ページ番号1001474 更新日 平成30年2月16日

排油機構はいゆきこう
英語表記
drive mechanism
分野
その他

石油が地表に生産される過程は、石油が油層内を流動して坑井に排出される過程(排油)と、坑井内を流れ地表に達する過程(リフティング)の二つに分けて考えることができるが、このうち前者にあたる、油層内において油を坑井に向かって持続的に流動させる機構を排油機構という。
この原動力となる排油エネルギーの種類とその作用の仕方によって、排油機構は次のような幾つかの型に分類される。
(1) 溶解ガス押し型(solution gas drive):油層圧が油の飽和圧力以下に低下したとき、油に溶解していたガスが遊離し、この膨張エネルギーにより排泄が行われるもの。この型では油層圧の低下が相対的に急速であり、これに伴い油層内でガスが分離・流動し始めるとガス・油比が急激に上昇する。そのままでは採収率が低いので、二次採取法の適用が肝要である。
(2) 油膨張押し型(depletion drive, oil expansion drive):油層圧が油の飽和圧力に達するまでの油自体の膨張エネルギーにより排油が行われるもの。枯渇押し型ということもある。油の膨張率はガスのそれに比べて小さいため、生産の全過程のうち、この機構による排油量は相対的に小さい。
(3) ガス・キャップ押し型(gas-cap drive):油層上部にガスが油と接してガス・キャップとして存在しており、その膨張エネルギーにより排油が行われるもの。この型では生産に伴う油層圧低下は緩やかであるが、ガス・キャップに近い坑井はガス・油比が上昇し、産油レートは低下するようになる。
(4) 水押し型(water drive):油層圧の低下に伴い、油層下部または周縁部に存在する水層から水が油層内に浸入することにより排油が行われるもので、油水界面が油層底部全体にわたる底水型(bottom water drive)と構造翼部のみにある場合の端水型(edge water drive)とに分けられる。この型では油層圧の低下は最もゆっくりしており、採収率は高い。
(5) 重力押し型(gravity drive, segrega tion drive):溶解ガス押し型の特殊ケースである。油層圧の低下につれて油から分離したガスが、垂直方向の浸透率が大きい、油層の傾斜角度が大きいなどの条件によって、ガス・油の比重差によって油層上部に上昇・集積し、油は逆に油層下部に下降し、二次的にできたガス・キャップ・ガスの膨張エネルギーにより下部の油を効果的に押し出すもの。
実際の油層では、以上の排油機構が組み合わさっている例(混合押し型と表現することもある)が多いが、油層の特徴を表すには卓越的な排油機構で代表させるのが一般的である。排油機構を把握することは、油田開発計画の策定(水・ガス圧入の必要性の有無、坑井数・位置、生産レートなど)を行ううえで重要である。油田の生産挙動は排油機構に応じて特徴的であるとともに、究極採収率に大きく影響する。排油機構の各形式に対し、一般に以下の究極採収率が見込まれる。

・溶解ガス押し型:12 ~ 25 %, 平均 18 %
・油膨張押し型:2 ~ 5 %, 平均 3 %
・ガス・キャップ押し型:20 ~ 40 %, 平均 30 %
・水押し型-端水型:35 ~ 60 %, 平均 45 %
・水押し型-底水型:20 ~ 40 %, 平均 30 %
・重力押し型:50 ~ 70 %, 平均 60 %