ページ番号1001492 更新日 平成30年2月16日
- 英語表記
- seismic data processing
- 同義語
- データ処理 [ でーたしょり ]
- 分野
- その他
反射法地震探査データ処理の大きな目的は、S/N比の向上による反射波の抽出と、反射波のイメージング(正しい反射点位置に戻す操作)である。
調査で取得された反射記録は電子計算機によりデータ処理行われる。一般に、反射波は地中を伝播する途中で急激に減衰する。加えて交通ノイズ・風雨・表面波等、反射波以外の雑音が混入する。データ処理では、減衰した地震波を適度な振幅に復元し、各種の雑音波を除去してS/N比を高める。これには大別して二通りの手法がある。
第一は、同一の反射面から戻ってくる波を多数足し合わせる(CDP重合)ことにより記録のS/N比を向上させることである。一般的なノイズ(白色雑音)であれば、S/N比は足し合わせる数(重合数)の平方根に比例する。CDP重合を行う前に、速度解析により重合速度を求め、この速度を用いて反射波列をそろえるためのNMO補正を実施する。
第二に、雑音波のいろいろな特性をうまく利用したフィルターや処理操作を適用することである。代表的なフィルターや処理操作には次のものがある。
(1)静補正
表層部には一般的に低速度層が存在しその厚さや速度は大きく変化する。この低速度層は、CDP重合処理の際に、反射波の微小な走時のずれとなり重合効果を劣化させる。この微小なずれを補正するのが静補正であり、反射記録の屈折波(初動)を用いたタイム・ターム法による方法が一般的である。
(2)デコンボリューションフィルター
地震波の厄介な性質として、地中を伝播する途中で徐々に分解能が低下することがあげられる。これを再び高分解能の波に戻して薄層の分離を容易にするのがこのフィルターである。(→デコンボリューション)
(3)バンドパスフィルター
地震波を周波数領域に変換してスペクトル分布を見ると、信号の占めるスペクトル領域と雑音波の占めるスペクトル領域に差のある場合がある。そこで、信号のスペクトル領域のみを通過させるバンドパスフィルターをかけることにより、両者を分離することができる。
(4)速度フィルター
記録断面上で地震波を波列の連なりとしてみると、反射波の連なりとそれ以外の雑音波の連なりには明らかな違いがある。この点に着目して、反射波列の連なりのみを拾い出すフィルターを速度フィルターという。これは2次元フィルターの一種である。
(5)ディップムーブアウト(DMO)
地表で観測される反射記録は地下構造が水平層であれば、発震点と受振点の中点直下で反射する。地下構造が傾斜している場合は、反射点は傾斜の上がる方向へずれる。これは厳密にいうとCDP重合の理論からずれるため、発震点と受振点の中点ではなく、より正しいと考えられる反射点の位置で、トレースを足し合わせることにより、より正確な地下構造とより高品質の反射法断面図を得られることになる。
(6)マイグレーション
重合時間断面図上の反射波は、地表のある地点において地下の反射面から垂直に反射して帰ってくる波を表わしているが、この反射点は反射面が水平層でないかぎり地表の点の真下ではない。これを補正して真の地下構造に戻すのがマイグレーションの機能である。
反射法データ処理の成果としては、重合時間断面図・マイグレーション時間断面図・マイグレーション深度断面図の他に、静補正の際に得られる表層速度構造図、速度解析による速度構造図がある。
(須田 茂幸、2008 年 5月)