ページ番号1006572 更新日 平成30年2月16日

核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発

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レポートID 1006572
作成日 2015-09-15 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般探鉱開発
著者 増野 伊登
著者直接入力
年度 2015
Vol 49
No 5
ページ数
抽出データ JOGMEC調査部増野 伊登核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発はじめに 2015年7月14日、イランとP5+1(国連安保理常任理事国の英米仏露中および独)は、イランの核開発問題に関する最終合意に至った。合意文書のなかには将来的に解除の対象となる制裁事項が列挙されているが、それら制裁の解除開始が一体いつになるのか、米国の対イラン制裁についてはどのようなペースで、どの分野に対する制裁から解除され始めるのか、不透明な点は多い。しかし、イランが依然として石油・天然ガスともに世界有数の埋蔵量規模を誇る国であることに変わりはない。長期的に見れば大きな伸び幅が見込めることは歴然で、欧州を中心に政府や企業各社も制裁解除を見据えて既に動き出している。今後は、制裁解除のタイミングとペースに加え、現在進んでいる石油探鉱開発契約の改定作業や、入札公開予定の上流案件選定の動きにも注目が集まる。 本稿では、最終合意の内容を整理するとともに、イランの石油・ガス開発の展望について論じる。 なお、本稿は2015年7月31日時点の情報に基づいている。1. イランの核問題をめぐる最終合意の概要と今後の展望<核開発関連>・ イランはウラン濃縮に関する核開発研究を8年間制限。・ 遠心分離機の数を、現状の約1万9,000基から5,060基以下に削減。・ イランは、少なくとも15年間は3.67%を超えるウラン濃縮を行わない。保有する濃縮ウランを300㎏まで削減。・ 西部アラクの重水炉については、相当量のプルトニウムを産出しないよう設計を変更。・ イランは、IAEAとの合意に基づき、核関連施設への査察を受け入れる。IAEAが、核開発疑惑のある未申告施設を新たに発見した場合には、イラン側には弁明責任が生じる。 核交渉の焦点の一つとなっていた「軍事施設への査察」の是非に関しては、JCPOAにも明記されていない。国防機密に関わる軍関連施設への立ち入りに強硬に反対していたイランであるが、P5+1との合意後にザリーフ外相がメディアに語ったところによると、未申告施設への査察(1)最終合意の内容 2015年7月14日、イランとP5+1は「包括的共同行動計画」(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)の内容に関する最終合意に達した(http://eeas.europa.eu/statements-eeas/2015/150714_01_en.htm)。合意の概要は以下のとおり。じゅんゅ守し<制裁関連>・ 米国、EU、国連による核関連制裁は、IAEA(国際原子力機関)が、イランがウラン濃縮能力を大幅に削減するなど、あらゆる核関連措置を遵したことを検証した後に凍結。ただし、違反(合意内容の不履行)が生じれば再実施の可能性あり(制裁復活の是非を関係国内で審議。それでも結論に達しない場合は国連安保理事会に持ち込まれ、投票が実施される)。・ 国連の対イラン武器禁輸については5年間、ミサイル禁輸については8年間は解除されない方向。1石油・天然ガスレビューアナリシスご故能だ。これを覆すためには議席の2/3の票を集めなければならないが、共和党票だけでは必要数に達しないため、議会は十分な反対票を確保することはできないと見られている。しかし予断は許さない。共和党のなかには当選後直ちに合意を破棄するとの意向を表明している大統領候補もいるからだ。 また、過去には、北朝鮮やリビアなどをめぐって、前ほ大統領時代の取り決めを次大統領が反にする、否定するといったケースもある。米国では合意への反対を呼びかけるコマーシャルがテレビで日々流されているとのことで、2015年9月8日からの議会再開に向けては、議会内部の合意反対派のみならず、イスラエルやサウジアラビアなども反対票集めのために民主党議員へのロビイ活動をより一層強化させていくだろう。一方のイラン側では、国家安全保障最高評議会(Supreme National Security Council:SNSC。ロウハニ大統領が議長を務め、閣僚や軍人、最高指導者のハメネイ師が指名したメンバーなどから成る)が合意内容を審査する予定で、両国の審議プロセスに注目が集まる。 最も時間を要すると予想されるのが、制裁解除の大前提であるⅣの「イランによる合意内容の履行を確認」するプロセスだ。2015年7月14日、IAEAとイランは、核の軍事利用疑惑を解明するためのロードマップを策定し、年内の解決を目指すことで合意した(IAEAは12月15日に報告書を提出する予定)。これが制裁解除に向けた第一歩となるわけであるが、以前、ケリー米国務長官も指摘していたように、イランが合意内容を履行するためには4カ月から1年の期間を要する可能性もあると見られており、一朝一夕に事態が進展するとは考えにくい。イランとIAEAをめぐるこれまでの経緯を考えると、軍事施設への査察などをめぐって、米国・イラン相互の合意に対する理解の相違点が表面化し、イランによる核関連措置の履行が遅れるという可能性は否定できない。このため、2016年初めに制裁解除の手続きが開始されるというのが最短のシナリオではあるとはいえ、2016年後半以降になることも十分考えられる。団の受け入れについては、軍事施設を念頭に置いたものではないと明言している。今後、「未申告施設」の定義について、関係各国間で協議が行われることになるだろう。(2)今後の見通し 金融、保険、エネルギー、金属、造船業、自動車産業、IT、軍事技術など多岐にわたる核関連制裁が解除された場合、石油・天然ガス事業への投資や、イランとの交易拡大に向けた道筋も開けることになる。これを受け、制裁解除から数カ月のうちに、イランは原油輸出量を60万~80万b/d増加させることが可能との見方を示す機関もあるが、留意すべき点は多い。 第一に、制裁が実際に解除されるまでには複数のプロセスを経る必要があり、相応の時間を要するということだ。第二に、仮に制裁が短期間で解除されたとしても、石油市場が約300万b/dの供給過多にある現在、売り先の確保に課題があり、輸出量が一時的に飛躍的な伸びを見せるとは考えにくいこと。また、第三に、大幅な増産には外資企業の資金力と技術力が必要不可欠だが、外資がイランに参入し、事業が軌道に乗るまでには数年単位の時間が必要となる。<制裁解除までの流れ> まず、制裁解除までの主な流れについて。Ⅰ. 国連安全保障理事会がJCPOAを承認する決議を採択(2015年7月20日採択)   ↓Ⅱ. 関係各国政府が、それぞれにJCPOAの内容を審査し、承認手続きを踏む   ↓Ⅲ. 安保理決議から90日以内にJCPOAの施行を開始   ↓Ⅳ. IAEAが、イランによる合意内容の履行を確認   ↓Ⅴ. 制裁解除措置の開始 Ⅱについて補足説明すると、2015年5月22日に成立した「Iran Nuclear Agreement Review Act of 2015」(https://www.whitehouse.gov/briefing-room/signed-legislation)に基づき、米国議会はJCPOAの内容を審査することになる。60日間(7月20日~9月17日)の審査期間中、米政府は制裁の緩和措置を講じることはできない(この間国連も制裁を維持する意向)。万一、議会が不承認決議をした場合、大統領は拒否権を行使することが可<制裁解除のペース> 次に問題となるのが制裁解除のペースである。JCPOAによれば、国連とEUは、「IAEAがイランによる合意内容の履行を確認したと同時に、あらゆる核関連制裁が解除(terminate)される」としている(ただし、既述のとおり、国連の対イラン武器禁輸については5年間、ミサイル禁輸については8年間は維持される)。一方で、米国は「IAEAによる確認と同時に、核関連制裁の発動2015.9 Vol.49 No.5アナリシス竡~(cease)する」という表現にとどまっている。「terminate」が完全なる終わりを想起させるのに対し、「cease」は単に停止するという程度の印象を受ける。 2015年4月2日にイランとP5+1が「枠組み合意」に達した時までさかのぼるが、当時、米国務省が発表した「イラン核プログラムに関するJCPOAのパラメーター」*1において米政府がどのような表現を使っていたかというと、「cease」ではなく「suspend」だった。「suspend」は「cease」よりも更に一時的な停止、保留という意味合いが前面に押し出されている感があるため、恐らく米国政府がイラン側に対する一定の配慮を示した結果、最終合意文書で新たに「cease」が用いられたものと考えられる。 では、なぜ「terminate」ではいけなかったのだろうか。以下には、枠組み合意時と、7月14日の最終合意時点での米高官らによる発言のうち主なものを挙げたが、それらを見る限り、米国による制裁は段階的に解除される可能性が高い。イランへの譲歩姿勢も見せつつ、しかし段階的解除の可能性も含ませたいという米国側の事情があり、「terminate」でも「suspend」でもない、中間の「cease」が採用されたと思われる。・ 対イラン制裁は一斉に解除されるというよりも、段階的に停止されるべきだ。  (2015年4月6日、アーネスト米ホワイトハウス報道官)・ 対イラン制裁は、イランによる合意内容の履行状況を確認しつつ、段階的に停止される。  (2015年4月9日、ラスケ米国務省報道官)・ 米国と、そして国連による制裁緩和は段階的に行われる。制裁が緩和されるためには、イランはまず主要な核関連措置を履行する必要がある。これからの10年間で、国連による対イラン武器禁輸(5年間は維持)や弾道ミサイル禁輸(8年間は維持)などを含め、更なる緩和を受けるためには、イランは合意を遵守しなければならない。  (2015年7月14日、オバマ大統領)・ イランが核関連措置を遵守したということが立証された後で、P5+1は核関連制裁を段階的に緩和していく。ただし、既に決定された一部の緩和措置については例外である。  (2015年7月14日、ルー米財務長官) 米国の制裁がどのような道筋で解除(あるいは停止)されていくのか、まだ不明な点は多い。段階的な緩和の後に全面解除というプロセスを経るとすると、イランに課されている制裁のうち、どの分野に対する制裁が優先的に解除されていくのか。2015年6月23日、イランのハメネイ最高指導者は、合意への署名と同時にあらゆる金融関連の制裁措置を解除すべしと主張しているが、金融制裁は他の分野よりも解除に時間がかかるとの専門家の声も聞かれる。金融制裁解除の如何は、イランの石油・天然ガス開発の進展にも直結する問題であり、早期の解除が期待されるところだ。いかん2. イランの石油・天然ガス産業の展望:増産への意欲(1)石油生産の展望 BP統計によるとイランの原油確認埋蔵量は1,578億バレルに上り、ベネズエラ、サウジアラビア、カナダに次ぐ世界第4位の規模を誇る。NGLやコンデンセートを含む原油生産量は1974年に606万b/dの最高水準に達するも、イラン・イスラーム革命(1979年)とイラン・イラク戦争(1980~1988年)の発生を機に低迷した。戦争終結とともに生産量は徐々に回復基調にあったが、2012年の米国とEUによる原油の禁輸措置開始を受け、再び生産量は落ち込んだ(図1)。NGLやコンデンセートを含まない原油のみの生産量で見た場合、2011年5月の375万6,000b/dに対し(同年の年間平均値は362万b/d)、2015年6月は280万b/dと、過去2年間のうちに生産量はおよそ100万b/d減少したことになる(図2)。 原油輸出量も2012年以降ほぼ半減しており(図3)、2015年の輸出量は7月時点で原油が120万b/d超(2015年第2四半期だけで見ると127万b/d)、またコンデンセートについては約30万b/dと見られる。輸出量の大半はアジア向けであるが、原油のうちおよそ20万b/dがトルコとシリアに、また5万b/dほどのコンデンセートが3石油・天然ガスレビュー核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発GL、コンデンセートを含まない約100万b/d減少2015年6月280万b/d2012201320142015図2イランの原油生産量米・EUの原油禁輸開始図3イランの原油輸出量年したいと述べた。また、コンデンセートについては、かねて、2017年頃までに生産量をおよそ2倍の100万b/dに増加させる意向であることを明らかにしている。 輸出量については、制裁解除後5~6カ月で100万b/4万b/dイラン・イスラーム革命イラン・イラク戦争NGL、コンデンセートを含む米・EUの原油禁輸開始年生産量国内消費量201420132012201120102009200820072006200520042003200220012000199919981997199619951994199319921991199019891988198719861985198419831982198119801979197819771976197519741973197219711970196919681967196619657006005004003002001000出所:BP統計を基に作成図1イランの原油生産量と国内消費量UAEに向かっている(図4)。万b/d3903702011年5月375.6万b/d6005003503303102902011270250万b/d出所:IEA統計を基に作成<イラン政府の生産方針> 石油収入の激減に見舞われているイランは、生産・輸出量の拡大によってキャッシュを増やす必要に迫られている。OPECによる生産調整の是非に関しては加盟国間でも意見が分かれるが、イランは自国の市場シェアの回復を最優先させたい意向だ*2。2015年4月14日、イランのザンギャネ石油大臣は、世界の石油市場の安定化に寄与するため、また制裁解除後のイラン原油の市場への追加供給を見据えて、イランを除くOPEC加盟国が生産量を5%ずつ削減すべきだと述べた。更に、5月18日にはジャヴァディ副石油大臣兼イラン国営石油会社National Iranian Oil Company(以降NIOCと表記)社長も、イラン増産を見越して加盟各国による生産抑制を要請、クオータ(生産割り当て)制を復活させるべきとも発言している。 今後の増産のペースについて、2015年7月20日、ザンギャネ大臣は、制裁が解除されて7カ月以内に原油生産量を100万b/d増加させ、近い将来に470万バレルにまで伸ば100400300出所:OPEC統計を基に作成20002015.9 Vol.49 No.5アナリシス00250100出所:OPEC統計を基に作成2001505002010万b/dd増加させたいとし*3、売り先としてイランが優先する市場は東南アジア、次に欧州であることを強調した。同日、NIOCのMohsen Ghamsari国際問題局長も、「制裁前においてもわれわれのプライオリティは東南アジアだった。およそ250万b/dの輸出量のうち61~62%以上を同地域に供給していた」とし、欧州に新たな製油所建設の動きや投資先もなく、イラン原油が日ごとに重質化している今、アジア、特に東南アジアを重視する姿勢を、制裁解除後もおおよそ踏襲していくことになるだろうと述べた。 供給先候補の二番手である欧州は、2012年に禁輸措置が開始される以前はおよそ60万b/dの原油をイランから輸入していた。このうちスペインに関しては、イランからの輸出再開を視野に入れて、2015年9月にJose Manuel Soriaエネルギー大臣をテヘランに送り込む予定と言われている*4。欧州アジアアフリカ2011201220132014年図4イランの原油輸出実績(地域別)スパース・ガス田の開発進展に伴い増産傾向にある。とはいえ、米国はイラン産コンデンセートの輸入に関してUAEに対する圧力を強めているとも言われ、制裁解除前に輸出拡大が円滑に進むかは不透明だ。 その上、石油市場が約300万b/dの供給過多にある現状では売り先の確保に課題があることは確かで、短期間で輸出量が飛躍的に伸びる可能性は高くないと考える。ShellのBen van Beurden CEOは、2015年6月、イランに外国からの投資が集まることを期待しているとする一方、同国の原油市場復帰への期待に対しては「過剰だ」との見方を示した。制裁が解除されれば市場の意識に影響を与えることは考えられるが、世界の石油需要が今後長きにわたって伸びていくとするなら、「長期的見地から見て大した影響はないだろう」とも述べている。 制裁が解除され、イランが輸出量を伸ばす道筋ができたとしても、イラン産原油の減少によって空いた穴は既に中南米や西アフリカ、またイラクをはじめとする産油国によって埋められている。特に、2012年以降、米国のシェールブームに伴って原油輸出量の減少に直面していたアンゴラとナイジェリアが対欧州輸出量を伸ばしている。この他、イラクの欧州向け輸出量も2011年から2014年の間に12万8,000b/d増加している。このため、禁輸が解除されたとしても、イランが欧州市場におけるシェアをすぐに回復できる見込みはないだろう。将来的に需要増が見込まれるアジアを視野に入れていくことが予想されるが(禁輸開始以前、イランの輸出量のおよそ4分の3がアジアに向けられていた)、原油供給過多の現状が続く限り、イランが市場シェア争いに勝つためには価格を低く抑えるなどの対応を取ることが必要だ。<老朽油田の自然減退と、インフラの老朽化がネック> 生産量の早期大幅増に疑問を抱く理由は他にもある。<売り先の確保に課題あり> 2015年4月に発表されたOil Market Reportにおいて国際エネルギー機関(IEA)が指摘するように、制裁解除後数カ月のうちにイランの原油生産量が340万~360万b/dに増加するという試算が妥当であれば、2015年6月時点で280万b/dだった同国の生産量は、短期間で制裁前の水準に回復することになる(2012年に欧米が禁輸措置を開始する以前のイランの原油生産量は約360万b/d)。つまり、制裁解除が最短シナリオに基づいて実現するとすれば、早くて2016年前半には最大80万b/dが追加で市場に流れ込み、油価を押し下げる要因となる可能性があるということだ。 加えて、イランはKharg島沖とAssaluyeh港沖合のタンカーに2,000万~4,000万バレルの原油・コンデンセートを貯蔵していると言われ、制裁解除の様子を見ながら徐々に取り崩していく可能性はある(2015年7月23日付ロイター記事によると、イラン側は原油在庫の存在を否定しており、ペルシア湾に貯蔵されているのはコンデンセートと重油であるとの情報もある)。事実、7カ月以上Kharg島沖合に停留していたタンカーが7月にシンガポールに向けて出港したと見られる。また、コンデンセートについては、厳密には制裁の対象外であるので比較的輸出しやすい環境にあるほか、後述するとおりサウ5石油・天然ガスレビュー核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発Aルメニアアゼルバイジャンカスピ海トルクメニスタントルコTabrizSanandajKermanshahイラクAhwazAhwazYaranYaranAzadeganAzadeganYadavaranYadavaranDarquainDarquainAstaraRashtQazvinSavehArakAbadanBandar KhomeiniNekaTehranReyEsfahanMasjid-e-SuleimanMasjid-e-SuleimanMarunMarunAghajariAghajariGachsaranGachsaranクウェートDoroudDoroudGolshanGolshanFerdowsiFerdowsiバーレーンイランKermanBandar AbbasBibi HakimehBibi HakimehShirazFiruzabadNorth ParsNorth ParsAssaluyehSouth ParsSouth ParsLavan IslandBalalBalalSirriSirriNorth Field(カタール)North Field(カタール)カタール製油所油田ガス田サウジアラビア出所:各種情報を基にJOGMEC作成図5イランの主要油・ガス田UAEオマーンAghajari、Ahwaz、Bibi Hakimeh、Gachsaran、Haft Kel、Karanj、Marun、Masjid-e-Suleiman、Parsi、Salman(Salman以外は、Zaglos堆積盆に位置する陸上油田)等の既存老朽油田から産出される原油がイラン全体の生産量の9割を占めているが(図5)、2015年2月に発表されたIEAのMedium-Term Oil Market Reportによれば、生産開始から70年以上が経過している油田からの生産量だけでもイラン全体の約5割を占めている。禁輸措置を受け、このうち一部の油田は生産の抑制または停止を余儀なくされており、制裁解除後は比較的短期間で制裁前の生産量レベルに回復すると予測する機関もある。しかし、米国エネルギー省(DOE)エネルギー情報局(EIA)、Wood Mackenzie(エネルギー・金属分野に特化したコンサルタント会社)やGoldman Sachsのア62015.9 Vol.49 No.5アナリシスiリストが指摘するように、生産抑制中の油田が現在どのような状態にあるかについては不明な点が多く、生産再開のためにはメンテナンスが必要となる可能性も否めない(EIA:2015年7月のShort-Term Energy Outlook。Wood Mackenzie:2015年6月25日付Bloomberg記事。Goldman Sachs:2017年7月14日Bloomberg記事)。制裁解除を見据えて既にイランが油田の生産再開に向けた準備を進めているとも言われるが、資金的な制約があることを考えれば疑問は残る。 また、これら油田はいずれも、油層内の圧力低下による生産量減退という問題を抱えているので、このままでいけば、中期的には現在と同レベルの生産量を維持し、その後徐々に自然減退していくと考えられる。回収率の維持・向上には外資企業の資金力と増進回収(EOR:Enhanced Oil Recovery)の技術が必要不可欠だ。 このほかにも、2015年4月14日のザンギャネ大臣の発言によれば、イラン南部の石油関連施設はそのほとんどが建設から40年以上経過しており、新設備建設の必要性に迫られている。こうしたことも含め、今後イランは上流分野に対する200億ドルの投資を必要とするとのことだが、ここ1~2年の短期間でそれらが実現するとは考えにくい(イラン側からは、2018年にかけて、石油・天然ガス事業全体に対して1,000億ドル以上の投資が必要との声も聞かれる)。 以上を踏まえると、制裁解除のタイミングに関しては不透明性が残るものの、イランの原油輸出量は短期的には20万~30万b/d増程度にとどまり、イランが目標とする100万b/dの増加が可能になるまでには少なく見積もっても1年、外資企業の参入状況如何では、2017~2018年になる可能性もあると考える。量のほとんどを国内消費と油層圧力維持に充てており、過去数年間は供給不足に陥っている。現在のところトルコやアルメニアに向けて少量を輸出するにとどまっているため、輸出国としての存在感は薄い。とはいえ、2014年の天然ガス生産量は1,726億?/年(167億cf/d)と、前年比で86億?/年増となり、増加傾向にある(図6)。ガス田開発とエネルギー効率化の両方に進展が見られれば、今後輸出量が拡大していく可能性はあるだろう。<イラン政府の生産方針> 2015年5月18日、ジャヴァディNIOC社長は、イランの天然ガス生産能力が7億?/d(2,555億?/年)に到達したと発表するとともに、今後は毎年1億?/d(365億?/年)ずつ増加し、第6次五カ年計画(2016年3月~2021年3月)が完了するまでに13億?/d(4,745億?/年)に拡大させる目標であると発言した。BP統計によれば2014年のガス生産量は1,726億?/年であるので、能力拡大が計画どおりに進めば、およそ5年の間に3倍弱の増加が見込めることになる。このほか、国営ガス会社National Iranian Gas Company(以降NIGCと表記)も、2025年までに世界のガス取引量の8~10%までシェアを拡大させたいとしている(BP統計では2014年のシェアは0.85%と1割に満たない)。<サウスパース・ガス田の開発促進が鍵> イランの主力ガス田は他でもない洋上のサウスパースだ(図7)。13兆5,000億?(477兆cf)という世界有数の埋蔵量規模を誇る同ガス田は、イランの確認埋蔵量のおよそ4割を占めるほか、ガス産出量は国内総生産量の億m3/年1,8001,6001,4001,2001,0008006004002000出所:BP統計を基に作成生産量国内消費量図6イランの天然ガス生産量年(2)天然ガス生産の展望 埋蔵量規模から見ると、イランは世界第1位の天然ガス賦存国である。BP統計によると確認埋蔵量は34兆?(1,201兆cf)で、世界全体の2割弱を占める。しかし、埋蔵量第2位のロシア(32兆6,000億?=1,153兆cf)と第3位のカタール(24兆5,000億?=866兆cf)とは異なり、生産7石油・天然ガスレビュー核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発?7割に上るという。サウスパース・ガス田の30弱ある開発フェーズのうち、かつてTotal、Eni、Statoil、Gazprom、Petronasなどの外資企業も一部携わったフェーズ1~10は既に生産を開始している(表1)。しかし、制裁によって外資が軒並み撤退したことで、それ以降の開発は遅れに見舞われている。2015年3月にフェーズ12のこぎ着けたイラン生産開始に漕は、これを皮切りにサウスパース・ガス田開発の進展に弾みをつけるべく、2015~2016年にかけてフェーズ15~16と17~18も生産段階に移行させる予定だ。フェーズ12は将来的には300億?/年を、また15~16と17~18は合わせて400億?/年を生産する計画である。また、ジャヴァディNIOC社長によれば、サウスパースの全開発フェーズが完成すれば、イランのガス生産量は4,000億?/年近くにまで増加することイラクAhwazAhwazAzadeganAzadeganYadavaranYadavaranBurgan(クウェート)Burgan(クウェート)サウジアラビアAbadanBandar KhomeiniクウェートGolshanGolshanEsfahanAghajariAghajariGachsaranGachsaranイラン製油所油田ガス田KermanShirazFiruzabadNorth ParsNorth ParsAssaluyehサウスパース・ガス田サウスパース・ガス田Bandar AbbasFerdowsiFerdowsiバーレーンLavan IslandカタールNorth Field(カタール)North Field(カタール)Ghawar(サウジアラビア)Ghawar(サウジアラビア)UAEオマーンIRANQATARサウスパース・ガス田(イラン側)サウスパース・ガス田(イラン側)1417,185204211,19962313151071622232481112 ノースフィールド・ガス田 ノースフィールド・ガス田(カタール側)(カタール側)02040km出所:各種情報を基にJOGMEC作成AssaluyehAssaluyeh ガス処理施設へ ガス処理施設へ図7サウスパース・ガス田表1サウスパース・ガス田―生産開始済み開発フェーズの概要フェーズ参加企業(*を付した企業がオペレーター)概要フェーズ 1Petropars(イラン)*100%→2004年9月、操業権をPars Oil and Gas Company(POGC)(同)に移管・2004年1月生産開始。・ ガス87億?/年、コンデンセート4万b/d、LPG1.5万b/dを生産中(2014年時点)。フェーズ 2~3Total(仏)*40%、Petronas(マレーシア)30%、Gazprom(露)30%→2003年1月、操業権をPOGCに移管・2002年6月生産開始。・ ガス176億?/年、コンデンセート8万b/d、LPG3万b/dを生産中(2014年時点)。フェーズ 4~5Eni(伊)*60%、Petropars 20%、NICO(イラン)20%→2005年、操業権をPOGCに移管フェーズ 6~8Petropars*60%、Statoil(ノルウェー)40%→2010年、操業権をPOGCに移管フェーズ 9~10POGC*(イラン)100%フェーズ 12Petropars*80%、Sonangol(アンゴラ)20%→2012年2月に撤退出所:各種情報を基に作成・2004年8月生産開始。・ ガス186億?/年、コンデンセート8万b/d、LPG3.5万b/dを生産中(2014年時点)。・2008年8月に生産開始。・ ガス70億?/年、コンデンセート8万b/d、LPG25万b/dを生産中(2014年時点)。・ フェーズ9は2009年3月、フェーズ10は2011年8月に生産開始。・ ガス170億?/年、コンデンセート7.5万b/d、LPG3万b/dを生産中(2014年時点)。・2014年3月に生産開始。・Iran LNG向けを想定。・ ガス56億?/年、コンデンセート2.5万b/dを生産中(2014年時点)。・2014年6月、初のNGLカーゴ(95万バレル)を出荷。82015.9 Vol.49 No.5アナリシスノなる。しかし、経済制裁による資金・技術不足を理由に開発スケジュールが当初の計画よりも大幅に遅れている現状に鑑みれば、4,000億?/年の達成には時間を要すると言わざるを得ない。IEAは、2020年までの生産量の伸びは250億?/年にとどまると予測している(2015年Medium-Term Gas Market Report)。 輸出に関しては、トルコ、欧州、湾岸産油国やパキスタンへのガス供給構想がある。当面実現性が高いのは、LNGプラントが十分に活用されていない近隣のオマーンやUAE、またはクウェートに向けた供給だろう。米・イラン間の核交渉に際して仲介役を担ったオマーンに関しては、国内ガス需要が増加する一方で、既締結のLNG輸出契約も履行せねばならず、DolphinパイプラインでカタールからUAEを経由してガスを輸入している。オマーンのタイトガス開発が今後どれほどの進展を見せるかにもかかるが、イランは、6月にオマーン向けのガス輸出の商業性調査をコンサルタント会社に委託したとの情報もあり、オマーン向けパイプライン構想の検討を開始したようだ。供給先としてUAEも考えられるが、同国のシャルジャ首長国に本拠地を置くCrescent Petroleumとの間では、2001年に締結した契約に基づく販売価格が低すぎるとしてガスの供給を止めるなど、係争に発展している。本件に関しては、2014年にイラン側が敗訴。イラン側によれば100億ドル以上の損失となるようだ。油価下落の現状では、販売価格交渉においてイランは更に難しい局面に立たされることになるだろう。 一方、イランは近々イラクに向けてガス供給を開始する予定だ(最終的には91億?/年〈8億8,000万cf/d〉を輸出予定)。2015年5月19日のマジェディ・イラン石油省次官の発言によると、パイプライン敷設の進捗状況についてはイラン側が80%、イラク側が95%完成している。しかし、治安の悪化により建設作業が遅れ、供給開始時期は2016年3月に延期された(当初は2014年を予定)。 治安問題ではトルコ向けパイプラインも被害を受けている。2015年7月24日、トルコ東部(イランとの国境から15kmのA?r?地方)でイラン・トルコ間パイプラインが爆破された。クルドとの抗争や武装勢力ISILの問題が解決しない限り、ガス供給が途絶する懸念は常につきまとうことになる。このほか、欧州向けガス供給構想もあるが、ガス価格下落の現状ではパイプラインの整備にも商業性の面で問題があり、短期間で実現する見込みは薄い。 最後に国内需要の動向についても触れておきたい。ガスは、イランの1次エネルギー消費量全体の半分以上を占めると言われ、政府による補助金政策が国内需要を更に押し上げている。2004~2014年の10年間で、イラ9石油・天然ガスレビューンの国内消費量は60%近く伸びた(図6)。政府は国内ガス価格の値上げを検討しているとされるが、実施に移される段階にまでは至っていない。また、需要に大きく影響する人口の変動については、イラン・イラク戦争直後から開始した多産奨励策を背景に1970~1990年の20年間で人口がほぼ倍に膨れ上がった。このため、政府はそれまでの方針を変更し人口抑制策を講じてきた。1980年に6.5%だった出生率が、2013年には1.9%にまで減少したことなどを受け(世界銀行)、国内のガス需要は約2,000億?/年で頭打ちになるとの見方もある。今後需要の伸びが鈍化すれば、輸出量が徐々に増加していく可能性はあるだろう。しかし、2013年11月、ハメネイ最高指導者は「国にとって若者のイメージは必要不可欠」とし、人口を7,500万人から1億5,000万人に増加させたい意向を明らかにした。これによりイラン政府の方針はまたも180度転換し、人口増加を推進するため、CMによる呼びかけや政府公式お見合いサイトの開設などが行われている(2015年6月19日付読売新聞記事)。人口の増減は国内需要を大きく左右する要因ともなるので、今後の動向を注視していく必要がある。(3)外資参入までの道のりは険しい 石油と天然ガスのどちらにも当てはまることとして、今後大幅な増産を成し遂げるためには外資の資金力と技術力が必要不可欠だ。2013年8月に大統領に就任したロウハニ師は、ザンギャネ氏をはじめ、ハタミ政権時代に石油行政を担い、外国企業とも良好な関係を保っている元幹部らを石油省の要職に呼び戻した。かつて外資との開発契約を多数締結した実績を持つザンギャネ大臣の下、外国企業を受け入れるための態勢づくりが進んでいる。とりわけ注目されるのが、対外開放の対象となる石油・天然ガス上流案件の選定状況だ(詳しくは3.(1)を参照頂きたい)。とはいえ、制裁解除までに1年間を要する可能性があることは先に述べたとおりであり、正式な入札実施は更にその後ということになる。また、もう一つ重要なこととして、改定が進んでいる新石油契約方式IPC(Iran Petroleum Contract)が、評判の悪かったバイバック契約に代わってどれだけ国際石油会社(IOC)の関心を引くことができるかが大きな課題だ。 2013年9月に設置された特別委員会が契約条件の見直しに当たっており、委員長を務めるメフディ・ホセイニ氏が2015年6月に語ったところによると、2、3項目露目を兼ねを残しほぼ完成しているという。IPCのお披た説明会がロンドンで開催されるとの案内はかねてあるものの、開催日程については延期に次ぐ延期に見舞われひろめ核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発トいる。2015年7月28日には、説明会の開催時期を9月から12月14~16日に延期するとの発表があったばかりだ*5。制裁解除の見通しが立った頃に大々的に発表したいというイラン政府の思惑があるものと思われる。 なお、IPCの全貌については依然明らかになっていない点が多いとはいえ、治安面ではイラクよりも、またコスト面では西アフリカやブラジルよりも好条件の揃っているイランの契約条件が改善されれば、外資にとっては十分投資意欲をそそられる要因となるだろう。 増産に向けた課題は他にもある。イラン側の官僚的な意思決定プロセスや実務面の非効率性、地政学上のリスクの高まりが外資呼び込みの妨げになり得ると分析するアナリストもいる。また、制裁の解除と契約条件の改定という2点が実現したとしても、イランによる合意内容の不履行が発覚した場合には制裁再発動(いわゆる「snapback」)の恐れがある。「snapback」については、2015年7月14日の「包括的共同行動計画」(JCPOA)第37条と、2015年7月20日に採択された国連安保理決議2231の第14条に言及されており、制裁が解除されてから再発動される間にイランとの間で締結された契約に対して、制裁は適用されることはないと規定している*6。しかし、条文の後半には、「それら契約内容の実行がJCPOAとこれまでの国連安保理決議に違反していないという条件の下で」という旨の記述もあり、解釈が難しい。制裁が元に戻された場合、それまでに結んだ契約が白紙に戻ることはなくとも、制裁が再び解除されるまでは一時事業を停止もしくは規模を縮小せざるを得ないとすると、外資にとってはリスクが高すぎる。今後企業はイランにおける新規事業のリスク評価に相応の時間をかけることが当然予想される。商業性の評価を経て、外資企業が権益を獲得し、更に人員、資金、技術を投入し、最終的に事業が動き出して軌道に乗るまでには、数年単位の期間を要することになるだろう。3. イランの石油・天然ガス産業の展望:今後注目される開発案件 イランのエネルギー産業を短期的視点から捉えた場合、増産に向けては多くの課題があることは確かだ。しかし、埋蔵量規模で考えれば石油・天然ガスともに世界有数のポテンシャルを有していることは既述のとおりで、投資環境が改善され、十分な資金と技術が投入されれば、長期的には生産量が大きく伸びる可能性はある。本章では、今後注目していくべき上流・下流案件を紹介する。(1)対外公開が予定されている油・ガス田について 現在イランは入札公開対象となる上流案件の選定に取り掛かっている。今のところ公式の発表はないものの、報道などによれば、探鉱・生産段階を含む約50の油・ガス田(とそれに付随するインフラ事業)が対象候補として挙がっているようだ(表2、表3、図8)。このほか、南東部Jaskにおける石油ターミナルと貯蔵タンクの建設、南西部Goreh・Jask間パイプラインや、南西部Bahreganにおける石油ターミナルの建設、随伴ガス回収事業、石油・ガスプラントに併設する住居やレクリエーション施設の建設なども開放対象として検討されているようだ。 ただし、どの案件を優先的に外資に開放するかについてはイラン国内でも意見が割れている。ザンギャネ石油大臣は、GachsaranやMarunなどの大型老朽油田の回収率向上事業を挙げているが、国営NIOC幹部らは、表2対外開放の可能性がある油田一覧油田隣国との国境にまたがる油田South Azadegan(Phase1)North Azadegan(Phase2)Yadavaran(Phase2)ReshadatForoozanSouth Pars Oil Layer(Phase1)ArvandDehloran(Phase2)Peydar GharbAban(Phase2)SohrabChangoulehEsfandiar(Phase1)Arash1234567891011121314その他の油田1 Mansuri(Phase2)234567891011121314Band-e-KarkhehJofayrSomarDanan(Phase2)Darquain(Phase3)SusangerdSepehrCheshmeh KhoshResalatAbuzarDoroudNorouzZagheh出所:各種情報を基に作成102015.9 Vol.49 No.5アナリシスラ国との国境にまたがる油・ガス田(サウスパース・ガス田(カタールとの国境上)、Farzadガス田・Foroozan油田・Esfandiar油田(サウジアラビア)、Salman油田(UAE)など)の開発を優先事項に掲げている。なお、サウスパース・ガス田(開発フェーズ11)に関しては、ジャヴァディNIOC社長が公開対象になるとの見解を表明している一方で、ザンギャネ大臣はこれを否定している。今後、開放対象案件選定に向けたイラン国内の動きを注視していく必要がある。 ちなみに、主力油田の自然減退を食い止めたいのは理解できるが、なぜNIOCは国境上に位置する油・ガス田の開発を急ぐのか。イランのアザデガン油田やヤダバラン油田と地質的に連続した構造を持つイラクのマジュヌーン油田や、サウスパース・ガス田と連続しているカタールのノースフィールド・ガス田などが例として挙げられるが、経済制裁の影響で資金不足に陥っているイランは、国境地帯の開発進展において隣国から大きく後れを取っており、早急に生産段階に移行あるいは増産させたいという事情がある。を生産していることを考えると、外資参入で増産につながる可能性は十分にある。表3対外開放の可能性があるガス田一覧隣国との国境にまたがるガス田12345678South Pars(Phase11)Salman(Phase1)Salman(Phase2)Farzad AFarzad BReshadatDalan Kangan At BalalArash出所:各種情報を基に作成ガス田その他のガス田DeySefidzakhor-HaleganSefidbaghounAghar(Phase2)Farashband:Refining FacilitiesVaravi:ガス圧送ステーションKangan:ガス圧送ステーションNar:ガス圧送ステーションHoma:ガス圧送ステーションBehregansar Gas LayerTangebijar(Phase2)Kish(Phase3)3D SeismicKish(Phase1)12345678910111213(2) 注目される石油関連事業 今後注目すべき事業として挙げられるのは、既述のとおり、老朽大型油田のEOR案件と隣国との国境をまたぐ油田の開発案件だ。前者に関しては、イランの主要油田の回収率は15~25%にとどまると言われ、外資の技術導入によって向上の余地がある(表4)。また、後者については、イラクとの国境にまたがるアザデガン油田やヤダバラン油田などが挙げられる(表5)。両油田は孔隙率の低さから技術的な困難を抱えてはいるが、Shellがオペレーターを務めるイラクのマジュヌーン油田が22万b/dこうげき11石油・天然ガスレビューChangoulehChangoulehDehloran Ph2Dehloran Ph2Tangebijar Ph2Tangebijar Ph2Danan Ph2Danan Ph2Aban Ph2Aban Ph2Cheshmeh KhoshCheshmeh KhoshSomarSomarPeydar GharbPeydar GharbSohrabSohrabイラクイラクSusangerdSusangerdS.Azadegan Ph1S.Azadegan Ph1N.Azadegan Ph2N.Azadegan Ph2Bend-e-KarkhehBend-e-KarkhehJofayrJofayrSepehrSepehrMansuri Ph2Mansuri Ph2Yadavaran Ph2Yadavaran Ph2Darquain Ph3Darquain Ph3DoroudDoroudイランイランクウェートクウェートArashArashNorouzNorouzAbuzarAbuzarEsfandiar Ph1Esfandiar Ph1ForoozanForoozanHoma : ガス圧送ステーションHoma : ガス圧送ステーションVaravi : ガス圧送ステーションVaravi : ガス圧送ステーションFarzad A/BFarzad A/BAghar Ph2Aghar Ph2Nar : Nar : ガス圧送ステーションガス圧送ステーションKangan: Kangan: ガス圧送ステーションガス圧送ステーションサウジアラビアサウジアラビアS. Pars Ph11S. Pars Ph11S. Pars Oil Layer Ph1S. Pars Oil Layer Ph1バーレーンバーレーンDalan Kangan At BalalDalan Kangan At BalalカタールカタールKish Ph3Kish Ph33D Seismic/3D Seismic/Kish Ph1Kish Ph1ReshadatReshadatResalatResalatSalman Ph1, Ph2Salman Ph1, Ph2出所:各種情報を基にJOGMEC作成図8対外開放の可能性がある主要油・ガス田核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発隣国との国境にまたがる主要油田の開発状況>アザデガン油田 陸上の南部アザデガン油田においては、2004年2月に国際石油開発帝石株式会社(INPEX)がNIOCとの間で同油田の評価・開発に係る契約を締結し、75%の権益を取得したが(2006年10月には権益の65%をNIOCの子会社であるNaftiran Intertrade Company〈NICO〉に譲渡すると同時に、オペレーター権も移管)、2010年10月、同プロジェクトから撤退することについてNIOCとの間で合意したことを表明し、権益を返還している。①南アザデガン油田 イラクとの国境地帯に位置する南アザデガン油田の原始埋蔵量は260億バレルとも言われる。2009年に中国国営CNPCが同油田の開発に関する25億ドルの合意を締結し、生産開始当初は52カ月以内に石油32万b/d(天然ガスについては約20億?/年)を生産する予定であった。しかし事業は計画どおり進まず、生産量は5万b/d以後、伸び悩んだ。これを受けNIOCは、2014年4月末、南アザデガン事業の権益を没収する旨の公式な通達をCNPCに対して行っている。外資の参入によって開発の進展が加速するという可能性はあるものの、現在のところ同油田の生産量が10万b/d台に到達するのは2018~2020年頃になると見られている。②北アザデガン油田 CNPCが操業を請け負っている北アザデガン油田の現生産量は2万b/d程度(当初の予定では2013年1月に7万5,000b/d)にとどまると見られる。2015年4月末に国営PEDEC(Petroleum Engineering and Development Company)のBehbahani局長が発言したところによると、第1開発フェーズはおよそ9割が完了しているとのことで(当初の完成予定時期は2014年末)、イラン暦Tir月(2015年6月22日~)に7万5,000b/dで生産を開始する予定であった。しかし、今のところ実際に第1フェーズの生産が開始されたという発表はない。今後は、第2開発フェーズ(更に7万5,000b/dの生産を予定)の開発請負業者の選定が行われることになる。北アザデガン油田については短期的には大幅増産の見込みは薄く、2015年後半に約3万b/d、2018年頃に第1フェーズの目標量7万5,000b/dに達するのではないかと考えられる。ヤダバラン油田 中国国営SINOPECが操業を請け負っているヤダバラン油田は、約5万b/dを生産していると見られ、2015年中には開発フェーズ1の完了に伴い8万5,000b/d(当初目標では2014年10月初旬)に増加させたいとしている。しかし、これまでの事業進展状況を考慮すると、1~2年は遅れる可能性が高い。表4EOR技術の適用が期待される老朽油田油田名制裁前の生産量(万b/d)確認埋蔵量(億bbl)生産開始年AhwazMarunGachsaranBibi HakimehAghajari計805050105195出所:各種情報を基に作成1481206029736419601965194019641939―表5隣国との国境をまたぐ主要油田油田名AzadeganForoozanDehloranYadavaran計生産量(万b/d)*推定値 確認埋蔵量(億bbl)地質的に連続した構造を持つ油田73.50.551650771074Majnoon(イラク)Marjan(サウジアラビア)Abu Ghirab(イラク)Majnoon(イラク)―出所:各種情報を基に作成サウスパース・ガス田(コンデンセート) サウスパース・ガス田から産出されるコンデンセートは今後伸びていくことが予想される。2015年6月時点のイランのコンデンセート生産量は約45万b/d(IEA、図9)で、ザンギャネ石油大臣はこれを2017~2018年に100万b/dにまで増加させたいと発言している。 2015年5月7日、ジャヴァディNIOC社長は、制裁解除の如何にかかわらず、2016年3月までに、イラクとの国境上に位置するアザデガン、ヤダバラン、南ヤラン油田からの総生産量を、現在の10万b/dから25万b/dまで増加することを目標にしている。なお、カールーン西部に位置するこれら油田群の生産能力を3年間で74万b/dまで増強する122015.9 Vol.49 No.5アナリシス012年201520142013(3)注目されるガス関連事業 国営ガス会社NIGCのAzizollah Ramezani国際問題局長が2015年6月に語ったところによると、世界のガス取引量におけるイランのシェアを2025年までに8~10%まで増加させたいとする同社の目標達成のため1,000億ドルの資金が必要で、およそ半分の額については外国からの投資を期待しているとのことである。このうち200億ドル超が中流事業に充てられ、ガスの処理能力および脱水能力を2025年までに現状の2倍の12億?/年にまで増強するという。また、中流拡大計画のうち、最も多くの資金が投入されるのが国内パイプライン網の整備だ。63億ドルをかけて全長2,750kmのパイプラインを敷き、2017年に送ガス能力を10億?/年増加するとしているほか、南部のAssaluyehから北西部のBazarganまでを結ぶ全長1,800kmのパイプライン(56インチ)建設には51億ドルが投入される計画だ。加えて、能力1,725MWのガス圧送ステーションを16基建設する計画もある。<イラン・パキスタン間ガスパイプライン> このほか、イラン・パキスタン間ガスパイプラインの建設計画に中国が乗り出している(図10、図11)。2015年4月20日に習近平国家主席がイスラマバードを訪問し、パキスタンにイラン産ガスを輸送するためパイプラインを一部中国企業が建設することで合意したようだ(両政府は、両国間に「経済回廊」を築き上げることを目標に、Gwadar港から中国南西部をつなぐ道路の建設と線路の敷設も計画している)。本プロジェクトは「Peace Pipeline」と名付けられ、パキスタンのAbbasi石油大臣によれば「既に建設中」とのことである。パキスタン政府は数カ月にわたり、中国政府(直接の交渉相手は国営石油会社CNPC傘下のChina Petroleum Pipeline Bureau)との間で同事業への投資に関して協議を続けていた。 両国間の合意に基づき、中国は総工費の85%を負担する(南西のGwadar港から南部Nawabshahまでを結ぶ産するプラントを建設することに関して既に暫定的な合意に達しており、20万トン/年のABS樹脂などを生産することを目標に掲げている。20072008200920102011200420032006(注)2015年は1~6月の平均値出所:IEA統計を基に作成200505万b/d4540353025201510図9イランのコンデンセート生産量ための200億ドルのプロジェクトは2018年末までには完了する予定とのことである。制裁解除のタイミングが不透明であるため、計画が後ろ倒しになる可能性はあるものの、外資の参入による増産が期待されるところだ。<石油化学事業> 石油化学産業の発展もイランが以前より掲げている目標の一つだ。石油・天然ガスの輸出収入に対する過度の依存から脱却するため、第4次五カ年計画(2005~2010年)中に多額の資金が投入された。2010年に発表された第5次五カ年計画(2010~2015年)においては、オレフィン系炭化水素、ベンジン、メタノール、化学肥料などの生産能力を2015年までに2倍に増強する計画であった。経済制裁の影響で計画は予定どおりに進んでいないが、2015年7月14日のイラン核開発に関する最終合意を受け、石油化学製品の生産量は将来的には伸びていこう。特にイランのエチレン生産能力(630万トン)は注目に値し、中東ではサウジアラビア(1,590万トン)に次ぐ規模を誇る。経済制裁の煽りを受けてプラントの稼働率は低水準のままで、ポリエチレンをはじめとする派生商品の輸出ポテンシャルは大きい。 石化関連の最新動向としては、中東地域では最大規模となる石化複合施設を南西部のAssaluyehに建設する計画があり、イランとMaire Tecnimont(伊)が2015年3月1日に協議を開始している。これに伴い、同社のPierroberto Folgiero CEOはテヘランを訪問したようだ。両者は、Parsエネルギー経済特区にABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)と合成ゴムを生13石油・天然ガスレビュー核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発ehran全長700km)。投資額は15億~18億ドル(LNG受け入れターミナルも含まれる場合は20億ドル)になる見込みである。一方のパキスタン政府は、Gwadar港からイラン国境までの80kmの建設を担当する。建設完了までには2年間を要するとされ、完成すれば、エネルギー不足に直面しているパキスタンに対して4,500MWの電力供給が可能となる(ちなみに同国のエネルギーミックスのうちガスは5割弱を占める)。イラン側の900kmに及ぶパイプラインは既に建設が完了している(最後の250kmについては未完成との情報もある)。イランは過去数回にわたり、パキスタンに対して建設のペースを速めるよう要請していた。シャリフ・パキスタン首相の外務担当顧問を務めるSyed Tariq Fatemi氏は、AssaluyehBAHRAINBAHRAINQATARQATARIRANIRAN2015年7月23日、「(イ・パ間パイプラインの建設は)われわれにとって死活問題である。制裁が解除されればすぐにでも(イランからのガス輸入を)進めたい」と発言している。イランとパキスタンの間では、まだ販売価格KabulIslamabadAFGHANISTANAFGHANISTANPAKISTANPAKISTANNawabshahKarachiGwadar出所:各種情報を基にJOGMEC作成図10イラン・パキスタン間ガスパイプライン14MultanMultanAfghanistanKandaharKandaharTAPI330DauletabadDauletabadPeaceGwadar●PakistanNawabshak●87AsaluyehIranIGAT Ⅰ,Ⅱ,ⅢSyriaAkkasAkkasIraq出所:各種情報を基にJOGMEC作成図11イラン・カスピ海周辺のガスパイプライン網RussiaOrenburgYeletsSoyuzCCAACCKazakhstanCCAACC--33UzbekistanTurkmenistanRusskayaRusskayaurkishStreamBlue Stream160(315)SamsunSamsunTanapTanap(160)TurkeyDzhubgaDzhubgaGeorgiaErzurumSSoouutthCaucasushCaucasusAzerbaijanAzerbaijanTabriz●100Trans-Caspian300FinlandmmVyborgVyborgern Lightsern LightsorthorthNNBelaruszzeeuuhhyyooSSttooBrBrooooddhhrrUkraineNorwaySweden5555BcmBcmNord StreaNord StreaPolandGreifswaldOPALPALCzechNELNELRehdenDALGermanyOlbernhauMIPPAATT00)1(GreeceGreeceTTrans BalkanRomaniaBulgariaCroatiaCroatia?Bosnia-Bosnia-HerzegovinaHerzegovinaSerbiaSerbiaItalyUzhgorodUzhgorodHungaryAustriaAustriaSloveniaSlovenia2015.9 Vol.49 No.5アナリシスヘじめとする契約条件の詳細について合意に至っておらず、今後の進捗が期待される。 一方、かつて米国は、パキスタンに対し制裁の可能性をちらつかせることでパイプラインの建設を阻止しようとした経緯がある。1995年、イラン産ガスをパキスタンとインドに供給するIPI(Iran-Pakistan-India)パイプライン構想が誕生したが、契約内容をめぐる対立、パキスタン情勢の悪化や、米国からの圧力もあり、インド政府は2009年に計画からの脱退を表明した。米国は、アフガニスタンを介してトルクメニスタンからガスを供給するTAPI(Turkmenistan-Afghanistan-Pakistan-India)パイプライン建設案のほうを後押ししていたが、同計画については関係国間の協議が長く続き、決着していない。<LNG事業> 仮に、最短シナリオどおり2016年初めに制裁が解除されたとしても、LNGの輸出が開始するのは数年先になるだろう。世界のLNG市場が供給過多にあり、アジアにおける需要の伸びが鈍化傾向にある一方で、豪や米においてはLNG出荷プラントの建設案件が多数立ち上がっている。更に、油価下落の影響を受けLNG価格も落ち込む昨今、イランのLNG輸出計画がそう容易に軌道に乗るとは考えにくいからだ。支出削減を進める石油企業にとっても、LNG案件は費用のかかる大規模事業であるのみならず、相手がイランの場合には、制裁の再発動というリスクも抱えねばならないことになる。これらを考慮に入れた場合、最も楽観的な評価をしても、イランのLNGプラントが完成するには少なくとも2018~2019年まで待つ必要があるだろう。 もともと計画されていたLNG案件中、唯一進展しているのはAssaluyeh港近くのIran LNG(1,100万トン/年)だ(表6)。建設予定地はAssaluyehの石油化学プラントに近いほか、サウスパース・ガス田からのパイプラインの揚げ地でもあり、多くの利点を有している。2007年に建設が開始されたIran LNGは、米国による経済制裁を回避するため、液化技術の提供に関してドイツの化学工業メーカーLinde を採用したが、2012年初めにEUによる制裁が発動したことで事業は中断されていた。現在建設工事の進捗率は50%と言われているが、NIGCによれば、イラン側が建設を進めているのは貯蔵タンクや積み出し桟橋のみで、液化設備についてはまだ手つかずの状態だ。ドイツのGabriel副首相兼経済・エネルギー大臣が2015年7月19日にテヘランを訪問した際には、大臣に随行した60名の企業団のなかにLinde社の幹部も含まれていたとのことで、Iran LNGの具現化に向けた何らかの進展が見られるかもしれない。なお、2015年6月には、かつてPersian LNG に参画していたShellも代表団をテヘランに派遣している。表6計画中あるいは過去に計画されていたイランのLNG案件名称Iran LNGPars LNGPersian LNGNIOC LNG参加企業(制裁前)NIOC 50%、BP 25%、Reliance(印)25%NIOC 50%、Total 30%、Petronas 20%NIOC 50%、Shell 25%、Repsol 25%NIOC 50%、BG 25%、Eni 25%生産能力1,100万トン/年(2トレイン)1,000万トン/年(2トレイン)1,620万トン/年(2トレイン)800万トン/年(2トレイン)出所:各種情報を基に作成対象ガス田状態サウスパース(フェーズ12)サウスパース(フェーズ11)サウスパース(フェーズ13・14)サウスパース(フェーズ12)50%完成(液化処理設備除く)保留保留棚上げ4. 欧米を中心とした各国・各社の動き 米国の石油メジャーについては、1979年のイラン・イスラーム革命以来いずれも対イラン投資活動を行っていない。しかし、制裁による撤退を余儀なくされるまでは、Shell、Total、Eni、Lukoil、Statoil、OMV、Repsolなどの欧州企業を中心とした外資が上・下流事業に携わっていた。最近では、制裁の解除を見越した欧州勢を中心に、イランとの人脈構築を強化しようとする各国政府や企業の動きが目立っている。15石油・天然ガスレビュー核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発i1)Iran Oil & Gas Show 2015 2015年5月6~9日、テヘランで、第20回International Iran Oil, Gas, Refining and Petrochemical Exhibition(通称:Iran Oil & Gas Show 2015)が開催された。イラン企業1,200社のほか、欧州やアジアをはじめ29カ国(英、仏、ベルギー、スペイン、オーストリア、スイス、伊、独、モナコ、露、ウクライナ、カザフスタン、トルコ、UAE、印、シンガポール、韓、中、マレーシア等)から約600社の外国企業が参加したと報じられた。欧州勢の存在感が増した本年の展示会では、イランの石油・天然ガス産業が持つ潜在能力の活用に焦点が当てられたようだ。うかが(2)欧州企業および政府を中心とした動き Shellは、2015年6月、同社の代表団がテヘランを訪問し、NIOCと会談したと発表している。Shellの報道担当によれば、同社がイランから2010~2011年の間に買い付けた原油の未払い代金(20億ドル)について協議したとのこと。また、制裁が解除されれば、「イランのエネルギーポテンシャルを開発するためにShellとして何ができるのか、イラン政府と模索していきたい」とも発言している。EniのClaudio Descalzi CEOも、2015年以降数回にわたってテヘランを訪問しているとの情報もあり、イランへの再参入の可能性を前向きに検討しているわれる。世界最大規模の商社Glencoreも、制裁ことが窺解除をにらみイラン側との接触を図っている。同社の報道担当によると、石油部門のトップを務めるAlex Beard氏が代表団を率いてテヘランを訪問し、将来的なビジネスチャンスについてイラン側と意見交換したとのことである(2015年7月3日付Financial Times記事)。また、Schlumbergerなどのサービス会社も意欲を見せており、同社の報道担当は、制裁解除後にイランにおける投資ポテンシャルに関する評価を始めたいとの意向を明らかにした(2015年7月23日付Wall Street Journal記事)。 欧州では政府主導でイランに接近する動きもある。最終合意からわずか5日後の2015年7月19日には、ドイツのGabriel副首相兼経済・エネルギー大臣が60名の企業団を引き連れテヘランを訪問し、ロウハニ大統領やザンギャネ石油大臣ら閣僚と会談した。企業団のなかには、自動車大手のDaimlerやVolkswagen、電機大手のSiemensに加え、Iran LNGにも技術を提供する予定だった化学工業メーカーLindeの幹部も含まれていた。ザンギャネ大臣は、2015年7月20日付のShana記事で、新しい契約方式の発表後に、中小規模も含め多くのドイツ企業がイランの石化・精製・貯蔵分野や、エネルギー効率化、再生可能エネルギー事業などに参画してくれることを望むと発言している。一方、ドイツ商工会議所は、「石油やガスの探索機器、化学薬品、医療品、食料品などドイツ製品への潜在的需要は非常に大きい」と見ている(2015年7月21日付毎日新聞記事)。 また、フランスのファビウス外務大臣も7月29日にテヘランを訪問、オランド大統領からのパリへの招待状をロウハニ大統領に手渡すとともに、9月には仏企業団もイランを訪問予定だと伝えた。このほか、英政府やイタリア政府も経済視察団の派遣を検討中との報道が見受けられる。 欧州勢の関心の高さと積極姿勢を窺うことのできる事例は他にもある。2015年7月23~24日にかけて、ウィーンで「Iran-EU Conference ? Trade & Investment」と題する対イラン投資セミナーが開催された*7(図12)。イラン貿易振興機構主催の下、独・イラン商工会議所、仏・イラン商工会議所、英・イラン商工会議所の3者による共催で、オーストリア連邦経済会議所で開かれた同イベントには、イラン側から、Nematzadeh産業・鉱業・交易大臣、Zamaninia商業・国際問題担当副石油大臣、その他国営ガス会社NIGC、国営石油化学会社NPCの幹部らがスピーカーとして出席し、金融、エネルギー、鉱業、自動車・重機産業、ナノテクノロジー、医療エンジニアリング分野などにおける投資環境について話し合われた。 ロシアもイランとの関係を強化していく姿勢だ。2015年7月、Novakエネルギー大臣は、対イラン投資と石油・天然ガス分野における協力について協議するため、両国の高官が今秋にも会談を持つ予定だと明かした。とはいえ、ロシア企業のイラン進出の可能性については、イランが何を提供できるかにかかっており、現在のところロシアにとってイランに進出するだけの利点(privileges)はないように見受けられるともNovak大臣は発言している。確かに、外資の呼び込みにおいては、契約方式の改定をはじめとする投資環境の整備・改善こそが、制裁の解除と並んで重要な要素となってくるだろう。 ロシア企業の反応はどうだろうか。国営大手RosneftのMikhail Leontyev副社長は、「メジャーはどの企業もイランに関心を持っており、当社も例外ではない」とする一方、油価下落を受けて企業各社が支出削減策を採っている今、参入までの道のりは平坦ではないとも付け加えている。このほか、制裁を受けて2010年にAnaran開発プロジェクト(イラクとの国境沿いに位置するAzar油田とChanguleh油田の開発事業)から手を引いた162015.9 Vol.49 No.5アナリシスukoilについては、Vagit Alekperov社長がかねてイランの有望プロスペクトを調査していると発言、Anaranプロジェクトへの再参画に期待を寄せている(同社は2015年4月にテヘラン事務所を再開)。一方、2009年に上記2油田の開発に関するMOU(Memorandum of Understanding)をイランとの間に締結したGazprom Neftは、特定の事業を念頭に置いた協議が進んでいることはないとし、コメントを避けている。このほか、2012年に地質調査の対象となる地域の選定に関してイランとMOUを交わしたと報じられたZarubezhneftも、イランの動向に注目しているようだ。図12(3)米国企業 欧州企業の積極性と好対照をなすのが米国企業だ。1995年にはクリントン元米大統領が大統領令を発出し、洋上のSirri油田(A、E)開発に乗り出そうとするConocoPhillipsを押しとどめた過去もあり、米国企業のイラン進出にはまだ高いハードルがあるとの見解が根強くある。今後、米国による対イラン制裁の解除がいつ始まり、どのようなペースで進められるかが鍵を握ろうが、両国の間に横たわる強い不信感をぬぐい去るのは容易な出所:http://www.iraneuropeconf.com/?q=enセミナー公式ウェブサイトのトップページことではないだろう。 一方、ExxonMobil、Chevron、ConocoPhillipsなどの米国メジャーが、制裁解除を後押しするためのロビイ活動を行う可能性も指摘されている。事実、2015年5月にはExxonMobilがロビイスト会社Nickles Group(元米上院議員Don Nicklesが代表を務める)と契約したと報じられたが(2015年5月21日付Bloomberg記事)、ExxonMobilは直ちに反論声明を発表し、これは、イランの状況を監視するためでありロビイ活動ではない、と報道内容を否定した。イラン側は米国大手の参入を熱望しているが、政治的配慮から、また米国内での世評の低下を恐れ、企業はイランへの関心を表明することに慎重にならざるを得ないとの印象を受ける。おわりに イランの核問題をめぐる最終合意の実現に伴い、同国が比較的短期間で石油・天然ガスの生産量を増加させるのではないかとの観測が市場で広まっている。しかし、制裁解除のタイミングとペースがまだ不透明であること、売り先の確保に課題があること、また外資参入から事業の開始までには数年単位の時間が必要であることなどを考えれば、留意すべき点は多い、と指摘した。一方で、イランに関心を寄せている外資企業が多いことも確かである。改定作業中の新契約方式が外資をどれだけ引きつけられるかにかかるが、世界最大規模の資源ポテンシャルを持つイランは非常に有望な投資対象となる可能性を秘めている。イランの将来的な成長を見据え、長期的視野でビジネスチャンスを開拓していくためにいま何をなすべきなのか。各企業の今後の動向に注目が集まる。17石油・天然ガスレビュー核問題をめぐる最終合意を受けて注目が集まるイランの石油・天然ガス開発注・解説>*1: DOS, “Parameters for a Joint Comprehensive Plan of Action Regarding the Islamic Republic of Iran’s Nuclear Program”, Apr 2, 2015, http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2015/04/240170.htmザンギャネ石油大臣は、2015年5月6日、テヘランで開かれた国際見本市International Iran Oil, Gas, Refining and Petrochemical Exhibition(通称:Oil and Gas Show)において、「不公平な制裁により、イランは市場シェアの6割を失った」と発言している。以前、ザンギャネ大臣は解除の後1~2カ月で50万b/d、6~7カ月で更に50万b/d増加させることができると 発言しており、多少の矛盾はあるものの、増産を志向している点に変わりはない。2011年のスペインのイランからの原油輸入量は750万トン(15万b/d)と、同国の原油輸入量全体の15%、中東 からの輸入量のうち約半分を占めていた。 詳細については、以下公式ウェブサイトを参照のこと:http://www.iranoilgas-summit.com/国連安保理決議2231の内容については以下を参照のこと:http://www.un.org/press/en/2015/sc11974.doc.htm 同セミナーの詳細については以下URLを参照頂きたい:http://www.iraneuropeconf.com/?q=en*2: *3: *4: *5: *6: *7: 執筆者紹介増野 伊登(ましの いと)愛媛県松山市出身。学  歴:2008年、慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。職  歴:2011年8月から2013年8月にかけ、専門調査員として在アラブ首長国連邦(UAE)日本国大使館に勤務。2013年11月よりJOGMEC調査部に勤務。中東・アフリカ地域(イランとイラク、東部・南部アフリカ)を担当。趣  味:25年来の趣味は漫画。とにかく面白い漫画を発掘することに至上の喜びを感じる。近  況:仕事でも趣味でも目を酷使しているので、視力の低下はもちろんのこと、ドライアイをこじらせて困っている。182015.9 Vol.49 No.5アナリシス
地域1 中東
国1 イラン
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国10
国・地域 中東,イラン
2015/09/15 [ 2015年09月号 ] 増野 伊登
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