LNGLNG20%20%ImportImportDomesticDomestic71%71%201020112012201320142015年201020112012201320142015年出所:PTT 2010年11月「ASEAN+3天然ガス会議」図11タイの天然ガス需要(左)・供給見通し(右)23石油・天然ガスレビュー東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化il FieldGas FieldGas PipelineGas-fired Power StationLNG Receiving TerminalLAOSSIRIKIITSIRIKIITTHAILAND0100km200MYANMARYADANAYADANAGawthakaGawthakaZawtikaZawtikaKakonnaKakonnaShwe Shwe PyiHtayPyiHtayYetagunYetagunINDIATHAILAINDONDNESIABANGKOKBANGKOKMap Ta Phut LNGMap Ta Phut LNGCAMBODIAOCAPLATONGPLATONGKhanomKhanomPAILINPAILINVIETNAMBONGKOTBONGKOTMTJDAMTJDA出所:JOGMEC作成図12タイのガス関連設備(ガス田、パイプライン)とMap Ta Phut LNG受入基地MwH350,000300,000250,000200,000150,000100,00050,000DieselRenewableFuel OilImported PowerNatural GasImported CoalLigniteNuclear68%68%02010Natural gasNatural gas20206%6%19%19%36%36%24%24%6,0005,0004,0003,0002,0001,000MMcfd8%8%15%15%77%77%6%6%14%14%22%22%58%58%Gas demand forecast(CAGR during 2012?2030)?1%:Total ?1%:Power ?0%:GSP :Industry ?2%:NGV ?1%5,4227%7%17%17%18%18%NGVIndustryGSPPower58%58%NuclearNuclear11%11%年203002000200220042006200820102012201420162018202020222024202620282030年出所:EGAT 2010年版発電計画(PDP 2010)出所:PTT 投資家向け 2012/Q1分析資料図13タイの燃料別発電量見通し図14天然ガスの用途別需要見通し242012.7 Vol.46 No.4アナリシスtoe180,000160,000140,000120,000100,00080,00060,00040,00020,00002003CAGR 3.6%CAGR 3.9%87,6512%2%13%13%14%14%33%33%38%38%106,2633%3%13%13%14%14%38%38%32%32%126,5884%4%13%13%14%14%Hydro/ImportHydro/ImportRenewableRenewableCoal/LigniteCoal/LigniteNatural GasNatural Gas38%38%OilOil31%31%CAGR 2.8%CAGR 2.4%145,6041%1%6%6%14%14%15%15%35%35%29%29%163,812NuclearNuclear2%2%6%6%15%15%17%17%33%33%27%27%20042005200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020202120222023202420252026年出所:PTT 投資家向け2012/Q1分析資料図15タイの1次エネルギー消費見通し PTTによるタイの長期ガス需要見通しは、このEGAT発電計画に対応している。ガス需要が2015年ごろまで増加した後は、発電、産業用ともに2030年に至るまでほぼ横ばいを見込んでいる。このガス需要見通しに対応する1次エネルギー消費見通しでは、2010年に最大のエネルギー供給源であったガスは2026年までに最も大きく比率を減らす。代わって供給量・比率を最も増やすのは石炭、次いで再生可能エネルギー、エネルギー輸入(電力)と想定されている。3. 国によって異なるLNG事業戦略:インドネシアとマレーシア 世界のLNG供給国に占める東南アジア比率が縮小している。ガス供給の多様化、LNG市場のグローバル化(東アジア市場向け中心→世界各市場向け)の観点から見ると、ガス埋蔵量追加量が世界の他地域に比べて比較劣位にある東南アジア比率の低下は自然な流れに思われる。アラスカ他ノルウェートリニダード・トバゴ赤道ギニアナイジェリアリビアエジプトアルジェリアイエメンオマーンアブダビカタール億m3サハリン豪州ブルネイマレーシアインドネシア1996199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011年3,5003,0002,5002,0001,5001,0005000 しかし、国内市場向けガス供給の対処に伴って、東アジア市場向けの主要LNG供給国であるインドネシアとマレーシアは対照的なLNG輸出戦略を採ろうとしている。(1)インドネシアLNG事業の現況 インドネシア政府は2000年代後半に国内市場向けガス供給に関する議論を重ねた結果、LNG輸出を削減して国内市場向けガス供給に振り向けることを決めた。インドネシアは1970年代~2000年代半ばまで、一貫して世界最大のLNG輸出国だった。しかし2000年代半ば706050403020100%1996199719981999200020012002200320042005200620072008200920102011年出所:BP統計等出所:BP統計等図16世界のLNG輸出の推移図17世界のLNG輸出に占める東南アジア比率の低下25石油・天然ガスレビュー東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化6率=70%)の共同調査を行う。こうした高CO2ガス田の商業生産が可能になれば、サラワク沖合に数多い高CO2めガス田開発への目がつき、MLNG向けフィードガス供給が更に拡充する。しかし開発・生産条件が悪いガス田からのフィードガス供給比率が増加する場合、LNG事業のコストアップにつながることに留意する必要がある。 MLNGは、2015~2017年にかけて、東京電力・東京ガス・韓国Kogas・台湾CPCなど東アジア主要LNG購入者との長期契約更改期を迎える。Petronasは東アジア需要家とのLNG売買契約の継続を目指して、LNG供給力の拡大・改善を強調し、買い主にアピールするなど、着々と手を打ってきた。これまでマレーシアは、長期売買契約を更改するには原料ガス供給力が不足すると見られて、契約更改には力不足とされてきた。ちなみに、類似した状況を抱えるブルネイLNGの日本側との長期契約更改では、契約量は半減されて契約期間も短縮されている。 しかし2011年3月の福島原発事故以降、東アジアLNGの需要見通しが上方修正され、LNG需給見通しに変化が生じた。併せてPetronasが新規ガス田を開発し、MLNG液化能力増強を行うことから、Petronasの契約交渉にとっては追い風である。処ど(3) インドネシア・マレーシアの異なるLNG事業戦略の背景 Petronasは産油国NOCのなかでは自国の残存資源量が少なく、自国での事業活動拡大に制約があるため、早くから事業の国際展開を図ってきた。また優位性を生かせる事業分野としてLNG操業に自ら深く関わってきた。Petronasの海外探鉱事業では大きな成功事例はまだない。しかしLNG事業では、東アジア購入者の間で、信頼のおけるLNG供給者としての評価を築き上げてきた。エジプトLNGにも参入しており、カナダ西岸ではガス生産者Progress社とともに東アジア向けの新規LNG事業立ち上げを計画している。PetronasにとってLNG事業は上流事業に次ぐ重要な事業部門であり、収益源である。将来の業容拡大のなかでLNG部門に期待するところは大きい。マレーシア政府にとっては、Petronasは最大納税者の一翼を担い、Petronasの発展に占めるLNG分野の重要性を十分に理解している。 LNG事業政策に対するインドネシアとマレーシアのスタンスの違いは、一義的には政府のガス政策の具体的な実行方針の違いである。インドネシアは、LNG輸出量の大幅削減によって国内市場向けに国産ガス・LNGを振り向けようとする。当面は高額な輸入LNG購入をには原料ガス供給が低迷して、2006年に最大輸出国の地位を新興LNG大国のカタールに譲った。2011年には、カタール、マレーシアに続く第3位のLNG輸出国となった。 インドネシアは2010~2011年に、東アジア市場(日本、韓国、台湾)に対するLNG長期契約量を大幅に削減して、LNG主要供給国としての地位を降りる意図を明確にした。日本向け契約量は、以前の1,200万トン/年 以上から、300万トン/年への大幅削減になった(供給力があれば300万トンの追加オプションあり)。ただし、ジャワ島のLNG受入基地完成が数度にわたって遅れ、2012年半ばにようやくLNG受け入れを開始した。2010~2011年は国内のLNG消費がなかったため、長期契約終了後に生じたLNG供給可能量は短期契約・スポット販売で輸出を継続した。 先に述べたように、インドネシアのガス転換は、石油系燃料を使用する小規模な発電所・産業需要を中心に行われている。石油系燃料はガスより更に高く、また輸入品が多く補助金交付による国家財政負担が大きかったため、国内のエネルギー配分の観点からは合理的と考えられる。インドネシア経済は、タイ、マレーシアに続いて工業製品輸出国の特徴を強めており、エネルギー輸出の依存度が下がっていることは事実である。 しかし、これまでの長期間にわたって、世界最大のLNG輸出国として東アジア市場向けLNG供給に果たしてきた地位を簡単に放棄すべきだったのだろうか。かつては国営石油会社PertaminaがLNG事業にある程度の機能を持ってはいた。しかし2000年代の改組後、自社の経営政策を立てる機能が大きく低下し、LNG産業を石油企業の戦略的分野と認識できなかった側面が垣間見える。隣国マレーシアのPetronasがLNGを成長分野として更に発展させようとする姿勢と、対照的である。(2)マレーシアLNG事業の現況 マレーシアはマラッカLNG受入基地建設を完了させ、2012年にLNG輸入を開始する。しかし、サラワク州ビンツルにあるマレーシアLNG(MLNG)は、依然、輸出継続の意思を明確にしている。 MLNG を操業するPetronasは、2012年2月に相次いで、サラワク州沖合で新規に発見された大型ガス田Kasawariの開発、MLNG液化設備増強(第9トレイン370万トン/年の増設)を発表した。中長期的には、サバ州沖合油田(Gumusut等)随伴ガスを陸域パイプラインでビンツルに輸送してMLNGフィードガス用に用いるなど、着実なフィードガス供給体制を整えつつある。更にTotalとともに高CO2含有ガス田K-05開発(CO2比2012.7 Vol.46 No.4アナリシスLOCK 2CBLOCK 2DMⅡMⅡBLOCK CA1Total DEEPBLOCK CA2PETROLEUMBRUNEI2,000m2,000mGumusutGumusut1,000m1,000mKasawariKasawari200m200mNC8 SWNC8 SWSK-316MLNGⅠ,ⅡMLNGⅠ,ⅡMiriBintuluMLNGⅠMLNGⅠFLNGFLNGKanowitKanowitGas FieldOil FieldKumangKumangSK-302BK05K05SK-306MALAYSIAMALAYSIAINDONESIAINDONESIA出所:JOGMEC作成図18東マレーシア・サラワク州沖のマレーシアLNGと沖合ガス田群控える。これに対して、マレーシアは主たる市場のマレー半島市場向けに輸入LNGを当てる一方で、サラワク州のMLNG輸出量を維持しようとしている。また、PetronasはLNG購入先の豪州クイーンズランド州GLNG権益27.5%を購入して事業参加した。 次に両国のLNG政策の違いには、PertaminaとPetronasの企業としての成熟度が大きく関係している。Petronasは、全ての国内油ガス田に自社権益を保有することで安定的な収入を確保して主体的に企業経営を行い、将来の企業成長ビジョンを自ら定めている。これに対しPertaminaは必ずしも国内の有望な油ガス田に権益を保有しておらず、もともと収入基盤が弱い。国内市場向けに十分な石油製品を供給するだけの原油処理能力を持たないため、原油価格高騰下で国際市場から高い製品を購入して安い公定価格で販売せざるを得ず、大きな欠損を生じている。まずは収益構造が不安定である。また2001年の石油ガス法改正で政府機能を失い、政府が株式を保有する特殊法人に改組された。企業としての実力は拡充しつつあるものの、いまだ収益性は弱い。既存LNGプロジェクト(アルン、ボンタン)のマーケティングを担当しているとはいえ、全般的なLNG事業への関与の度は弱い。新規LNG事業(タングー、スノロ、アバディ等)にも直接関与していない。 このようにPertaminaはPetronasと異なり、インドネシアのLNG産業の将来に直接関与する立場にない。インドネシアは1990年代の政治的混乱期を経て、2000年代にエネルギー政策が大きく転換するにあたって、将来のエネルギー成長分野としてLNG産業の重要性を適切に判断して育成する視点が欠落していたと考えられる。 将来のインドネシアのLNGプロジェクトは、政府の監督の下にそれぞれの事業者に委ねられる。なお東南アジアでは最大の探鉱ポテンシャルを持つインドネシアでの新規発見とともに、LNGプロジェクトの健全な発展を願う。27石油・天然ガスレビュー東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化S. 東アジア市場へのLNGフローの変化(1)LNGフローの変化 本項では、既述の東南アジア・ガス需給の変化とLNG輸入開始を念頭に置きつつ、東アジア市場向けLNGフローの変化を考える。世界のLNG需給は新たな展開を迎えようとしている。a.LNG需要サイド ・ まず、北米のシェールガス等非在来型ガスの好調な生産見通しにより、米国は将来のLNG輸入市場の機能を返上した。2011年にLNG輸入比率で63%を占めたアジア市場が引き続き最大のLNG市場の位置を維持する。 ・ ただし、今後はアジア市場内部の構成比率が、成熟経済圏中心から、新興経済圏へと徐々に変化していポルトガル他他ポルトガル1%1%メキシコ・メキシコ・中米中米2%2%2011年LNG輸入量(総量2億4,180万トン)南米南米3%3%日本日本32%32%韓国韓国15%15%イタリアイタリア3%3%トルコトルコ2%2%ベルギー・ベルギー・オランダオランダ2%2%フランスフランス4%4%クウェート・クウェート・ドバイドバイ1%1%米国・米国・カナダカナダ4%4%英国英国8%8%スペインスペイン7%7%インドインド5%5%中国中国5%5%台湾台湾5%5%タイタイ0%0%出所:BP統計等図19LNG輸入国の内訳(2011年)万トン 年日本・韓国・台湾中国インド東南アジア16,00014,00012,00010,0008,0006,0004,0002,00002011出所:JOGMEC作成20152020年く。そのなかで、中国はシェールガス商業生産の可否によってLNG輸入の必要量が大きく変動するため、長期的に最大の不安定要因となる(2020年以降)。 ・ 東南アジアのLNG消費量は拡大するものの、長期的な新設発電用エネルギーとしては石炭が選好されると見られ、アジア市場全体で東南アジアが占める比率は一部分にとどまる。b.LNG供給サイドも大きな変化を生じる ・ これまで最大のLNG供給地域だった東南アジアの供給比率は徐々に低下する。これは本稿前段で議論したように、ガス新規供給力の低下と域内ガス需要増加による。 ・ LNGの最大供給地域としてオセアニア(豪州、PNG)が台頭する。現在3プロジェクト(NWS、ダーウィン、Pluto)から成る豪州のLNG供給力は、2015年から2020年にかけて飛躍的に増加し、カタールに取って代わる世界最大のLNG供給国になる(順調に進展すれば2017年)。 ・ 更に長期的には、北米、東アフリカが新規LNG供給国として登場する(2010年代末~2020年代)。 ・ 北米、東アフリカの新規LNG登場時期には(2020年以降)、新規供給者間の競争が激化する可能性がある。豪州で投資未決定の後発LNGプロジェクトは契約獲得競争が激しくなる結果、成立しない可能性がある。豪州はコスト高、労働力不足の弱点を抱えており、長期契約獲得が遅れるほど不利になる。万トン 年東南アジアオセアニア中東(設備×50%)その他12,00010,0008,0006,0004,0002,00002011出所:JOGMEC作成20152020年図20地域別に見たアジア市場のLNG需要想定図21地域別に見たアジア市場向けLNG供給の可能性282012.7 Vol.46 No.4アナリシスェ一長一短の様相を呈するが、コストアップ要因を抱えるプロジェクトは、やや不利になる可能性がある(豪州の後発案件等)。長期契約獲得競争は既に始まっており、契約が獲得できなければプロジェクトが成立しない。(3) 東アジアのLNG価格フォーミュラ 米国でLNG輸出申請が数多く提出され(2012年半ばで13件以上、申請液化能力合計1億トン/年以上)、Cheniere社Sabine Pass LNGがタリフ方式(H.H市場価格での原料ガス購入価格+固定タリフ)で長期契約を締結したことから、東アジアの原油価格を指標とするLNG長期契約価格フォーミュラ変更への期待が高まっすうとして、欧州大陸で市場価格によるガス取ている。趨引比率が上昇しているように、将来は他地域でも市場価格による取引比率が増加すると考えられる。東アジアで最近締結されたLNGポートフォリオ契約(供給プロジェクトを特定しない)では、価格要素に他地域の市場価格要素が部分的に使用されている模様である。しかし、その導入タイミングと程度に関しては冷静に考える必要がある。 ・ 東アジア向けLNG供給は長期契約中心であり、事業採算と価格フォーミュラを確定してからプロジェクトが成立する。勢せい ・ 現時点では、東アジア市場での新規LNG契約のほとんどが豪州案件であるので、2020~2025年の期間の東アジア向けLNG供給の40~50%はオセアニアLNGによって占められる。供給形態は、原油価格を指標とする長期契約フォーミュラによる。 ・ 他の既存LNG供給地域(東南アジア、中東)と新規LNG供給地域(東アフリカ、カナダ)の供給形態も、基本的には原油価格を指標とする長期契約である。 ・ 米国のLNG輸出価格フォーミュラは、H.H市場価格を基本とする。したがって、米国でどれだけのLNG輸出が認可され、どの程度の輸出供給力が確保できるかが問題になる。申請案件全体の1/3~1/4程度が成立すると見るエネルギー専門家は多い(→3,000万~5,000万トン/年)。 ・ ここでは米国のLNG供給力を4,000万トン/年、うち60%が東アジアに供給されると仮定する。 4,000万トン/年×60%=2,400万トン/年が東アジア市場向け ・ 本項の2020年時点のアジアLNG需要=2億3,000万トン/年 ・ アジアLNG市場における米国LNG比率=2,400万/2億3,000万=10%ドイツ英国米国東アジア(日本)3月5月7月9月3月5月11月2012年1月024682011年1月出所:NYMEX、ICE、IMF、日本財務省貿易統計をもとに推定※米国:Henry Hub先物価格(出所:NYMEX)※英国:NBP先物価格(出所:ICE)※独:ロシア国境渡し天然ガス価格(出所:IMF)※日本:平均輸入LNG価格(出所:財務省貿易統計他)図22市場別のLNG価格・ガス価格$/MMBtu1816141210くひっ迫ぱ(2)時期によって大きく変化するLNG需給 2012年夏季、日本は関西電力大飯原発再稼働にこぎしてつけたものの、なお電源不足からLNG調達が逼いる。LNG需給タイトを反映して、2011年4月以降、東アジアLNGスポット指標価格が上昇して、欧州LNGスポット価格との価格差が拡大している。 しかし、LNG短期需給(2012年)、中期需給(~2015年ごろ)、長期需給(2010年代末以降)は大きく異なることに留意すべきである。 ・ 2012年夏季、日本の原発停止で電源は既に不足しており、代替エネルギーを調達せざるを得ない。新たに操業開始する長期契約によるLNG供給源は少なく、不足分はカタール、大西洋圏の非長期契約カーゴを短期・スポットで調達せざるを得ない。タイトな需給を反映して価格は高止まりしている。 ・ 2015年ごろまで、やはり新規LNGプロジェクト稼働が少ないためにタイトなLNG需給状況が続くと見られる。 ・ 2015年ごろから豪州新規プロジェクトが順次生産を開始する。東アジア向け長期契約供給量が潤沢になってスポット価格は沈静化、欧州水準に近づく。 ・ 長期的には(2010年代末以降に操業開始する案件)、前項で述べたように、豪州未投資決定案件に加えて、北米・東アフリカLNG案件の登場から長期契約獲得競争が厳しくなる。東アフリカ、カナダ案件はアジア市場志向と見られ、長期契約を獲得しないと資金手当ての目処がつかない。それぞれの地域の案件29石油・天然ガスレビュー東南アジアのLNG輸入開始、東アジア市場向けLNGフローの変化@・ アジアLNG向けLNG供給のうち、10%程度が米国H.H市場価格ベース したがって、中期的に(~2025年ごろ)、アジア市場へのLNG供給は大勢が原油価格を指標とする長期契約ベースであり、米国市場価格に基づく取引比率は一部分にとどまると考えられる。なお、BG等ポートフォリオLNG事業者による供給は、現在のようなスポット価格で供給される。 この10%程度の市場価格比率は、決して侮れる数字ではない。LNG需給緩和下では、長期契約価格条件の引き下げ要因として機能する可能性がある。 売買条件交渉では、当然ながら、買い手は安く買おうとし、売り手は高く売ろうとする。日本を含む東アジア伝統市場はガス調達のオプションがLNG輸入に限られている。東アジア市場は「プレミアム市場」と言われ、代替調達源がないから、言い値で売れる市場と見なされている。購入側は売り手の好意を期待するのではなく、できるだけ交渉材料をそろえるべきである。2009~2010年にE.ON Ruhrgasなど欧州大陸のガス購入者がロシアGazpromから譲歩条件を引き出した際(購入量の15%を市場価格扱いとする)、欧州大陸のガス調達は最大供給元Gazprom(約25%)のほかに、域内生産(オランダ、英国)、ノルウェー・北アフリカからのPLガス輸入、英国・ベルギー経由のカタールLNG輸入など、代替調達オプションが豊富だった。 日本市場もガス調達の交渉材料となり得るオプションを簡単に放棄すべきではない。既存の域内ガス生産は、ほとんどなくとも、実現可能性のあるいくつかのオプションが考えられる: ・ メタンハイドレート商業生産の実現 ・ パイプライン・ガス輸入 (サハリン、韓国経由のロシア産ガス) ・ 一定比率の原子力発電維持 (ガス需要規模のコントロール→ガス需給逼迫懸念の緩和) ・ エネルギー需要抑制・効率消費に係る手法開発・技術改良 ・ 液化設備建設技術改良(洋上液化技術を含む) 液化事業進出・技術供与おわりに 本稿は、これまでの主要LNG供給地域だった東南アジアがLNG輸入国に転じようとしている現情認識から始めて、東アジア市場向けLNGフローの変化を概観し、LNG調達価格の見通しを考えた。各地域でガス需給の変化、新規LNG供給地域の登場、それに伴うフロー・購入形態の変化が起こりつつある。 この変化の方向性を引き続き、注視していきたい。執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)長野県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。当時のテーマは低開発経済の開発論。日本石油(株)(現JX日鉱日石エネルギー(株))入社。資産管理・新規案件発掘業務に従事。主要担務は、アジア太平洋地域の石油ガス開発状況・プロジェクト調査、世界ガス・LNG事業状況調査。2010~2012年期、世界ガス会議(マレーシア・クアラルンプール開催)の準備を行う世界ガス協会ガス市場委員会の東アジア・グループリーダー。2012年7月からJX日鉱日石リサーチ勤務。エリア・スタディーに興味を持っている(主に旧大陸)。余暇は、週末の競技ボート練習、読書(歴史物・中国武侠小説)。2004年10月からJOGMEC 石油企画調査部 上席研究員。1991年から日本石油開発(株)で海外の石油ガス上流302012.7 Vol.46 No.4アナリシス |
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