ページ番号1006583 更新日 平成30年3月5日

東南アジアで進むLNG受入基地の建設- 天然ガス生産地域から需要地域へ-

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レポートID 1006583
作成日 2016-03-22 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般天然ガス・LNG
著者
著者直接入力 永井 一聡
年度 2016
Vol 50
No 2
ページ数
抽出データ JOGMEC調査部永井 一聡東南アジアで進むLNG受入基地の建設-天然ガス生産地域から需要地域へ-はじめに LNG業界で東南アジアといえば、1972年にLNG生産を開始したブルネイをはじめ、インドネシア、マレーシアなどのLNG輸出国をイメージすることが多いだろう。事実、日本が輸入するLNG(2014年)のうち、3割近くはこれら3カ国からのもので、輸送距離が短いといった地理的な条件も含めて、日本の天然ガス調達にとって非常に重要な位置にある地域となっている。 しかし、近年急速な経済成長を続ける東南アジア地域では、エネルギー消費地としての側面が拡大し、LNGに対する需要がこれまで以上に高まってきている。2011年のタイのLNG輸入基地の操業開始を皮切りに、現在東南アジア各地でLNG受入基地の建設および計画が進んでいる。そして、それはインドネシアやマレーシアなど伝統的なLNG大輸出国においても同様である。 本稿では、将来的にLNGの純輸入地域に転じると予想される東南アジア地域のLNG受入基地の最新建設動向を報告する。1.東南アジアのエネルギー需要見通し特別版として、「Southeast Asia Energy Outlook 2015」を刊行した。このレポートは、東南アジア地域(ASEAN)2011?2013平均2014201520162016?2020平均ASEANASEANカ国平均カ国平均1010ミャンマーミャンマーラオスラオスカンボジアカンボジアシンガポールシンガポールブルネイブルネイベトナムベトナムタイタイ-4出所:OECD Economic Outlook for Southeast Asia, China and India 2016ASEAN諸国の実質GDP成長率(実績と見通し)%1086図1420フィリピンフィリピンマレーシアマレーシアインドネシアインドネシア 東南アジアは近年、堅調な人口増加にも支えられ、著しい経済成長を続けている地域である。図1は、東南アジア各国(ASEAN〈東南アジア諸国連合〉10カ国)のGDP成長率の実績と見通しであるが、近年の実質GDP成長率はほとんどの国で平均5%を超えている。また、2016~2020年にかけてもこれら10カ国平均で年率5%を上回る成長が続くとの見通しである。 こうした急速な経済成長に伴い、東南アジアは今後大きなエネルギー需要地域に変貌すると考えられる。 これらの状況を受け、IEAは2015年10月、毎年発行する「World Energy Outlook」の-249石油・天然ガスレビューアナリシスノおけるエネルギー市場の動向に加え、2040年までの需給見通しや今後の課題をまとめた内容となっている。 図2は東南アジアの1次エネルギー消費量の2000年2000:386百万toe5%8%26%1%19%41%CoalOilGasHydroBioenergyOther renewables*2%*Includes solar PV, wind, and geothermal. 出所:IEA Southeast Asia Energy Outlook 2015東南アジアのエネルギー需要の変化(2000年対2013年)0010出所:IEA World Energy Outlook 20152040兆ドル (2014 market exchange rates)30世界の地域別GDPおよび1次エネルギー需要の推移と見通し21%22%2013:594百万toe4%36%15%と2013年を比較したものだが、この13年間で約1.5倍に増加した。また、図3には、世界の各地域ごとのGDPと1次エネルギー需要の推移(見通し含む)を示した。これによれば、東南アジアは、今後、GDPと1次エネルギー需要ともに伸びていき、1次エネルギー需要だけを見れば、2040年には現在から80%増加。これは、欧州連合(EU-28)に匹敵する水準である。 また、燃料別の需要推移を見たのが図4である。特に石炭の増加が顕著で、2040年には石油と並ぶ割合となる。天然ガスは石炭に次ぐ成長率だが、石炭との競合や域内における埋蔵量の減少などを受け、相対的に緩やかな増加になると予測されている。とはいえ、天然ガス需要は2040年までに2013年比65%増加する見通し。そして、域内天然ガス需要の増加により、東南アジア地域全体として天然ガス輸出量は徐々に減少、2040年までに100億?/年を輸入する純輸入地域になると見られる。 東南アジアは、伝統的にLNGや石炭を輸出するエネルギー資源の供給地域だが、域内エネルギー需要の増加に伴い、既にこれらエネルギー資源の域内振り向けが進み、今後もその傾向は強くなると思われる。 しかし一方で、エネルギーを供給するインフラが未整備であること、国土が多くの島で構成されているほか、需要地域と生産地域が離れているといった地理的特性によって、それら需要を満たすための条件や課題も多い。2040年50図2百万toe4,0003,0002,0001,000図3百万toe3503002502001501005001990*Inclludes solar PV, wind, and geothermal.出所:IEA Southeast Asia Energy Outlook 20152010200020202030図4東南アジアの燃料別1次エネルギー需要見通し2016.3 Vol.50 No.2アナリシス.東南アジアの天然ガス需要とLNG輸入の現状る。具体的には、マレーシア、インドネシアなどのLNG輸出国の近年の探鉱・開発が決して順調ではなく、天然ガス生産量が頭打ちになっていることが挙げられる。しかも、これらの国は、長期売買契約による供給義億m3 1,4008006001,2001,000(1)大きく伸びる天然ガス需要 LNGの生産・輸出地域のイメージが強い東南アジアだが、域内での天然ガス利用については歴史が浅い国も多い。ちなみに、フィリピンやシンガポール、ベトナムで天然ガス利用が本格化してきたのはここ数年のこと。しかし、近年の経済成長・発展に伴い、天然ガス利用は各国で年々増加している。天然ガスの利用先は主に発電と産業用だが、多くの政府は電源構成を発電コストの安い石炭火力をベースロード電源と考えているのが通常で、天然ガスはミドルロードまたはピークシェービング電源という位置付けが一般的だ。 図5には東南アジア主要国の天然ガス需要推移を示した。参考までに日本の天然ガス需要推移についても載せている。2014年の東南アジア地域全体の天然ガス需要は約1,700億?弱で、日本の天然ガス需要(約1,350億?)の約1.2倍の規模である。01990百万トン図5400200300250(2)東南アジアのLNG輸200台湾台湾インドインド中国中国150韓国韓国100日本日本入の背景と現状 天然ガス需要の拡大とともに、東南アジア地域ではLNGによる天然ガス調達を求める国が増えてきている。この背景には、これまで述べてきた単なる経済成長に伴う域内ガス需要の増加以外にもいくつかの要因が存在する。 まず、域内天然ガス生産量・埋蔵量の伸び悩みがあ51石油・天然ガスレビュー199219941996199820002006200820042002タイシンガポール2014年20122010インドネシアベトナム日本マレーシアフィリピン出所:IEA Natural Gas Information 2015東南アジア主要国の天然ガス需要(消費量)推移(実績)タイ輸入開始シンガポール、マレーシア輸入開始500その他その他(アジア以外)(アジア以外)200920102011201220132014年出所:各種情報を基にJOGMEC作成図6世界のLNG供給量推移と構成国の輸入割合(主にアジア)東南アジアで進むLNG受入基地の建設 -天然ガス生産地域から需要地域へ-アを抱え、これが国内への振り向けよりも優先されるため、必然的に国内向けに供給できる天然ガス量は制限されてしまう。したがって、これら従来の天然ガス生産国であっても、国内生産量のみでは増え続ける国内需要を賄うことが困難である。また、ガス田が豊富に存在する天然ガス生産地域と都市部の需要地域が距離的に離れていることが多い。しかも国土は島嶼部が多く、地形的に天然ガスパイプラインの建設が高コストになることから、取り扱いが容易なLNGによる天然ガス輸送のほうが経済的なのである。 図6に、世界のLNG供給量とその構成国の輸入割合の推移を示す。日本、韓国、中国、インド、台湾の東アとうしょジア5カ国の存在は依然として大きいが、2011年にタイが東南アジアとして初めてのLNG輸入を開始して以降、2013年にはシンガポール、マレーシアがLNG輸入国への仲間入りをした。また、インドネシアは外国からのLNG輸入はしていないが、2012年に浮体式のLNG受入基地(FSRU)「Nusantara Regas Satu」が操業を開始、国内でのLNG輸送・供給を行うようになった。インドネシアは国内で天然ガスが産出されるものの、遠隔のガス田からはパイプラインではなくLNGによって需要地まで輸送を行っている(需要地から近いガス田についてはパイプラインで供給)。3.東南アジアのLNG受入基地建設状況と各国の動向(1)LNG受入基地建設状況 図7と表に、LNG基地(液化基地、受入基地)の建設・計画状況を示す。 タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアでは既にLNG受入基地が操業を開始し、フィリピン、ベトナム、ミャンマーでは現在建設計画が進められている。MYANMARMYANMARLAOSLAOSTHAILANDTHAILANDPagbilao LNGPagbilao LNG名称未定名称未定CAMBODIACAMBODIAMap ta PhutMap ta PhutVIETNAMVIETNAMBatangasBatangasSon My, Binh ThuanSon My, Binh ThuanThi VaiThi Vai名称未定名称未定PHILIPPINESPHILIPPINESLNG受入基地(稼働中)LNG受入基地(計画中)LNG液化基地(稼働中)LNG液化基地(計画中)( : 浮体式)(2)国別動向①タイ、ミャンマー タイは、アジアでは有数の石油・ガス生産国だが、天然ガス生産量も年々増加傾向にある(図8)。しかし、増加する国内需要を満たすため、1998年よりミャンマーからパイプラインによる天然ガス輸入を開始している。これら国内生産とパイプライン輸入によって、2011年に東南アジア地域で初のLNG受入基地となるMap Ta Phut LNG基地(図9)が操業を開始した。 Map Ta Phut LNG受入基地の現在のLNG受け入れ容量は500万トン/年だが、第2次開発として拡張を計画している。この拡張は2015年に建設開始、2017年に建設完了、商業運転開始の予定で、拡張後の同基地のLNG受け入れ容量は計1,000万トン/年となる。 また、Shellが参画したタイの企業2社(Italian-Thai Development Public Company Ltd.とLNG Plus International Company PhilippinePhilippineTangguhTangguhNew GuineaNew GuineaSeaSeaAbadiAbadi52Petronas FLNG2Petronas FLNG2Brunei LNGBrunei LNGLahad DatuLahad DatuMALAYSIAMALAYSIABRUNEIBRUNEIPetronas FLNG1Petronas FLNG1PengerangPengerangMLNGMLNGArunArunLumutLumutMelakaMelakaSINGAPORESINGAPORESumateraSumateraJurong IslandJurong IslandBontangBontangKalimantanKalimantanDonggi Senoro LNGDonggi Senoro LNGIndian OceanIndian OceanINDONESIAINDONESIALampung LNGLampung LNGBojonegaraBojonegaraNorth JavaNorth JavaCentral Java, CilacapCentral Java, CilacapWest Java, NusantaraWest Java, NusantaraSengkangSengkangCentral Java, SemarangCentral Java, SemarangJavaJavaEast JavaEast Java出所:各種情報を基にJOGMEC作成図7東南アジアのLNG基地Sunrise LNGSunrise LNG2016.3 Vol.50 No.2アナリシス\東南アジアのLNG基地一覧LNG受け入れ能力(万トン/年)LNG貯蔵容量合計(万k?)国名称タイMap Ta PhutミャンマーマレーシアシンガポールインドネシアフィリピンベトナムPhase 2名称未定MelakaPengerangLumutLahad DatuJurong Island(Phase 1、1B)Phase 3将来拡張West Java、Nusantara Regas FSRULampung FSRUArunCentral Java、SemarangBojonegaraCentral Java、CilacapNorth JavaEast JavaPagbilao LNGBatangas FSRU名称未定Thi VaiSon My、Binh Thuan出所:各種情報を基にJOGMEC作成500500N.A380350N.A100600500(合計1,500)300200~300300300400160N.AN.A300400N.A100180(拡張計画あり)3232N.AN.A40N.AN.A5426N.AN.A17N.AN.AN.AN.AN.AN.A1317N.A1032操業開始(年)20112017予定計画中20132018予定計画中計画中2013、20142018計画中201220142015計画中2019予定2017予定計画中計画中2016予定2017予定2017予定2017予定2019予定年2014201320122011201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993億m3 国内生産輸入(パイプライン)輸入(LNG)消費量6005004003002001000出所:IEA Natural Gas Indormationのデータを基にJOGMEC作成図8タイの天然ガスバランス推移Ltd.)とともにミャンマーにLNG受入基地を建設する計画だ。この基地からタイへ天然ガスを輸送・供給する計画もある。ミャンマーのDawei経済特区にLNG受入基地を建設し、同経済特区における事業用としてLNGを利用し、残りの容量分の天然ガスをミャンマーの他の地域とタイに販売するもくろみという。この建設に関する契約締結時にはミャンマー、タイの両国の政府関係者も参加したとされる。なお、Shellは技術面でサポートする。ミャンマーは現在も53石油・天然ガスレビュー東南アジアで進むLNG受入基地の建設 -天然ガス生産地域から需要地域へ-V然ガスの主要生産国であるにもかかわらず、国内への供給はわずかで、ほとんどが中国とタイへ輸出している。②マレーシア マレーシアは言わずと知れた伝統的なLNG輸出国で、2014年は約2,500万トンのLNGを輸出した。特に日本出所:PTT LNG ホームページ図9MapTaPhutLNG受入基地億m3 1,000国内消費量生産量輸出量2002 パイプライン輸入開始生産量<輸出量+消費量生産量<輸出量+消費量=ギャップ拡大=ギャップ拡大9008007006005004003002001000への輸出は、1983年の同国LNGの生産開始以降、常に大きな比率を占め(2014年は1,500万トン)、日本にとっても重要なLNG輸入先である。 しかし、近年は天然ガスの生産量・埋蔵量ともに伸び悩み、LNG長期売買契約による供給義務を抱えるなかで国内ガス需要が増加(図10)。国内向け供給の不足分を補うために2013年よりLNG輸入を開始した(2002年からパイプラインによる輸入も行っている)。 また、マレーシアの天然ガス供給の課題は、上記のような需給ギャップだけではない。埋蔵量に余裕があるガス田の多くはマレー半島から離れたカリマンタン(ボルネオ)島サバ州・サラワク両州(東マレーシア)の沖合にあるのに対し、需要の中心がマレー半島にありパイプラインでの天然ガス輸送が困難である地理的条件も挙げられる。そのため、現在建設中のPetronas FLNG 1, 2などでやがて生産されるLNGは主に国内供給向けになると見られる。なお、今年操業開始予定のPetronas FLNG 1は、フローティングLNGの操業としては世界初の試みになる。 現在操業中のLNG受入基地は、Melaka 受入基地(図11)だけだが、さらに2件のLNG受入基地をマレー半島に、サバ州にも1件のLNG受入基地を建設する計画がある。なお、Melaka受入基地は、マレーシアLNGプロジェクトで使用されていたLNGタンカー2隻を転用した浮体式LNG貯蔵設備(FSU:Floating Storage Unit)を備えている。2013 LNG輸入開始2014 年2011201220135420002001200220032004200520062007200820092010出所:IEA Natural Gas Informationのデータを基にJOGMEC作成図10マレーシアの天然ガス生産量・消費量・輸出量推移2016.3 Vol.50 No.2アナリシスBシンガポール シンガポールでは、2013年に、Jurong Island のLNG受入基地(図12)が操業を開始した。同基地は、シンガポールのエネルギー供給セキュリティの強化はもちろん、LNG貯蔵・再積み込みサービスや新規建造されたLNGのクールダウンサービス、LNG燃料船への燃料供給サービスなどを視野に入れた戦略の下で建設された。同基地は、現状LNGタンク3基を擁しLNG処理能力600万トン/年だが、2018年までに処理能力1,125万トン/年に拡張される予定である。さらに将来的には処理能力1,500万トン/年まで拡張する可能性がある。 同国は、アジアにおけるLNGスポット取引の透明性向上と価格指標の確立を目的に2015年9月に“SLInG” (Singapore LNG Index Group)と称する価格指標グループを設立。地理的な要衝に位置することからも、アジア地域におけるLNGトレーディングのハブ(hub=中枢)になることを目指す(図13)。Jurong IslandのLNG基地は、シンガポールの国際戦略のなかで重要な位置を占めている。④インドネシア インドネシアは1970年代から2000年代半ばまで世界最大のLNG輸出国だった。しかし、国産天然ガス生産量の伸び悩みに伴う原料ガス供給の減少と国内エネルギー需要の高まりを受け、2000年代後半には天然ガスを国内市場に振り向ける方針を決めた。図14は同国の天然ガスバランスの推移を示したもの。2010年頃より東アジア諸国(日本、韓国、台湾)向けのLNG長期契約数量を大きく削減しているのが分かろう。 また、2012年にWest JavaでNusantara Regas(Pertaminaと国営ガス会社Perusahaan Gas Negara〈PGN〉の合弁)が運営するFSRUの稼働を開始して以降、生産されたLNGの一部は国内需要向けに供給されている。このFSRU稼働以降も、2014年に同じくFSRU設置のLampung LNG基地が、2015年には元々液化基地であったもの出所:SLNGホームページ図1255石油・天然ガスレビュー(注) 向かって右側の2隻がLNGタンカーを転用したFSU (浮体式LNG貯蔵設備)。左側が着桟中のLNGタンカー。出所:Petronas図11MelakaLNG受入基地シンガポールJurongIslandLNG基地の概観東南アジアで進むLNG受入基地の建設 -天然ガス生産地域から需要地域へ-@図15はPertaminaが公表しているインドネシアの天然ガスバランスの見通しである。現状については同国内間でのLNG輸送・供給のみで、海外からのLNG輸入は含まない。しかし、2025年におけるインドネシア国内の天然ガス需要は約10.1Bcf/d(LNG換算約7,800万トン/年)となる見通しで、国内供給量とのギャップ分約3,300万トンのLNG輸入が必要になると予測。 この予測を受けてPertaminaは、アメリカのCorpus Christi プロジェクトからのLNG調達について20年間の長期売買契約(2018年供給開始)を既に締結するなど、海外LNGの調達に動いている。 国内間LNG調達を行っている背景として、インドネシアでは天然ガス需要の中心がスマトラ島とジャワ島であるのに対し、天然ガス埋蔵量に余裕があるのが東部地域であるという、他国同様の地理的ギャップがあることだ。図16は、同国国内の各地域の天然ガス需給バランスを表したものだが、スマトラ島やジャワ島地域では需要>供給となっているが、埋蔵量が比較的豊富な東部地域では需要<供給となっている。このように需要地と生産地が遠隔かつ海によって阻まれている56年2014201320122011201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993国内消費量輸出量国内生産量9008007006005004003002001000出所:IEA Natural Gas Informationのデータを基にJOGMEC作成図14インドネシアの天然ガスバランス推移出所:SLNGホームページ図13アジアのLNGトレーディングハブを目指すシンガポール億m3 1,000を受入基地に転換させたArun LNG基地がそれぞれ操業を開始した。また、2015年11月、東京ガスとPertaminaは、BojonegaraにLNG受入基地を共同で建設すると発表。こちらはインドネシアにとって、初の陸上型LNG受入基地となり、2019年の稼働開始を目指している。2016.3 Vol.50 No.2アナリシスアとも、パイプラインの敷設・整備を難しくしており、国内間の天然ガス輸送手段としてLNGが選択される理由となっている。 さらに、発展途上にあるインドネシアでは、現在天然ガスインフラの整備が大きな課題となっている(図17)。スマトラ島~ジャワ島地域でのパイプラインも含めた天然ガスインフラの整備が計画されているのと同時に、島嶼部が多い地形要因から、スモールスケールLNG(小規模LNG供給)と呼ばれるLNGのブレークバルク事業の拡大が期待されている。大規模なLNG輸入基地を拠点に内航船等によるLNGの分配供給を行い、点在する需要地の火力発電用(特に現状高コストなディーゼル発電の代替)や鉱物資源採掘事業向けに天然ガスを使用することを計画。また、LNGそのものを船舶や陸上輸送車両用の燃料として活用することも期待される。⑤フィリピン フィリピンは、Shellがオペレーターとなって開発しているMalampayaガス田が2001年に生産開始したのが事実上の天然ガス利用の始まりで、国内生産された天然ガスは全量自国内で消費されている。現在は他地区での天然ガスの開発が進められ、生産量は増加傾向だが(図18)、Malampayaガス田への依存度は大きく、57石油・天然ガスレビュー8,8998,8997,7187,7187,9317,9316,8246,8244,9424,9425,2995,2995,9715,9716,1066,1066,6626,6626,3076,3075,9675,9675,6225,6224,4534,4534,2734,2739,3539,3539,6159,6159,7589,7589,7949,79410,06510,065Demand 4.4 Bcfdgap in 2025 to be met through LNG imports5,9105,9105,9945,9945,5315,531LNG importsLNG importsNew discoveryNew discoveryCBMCBMExisting PertaminaExisting PertaminaExisting OthersExisting OthersNew PertaminaNew PertaminaNew othersNew others百万scfd13,00012,00011,00010,0009,0008,0007,0006,0005,0004,0003,0002,0001,000020152016出所:Pertamina201720182019202020212022202320242025年図15インドネシアの天然ガスバランス見通し(2015年3月時点予測)百万scfdNorth Sumatra-264-275-426-459Central SumatraCentral Java-545-600-631-657-742-575-660-367-320-387-323-426-358-461Indonesia’s deficit : -1,102-1,153-2,189-2,361-2,114-2,673-3,618-4,372Others8055938557731,4467307324301,072831591South Sumatra出所:Pertamina397West Java-1,477-1,490-1,706-1,719-2,036-2,127-2,639-2,730East Java-241-494-597-663-823-953Surplus regionDeficit region2015201820202025図16インドネシアの地域別天然ガス需給バランスPipeline, regas, and LNG developmentExisting pipeline Existing RegasExisting LNG PlantPlanned pipelinePlanned RegasPlanned LNG PlantArunArunTrans Sumatra Trans Sumatra pipelinepipelineLNG KTIdevelopmentMini LNG Mini LNG SimenggarisSimenggarisMini LNG Mini LNG SalawatiSalawatiDSLNGLNG RT BojonegaraLNG RT BojonegaraFSRU NRFSRU NRLNG RT E.JavaLNG RT E.JavaLNG Regas MakassarLNG Regas MakassarFSRU CilacapFSRU CilacapLNG RT BaliLNG RT Bali出所:Pertamina図17Pertaminaによるインドネシアの天然ガスインフラ計画東南アジアで進むLNG受入基地の建設 -天然ガス生産地域から需要地域へ-。後の生産減退やインフラ整備も含め、Shellとのライセンス期限が切れる2024年以降の天然ガス開発および供給が大きな課題である。天然ガス調達源の一つとして、LNGによる輸入が計画されているのはそのためだ。 フィリピンでは現在少なくとも3件のLNG受入基地の建設計画が進み、LNG輸入国になろうとしている。これらのLNG受入基地はいずれもルソン島に建設される計画で、天然ガスインフラの総合開発プロジェクトの一環と454035302520151050億m3 国内生産消費量200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014年出所:IEA Natural Gas Informationのデータを基にJOGMEC作成図18フィリピンの天然ガスバランス推移LNG PROJECT IN LUZONAG&P ENERGYAG&P ENERGYCITY PROJECTCITY PROJECT(2017-20190(2017-20190して進行中だ(図19)。 同国初となるPagbilao LNG受入基地は、オーストラリアのEnergy World Corp.が火力発電所の建設と併せて進めているプロジェクト。こちらは当初計画からはやや遅れて2016年早期に建設が完了する見込みだ。また、Shellが参画しているBatangas LNG基地建設計画は、FSRUのLNG受入基地で、2017年に操業開始を目指す。また、同国のFirst Gen Corp.もLNG受入基地の建設を計画しており、2016~2017年に建設を開始する予定である。SHELL FSRUSHELL FSRUTERMINALTERMINALPROJECT (2017)PROJECT (2017)FIRST GAS LNGFIRST GAS LNGTERMINALTERMINALPROJECTPROJECT(2019/2022)(2019/2022)BATCAVEBATCAVE(Batangas?Cavite)(Batangas?Cavite)40 kms(2020)40 kms(2020)EWC LNG TERMINALEWC LNG TERMINALPROJECT (2015)PROJECT (2015)BATMAN 1BATMAN 1(Batangas Manila)(Batangas Manila)80-100 kms. (2013)80-100 kms. (2013)出所:フィリピンエネルギー省プレゼンテーション資料図19フィリピンLuzon島のLNG関連プロジェクト582016.3 Vol.50 No.2アナリシスN2014201320122011201020092008200720062005200420032002200120001999199819971996199519941993億m3 国内生産消費量120100806040200出所:IEA Natural Gas Informationのデータを基にJOGMEC作成図20ベトナムの天然ガスバランス推移⑥ベトナム ベトナムは現状LNG受入基地を保有しておらず、LNG輸入は行っていない。天然ガス生産は1990年代より始まり、現在はほぼ全量を自給自足している(図20)。しかし、天然ガス需要の増加に伴い、国営石油企業Petrovietnamによって2件のLNG受入基地建設の計画が進められている。ベトナムのLNG受入基地建設は、これまでも計画はあったものの容易に進展が見られなかった。現状計画では、Thi Vai LNG受入基地が2017年操業開始予定、Son My LNG受入基地が2019年の操業開始予定である。まとめ 東南アジアは、近年の急速な経済成長と人口増加により、総じてエネルギー需要も大きく伸ることは確実のようだ。中国やインドに続く新興のエネルギー需要地域へと成長し、世界のエネルギー市場にも大きな影響を与えていくと考えられる。天然ガス需要は増加し、タイやシンガポール、そして伝統的なLNG輸出国であったインドネシアやマレーシアにおいてもLNG受入基地の操業が開始されている。これまでの姿であった天然ガス・LNGの生産・供給地域から需要地域へと転換しようとしており、既に東南アジアを取り巻くLNG輸出入の流れは変わりつつある。 一方、東南アジアではエネルギーへのアクセスのためのインフラが未整備であることが大きな課題となっている。LNG受入基地の建設も天然ガスインフラ整備の一環としてであり、LNG受入基地を軸としたエネルギーハブの形成が各国で進んでいく可能性が高い。また、インドネシアではスモールスケールLNGによるサプライチェーンモデルの構築も期待されるが、他の各国も島嶼部が多いという点では同じ地理的条件下にあるので、同様のビジネスモデルが拡大していく可能性もある。 LNG受入基地の建設が進み、その輸入に参画する国が増えていくことは、LNG市場の拡大を意味する。北米やオーストラリア、東アフリカでの新たなLNGプロジェクトが進捗し、生産者が増加していくことと同様に、LNG市場はさらに拡大・多様化していこう。また、今後数年間は世界的にLNGの供給過剰が予想されるが、上流における投資の停滞を防ぎLNG産業が健全に発展していくためには需要の発掘が欠かせない。 今後LNG産業と、その世界的市場への影響力も大きくなっていくであろう東南アジアのLNG輸出入動向について、引き続き注視していきたい。59石油・天然ガスレビュー東南アジアで進むLNG受入基地の建設 -天然ガス生産地域から需要地域へ-キ筆者紹介永井 一聡(ながい かずあき)東京大学大学院工学系研究科修了。2002年、東京ガス株式会社入社後、主にLNG受入基地の操業管理、プロセスエンジニアリング業務等に従事。2013年4月より現職。趣味は毎週末興じる野球。最近のマイブームは、愛車に七輪を積んでドライブに出かけ、漁港等で調達した食材を浜焼きで食べること。602016.3 Vol.50 No.2アナリシス
地域1 アジア
国1
地域2 アジア
国2 タイ
地域3 アジア
国3 ミャンマー
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
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国・地域 アジアアジア,タイアジア,ミャンマー
2016/03/22 [ 2016年03月号 ] 永井 一聡
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