ページ番号1001517 更新日 平成30年2月16日

パーティシペーションぱーてぃしぺーしょん
英語表記
participation
同義語
事業参加 [ じぎょうさんか ]
分野
その他

天然資源に対する恒久主権の概念が国際的に定着していく過程で、産油諸国が、一方的な国有化政策をとらずに既存のコンセッション協定の枠内で国連の諸決議に依拠しつつ、さらには事情変更の法理を援用して、交渉の場でその改訂を求め、国際石油会社が保有している石油利権に直接参加し、それに不可分の利権を取得するとともに生産、投資、販売などの計画や原油価格の決定に関与し、もって原油価格を維持しつつ石油収入の安定化を図ることを目的とした政策をいう。
このような事業参加は、産油国が国際石油資本の組織のメカニズムを否定せずに、これに自ら参加してその利益にあずかろうとするものであり、産油国による自国資源に対する主権の回復という政治的かつ法制的な要素と自国資源からの収益を安定的にかつより大きな割合で確保するという経済的要素とを、国際石油資本との直接的な摩擦を回避しながら同時に達成していくことをねらった現実的な政策といえよう。国際石油会社の利権に変更をもたらす産油国の参加間題が、OPEC の正式の議題となったのは 1968 年の第 16 回総会においてであり、このとき採択された決議 No.90 では、1966 年の国連総会で決議された天然資源に対する恒久主権と外資の経営・利益に対する資源所在国のシェア増大の権利を確認し、産油国主導の炭化水素資源の開発をうたい、さらに「既存の石油協定中に、コンセッション保有会社の所有権に対する政府の参加について規定されていない場合には、政府は事情変更の原則に基づいて適切な参加を行うことができる」として、事業参加を加盟各国に勧告した。
この OPEC の決議の趣旨に沿って、ペルシア湾岸の産油国が国際石油会社と交渉して、その石油利権に参加するという協定に達した最初の事例が、1972 年 12 月 20 日にサウジアラビアの首都リヤドで締結された協定(リヤド協定)である。交渉の当事者であるサウジアラビア、イラク、クウェート、アブダビ、カタールの湾岸 5 カ国のうち、まずサウジアラビアとアブダビが同協定に調印し、翌年 1 月にカタールとクウェートが調印し、それぞれ自国内で批准の手続を済ませたが、クウェートは国会の批准が得られず、石油会社グループと再交渉を行った。
この協定は 1973 年 1 月 1 日に発効し、基本的には、産油国政府が同年から段階的に石油会社の石油利権を買い取っていくことを骨子とするものである。具体的には、産油国は当初 25 %シェアを取得し、その対価として原油生産施設と探鉱および無形掘削・開発支出にかかわる資産の簿価の 25 %をインフレ調整し石油会社に支払い、参加シェアはその後 1978 年から 1981 年までの 1 月 1 日にそれぞれ 5 %ずつ引き上げ、1982 年 1 月 1 日に 6 %アップして産油国側が過半のシェアを取得するというものであった。しかしながら、産油国政府、石油会社双方にとって可処分原油が急激に増減することは販売能力の絡みからまた客先に対する供給安定といった点で不都合が生じる恐れがあるため、政府の取得原油のうち一定量は会社側に売り戻すことが定められていた。すでに旧利権の 100 ~ 50 %の一方的接収を実行に移していたリビアなどはりアド協定は生ぬるいとして、1973 年、クウェートに働きかけてその批准を妨げていたが、同年秋に石油危機が発生して産油国と国際石油会社の力関係は大きく変化し、クウェートがつきつけた 1974 年から一挙 60 %参加するとの案に石油会社は同意せざるを得なかった。
これを受けてカタール、サウジアラビア、アブダビ、バーレンの湾岸 4 カ国も同クウェート協定を踏襲し、1974 年 1 月 1 日以降湾岸産油諸国の事業参加シェアは 60 %に引き上げられ、その後 1975 年に、ドバイは Conoco 社との協定で、クウェートは BP 、Gulf との協定でそれぞれ 100 %事業参加を果たし、カタール、バーレン、サウジアラビアもそれぞれ 1982 年に 100 %の事業参加を達成した。先進国においても、例えば英国およびノルウェーが北海における石油探鉱開発のために石油会社に生産ライセンスを付与する際に、自国の国営石油会社または民族系石油会社をして外国石油会社とパーティシペーション・アグリーメントを締結させてきた。
その趣旨は、1973 ~ 74 年の第一次石油危機の経験を踏まえて、自国市場に対する石油の安定供給を確保するために、石油会社は英国においては生産量の 51 %、ノルウェーにおいては生産量の増大に応じて最大 70 ~ 80 %を市場価格で国営石油会社に優先的に売り渡し、必要に応じて石油会社のバイバックを認めることを内容とするものである。