ページ番号1000433 更新日 平成30年2月16日

海洋プラットフォームかいようぷらっとふぉーむ
英語表記
offshore platform
分野
その他

海洋において生産もしくは掘削および生産の両方の作業を実施するための土台となる海洋構造物類を海洋プラットフォームと称する。掘削専用のものは海洋掘削装置と称され、別途説明されている。海洋プラットフォームを機能的に分類すると、坑井保護、居住、生産処理、掘削および生産、貯油など、その目的は多岐にわたっている。型式的に分類すれば次の 5 型式となる。
(1) 固定式プラットフォーム(fixed type platform):現在世界各地の海洋で最も一般的に用いられている型式で、水深 300m 程度(最大312m)まで設置実績がある。この型式のプラットフォームは、鋼管類で溶接・組み立てられたジャケットをパイルで海底面に固定し、その上部にデッキ・コラムと称する構造物を設置し、さらにその上に生産処理施設、掘削施設、居住施設などの必要諸施設類を搭載する。これらの搭載施設は、その種類ごとにあらかじめコンパクトに組み立てられ、簡単にプラットフォームに据え付けられるように製作されており、モジュールと呼ばれる。プラットフォームはその用途に従っていろいろなモジュールを搭載することになる。なかでも掘削施設、生産処理施設、居住施設および関連施設すべてを搭載したプラットフォームを全搭載式プラットフォームと称することもある。また単に生産井・圧入井の保護用プラットフォームはウェルヘッド・ジャケットと称することが多い。固定式プラットフォームはジャケットの組み立て設置を必要とするので、技術的には水深約 600m 、経済的には水深約 300m が一応の限界とされている。
(2) 浮遊式プラットフォーム(floating type platform):中小規模海洋油田の開発や大規模油田における開発までのリードタイムを短縮し、早期生産開始を図るなどの、主として経済的理由により、最近、世界各地で使用実績が増している型式のプラットフォームである。この型式は、生産処理施設並びに関連施設を既存のタンカーやジャッキアップ式、セミサブ式の海洋掘削リグを改造して搭載したもので(この目的のために新造することもある)、他のフィールドへ移動し、再利用が可能である。なお、最近ドリル・シップに生産処理施設を搭載し、貯油能力を付加したような1坑井用プラットフォーム SWOPS(single well oil production system)がマージナル油田用に提案され、開発されつつある。SWOPS はマージナル油田以外に、長期プロダクション・テストにも活用は可能であり、一定量の油を生産すると一時的に生産を中止し、最寄りの基地に油を移送する。
(3) 重力式プラットフォーム(gravity type platform):設置すべき海洋構造物の重量により、海底面に構造物を固定する型式のプラットフォームで、コンクリート製と鋼製の 2 種類がある。この型式のものは、海底地盤が強固で安定し、かつ均質であることが設置の大きな条件となっている。北海、ボンベイ沖などで実績はあるが、固定式プラットフォームと比較し、貯油施設が設置しやすい、建造コストが安いなどの利点はあるものの、プラットフォーム建造場所、設置海域、海底地盤にいろいろな制約があるため、あまり一般的ではない。
(4) 人工島(man‐made island、artificial island):氷海域を始めとする特殊環境下の海域で用いられる型式のプラットフォームで、土砂を利用して人工的な島(グラベルアイランドとも称される)を築き、掘削、生産処理、居住区などの諸施設を設置したものである。これには土砂を盛って陸地を構築する方式(ロックフィル方式)と大きな鋼製ケーソンを着底させ、その内部を土砂などで充てんする方式(ケーソン方式)とに分けられる。この型式は特殊であるため北極海のボーフォート湾、カリフォルニア沖などに見られるのみである。
(5) 揺動式プラットフォーム(flexible type platform):固定式プラットフォームの持つ技術的、経済的限界をカバーし、大水深においても対応できるように開発された型式で、固定式プラットフォームと違いジャケットに相当する部分で海洋構造物に加わる外力を吸収するのでなく、別の手段で外力を吸収する方式である。この型式は現在、以下の 2 方式が開発されている。(i) ガイド・タワー・プラットフォーム(guyed tower platform):ジャケットと張り綱により外力および構造物の荷重を支えるプラットフォームで、このジャケットに相当する部分をガイド・タワーと称し、固定式プラットフォームと異なり、掘削、生産用機材の荷重はガイド・タワーで支持し、波浪などによる横荷重は張り綱により支持される。(ii) テンション・レグ・プラットフォーム(tension leg platform、TLP):大水深の海域用の生産プラットフォームの一種であり、生産設備を搭載した半潜水型プラットフォームを、海底の固定基礎と結んだ数本のテンション・レグ(鋼製パイプまたはワイヤー)により固定する。プラットフォームの動揺を抑えるため、プラットフォームに浮力を持たせ、それを海底に固定されたテンション・レグの張力により保持する。建造費が水深の影響をあまり受けないため、固定式プラットフォームに代わる大水深用生産プラットフォームの有力な方式の一つである。実油田への適用例としては、Conoco 社により北海ハットン油田で採用されており、1984 年 8 月から生産を行っている。上記 2 方式は、各々プロトタイプのプラットフォームが1基稼働しているのみで、多分に実験的性格が強く、まだ完成されたものではないが、今後の大水深用プラットフォームとして非常に注目を集めている。

図 テンション・レグ・プラットフォーム