ページ番号1006575 更新日 平成30年2月16日

油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化

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レポートID 1006575
作成日 2015-11-20 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般基礎情報
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2015
Vol 49
No 6
ページ数
抽出データ JOGMEC調査部竹原 美佳油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化はじめに 中国のエネルギー消費は2012年以降減速している。同国は10年にわたる政策的誘導によりエネルギー効率の向上と多様化を徐々に進めてきたが、経済の減速と産業構造の調整(“新常態”)、環境政策の強化がこれに加わった形だ。 世界の需要のけん引役であった石油や天然ガスの消費の伸びは、ここ数年減速しており、世界の供給過剰感に拍車がかかっている。 中国の2014年の石油需要は2013年に続き減速していたが、足元(2015年上期)の需要は低油価に加え、多目的スポーツ車(SUV)の販売好調により上向いている。短期的には経済の先行き不透明感から実需の伸びはそれほど期待できないが、国家備蓄(SPR)の積み増しや独立系製油所への原油輸入ライセンスの付与による輸入の増加が当面需要を下支えする見通しである。中長期の石油需要は、経済が減速しているとはいえ、貨物の道路輸送や自動車販売などの輸送燃料需要による一定の伸びが維持されると思われる。輸送燃料需要の潜在力は弱くないが、上振れ、下振れ双方の可能性がある。 今後の石油の調達について、これまで中国は増大する需要に対し調達量の拡大と多様化で対応してきた。しかし、消費の減速に伴い今後はより経済合理性と戦略的視野に立つと考えられる。調達の変化は資源国や世界の石油市場に影響を及ぼすだろう。既にロシアからの原油調達が伸び、アンゴラが伸び悩んでいる。サウジアラビアやイラクなど中東からの調達は伸びているが、供給拡大が予想されるイランを含め各国間の競争が激化すると思われる。 中国の天然ガス需要は2014年以降急減速した。経済の減速に加え、硬直的な国内の価格統制により、2014年下期以降石油や石炭に対し価格競争力が著しく低下し、供給過剰に陥った。このところ(2015年上期)の天然ガス需要はさらに減速しており、企業は国内生産と輸入を抑制するとともに、国外保有権益(LNG)のスポット市場への販売など供給過剰への対応に苦慮している。LNG受入基地の一部は建設が遅延し、拡張計画も先送りされている。ロシアとの輸入パイプラインガスの新規契約交渉も当面実質的な進展は期待できない。また、天然ガス需要は抜本的な価格改革が行われなければ、代替燃料の状況から今後数年は需要が伸び悩む可能性がある。 ただし、天然ガスは環境政策等により長期的には需要の増大が見込まれる。政府は非在来型ガス(シェールガス)生産への期待値を下げており、長期的にはロシアからの天然ガス調達が拡大すると思われる。石油と天然ガスという視点に立つと、中国は欧州と同様にロシアとのエネルギーにおける相互依存関係を深めていくことになる。1. 中国のエネルギー消費構造の変化と2020年までの政策(1)“新常態”(New Normal)とエネルギー消費の減速 中国のエネルギー消費の伸びは2012年以降減速している。2014年のGDPの伸び率は天安門事件(1989年)後の1990年以来 24年ぶりの低さとなる7.4%にとどまり、エネルギー消費と電力消費の伸び率はアジア通貨危機時の1998年以来16年ぶりの低さとなる2.2%、3.8%の伸13石油・天然ガスレビューアナリシス.4%3.8%2.2%20012002200320042005200620072008200920102011201220132014年19992000出所:中国統計摘要2015に基づき作成GDPとエネルギー/電力消費の前年比成長率35302520151050億toe10.329.8200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014年出所:中国統計摘要2015に基づき作成図2エネルギー消費推移7.3%7.3%2.2%2.2%22.0%22.0%11.2%11.2%5.7%5.7%17.1%17.1%68.5%68.5%66.0%66.0%石炭原油天然ガスその他20002014年出所:中国統計摘要2015に基づき作成図3中国のエネルギーミックスの変化(2000・2014年)14エネルギー消費 前年比成長率GDP 前年比成長率電力消費 前年比成長率%18161412199519961019971998図102468びにとどまった(図1)。 同国はこの状況を“新常態”(New Normal:経済減速の容認、重工業からハイテク産業、投資主導から消費・サービス産業主導への構造転換)と称している。2015年3月の全人代において李克強首相は2015年のGDPの伸び率について7%前後を目指す(前年の7.5%前後から0.5ポイント下げ)とした上で、経済の減速はエネルギー政策(エネルギー消費抑制や価格改革)実現の好機と述べた。また、楼継偉財務相は2015年9月に開かれたG20において、経済の低迷は構造調整に伴うものであり、調整には時間を要すると発言している。中国政府は2020年までにGDPと所得を2010年比で倍増するとの目標を掲げており、実現にはGDPの年成長率7%程度が必要だが、最近は7%を下回ることを許容する雰囲気が醸成されつつあるようだ。(2) 10年以上にわたる政策的誘導により、省エネとエネルギーの多様化漸進 中国のエネルギー消費は2000年の石油換算10.3億t(以下、toe)から2014年には29.8億toeと約3倍に増加した(図2)。しかし消費の内訳を見ると、石炭消費は2000年の68.5%から66%に、石油は22%から17.1%に減少したが、天然ガスは2.2%から5.7%に、水力・原子力、風力等の非化石エネルギーは7.3%から11.2%に増加しており、消費の多様化、特に石炭や石油から天然ガス、非化石エネルギーへの転換が進展していることを窺わせる(図3)。うかが①厳しい政策目標により時に需給バランスの歪みが生じつつも、約10年で3割の省エネを実現 エネルギー消費の多様化は自然に進んだわけではなく、政策的な誘導によるものだ。政府はエネルギーの消費と供給のそれぞれについて目標を設定している。 消費については、2005年を基準年として2014年までにエネルギー消費原単位(GDP1万元創出あたりのエネルギー消費)は0.98から0.69に30%減少した(図4)。 第11次五カ年計画(2006~2010年)では、2005年2015.11 Vol.49 No.6アナリシス次エネルギー消費(左軸)原単位(右軸)toe/万元0.690.691.21.00.80.60.40.22008200920102011201220130.02014年GDP単位あたりエネルギー消費削減状況表112・5計画期のエネルギー生産目標2010年生産能力2015年生産能力36.625.641.028.72.04001,56515.14.73.32010~2015年生産能力年平均成長率4.3%4.8%0.0%10.5%10.9%(参考)2014年生産36.025.226.418.42.14231,25712.24.93.4(参考)2005~2010年年平均成長率6.6%6.6%2.1%14.0%11.8%29.720.832.422.72.04009489.22.82.0億toe億t万b/d億tce億toe2005200620070.98図435302520151次エネルギー出所:中国統計摘要2015に基づき作成を基準年として2010年のエネルギー消費原単位を17%削減する省エネ目標を設定した。同期間中のGDPの年平均成長率11.3%に対し、エネルギー消費のそれは6.7%で、エネルギー原単位は2005年(基準年)の1.41から2010年は1.14に減少、累計19%の削減となり、省エネ目標は超過達成した。 ただし、この時は中央政府が地方政府や企業に対し目標達成を厳しく求めたことでさまざまな問題が生じ、エネルギーみ需給バランスに歪が生じた。五カ年計画最終年の2010年5月に政府は目標未達の場合、地方政府や企業幹部の責任を問い、相応の処分を行うとする通達を出した。同年9月に各地の達成状況を公表し、一部の地域について目標達成は厳しく、速やかに実効性のある対策を立てる必要があると指摘した。 これを受けて9月以降、一部の地方政府が電力の供給を強制的に制限した。河北省のある地域では電力供給が一律1日4時間に削減され、安徽省のある地域では病院への電力供給カットにより手術を自家発電機で行う羽目に陥ったと報じられた。電力供給削減に対し、各地で自家発電向けの軽油・重油の仮需要が発生した。2010年の石油消費の伸びは前年の3%から13.8%に増加、翌年はその反動で1.9%に急減した。非化石エネルギー天然ガス億?Bcfd億tce億toe億tce億toe1005石炭原油ゆが15石油・天然ガスレビュー出所:エネルギー発展12・5計画(2013年1月)に基づき作成②2015年までのエネルギー消費抑制目標は達成見込み 政府は現在の第12次五カ年計画期(2011~2015年:以下、12・5計画)について2015年のエネルギー消費原単位を2010年比で16%削減する目標を設定している。 2015年5月に中国国家統計局が発行した「中国統計摘要2015年」ではエネルギー関連データが修正されており、数値の修正や従来の政府目標に対し再検証が必要となっている。2013年1月に政府が発表した「エネルギー発展12・5計画」において2010年のエネルギー消費量32.5億t標準炭(以下tce、22.8億toe相当)に対し、2015年のエネルギー消費目標は年平均4.3%増という前提のもと油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化0億tce(28億toe)となっていた(中国のエネルギー統計は基本的にトン標準炭〈ton coal equivalent:tce〉だが、本稿では石油業界になじみのある単位に極力置き換える。具体的にはトン標準炭はtoeに、石油はbbl、天然ガスは?やcfdとする)。しかし2015年5月発行の「中国統計摘要2015年」において、2010年のエネルギー消費量は3.5億tce上方修正され36億tce(25.2億toe)となり、2014年消費量は既に2015年目標を2.6億tce(1.8億toe)上回る42.6億tce(29.9億toe)となっている。修正後の数値に基づき計算すると、2010~2014年にかけてエネルギー消費は「エネルギー発展12・5計画」の前提どおり年平均4.3%増加し、エネルギー原単位は2010年(基準年)の0.88から2014年は0.76で累計13%の削減となっている。今年3%削減すれば目標は達成できる計算だ。③12・5計画期の供給目標は石炭抑制、天然ガス・非化石エネルギー拡大 12・5計画期における国内のエネルギー生産目標については「エネルギー発展12・5計画」で設定されている。政府は石炭の供給を抑制し、天然ガスや非化石エネルギーの供給を拡大させる方針だ。2015年の石炭の生産能力の目標は年平均4.8%増の41億tce(28.8億toe)で、生産能力の伸びは前回の五カ年計画期の生産の伸び(年平均6.6%増)を下回る目標設定である。一方、2015年の天然ガスと非化石エネルギーの生産能力の目標はそれぞれ年平均10.5%増の1,565億?(15.3Bcfd)、同10.9%増4.7億tce(3.3億toe)であり、生産能力の伸びは2005~2010年の生産の伸び(天然ガス14%、非化石エネルギー11.8%)を下回るが、いずれも年平均約10%増という高い目標が設定されている(表1)。(3) 2020年までのエネルギー基本政策は策定済み 13次5カ年計画(2016~2020年)が公表されるのは2016年3月だが、2020年までのエネルギー需給政策については2014年3月公表の「エネルギー産業の大気汚染防止作業計画」ならびに2014年11月公表の「エネルギー発展戦略行動計画(2014~2020年)」が基本政策である。いてはガソリンと自動車用の軽油について2017年までに全国で「国5」基準(硫黄含有量の指標規制値をユーロⅤ相当の10ppmとする)を導入する。三大都市圏(北京・上海・広東およびその周辺地域)の重点都市については2015年末までの導入を目指す目標が設定されている。②「エネルギー発展戦略行動計画」の概要・「エネルギー発展戦略行動計画」は13次五カ年計画のつなぎ   「エネルギー発展戦略行動計画」は2014年4月に李克強首相が主催した国家能源(エネルギー)委員会において閣僚レベルで審議、了承されたハイレベルのエネルギー政策である。通常、五カ年計画は初年度では大枠が示されるのみであり、産業や項目など細分化された五カ年計画は数年遅れて発表されるため、同計画は13次五カ年計画のつなぎという位置付けだ。・戦略方針は節約の優先、国内資源への立脚、グリーン・低炭素、技術革新   同計画では節約の優先、国内資源への立脚、グリーン・低炭素、技術革新という四つの戦略方針が示された。具体的には2020年にエネルギー自給率85%を確保しつつ、1次エネルギー消費総量を48億tce(33.7億toe)に抑制し、石炭が1次エネルギー消費に占める比率を62%以下、非化石エネルギーを15%、天然ガスを10%以上とする目標が設定されている(表2)。石油の比率は明示されていないが、4,000万toe以上の燃料転換を実行する計画だ。石炭の比率は62%以内と設定されており、各エネルギー源の比率を合計すると、石油の比率は現在の17%から13%に縮小することになる。・石炭の消費、供給、インフラ整備に関する計画   石炭については、消費の抑制と供給の集約に関し次のように計画されている。消費の抑制は三大都市圏が対象である。北京、天津、河北、山東における石炭消費量を2012年比で1億t/年削減する。揚子江、珠江デルタ地区はマイナス成長とする。また、石炭火力発電(新規)の給電端石炭消費を300g/kWh(2010年は333g/kWh)以下とする目標が設定されている。①「エネルギー産業の大気汚染防止作業計画」の概要 2017年までに石炭消費をエネルギー消費の65%以下に抑制し、非化石エネルギーの比率を13%、天然ガスの消費を9%に拡大すると設定。具体的な行動計画として、石炭については主要都市(13地域47都市)における消費の抑制(石炭火力発電所新設の原則禁止と産業用ボイラーの石炭から天然ガスへの燃料転換)が、石油につ   供給の集約については、年産1億t級の石炭生産基地を山西省北部など14カ所で構築し、それらの2020年における生産シェアを95%とする。石炭火力発電についても同様に内モンゴルなど9カ所に1,000万kW級の石炭火力発電基地を構築する。また生産・発電基地の集約を支えるインフラとして石炭輸送用鉄道網や長距離・大容量の送電網を整備する計画である。162015.11 Vol.49 No.6アナリシス0億tce50403020100石炭 石油 天然ガス 非化石11.2%11.2%5.7%5.7%17.1%17.1%66%66%15%15%10%10%13%13%62%62%2014年実績2020年目標「エネルギー発展戦略行動計画」における発電設備容量目標80,000万kW70,00060,00050,00040,00030,00020,00010,0000水力 原子力 風力 太陽光等2014年2020年2020年(建設中)出所:「エネルギー発展戦略行動計画」、中国電力企業連合会に基づき作成図5「エネルギー発展戦略行動計画」における非化石エネルギー拡大目標集約による効率の向上と言えば聞こえはよいが、沿海都市部の大気環境改善を優先的に進め、内陸は汚いままにしておく政策とも見える。・石油と天然ガスのインフラに関する計画   石油について、国家石油備蓄基地2期の構築および3期の準備を進め、民間出資を奨励し、民間(企業)備蓄を構築する(国家石油備蓄については2章で述べる)。   天然ガスはパイプライン12万km(2014年末現在約7万km)を整備して貯蔵基地の建設を加速する。また、非国有石油企業(天然ガス生産企業等)による貯蔵基地やピーク調整設備の整備、貯蔵規模の拡大、緊急時対応への参加を奨励するという。・非化石エネルギーの拡大に関する目標   非化石エネルギーは2020年に1次エネルギー消費に占める比率を15%とするのが目標だが、これは同年のエネルギー消費目標48億tce(33.7億toe)に対し7.2億tce(5億toe)に相当する。「エネルギー発展戦略行動計画」では、非化石エネルギーの発電設備容量は2014年の非化石計4億4,450万kWから7億800万kWに拡大する計画である(図5)。2014年は全体で1億1,281万kWの設備が増強され、その5割は非化石エネルギーであり、その発電設備容量は年々拡大している。現在発電設備容量の33%、発電電力量の25%を占めているが、現在の設備利用率を前提に考えると、2020年も同程度を占めると思われる。2020年以降は原子力発電の拡大ペースにより比率が拡大する可能性がある。   水力発電は2020年の設備容量を3億5,000万kWとする(2014年末の設備容量は3億183万kW、発電電力量は1億661万kWh、発電電力量の19%を占める)。   原子力発電は稼働中の設備容量を5,800万kW、建設中を3,000万kWとする目標である(2014年末の設備容量は1,988万kW、発電電力量は1,262億kWh、発電電力量の2.3%を占める)。   風力発電は2020年の設備容量を2億kWとする(2014年末の設備容量は9,581万kW、発電電力量は1,563億kWhで、発電電力量の2.8%を占める)。   太陽光は2020年の設備容量を1億kWとする(2014年末の設備容量は2,652万kW、発電電力量の0.4%程度を占める)。③2030年前後のCO2排出ピークアウトを国際公約に 政府は2015年6月30日に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)に対し、気候変動対策について各国が自主的に決定する約束草案 (INDC:Intended Nationally Determined Contributions)を提出した。2030年までの行動計画として、GDPあたり二酸化炭素(CO2)の排出量を2005年比で60~65%削減し、非化石エネルギーの1次エネルギー消費に占める割合を20%前後とし、2030年前後に二酸化炭素排出量をピークアウトさせることを目指す内容が示された。INDCでは2013年11月17石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化\2エネルギー消費抑制に関する政府目標エネルギー発展12・5計画(2013年1月)エネルギー産業の大気汚染防止作業計画(2014年5月)エネルギー発展戦略行動計画(2014年11月)2015年2017年2020年48億tce33.6億toe62%以下13%(注)10%以上15%5,8003,000-35,00020,00010,0005,00065%以下13%(注)9%13%5,0003,0002,80033,00015,0007,0007,000-1次エネルギー消費総量1次エネルギー消費に占める消費の比率石炭石油天然ガス2014年(実績)42.6億tce29.8億toe66.0%17.1%5.7%--7%非化石エネルギー11.2%11.40%原子力発電設備容量稼働中(万kW)建設中(万kW)原子力発電量(億kWh)再生可能エネルギー設備容量、利用量水力(万kW)風力(万kW)太陽光(万kW)バイオ利用(万toe)地熱利用(熱供給)(万toe) 1,988 1,262 30,183 9,581 2,652N.AN.A4,0001,8002,00029,00010,0003,5005,0002,000(注):石油の消費に占める目標(2017・2020年)は設定されておらず、他のエネルギー源消費目標から算出出所: 「エネルギー発展12・5計画」(2013年1月)、「エネルギー産業の大気汚染防止作業計画」(2014年5月)、「エネルギー発展戦略行動計画」(2014年11月)等に基づき作成にワルシャワで開催された国連気候変動枠組み条約の第19回締約国会議(COP19)において、2015年末にパリで開催されるCOP21に先駆けて提出することが呼びかけられていた。中国は2014年11月12日に米国と共同でエネルギーの消費・排出総量を抑制する声明を発表したが、今回提出したINDCは基本的に同声明と同じ内容である。 中国が公表した「中国の気候変動対応に関する政策と行動2011」(2011年11月)によると、2009年に2020年のGDP単位あたりの二酸化炭素の排出量を2005年比40~45%削減する行動目標を公表しており、2030年にGDPあたりの二酸化炭素の排出を60~65%削減することはこの目標をそのまま延長したものと見える。 国内状況の変化(大気汚染問題に関する規制強化、鉄鋼やセメントなどエネルギー多消費産業の構造調整)から石炭消費抑制のめどが立ち、これまでの自主目標から国際公約に踏み切った。COP21において主導権を発揮しようと考えているのではないかと思われる。 排出抑制目標の実現には石炭消費の抑制だけでなく、原子力発電の利用拡大が不可欠だ。福島原子力発電所の事故後、政府は開発計画を見直し、2012年10月に2020年までの原子力中長期発展計画を発表、2020年時点の設備容量整備目標を5,800万kWとし、内陸部での原子力発電所の建設承認を凍結した。その後一時は建設ペースが鈍化したが、安全保障の側面や自主開発技術向上政策の観点から再び拡大に向かう兆しを見せている。このままのペースで建設が進むと2030年代には米国並みの1億kW態勢となる。IEAは2030年には原子力発電が発電設備容量の5%、発電電力量の1割程度を占めると見ている。中国が2020年以降も現在進めているようなエネルギー政策を継続した場合、2030年代に排出抑制をピークアウトさせることは実現不可能ではないと思われる。182015.11 Vol.49 No.6アナリシス. 中国の石油需要と見通し(短期・中期)(1) 世界の石油需給は供給過剰で需要の伸びは鈍化、中国の石油消費減速が供給過剰感に拍車 2014年以降石油需要の伸びを大きく上回り、供給が増加している。IEAのOil Market Reportによると、2015年上期の世界の石油供給9, 630万b/dに対し、需要は9, 370万b/dで約260万b/dの過剰となっている(図6)。米国のシェールオイル増産に加え、2014年下期以降は低コストで生産できるサウジアラビアやUAEなどOPECの中東主要国が市場シェア確保のため増産しているためで、2014年から2015年にかけて、供給過剰は約250万b/dに拡大した。 一方、世界の石油需要は現今の油価下落で前年より伸びているが、過去20年の年率2%程度の伸びから今後は年率1%(年100万b/d)前後の伸びに減速すると見られている。とりわけ世界の石油消費のけん引役であった中国の石油消費の減速が世界の供給過剰感に拍車をかける一因となっている。(2)中国の2014年の石油消費は2013年に続き減速 IEAによると、2014年の石油消費は前年比3.6%増(36万b/d増)の1,050万b/d。2013年の2.9%増に比べやや持ち直したが減速傾向が続いている。消費の伸びは2004~2014年の年平均約46万b/dから、直近3年の2011~2014年の年約35万b/dと減少した(図7)。なお、2014年の石油消費について中国の統計では約5.1億toe(1,020万b/d)、BP統計は1,106万b/dと若干の差異がある。中国は毎月の消費量や在庫量を公表していないので、筆者は中国の需給を見る際にIEAに加え石油の見かけ消費(原油生産+石油純輸入)、精製処理量、大手2社の商業在庫の変動を考慮している。2014年の石油の見かけ消費は前年比3.7%(36万b/d)増の1,036万b/dである。原油生産は0.7%(4万b/d)増、石油(原油・石油製品)の純輸入は616万b/d、対外依存度は58%であった。原油純輸入は前年比10%(55年2016200150100500-50-100万b/d2012201320142015出所:「原油価格を巡る状況」2015年10月TRC Week(野神)に基づき作成図6世界の石油需給バランス百万b/d石油消費(左軸)国内供給(左軸)消費増加率(%)(右軸)%181614120024681年201620152014201320122011201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993199219911990121086420出所:IEAに基づき作成図7中国の石油消費・供給(2015年以降は推計)19石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化彙/d)増の616万b/dで石油消費に比べ高い伸びを示したが、これは製油所の設備増強(コミッショニング)や石油貯蔵設備の新増設に伴う在庫の積み増し等が影響していよう。①2000~2012年までの石油消費増加の要因は経済発展(物流拡大)と自家用車の普及拡大に伴う輸送燃料需要の伸長 石油消費減速の要因について述べる前に、2000年から2012年にかけて石油消費が増加した要因について分析を試みた。 BP統計によると、石油製品のうち最も伸びたのは軽油とジェット燃料等の中間留分で、2000年の159万b/dから414万b/dに255万b/d増加し、消費の37%を占める。ガソリン・ナフサ等の軽質留分は128万b/dから355万b/dに227万b/d増加し、全体の32%を占める。重油等重質留分は77万b/dから54万b/dに23万b/d減少し5%を占める(図8)。 中国能源統計年鑑(最新のデータは2012年まで)によると、2012年の石油消費量4億8,500万t(約970万b/d)のうち主要製品(軽油、ガソリン、ジェット燃料、重油)が65%を占める(図9)。消費量が最も多いのは軽油で全体の36%(346万b/d)、次いでガソリンが17%(188万b/d)、重油が7%(65万b/d)、ジェット燃料/灯油が4%(42万b/d)である。用途別に見ると輸送用が最も多く、2012年の軽油消費のうち輸送用が63%を占める。ガソリンは同46%、ジェット燃料/灯油は同91%、重油は同38%を占め、主要製品の57%が輸送用である。この他、軽油は農業や水産業に8%(28万b/d)、工業用に10%(36万b/d)を使用。重油は消費の61%が工業向け、つまり経済減速の影響を最も強く受けるのは軽油と重油ということになる。・ガソリン消費は自家用車の普及に伴い輸送燃料需要が増加   ガソリンは自家用車保有台数の増加に比例して伸びている。中国の自動車保有台数(民間)は2005年の3,160万台から2014年には約5倍の約1億4,600万台に増加した(図10)。このうち個人の保有は2005年の1,848万台から2014年には6.7倍の1億2,340万台に増加した(2013年に1億台を超えた)。ガソリン消費量は2000年の3,505万t(81万b/d)から2012年には2.3倍の8,141万t(188万b/d)に増加した。また、ガソリンは年平均11万b/d(ガソリン消費のうち輸送用としては4万b/d)増加している。同じ時期に石油消費は年平均約40万b/d増加しており、増加の4分の1をガソリンが占める。・軽油消費は経済発展(物流規模の拡大)に伴い伸長   軽油は製造業の発展に伴う物流規模の拡大で、輸送用燃料を中心に伸びてきた。中国における貨物の道路輸送はt/㎞ベースで2005年の8,693億t/㎞から2014年には7倍の6兆1,017億t/㎞に増加した(図11)。軽油消費量は2000年の6,806万t(139万b/d)から2012年には2.5倍の1億6,966万t(346万b/d)に増加1,200万b/dガソリン・ナフサ軽油・ジェット燃料重油その他1,00080060040020002000出所:BP統計2002200420062008201020122014年図8中国の主要製品別石油消費202015.11 Vol.49 No.6アナリシス00180160140120100806040002400350300250200150100005製品別石油消費(2012年)製品別石油消費(2012年)重油重油7%7%ジェット燃料/灯油ジェット燃料/灯油4%4%軽油軽油ガソリンガソリン交通輸送63%63%交通輸送交通輸送交通輸送46%46%その他その他34%34%ガソリンガソリン19%19%軽油軽油36%36%出所:中国能源統計年鑑に基づき作成ジェット燃料/灯油ジェット燃料/灯油交通輸送交通輸送91%91%重油重油交通輸送交通輸送38%38%001010農林水産農林水産2020工業工業303040405050交通輸送交通輸送70706060家庭家庭8080その他その他9090100%100%図9中国の製品別石油消費と交通輸送の比率(2012年)自家用車保有台数(左軸)ガソリン消費(右軸)万b/d12,340188188万台1121121,84814,00012,00010,0008,0006,0004,0002,0000012345672005200620072008200920102011201220132014年出所:中国能源統計年鑑に基づき作成図10ガソリン消費と自家用車保有台数兆t/km貨物道路輸送(左軸)軽油消費(右軸)346万b/d6.10172240.86932005200620072008200920102011201220132014年出所:中国能源統計年鑑に基づき作成図11軽油消費と貨物道路輸送21石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化051-5-10-15%152013?2014年増減(千b/d)2013?2014年増減(%)軽油ジェット燃料・灯油重油主要製品出所:Platts、海関統計、新華社等に基づき作成主要石油製品見かけ消費の増減(2013~2014年)出所:中国能源統計年鑑に基づき作成重油(発電・工業向け)と天然ガス(発電向け)の消費250200150100005重油:万b/d天然ガス:億?発電・熱供給(重油)発電・熱供給(天然ガス)工業(重油)20052006200720082009201020112012年2520151005した。年平均17万b/d(うち輸送用としては13万b/d)の増加である。同じ時期に石油消費は年平均約40万b/d増加しており、増加の4割以上が軽油(軽油の輸送用のみでも3割)であることが分かる。4003002001000千b/d図12・ジェット燃料は航空産業の発展に伴い堅調な伸び   ジェット燃料はガソリンや軽油に比べ規模は小さいが、航空産業の発展に伴い2000年の19万b/dから2012年の42万b/dへと消費が2倍以上に伸びている。中国には空港が現在約190あるが、現在も北京第2空港や上海第3空港など都市部や地方で空港の拡張、新設計画がある。航空の旅客と貨物の取り扱い量は伸び続けており、旅客数は2000年の6,722万人から2014年は5.8倍の3億9,166万人に、億人㎞ベースでは971億人㎞から6.5倍の6,333億人㎞に増加した。また貨物の取り扱い量も2000年の50億t/㎞から3.7倍の186億t/㎞に増加している。ガソリン図13-100・重油は発電燃料等のエネルギー転換により減少   重油は2005年の75万b/dから2012年は65万b/dへと2010年をピークに10万b/d減少した(図12)。用途別に見ると、同時期に製造業を主とする工業用需要は11万b/d増加したが、発電・熱供給向けが20万b/d減少。主に発電燃料等のエネルギー転換による減少だったことが分かる。発電・熱供給向けは2006年以降減少しており、同年以降、広東省等南部の沿海地域だきの火力発電がLNGでLNGの輸入を開始し、重油焚への燃料転換を行ったことが主な要因と思われる。②2014年以降の石油消費減速の要因は経済の減速、エネルギー転換、環境・効率向上政策・2014年の主要製品の消費   2014年の主要石油製品(ガソリン、軽油、ジェット燃料、重油)の見かけ消費は前年比4%(約33万b/d)増加の709万b/dであった(図13)。好調な乗用車販売に支えられてガソリン消費は前年比14%(29万b/d)増の246万b/dであったが、主要製品消費の3割強を占める軽油の伸びは同2%(6万2,000b/d)増の353万b/dにとどまった。また、ジェット燃料/灯油は航空産業の発展に伴い同9%(4万3,000b/d)増の50万b/dであった。重油は同11%(7万4,000b/d)減の60万b/dと大きく減少した。・軽油は構造的要因(エネルギー転換)と経済減速等により減速   「2014国内外油ガス業界発展報告」(以下、「油ガス報告」)は軽油不振の理由について、経済減速と工業生産の低迷に伴い、道路の貨物輸送の伸びが鈍化してい222015.11 Vol.49 No.6アナリシスィける燃料転換に加え、主に山東省に存在する小規模独立系製油所が、石油製品の低硫黄化政策に基づき、原料を高硫黄重油(HSFO)などの石油製品から原油に切り替えたことによるものと思われる(独立系製油所の原料切り替えの動きについては後で述べる)。(3)2015年上期の石油需要 足元の石油需要は対前年で伸びている。2014年第4四半期以降、石油の見かけ消費は伸びており、2015年第1四半期の石油見かけ消費は4.3%(45万b/d)増の1,078万b/d、第2四半期は同5%(52万b/d)増の1,091万b/dであった。 国内生産は第1四半期が前年同期比1%(6万b/d)増の423万b/d、第2四半期が同3%(12万b/d)増の431万b/dと横ばいあるいは微増であったが、石油純輸入は第1四半期が前年同期比6%(39万b/d)増の655万b/d、第2四半期が同3%(40万b/d)増の660万b/dに伸びている(図14)。60万b/d生産石油純輸入ることや、商用車(主に軽油を燃料とする)の販売が低迷していることを理由に挙げている。   また、2014年11月に日本エネルギー経済研究所とCNPC経済技術研究院が共同で開催したシンポジウムで、CNPCの発表者は、軽油需要の鈍化は農機具、鉄道の電化や天然ガス自動車(NGV)の隆盛など他のエネルギーへの転換という構造的な要因があったと指摘した上で、軽油消費の低迷は2030年頃まで続くと悲観的な見通しを示した。   「油ガス報告」によると、2014年末の農機具の動力は10億5,400万kWに達している。JPEC(Japan Petroleum Energy Center:石油エネルギー技術センター)の「中国の軽油の需要動向」(JPEC2015年第13回)漑作業ではエンジンポンプからによると、農地への灌電動ポンプへのシフトが増えてきているということだ。かんがい50400302010   また、鉄道・水運部門の軽油消費は2005年から2013年にかけて14%(推計3万b/d)減少した。日中鉄道友好推進協議会によると、中国の鉄道における電化区間は2006年の2万4,000㎞(電化率39%)から2013年には5万6,000㎞(同84%)へと拡大している。NGVは2005年の9万7,000台から2014年に230万台(主にCNG車、LNG車は推計14万台)に拡大しており、充ステーションも約6,000カ所(このうちLNG充填ステーションが2,000カ所)あるようだ(2014年末現在CNG車は441万台、LNG車は18万4,000台あり、中国のバスとタクシーの5%がNGVとの情報もある)。填てじゅうん・重油需要はエネルギー転換のほか独立系製油所の原料切り替えにより減少   重油需要減少の理由は、前述の火力発電に2014年1Q2014年4Q出所:中国海関統計、新華社China OGPに基づき作成2014年2Q2014年3Q2015年1Q2015年2Q図14石油見かけ消費(四半期)前年比増減180万b/dガソリン販売量・価格円/?1601401201002014年1H2015年1H9080706050200180160140120軽油販売量・価格万b/d2014年1H2015年1H円/?908070605040Sinopec販売量(左軸)Sinopec販売価格(右軸)PetroChina販売量(左軸)PetroChina販売価格(右軸)出所:PetroChina、Sinopec2015年上期報告に基づき作成(1元13円とする)図15PetroChina・Sinopecのガソリン・軽油販売量・価格(2014年1H・2015年1H)23石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化}16中国の2015年上期の乗用車販売の前年同期比増減120万台1002014年1H2015年1H806040200-20-40-60セダンSUVMPV(多目的車)出所:中国自動車工業協会(CAAM)に基づき作成 石油製品販売シェアの約8割を占める国有石油企業2社(PetroChina・Sinopec)の2015年上期の販売状況を見ると、ガソリン販売価格(2社平均)は前年同期比21%下落、販売量は同11%(約30万b/d)伸びた(図15)。一方、軽油は販売価格(2社平均)が前年同期比27%下落したが、販売量は同3%(約12万b/d)減少した。軽油は価格下落にもかかわらず、インフラ投資が低調で経済が減速していることから消費が低迷、新華社等の発表では6月から7月にかけて在庫が積み上がっている。・SUVの販売好調が2015年上期の石油消費をけん引   2015年上期の石油消費の伸びはガソリンがけん引した。中国自動車工業協会(CAAM)によると、同時期の乗用車販売台数は約1,010万台で前年同期比4.8%増加したが、前年の11.2%増に対し伸びは半減している。セダンの販売は前年同期比5.9%(36万台)減の約579万台であったが、スポーツ用多目的車(SUV)の販売は前年同期比45.9%(84万台)増の約266万台と好調であった(図16)。(4)今後の石油需要(短期)①2015年下期の石油消費は上期に比べやや減速する見通し 2015年下期は石油消費のけん引役としてガソリンはそれほど期待できない。SUVの販売は7月に若干落ちたが、8月は前年同月比46%(16万台)増の約45万台と上期の勢いを維持しているものの、その他の販売は低迷している。  補助金が付いた新エネルギー車(PHVとEV)の販売が急増していることも石油(ガソリン)消費の伸びの下押し圧力となっている。工業・信息化部(工業、通信分野を所管)によると、2015年上期の新エネルギー車生産は前年同期比3倍以上の7万8,500台、販売量は7万2,711台に急増した。販売量は上期だけで2014年通年の約7万4,700台に届く急伸ぶりである。また株価の急落などの金融不安や経済の先行きに対する不透明感により消費者心理が冷え込み、10月の国慶節休暇におけるガソリンやジェット燃料などのレジャーに伴う石油需要が影響を受ける可能性がある。乗用車計軽バン(交差型)②備蓄により原油輸入、石油見かけ消費は増加、通年の需要は対前年で増加の見通し 下期の減速にもかかわらず2015年通年の石油需要は前年を上回る公算が大きい。中国は油価下落後、国家石油備蓄基地への備蓄を加速しているからだ(図17)。新華社やArgusなどによると、2014年から2015年にかけて天津基地(貯蔵容量320万k?≒2,013万bbl)の備蓄が行われ、同基地の備蓄は完了した模様である(表3)。この他、浙江省舟山基地(2期:貯蔵容量300万k?≒1,890万bbl)や山東省黄島基地(2期:貯蔵容量320万k?≒2,013万bbl)で備蓄が行われたようだ。中国は国家石油備蓄量の一部しか公表していないので、あくまで推計だが、現時点で国家石油備蓄基地の原油備蓄量は約1億4,000万bbl(2014年の原油純輸入の23日相当分)に達し、これに大手2社の原油商業在庫(約2億5,000万bbl)を合わせると3億9,000万bblとなり、2014年の原油純輸入量の63日分、約2カ月分の原油備蓄(在庫)を有していることになる。 2016年には広東省恵州基地(貯蔵容量300万k?≒1,890万bbl)と遼寧省錦州基地(貯蔵容量300万k?≒1,890万bbl)が完成するとされるので、油価に大きな変動がなければ備蓄されることになろう。2016年も本年同様実需を上回る輸入が行われる可能性がある(備蓄基地の貯蔵容量はいずれも報道ベース)。なお、中国は2020年までに5億bbl程度の国家備蓄を目指しているとされる。3242015.11 Vol.49 No.6アナリシス囀ニ山子(新疆)北京北京錦州(遼寧)錦州(遼寧)★★蘭州(甘粛)蘭州(甘粛)★天津天津★★★大連(遼寧)大連(遼寧)黄島(山東)2期黄島(山東)2期黄島(山東)黄島(山東)舟山(浙江)2期舟山(浙江)2期舟山(浙江)舟山(浙江)★★★鎮海(浙江)鎮海(浙江)表3中国の国家石油備蓄基地(備蓄中、2016年備蓄予定を含む)および商業在庫推計図17中国の国家備蓄基地(操業・建設中)★恵州(広東)恵州(広東)湛江(広東)湛江(広東)★1期国家石油備蓄基地2期国家石油備蓄基地★★出所:各種情報に基づきJOGMEC作成国家石油備蓄(1期)鎮海(浙江省)Zhenhai(Zhejiang)舟山(浙江省)Zhoushan(Zhejiang)黄島(山東省)Huangdao(Shandong)大連(遼寧省)Dalian(Liaoning)1期貯蔵能力・備蓄量合計国家石油備蓄(2期)蘭州(甘粛省)Lanzhou(Gansu)独山子(新疆ウイグル自治区)Dushanzi(Xinjiang)天津(Tianjin)舟山(浙江省)2期Zhoushan(Zhejiang)黄島(山東省)2期Huangdao(Shandong)錦州(遼寧省)Jinzhou(Liaoning)恵州(広東省)Huizhou(Guangdong)貯蔵能力・備蓄量合計事業者SinopecSinochemSinopecCNPC事業者CNPCCNPCSinopecSinochemSinopecCNPCCNOOC商業在庫事業者CNPC、SINOPEC他3003003203003203003002,140貯蔵容量(万k?)1,8901,8902,0161,8902,0161,8901,89013,482貯蔵容量(万bbl)30,000貯蔵容量(万k?)貯蔵容量(万bbl)備蓄量(万bbl)備考5205003203001,6403,2763,1502,0161,89010,3322,759備蓄完了2,905備蓄完了1,825備蓄完了1,584備蓄完了9,073貯蔵容量(万k?)貯蔵容量(万bbl)備蓄量推計(万bbl)備考備蓄完了備蓄完了備蓄完了備蓄中備蓄中2016年完成予定2016年完成予定N.AN.AN.AN.AN.A--5,000貯蔵量推計(万bbl)25,000備考出所: 1期備蓄基地貯蔵能力・備蓄量は国家統計局公表値(2014年11月)、2期備蓄基地および企業商業在庫は政府未公表、新華社、国内油気行業発展報告等に基づき作成25石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化,6001,4001,2001,0008006004002000万b/d会社別精製処理能力その他その他31%31%PetroChinaPetroChina24%24%SinopecSinopec41%41%CNOOCCNOOC4%4%20002002200420062008201020122014年出所:BP統計、各社年報に基づき作成図18中国の精製処理能力と処理量億6,000万bblもの備蓄を5年で一気に行うことは考えにくく、基地の建設も追いつかないと思われるが、備蓄需要は当分続く可能性がある。③独立系製油所への輸入ライセンス付与で原油輸入増加の可能性 政府は非国有石油企業への原油輸入ライセンスの付与を拡大した。これまで非国有石油企業は原油輸入ライセンスを保有しても輸入した原油はPetroChina、Sinopecなど国有石油企業に販売しなければならなかったが、今回のライセンスは独立系製油所に付与されたので、彼らは輸入した原油を自社製油所で処理することが可能となる。既に山東省の東明石化(Dongming Petrochemicals)や遼寧省の盤錦北方(Panjin Beifang)がライセンスを受け、輸入を開始した。 BP統計によると、中国の精製処理能力は2014年末現在1,410万b/d、処理量は999万b/dである(図18)。2012年は前年比10%(110万b/d)増、2013年は同12%(137万b/d)増というハイペースで能力拡張が行われた。2014年は増強ペースが落ちたが、前年比6%増(約80万b/d)の増強となっている。精製処理量の増加の伸び率は、2012年の5.9%増(51万b/d増)から2014年は3.5%(34万b/d増)にやや鈍化している。なお、精製処理能力の7割は国有石油企業が保有している。2014年時点のシェアはSinopec Corp.が41%と最大でPetroChinaが24%、CNOOC(親会社)が4%を保有している。独立系製油所は精製処理能力の約3割を保有し、その8割が山東省に集中している。1社の精製処理能力は2万~10万b/dと小規模で、平均稼働率は国有大手2社の8割前後に比べ4割程度と低い。 精製処理能力が過剰であるにもかかわらず、政府が独立系製油所への輸入ライセンス付与を拡大する主な理由として国有企業の独占打破と環境負荷の軽減、効率向上の政策が挙げられる。政府は非国有企業の原油輸入ライセンス取得の条件として原油精製処理能力4万b/d以上、製油所の高度化(老朽ユニットの廃棄)、一定の貯蔵能力の保有、ガソリン・軽油の品質向上(国5基準)を求めている。例えば山東省の東明石化は原油輸入ライセンス認可を得るために小規模な精製設備12万b/d分を処分し、5,000万?の貯蔵タンクを建造、2015年末までに国5基準のガソリンを生産することについて同意した模様である。 備蓄に比べ量的なインパクトは小さいが、これらの輸入ライセンスを取得した企業は需要軟化にもかかわらず、輸入枠を確保するために原油を輸入し、備蓄と同様実需を上回る輸入拡大につながる可能性がある。(5) 今後の石油需要(中期)は政府見通しを上回る可能性が高い IEAが2015年2月8日に公表したMedium Term Oil Market Report(MTOMR)によれば、エネルギー効率向上により中国の石油需要は2020年まで年率2.6%(30万b/d)増の1,200万b/dにとどまる。また、気候変動への対応とエネルギー効率向上という二つの側面で需要が影響を受け、特に石化、輸送、産業部門における需要が下がると指摘している(図19)。 既述のように、「エネルギー発展戦略行動計画」(2014~2020年)によると、2020年の1次エネルギー消費目標は48億tce(約33.7億toe)で石油の比率は明示されておらず、また4,000万toe(80万b/d)以上の燃料転換を行うという。各エネルギー源の比率を合計すると、石油の比率262015.11 Vol.49 No.6アナリシスヘ現在の17%から13%に縮小することになる。2020年のエネルギー消費量が政府目標の33.7億toeとなったと仮定して、13%は874万b/dに相当する。しかし石油需要は減速しているとはいえ伸びており、5年後の2020年時点で2015年上半期の石油見かけ消費1,085万b/dから2割(約200万b/d)減の885万b/dに下がるとは考えにくい。今後5年間消費の伸びが全くなく、80万b/dの燃料転換が実現された場合8%減の1,005万b/dで、2020年の消費に占める比率は15%となるが、この数字にも無理がある。IEAによる2020年の約1,200万b/dという数字は中国の目標値に対し1次エネルギーに占める比率が17%程度となるので、筆者はその前後が現実的と思料する。①輸送部門の需要抑制要因(燃費規制、都市部の自動車購入制限、新エネルギー自動車、インフラ整備) 中国は乗用車の燃費規制について、段階的に日欧並みの燃費基準(2015年に14.5km/?、2020年20km/?)とする目標を設定している(2012年は13.7km/?)。2014年には業界全体で燃料消費が2.7%下がったが、乗用車が大型化・大排気量のトレンドにあるなか、2015年の目標達成は難しいとの見方がある。 また自動車購入制限政策については「油ガス報告」によると2013年時点で北京、上海、広州、貴陽、天津、杭州、重慶、青島、武漢などの大都市でナンバープレートの抽選などの購入制限政策が採られており、さらに拡大する可能性がある。北京では2010年の自動車購入制限策の導入以降、乗用車の保有率が鈍化している(2008~2010年の17.1%増に対し2011~2013年は4.9%増に鈍化)。 新エネルギー車(PHV・EV)の台頭も抑制要因となる。2015年上期の新エネルギー車の販売は前年同期比で3倍以上伸びたことは先に触れたが、これは昨年から中央・地方政府が実施している支援策(税金の減免や1台あたり120万円の購入補助など)が奏功したものだ。 商務部は都市部の充電施設の建設推進と購入に対する減税と補助金を認めると発表。交通運輸部は2020年までに新エネルギー車の保有台数を30万台(バス20万台、タクシーと配送車10万台)にする目標を提示するなど、国を挙げて新エネルギー車の生産・販売拡大を狙っている。 中国で過去10年以上にわたり軽油消費が大幅に伸びたのは政府が鉄道の混雑緩和のため、石炭輸送にトラック(軽油)を推奨したことが影響している。とはいえ、内陸部の炭鉱付近で発電し、沿海部の消費地に送電する長距離高圧(UHV)送電網の整備が進んでいる。石炭生産の伸びの低迷に加え、これらの要因によりトラック(軽油)による石炭輸送は減少する見通しである。②輸送部門の需要下支え要因(乗用車販売、貨物輸送) 短期的には消費者心理の冷え込みで乗用車販売の伸びは減速している。しかし、中流層による購買意欲や買い替え需要、さらに大型化のトレンドにより、今後も自動車市場の拡大によるガソリン消費が中国の石油消費のけん引役となると考えられる。 2014年末現在、中国の自動車保有台数は約1億2,300万台。現代文化研究所によると、運転免許証保有人口は2012年に2億4,700 万人に達し、年間平均2,000万人ペースで増加しているという。1,000人あたりの自動車保有台数は2009 年の47 台から2012年の80 台と着実に増加したが、世界平均の147台、さらに米国の760 台、日本の600 台との間には依然として大きな隔たりがあり今後も増加するのは確実と見られる。(「月刊中国経済」2013年20142015201620172018201920202025203020352040年02468IEA MTOMR 2015IEA WEO 2014需要生産18百万b/d16141210出所:IEA Medium Term Oil Market Report(MTOMR)、World Energy Outlook(WEO)2014に基づき作成図19IEAによる中国の石油生産と需要見通し27石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化N月20151?820042005200620072008200920102011201220132014図20中国の主要原油輸入相手国と輸入量推移サウジアラビアロシアイランイラクアンゴラ120万b/d100806040200その他その他32%32%イランイラン9%9%イラクイラク9%9%サウジアラビアサウジアラビア16%16%アンゴラアンゴラ13%13%ロシアロシア11%11%オマーンオマーン10%10%出所:新華社China OGPに基づき作成6月)。道路交通インフラ整備が進めば都市部における購入制限策が緩和され、消費がさらに上向く可能性もある。 石炭の道路輸送は減るかもしれないが、国内の貨物輸送では、日本と同様に道路輸送が最大のシェアを有している。経済減速下でも2014年の道路での貨物輸送量は前年比9.5%増(5,279億t/㎞増加)の6兆1,017億t/㎞であった。2012年(前年比15.9%増、8,160億t/㎞増加)に比べ伸びは鈍化しているが、Eコマースの進展による物流輸送需要も見込まれ、今後も軽油消費の下支え要因となる見通しだ。(6) 石油調達戦略の変化~量の確保からより経済合理性と戦略的調達へ~ これまで中国は増大する需要に対し調達量の拡大と多様化で対応してきたが、消費の減速に伴い、今後はより経済合理性と戦略的視野に立ち調達を進めるものと考えられる。 2014年には原油の上位輸入相手国において順位の変動があった。サウジアラビアからの原油輸入は前年比8%(8万b/d)減の99万b/dで1998年以来初めて減少に転じた(図20)。首位は維持したが、輸入全体に占める比率は前年の18%から16%に落ちた。同じ中東地域のイランとイラクからの輸入は伸びた。イランからの輸入は欧米の同国への核開発に対する制裁(原油禁輸)が始まった2012年以降2割程度減少(45万b/d前後)していたが、2014年は制裁前の水準(約55万b/d)に戻った。イラクからの輸入はイラクで生産中企業による輸入が増加したことや売買契約が増量したことで10万b/d増加の57万b/dとなり、イランを上回った。サウジアラビアがシェアを落とした理由は他の中東諸国に比べ高値であったことが理由と考えられる。 上位国のうち、ロシアからの輸入が伸びている。ロシアからの輸入は前年比35%(17万b/d)増加の66万b/dで、オマーンを抜き第3位の輸入国に浮上、輸入全体に占める比率は8%から11%に上昇した。 2015年1~8月の状況はサウジアラビアからの輸入が若干回復したが、ロシアからの供給拡大傾向は変わらない。首位のサウジアラビアからの輸入は前年同期比8.3%(8万b/d)増の104万b/d、2位のアンゴラはわずかにロシアを上回ったが輸入量は対前年同期比で1.8%(1万b/d)減の79万2,000b/dにとどまった。一方のロシアは同28.3%(17万b/d)増の78万9,000b/dであった。中国にとりロシアからの原油は、減退が進む大慶等東北部成熟油田の代替である。両国は2013年に供給拡大で合意しており、長期契約による供給は今後も増えるため、ロシアがアンゴラを抜き2位に浮上する日は近いだろう。3. 中国の天然ガスの需要と見通し(短期、中期)(1)世界のLNGの生産能力は過剰気味 LNGの生産能力は2014年末現在約3億t/年あり、LNGの年間需要2億4,000万tに対し余裕がある。さらに2018年までに建設中の案件が完成し、4億5,000万t/282015.11 Vol.49 No.6アナリシスN程度に拡大する見込みである。一方、LNGの需要は日本エネルギー経済研究所によると2020年時点で3億~3億9,000万トン(年平均1,000万~2,500万tの伸び)と見られ、当面LNG需給は緩和状態が続くと考えられる。(2) 中国の2014年の天然ガス消費は急成長から一転減速に1,4001,9002,400億?/年 中国は天然ガスについて国産のほか、パイプラインガスおよびLNGの形で輸入を行っている。  2014年の天然ガスの見かけ消費は前年比9%増の1,813億?(17.7Bcfd)で輸入比率は31%であった。生産は前年比7.4%(86億?)増の1,255億?(12.2Bcfd)で、生産の伸びは2013年の4.7%増に比べ好転した。このうち非在来型ガス(シェールガス)の生産は12億?(0.12Bcfd)であった。天然ガスの輸入量は前年比13%増の584億?(5.7Bcfd)で、輸入の内訳はパイプラインが15%増の313億?(3Bcfd)でトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、ミャンマーから輸入した。LNGは10%増の271億?(2,200万t)であった。香港への輸出を除く純輸入は前年比14%増の558億?(5.4Bcfd)であった。天然ガスの消費は石油に比べ伸びてはいるが、2014年の消費と輸入の伸びは天然ガス(LNG)の輸入開始(2006年)以来最低であった(図21)。1,600億?-10020062007900400出所:各種資料に基づき作成①天然ガスは環境政策により暖房(発電)、交通輸送、家庭用の利用が伸長 天然ガスの需要は環境問題(大気汚染・気候変動)政策により大きく伸長した(図22)。中国能源統計によると、消費は2005年の468億?から2012年には3倍の1,463億?29石油・天然ガスレビューに増加した。また2005年と2012年を比較すると、発電・熱供給、交通輸送、家庭用の消費が伸びている。発電・熱供給向けの消費は2005年の9倍の235億?(消費全体の16%)に伸びた。沿海地域における天然ガス火力発電の利用に加え、暖房の石炭から天然ガスへの転換が大きい。中国の東部から北部一帯では冬場に石炭焚きボイラーによる集中暖房が行われているが、天然ガスへの転換が政策的に進められている。 交通輸送は輸送部門は公共輸送を中心とする天然ガス自動車の増加で2005年の4倍の155億?(同11%)に(左軸)国産ガス輸入パイプラインガスLNG輸出(右軸)消費成長(%)%3025201510502008200920102011201220132014年図21天然ガス需給推移1,463%1009080706050403020100用途別天然ガス消費量の割合5% 5% 17%17%8%8%6%6%47% 47% 18% 18% 20055%5%20%20%11%11%16%16%39%39%10%10%2012年天然ガス消費量1,4001,2001,000800600400200046820052012年採掘交通輸送製造業家庭用電力・熱等その他出所:中国能源統計年鑑(2013)に基づき作成図22用途別天然ガス消費油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化揄チした。家庭用は石炭ガスから天然ガスへの転換が進み(日本では1970年代に転換が進んだ)、2012年には2005年の3.6倍の288億?(同20%)に伸びている。②天然ガスは経済減速と価格政策で消費が減速 図22に見るように、用途別に見て最も利用されているのは製造業で、2012年の消費は573億?、消費全体の39%を占める。このことは、天然ガスが軽油と同様に経済減速の影響を強く受けることを意味する。天然ガスの需要は石油より高い伸びを示してはいるが、2010年以降伸びが鈍化している。これは価格統制と最近の値上げ、油価の下落が影響しているようだ。・中国は天然ガスの卸売価格を統制、石油製品より低く抑えエネルギー転換を促進してきたが、安定供給のため値上げを実施   中国は輸入依存度抑制の立場から、石油製品などから天然ガスへの転換を促進するために天然ガス価格を石油製品価格より2~3割割安に設定していた。しかし天然ガスの輸入比率が高まるにつれ、油価に連動した輸入ガスの価格が上昇し、輸入事業者は天然ガスの卸売価格が輸入価格を上回り販売するほど赤字が拡大する逆ザヤ状態に陥った。政府は輸入ガスの逆ザヤ部分について増値税(VAT:現行13%)の還付措置を講じたが、天然ガス輸入量の増加と価格の上昇で企業の天然ガス部門の赤字は拡大した。   政府は、このままでは輸入事業者は天然ガスの輸入を続けることができず、需要を満たせなくなる恐れがあると考え、2013年7月と2014年8月に非民生用の天然ガスシティゲート価格(北京市など行政区分基点への卸売価格)の見直しを実施した(表4)。2013年7月の見直しでは、広東と広西で試行していた上海を基準市場とする石油連動のネットバック価格制度(以下、上海ネットバック)を全国で導入した。それによれば、①前年消費量と②当年の増加分の2段階の価格を設定し、②増加分について上海ネットバックを適用し、各地のシティゲート上限価格を設定した(2012年の上海におけるLPG・重油輸入価格をベースに、石油製品から天然ガスへの転換を促進するため割引係数0.8を乗じている)。   2014年8月の見直しでは非民生用のシティゲート価格のうち①前年消費量(2012年)価格が平均18%上昇した。2014年9月以降シティゲート価格(平均)は①前年消費量が9ドル/MMBtu、②増加分は12.7ドル/MMBtuで据え置かれた。最大の輸入事業者であるPetroChinaの天然ガス輸入による損失は2013年の68億ドルから11億ドル縮小し2014年には57億ドルとなった。しかし代替燃料に対する価格競争力の低下、需要の減速につながった。・油価急落で天然ガスは価格競争力が低下、一転供給過剰に   2014年下期に原油価格が急落し、天然ガスはLPGなどの石油製品に対し価格競争力が低下、供給過剰となりパイプラインとLNGの輸入はいずれも前年に対し伸びが鈍化した。中国のパイプラインガスとLNG輸入価格フォーミュラは非公表だが、基本的に日本に表4天然ガス価格改革(2011年12月以降)価格改革の概要前年消費価格ドル/MMBtu増加分価格南部(広東・広西)で非民生卸売価格の市場連動を試行油価連動: 上海の代替燃料(重油・LPG)の2010年輸入価格(重油60%、LPG40%の加重平均)割引率(10%): 石油製品から天然ガスへの転換を促進するため10%割り引く上海ネットバック: 上海を基準市場とし各地のシティゲート価格を決定する熱量(低位): 重油1万kcal、LPG1万2,000kcal、天然ガス8,000kcalVAT(増値税): 13%全国の非民生卸売価格見直し2段階の価格① 前年消費② 増加分(2011年に南部で試行した制度を適用。ただし代替燃料の輸入価格は2012年、2011年12月2013年7月2014年9月2015年4月割引率は15%)全国の非民生卸売価格見直し① 前年消費(価格は平均18%上昇)② 増加分(価格は据え置き)非民生卸売価格見直し前年消費と増加分価格を統合①前年消費(価格は平均20%上昇)②増加分(価格は平均15%下落)直送価格(化学肥料を除く)の自由化試行出所: 国家発展改革委員会通知に基づき作成--9.012.710.612.710.610.6302015.11 Vol.49 No.6アナリシスA入される全原油平均価格(JCC: Japan Crude Cocktail)にリンクしたものとなっている。JCC(3カ月平均)は2014年9月以降下落に転じたが、中国のパイプラインガス輸入(加重平均)とLNG(CIF〈運賃・保険料込み条件〉平均)はいずれも4カ月後の12月以降下落に転じた(図23)。③2015年上期の中国の天然ガス需要は2014年にも増して低迷 最近の天然ガス見かけ消費は2014年にも増して低迷している。2015年第2四半期の見かけ消費の伸びは前年同期比3.8%(17億?)減の422億?と伸びは大幅鈍化した(図25)。ドル/MMBtu18   政府は需要喚起のため、2015年4月に非民生用の天然ガスシティゲート価格を見直した。今回の価格見直しでは前年消費価格と増加分価格が統合され、シティゲート価格平均は同10.6ドル/MMBtuに統一された(図24)。前年消費価格は平均20%上昇し、増加分は平均15%下落した。しかし需要を喚起するには不十分であり、2015年中に価格を見直す(価格を下げる)可能性がある。・天然ガス価格改革は需要を喚起する一方で需給ギャップ拡大につながる両刃の剣   競合燃料である石油や石炭の需給と価格の状況から、天然ガスは抜本的な価格改革が行われなければ、今後数年は需要が伸び悩む状況が続く可能性がある。しかし、天然ガスの価格改革(低価格政策)は需要を刺激する一方で輸入ガスの逆ザヤ拡大による輸入抑制、シェールガスをはじめとする国産ガスの開発の阻害要因となり、需給ギャップの拡大につながる可能性がある。1614121086ドル/bblパイプライン(加重平均、左軸)LNG(CIF平均、左軸)参考JCC(3カ月平均、右軸)12010080601220143456789101112122015345406月年出所:China LNG Weekly、石油連盟に基づき作成図23パイプラインガス・LNG輸入価格とJCC推移ドル/MMBtuパイプライン輸入(国境渡し、加重平均)卸売価格(前年消費)LNG輸入(CIF平均)卸売価格(増加分)6月5月4月3月2月2015年1月12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月2014年1月12月11月10月9月8月2013年7月16151413121110789出所:国家発展改革委員会、China LNG Weeklyに基づき作成図24天然ガス卸売・輸入価格31石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化014年1Q 2014年2Q 2014年3Q 2014年4Q 2015年1Q 2015年2Q出所:新華社China OGPに基づき作成図25天然ガス見かけ消費(四半期ごと)の前年同期比増減億?6050403020100-10-20-30 2015年第2四半期の生産は前年同期比6.5%(20億?)減の292億?であった。国内生産は、2014年は一貫して伸びていたが、2015年に入り鈍化した。主要な天然ガス生産事業者である国有石油企業3社は、全体の投資を削減するなかで天然ガスについては開発を強化する姿勢を示していたが、筆者の見るところ、恐らくパイプラインガスとLNGについて契約の許容範囲下限まで輸入を抑制した上で、さらに供給が過剰であったため国産ガスの生産を落としたのではないかと思われる。 2015年第2四半期のLNG輸入は前年同期比0.9%(1億?)減の60億?であった。LNGの輸入は2014年第2四半期以降伸びておらず、2015年に入り伸びは前年同期比で減少が続いている。CNOOCやPetroChinaなどの天然ガス・LNG輸入事業者はLNG長期契約のオーバーコミットについてDQT(Downward Quantity Tolerance:下方削減許容量)の活用などにより輸入を抑制した模様である。 2015年第2四半期のパイプラインガス輸入は前年同期比9.1%(6億?)増の77億?であった。パイプラインガスによる輸入は2014年第3四半期から2015年第1四半期までは比較的堅調に伸びていたが、2015年第2四半期は伸びが鈍化した。ただし同期は、パイプラインガス輸入のみプラスとなった。(3)今後の天然ガス需要(短期)・LNGの輸入縮小、権益分LNGを国内に持ち込まず入札、契約分転売の動きも   LNG輸入事業者は企業は国内生産とDQTの活用を含む輸入の抑制とともに、国外保有権益(LNG)のスポット市場に販売するなど供給過剰への対応に苦慮している。例えば2015年9月にCNOOCは豪QC LNG(10・11月渡し)の権益持ち分(2件の長期契約を通じ50%の権益を保有)を入札にかけ、2カーゴをBGとBPに売却したようである(BGはQC LNGの出資者)。この他、PetroChinaはアルジェリアSonatrachとの短期契約カーゴの売却、Sinopecは11月に供給開始予定の豪AP LNG(契約量760万t/年)について100万t分の売却を検討するとともに、また引き取り契約の見直しについ国内生産LNG輸入パイプラインガス輸入て交渉を行っているようだ。①LNG受入基地建設は遅延、拡張計画は先送り 複数のLNG受入基地の建設が遅延し、拡張計画が先送りされているとも聞く。Sinopecの天津LNG基地は2016年末完成予定であったが遅延している。広西LNG基地の完成は当初2015年末の予定が2016年3月に遅延した。Sinopecの青島LNG受入基地拡張は同社北京本社の承認が下りていない。 ②ロシアとの輸入パイプラインガスの新規契約交渉も当面実質的な進展は期待できない・「シベリアの力」パイプライン(東ルート)はパイプライン着工   中国は2014年5月21日、ロシアと東シベリアからの天然ガスの供給契約を締結した。契約量は380億?/年(LNG約2,800万トン相当)で段階的に増やす。契約期間は30年で供給開始は2019年前後の見通しである。ロシアからの天然ガスは東シベリアのチャヤンダガス田からブラゴヴェシチェンスク経由で中国黒竜江省に向かう「シベリアの力」パイプライン(東ルート)を建設して供給する計画である(図26)。中国国内黒竜江省黒河から北京・天津・河北の9省・市を結ぶ3,170kmのパイプラインと地下貯蔵庫を建設する計画である。ロシア側のパイプライン建設は2014年9月に始まり、中国区間の建設は、2015年6月に始まった。・西ルートの交渉は当面足踏み状態、サハリンルートが先行の可能性も?   中国は東ルートの他に西シベリアのガスを西部の新322015.11 Vol.49 No.6アナリシスovanenkovRUSSIARUSSIASakhalin力」のベリア「シChayandaYamburgWestWestSiberiaSiberiaEastEastSiberiaSiberiaBlagoveshchenskUssuriyskVladivostokJAPANKOREAKOREAShanghaiest-East Pipeline2nd WMONGOLIAMONGOLIABeijingアルタイパイプライン Ce CeeeThTh nniaiaAsAselelPipPipalalss rraaeettnngginin22nndWest-EastdWest-EastPPiippeelliinneeChangqingWesinet-East pipelKAZAKHSTANKAZAKHSTANKovyktaIrkutskCACMultanCHINACHINAPAKISTANPAKISTANINDIAINDIAamamNord StreNord StreNorthern LightsNorthern LightsBBrrootthhrreehhooooddYamalKazanTAPSSooyyuuzzTurkishTurkishSSttrreeaammBlueStreamBlueStreamBTEErzurumAZERBAIJANAZERBAIJANBakuUZBEKISTANUZBEKISTANTURKMENISTANTURKMENISTANTAPITAPIAFGHANISTANAFGHANISTANDauletabadIRANIRANPPeeaacceeTrans CaspianTrans CaspianSAUDISAUDIARABIAARABIA出所:JOGMEC作成図26ロシアから中国向けのパイプライン疆から中国に供給する「西ルート」についても交渉を行っている。2014年11月にはロシア産天然ガスの中国への供給拡大に関する覚書に署名、300億?/年のガスを30年間供給することで合意している。しかし2015年9月の中露首脳会談時にシルクロード基金によるYamal LNGへの出資やRosneftとSinopecの油ガス田共同開発に係る枠組み合意はあったが、西ルートについてGazpromとCNPCの間で合意は得られていない。その代わりGazpromと33石油・天然ガスレビューIEA MTGMR 2015IEA WEO 2014億?/年生産需要20142016201820202025203020352040年7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000出所:IEA Medium Term Gas Market Report(MTGMR)2015、World Energy Outlook2014図27IEAによる中国の天然ガス需給見通し油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化0151025億toeCNPCはサハリンで生産する天然ガスをパイプラインにより中国に供給することについて覚書に調印した。あくまでも初歩的な合意であり、今後両社は作業部会を立ち上げ、ガスについての供給量、スケジュール、ガスの供給場所などの技術的・商業的な要件について交渉することとなる。ロシア側は西ルートと同様途中までは既にパイプライン(SKVパイプライン)があり、輸送能力にも余裕がある。   中国側の需要地は北京周辺から東南部沿海地域であり、西ルートの場合計画中のものを含め5本ある西気東輸パイプライン(輸送能力合計約1,500億?/年)をさらに増設する必要がある。中国側から見ると、供給セキュリティの観点からサハリンルートが西ルートに先行する可能性をあながち否定できない。50(4)今後の天然ガス需要(中期)は政府見通しを下回る IEAは、2020年の中国の天然ガス需要は2014年から1, 360億?増加し、需給ギャップは現在の2倍以上の約1, 300億?に拡大、輸入比率は3割から4割強に拡大する見通しを示している(図27)。・2020年の天然ガス需要と1次エネルギーミックスの推定   「エネルギー発展戦略行動計画」によると、2020年の1次エネルギー消費目標は48億tce(約33.7億toe)で天然ガス消費の1次エネルギーに占める比率は10%(3,700億?〈35.8Bcfd〉)以上としているが、この目標は未達となる可能性がある。2020年に消費量が、3,700億?(35.8Bcfd)に達するには毎年消費が310億?(3Bcfd)伸びなければならないが、過去5年の伸びは170億?(1.7Bcfd)程度だ。また生産についても政府目標ではシェール等非在来型を含めた2020年の生産を2,450億?(23.9Bcfd)としており、それを実現するためには年に約180億?(1.8Bcfd)のペースで増産しなければならない。しかし過去5年の在来型の増産は85億?(0.8Bcfd)であり、シェールガスやCBM(Coalbed Methane:炭層メタン)など非在来型の現在の開発ペースでは2020年まで毎年100億?(0.98Bcfd)の増産を行うことは困難であると思われる。いずれにせよ、政府目標では増産と消費の伸びにより需給ギャップは現在の2倍以上の約1,300億?(12.7Bcfd)エネルギー発展戦略行動計画IEA WEO2014JOGMEC推定(中国政府政策目標に基づき比率のみ修正)石油天然ガス非化石石炭出所:中国政府目標、IEA、JOGMEC推定図282020年のエネルギーミックス億?2,0001,8001,6001,4001,2001,0008006004002000輸入LNG輸入LNG(長期契約)(長期契約)輸入パイプライン輸入パイプライン(長期契約)(長期契約)LNGLNG(スポット・短期)(スポット・短期)輸入LNG輸入LNG(長期契約)(長期契約)輸入パイプライン輸入パイプライン(長期契約)(長期契約)長期契約(現行) 2020年供給(見通し)出所:各種情報に基づき作成図29輸入天然ガス(パイプライン・LNG)長期契約と2020年の供給(見通し)に拡大する見通しである。   一方、中国最大の天然ガス事業者であるCNPCは2014年下期から同国の天然ガス市場は経済減速や価格統制、石炭価格の下落により供給過剰であり、現在の伸びの鈍化は2020年まで続く可能性があるとし、2020年の消費見通し(基準ケース)をIEAよりも悲観的な約3,000億?(29.3Bcfd)としている。この3,000億?は「エネルギー発展戦略行動計画」における2020342015.11 Vol.49 No.6アナリシスNの1次エネルギー消費目標の約6%に相当する。   中国政府は1次エネルギー消費目標のうち、排出抑制目標等の関係から石炭(62%以下)と非化石エネルギー(15%)については気候変動(排出抑制)への対応から目標達成を目指すと思われる。したがって残りの23%が石油と天然ガスになるわけだが、前述の通り石油が現在の17%から13%に激減することは考えにくく、筆者は政府目標の33.6億toeに対し、石油が17%(5.8億toe〈約1,200万b/d〉)、天然ガスは6%(1.9億toe〈3,000億?〉)という数字が現実に近いと考える(図28)。(5)天然ガス調達戦略は基本的に変化なし 2020年時点の天然ガス需給ギャップについて不透明感が残るが、本稿ではIEAの2020年の需要3,200億?(31Bcfd)をベースに需給ギャップが1,400億?(13.7Bcfd)あるという前提で考える。筆者は需給ギャップの5割をパイプラインガスが、残りをLNGが賄うことになると見る。 2020年時点のLNGとパイプラインガスの長期契約量は約1,800億?あり、その7割をパイプラインガスが占める(ロシアからの西ルートは含んでいない)。輸入パイプライン(操業・建設・建設準備中)の輸送能力は約1,300億?あるが、パイプラインガスの2020年時点の供給は700億?程度にとどまると思われる(表5)。なぜなら中央アジア、ロシアとは段階的に供給を増やす契約となっており、ガス田の開発やパイプライン整備の状況から2020年時点では供給が契約量を下回ることが確実であるためだ。LNGの長期売買契約(SPA)は590億?(約4,300万t)あり、これに現在のLNG輸入に占めるスポットと短期契約の比率約15%、100億?(約730万t)を加味すると700億?となり、2020年時点の需給ギャップ1,400億?の5割をLNGが賄う計算となる(図29)。LNG受入表5輸入パイプライン(操業・建設・建設準備中)中央アジアロシアミャンマー操業中550100650建設・建設準備中300380680出所: 各種資料に基づき作成億?/年計8503801001,330表6LNG受入基地(操業・建設・建設準備中)操業中建設中建設準備中PetroChinaSinopecCNOOCJovo広匯1,0003002,7801004,180出所: 各種資料に基づき作成400600601,060万t/年計1,0001,3004,2806009001,5006,580基地(操業・建設・建設準備中)の能力は5,240万t(713億?)で700億?/年を上回り、さらに建設準備中の基地も複数あることからLNGによる受け入れ拡大は十分に可能である(表6)。 天然ガスは今でも需要の伸びは鈍いが、環境政策等により長期的には需要の増大が見込まれる。政府は非在来型ガス(シェールガス)生産への期待値を下げており、長期的にはロシアからの天然ガス調達が拡大すると思われる。石油と天然ガスという視点に立つと、中国は欧州と同様にロシアとのエネルギーにおける相互依存関係を深めていくことになると思われる。執筆者紹介竹原美佳(たけはら みか)JOGMEC調査部(中国担当)近  況: 4月から業務が一変し、共同で何かを作り上げる業務が増え、てんてこまいでした。試行錯誤の連続ですが、達成感は大きく、引き続き新しいことにチャレンジできればと思っています。35石油・天然ガスレビュー油価下落、“新常態”の中国におけるエネルギー消費構造の変化
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2015/11/20 [ 2015年11月号 ] 竹原 美佳
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