ページ番号1000505 更新日 平成30年2月16日
- 英語表記
- Gazprom
- 分野
- 企業
1989年に旧ソ連邦ガス工業を改組して、その機能を引き継ぐ形で設立された国家ガスコンツェルン。
1993年に株式会社化された。 ロシア国内において天然ガスの探鉱、開発、生産、国内輸送、輸出、国内販売(卸売りの段階まで)事業を展開するロシア最大級の企業であるとともに、世界最大のガス生産企業(従業員数は約32万人)である。ロシア国内に約70社、そして、欧州には現地企業との合弁でガス輸送・販売子会社を約20社保有している。
2005年時点でガスプロムがロシア国内で探鉱権を保有する天然ガスの確認埋蔵量は28兆6,200億立米で世界全体の約17%に相当する。また、ガスプロムの2005年の天然ガス生産量は5,479億立米(前年比0.5%増)でロシア全体の89%に相当する。ガスプロムは2010年までは天然ガス生産量を5,500億から5,600億立米の水準に維持し、2020年には5,800億から5,900億立米、そして、2030年までには6,100億から6,300億立米まで増加させる計画である。
ガスプロムはロシア国内で生産した天然ガスの約2割を欧州向けに輸出して全売上額の約6割を稼ぎ出しているが、国内向けには同6割をロシアへ供給しているものの全売上額の約3割を稼ぎ出しているにすぎない(ロシア国内向けのガス供給価格が連邦料金庁による規制によって欧州向けガス輸出価格の数分の一の水準に抑制されていることがその理由である)。欧州向けのガス輸出はガスプロムにとって経営の最重要課題であるため、2005年12月、ガスプロムはバルト海海底を経由するドイツ向けの“Nord Stream”,旧名北欧ガスパイプライン(North European Gas Pipeline)の建設を開始した。同パイプラインはガスプロムにとって既存のベラルーシおよびウクライナというパイプライン通過国を迂回できる利点がある。
この他、ガスプロムは天然ガス輸出先の多様化を長期的な経営課題として取り上げている。第一に、現在は探鉱・開発があまり進んでいない東シベリア・極東での新規ガス田開発と北東アジア向けのパイプラインによる天然ガス輸出プロジェクトである。第二はLNG(Liquified Natural Gas:液化天然ガス)輸出プロジェクトで、バレンツ海沖合のシュトックマン・ガス田を開発し、欧米向けにLNGを輸出する構想を持っている。
ガスプロムは、チェルノムイルジン(在任期間1989年8月~1992年5月、後にロシア連邦首相に就任)、ビャヒレフ(在任期間1992年5月~2001年5月)という大物社長が二代続き、エリツイン前政権時代には「国家の中の国家」と言われる程の存在感を示したが、プーチン大統領は2001年5月に自分の腹心であるミレルをガスプロムの社長に就任させた。2005年5月には株式の50%超を政府保有とし、2006年1月までに残りの株式を完全自由化させた。
(小森 吾一、2007年3月)