ページ番号1006565 更新日 平成30年2月16日

ロシア/イラン:対イラン制裁解除がロシアに及ぼす影響

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レポートID 1006565
作成日 2015-07-16 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般基礎情報
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2015
Vol 49
No 4
ページ数
抽出データ JOGMECK YMCロシア/イラン:対イラン制裁解除がロシアに及ぼす影響・主要6カ国(米英仏中露・独=P5+1)とイランは、4月2日、スイス・ローザンヌにおいて、イランの核開発を制限する見返りに経済制裁を緩和する「枠組み合意」に達した。今後は、難航が予想されるものの、6月30日を期限とする最終合意に向けた交渉が行われる。・BP統計では、イランは2012年末からロシアを押さえて世界最大の天然ガス埋蔵量を有する国と評価されるなど、産業界ではガス資源国としてのイランが注目されている。・今後イランのガスが市場に出てくることが予想される。トルコ向けパイプラインの拡充、パキスタン向けのPeaceパイプラインの始動といった動きがあり、ロシアとトルクメニスタンが影響を被る。・対イラン制裁の主要なものは、米国、国連、EUによるものであるが、特に米国による制裁は、イスラム革命直後から始まって三十数年に及び、投資を制限したILSA法(Iran&LibyaSanctionsAct:イランおよびリビア制裁法)から20年近くがたつ。・対イラン制裁のうち、石油ガス開発に関する技術輸出、国際送金システム(SWIFT)からの排除等に関するものが経済的効果を上げており、イランの石油ガス産業は低落傾向にあった。・現在、類似の状況にあるのが、ウクライナ問題で米国やEUから経済制裁を受けているロシアであり、両国の受けている制裁の内容を比較すると、ロシアの制裁は依然として低い段階にある。・対イラン制裁解除では、P5+1とイランのどちら側が大きく譲歩したか、専門家によって見解が分かれるが、米議会とイスラエル政府が合意の見直しを求めている一方で、イランの世論はこれを受容している。・現状のイランの国内世論を見る限り、これまでの対イラン制裁がイランの経済的疲弊をもたらしてはいても、その政策を変えるに至っていないことを示していると解され、現在米議会で論じられている対露制裁強化についても、ロシアの対外政策の変更を促すものにはならないと予測される。・なお、本稿は2015年4月下旬時点の情報に基づいている。1. 「枠組み合意」の経緯 イランと国連安保理常任理事国(米英仏中露)およびドイツ(P5+1)は4月2日、ローザンヌにおいて、イランの核開発を制限する見返りに経済制裁を緩和する「枠組み合意」に達した。イランがウラン濃縮用の遠心分離機を1万9,000基から3分の1の6,104基に削減し、ウランの濃縮度を少なくとも15年間3.67%にとどめるなど、核開発を10~15年間制限する。合意事項の実行方法などの詳細はまだ決63石油・天然ガスレビューまっていないが、双方はこの枠組みを基に、6月30日を交渉期限とする包括合意を目指す。米国のオバマ大統領は同日、声明を発表し「枠組み合意」について「イランと歴史的な理解に達した」と意義を強調した。 交渉で、最後まで課題が残った制裁解除の進め方については、イラン側では「最終合意の事項を実行した後、即座に全てが解除される」と明記しているのに対して、米国文書では欧米による制裁は「解除」されるのではなく「停止」されるとし、イラン側に違反があれば制裁を復活するとしている。双方が国内反対勢力の説得える一方で、合に腐心している様子が窺いものであることも否定で意が極めて脆きない。うかがもろ2. 「枠組み合意」が旧ソ連のエネルギー輸出国に与える影響(1)石油市場における飽和感 イランは、2012年には原油を250万b/d輸出していたが、最近では輸出量は100万b/dまで低下していた。Bijan Namdar 063トピックス_本村.indd 632015/07/09 12:28:49OGMECK YMC然ながら注目を集めることとなった。2013年は制裁解除に向けたP5+1の交渉にらんが始まった年であり、制裁解除後を睨ロシアイランカタールトルクメニスタン201120122013年ガス埋蔵量上位4カ国の近年の評価値Tcf1,8001,6001,400ための改訂であるとのことであった。同様に4位のトルクメニスタンも、順位は変わらないものの、埋蔵量が2011年に大きく評価が引き上げられた後、39%引き下げられている。なお、Oil and Gas Journal誌では、2015年年初の段階で、ロシアのガス埋蔵量が1,688Tcf、イランが1,201Tcfとなっており、2012以前のBP統計とほぼ同様の水準のままである*6。 イランが最大のガス埋蔵量を有する国となったことは、当出所:BP統計1,0001,20040020080060020100図1製油所油田ガス田トルクメニスタンアルメニアアゼルバイジャンカスピ海トルコTabrizSanandajKermanshahAstaraRashtQazvinSavehArakNekaTehranReyEsfahanマスジェデ・スレイマン油田マスジェデ・スレイマン油田マルーン油田マルーン油田アガジャリ油田アガジャリ油田ガチサラン油田ガチサラン油田イランKermanノースパース・ガス田ノースパース・ガス田Asaluyehサウスパース・ガス田サウスパース・ガス田Bandar AbbasShirazFiruzabadドロウド油田ドロウド油田ペルシャ湾イラクアフワズ油田アフワズ油田アザデガン油田アザデガン油田ヤダバラン油田ヤダバラン油田ダルクエイン油田ダルクエイン油田AbadanBandar Khomeiniクウェートゴルシャン・ガス田ゴルシャン・ガス田サウジアラビアフェルドウシ・ガス田フェルドウシ・ガス田バーレーンノースフィールド・ガス田(カタール)ノースフィールド・ガス田(カタール)カタール出所:JOGMEC作成Lavan Islandバラル油田バラル油田シリ油田シリ油田図2イランの主要な油ガス田の分布オマーンUAE64Zanganeh石油相によれば、「枠組み合意」が成立すると約100万b/d輸出を伸ばすことが可能で、現状でのイランの原油生産量が290万b/dにとどまっているのに対して、今後380万b/d程度まで引き上げることができるようになる。 しかしこれは、昨年来の油価の下落に苦慮している産油国、特にロシアやベネズエラにとっては、必ずしも歓迎できる話ではない。EIAはShort-Term Energy Outlookで2016年のBrent価格を$75/bblまで戻すと予測したが、イラン原油が再び石油市場に出てくることにより油価は$5~$15/bbl下がると予想されることから、油価は$60~$70/bbl程度にとどまると予測される*1。これも、産油国にとっては警戒される情報である。(2)ガス資源国として存在感を増すイラン イランの天然ガスの生産量は2013年は1,666億?で、米国(6,876億?)、ロシア(6,048億?)に次いで世界第3位であるが*2、国内需要と油層圧入用が多いために、僅かに87億?がトルコに輸出されているのみで、カタールの輸出量1,056億?に大きく引き離されている。一方、北部ではトルクメニスタンから47億?輸入している*3。2012年までは、トルクメニスタンからの輸入がトルコへの輸出を上回って、ネットのガス輸入国であったが、2013年に国内ガス供給の拡充によりトルクメニスタンからのガス輸入量を減らしたことで、ネットでかろうじてガス輸出国となった。 2013年のBP統計によれば、天然ガスの埋蔵量に関して、イランが1,187.3Tcf(33.6T?)でロシアの1,162.5Tcf(32.9T?)を押さえて第1位となり、注目を集めた*4。これは全世界の18%を占める。その前年のイランのガス埋蔵量は1,168.6Tcfで、埋蔵量が大きく増加したわけではなく、単に前年のロシアの1,575.0Tcfが35%も引き下げられた結果、1位と2位が逆転したものである(図1)*5。 筆者が2013年に、BPの担当者に改訂の理由を尋ねたところ、ロシア式のガス埋蔵量算定が、西側に比較して過大評価とを合わせるなっていたため、全体の平仄そひょうく063トピックス_本村.indd 642015/07/09 12:28:492015.7 Vol.49 No.4OGMECK YMCだ動きが活発化していた。天然ガスに関しては、ペルシャ湾のSouth Parsガス田(可採埋蔵量360Tcf〈10.2T?〉)*7の開発計画がある程度進捗しているとはいえ、技術、投資両面で制限を受けている。ガス田は、沖合以外では同国南部に分布しているので、制裁解除後の新たな投資対象として注目を集めている(図2)。(3) イランからトルコへの天然ガス供給とTANAPパイプラインへの参加可能性①イランからトルコへの天然ガスパイプライン イランとトルコはパイプラインを敷設し、年間300億?のガスをトルコ、更には欧州へ輸出することで合意している。これは、Ahwaz油田等の随伴ガスをカスピ海の西岸を通ってアゼルバイジャンに輸出するためのIGAT(Iranian Gas Trunkline)-1ガスパイプラインを更に、Tabriz-Bazargan経由でトルコ国境まで延長するものである。1999年に開通する計画で、イラン側は予定どおりパイプラインを敷設したが、トルコ側で建設が遅れた。この時点でイランは、トルコ国境までのパイプライン敷設は完了しており、トルコ側が自国の事業進捗の遅れを理由にガスを受け取らない場合には、テイク・オア・ペイ条項が適用されると主張するなど、両者の関係は円滑ではなかった。2001年12月にようやくトルコ側のパイプラインが完成しガス輸出が開始された。現状では、イランからのパイプラインの輸送能力は100億?にとどまっており、ガス輸出の実績は、2013年で87億?であった*8。②TANAPへのつなぎ込みの可能性 トルコは現在、エネルギー・ハブ国家を目指す政策を採っており、各国のパイプラインの通過国として整備を進める計画である。特に、イランという現時点で世界第1位のガス埋蔵量を有する国からのパイプラインがトルコという通過国に入っている意義は大きい。このことは、欧州にとって「南回廊」への新規のガス供htshtsRussiaOrenburgYeletsSoyuzCCAACCKazakhstanCCAACC--33UzbekistanTurkmenistanSSoouutthCaucasushCaucasusAzerbaijanAzerbaijanTabriz●100Trans-Caspian300RusskayaRusskayaurkishStreamBlue Stream160(315)SamsunSamsunTanapTanap(160)TurkeyDzhubgaDzhubgaGeorgiaErzurumTTrans BalkanRomaniaBulgariaPPAATT00)1(GreeceGreeceFinlandmmVyborgVyborgern Ligern LigorthorthNNBelaruszzeeuuhhyyooSSttooBrBrooooddhhrrUkraineNorwaySweden5555BcmBcmNord StreaNord StreaPolandGreifswaldOPALPALCzechNELNELRehdenDALGermanyOlbernhauMIUzhgorodUzhgorodHungaryAustriaAustriaSloveniaSloveniaCroatiaCroatia?Bosnia-Bosnia-HerzegovinaHerzegovinaSerbiaSerbiaItalyMultanMultanAfghanistanKandaharKandaharTAPI330DauletabadDauletabadPeaceGwadar●PakistanNawabshah●87AsaluyehIranIGAT Ⅰ,Ⅱ,ⅢSyriaAkkasAkkasIraq出所:JOGMEC作成65石油・天然ガスレビュー図3イランからトルコおよびパキスタンに延びる天然ガスパイプライン063トピックス_本村.indd 652015/07/09 12:28:49OGMECK YMC給ソースを確保できるという展望が得られることを意味する。 4月4日、バクーでアゼルバイジャンの国営石油Socar(State Oil Company of Azerbaijan)のRovnag Abdullayev総裁が、自国が保有するTANAP(Trans-Anatolian Natural Gas Pipeline)の70%の株式について、制裁解除となればイランに売却する可能性に言及した。Socar傘下のSouthern Gas Corridor Co.は51%を依然保有する方針で、残りの19%を放出する。他にBotasが30%を持っている。現在、SocarはBPに12%売却する手続きに入っていることから、イランにとっては残りの7%が売却可能ということになる。4月9日、トルコのTaner Yildizエネルギー相も、カスピ海のガスをギリシャまで運ぶTANAPについて、経済性いかんによってはイランが参加する可能性のあることを明らかにした*9。アゼルバイジャンはTotal、Statoil、TPAOに権益を譲渡する方針と報じられていたが、現状はこれにイランも加わった。③TANAPの現況 3月17日、トルコ、アゼルバイジャン、ジョージア(旧国名:グルジア)の首脳がトルコ東部のKarsでTANAPの工事開始セレモニーに出席した。輸送容量160億?/年、総延長1,850km、供給開始は2019年、総工費$100億~$110億。トルコ・ジョージア国境で現状年間70億?を送っているSouth Caucasusパイプラインに接続する。先端は、トルコ・ギリシャ国境で総延長870kmのTAP(Trans-Adriatic Pipeline)に接続し、2020年から年間100億?でフローを開始する(図3)。他のカスピ海やトルクメニスタンのガス田からのガスも加え2023年には230億?、2026年には310億?とする計画がある*10。これは、カスピ海横断パイプラインの実現にかなり期待を寄せた計画で、この時点でイランは特段考慮には入っていなかったと思われる。④トルクメニスタンへの影響 トルクメニスタンは、他国の企業がカスピ海横断パイプライン(Trans-Caspian Pipeline)を建設して、アゼルバイジャン経由でトルクメニスタンのガスをTANAPに入れるという案には反対していない。ただし、トルクメニスタン自身は海底パイプライン建設に関して能動的に動く意思も能力も持っていない。 TANAPにつなぎ込む計画に関しては、既存の(i)イラン-トルコパイプラインを拡充する、(ii)トルクメニスタンからアゼルバイジャンに向けてカスピ海に新規に海底パイプラインを敷設するという2案があるが、距離、技術、コストいずれにおいても(i)のイランからのほうがトルクメニスタンからよりも圧倒的に有利である。今後、カスピ海横断パイプラインの議論はしにくくなる可能性がある。更にこれは、ロシアが計画しているTurkish Streamよりも先行する可能性もある。 イランのガス輸出国としての発展は、ロシア、アゼルバイジャン、トルクメニスタンのエネルギー輸出国としての立場を弱めることになる。(4) Peaceパイプライン(イラン-パキスタンPL)とアフガニスタンの立場①中国によるPeaceパイプラインへの融資 4月20日の習近平主席のパキスタン訪問に合わせて、パキスタン側がPeace(Iran-Pakistan)パイプライン計画が進展する可能性のあることを明らかにした(図3)。イランのガス田地帯にあるAsaluyehからパキスタン国境までの900kmは既に完成しているが、パキスタン側が資金不足から着工できないでいた。今回、CNPC傘下のChina Petroleum Pipeline Bureauが、海岸に面したGwadarから国内ネットワークの入り口であるNawabshahまでの700kmを建設するというものである。事業費は$15億~$18億、更にGwadarでLNG受入基地を造れば$20億に上るという。この85%は中国側からの融資による。Gwadarからイラン国境までの80kmは、パキスタンが独自に建設する。パイプ径は56”、当初の輸送容量は年間87億?、将来的には年間400億?を目指す。 このパイプライン計画はTAPIパイプライン(後述)に対抗して1995年に立案されたもので、当初はIPI(Iran-Pakistan-India)パイプラインという構想で、インドを目的地としていた。2009年に米国の説得でインドが撤退したと言われている*11。②アフガニスタン、TAPIへの影響 一方、トルクメニスタンからインドに至るTAPI(Turkmenistan-Afghanistan-Pakistan-India)パイプラインに関しては、それまで実現性が低いと見られていたが、2013年にアフガニスタンが最後のメンバーとして加盟し、長らく停滞していたプロジェクトの協議が再開された*12。 2014年11月には、トルクメニスタンのTurkmengas、アフガニスタンのAfghan Gas Enterprise、パキスタンのInter state Gas Systems、インドのGailの4社が、総延長1,800kmのTAPIパイプライン建設のための合弁企業を設立した。アジア開発銀行(ADB)によれば、4社は同等の権益を保有する。輸送量は年間330億?で、30年間各国に供給するというものである*13。 2015年3月23日、訪米したアフガニスタンのガニ大統領は、ケリー米国務長官やカーター国防長官、ルー財務長官らと会談し、2013年から中断していた閣僚級の戦略対話を再開することで合意した。35万2,000人のアフガン治安部隊の規模を維持するための米国の資金支援と、アフガン主導の「改革と開発」を促すため最大8億ドルの財政支援も併せて発表した。ガニ大統領は「アフガニスタンは中央アジアから南アジアへ流れるエネルギーの中心になる」と述べて、一連の決定を歓迎した*14。これは名指しこそしていないが、TAPIの建設宣言とも読める。 アフガニスタンの現況を見れば、新規のパイプラインの建設工事は現実的とは思えない。このような状況のなか、議論だけは前進していた。しかし、イランからパキスタンへのルートは、イラン側が既に完成していることもあり、はるかに実現性がある。今回の動きも、トルクメニスタンにとっては、ネガティブな影響がある。66063トピックス_本村.indd 662015/07/09 12:28:492015.7 Vol.49 No.4OGMECK YMC3. 対イラン制裁の経緯(1)米とイランの関係の歴史 1979年4月にイランでイスラム革命が起き、同年11月にはテヘランのアメリカ大使館が占拠された。大使館員も人質にとられる事件に発展したため、カーター大統領(当時)は1980年4月にイランを反米国家と認定して、国交断絶を宣言するとともに、経済制裁を実施した。1984年には、レーガン大統領(当時)がイランを「テロ支援国家」に指定した。1995年にはクリントン大統領(当時)が、アメリカ企業に対してイランとの貿易・投資・金融の禁止措置を実施し、翌1996年には、イランとリビアの石油・ガス資源を開発する企業を制裁する「イラン・リビア制裁法」(ILSA)を成立させた。ブッシュ大統領(当時)は2002年の年頭教書でイランを「悪の枢軸」と表現して批判した。アメリカ議会は2001年と2006年にも制裁期間を延長する法案を可決した。(2)米国による主要な対イラン制裁の内容 1996年以降の対イラン制裁の概要を表1にまとめた。主要なものについて、若干の説明を付す。①イラン制裁法(ISA:IranSanctionsAct)資を禁ずるもので、域外制裁措置となっている。その後リビアに関しては、2006年にリビア関連条項が失効したので、以降「イラン制裁法」(ISA)と呼ばれている。いくつかの企業が対象となっている。②イラン自由支援法(IranFreedomSupportAct) ISAから10年を経て、制裁発動の要件を、兵器関連技術の販売にまで拡大したものであるが、これが適用された例はまだない。 元来は1996年に、イラン・リビア制裁法(ILSA法)として発動された。イラン、リビアのエネルギー分野に対して、第三国の企業や個人が年間$2,000万以上の投③包括的イラン制裁・説明責任・資本引揚法(CISADA:ComprehensiveIranSanctions,AccountabilityandDivestmentAct)表1米国による主要な対イラン制裁法令成立時期制裁対象イラン制裁法(ISA)イラン自由支援法包括的イラン制裁・説明責任・資本引揚法 (CISADA)大統領令135901996.8.5イランのエネルギーセクターに対して年に$2,000万以上の投資を行った企業または個人2006.9.30 イラン(またはイランに再輸出されることを知っている者)に対して大量破壊兵器(WMD)開発または先進的在来型兵器の“数および種類を不安定にする”ことに有用な技術を販売する企業または個人・$100万以上(または1年間で$500万以上)のガソリン、航空機燃料の販売・イランがガソリンを製造または輸入することを支援するような機器やサービスの販売(金額基準は上記に同じ)2011.11.21 イランがそのエネルギーセクターにおいて用いることが可能な機器の販売→2012年のイラン脅威削減・シリ2010.7.1ア人権法として法令化イラン中央銀行を国際送金システム(SWIFT)から切り離す目的で、これと取引する外国金融機関に対する制裁を適用。その金融機関の所属する国が著しくイランからの原油の購入を減じた場合には制裁の適用免除を受けることができる以下の者にISAと同様の制裁を課す。→2013年国防授権法として法令化・イランから石油または他の石油精製品を購入した主体・NIOCまたはNaftiranIntertradeCo.(NICO)と取引を行った主体・イランから石油化学製品を購入した主体・NIOC、NICO、イラン中央銀行に対して資金的支援を行った個人、企業・イランが米国銀行券または貴金属を購入することを助けた個人または企業ISAに以下の制裁発動要件を追加する。・石油・天然ガスセクターの維持または向上に用いられる$100万以上(または1年間で$500万以上)となる・石油化学製品の生産の維持や拡大に用いられる$25万以上(または1年間で$100万以上)の商品やサービス商品やサービスの提供の提供・イラン産原油を輸送するのに用いられる船舶の所有・イランとの国外における石油・天然ガスJVへの参加・イランとのウランの採掘、生産または輸送に関連するJVへの参加・石油化学製品を含むエネルギー産業関連機器の最低数量以上の販売・NIOCおよびNITCに対して保険または再保険を提供する企業・イラン政府ソブリン債の購入または発行を促進する企業・IRGC(イラン革命防衛隊)等との間で“著しい取引”に従事している企業イラン経済における主要セクターを支援する第三国の企業に対して米国の制裁権限を拡大するもの・イランにおけるエネルギー、造船、海運および港湾操業に対して財やサービスを提供する主体・イランへ貴金属または半製錬金属を提供する主体や、産業プロセスを統合するのに必要なソフトウェアを提・石油、ガソリンその他イランにおけるエネルギー、船舶輸送または造船セクターに対する財の輸送を含む、イランとの国際的な取引に対する保険引き受けサービス、保険、または再保険を提供する主体・先進医療品を含む特定の輸入品の取引を、市場を迂(う)回するなどの転売に従事しているイラン国民供する主体FY2012国防授権法2011.12.31大統領令136222012.7.30イラン脅威削減・シリア人権法2012.9.1イラン自由および反拡散法(IFCA)/FY2013国防授権法2013.1.2出所:JOGMECワシントン事務所作成67石油・天然ガスレビュー063トピックス_本村.indd 672015/07/09 12:28:50@ISAではイランへのガソリン販売や、イランが自らの製油所を建設・拡大することを可能にする機器類の販売は制裁対象となっていなかったため、$100万以上(または年間$500万以上)の上記関連のものについて制裁対象とする法である。 この法は、大統領令13590に加え、表1にあるような石油・天然ガス、石油化学、原油輸送、ウランの生産・輸送等の各分野における商品やサービスの提供を主にしたいくつかの制裁発動要件を、ISAに追加したものである。④FY2012国防授権法§1245 石油輸入業者が交換可能通貨を用いてイランへの石油代金の支払いを行うメカニズムを絶つため、イランの中央銀行を国際送金システム(SWIFT*15)から切り離す目的で、イラン中央銀行と取引する外国金融機関に対する制裁を適用する条項がFY2012国防授権法に組み込まれた。具体的には、イラン中央銀行を通じて支払い処理を行った外国金融機関に対して、米国内での口座開設を禁止するというものである。ただし、適用除外条項があり、その金融機関の所属する国が著しくイランからの原油の購入を減じた場合には制裁の適用免除を受けることができる。 この、SWIFTからの追放という措置が取られると、送金システムにアクセスできなくなり、産油国の場合には原油の輸出にあたっての資金回収業務が困難となる。⑤イラン脅威削減・シリア人権法(IranThreatReductionandSyriaHumanRightsAct)⑥イラン自由および反拡散法(IFCA:IranFreedomandCounterProliferationAct) これは、エネルギー分野およびそれ以外のイラン経済における主要セクターを支援する第三国の企業に対して、米国の制裁権限を拡大するものである。⑦具体的な制裁条項 ISAでは6件の制裁オプションのうち2項を課すことを求めている。CISADAでは3オプションを追加し、合計9オプションのなかから3項を課し、「イラン脅威削減・シリア人権法」では更に3オプションを加えて全12オプションのうち、5項の適用を求めることとした(表2)。(3)国連による対イラン制裁 国連安全保障理事会では、2006年の決議1696号でイランの核濃縮関連活動の停止を求めたが、イランが活動を停止しなかったため、同年の国連決議1737号で制裁措置を発動、次いで2007年、2008年、表2具体的な対イラン制裁オプションの内容根拠法制裁の内容①制裁対象主体への米国からの輸入に対する米国輸出入銀行による融資、クレジット、クレジット保証の禁止②制裁対象主体への米国軍事技術または軍事に有用な技術の輸出のためのライセンス停止③制裁対象主体への年間$1,000万以上の米国金融機関からの融資の禁止④制裁対象が金融機関の場合、その金融機関が米国の主要な政府債取り扱い金融機関としてサービスの禁止、または米国政府資金の預け入れ銀行口座としてサービスの禁止⑤制裁対象主体からの米国政府調達の禁止⑥国際緊急経済国法(IEEPA:InternationalEmergencyEconomicPowersAct)に定めるところによる制裁対象主体からの輸入の制限⑦制裁対象主体による外国為替取引の禁止⑧制裁対象主体と米国金融機関との間のクレジットまたは支払いの禁止⑨制裁対象主体によるその米国ベースの資産から金銭的利益を生じる取得、保持、利用または取引を行うことの禁止⑩米国市民が制裁対象主体から著しい量の株式または国債に投資し、または購入を行うことの禁止⑪制裁対象企業の支配株主または執行役員の米国からの追放⑫制裁対象企業の主たる事務所へのISA制裁条項の適用JOGMECK YMC2009年と決議がなされた。 2010年6月9日に国連安保理で採択された「第4次国連安保理追加制裁決議」(2007年が第1次)においては、(i)武器禁輸、(ii)渡航拒否、(iii)金融制裁、(iv)貨物検査の強化が重点となった。これは、イランの核・弾道ミサイル関連の開発を推進する組織・企業の活動を大幅に制限するととともに、イランによる禁止品の密輸摘発を目指すものである。また、革命防衛隊(IRGC)等の40の団体や1個人を資産凍結の対象とした。特に、金融制裁においては、国連加盟国に対して核・ミサイル開発に係ると思われるイラン系銀行の支店開設を認めないよう求めている。これは、武器開発の資金源を断つことが目的である。(4) EUによる対イラン制裁 欧州連合(EU)による対イラン制裁は、2010年7月26日に決議された。EUは国連決議と同様に、イランの核燃料濃縮・再処理活動・重水炉関連活動・核兵器開発・弾道ミサイル開発等の活動への直接的・間接的な協力を禁じている他、国連決議には含まれていないイランのエネルギー分野への資機材供与・資金/技術協力を禁じている。金融分野では、核開発活動とイランエネルギー分野を対象として融資・保証・保険・再保険・ブローカー行為・投資行為を禁止する。また、イランに対する4万EUR以上の送金には許可が必要としている。これまで国連決議で制裁対象とされた個人・組織に関してのEU加盟国における資産凍結も含まれる。 2012年1月23日、イランの核開発計画に対するEUの深刻かつ深まる懸念を受け、EU理事会は、同国に対するEUの制裁措置を拡充した。この決定は既存の制裁措置を補完し、核計画の資金源を標的にするものである。理事会はイラン産の原油および石油製品の輸入を禁止し、これら製品の輸入・購入・輸送のほISAオリジナルCISADA追加イラン脅威削減・シリア人権法出所:JOGMECワシントン事務所作成063トピックス_本村.indd 682015/07/09 12:28:502015.7 Vol.49 No.468OGMECK YMC換に、イラン産原油の輸入を既に開始したことを明らかにした。イランが4月、核問題で欧米やロシアなど6カ国と「枠組み合意」に達したことを受け、事実上の制裁緩和にロシア単独で踏み切ったものである。イランの核開発疑惑をめぐり、米国やEUはイラン産原油の輸入を止める制裁を課している。「枠組み合意」が最終合意に移行するまで、制裁は解除しない方針であり、ロシアの行動には反発すると見られる。リャプコフ次官は「原油とのバーター取引を既に実施している」と言明し、イランに提供している物資は「制裁の対象ではない」と主張した。ロシアはウクライナ情勢をめぐり欧米と対立、イランとの関係でも制裁解除の可能性を見越して、独自の動きを強めている*20。5. 「枠組み合意」をめぐる評価に関して(1)どちらがより譲歩したか? 4月2日の「枠組み合意」をめぐっては、イラン側と国連側のどちらがより譲歩したかが注目点になった。専門家は、「イランが本当に核兵器を開発する意図を持っていたとするならば、非常に大きな妥協だが、ウランを濃縮し、それを燃料として発電し、核燃料サイクルを確立することが目的だったとするならば、今回の合意は国益を重視した合理的判断と言える」と評価した*21。評価が分かれるポイントは、イランに核兵器を開発する意図があったと見るか、否かにある。(2)イランの立場 イラン側では、最高指導者ハメネイ師は1週間沈黙を守っていたが、4月9日になって核協議について「米国が欺かなければ、他の問題でも話し合えるかもしれない」と初めて発言し、対話拡大に含みを持たせた。この発言は、その間、交渉に懐疑的とされた保守強硬派から合意にきょく余曲(3) 2013年のイラン、P5+1によるジュネーブ共同行動計画(JPOA) 2008年7月19日、スイスのジュネーブ市庁舎で、イランと国連安保理常任理事5カ国+ドイツ(P5+1)とで、イランの核開発疑惑に関する協議が開始された。つはあったものの、2013 途中、紆年11月24日に、イランとP5+1によりジュネーブ共同行動計画(JPOA:Joint Plan of Action)が「暫定合意」され、2014年1月20日からEUと米国により同時に6カ月間の第1段階が実施に移された*17。 EUによる制裁緩和措置のうち、原油・石油製品に関しては、①イラン産、あるいはイランから輸出される原油や石油製品に対する輸送禁止、②上記原油・石油製品の輸入、購入、輸送に対する保険、再保険の提供禁止という措置が、ともに一時停止される。ただし、イランの金融機関も引き続き制約の対象であり、EUの金融機関との取引は禁止され、SWIFTシステムの使用も禁じられている。 米国による制裁緩和措置では、石油化学、自動車製造業、貴金属関連での禁止事項が緩和され、関連する保険、輸送、金融サービスも許可される*18。また、中国、日本、韓国、台湾、トルコによる現行レベルでのイラン産原油の輸入を認め、凍結されていた$42億については、外国金融機関からイランに分割送金される。 2014年2月5日、イランの核開発問題をめぐり国外で凍結されていた同国の原油収入のうち、日本銀行に凍結されていた$5億5,000万の代金がイラン側に送金された*19。 2014年、米ボーイング社は、革命後初めて航空機部品をイランに輸出した。折せう よ(4) ロシアによるイラン原油のバーター輸入 2015年4月13日、ロシアのリャプコフ外務次官は、ロシア産穀物や「技術」と交か、関連する資金調達や保険を対象にしている。更に、理事会はイランからの石油化学製品の輸入、およびこの分野のための主要な装備や技術のイランへの輸出を違法とした。イランの石油化学企業への新たな投資やそのような企業との合弁事業も禁止される。 理事会はまた、厳密な条件の下での合法的な取引の継続を保障しながらも、EU域内にあるイラン中央銀行の資産を凍結した。イランの公的機関や中央銀行との金・貴金属・ダイヤの取引、およびイラン通貨の表示のある紙幣・硬貨のイラン中央銀行への引き渡しは禁じられる。いくつかの軍事的用途にも使い得る取り扱いに注意を要する追加的製品も今後イランへの売却は禁じられる*16。4. 対イラン制裁緩和の流れんじゅう毯た(1)制裁緩和の流れ 米国は1986年以来、イランからの輸入品に特別の関税を賦課する政策を採り、その後イランからの輸入が禁じられた。2000年3月17日にオルブライト国務長官(当時)は、イラン産の伝統産品の輸入解禁を決め、翌月から施行された。品目は、のキャビア、ピスタチオ、ペルシャ絨3品目である。(2) 米政府によるイラン核兵器疑惑の否定的評価 アメリカの国家情報会議(NIC:National Intelligence Council)は、イランは2003年秋に核兵器の開発を中止しているので、イランの核兵器開発疑惑は事実ではないと政府に報告し、米政府は2007年12月3日に国家情報評価(NIE:National Intelligence Estimate)として、これを公表した。その後、これを覆した発表はないことから、イランにおける核兵器疑惑はないとするのが米政府の基本的な見解で、議会と異なる立場であると思われる。69石油・天然ガスレビュー063トピックス_本村.indd 692015/07/09 12:28:50OGMECK YMCスの禁止が中心になっており、在来型石油資源やガスは対象となっていない。すなわち、西側の保有する最先端技術のロシアへの提供を禁ずるものである。 表4にイランに課された制裁とロシアに課された制裁とを比較した。技術的には類似のレベルであるが、ロシアに対しては、イランにおける国際送金システムかつな制裁にはなっからの排除のような苛ていない。烈れ(3) 対イラン、対ロシアの制裁に対する考え方 米(政府、議会)、欧州、中国、イスラエル、国際石油ガス産業界の、対イラン、対ロシアの制裁に対する考え方を、図4に示した。 イランに対して、今回の「枠組み合意」を非難し、更にイランを核兵器の使用から遠ざける必要性を唱えているのが、米議会とイスラエルである。米議会は同様にロシアに対しても、SWIFTからの追放を含む、より強い制裁を求めているが、イスラエルは対露制裁に関して特段の意見表明はなく、更に昨年3月27日の「ウクライナの領土一体性に関する国連決議」ではウクライナの民族主義を警戒して棄権に回るなど、ロシアに対しては融和的な姿勢である。 米政府は、イランとの「枠組み合意」を6. 対イラン制裁と対露制裁との比較(1)ウクライナ問題による対露経済制裁 2014年3月のロシアのクリミア併合を契機として、米、EU、日本、カナダ、オーストラリア等が、対露制裁を発動した。EU、米、日本の制裁の内容を表3に示す。EU側の制裁は踏み込んだものとは言えず、オバマ大統領が「欧州は覚醒すべき時だ」と述べるなど、いら立ちを募らせていた。7月17日に東ウクライナでマレーシア航空機が撃墜されるという事件が発生し、ミサイルが親ロシア派の占領地域から発射された可能性が高いと判断されたことから、EUも厳しい制裁に踏み込んだ。更に、9月にウクライナ東部での軍事的な活動が活発化したことを踏まえ、更なる制裁が課された。(2) 米による対イラン、対ロシア制裁の内容の比較 イランに課せられた制裁に比べると、対ロシアのそれはまだ低い段階にある。 対露制裁の特徴は、ロシアの石油産業を必ずしも標的にしたものではないという点に、それは表れている。表3に見るとおり、大水深・北極海・シェール用機材の米国からの輸出禁止、そしてサービ表3ロシアに対するEU、米国、日本による制裁(2014年)制裁EU米国・3月6日:3段階の対露制裁。まず・3月6日:露政府高官・軍関係者等は露とのビザ交渉凍結の資産凍結・渡航禁止・3月17日:露、クリミア当局者ら21名の資産凍結・渡航禁止・3月21日:12名の資産凍結・渡航・3月17日:7名の資産凍結・渡航禁止追加、Yanukovichなど・3月20日:20名の資産凍結・渡航禁止禁止追加、Tymchenkoも日本・3月18日:査証緩和凍結、投資・宇宙・安全保障での協定交渉の凍結一定の評価を与える発言が相次いだことによるものと思われる。イランでは、ウラン濃縮装置は1/3に数が減ることになったとはいえ、関連基地に関してはいずれも存続が認められており、大きな譲歩にはなっていないとの理解が一般的である。(3)米国の立場 「枠組み合意」の成った翌週、政府とは対照的に、米議会では野党共和党を中心に、合意反対や見直し論が出ている。特に、イラン核計画を制限する措置が10~15年間となっており、それ以降にイランが核兵器開発を行う可能性のあることを問題視している。議会に最終合意の見直しの権限を与える法案が、4月14日、米上院外交委員会で全会一致で採決された*22。 こうしてみると、米政府側は制裁緩和を急いでおり、イランの核兵器開発に関して懐疑的な姿勢は、2007年の国家情報評価(NIE)以来、一貫しているように見える。これに対して、米議会はイスラエルに極めて近い立場を取っている。(4)イスラエルの立場 イスラエルのネタニヤフ首相は3月3日、米議会の上下両院合同会議で演説し、P5+1とイランが進める核協議について「イランの核兵器開発を阻止することはできない。核兵器を多数保有するのを保証するようなものだ」と指摘。「非常に悪い取引だ」と交渉の意義を根底から否定した*23。そして、4月2日に「枠組み合意」が発表されるとすぐ、同首相は再び枠組みの内容を激しく批判し、「今議題に上がっている対策はイランを核兵器の使用から遠ざけるものではない」と主張した。一方、イスラエル対外情報機関(モサド)のエフライム・ハレヴィ元長官は、ネタニヤフ首相がイランとP5+1の間で核開発プログラムに関する「枠組み合意」に反対したことを強く批判し、イランは交渉のなかで極めて大幅な譲歩案を提案したと主張した*24。第1次(クリミア併合への対応)第2次第3次(マレーシア航空機撃墜で強化)第4次(ウクライナ東部の不安定化)出所:各種報道から筆者作成・5月12日:13名、2社の資産凍結・渡航禁止・7月12日:追加資産凍結・渡航禁止・7月16日:EIB、EBRDの融資禁止・7月31日:大水深・北極・シェールオイル用機材の輸出は事前認可。ガスは非対象、8月1日前の契約は不問。90日超の調達禁止(Sberbank,VTB)・9月12日:大水深・北極・シェールオイル事業への掘削・テスト・検層等のサービスの禁止Rosneft、Transneft、GazpromNeftに対する30日超の資金調達の禁止。24名の資産凍結・渡航禁止・4月28日:RosneftのSechin社長を含む7名17社の資産凍結・渡航禁止・7月16日:経済制裁。90日超の資金調達禁止(Gazprombank、VEB、Rosneft、Novatek)・8月6日:大水深・北極海・シェール用機材の米国からの輸出禁止。3銀行と統一造船の米市場調達禁止・4月29日:23名の査証停止・8月5日:クリミア、ウクライナ東部の不安定化に関与する企業の資産凍結、輸入制限・9月12日:5社(Gazprom、Lukoil、GazpromNeft、Surgutneftegaz、Rosneft)に対する大水深・北極海・シェール事業を支援する機器、サービス、技術の提供禁止。5銀行の30日超の調達禁止。Transneft、GazpromNeftの90日超の社債発行禁止。9月26日までの猶予・9月24日:露の大手5行の日本での資金調達の禁止。武器輸出、武器技術提供の制限063トピックス_本村.indd 702015/07/09 12:28:50702015.7 Vol.49 No.4OGMECK YMC表4米国による対イラン、対ロシア制裁の比較(政策的効果に関しては本文参照)制裁分野人・組織への制裁技術移転の禁止金融制裁対イラン内容・要人、革命防衛隊他の組織・石油ガス、石油化学製品の生産維持向上に資する財・サービスの提供禁止・造船・海運に関する財・サービスの提供禁止・ソブリン債の購入制限・イランとの国際的取引に対する保険・再保険の制限・外銀の融資は制裁対象ではないが、その実態なし経済的効果大きくない大きい。石油生産は長期減退。ガス開発は低水準大きい。長期にわたる投資減。輸出低迷対ロシア内容・要人の渡航禁止・資産凍結・大水深・北極・シェール用機材の輸出禁止・上記に関する機器・サービス・技術の提供禁止・主要銀行による30日超の・企業の90日超の社債の発調達制限。行制限経済的効果大きくないややあり。シェールオイル開発不可に大きい。国民福祉基金または中国からの融資頼み国際送金システムからの排除 イラン中央銀行と取引する外国金融機関に対する制裁大きい。原油輸出を制限現在は行われておらず。米共和党を中心に要望極めて大。欧州全体に波及出所:各種報道から筆者作成出所:筆者作成図4対ロシア、対イラン制裁に対する各国の立場裁の緩和を期待している。(4) 米における対露追加制裁の議論 2014年7月の段階で、米下院のマッコール国土安全保障委員長(共和党)は、ロシアには制裁の衝撃を吸収する力があるとして、米欧による制裁は「効果的ではない」と指摘し、効果のある施策としてロシアの原油輸出を制裁対象とするよう求めた*25。これは、原油輸出を物理的に止めるのではなく、国際的な銀行間決済ネットワークSWIFTへのアクセスを禁じ、輸出した場合の資金回収手段を封じるものである。同様の主張は、米英から歇的に出されているが、折節につけて間EUを中心に取り上げられることはこれかんけつむまとめた立場であり、ロシアに対しては対決姿勢はあっても、議会の過激化を抑える立場である。欧州は、対イラン、対ロシアで対決姿勢から制裁強化をある程度指向すると思われるが、中国は融通無にほとんど中立を貫いている。国際的な石油ガス産業界は、ともに投資対象として進出の機会を窺っている。当然、制碍げ71石油・天然ガスレビュー063トピックス_本村.indd 712015/07/09 12:28:50OGMECK YMCまでなかった。 これには従来、批判も多い。例えばモスクワの石油勧告フォーラム(PAF:Petroleum Advisory Forum)のKonovalov事務局長は、「それは核オプションだ」と断言した。ロシアの石油産業が壊滅的な打撃を受けるだけでなく、ロシア経済と密接な関係にある欧州経済も、同様の打撃を受けることになるとの主張である。 3月20日、EUのTusk大統領は、対露制裁をめぐってEU内で一致した立場を維持することが徐々に困難になってきていることを認めた。EUの関係筋が匿名を条件に語ったところによると、域内では半数以上の国が制裁緩和を望んでいるという。また専門家は、ロシアはエネルギー関連技術以外に米欧からそれほど多くを必要とはしていないとも指摘している*26。 端的に言うなら、対露制裁の効果に疑問はあるものの、それを理由に緩和したい立場と、それを理由に原油の禁輸まで強化したい立場とで、両極端に相反しているのが現状である。しかし、制裁を強化すると効果が出るだろうというのはあくまで希望的観測に過ぎない。(5)対イラン制裁の教訓 経済制裁を実施すれば、程度の差こそあれ相手国に何がしかの経済における負の影響があることは確実である。しかし、経済制裁の目的は、相手側に経済的な打撃を加えることではなく、これにより相手側に政策の変更を促せるかどうかがポイントである。これまでも、成果が上がった例として、アパルトヘイトを断念させた南アフリカ共和国に対する経済制裁がある。 2015年4月15日、ドイツ北部リューベックでの先進7カ国(G7)外相会合は採択した議長声明で、ウクライナに事実上侵攻したロシアに課している制裁を解除する条件として、今年2月のウクライナ和平合意の完全履行と、同国の主権尊重をロシアに要求する姿勢を示した。制裁圧力をかけ続けながら譲歩を迫る戦略である*27。「ウクライナの主権尊重」とは、クリミア半島の返還に他ならない。ロシアがこれを実行すると思う人はいないだろう。すると、対露制裁には効果が見られない一方で、制裁劫とは言わないまでそのものは未来永も、相当期間続く状況が想定される。 4月16日、プーチン大統領は毎年恒例のテレビを通じた国民との対話に臨んだ。そのなかで、制裁解除の見通しについて問われると、「欧米諸国によるロシアに対する政治的、戦略的な政策であり、解除を待つ意味はない」と語った。また、「大えいごう事なのは我慢ではなく、(制裁を)経済発展に利用することだ」と訴えた*28。国産農産物への回帰がその例である。ロシア側も長期戦を覚悟しているように見える。 今回、イラン側が大幅に譲歩して合意にこぎ着けたと見るならば、制裁は相手の政策変更に大いに効果があったと通常は見なされる。そして、その見方を取るグループはロシアに政策変更を迫るには、更に制裁を強化すること、特に国際送金システムからの追放が効果的であるとする意見と思われる。 一方、イランが譲歩していないという解釈を取るならば、国際送金システムからの切り離しまで行ったイラン制裁は、イラン経済に痛手を与えたこと自体は確かではあろうが、イランの政策を変える手立てとはなっていないということになる。 現状のイランの国内世論を見る限り、これまでの対イラン制裁がイランに経済的疲弊をもたらしても、その政策を変えるに至っていないことを示していると解され、現在米議会で論じられている対露制裁強化についても、ロシアの対外政策の変更を促すものとはならないと予測される。(本村 眞澄)<注・解説>*1: Argus FSUEnergy, 2015/4/09*2: 第4位はカタールの1,585億?/年*3: *4: *5: BP Statistical Review of World Energy, June 2014BP Statistical Review of World Energy, June 2013BP統計では過去の評価値にもさかのぼって改訂するという方式を取っており、図1における各国のガス埋蔵量は、各年のBP 統計にのみ掲載されている。Oil and Gas Journal, 2014, Dec.1BP Statistical Review of World Energy , June 2014*6: *7: カタール側のNorht Domeガス田の可採埋蔵量は900Tcf(25.5T?)で世界第1位*8: *9: Argus FSUEnergy, 2015/4/09*10: IOD, 2015/3/18*11: WSJ, 2015/4/08*12: IOD, 2013/7/13*13: IOD, 2014/11/17*14: 日経, 2015/3/24063トピックス_本村.indd 722015/07/09 12:28:502015.7 Vol.49 No.472OGMECK YMC*15: SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)は、国際銀行間通信協会と訳され、銀行やその他の金融機関の間の通信を取り扱うネットワークを運営する民間の組織である。1973年に設立され、1975年に基本的な運用の仕組みを確立し、1977年から通信を開始した。2005年には202の国と地域の7,800を超える金融機関が会員となっている。法人格としては、本部の置かれているベルギーの法人であり、条約に基いた国際機関ではない。*16: 駐日欧州連合代表部(2012.1.23) http://www.euinjapan.jp/media/news/news2012/20120123/110000/*17: 米国とEUの対イラン生産緩和措置、2014年2月、(独)日本貿易振興機構 ジェトロ・ドバイ事務所*18: Reuters, 2014/1/20*19: Reuters, 2014/2/05*20: 共同, 2014/4/13*21: 中東調査会村上拓哉研究員(日経ビジネス、2015/4/07)*22: 毎日, 2015/4/15夕*23: 共同, 2015/3/03*24: Huffington Post, 2015/4/08*25: 産経, 2014/8/01*26: Reuters, 2015/3/23*27: 共同, 2015/4/16*28: 毎日, 2015/4/16執筆者紹介本村 眞澄(もとむら ますみ)[学歴] 1977年3月、東京大学大学院理学系研究科地質学専門課程修士修了。博士(工学)。[職歴] 同年4月、石油開発公団(当時)入団。1998年6月、同公団計画第一部ロシア中央アジア室長。2001年10月、オクスフォード・エネルギー研究所客員研究員。2004年2月、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEG)調査部 主席研究員(ロシア担当)。[主な研究テーマ]ロシア・カスピ海諸国の石油・天然ガス開発と輸送問題、地球資源論。[主な著書] 『ガイドブック 世界の大油田』(共著)技報堂出版、1984年/『石油大国ロシアの復活』アジア経済研究所、2005年/『石油・ガスとロシア経済』(共著)北海道大学出版会、2008年/『日本はロシアのエネルギーをどう使うか』東洋書店、2013年[趣味] ブルーグラス、カントリー・アンド・ウェスタン73石油・天然ガスレビュー063トピックス_本村.indd 732015/07/09 12:28:50
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2 中東
国2 イラン
地域3 北米
国3 米国
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア中東,イラン北米,米国
2015/07/16 [ 2015年07月号 ] 本村 真澄
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