ページ番号1000366 更新日 平成30年2月16日
- 英語表記
- oil program
- 分野
- その他
John M.King of Denver 社が小口公募に道を開いた 1967 年以降、米国においては、石油鉱業に精通している専門の管理会社が、石油鉱業以外の零細な民間資金(個人または法人)を公募し、その資金を公募で約束した石油探鉱、油田買収、石油開発の諸事業に投入することが一般的に行われている。この場合、これが応募者の直接投資として、投資シェアに応じて個々の応募者の所得税計算において石油投資の恩典が受けられる形になっている。管理会社は公募に際して特別の投資計画を示すとともに、請負者として当該計画の操業に直接または間接に関与する。このような投資形態を総称してオイル・プログラムという。
事業の内容が、探鉱事業の場合はドリリング・ファンド(drilling fund)、開発事業の場合はディベロップメント・ファンド(development fund)、油田買収の場合はオイル・インカム・プログラムという。探鉱・開発事業混合の探鉱/開発均衡プログラム(balanced exploration / development program)もある。もっとも、ドリリング・ファンドといっても、管理会社が公募の際に約束した範囲内で、公募資金を探鉱有望鉱区へ 70 %、開発有望鉱区へ 20 %、油田買収へ 10 %投資することがあるので、上記の分類は文字どおりの厳しい区分ではない。このように、オイル・プログラムはいくつものタイプがあり、調達資金規模も 10 千ドルから 30 百万ドルを上回るものまでさまざまであるが、一般投資家の投資動機からみると、対照的な二つのタイプに区分される。第一は、ドリリング・ファンドに代表されるもので、投資リスクが極めて高いプログラムである。この場合、投資家が期待しているのは、リターンの多寡よりも、むしろ税法上の特典の享受である。投資家は、このプログラムを通じて、税法上の特典である無形掘削費や定率の減価償却費の経費扱いにより、投資のしばしば約 70 %を、自らの所得計算上の経費に算入し、所得税の軽減を図ることができる。このため、累進課税に悩む高額所得の投資家ほど、この恩典を享受できるので、オイル・プログラムの最良の顧客となる。第二は、オイル・インカム・プログラムに代表されるもので、投資リスクが少ないプログラムである。この場合、税法上では、機器の減価償却や油田の埋蔵量の減少に対し、所得の 50 %までの所得控除を 10 年以上にわたって受けられるものの、掘削・開発費用に対する税控除が既に済んでいるので、ドリリング・ファンドほどの魅力はない。しかし、その代わり、既に油・ガスを産出しているので、投資のリターンが期待できる。したがって、一般投資家がこの種のプログラムへ投資する場合は、債券市場や金融資本市場のリターンに比べて、魅力があるか否かが問題となる。既往の事例では、他の投資機会が利率 8 ~ 10 %のとき、このプログラムの利率は 12 ~ 14 %であった。ドリリング・ファンドタイプのプログラム(油田買い取りを除くプログラム)の売り上げは、1981 年に約 2,000 百万ドルに達したが、同年の税法改正で最高税率が 50 %になってから、毎年売上高は減少し、1984 年では 432 百万ドルにまで減少した。他方、オイル・インカム・プログラムの売り上げは毎年変動があるが、1984 年では、前年より 44 %下落して 102.7 百万ドルであった。オイル・インカム・プログラムの人気は、他の投資機会の動向だけでなく、プログラム自身のリターン動向にも左右される。リスクが少ないとはいえ、埋蔵量が縮少し生産量が低下したり、原油価格が下落したり、または開発資金の不足を借入金で賄った場合はその金利負担が、期待リターンを圧迫することが起きる。したがって、オイル・インカム・プログラムといえども、リスク投資(venture capital)であることに変わりはない。