ページ番号1001319 更新日 平成30年2月16日
- 英語表記
- Natural Gas Hydrate
- 略語
- NGH
- 分野
- 製品
〔1〕天然ガスハイドレート
天然ガスハイドレートは、水分子と天然ガス分子からなる物質で、水分子が作る立体網状構造の内部に天然ガス分子が取り込まれた包接水和物である。
特に、人工的に製造された天然ガスハイドレートは、日本の周辺海域に天然資源として存在するメタンハイドレートと区別して、NGH(Natural Gas Hydrate)と呼ばれる。
NGHは、メタンハイドレートと同じく、NGH1m3当たり160m3~170m3の天然ガスを包蔵できる。
メタンハイドレートそのものは、古くから海底ガスパイプラインを閉塞させる物質として良く知られていたが、1991年、ハイドレートに「自己保存効果(氷点下の比較的緩やかな温度で安定してガスを包蔵する現象)」を持つことが発見され、それ以降、ハイドレートの工業利用の研究が続けられている。特に、製造や輸送時の取り扱いが穏やかなため、新たな天然ガスの輸送・貯蔵媒体として期待されている。
〔2〕NGHによる天然ガスの輸送
天然ガスの海上輸送手段には、現在、液化(LNG)や圧縮(CNG)の方法があるが、新たな手段としてハイドレート(NGH)化する研究が進んでいる。
NGHは、輸送時の貨物取り扱いが、大気圧で温度-20℃程度と穏やかなため、初期投資が抑えられると期待され、中小ガス田の開発手法として注目されている。ガスの輸送量は、LNGがガスを、体積比600/1、に圧縮できるのに対し、NGHは周囲の水分子のため、圧縮率は、160~170/1、である。このため、LNGが大量、長距離のガス輸送に適するのに対し、NGHは中規模、中距離のガス輸送に適すると考えられている。また、LNGは液体であるのに対し、NGHは固体であるため、貨物のハンドリングが検討課題と考えられている。
しかしながら、NGHがターゲットとする、中小ガス田と呼ばれるガス田は、世界のガス田の、数で80%、埋蔵量でも40%に達すると言われており、特に東南アジア、オセアニアに多いことから、日本などがNGH輸送に期待している。
〔3〕NGHの自己保存性
ハイドレートは、通常、常温、常圧では存在しない。NGHも、安定して存在するためには、大気圧で、マイナス80度C以下、氷点(0度C)では、3Mp以上の圧力が必要である。しかしながら、ハイドレートには、本来は分解する領域の中にあっても、ある特異条件下では、分解が非常に遅くなる現象が存在する。このことをハイドレートの自己保存効果と呼んでいる。NGHもこの自己保存効果を有しており、NGH輸送はこの効果を利用して輸送する。自己保存効果のメカニズムは、まだ完全には解明されていないが、ある企業では、この効果の発現域が大気圧下ではマイナス20度C付近にあると発表している。
〔4〕NGHペレット
NGHは、製造された時は、白い粉体である。粉体のままでは取り扱いにくいため、輸送、貯蔵には、NGH粉末をペレットに加工することが考えられている。また、ペレット化することにより、先に述べた自己保存性能が向上することも期待されている。
下図は粉状NGHとペレット化したNGHの分解ガスの発生量の計測結果である。
〔5〕NGHの再ガス化
NGHは、需要地においてガスに戻される。再ガス化は製造とは逆にNGHに熱を加えることで行われる。再ガス化後は、元の天然ガスと冷熱を持つ清水に分解する。また、再ガス化は平衡曲線に沿って行われるので、ガス化温度を選び、密閉状態でガス化を行えば、NGHから直接高圧ガスを得ることも可能である。
(高沖 達也、2008年12月)