インドの石油情勢:国内の資源開発動向
レポートID | 1007354 |
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作成日 | 2016-10-21 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | セミナー・報告会資料 4 |
分野 | エネルギー一般探鉱開発 |
著者 | 増野 伊登 |
著者直接入力 | |
年度 | 2016 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | インドの石油情勢:国内の資源開発動向2016年10月20日調査部増野伊登1{日お話しすること1.インドのエネルギー事情の概観2.石油開発の歩み3.主要な上流企業の顔ぶれ4.最近の探鉱・開発動向5.インドの投資環境6.入札ラウンドと契約改定に向けた動き2Cンドのエネルギー事情の概観 現状インドの一次エネルギー消費量と内訳2005年387Mtoe2015年700Mtoe原子力1%水力6%石炭55%石油30%天然ガス8%原子力1%水力4%再エネ2%石炭58%石油28%天然ガス7%出所:BP統計を基に作成?1次エネルギー消費量は年間7億toe*、世界消費量の5.3%。?ロシアを抜いて、中国・米国に次ぐ世界第3位のエネルギー消費国に(日本は年間約4.5億toeで、世界第5位)。?一次エネルギー消費の内訳でみると、依然として石炭が最大のエネルギー供給源。インドは世界有数の石炭埋蔵・生産国であり、石炭需要の8割を国内で調達。*石油換算トン3Cンドのエネルギー事情の概観 見通し国際エネルギー機関(IEA)による見通し?2040年までにインドの経済規模は現状の5倍以上に拡大、世界最大の人口を抱える国に成長?これに伴いエネルギー消費量は2倍増インドの一次エネルギー需要見通し(IEA)Mtoe200018001600140012001000800600400200020002013202020302040出所:IEAIndia Energy Outlook, 2015を基に作成再生可能エネルギー原子力天然ガス石油石炭4Cンドのエネルギー事情の概観 政策環境問題への取り組み?温室効果ガス排出量は中国、米国、ロシアに次いで世界第4位?2030年までにGDP当たりの温室効果ガス排出量を2005年比で33~35%削減するという国別目標案(INDC)を発表?2016年10月2日「パリ協定」を批准、11月上旬にも発効する見通しインドの石炭生産量と国内消費量百万toe生産量消費量出所:BP統計を基に作成5201520132011200920072005200320011999199719951993199119891987198519831981エネルギーミックス?石炭消費量の削減は現実的に困難。一方国内生産量は伸び悩み?化石燃料の輸入依存度を低め、増え続けるエネルギー需要を賄うため、天然ガス、原子力、再生可能エネルギーの比率を高めることが重要課題450400350300250200150100500Cンドのエネルギー事情の概観 政策(続き)石油政策?エネルギー安全保障の強化のため、石油輸入へのさらなる依存は避けるべきとの意向? 伸び悩む国内生産量に対し、国内需要は約5倍? 消費量のおよそ80%(約330万b/d)を輸入に依存? 中東依存率は60%程度(約240万b/d) 供給源の多様化は進まず?2016年9月、Dharmendra Pradhan石油大臣は、2022年までに原油輸入量を10%削減するという目標を発表5004003002001000インドの原油調達先(国別内訳)万b/dその他メキシコベネズエラアンゴラナイジェリアイランイラク中東依存度60%58%59%カタールクウェートUAE2013年度2014年度2015年度サウジアラビア6インドの原油生産量と国内消費量万b/d*コンデンセートを含む生産量消費量5004003002001000出所:BP統計を基に作成20132010200720042001199819951992198919861983198019771974197119681965ホ油開発の歩み 主要な開発地域インドの主要な堆積盆地と開発の進展度合い?インドの石油開発は、以下地域に集中? 成熟油田がある北東部のAssam-Arakanと西部のMumbai Offshore堆積盆? 近年発見があった南東部のKrishna-GodawariOffshoreとCauvery堆積盆、北西部のRajasthanとCambay堆積盆?未探鉱・未開発の地域がまだ残されている。出所:各種情報を基にJOGMEC調査部作成7ホ油開発の歩み 生産動向?インドの原油確認埋蔵量は57億バレル(8億トン)?古くから北東部のアッサム州近辺で小規模生産?現在の主要生産地域は北西部およびムンバイ沖合?フィールドのタイプ別に見ると、浅海油田と陸上油田がインド全体の生産量のおよそ半々を占めるフィールド別の原油生産量推移万b/d80706050403020100深海浅海陸上201020112012201320142015出所:GlobalDataを基に作成8ホ油開発の歩み 生産動向(続き)?1970年代に西岸沖合でムンバイ・ハイ油田発見、本格的生産開始?2009年の北西部ラジャスタン州のマンガラ油田(Cairn、ONGCほか)の生産開始受け、2011年に91万b/dを記録?しかし、ムンバイ沖、アッサム州近辺、そして北西部陸上の成熟油田からの生産量が自然減退、伸び悩みインドの主要な生産地域マンガラ油田インドの原油生産量100万b/d*コンデンセートを含む806040200ムンバイ・ハイ油田ディルバイ・ガス田出所:Directorate General of Hydrocarbonsの公式ウェブサイト(http://www.dghindia.org/?page=home)出所:BP統計を基に作成9蝸vな上流企業の顔ぶれ?石油上流の主要アクターは国営企業。最大の上流事業者ONGCは、付与されている約550鉱区中400弱のオペレーターを務め、その多くで100%権益を保有。?生産規模でもONGCが突出、次がOIL(OilIndia)。2社で全体生産量の約3分の2占める。?国営下流事業者IOC(Indian Oil)、Bharat Petroleum、HindustanIndustriesPetroleum、GAILに加え、民間では、財閥系のRelianceなども上流に参入。?外国石油企業の進出事例は多くないが、英独立系Cairn Energy*の存在感強い。そのほか、生産規模は小さいが、BP、Eni、Shell、BHPBilliton、丸紅など。*2010年、Cairn Energyはインド部門Cairn Indiaの一部株式をVedanta Resourcesに売却。Cairn Indiaは現在同社の子会社。10i参考)インド石油事業に関わる主なアクターインド政府石油・天然ガス省DGH(Directorate General of Hydrocarbons)探鉱・開発下流国有ONGCOILIOCGailBharatHindustan民間・外資RelianceEssarTataCairnBPEniShell民間・外資RelianceEssar国有IOCBharatHindustanGail11ナ近の探鉱・開発動向 油価下落の影響?国内生産量を増加させるため、再開発やEOR(増進回収法)、有望な堆積盆地の周縁地域における探鉱・開発事業が進行中。?しかし、昨今の原油価格下落を受け、Cairn Energyは2015~2016年のCapexを6割削減、バレル当たり55ドルで採算可能な井戸からのみ生産を続行すると発表。?一方、ONGCとOILは投資計画を変更せず。油価低迷によるサービス費用の低下と燃料補助金負担の軽減、これに石油製品価格の自由化の流れも相まって、むしろ追い風に。両社の生産コストはバレル当たり37ドル程度との情報もあり。↑12ナ近の探鉱・開発動向 油価下落の影響(続き)?ONGCのDinesh K Sarraf社長:「油価下落への対応の一つは、商業性が不透明なうちは新規案件に手を出さないということだが、当社は逆の見方をしている」。?インド全体のリグ稼働数で見ると、油価低迷で一時減少したものの、2016年以降は回復基調。インドのリグ稼働数基13513012512011511010510095901234567891011121234567891011121234567891011121234567892013 2016 2014 2015 出所:BakerHughesを基に作成13ナ近の探鉱・開発動向 深海開発?2016年9月30日、ONGCは、南東部沖の深海鉱区KG-DWN-98/2(Krishna-Godawari堆積盆)の開発に、向こう4年間で3,401億2,000万ルピー(約5,200億円)を投資すると発表。?2006年にインド深海域では初めて原油が発見されたD6(KG-DWN-98/3)鉱区(RelianceとBP)に隣接。?開発対象は水深300~3,200メートルの「クラスター2」。原油埋蔵量6.9億バレル、ガス埋蔵量519億8,000万m3。?ガスは2019年6月、原油は2020年3月に生産開始予定。ピーク生産量は、原油7万7,305b/d、ガス1,275万m3/d。出所:各種情報を基にJOGMEC調査部作成14ナ近の探鉱・開発動向 深海開発(続き)?今後深海域での探鉱・開発がさらに活発化することが期待されており、IEAは、深海油田の生産量が2040年にかけて徐々に拡大していくと予測。IEAによるインドの石油生産見通し深海浅海陸上出所:India Energy Outlook, IEA 201515痩c企業による対外上流投資動向?変動する油価から国内の石油産業を保護するため、インド政府は自国企業に対し供給源の多様化と自主開発原油の強化を奨励⇒国営企業による外国の上流資産や石油企業株式の買収が活発化インド石油企業による最近の対外上流投資動向買収時期買収元買収対象上流資産買収2013年2013年ONGC等ONGC企業買収2015年2016年2016年ONGCOilIndia等OilIndia等Videocon(印)モザンビーク資産(10%)Anadarko(米)モザンビーク資産(10%)Rosnef子会社Vankorneft株式15%Rosneft子会社Vankorneft株式23.9%Rosneft子会社Taas-Yuryakh-Neftegazdobycha株式29.9%出所:報道などを基に作成16Cンドの投資環境これまでの経済開放政策?1991年の経済危機~閉鎖的な経済政策からの脱却⇒現在では主要セクターのほとんどで外資の参入が可能に?マンモハン・シン前政権期経済の抜本的な立て直しのため、より、外国からの直接投資(FDI)に対する規制緩和を徐々に進めている(通信分野の出資上限を74%から100%に引き上げ)。?モディ政権誕生(2014年)以降「モディノミクス」:海外からの投資促進、インフラ整備や雇用拡大で経済活性化目指す⇒外資規制の追加緩和にも期待高まるしかし、注目度は高いが課題も多い・・・・17Cンドの投資環境経済開放に向けた課題?外資規制のほか、電力不足、用地取得、人材確保など、さらなる規制緩和と法整備を必要とする事案多い。?連邦政府と地方行政(州政府)の足並みが揃わないことも問題(農地収容をめぐる政令の改正は2015年に頓挫)。インドの行政区分上流への外資参入度合いが低い背景?石油産業に対する政府の統制(例:入札ラウンドにおける不透明性)?インフラの未整備、煩雑な税制・規制、時間を要する許認可プロセス外資にとっては必ずしも進出しやすい国とは言えない出所:各種情報を基にJOGMEC調査部作成18纓ャセクターの改革に向けた歩み増産に向け、上流分野における政府主導の改革が徐々に進行中出所:Directorate General of Hydrocarbonsの公式ウェブサイト(http://www.dghindia.org/?page=home)19J入札制度NELPの導入:1999年~?1999年、公開入札による探鉱鉱区付LicensingExploration与制度NewPolicy(NELP)を導入NELPに基づいて付与された鉱区⇒国営と民間(外資含む)による平等な上流参入機会の構築へ?外資出資比率は最大100%まで可能に?計9回の入札を実施しかし、実際にはほぼインド国営による占有状態が続く出所:Directorate General of Hydrocarbonsの公式ウェブサイト(http://www.dghindia.org/?page=home)20ELPの問題点NELPの問題点?在来型資源のみが対象? 炭素メタン(CBM)、シェール、ガス・ハイドレートなどの非在来型にはそれぞれに異なる法制度が存在、手続きが面倒?回収コスト額をめぐる企業・政府間の対立? 生産物分与契約(PSC)を採用コントラクター(企業)は、コスト回収後、落札時に提示した比率に基づき政府と収益を分配。?しかし、回収するコスト額の正確性をめぐってしばしば対立、多くのプロジェクトが遅延?技術的に困難な鉱区に対するインセンティブが不足? ロイヤルティー算出において、浅海と深海・大水深を区別せず。よりリスクの高い鉱区に対するインセンティブなし21Vしい入札制度(HELP)の導入計画2016年3月、インド政府はHydrocarbon Exploration Licensing Policy(HELP)の導入を検討していることを発表。HELPの概要?ライセンスの単一化在来型・非在来型資源を単一ライセンス制度の下で付与?PSCからRevenueSharingContract(RSC)への移行?OpenAcreageLicensingPolicy(OALP)の導入政府による入札ラウンド実施の発表を待つ必要なし?探鉱期間の延長陸上鉱区は7年から8年に、洋上鉱区は8年から10年に延長?ロイヤルティの変更浅海鉱区10%⇒7.5%。深海・大水深鉱区は、契約締結から7年間免除、以降は深海5%、大水深2%?国内におけるガス販売および価格設定を自由化22ELPの問題点と今後の流れHELPの問題点?コスト回収の不透明性?PSCからRSCへの移行により、生産開始からすぐに収益の分配が開始されることに。? コスト回収額をめぐる企業・政府間の係争は避けられる一方、企業にとっては投下した探鉱コスト回収の不透明性が増加? 結局は新たな対立の火種になるのでは・・・との懸念?生産物の販売価格自由化の実現可能性? これまで同様の契約改定をほのめかしつつ実際には実行に移されなかった経緯あり。インド政府として、市場の自由化をどこまで本気で進められるか。今後の流れ?HELP導入後初の入札ラウンド実施は2017年の初め頃を予定23ャ規模油・ガス田(DSF)入札ラウンド?インド政府は、2016年5月25日、Discovered Small Fields(DSF)と称する小規模油・ガス田の入札ラウンドの開始を発表。?国営によって石油・ガスが発見されたが、地理的・技術的制約、政府の価格統制ゆえ商業性得られず開発段階に至らなかった鉱区が対象。?9つの堆積盆地に位置する46鉱区(67の油・ガス田)。陸上、浅海、深海域にまたがる総面積1,500?超の原始埋蔵量は6.25億boe(石油換算バレル)。DSF入札ラウンドの対象鉱区の概要出所:PWC24SF入札ラウンドの対象鉱区一覧出所:Directorate General of Hydrocarbonsの公式ウェブサイト(http://www.dghindia.org/?page=home)25SF入札ラウンドの詳細?2016年6月から8月末にかけ、ムンバイ、ヒューストン、カルガリー、シンガポール、ロンドン、ドバイなど7都市でロードショー実施。?DSFはHELPの前哨戦として位置付けられ、一部HELPと同様のイPSCからRSCへの移行ンセンティブが設けられている。? ライセンスの単一化?? 国営石油会社の参加義務およびキャリード・インタレストなし? 技術的知見に関する前提条件や作業義務なし? 契約期間中の探鉱活動に対する制約なし? ロイヤルティー:陸上鉱区では原油12.5%、ガス10%、浅海では、原油・ガスともに10%、深海鉱区では、原油・ガスともに最初の7年間5%、以降10%? 石油開発に要する物品・サービスに対しては関税免除? 生産物の販売および価格設定の自由化。ただし、石油は国内26販売に限るSFの注目ポイント?生産物の販売と価格設定の自由化は注目に値。しかし、実際に実行に移されるかが鍵。?税制が改善されたことを受け、ONGCもOILも応札に意欲。?一方、資源価格が低迷する今、外国企業DSF入札ラウンドの日程(2016年5月25日時点)の反応は芳しくないとの予測も。?2019年の総選挙までは様子見の傾向が続くことも想定され、国営企業がほとんどの鉱区を落札するとの見方あり。?DSF入札ラウンドは、2016年10月31日に入札が締め切られ、2か月以内に鉱区が付与される予定。出所:Directorate General of Hydrocarbonsの公式ウェブサイト(http://www.dghindia.org/?page=home)27ワとめ?エネルギー安全保障強化の観点から、石油輸入への依存度を低下させることがインド政府の目標。そのため、自然減退を食い止め、国内生産を強化させることが課題。?探鉱・開発面では、油価低迷にもかかわらず、インド国営は上流戦略を変更せず。油価下落によるサービス費用の低下と燃料補助金負担の軽減がむしろ追い風に。?一方、インドの投資環境面では、国内石油産業に対する政府統制、インフラの未整備、煩雑な税制・規制などが問題。2014年のモディ政権誕生以降、徐々にビジネス環境の整備が進められているが、外資にとっては必ずしも進出しやすい国とは言えない。?インドは、上流改革の一環として、新しい入札制度の導入を検討中。2016年5月には小規模油・ガス田の入札ラウンドが開始。しかし、契約改定の実現可能性に疑問。油価低迷の中でどれだけ外国企業を惹きつけることができるかが注目される。28 |
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