ページ番号1001491 更新日 平成30年2月16日

反射法地震探査はんしゃほうじしんたんさ
英語表記
seismic reflection method / seismic reflection survey
同義語
反射法 [ はんしゃほう ] 音波探査 [ おんぱたんさ ]
分野
その他

人工震源により弾性波を発生させ地表あるいは水中の受振器で観測し、この観測記録からデータ処理により反射波を抽出し、反射記録断面を作成して、構造形態だけでなく物性をも推定できる調査法。
油・ガスの探鉱・開発において、坑井データ(検層データ、坑井地質データ、VSP等)と組み合わせることにより、広域の構造と物性を詳細に把握できる最も効果的な物理探査手法である。昔は構造形態の把握のみに使用されていたが、最近では、高精度の速度情報、波形や振幅情報を用いたAVO解析、坑井データを用いたインバージョン等による物性値の推定や、これらのデータも用いた層位学的な解釈も行われている。ハードウェアとソフトウェアの急速な技術開発により、3次元探査に代表されるように、大量のデータ取得が可能となっただけでなく分解能やイメージング精度も著しく向上した。探査は、データ取得、データ処理・解析、地質解釈の三つのパートに分けられる。
データ取得作業は、地表(海上)において弾性波エネルギーを発生させる震源、地表(海上)において反射を検知するための受振器(小型の地震計)、受振器で取得された波形を記録するための探鉱機(記録装置)によって行われる。陸上調査における震源は、爆薬(主にダイナマイト)と非爆薬震源であるバイブレータが主として用いられる。受振器は小型の速度型ジオホンが用いられる。一方、海上調査においては、圧搾した空気を海中で一気に放出することにより弾性波を発生させるエアガンが震源として主に用いられる。受振器はハイドロホン(圧電素子)がケーブル内に装備されたストリーマー・ケーブル(長さ数km以上)を使用し、調査船から曳航して用いられる。浅海域では海底に固定した受振システム(海底ケーブル等)が用いられる。探鉱機は、従来はアナログの伝送ケーブルを受振器から探鉱機までつなぎ、探鉱機側で受振器のアナログ波形をA/D変換をするシステムが用いられていたが、現在では、受振器近傍に設置した装置でA/D変換を行い、A/D変換装置から探鉱機まではデジタル伝送を行うデジタルテレメトリーシステムによる探鉱機が主流となっている。
海域において、比較的浅部の地形や構造を高分解能で探査する場合、反射法地震探査で使用する震源及び観測システムの比較的小型で高周波数域を対象としているものを音波探査と呼ぶのが慣例となっている。しかしながら、もとより厳密な区別があるわけではない。音波探査で用いられる震源は、小型のエアガン、スパーカー(電気放電を利用した震源)などのように、エネルギーは小さいながら、振動数の高いものが多く、ストリーマー・ケーブルも短いものが使われる。
データ処理・地下構造解釈は、現場データ取得が終了してから、処理センターにて電子計算機を用いて実施される。海上調査では、時間短縮のためにオンボード処理を行う場合も多い。
データ取得・データ処理においては、信号(反射波)と雑音の比すなわちS/N比を高くする工夫がなされている。データ取得時には、多くの発震点と受振点を用いることであり、爆薬震源であれば多孔爆破法(pattern shooting)、非爆薬震源では複数バイブレータの移動によるアレイ、複数受振器の設置法(grouping)等である。いずれも下方への指向特性を持ち、水平方向に伝播する波(例えば表面波など)を減衰させる効力を持っている。
データ処理では信号と雑音の間に差異を見いだし、それによって雑音を減衰させる、いわゆるフィルターを適用して信号を強調する。データ処理の結果は、2次元調査では地下を断面として表示した記録断面図として、3次元調査では調査エリア下の3次元データボリュームとして得られる。記録断面図の横軸は水平距離を、縦軸は反射波出現時刻を示す。この断面図や3次元データボリュームを坑井データや反射法データ処理過程の速度解析から得られた速度関数を用いて深度に変換して深度断面図や深度に変換されたデータボリュームを作る。
データ解釈では、データボリュームや記録断面図から必要とする地層や断層などの追跡を行い、その形状をコンターマップ(contour map)として表現する。反射時間だけでコンターマップを作ることもあり、これを時間コンターマップという。反射波の読み取りからコンターマップを作るまでの作業は、3次元反射法地震探査が主体となった近年では、もっぱらワークステーションを用いて実施されている。

(須田 茂幸、2008 年 3月)