ページ番号1000490 更新日 平成30年2月16日
- 英語表記
- gas to liquid
- 略語
- GTL [ gtl ]
- 分野
- 製品
天然ガスの主成分である炭素1個のメタンガス(CH4)を出発原料として、それを重合する技術、および、主として、それにより製造される各種の液体燃料、化学製品。
GTLに期待される役割としては、減退する原油に代わる炭化水素原材料、清浄なエンジン用燃料、およびパイプライン、LNGに代わる天然ガスの輸送、貯蔵手段の3分野がある。
GTLとは、広義には、間接法と呼ばれる工程で、メタンガスをまず改質して合成ガス(一酸化炭素COと水素H2)とし、これを出発点として、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルエーテル(DME)、さらには炭素数5個以上の炭化水素であるオレフィンを製造する方法の全体を指す。一方、狭義のGTLとは、天然ガスを合成ガスに転換し、FT法(後述、および別項参照)を用いて灯軽油等に転換するプロセス、技術を指す。狭義のGTLの製品として代表的なものは、炭素数5~8個のガソリン、8~十数個のディーゼル油、およびさらに炭素数の多いパラフィン類、ワックスである。なお、これ以降は、狭義のGTLの説明とする。
GTLプロセスのうち、合成ガスから灯軽油等に転換する技術は1920年代、当時世界の石炭化学の中心地であったドイツで開発されたもので、天然ガスでは無く石炭から製造した水性ガス(COとH2)を原料に、液体の炭化水素燃料を合成するものであった。この合成ガスから灯軽油等に転換する技術は、開発者のフィッシャー(Fischer)とトロプシュ(Tropsch)の頭文字をとって、FT法と呼ばれる。
GTLプラントは、1992年に、MossGas社(現在のPetroSA社)による南アフリカMossel湾の天然ガスを原料としたものが最初である。次いで、1993年Shellにより、マレーシアサラワクの天然ガスを使ったプラントが稼動した。これらは、商業的な利益を目的としない特殊条件でのプロジェクト(南アフリカのプロジェクトは人種隔離政策に対する対抗措置としての石油輸入制限という状況、マレーシアのプロジェクトは実証プラントという位置づけ)という意味で、第一世代のプロジェクトといわれる。その後、技術が実証され、プラントコストも比較的安価になったことから、2000年代には、商業利益を追求する第二世代のプロジェクトの時代に入った。この第二世代のプロジェクトは、莫大な埋蔵量があり、インフラも整い、原料ガス価も安いカタールを中心に展開されている。2007年には、南アフリカSasol社による3.4万bbl/dayの生産能力を持つプラントが稼動し始めた。また、同じくカタールにて、Shell社が、2010年稼動開始の予定で、14万bbl/dayの生産能力を持つプラントを建設中である。
一方、研究開発も盛んに行われている。わが国では、JOGMECと民間企業6社が設立した、日本GTL技術研究組合が、新潟県に500bbl/dayの実証プラントを建設し、2009年よりプラント運転開始を計画している。
(森島 宏、2009年4月)