ページ番号1006595 更新日 平成30年3月5日

天然ガス・LNGに関する最新動向

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レポートID 1006595
作成日 2016-09-21 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガスレビュー
分野 エネルギー一般天然ガス・LNG
著者 田村 康昌
著者直接入力
年度 2016
Vol 50
No 5
ページ数
抽出データ 天然ガス・LNGに関する最新動向 世界のLNG生産能力は豪州・米国を中心に大幅拡大の局面を迎えており、2016年以降操業開始が予定される建設中のプロジェクトの合計は約1億4,000万トンに達する。このうち豪州については、2020年代にはカタールを抜いて世界最大の生産国になると見られ、豪州(約8,600万トン/年)、カタール(約7,700万トン/年)、米国(約7,000万トン/年)の3国合計で2億3,000万トンと世界全体(約4億5,000万トン)のLNG生産能力の半分を占める見通しである。 一方、2014年後半以降の油価下落に伴う財務状況の悪化等により、投資計画の延期・中止を表明するプロジェクトも相次いでいる。今後も、短中期的には生産能力の過剰が見込まれることもあり、最終投資決定前の計画中のLNGプロジェクトの実現性については不透明な状況となっている。 足元のLNG価格は2016年5月の日本着平均価格が5.9ドル/MMBtuとなり、2005年以来の安値水準にある。日本のLNG輸入量の大半を占める長期契約においては、石油価格連動方式による価格決定が主流であり、実際の輸入価格に反映するまでの数カ月のタイムラグを経て低油価の影響が反映されてきている。 2016年2月には米国Sabine Pass LNG基地からのLNGが初出荷され、また、同年6月末には、拡張パナマ運河が運用を開始した。これにより、スエズ運河または喜望峰経由と比べて、北米東海岸からの日本向け輸送については、大幅な短縮が可能となった。今後、仕向地制限がない米国産LNGの短期・スポット市場への供給により、これまで以上にLNG取引における流動性が増すことも考えられる。中国・欧州にパイプラインを通じて天然ガス供給を進めるロシアの動向およびその価格戦略も含め、中長期的に見て、市場環境の大きな変化が予想される。百万トン/年スポット・短期数量全取引数量スポット・短期割合%35302520150051200420052006200720082009201020112012201320142015年300250200150100500出所:GIIGNLを基にJOGMEC作成図1世界のLNG取引量推移1. LNGの取引量推移(1)世界のLNG取引量 国際LNG輸入者協会(GIIGNL)によると、2015年の世界のLNG取引は、2億4,519万トンとなり、2014年比2.5%の増加となった(図1)。 2015年にはエジプト、ヨルダン、パキスタンが新たなLNG輸入国となり、日本・韓国等の需要減を吸収する形となった。また、ポーランドも、2015年12月に試運転カーゴを受け入れ、新たな輸入国として2016年には商業運転の開始が予定されている。 4年以内の短期・スポット取引は全体の28%を占め、2014年比で、量・割合と37石油・天然ガスレビュー烽ノ若干の減少となっている。なお、2016年から公表された契約から90日以内に引き渡されたスポット取引の割合は全取引の約15%と推定されている。(2)日本のLNG輸入量 日本のLNG輸入量は、原発の再稼働、省エネの進展、再生可能エネルギーの普及等による需要減に伴い、全体の輸入数量は2014年の8,920万トンから、2015年は8,505万トンとなり、約4.5%の減少となった。4年以内の短期・スポットによる取引は、2014年の2,581万トン(全輸入量の29%)から、2015年には2,051万トン(同24%)に減少している(図2)。2. LNGの生産能力の見通し(1) 新規LNGプロジェクトの進捗と見百万トン/年スポット・短期数量全取引数量スポット・短期割合%35302520150051200420052006200720082009201020112012201320142015年1009080706050403020100出所:GIIGNLを基にJOGMEC作成図2日本のLNG輸入量推移表12016年以降操業開始が予定される主なLNGプロジェクトプロジェクト名国生産開始年生産能力(万トン/年)通しAP LNGGorgon LNGSabine Pass LNGMLNG Train 9Petronas Floating LNGWheatstone LNGIchthys LNGPrelude FLNGCove Point LNGYamal LNGCameron LNGFreeport LNGCorpus Christi LNGTangguh出所:各種情報を基にJOGMEC作成豪州豪州アメリカマレーシアマレーシア豪州豪州豪州アメリカロシアアメリカアメリカアメリカインドネシア201620162016~20192016予定2016予定2017予定2017予定2017予定2017予定2017予定2018予定2018予定2018予定2020予定9001,5602,2503601208908403605251,6501,3501,32090038016,000万トン/年その他14,000ロシア12,000アメリカ10,000豪州8,0006,0004,0002,00002016201720182019年出所:各種情報を基にJOGMEC作成図3地域別のLNG追加生産能力見通し 現在、世界のLNG生産能力は大幅拡大の局面を迎えており、2016年以降に操業開始が予定される建設中のプロジェクトの合計は、約1億4,000万トンに達する。これらのほとんどは、豪州(約4,500万トン/年)、米国(約6,350万トン/年)が占めるものである(図3)。 なお、上記建設中のプロジェクトの他にも、北米地域(米国・カナダ)、豪州、東アフリカ(モザンビーク)等では、計画中・提案中のプロジェクトが多数存在する。しかし、2014年後半以降の油価下落に伴い、財務状況が悪化したプロジェクト参加企業も多く、Arrow Energy LNG(豪州)、Browse LNG(同)、Oregon LNG(米国)など、投資計画の延期・中止を表明するプロジェクトも現れている。 大規模な投資を必要とするLNGプロジェクトは、通常、その生産能力の大半について、顧客(売り先)を確保してから、最終投資決定(FID)がなされる。しかし、短中期的に生産能力が過剰になる状況にある他、これまで需要の多くを担ってきた日本の買主は将来の需要見通しが不確実(原発の再稼働、再生可能エネルギーの普及、国内市場における自由化の進展)なこともあり、計画中のプロジェクトの382016.9 Vol.50 No.5タ現可能性については不透明な状況が続いている。(2) 豪州のLNGプロジェクトの進捗 豪州では2015年以降にGLNG、APLNG、Gorgon LNGが相次いで操業を開始した。いずれも、複数の液化トレインを有する大型プロジェクトで、2017年頃まで段階的に生産量が増加する見込み。また、Wheatstone LNG、Ichthys LNG、Prelude FLNG、いずれも日本企業が関与する3件のプロジェクトが建設中で、2017年以降の操業開始を予定している。①2015年下期以降に操業開始した豪州LNG基地 GLNG ・ CBMプロジェクト ・ 2015年10月に初カーゴ出荷 Australia Pacific LNG(AP LNG) ・ 参画企業:Origin Energy Limited 37.5%、ConocoPhillips 37.5%、Sinopec 25% ・ 液化能力:900万トン/年(450万トン ・ 参画企業:Santos 30%、Petronas 27.5%、Total 27.5%、KOGAS 15% ・ 液化能力:780万トン/年(390万トン/年×2トレイン) ・ CBMプロジェクト ・ 2016年1月に初カーゴ出荷/年×2トレイン) Gorgon LNG ・ 参画企業:Chevron 47.3%、ExxonMobil 25%、Shell 25%、大阪ガス 1.25%、東京ガス 1%、中部電力 0.417% ・ 液化能力:1,560万トン/年(520万トン/年×3トレイン) ・ 2016年3月に初カーゴ出荷②現在建設中のLNG基地 Wheatstone LNG ・ 参画企業:Chevron 64.14%、KUFPEC 13.4%、Woodside 13%、PE Wheatstone 8%、九州電力 1.46% ・ 液化能力:890万トン/年(445万トン/年×2トレイン)(2,500万トン/年まで拡張可能) ・ 2017年生産開始予定Cash / MapleCash / MapleSunriseSunriseDarwinDarwinIchthysIchthysBrowseBrowseGorgonGorgonScarboroughScarboroughWheatstoneWheatstoneGeraldtonPreludePreludeNorth West ShelfNorth West ShelfPlutoPlutoCairnsTownsvilleNORTHERN TERRITORYQUEENSLANDWESTERN AUSTRALIAAlice SpringsG LNGG LNG AP LNG AP LNGQC LNGQC LNGQC LNGQC LNGKalgoorlieSOUTH AUSTRALIASuratNEW SOUTH WALESBrisbaneFisherman’sFisherman’sLandingLandingLNGプロジェクト(陸上)【操業中】LNGプロジェクト(陸上)【建設中】LNGプロジェクト(陸上)【計画中】LNGプロジェクト(FLNG)【建設中】LNGプロジェクト(FLNG)【計画中】ガスパイプライン(既存)出所:各種情報を基にJOGMEC作成AdelaideVICTORIAMelbourne0500KmSydneyCANBERRA図4豪州の主なLNGプロジェクト出所:Shellホームページ39石油・天然ガスレビュー図5Prelude FLNGのイメージ図Indian OceanGreat Australian BightTimor SeaIchthys LNG ・ 参画企業:INPEX 62.245%、Total 30%、CPC 2.625%、東京ガス1.575%、大阪ガス 1.2%、関西電力 1.2%、中部電力 0.735%、東邦ガス:0.42% ・ 液化能力:840万トン/年(420万トン/年×2トレイン) ・ 2017年生産開始予定 Prelude FLNG ・ 参画企業:Shell 67.5%、INPEX 17.5%、CPC 5%、KOGAS 10%  ・ 液化能力:360万トン/年(LNG)、130万トン/年(コンデンセート)、40万トン/年(LPG) ・ 2017年生産開始予定 ・ 現在、韓国Samsung重工(SHI)の造船所において建造中(図5)(3) 北米におけるLNGプロジェクトの進捗 米国では、現在、一部稼働を開始したものも含め5件のプロジェクトの建設が進んでいる。Sabine Pass LNGは、2016年2月に初カーゴを出荷し、米国本土からのLNG輸出がついに開始された。 また、カナダでは、Pacifc Northwest LNGが2015年7月に条件付きFIDを行っている。既に、2015年7月BC(ブリティッシュ・コロンビア)州議会からのプロジェクト開発契約(Project Development Agreement)が承認され、カナダ連邦政府による環境影響評価の承認がなされれば、同国初のLNG輸出プロジェクトとして動き出すことになる。 なお、現在建設中の北米産LNGの合計は、約6,350万トンに上り、このうち、日本企業(電力・ガス・メーカー)が予定する引き取り量は、約1,400万トンとなる(表2)。これまでの一般的なLNGの事業形態(上流権益保有者がLNG事業を行い販売する)と異なり、北米ではフィードガスを調達した企業が液化事業者(上流権益保有者以外)に液化サービスを委託する形式を採る。仕向地の制約も基本的にはなく、需給に応じて短期・スポット市場への流入も見込まれる。実際、日本企業・インドGail等のアジアの買主が、一定量を欧州向けに販売し、同数量の豪州産等のLNGを日本・アジア市場で引き取る等、必ずしも全量を日本向けに輸送するのではなく、契約の柔軟性を生かした多様な取り組みが進んでいる。AuroraAuroraWCC LNGWCC LNGPrince RupertPrince RupertPaci?c NorthwestPaci?c NorthwestWood?bre LNGWood?bre LNGJordan CoveJordan CoveLNG CanadaLNG CanadaKitimatKitimatTriton LNG(浮体式)Triton LNG(浮体式)CANADABear Head LNGBear Head LNGCanaport LNGCanaport LNGCove PointCove PointCameronCameronElba IslandElba IslandGulf Coast LNGGulf Coast LNGLake CharlesLake CharlesCalcasieu Pass LNGCalcasieu Pass LNGMagnolia LNGMagnolia LNGU.S.ASabine PassSabine PassGolden PassGolden PassFreeportFreeportCorpus ChristiCorpus ChristiMEXICOLNGプロジェクト【操業中】LNGプロジェクト【建設中】LNGプロジェクト【計画中】出所:各種情報を基にJOGMEC作成図6北米の主なLNGプロジェクト①操業開始済みのLNG液化基地 Sabine Pass LNG(アメリカ) ・ 参画企業:Cheniere 100% ・ 液化能力:2,700万トン/年(450万トン/年×6トレイン) ※第6トレイン(450万トン/年)は未着工 ・ 2016年2月に初カーゴ出荷 ・ 2017~2019年の間に第3~第5トレイン生産開始予定②建設中のLNG基地 CovePoint LNG(アメリカ): ・ 参画企業:Dominion Cove Point LNG 100% ・ 液化能力:525万トン/年 ・ 2017年生産開始予定 Freeport LNG(アメリカ): ・ 参画企業:Freeport LNG Development 100% ・ 液化能力:1,320万トン/年(440万トン/年×3トレイン)※第4トレインに拡張計画あり ・ 2018年生産開始予定 Cameron LNG(アメリカ): ・ 参画企業:Sempra 50.2%、ENGIE 16.6%、JLI(三菱商事、日本郵船)16.6%、三井物産 16.6% ・ 液化能力:1,350万トン/年(450万トン/年×3トレイン)※第4、5トレインに拡張計画あり ・ 2018年生産開始予定 Corpus Christi LNG(アメリカ): ・ 参画企業:Cheniere 100% ・ 液化能力:1,350万トン/年(450万トン/年×3トレイン) ・ 第3トレインは未着工。第4、5トレインに拡張計画あり ・ 2018年生産開始予定③条件付きFID済み LNG液化基地計画(カナダ) Pacific Northwest LNG ・ 参画企業:Petronas 62%、Sinopec 402016.9 Vol.50 No.55%、JAPEX 10%、Indian Oil Corp. 10%、Petroleum BRUNEI 3% ・ 液化能力:1,200万トン/年(600万トン/年×2トレイン)のFID ※ 2015年7月、BC州議会がプロジェクト開発契約(Project Development Agreement)承認済み。カナダ連邦政府による環境影響評価 の承認待ち。 ・ 2015年6月、カナダ初(条件付き※) ・ 2019年操業開始を目指す表2日本企業の米国産LNGの調達液化加工契約保持者(売主)(基地事業者とは異なる)大阪ガス 220万トン/年(2018年から20年)中部電力 220万トン/年(2018年から20年)東芝 220万トン/年(2019年から20年)Freeport LNGLNG引取者(買主)(4)世界のLNG生産能力の推移と見通し 世界のLNG生産能力は、2015年末で約3億トン/年に達している。今後、現在建設中のプロジェクトが順調に操業を開始すれば、2020年までには、豪州がカタールを抜き世界最大の生産国となる。なお、豪州(約8,600万トン/年)、カタール(約7,700万トン/年)、米国(約7,000万トン/年)の3国合計で約2億3,000万トンとなり、世界全体(約4億5,000万トン)のLNG生産能力の半分を超える見通しである(図7)。3. LNGの需要見通しBP 440万トン/年三菱商事 400万トン/年(2018年から20年)三井物産 400万トン/年(2018年から20年)Engie 400万トン/年(2018年から20年)Cameron LNGCove Point LNG 住友商事・東京ガス 約230万トン/年(2017年から20年)出所:各種情報を基にJOGMEC作成東京電力 120万トン/年(ポートフォリオ供給)関西電力 50万トン/年(ポートフォリオ供給)東京電力 80万トン/年(2018年から20年)東北電力 30万トン/年(2022年から16年)東京ガス 20万トン/年(2022年から16年)東邦ガス 20万トン/年(2019年から19年)東京電力 40万トン/年(2018年から20年)東邦ガス 30万トン/年(2018年から20年)関西電力 40万トン/年(2018年から20年)東京ガス 52万トン/年(2020年から20年)東北電力 27万トン(2018年から20年)東京ガス 140万トン/年(2017年から20年)関西電力 80万トン/年(2017年から20年)(1)新規LNG受入基地の稼働見通し アジア、特に中国を中心に、LNG受入基地の建設が進んでいる。新興国等では急増するエネルギー需要に対応するため、陸上LNG受入基地に代わり、初期コスト低減、建設期間の短縮が可能なFSRU(Floating Storage and Re-gasification Unit:浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)の導入も進んでいる。2015年にはエジプト、ヨルダン、パキスタンが新たなLNG輸入国となったが、いずれも、FSRUによる受入基地である(図8)。(2)日本のLNG需要見通し 2015年7月に発表された経済産業省長期エネルギー需給見通しによると、天然ガスは化石燃料のなかで、今後役割が拡大する重要なエネルギー源と位置付けられ、2030年の1次エネルギーのうち19%(約6,500万トン)が想定されている。原子力発電所の再稼働、省エネの進展を前提としており、2015年の日本の輸入実績に比べて減少となるが、LNG価格や将来のエネルギー・電源構成によっては、他のエネルギーを補う燃料となる可能性も残る(図9)。(3)中国のLNG需給見通し 2015年は、経済の減速や、天然ガスが年20192017201520132011200920072005200320011999199719951993199119891987198519831981197919771975197319711969ロシア欧州中南米アフリカアジア中東北米豪州50,000万トン/年45,00040,00035,00030,00025,00020,00015,00010,0005,0000出所:各種情報を基にJOGMEC作成図7地域別のLNG生産能力推移41石油・天然ガスレビューS万トン/年600500400300200100高需要ケース低需要ケース42年20302020201520142013201220112010200920082007200620052004200320022001200019991998199719961995199419930出所: IEA Natural Gas Information、経済産業省資源エネルギー庁委託調査「アジア・太平洋市場の天然ガス需給動向調査報告書」(2014年3月)を基にJOGMEC作成図12世界のLNG需要見通し硬直的な統制価格をとるため、油価下落後に価格競争力が低下したこと等により、天然ガス需要の伸びが抑制された。LNG輸入は、世界3位の輸入国(シェア8%)であるとはいえ─各種統計により若干の差異はあるが─輸入開始以来初の前年割れとなった。 一方で、大気環境改善、CO2排出抑制政策に伴い、中長期的な天然ガスの潜在需要は高く、景気動向、ロシアからのパイプラインを通じた天然ガス輸入の進展度、天然ガスの統制価格などの不確実性は残るとはいえ、今後の需要増を担う見通しとなる(図10、図11)。(4)世界のLNG需要見通し 図12に、世界のLNG需要推移と今後出所:各種情報を基にJOGMEC作成出所:IEA図10中国の天然ガス消費量推移図11中国の天然ガス需要見通し2006200720082009201020112012201320142015年中東・アフリカ中南米欧州アジア・太平洋8,000万トン/年7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,0000億?/年2,4001,9001,400900400-1001次エネルギー供給量600百万k?(石油換算)5000.4%0.4%3%3%40030020010008%8%24%24%25%25%40%40%2013再生可能エネルギー原子力天然ガス石炭LPG石油13?14%13?14%10?11%10?11%19%19%25%25%30%30%3%3%2030年度出所:経済産業省長期エネルギー需給見通し(2015年7月)図9長期エネルギー需給見通し7006005004003002001000十億?/年生産需要201320202025203020352040年201620172018年出所:各種情報を基にJOGMEC作成図8地域別のLNG受入基地稼働見通し輸入パイプラインガスLNG輸入国産ガス輸出(億?)天然ガス消費増減率(%)%3025201510502016.9 Vol.50 No.5フ見通しを示す。 現在世界では、年間2億4,519万トンのLNGが取引(需要)されている。天然ガスは中期的に有望なエネルギー源と位置づけられており、中長期的には需要は堅調に伸びていくと予想されている。2020年時点の年間需要として3億~4億トン、2030年時点では4億~5億7,000万トン程度と見通される。 また、現在、建設中のLNG液化基地の生産能力(1億4,000万トン)を考慮すると、2020年初頭の、短中期的には十分な供給力があると考えられる。4. 天然ガス・LNG取引(1)天然ガス・LNG価格推移 2016年5月のJLC(Japan LNG Cocktail)は、5.9ドル/MMBtuと2005年以来の安値水準となった。日本向けLNG輸入量の大半を占める長期契約においては、石油価格連動方式による価格決定が主流となっており、実際の輸入価格に反映するまでの数カ月のタイムラグは生じたものの、2016年初の低油価が日本向けLNG輸入価格にも反映されている。 スポットLNG価格については、豪州の新規プロジェクトからの操業開始・本格稼働、需要面については、日本・韓国における原発の再稼働、中国における景気減速を受け、2016年5月の入着ベースのスポット価格は、4.3ドル/MMBtuと、経済産業省が2014年4月以降公表を開始して以来、最安値を更新した。 2016年下期以降も、気温要因等の一時的な需要増はあっても、豪州・米国・マレーシア等における新規LNG基地の操業開始により、需要の変動を上回る大量のLNG供給増が続く見込みで、短期的には、スポット価格が大幅に上昇する可能性は低いと考えられる。(2) 天然ガス・LNGの価格決定方式 天然ガス・LNGの価格決定方式は、産ガス国である北米・イギリスと、天然ガス・LNGの輸入国から成る欧州大陸部、LNGによる輸入を行う北東アジアの大きく三つに大別される。(表3) 欧州大陸部では、もともとガスは石油製品の競合燃料であり、消費者はガスと石油の価格優位性のあるほうを選択していたことから、石油製品(重油、灯油など)の価格に連動して天然ガスの価格を決定する方式ができ上がっていた。従来の価格決定方式を維持したいロシアをはじめとした売主側の意向はあるが、昨今の天然ガス取引市場の拡大や原油価格高騰に伴う天然ガス価格の高騰に際しての、価格見直し・再交渉といった過程で、ガス市場価格連動ドル/百万Btu2520151050200520062007200820092011NBP(UK-gas,ICE)JCC(Japan Crude Cocktail)出所:IMF、ICE、NYMEX、経済産業省スポットLNG価格の動向、財務省貿易統計等より推計ドイツ-ロシア国境渡し(Gas)JLC(Japan LNG Cocktail)20102012201420132015H/H(US-Gas,NYMEX)日本向けSPOT(入着ベース、METI)2016年図13世界の天然ガス・原油価格推移43石油・天然ガスレビューFめる動きも出てきている。 国際ガス連盟(IGU)の調査によれば、EU域内の天然ガス取引で、石油価格連動型の取引割合は2005年の78%から2015年は30%に低下し、ハブ価格に連動した取引は、2005年の15%から64%に増加したとされている。 北東アジアでは、依然、長期契約を中心に石油価格連動による価格決定方式が主だが、北米産LNGの輸出開始に際しては、米国ヘンリーハブ(H/H)価格連動等の指標の多様化が進む見込みである。また、伊勢志摩サミット(2016年5月)に合わせて経済済産業省が発表したLNG市場戦略にも示されるように、最大需要地であるアジアの需要に合わせた価格指標の確立も、供給安定性に資するスポット市場の発達と併せて期待されるところである。 今後、米国産LNGの増加に伴い、現在の三大需要地における供給源(図14)のバランスにも変化が予想される。特に、中国・欧州にパイプラインを通じた天然ガス供給を進めるロシアの動向とその価格戦略次第では大きな影響があり、今後の不確実性要因として注視する必要がある。(3)新たなLNG輸送航路による取引①パナマ運河の拡張 2007年9月に着工したパナマ運河の拡張工事は、2016年6月26日開所式が行われ、その翌日には、日本郵船が運航するLPG船が商用第一船として通峡した。当初計画では、1914年のパナマ運河開通100周年に合わせて完成予定であったが、追加工事の費用負担に絡んだ対立による工事中断等により、完成が遅れていた。 現在、建設中の米国のLNG液化基地は全て米国大西洋側に位置することから、アジア向け輸送には多くの場合、拡張後のパナマ運河を通じた輸送となることが想定されている。なお、新パナマ運河の活用により輸送日数は約20日(速力19ノット)~25日(同15ノット)となり、スエズ運河経由(片道約33~42日)、アフリカの喜望峰経由(同35~45日)と比較して大幅な短縮が可能となる。表3天然ガス・LNGの価格決定の構成要因北米・イギリス欧州大陸部日本・アジア・ 域内生産・ パイプライン輸出(一部LNG)市場取引(米:H/H、英:NBP)(LNGは長期契約)・ 取引時点における天然ガス需給(LNGも含む)主な調達形態主な取引形態価格決定の指標・因子備考─出所:各種情報を基にJOGMEC作成・ 域内生産・ パイプライン輸入・ LNG輸入長期契約・市場取引(近年は契約期間の短期化・市場取引が増加)・ 取引時点における石油製品価格(市場価格を一部反映も増加傾向)・ 契約交渉時点における情勢(スポット価格、他燃料価格、他ガス調達源の開発見通し、など)・ LNG輸入長期契約(近年、将来需要の不確実性から短期も増加傾向)・ 取引時点における原油価格・ 契約交渉時点における情勢(LNGプロジェクトの開発見通し〈調達開始時期におけるLNG需給見通し〉)北米産LNG(H/H価格連動)の輸入が順次開始予定(2016年以降)1,0009008007006005004003002001000天然ガス供給量十億?LNG輸入パイプライン輸入域内生産北米(米加)欧州(EU-28)アジア(日中韓台印)出所:IEA Natural Gas Information図14三大天然ガス市場における供給源別割合(2014年)表4パナマ運河を通峡可能な最大船型現行新運河こうもん運河・閘門の大きさ 通航可能な最大船型 運河・閘門の大きさ 通航可能な最大船型全長全幅喫水305m33.5m12.8m出所:パナマ運河庁294.1m32.3m12.04m427m55m18.3m366m49m15.2m②ヤマルプロジェクト(北極海航路) 2017年に予定される、ロシアYamal LNGの生産開始に伴い、北極圏航路を通じたアジア向けのLNG輸送も計画されている。北極圏航路は、海水温上昇による北極海の氷海域減少に伴い活用が期待されてきた航路で、既に、2012年にはノルウェー産LNGのアジア向け輸送などで実績がある。最大氷厚2.1mの氷海で単独砕氷航行可能なLNG船によって輸送するが、冬季は海面が厚い氷に覆われることから、北極圏航路は基本的に夏442016.9 Vol.50 No.5G限定となる見込みである。冬季については、Yamal LNGから欧州地域内の港湾まで輸送の後、通常のLNG船に積み替え、そこからアジア等各地域に再出荷されることも想定される。③地域間のスワップ取引による最適化 北米からのLNG輸出が本格化し、新パナマ運河、北極海航路等新たな輸送ルート活用が進めば、今後のアジア向けLNG取引における長距離輸送は増加傾向となろう。一方で、特に北米を中心とした仕向地制限のない契約に基づき、北米からの欧州向けカーゴと日本・アジア向けカーゴの相互交換等、輸送ルートおよびコストの最適化のための取り組みが進んでいる。 関西電力と仏ENGIE(旧GDF Suez)との協力協定出所:Total、Novatek図15Yamal LNGの輸出ルートヤマルヤマル東シベリア東シベリアアラスカサハリンカナダアメリカアルジェリアトルクメニスタン西アフリカ中東ミャンマー東南アジアパプアニューギニア東アフリカ豪州天然ガスパイプライン(稼働中)天然ガスパイプライン(建設・計画中)LNG輸送ルート(現在)LNG輸送ルート(将来)図16アジア向け天然ガス輸送(将来)出所:各種情報を基にJOGMEC作成45石油・天然ガスレビュー@・ 関西電力が北米から購入するLNGをENGIE社に販売し、原則同量分のLNGを関西電力が購入 ・ 2019年から原則最低160万トン/年(双方合意で増量可) JERA(売主)からEDF Trading(欧州LNG基地向け)にLNGの販売 ・ 2018年6月から2年半、最大150万トン/年、欧州ガス価格連動 ・ EDF Tradingが指定する欧州域内のLNG基地での受け渡し ・ 販売数量は、売主(JERA)の裁量で調整可能 インドGailの保有する米国Sabine Passカーゴのスワップ検討 ・ 輸送コストを最適化するため、米国でのFOB(Free on Board)契約と同量のインドの基地向けDES(Delivered Ex-Ship)契約とのスワップに関する入札実施 ・ 米国-インド、インド-豪州の輸送を比較した場合、10~15日(往復20~30日)の輸送日数が削減可能5. まとめ エネルギーの安定供給や環境面で優位性のある天然ガスの「黄金時代」の到来が2010年に国際エネルギー機関(IEA)によって示され、供給面では大型プロジェクトの操業開始が本格化してきている。半面、低油価にもかかわらず、足元の需要は伸び悩み、気温要因等の一時的な需要増はあったにしても短中期的には供給過剰が続くことが見込まれるため、特にスポット価格の大幅な上昇は考えにくい。また、油価下落に伴う財務状況の悪化により投資計画の延期・中止を表明する企業も現れてきており、最終投資決定前の計画段階でプロジェクトの実現性については不透明な状況にある。 こうしたさなか、2016年2月には、米国Sabine Pass LNG基地からのLNGが初出荷され、6月末には拡張パナマ運河も運用が開始された。今後、仕向地制限がない米国産LNGの短期・スポット市場への供給により、これまで以上に、LNG取引における流動性は高まるであろう。 さらに、従来のアジア向けLNGの取引では大半を占めていた石油価格連動のLNG取引からヘンリーハブ(H/H)価格連動等への移行など多様化も予想される。その上、中国・欧州にパイプラインを通じた天然ガス供給を進めるロシアについてはその価格戦略が市場に与える影響も大きく、LNGの市場構造が大きく変わろうとするなか、今後の不確実性要因として目の離せない状況が続く。(田村 康昌)Global Disclaimer(免責事項)本稿は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本稿に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本稿は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本稿に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本稿の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。462016.9 Vol.50 No.5
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2016/09/21 [ 2016年09月号 ] 田村 康昌
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