ページ番号1001453 更新日 平成30年2月16日

ノッキングのっきんぐ
英語表記
knocking
分野
その他

自動車や航空機に使用されるガソリン・エンジンは電気着火式エンジンであるが、このエンジンの燃焼工程において、ピストンがシリンダーの上死点に到着する前に、ガソリン―空気の混合気の自然発火(異常燃焼)が起こり、急激な圧力上昇を起こすために、上昇中のピストン・ヘッドを燃焼ガスの爆発圧力が激しくたたく現象をノッキングという。
これにより燃焼は不完全、不規則になり、出力は低下し、この現象が連続すると、ついにはピストンやバルブなどを焼損する。そこで燃料にとってはノッキングを起こさずに正常燃焼する燃焼性が重要な性質となるわけで、燃料のノッキングに対する耐爆性(熱的安定性)をアンチノック性という。
ノッキングは、エンジンの構造、性能が重要な影響を及ぼすが、同一エンジンでも、点火時期を遅らせる、混合気を濃くする、沈積カーボンを除去するなどによってノッキングを避けることができる。また燃料面からはエンジンに適合したアンチノック性を有することが必要となる。ガソリンのアンチノック性を表す指数をオクタン価といい、これは燃料の成分である炭化水素の化学構造と関係があり、一般に側鎖の多いパラフィン系炭化水素や芳香族炭化水素が最も高く、直鎖状の正パラフィン炭化水素が最も低い。ディーゼル・エンジンの燃焼方法は、ガソリン・エンジンとは異なり、圧縮着火式で、シリンダー内において圧縮された高温高圧の吸入空気中に燃料噴射器によって燃料を噴霧状に噴射し、圧縮熱による自然発火により燃料を燃焼させる機構になっている。しかし、噴射された燃料はすぐ着火するのではなく、着火するまでにある時間がかかる。一般的に燃料を噴射してから着火するまでの時間を「着火遅れ」と呼んでいる。そこで、この燃焼過程において、着火遅れが大きすぎると、その後の燃焼に異状をきたし、エンジン振動と特有の騒音を生じる。この現象をディーゼル・ノックという。着火遅れはエンジンの構造、運転条件などにもよるが、燃料の着火性と深い関係があり、着火性はその成分組成に左右される。すなわち、成分的には、熱的に比較的不安定な正パラフィン炭化水素を含む燃料が最も着火性がよく、ついでオレフィン系、ナフテン系、イソパラフィン系、芳香族の順に悪くなる。一般に直留軽油は、正パラフィンやナフテンを多く含み、イソパラフィンや芳香族が少なく、分解軽油は逆にイソパラフィンや芳香族を多く含んでいるので、着火性は直留軽油のディーゼル燃料の方が分解軽油のそれよりもすぐれている。なお、ディーゼル燃料の着火性を評価する尺度としてセタン価なる数値が用いられる。セタン価は高速ディーゼル・エンジンの燃料油で 40 ~ 60 、重油を燃料とする低速ディーゼル・エンジンで 25 程度で十分である。