ページ番号1000386 更新日 平成30年2月16日

オリノコタールおりのこたーる
英語表記
Orinoco tar
同義語
オリノコヘビーオイル [ おりのこへびーおいる ]
分野
その他

ベネズエラのオリノコ川北岸、約 5 万 km2の広大な地域に帯状に賦存する超重質油。
オリノコタール(ウルトラヘビーオイル)は、カナダのオイルサンド(オイルサンド参照)とともに、非在来型石油資源のなかでは、超重質油または天然ビチューメンと呼ばれている。超重質油、天然ビチューメンの定義は国や機関によって一律ではないが、世界石油会議 WPC(World Petroleum Congress)の定義に従うと、API 比重が 10 度以下で、粘性が 10,000 センチポアズ(Cp)以下のものを超重質油、10,000 Cp 以上のものを天然ビチューメンと呼んでいる。成因的には、地下深部で生成された油が移動する途中、または貯留岩に移動集積した後に、軽質分、揮発分が失われ重質化したものである。
ベネズエラのウルトラヘビーオイルの資源量については、原始量で 1.2 兆バレル、そのうち将来的に開発可能なものが 2,600 ~ 2,700 億バレルといわれており、ほぼ同量あるといわれているカナダのオイルサンドとともに、サウジアラビアの通常原油埋蔵量にほぼ匹敵する量である。
ベネズエラのウルトラヘビーオイルとカナダのオイルサンドとの性状比較では、同一条件(圧力、温度等)のもとでは大差ない。しかしながら産状の違いから、その開発様式が大きく異なる。カナダのオイルサンド鉱床は北緯 50 度以北の亜寒帯~寒帯地域、地表~地下 500m に鉱床が発達しているため、油層はビチューメン化し固化している。そのため、深度の浅い地域では露天掘り、200m 以深では油層にスチームを送り熱を加え流動化させて開発している。これに対しベネズエラのウルトラヘビーオイルは、オリノコ川北岸の熱帯サバンナ地域、地下 600 ~ 1,000m の深度に鉱床が発達しているため、本来の粘性は通常原油より高いが、油層においては流動化している。そのため現在稼動しているプロジェクトではポンピングによる汲み上げ方式によって開発している。
地表に汲み上げられたオリノコヘビーオイルは、通常の原油と比較して比重が重い上、硫黄分、重金属を多量に含むため、通常の製油所では精製できない。そのため改質(アップグレード)工程で軽質化、脱硫、脱重金属化したうえで、合成原油としてマーケットに出される。改質手法は大きく分けて、熱分解法(炭素除去法)と水素化添加法の 2 種類がある。熱分解法は水素化添加法と比較してコスト的には安価であるが、軽質分からなる合成原油の他にペトロコークスが副産物としてでき、その処理と有効利用が問題になっている。これに対し水素化添加法はペトロコークスを副産物として産出しないのが利点であるが、水素添加装置建設コストが大きいという難点がある。
地下から汲み出されたベネズエラのウルトラヘビーオイルは、このほか、水と界面活性剤を加えた上で発電用の燃料(商品名はオリマルジョン)としてもマーケットに出されている。
(阿久津 亨、2006年3月)