ページ番号1006553 更新日 平成30年2月16日

非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響

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レポートID 1006553
作成日 2015-01-26 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般非在来型
著者
著者直接入力 坂本 茂樹
年度 2015
Vol 49
No 1
ページ数
抽出データ JOGMECK YMC一般財団法人 エネルギー総合工学研究所坂本 茂樹非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響はじめに 非在来ガスの開発が今後の世界のガス供給に大きな影響を及ぼすと考えられる。思い起こせば、2008年のLNG輸入量が半減していたことを契機に、米国社会はシェールガス生産急増の実態に気づき、それは世界に大きな衝撃を与えた。その後、米国市場の天然ガス価格が低く原油価格が高いことから、採算性のよい原油・液分の生産に注目が集まり、シェール層からの炭化水素生産は「シェール革命」と呼ばれてさまざまな解説が行われてきた。 本稿では、最初に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)および国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)のデータを基にして非在来型ガス資源の評価と開発の見通しを述べる。次に、シェールガスの商業生産が進展している米国の状況とシェールガス増産がエネルギー業界に及ぼしている影響、最後に米国以外の地域の非在来型ガス開発の見通しを述べる。1. 世界の非在来型ガス開発の現況(1)非在来型ガスの資源量①EIAのシェールガス資源評価 EIAは2011年4月に初めて発表した「世界のシェールガス資源評価」に続いて、2013年6月にシェールガスに加えてシェールオイル資源量の評価結果を発表した(図1)。2011年の初回シェールガス評価以降、シェールガス・シェールオイル開発は世界的なブームを引き起こし、各地で探査活動が活発化した。 2013年の第2回評価では、前回評価に比べて評価対象の国・堆積盆地・シェール構造数が増加し、新たな探査活動によって判明したシェール構造の地質情報が評価に反映された。旧ソ連などの追加情報が資源量増加に貢献した結果、シェールガスの技術的回収可能資源量(以下、「資源量」)は2011年評価時に比べて10%増加した。しかし評価対象は、なおデータ入手が可能な堆積盆地に限定されており、中東、カスピ海地域など炭化水素資源が豊富な地域は含まれていない。したがって現時点での資源評価は、今後評価対象地域が拡大すると、資源量が大きく変わるとの前提に立っている。 2013年評価では、最大のシェールガス資源保有国は、前回と同様に中国であった(図2)。また新たにシェールガス評価が進められたアルゼンチンとアルジェリアの資源量が大幅に増加してそれぞれ第2位および第3位に上昇した。なお、2013年に初めて評価を実施したシェールオイル資源保有の上位3国は、ロシア、米国、中国であった。 シェールガス・シェールオイルに係る包括的評価は他には公開されていないため、このEIA評価が参照されることが多い。②IEAの非在来型ガス資源評価 IEAは2014年11月に発表した長期エネルギー見通し(World Energy Outlook 2014、以下「WEO2014」)において、EIAのシェールガス評価を踏まえた上で、世界の非在来型ガス資源量を述べている(EIAの評価資源量と同様に、「技術的回収可能量」の概念)。 IEAのWEO2014ガス資源量比率では、在来型ガスが58%となお過半数を大きく上回り、非在来型ガス比率は42%である(図3)。非在来型ガスでは、タイトガス*1、CBM(Coalbed Methane:炭層メタンガス)、シェールガスがそれぞれ10%、6%、26%と推定されている。29石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 2915/01/05 18:49:06アナリシスOGMECK YMC出所:EIA“Technically Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resources"(2013年6月)図1シェールガス・シェールオイル評価対象の堆積盆地中国中国15%15%その他その他47%47%合計7,299TcfEIA 2013年アルゼンチンアルゼンチン11%11%アルジェリアアルジェリア10%10%米国米国9%9%カナダカナダ8%8%シェールガスシェールガス26%26%在来型ガス在来型ガス58%58%合計16,415TcfIEA 2014年CBMCBM6%6%タイトガスタイトガス10%10%出所: EIA“Technically Recoverable Shale Oil and Shale Gas Resources”(2013年6月)を基に作成出所: IEA"World Energy Outlook 2014"(2014年11月)データを基に作成図2世界のシェールガス資源量比率図3世界のガス起源別資源量比率 地域別には、それぞれの地域の資源評価段階が異なるために、その特徴も異なってくる。現在、主要なガス供給地域であるロシアなど旧ソ連と中東は豊富な在来型ガス資源量を保有するが、非在来型ガス評価は相対的に遅れている(図4)。逆に大きなガス需要規模に比べて在来型ガス資源量に限界が見えるアジア太平洋、北米では、アジア太平洋石炭生産国でのCBM、北米および中国のシェールガスなど、非在来型ガス資源評価が進展している。北アフリカのアルジェリア、南米のアルゼンチンでも近年シェールガス・シェールオイルの評価が活発に進められてきた。このように、在来型ガス資源量が豊富な旧ソ連、中東では、当面の非在来型ガス資源開発のニー30アナリシス_坂本.indd 3015/01/05 18:49:072015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMCズが低いために、その評価が遅れている。 それぞれの地域における評価済みの非在来ガス資源比率では、米国で実現されたシェールガスブームの影響を大きく受けて、旧ソ連、中東を除く地域すべてにおいてシェールガス比率が高い(図5)。なお、主要な石炭生産国のロシアを含む旧ソ連、中国、豪州、インドネシアなどを含むアジア太平洋では、CBM比率も相対的に高い。Tcf8,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000欧旧ソ連/東東中洋平太アジア国カナダ米アフリカ出所: IEA"World Energy Outlook 2014"(2014年11月)データを基に作成図4各地域の起源別ガス資源量シェールガスCBMタイトガス在来型ガスラテンアメリカ州欧DCEO1009080706050403020100%シェールガスCBMタイトガス欧旧ソ連/東東中洋平太アジア国カナダ米アフリカラテンアメリカ州欧DCEO出所:IEA"World Energy Outlook 2014"(2014年11月)データを基に作成図5各地域の起源別非在来型ガス資源比率31石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 3115/01/05 18:49:08非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響OGMECK YMC(2)非在来型ガス開発の展望 IEAがWEO2014の新政策シナリオで想定するガス生産見通しを図6に示す。 シェールガスをはじめ非在来型ガス生産量は堅調に増加すると見るものの(表1)、2040年に至るまで、ガス生産の大勢はなお在来型ガスによって占められる。200180160140120100806040200Tcf石炭ガス化シェールガスCBMタイトガス在来型201220202025203020352040年出所:IEA"World Energy Outlook 2014"(2014年11月)データを基に作成図6世界の起源別ガス生産量見通し表1全ガス生産中の非在来型ガス比率2012年17%2020年24%2025年27%2030年30%2035年31%2040年31%出所:IEA"World Energy Outlook 2014"(2014年11月)2. 米国のシェールガス開発と今後の展望(1)天然ガス生産の推移 米国の天然ガス生産は、2000年以前のピークの1973年から1983年までは減少基調、その後沖合の生産増加に伴って増加に転じたが、2000~2007年は横ばい状態にあった。2000年代半ばには、在来型ガスの残存埋蔵量推計等の結果から、以降は長期的に生産減退が続くと考えられていた。しかし2008年に生産が増加に転じて以降、大幅な増産が続いている。2011年には既に1973年のピーク生産量を更新した。 米国の生産井別の天然ガス井戸元生産量推移を図7に示す。ガス生産は2000年代半ばまで在来型ガス田が中心であった。それまで増加してきた在来型ガス生産量は1994~2006年にかけてほぼ横ばいとなり、2007年以降は生産減退が顕著である。代わって2000年代半ばか32アナリシス_坂本.indd 3215/01/05 18:49:082015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMCら徐々に生産を増やしてきたのは非在来型ガス(シェールガス、CBM)である。特に2007年以降シェールガス生産が急増して、全体のガス生産量拡大に大きく寄与している。全天然ガス生産量に占めるシェールガス比率は、2013年に40%に達した。 米国のシェールガス生産は、Barnettなどテキサス州年20132011200920072005200320011999199719951993199119891987198519831981Tcfシェールガス井CBM井オイル井ガス井35302520151050出所:EIAデータを基に作成図7天然ガス生産量(井戸元)推移出所:EIA図8シェールプレイ(構造)の分布33石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 3315/01/05 18:49:08非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響OGMECK YMCおよびロッキー山脈地域から始まった。2007年以降、シェールガスの開発・生産地域は北東部など他地域にも拡大している(図8)。 主要なシェールプレイ(構造)のなかでは、2012年9月以降Marcellus(ペンシルベニア州、ウェストバージニア州)が最大のガス生産地域になっている(図9)。2014年10月時点で生産量が多いシェールプレイは、Marcellusに続いて、Eagle Ford(テキサス州)、Barnett2014年1月2013年1月2012年1月2011年1月2010年1月2009年1月2008年1月2007年1月2006年1月2005年1月2004年1月2003年1月2002年1月2001年1月2000年1月05出所:EIAデータを基に作成図9シェールプレイ別のシェールガス生産量推移Bcf/dその他Utica (OH, PA, WV)Marcellus (PA, WV)Haynesville (LA, TX)Eagle Ford (TX)Fayetteville (AR)Barnett (TX)Woodford (OK)Bakken (ND)Antrim (MI, IN, OH)40353025201510TcfEIAIEA4035302520151020152025203020352040年20122020出所:EIA(AEO2014)、IEA(WEO2014)05図10ガス生産見通し(EIA、IEA)34アナリシス_坂本.indd 3415/01/05 18:49:092015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMC(テキサス州)、Haynesville(ルイジアナ州、テキサス州)の順になっている。 また、事業採算性の観点からは、軽質原油、NGL*2など液分の生産比率が高いBakken(ノースダコタ州)、Eagle Fordが注目を浴びている。(2)天然ガス生産の今後の展望①長期ガス生産見通しの比較 EIAのAEO2014(Referenceケース)およびIEAのWEO2014(新政策シナリオ)による米国の長期ガス生産見通しを図10に示す。 両者のガス長期生産見通しを比較すると、EIAのほうが強気の見通しを立てている。これは、EIAのReferenceケースの前提が「現行の政策を継続する」のに対して、WEO2014では現行政策の継続とともに「提言された政策の一部を注意深く実施する」としていることとの違いによるものと考えられる。②EIAの米国天然ガス生産見通し(Referenceケース) EIAは、米国の原油・天然ガスの生産量は生産技術の年図11天然ガス生産見通し(AEO2014 Referenceケース)20382035203220292026202320202017201420112008200520021999199619931990出所:EIA(AEO2014)データを基に作成Tcfシェールガスタイトガス陸域在来型沖合CBMアラスカ4035302520151005表2天然ガスの起源別生産予測2012年生産量2040年生産量2040/2012Tcf比率(%)402016シェールガスタイトガス陸域在来型ガス田沖合在来型ガス田アラスカ随伴ガスCBM合計出所:EIA(AEO2014)9.74.93.91.20.32.51.624.1Tcf19.88.41.62.21.22.61.737.5比率(%) 年平均伸び率(%)5322+2.6+2.0―3.1+2.3+4.6―+0.3+1.635石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 3515/01/05 18:49:10非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響OGMECK YMC出所:EIA(AEO2014速報版)図12原油・液分生産見通し(AEO2014 Referenceケース)年進歩により増加すると想定している。特に天然ガスは堅調なシェールガスの生産拡大によって持続的に増加し(図11)、2012年の天然ガス生産量24.1Tcfから、2040年には56%増の37.5Tcfに増加すると予測している。その間の年平均増加率は1.6%である(表2)。 起源別に見た天然ガス生産の特徴は次のとおりである。 シェールガス生産量は2012年に9.7Tcfだったが、2040年には19.8Tcfへと倍増し、その間の年平均伸び率は2.6%である。全天然ガス生産に占めるシェールガス比率は、2012年に40%だったが、2023年に50%に達し、2040年には53%に上昇する。タイトガス生産量は、2012年にシェールガスに次ぐ4.9Tcfで、全天然ガス生産量の20%を占めたが、2040年には8.4Tcfに増加し、比率は22%となる。2040年までの年平均伸び率は2.0%である。 一方、陸域の在来型ガス田の生産量は、2012年の3.9Tcfに対して、2040年には1.6Tcfに減少する。 このように、米国のガス生産はタイトガスを含む非在来型ガス*3によって担われていく。また、米国市場で原油価格がガス価格に比べて高いためにシェール層の炭化水素開発事業においても採算性のよいタイトオイル生産が脚光を浴び、米国のタイトオイル生産量が急増している(図12)。3. 米国のシェールガス・タイトオイル開発がもたらす影響 商業開発に成功した米国のシェール開発(シェールガス・タイトオイル)は、米国および世界のエネルギー産業にさまざまな影響を及ぼしている。(1)ガス需給の変化①ガス輸出入 世界で最大のガス市場である米国は、伝統的にカナダからパイプライン・ガスを輸入し、またLNG輸入量を徐々に増やしてきた。しかし、パイプラインガスおよびLNGともに2007年をピークとして以降輸入量が減少している(図13)。このタイミングはシェールガス生産量が急増する時期と重なる。2008年のLNG輸入量は前年比46%と大幅減少し、2013年以降は少量を輸入するにとどまっている。米国ガス需給は自給態勢に向かっている。36アナリシス_坂本.indd 3615/01/05 18:49:112015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMCTcf輸入輸出19911993199519971999200120032005200720092011年2013出所:EIAデータを基に作成図13ガス輸入・輸出量の推移出所:EIA(AEO2014)図14天然ガス需給予測(AEO2014)年5.04.54.03.53.02.52.01.51.00.50.0 一方、ガス輸出は隣国メキシコ向けを中心に、堅調に増加している。②ガス需給 米国のガス需給は、天然ガス生産量の増加によって変化していく。EIAはAEO2014のReferenceケースで、米国は2018年から天然ガスのネット輸出国に転じると予測している(図14)。 天然ガス輸入量(LNGとカナダからのパイプラインガス)が減少する一方、メキシコへのパイプラインガス輸出が増加する。また2016年にLNG輸出が開始され、以降、輸出量が増大する。③LNG輸出プロジェクトの進展 米国のLNG輸出プロジェクトは、LNG輸入量減少見通しを反映して、メキシコ湾沿岸に輸入基地を持つLNG輸入事業者が現地で調達可能な安価なガスを原料とするガス輸出モデルとして考案された。 2014年11月時点で7LNGプロジェクトのFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)非締結国向け輸出が許可されており、LNG輸出量は順次増加する(FTA締結国向けを含む合計12.72Bcf/d)(表3)。表3LNG輸出プロジェクト(2014年11月末)LNGプロジェクト州事業者DOE認可時期FTA非締結国向け最大輸出量Bcf/dSabine Pass ルイジアナCheniereFreeport同上テキサス同上Freeport LNG同上2011年5月2013年5月2013年11月Lake CharlesルイジアナSouthern Union2013年8月Cove Point メリーランドDominionCameronルイジアナCameron LNG2013年9月2014年2月2014年3月Jordan CoveLNG Development2014年7月Jordan CoveOregonオレゴンオレゴン合計7プロジェクト(輸出許可8件)日本向け輸出輸入者同左数量万トン/年中部電力・大阪ガス住友商事・東京ガス三菱商事・三井物産―440――230800輸出開始(予定)2016年2018年2018年2019年2017年2018年2019年2.201.400.402.001.771.702.001.2512.72=9,400万トン/年1,470(注)輸出量はFTA締結国向けを含む。DOE:Department of Energy(米国エネルギー省)。出所:各プロジェクトホームページ37石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 3715/01/05 18:49:11非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響OGMECK YMC 130150 140 米国のLNGプロジェクトは市場価格で原料ガスを調達し、LNG売買価格の指標には米国ガス市場価格(Henry Hub価格、以下「H.H.価格」)が用いられる。H.H.価格はアジア、欧州のガス価格に比べて大幅に安い(2014年10~11月平均価格=約$4/MMBtu)。また米国LNGプロジェクトは転売禁止条項がないなど、柔軟な条件が適用される。こうした事情から、東アジアのLNG輸入者の間で、米国LNGがこれまでの硬直的なLNG契約条件に変化をもたらすとの期待感が高い。 東アジアが輸入するLNGの多くは長期契約ベースであり、価格指標には原油価格が使われる。したがって、LNGの長期契約輸入価格はほぼ原油価格によって決まる。H.H.価格前提を$4/MMBtuとする米国産LNGの東アジア到着価格(約$11/MMBtu)に等価となる長期契約LNG価格の原油価格を試算すると、約$74/bblとなる(図15)。 米国ガス市場価格(H.H.価格)は地域ガス需給によって決まり、国際原油価格とはほとんど相関がない。したがって、2016年以降米国LNG輸出が開始された時、米国産LNGと長期契約LNGとの価格は、当該期間のH.H.価格と原油価格がどのようになっているかによって決まる。 一方、2014年下期の原油価格は、米国のタイトオイル生産急増を一つの要素として大幅に下落し、11月末(28日)のドバイ原油は$67.60/bblであった。仮に現時点で米国LNG輸出が可能であれば、2014年11月末時点のH.H.価格を使う米国産LNGと同時期の原油価格を使う日本の長期契約LNG輸入価格とを比較すると、長期契約LNG価格のほうが安くなるとガス価格石炭価格 多くの米国LNGプロジェクトは、日本、韓国など東アジアLNG市場への輸出を指向していると考えられる。Freeport、Cove Point, Cameron LNG輸出プロジェクトには日本事業者が参加しており、LNG輸入契約締結済みである。 25$ 20日本の長期契約LNG価格米国LNG輸入価格 15 10LNG輸入価格 5 0 50 60 70 80 90 100 110 120原油価格(前提) 長期契約LNG価格;係数(傾き)=0.1436(2012年日本の原油・LNG輸入価格から)    米国LNGコスト=H.H.価格×115%+液化タリフ$3/MMBtu+輸送費$3/MMBtu    (Cheniere社Sabine Passプロジェクト方式)出所:財務省通関統計、Cheniere社ホームページ図15日本の長期契約LNGと米国LNG(H.H.=$4/MMBtu)の輸入価格2014年3月2013年5月2012年7月2011年9月2010年11月2010年1月2009年3月2008年5月2007年7月2006年9月2005年11月2005年1月2004年3月2003年5月2002年7月2001年9月2000年11月2000年1月出所:EIA Monthly Energy Review(2014年11月)データを基に作成図16米国の発電所持ち届けの石炭およびガス価格推移(カロリー等価)$/MMBtu14121086420アナリシス_坂本.indd 3815/01/05 18:49:12382015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMC石炭天然ガス原子力2010201120122013年考えられる。 しかし、米国LNG輸出は、輸入価格へのインパクトの他に、東アジアLNG市場に次の変化をもたらしており、既にその影響は小さくない。 a. LNG長期契約の価格指標に、原油価格とともにH.H.など他指標を併せて用いる動きが広がりつつある(価格指標のハイブリッド化)。 b. LNG転売が可能になるなど、柔軟な取引条件が期待される。(2) その他のエネルギー輸出が増加60%504030201002000200120022003200420052006200720082009出所:EIA Monthly Energy Review(2014年11月)データを基に作成図17主要電源比率推移MMU.S.ton(907㎏)01401208060402010020032002 シェールガスおよび随伴生産されるNGL生産量急増に伴い、国内エネルギー需給が変化し、石炭およびLPGの輸出量が急増している。①石炭輸出 米国の発電用エネルギーは、供給力が豊富で安価な石炭比率が高い。しかしシェールガス増産に伴って米国H.H.価格は2012年5月に13年来の低価格$1.95/MMBtu(月次価格)となった。こうして発電所向け石炭とガスの価格差は2012年に最も縮小した(図16)。 発電用エネルギーに占めるガス比率は2004年以降徐々に上昇してきたが、石炭との価格差が縮小した2012年の上昇幅が特に大きかった(図17)。発電用のガス消費量が増加する一方で石炭消費量が減少した。米国の石炭消費量のなかでは、発電用比率が最も高い。この結果、米国の石炭市場では供給が過剰となり、輸出圧力が増大した。なお翌2013年はガス価格が上昇に転じたため、発電用ガス消費が減少して石炭比率が回復する現象が生じた。 一方、欧州北西部の発電用燃料では、価格が相対的に高いガス消費量が減少し、安価な石炭消費が増加してい2004出所:EIAデータを基に作成200520062007200820092010201120122013年1?6月/4102図18石炭輸出量推移た。こうした状況を背景に、米国の石炭はオランダ、英国などガス消費量が多かった欧州北西部向けに輸出が増加した(図18)。②LPG輸出 米国のガス生産量増加とともに、随伴生産されるNGL生産量も増えている。うちエタンはエチレン原料として国内のエチレン製造設備(エタンクラッカー)で消費されるが、生産量が消費量を大きく上回っている。米39石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 3915/01/05 18:49:13非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響OGMECK YMC2014年5月2013年9月2013年1月2012年5月2011年9月2011年1月2010年5月2009年9月2009年1月2008年5月2007年9月2007年1月2006年5月2005年9月2005年1月2004年5月2003年9月2003年1月2002年5月2001年9月2001年1月出所:EIAデータを基に作成02468MMbbl/month201816141210国では安価なエタンを原料とする大規模エタンクラッカー建設計画が相次いでおり、2016年頃から新規設備の稼働が開始される。またエタンは輸送設備建設にコストがかさむため輸出実績が少ないが、欧州のIneos社エタンクラッカー向けおよびインドReliance社向けに輸出が検討されている。 LPG生産も国内消費量を上回って増加しており、中南米、欧州、アジア向け輸出が増加している(図19)。 従来、アジア市場向けLPG供給は中東(カタール、UAE、サウジアラビア)が中心であり、Saudi Aramco社が設定するCP価格*4が適用されてきた。これに対して、米国のLPG輸出価格は市場で決まる(Mont Belvieu出荷)。現在は出荷設備・貯蔵設備が不足して計画的な輸出が難しい状況にあり、中東CP価格と比べて安い価格で輸出されている。今後、出荷設備・貯蔵設備が完備された後には価格水準が上昇するとの見方もある。しかしアジアのLPG購入者には、米国の豊富なLPG供給力とともに、中東CP価格が独占的に使われてきた価格体系に変化をもたらすものとして、米国産LPG輸入への期待が高まっている。図19LPG輸出量推移は中東と並んで、安価な原料コストに裏付けられて競争力の高い化学産業センターになると見られる。 一方、ナフサを主原料とする欧州、日本などのエチレン製造は競争力を失い、設備の一部廃棄、事業高度化などを含む再構築が計画されている。 また、前章で触れたように、米国のガス生産量は堅調に増加すると見込まれることから、米国社会は安価で豊富な燃料調達を維持できると考えられる。IEAは、原料・燃料調達の優位性を主要因として、米国の製造業が欧州、日本と比べて競争力を高めるとの見解を述べている。(3)製造業の化学原料、燃料調達の優位性強化 NGL生産の急増によって、米国化学産業は安価な原料調達が可能になる。米国では、安価なエタンを原料とするエタンクラッカーの新設が続く。昨今の建設ブームから建設コストが上昇して、当初計画からは遅れが生じているが、2016年以降、徐々に大型設備の稼働が開始される。併せて、やはり安価に調達可能なプロパンを原料とするプロパン脱水素装置建設も進められている。米国(4)エネルギー自給態勢へ このように、米国は石炭、天然ガス、石油の化石燃料が自給態勢に近づきつつある。これまで供給が常に不足すると考えられてきたそのエネルギー需給構造は転換期を迎える。これまで禁止されてきた原油輸出解禁議論も起こっている。 米国からLNG、LPGなどのエネルギー消費国への輸出が可能になると、エネルギー輸入国の安全保障上の懸念は若干なりとも緩和される可能性がある。4. その他地域の非在来型ガス開発の動向 EIAの2011年および2013年の米国以外の地域のシェールガス(およびシェールオイル)評価により、米国以外の地域のシェールガス・タイトオイル開発も脚光を浴びている。1章で述べたように、中国、アルゼンチン、アルジェリア、さらに欧州もシェールガスのポテンシャルを有するとの評価がなされている。しかしシェールガス商業開40アナリシス_坂本.indd 4015/01/05 18:49:132015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMC12次五カ年計画の「シェールガス発展計画(2011~2015年)」には、資源量の正確な把握の必要性、主要賦存地域が山間部でガス層が複雑であることやパイプライン未整備による開発コスト高、水平井掘削・水圧破砕法などシェールガス開発に必要な基礎技術の蓄積不足などの問題点が記述されている。これらに対する具体的施策として、評価作業の推進、地質条件に適する掘削技術の開発、パイプライン等のインフラ整備が掲げられている。中国には独自のシェールガス開発技術の蓄積が乏しいため、外国企業との共同事業を通じての技術習得が重要と認識されている。 中国政府は従来、2020年のシェールガス生産目標として600億~800億?の意欲的な数値を掲げてきたが、2014年に300億?へと現実的な数値に引き下げた。 なお、石炭生産国の中国はCBM資源にも恵まれ、その開発、生産も進められている。しかし、生産地から幹線パイプラインに輸送するインフラが未整備であるたじゅう所、小規模LNG設備、ガス火め、生産地でのCNG充力発電所へのガス供給にとどまっており、東部大消費地への輸送は限られている。填てん(2)欧州 EIA評価によると、ポーランド、フランスにシェールガス資源量が多いとされている(それぞれ147Tcf、137 Tcf)。欧州では、概して帯水層など環境への影響の懸念が強い。そのため、フランス、ブルガリア、スロバキアではシェール開発技術の水圧破砕法実施が禁じられており、ドイツでは同手法にモラトリアム(猶予)期間が設定されている。 欧州で最もシェールガス開発に積極的なのはポーランドである。同国では、ガスのロシアへの依存を脱して調達先の多角化を目指す政府が主導してシェールガス鉱区が設定され、有力な外国石油会社の参入を得て、探鉱作業が促進されてきた。しかし現時点で目ぼしい成果は収められていない。2012~2013年にかけてExxonMobil、Marathon、Talismanなど有力な外国石油会社が相次いで同国のシェールガス開発事業から撤退し、探鉱計画には遅れが目立つ。大手ではChevronがなおポーランド国営ガス会社との共同事業契約を維持しているものの、現時点で同国でのシェールガス開発作業進展に向けた明るい材料は見当たらない。 なお英国では、反対運動はあるものの、政府はシェールガス開発を促進させようと法制の整備を図っている。 欧州のシェールガス開発は、探鉱作業実施が可能になってある程度の評価が実施された後、初めて今後のめどが立てられる段階に至ると考えられる。発の可能性を検討すると、米国は世界でも異例に条件が整っていたと考えられる。同国で実現されたシェールガス商業開発が近い将来に他地域で再現される可能性は低いと見られる。地域によって事情が異なるものの、これらの地域においては、米国と比べて次のようなマイナス要因が指摘されている。 ・ 地質構造の複雑さ、深度の深さに起因して、探鉱、ちゅう ・ 人口稠な地域が多く、地表での探鉱、開発作業開発コストが高い(中国、他)つ密み実施が難しい(欧州、中国) ・ 帯水層および地表汚染への懸念が強い(欧州) ・ ガス生産地域から消費地へのパイプラインが未整備(すべての地域) ・ 米国と異なり、当該土地の所有者に地下資源の所有権がないために(炭化水素が生産されてもロイヤルティーを得られない)、資源開発に際して土地所有者の協力を得にくい 北米以外では非在来型資源評価作業が不十分であるため、具体的な生産見通しが立てられていない。商業生産のめどが立った場合は、2010年代後半から生産が徐々に開始され、それが本格的に増加するのは早くても2020年代以降になるものと見られる。 主要な地域の開発状況を以下に記す。(1)中国 EIAのシェールガス資源評価(2011年4月、2013年6月)によると、中国は世界最大のシェールガス資源量を持つ(1,257Tcf=36兆?、技術的回収可能量)」とされ、同国のシェールガス開発に対する関心と期待が高まっている。環境対策の観点からも石炭からのガスシフトを進めようとする中国にとって、シェールガス開発は中長期的にガス供給を増やすための重要な要因である。 現在、四川盆地、オルドス盆地において、PetroChina、Sinopec、CNOOCなどの国営石油会社がシェールガスの開発計画を進めている。外国企業の単独事業は許可されておらず、Shell、BP、Statoil、ExxonMobil等は中国企業と個々に共同調査契約を締結している。2013年3月に、中国政府はPetroChinaとShellが2012年3月に締結した中国初のシェールガス生産分与契約(四川省・富順-永川(Fushun-Yongchuan)鉱区)を承認した。また国営石油会社Sinopecによる2013年の四川省?陵(Fuling)シェールガス田の商業生産開始が報じられている。 中国のシェールガス開発に際する課題は数多く、政府も自国の課題を指摘している。2012年3月に発表された第41石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 4115/01/05 18:49:13非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響OGMECK YMC(3)豪州 豪州では東部クイーンズランド州でCBM開発・生産が進展しており、輸出用LNGプロジェクトが成立している(表4、図20)。米国のシェールガスに準じる非在来型ガスの商業化の成功事例である。 各プロジェクトは日本、韓国、中国など東アジア市場向けにLNG売買契約を締結している。Queensland Curtis LNGが先頭を切って、2014年末に液化設備の操業を開始する予定である。 また同州で生産されるCBMは、既に豪州東部市場に広く供給されている。 シェールガス資源は東部Cooper Basin、西豪州の Canning、Perth Basin、北部準州のGeorgina Basin等に存在し、開発計画が進められている。豪州企業SantosはCooper Basin Moombaシェールガス田で小規模ながら商業生産を開始しており、同Basinで生産される在来型ガスとともに東部市場に供給されている。しかし全豪でのシェールガス開発の本格化にはまだ時間を要すると 見られる。表4クイーンズランド州のCBM-LNGプロジェクト事業名オペレーターQueensland Curtis LNGGladstone LNGAustralia Pacific LNG-1Australia Pacific LNG-2QLD州(CBM-LNG)合計出所:各プロジェクトホームページBGSantos/ PetronasOrigin/ ConocoPhillipsOrigin/ ConocoPhillips投資決定2010年2011年2011年2012年操業開始2014年2015年2015年2016年液化能力(万トン)8507804504502,530出所:Energy Quest社図20クイーンズランド州のCBM生産地域、パイプライン、LNGプロジェクト42アナリシス_坂本.indd 4215/01/05 18:49:142015.1 Vol.49 No.1アナリシスOGMECK YMCおわりに 米国で進展するシェールガス(およびタイトオイル)開発は、同国経済および世界のエネルギー需給・商習慣に大きな影響を及ぼしつつある。一方、2014年11月27日のOPEC総会では加盟国合意が得られずに原油減産が見送られた後、12月上旬の原油価格は$60/bbl台で推移したが、さらに下落する可能性も考えられ、原油需給は新たな展開を見せつつある。こうした投資環境の変化に伴って、豪州、カナダの新規ガス田・LNG事業開発に遅延が発生し、またこれまで順調に進展してきた米国の非在来型資源開発投資にも削減の動きがある。計画される米国のLNG輸出に伴う東アジアを中心とするLNG市場の変化、予想される米国製造業の隆盛がどのような展開をするのか。シェールガス開発がもたらそうとしているエネルギー産業の変化には目を離せない要素が多い。 一方で、容易に離陸できない他地域のシェールガスなど非在来型ガス開発に対しても、どのような施策が必要なのか、ともに注視すべき課題である。<注・解説>*1: 浸透率の低い砂岩から生産される天然ガス。米国で1980年代から開発が進められ、フラクチャリングなど坑井刺激法の普及によって生産量が増加した。*2: Natural Gas Liquids:天然ガス液*3: *4: IEAはタイトガスを非在来型ガスに区分しているが、EIAはタイトガス区分を2012年に在来型ガスへと変更した。 Contract Price:LPガスのターム契約輸出価格。Saudi Aramco社が、原油価格動向・産ガス国スポット入札価 格を総合判断して決める。執筆者紹介坂本 茂樹(さかもと しげき)東京大学文学部社会学科卒業。社会・経済開発論を専攻。日本石油(現・JX日鉱日石エネルギー)入社後、産業燃料部、新日本石油開発を経て、2004年~ JOGMEC調査部(アジア太平洋、ワールドLNG担当)2012年~ JX日鉱日石リサーチ2014年~ エネルギー総合工学研究所(化石エネルギー関連の調査および「省エネルギーに係る国際標準化」担当)最近の趣味は、週末に続けている競技ボートクラブの活動と、中国のテレビドラマ・ニュースを見ること。43石油・天然ガスレビューアナリシス_坂本.indd 4315/01/05 18:49:15非在来型ガス開発の現況とエネルギー分野に及ぼす影響
地域1 北米
国1 米国
地域2 グローバル
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国グローバル
2015/01/26 [ 2015年01月号 ] 坂本 茂樹
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